説明

ろう付構造体および配管部材のろう付方法

【課題】複数の配管部材が相互に近接した状態で被着体に精度よくろう付されたろう付構造体を提供すること。
【解決手段】複数の配管部材11,12…と、被着面20aに複数の開口21a,22a…が形成された被着体20とを備え、複数の配管部材11,12…の各々が、複数の開口21a,22a…の内の対応する1つと各々連通するように、被着体20の被着面20aにろう付されてなるろう付構造体であって、複数の配管部材11,12…の各々は、開口の周縁部に配置されるろう材11a,12a…によって被着面20aにろう付されており、複数の開口21a,22a…の内、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間には段差24が形成され、該2つの開口のいずれか一方が、他方よりも低い位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の配管部材が被着体にろう付されてなるろう付構造体および配管部材のろう付方法に関し、詳しくは、弁装置の一部を構成する構造体に用いられて好適なろう付構造体、および弁装置の一部を形成するのに好適なろう付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置や冷蔵庫、自動販売機などの冷媒循環サイクルに用いられる小型の弁装置では、弁本体と管継手とがろう付によって接続固定される。例えば、特許文献1には、弁本体の弁座固定部に、3本の管継手がろう付によって接続固定された電磁式の四方弁が開示されている。また特許文献2には、弁本体の底蓋部材に、3本の管継手がろう付によって接続固定された電動式切換弁が開示されている。また特許文献3には、弁本体に管継手がろう付されてなる流量制御弁において、溶けたろう材が弁本体の内部に流れ込むことで、弁本体の流体特性が損なわれてしまうことのない弁装置構造が開示されている。
【0003】
これら従来の弁装置における管継手のろう付方法について、図10を基に簡単に説明する。図10に示したように、弁座部材120の被着面120aに2本の管継手111および112を接続固定する場合には、管継手111および112を被着面120aに形成されている開口121および122に挿入した状態で、管継手111および112の外周面と開口121および122の周縁部とをろう付する。
【0004】
この時のろう付方法としては、管継手111,112と弁座部材120との接続部を予め加熱しておき、この接続部に給線機などで溶融したろう材を添加してろう付する、いわゆる差しろう付と呼ばれるろう付方法と、管継手111,112と弁座部材120との接続部に予めろう材を配置しておき、このろう材を加熱することによってろう付する、いわゆる置きろう付と呼ばれる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−20475号公報
【特許文献2】特開2004−263726号公報
【特許文献3】特開2003−161550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、空調装置や冷蔵庫などの冷媒循環サイクルに用いられる三方弁や四方弁などの弁装置において、弁装置のより一層の小型化が求められている。三方弁や四方弁など、複数の弁ポート(開口)を有する弁装置を小型化する場合には、例えば図10において、被着面120aに形成されている開口121,122の離間距離C´を短くすることで、弁座部材120を小型化し、弁装置全体を小型化することが考えられる。また、離間距離C´が短くなると、弁座面120bを摺動するスライド弁体(不図示)の摺動距離も短くなり、スライド弁本体の摩耗の低減、および弁応答性の点においても有利になると考えられる。
【0007】
しかしながら、離間距離C´を短くすると、管継手111,112を弁座部材120の被着面120aに精度よくろう付するのが難しくなる。例えば差しろう付の場合、給線機と弁座部材120および管継手111,112との相対位置が僅かにバラつくため、離間距離Cが小さいと、管継手111と112との間の部分をろう付する際に、バラツキによりろう材を適切な位置に給線できなかったり、給線機が管継手111,112に接触したりすることがあり、ろう付の品質が安定しないとの問題がある。
【0008】
また、置きろう付の場合、離間距離C´を短くすると、管継手111と112との間にろう材を配置するスペースを確保できない。また、ぎりぎりろう材を配置できたとしても、ろう材の溶融時に管継手111のろう材と管継手112のろう材とが接触してしまい、先に溶けたろう材の方に他のろう材が引き寄せられてしまうため、ろう付不良が発生するとの問題がある。
【0009】
そこで本発明者らは、2本の管継手111,112に外装できるような楕円形状のろう材110aを考案し、図11の(a)に示したように配置することで、離間距離C´を短くすることを考えた。
【0010】
ところが、このような楕円形状のろう材110aでは、ろう材110aの製作に高い寸法精度が求められ、例えばろう材110aが小さいと、管継手111,112に外装することができず、また逆にろう材110aが大きいと、図11の(b)のa´部に示したように、管継手とろう材110aとが接触しない接触不良部ができてしまう。このような接触不良部が発生すると、ろう付がうまくなされず、ろう付不良が発生してしまう。また、先に溶けた側にろう材110aが引き寄せられてしまい、ろう付不良が発生してしまう。
【0011】
また本発明者らは、Cリング形状のろう材111a,112aを考案し、図12の(a)に示したように、Cリングの開口部を管継手111,112の間側に配向させることで、離間距離C´を短くすることを考えた。
【0012】
ところが、このようなCリング形状のろう材111a,112aでは、ろう材111a,112aの配置位置が極めて重要となるため、組み立て作業性に劣るとの問題がある。例えば、管継手111,112の組み立て時にろう材111a,112aが回転してしまうと、図11の(b)のb´部に示したように、ろう材111aと112aとが接触し、先に溶けたろう材の方に他のろう材が引き寄せられてしまうため、ろう付不良が発生してしまうこととなる。
【0013】
本発明はこのような従来の課題に鑑みなされた発明であって、被着体に複数の配管部材をろう付してなるろう付構造体において、複数の配管部材が相互に近接した状態で被着体に精度よくろう付されたろう付構造体を提供することを目的としている。
【0014】
また本発明は、複数の配管部材を被着体に近接して精度よくろう付することのできる配管部材のろう付方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明のろう付構造体は、
複数の配管部材と、被着面に複数の開口が形成された被着体とを備え、前記複数の配管部材の各々が、前記複数の開口の1つと各々連通するように、前記被着体の被着面にろう付されてなるろう付構造体であって、
前記複数の配管部材の各々は、前記開口の周縁部に配置されるろう材によって前記被着面にろう付されており、
前記複数の開口の内、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間には段差が形成され、該2つの開口のいずれか一方が、他方よりも低い位置に形成されていることを特徴とする。
【0016】
このような本発明のろう付構造体によれば、複数の開口の内、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間に段差が形成されており、この2つの開口のいずれか一方が、他方よりも低い位置に形成されていることから、これら2つの開口の周縁部に配置されるろう材同士が接触するのを防ぐことができる。よって、配管部材が精度よくろう付されたろう付構造体とすることができる。
【0017】
上記発明において、
前記相互に最も近接している2つの開口の平面視の離間距離をC、
前記相互に最も近接している2つの開口の内、一方の開口の周縁部に配置されるろう材の平面視の幅をd1、他方の開口の周縁部に配置されるろう材の平面視の幅をd2
とした場合に、下記の関係を満たすことが望ましい。
1≧d2の場合:
1<C≦d1+d2
1<d2の場合:
2<C≦d1+d2
【0018】
このような構成であれば、2つの開口の平面視の離間距離Cが、2つのろう材の平面視の幅の合計(d1+d2)よりも小さくなっており、ろう付構造体を小型化することができる。
【0019】
また上記発明において、
前記相互に最も近接している2つの開口の内、前記一方の開口が段差の下側に位置し、且つ、該一方の開口の周縁部に配置されるろう材の高さをh1、前記段差の高さをHとした場合に、下記の関係を満たすことが望ましい。
1<H
【0020】
このような構成であれば、段差の高さHが、段差の下側に位置するろう材の高さh1よりも大きいため、段差の下側に位置するろう材と上側に位置するろう材とが接触するのを確実に防ぐことができる。
【0021】
また、本発明のろう付構造体は、弁装置の一部を構成している。
このような本発明のろう付構造体によって弁装置の一部を構成すれば、複数の配管部材(例えば管継手)が近接した状態で被着体(例えば弁座部材)に精度よくろう付されるため、弁装置を小型化することができる。また、スライド弁体の摺動距離も短くなるため、スライド弁本体の摩耗が低減され、かつ弁応答性にも優れた弁装置とすることができる。
【0022】
また、本発明のろう付方法は、
複数の配管部材の各々が、被着体の被着面に形成されている複数の開口の1つと各々連通するように、前記複数の配管部材を前記被着体の被着面にろう付する配管部材のろう付方法であって、
前記複数の開口の内、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間に段差が形成されている被着体を用意する工程と、
前記複数の配管部材の各々に対してろう材を外装するろう材外装工程と、
前記配管部材に外装されたろう材を前記開口の周縁部に当接させるろう材配置工程と、
前記ろう材を溶融させて、前記複数の配管部材を前記被着体の被着面にろう付するろう付工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
このような本発明の配管部材のろう付方法によれば、2つの開口の周縁部に配置されるろう材が、段差の上側と下側とに離して配置することができるため、2つの開口の周縁部に配置されるろう材同士が接触することがなく、複数の配管部材を被着体に近接して精度よくろう付することができる。
【0024】
また、配管部材に外装したろう材を開口の周縁部に当接させることでろう材を配置するため、配管部材およびろう材を精度よく簡単に配置することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被着体の被着面に形成されている複数の開口の内、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間に段差が形成されているため、これら2つの開口の周縁部に配置されるろう材同士が接触するのを防ぐことができる。よって、ろう付時においてろう材の接触に伴うろう付不良が生じないため、配管部材が精度よくろう付されたろう付構造体を提供することができる。
【0026】
また本発明によれば、複数の配管部材(例えば管継手)が近接した状態で被着体(例えば弁座部材)に精度よくろう付されるため、弁装置を小型化することができる。また、スライド弁体の摺動距離も短くなるため、スライド弁本体の摩耗が低減され、かつ弁応答性にも優れた弁装置とすることができる。
【0027】
また本発明によれば、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間に段差が形成されている被着体を用意し、これに配管部材をろう付するため、2つの開口の周縁部に配置されるろう材を、段差の上側と下側とに離して配置することができる。このため、2つの開口の周縁部に配置されるろう材同士が接触することがなく、複数の配管部材を被着体に近接して精度よくろう付することができる配管部材のろう付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明のろう付構造体を示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明のろう付構造体を示した平面図および断面図である。
【図3】図3は、比較例のろう付構造体を示した斜視図である。
【図4】図4は、本発明のろう材の一例を示した図である。
【図5】図5は、本発明の被着体(弁座部材)の変形例を示した図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態のろう付構造体を示した斜視図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態のろう付構造体を示した平面図および断面図である。
【図8】図8は、本発明の第3の実施形態のろう付構造体を示した斜視図および平面図である。
【図9】図9は、比較例のろう付構造体を示した斜視図および平面図である。
【図10】図10は、従来のろう付方法を説明するための図である。
【図11】図11は、従来のろう材の一例を説明するための図である。
【図12】図12は、従来のろう材の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明に過ぎない。
【0030】
本発明のろう付構造体は、三方弁や四方弁などの弁装置の一部を構成する構造体として、特に好適に用いられるものである。よって以下の説明では、本発明のろう付構造体が、複数の管継手が弁座部材に相互に近接した状態でろう付され、弁装置の一部を構成するろう付構造体である場合を例にして説明する。
【0031】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態のろう付構造体を示した斜視図である。また、図2は、本発明の第1の実施形態のろう付構造体を示した平面図および断面図であって、図2の(a)は平面図、図2の(b)はA−A線における断面図である。
【0032】
本実施形態のろう付構造体1aは、図1に示したように、2本の管継手11,12と、円柱状の弁座部材20とを備えており、管継手11,12が、被着体である弁座部材20の被着面20aにろう付によって接続固定されることで構成される。
【0033】
弁座部材20には、その軸方向を被着面20aから弁座面20bに貫通する2本の弁孔21,22が形成されている。そして、被着面20aには、2つの開口21aおよび開口22aが形成されるとともに、弁座面20bには、2つの開口21bおよび22bが形成されている。
【0034】
また、弁孔21,22は途中で孔径が変化しており、被着面20a側が大径部21c,21c、弁座面20b側が小径部21d,22dとなっている。また、弁孔21の大径部21bの内径は、管継手11が挿入可能なように、管継手11の外径と同じか、それよりも僅かに大きく形成されている。また、弁孔21の小径部21cは、管継手11の内径とほぼ同じ径に形成されている。
【0035】
同様に、弁孔22の大径部22cは、管継手12が挿入可能なように、管継手12の外径と同じか、それよりも僅かに大きく形成されている。また、弁孔22の小径部22cは、管継手12の内径とほぼ同じ径に形成されている。
【0036】
また、図1および図2の(b)に示したように、開口21aの周縁部近傍には段差24が形成されており、被着面20aのその他の部分よりも低くなっている段部24aが形成されている。すなわち、開口21aは段差24の下側の位置に形成されており、開口22aは段差24の上側の位置に形成されている。
【0037】
弁座部材20の材質としては、銅、真鍮、ステンレスなどを好適に用いることができる。また、このような弁座部材20は、例えば、円筒状の部材を穿孔して弁孔21,22を形成し、切削加工によって段差24を形成することで製作される。
【0038】
また、図1に示したように、管継手11,12の外周には、円環状のろう材11a,12aが外装されている。また管継手11,12の材質は、上述した弁座部材20と同様に、銅、真鍮、ステンレスなどを好適に用いることができる。また、ろう材11a,12aは、弁座部材20および管継手11,12よりも融点の低い材質から形成されており、例えば、銅ろう、銀ろう、黄銅ろう、りん銅ろうなどを用いることができる。
【0039】
上述したろう材11a,12aが外装された管継手11,12は、弁座部材20の開口21a,21bから弁孔21,22に挿入される。そして、管継手11の先端が弁孔21の小径部21dと当接する位置まで挿入され、管継手11に外装されているろう材11aが被着面20aの段部24aと当接する。また、管継手12の先端が弁孔22の小径部22dと当接する位置まで挿入されると、管継手12に外装されているろう材12aが被着面20aと当接する。そして、図2の(b)に示したように、ろう材11a,12aが、開口21a,22aの周縁部に配置される。
【0040】
そして、図2の(b)に示した状態において、ろう材11a,12aを加熱して溶融させることで、管継手11,12と開口21a,開口22aとが連通した状態で、管継手11,12が弁座部材20の被着面20aにろう付される。
【0041】
このようにしてなるろう付構造体1aは、図1および図2に示したように、開口21aと開口22aとの間に段差24が形成されており、開口21aの方が開口21bに対して低い位置に形成されていることから、ろう材11aとろう材12aの高さをずらして配置することができる。したがって、開口21aと開口22aとを平面視で近接した位置に形成したとしても、これら2つの開口21a,22aの周縁部に配置されるろう材11a,12aが互いに接触するのを防ぐことができる。
【0042】
よって、ろう材を溶融させた時に、先に溶けたろう材の方に他のろう材が引き寄せられたりすることがなく、ろう付不良が発生することがない。したがって、管継手11,12を精度よく弁座部材20の装着面20aにろう付することが可能となる。
【0043】
これに対して、例えば図3に示したように、開口21a´と開口22a´との間に段差が形成されていない比較例のろう付構造体1a´において、開口21aと開口22aとを平面視で近接した位置に形成すると、図3の(b)に示したように、ろう材11a'と12b'とが接触し、a部においてろう付時にろう付不良が発生してしまう。また、一方のろう材(例えばろう材12a')が被着面20a'から離間してしまい、ろう材12a'が溶融しても、b部において管継手12と被着面20aとが固定されないままろう付されてしまうこととなる。また、ろう材12a'は弁座に接触していないため、熱伝導が悪く、溶融しないことがある。
【0044】
また、本実施形態のろう付構造体1aは、開口21a,21bの平面視における離間距離Cは、ろう材11aの平面視の幅をd1、ろう材12aの平面視の幅をd2とした場合に、下記の関係を満たすように構成されている。
1≧d2の場合:
1<C≦d1+d2
1<d2の場合:
2<C≦d1+d2
【0045】
すなわち、開口21aと開口22aとの間に段差24が形成されており、ろう材11aと12aの高さをずらして配置することができるため、離間距離Cを2つのろう材11a,12aの平面視の幅の合計よりも小さくすることができる。これにより、被着面20aを小さくすることができ、ろう付構造体1aを小型化することが可能となる。なお、管継手11と12との間にろう材を配置するためには、離間距離Cを、2つのろう材11a,11bの平面視の幅d1,d2の大きい方よりは大きくしなければならない。
【0046】
また、本実施形態のろう付構造体1aは、段差24の高さをH、ろう材11aの高さをh1とした場合に、下記の関係を満たすように構成されている。
1<H
【0047】
すなわち、段差24の高さHがろう材11aの高さh1よりも大きく形成されていれば、段差24の下側に位置するろう材11aと、段差24の上側に位置する12aとが接触するのを確実に防ぐことができ、ろう付の精度を高めることができるため好ましい。
【0048】
なお本発明において、ろう材11a,12aの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば長い線状のろう材を螺旋状に巻回し、これを1巻分ずつ切断することで形成される。このようにして製造されたろう材11aは、図4に示したように、ろう材11aの一端側と他端側とが高さ方向にずれた状態となり、環状のろう材11aの全体の高さは最大で約2h1である。
【0049】
したがって、上述した段差24の高さHを、2h1<Hの関係を満たすように構成することで、ろう材11aの一端側と他端側とが高さ方向にずれていたとしても、ろう材11aと12aが接触するのを確実に防ぐことができ、ろう付の精度をより高めることができるようになる。
【0050】
なお、本発明のろう付構造体1aにおいては、被着面20aに形成される段差24の平面形状は、上述した実施態様に限定されない。本発明においては、開口21aおよび22aの間に段差24が形成され、開口21aが、開口22aよりも低い位置に形成されていれば、例えば、図5の(a)に示したように段差24が形成されていてもよく、図5の(b)に示したように段差24が形成されていてもよいものである。
【0051】
このように構成される本実施形態のろう付構造体1aは、不図視のスライド弁体が弁座面20bの上を往復摺動することで、弁座面20bに形成されている開口21b,22bが択一的に開閉される弁装置(例えば電磁式の三方弁)の一部をなす構造体として好適に用いられる。このようなろう付構造体1aによって弁装置の一部を構成すれば、管継手11,12が互いに近接した状態で弁座部材20に精度よくろう付されているため、弁装置を小型化することができる。また、スライド弁体の摺動距離も短くなるため、スライド弁本体の摩耗が低減され、かつ弁応答性にも優れた弁装置とすることができる。
【0052】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態のろう付構造体1bについて、図6、図7を基に説明する。図6は、本発明の第2の実施形態のろう付構造体を示した斜視図である。また、図7は、本発明の第2の実施形態のろう付構造体を示した平面図および断面図であって、図7の(a)は平面図、図7の(b)はB−B線における断面図である。
なお、本実施形態のろう付構造体1aは、上述した第1の実施形態のろう付構造体1aと基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施形態のろう付構造体1bは、上述した実施形態とは異なり、3本の管継手11,12,13を備えている。そして、弁座部材20には3本の弁孔21,22,23が穿孔されており、3本の管継手11,12,13の各々が、被着面20aに形成されている開口21a,22a,23aの対応する1つと各々連通して、弁座部材20にろう付されている。
【0054】
また本実施形態では、図7の(a)に示したように、開口21aと開口22aとの間、および開口21aと開口23aとの間が相互に最も近接しており、その離間距離はともにCとなっている。一方、開口22aと開口23aとの間は、少なくともろう材12aと13aとが平面視において重ならない程度に離間している。
【0055】
そして、図6および図7の(b)に示したように、開口21aの周縁部近傍には段差24が形成されており、被着面20aのその他の部分よりも低くなっている段部24aが形成されている。すなわち、開口21aは段差24の下側の位置に形成されており、開口22aおよび23aは段差24の上側の位置に形成されている。
【0056】
このように構成される本実施形態のろう付構造体1bでは、上述した実施形態と同様に、開口21aと開口22aとの間に段差24が形成されており、開口21aの方が開口21bに対して低い位置に形成されていることから、ろう材11aとろう材12aの高さをずらして配置することができる。また、開口21aと開口23aとの間も同様であり、ろう材11aとろう材13aの高さをずらして配置することができる。
したがって、開口21aと開口22a、および開口21aと開口23aとを平面視で近接した位置に形成したとしても、これら3つの開口21a,22a,23aの周縁部に配置されるろう材11a,12a,13aが互いに接触するのを防ぐことができる。
【0057】
また、このように構成される本実施形態のろう付構造体1bは、不図視のスライド弁体が弁座面20bの上を往復摺動することで、弁座面20bに形成されている開口21b,22b,23bが択一的に開閉される弁装置(例えば電磁式の四方弁)の一部として好適に用いられる。このようなろう付構造体1bによって弁装置の一部を構成すれば、管継手11,12,13が近接した状態で弁座部材20に精度よくろう付されるため、弁装置を小型化することができる。また、スライド弁体の摺動距離も短くなるため、スライド弁本体の摩耗が低減され、かつ弁応答性にも優れた弁装置とすることができる。
【0058】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態のろう付構造体1cについて、図8および図9を基に説明する。図8は本発明の第3の実施形態のろう付構造体を示した斜視図および平面図である。図9は比較例のろう付構造体を示した斜視図および平面図である。
なお、本実施形態のろう付構造体1cは、上述した第1および第2の実施形態のろう付構造体1a,1bと基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図8に示したように、本実施形態のろう付構造体1cは、3本の管継手11,12,13を備えている。そして、弁座部材20には3本の弁孔21,22,23が穿孔されており、3本の管継手11,12,13の各々が、被着面20aに形成されている開口21a,22a,23aの対応する1つと各々連通するように、弁座部材20にろう付されている。なお、図示しないが、被着面20aの背面側には弁座面が形成されており、弁座面には弁孔21,22,23に対応して3つの開口が形成されている。また、弁座部材20の弁座面側には弁ハウジング32が一体的に接続されており、弁ハウジング32の内面と弁座面との間で弁室34が画成されている。
【0060】
また本実施形態では、図8の(b)に示したように、開口21aと開口22aとの間が相互に最も近接しており、その離間距離はCとなっている。一方、開口21aと開口23aとの間、および開口22aと開口23aとの間は、少なくともろう材が平面視において重ならない程度に離間している。
【0061】
そして、図8に示したように、開口21aの周縁部近傍には段差24が形成されており、被着面20aのその他の部分よりも低くなっている段部24aが形成されている。すなわち、開口21aは段差24の下側の位置に形成されており、開口22aおよび23aは段差24の上側の位置に形成されている。
【0062】
このように構成される本実施形態のろう付構造体1cでは、上述した実施形態と同様に、開口21aと開口22aとの間に段差24が形成されており、開口21aの方が開口21bに対して低い位置に形成されていることから、ろう材11aとろう材12aの高さをずらして配置することができる。
したがって、開口21aと開口22aを平面視で近接した位置に形成したとしても、これら2つの開口21a,22aの周縁部に配置されるろう材11a,12aが互いに接触するのを防ぐことができる。
【0063】
また、本実施形態のろう付構造体1cは、不図示のスライド弁体が弁座面の中心を基点として回動することで、弁座面に形成されている2つの開口を(弁孔21および弁孔22に対応する開口)を択一的に開閉し、弁孔23から弁室に流入した流体の流出方向を切り換える弁装置(例えば電動式切換弁)の一部として好適に用いられる。このようなろう付構造体1cによって弁装置の一部を構成すれば、管継手11,12が近接した状態で弁座部材20に精度よくろう付されるため、弁装置を小型化することができる。また、スライド弁体が回動する角度θも小さくすることができるため、スライド弁本体の摩耗が低減され、かつ弁応答性にも優れた弁装置とすることができる。
【0064】
これに対して、例えば図9に示したように、開口21a´と開口22a´との間に段差が形成されていない比較例のろう付構造体1c´では、ろう材11a'と12a'が重ならないようにするために、図9の(b)に示したように、その離間距離をC'(C<C')以上にする必要がある。また、スライド弁体が回動する角度θ'も大きくなる。
【0065】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0066】
例えば上述した実施形態では、ろう材11a,12a…が外装された管継手11,12…を弁孔21,22…に挿入し、ろう材11a,12a…と被着面20aとが当接する位置まで管継手11,12…を挿入することで、管継手11,12、およびろう材11a,12a…の位置決めを行なっている。このようにすれば、管継手11,12…とろう材11a,12a…とを同時に配置することができ、かつろう材11a,12a…が、管継手11,12…および被着面20aと確実に当接するように精度よく配置することができるため好ましい。しかしながら、本発明のろう付構造体はこれに限定されず、管継手11,12…とろう材11a,12a…とが、別々に被着面20aに配置された後に、ろう付されたものであっても良いものである。
【0067】
例えば、上述した実施形態では、本発明のろう付構造体を弁装置の一部に組込む場合を例に説明したが、本発明のろう付構造体の用途はこれに限定されず、例えば、冷媒循環サイクルにおいて、冷媒を分流するために設けられるディストリビューター(分岐器)などにも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1a,1b,1c ろう付構造体
11,12,13 管継手(配管部材)
11a,12a,13a ろう材
20 弁座部材(被着体)
20a 被着面
20b 弁座面
21,22,23 弁孔
21a,22a,23a 開口
21b,22b,23b 開口
21c,22c 大径部
21d,22d 小径部
24 段差
24a 段部
32 弁ハウジング
34 弁室
111,112 管継手
110a,111a,112a ろう材
120 弁座部材
120a 被着面
120b 弁座面
121,122 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配管部材と、被着面に複数の開口が形成された被着体とを備え、前記複数の配管部材の各々が、前記複数の開口の1つと各々連通するように、前記被着体の被着面にろう付されてなるろう付構造体であって、
前記複数の配管部材の各々は、前記開口の周縁部に配置されるろう材によって前記被着面にろう付されており、
前記複数の開口の内、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間には段差が形成され、該2つの開口のいずれか一方が、他方よりも低い位置に形成されていることを特徴とするろう付構造体。
【請求項2】
前記相互に最も近接している2つの開口の平面視の離間距離をC、
前記相互に最も近接している2つの開口の内、一方の開口の周縁部に配置されるろう材の平面視の幅をd1、他方の開口の周縁部に配置されるろう材の平面視の幅をd2
とした場合に、下記の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のろう付構造体。
1≧d2の場合:
1<C≦d1+d2
1<d2の場合:
2<C≦d1+d2
【請求項3】
前記相互に最も近接している2つの開口の内、前記一方の開口が段差の下側に位置し、且つ、該一方の開口の周縁部に配置されるろう材の高さをh1、前記段差の高さをHとした場合に、下記の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載のろう付構造体。
1<H
【請求項4】
弁装置の一部を構成することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のろう付構造体。
【請求項5】
複数の配管部材の各々が、被着体の被着面に形成されている複数の開口の1つと各々連通するように、前記複数の配管部材を前記被着体の被着面にろう付する配管部材のろう付方法であって、
前記複数の開口の内、少なくとも相互に最も近接している2つの開口の間に段差が形成されている被着体を用意する工程と、
前記複数の配管部材の各々に対してろう材を外装するろう材外装工程と、
前記配管部材に外装されたろう材を前記開口の周縁部に当接させるろう材配置工程と、
前記ろう材を溶融させて、前記複数の配管部材を前記被着体の被着面にろう付するろう付工程と、を有することを特徴とする配管部材のろう付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−10121(P2013−10121A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144355(P2011−144355)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】