説明

ろ材、ろ過装置およびろ材の製造方法

【課題】ほつれにくく(花糸が抜け落ちにくく)、懸濁物質を捕捉し易く、懸濁物質の捕捉効率が高いろ材を提供する。
【解決手段】溶着性を有する芯糸20と溶着性を有する押さえ糸21とを撚り合わせて芯糸20と押さえ糸21との間に花糸22aを挟み込んだろ材26であって、花糸22aを、毛羽立たせた溶着性を有する糸とし、芯糸20と押さえ糸21とに溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、生活排水(廃水)や工場排水(廃水)などの被処理水に含まれている懸濁物質を分離除去するろ材、このろ材を用いたろ過装置、そのろ材を製造するろ材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空隙性のある粒状繊維ろ材が、固液分離や生物処理装置に多く使用されている。
【0003】
その一例として、少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とを撚り合わせて芯糸と押さえ糸との間に花糸を挟み込んだものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、接着糸を混入した芯糸および押さえ糸を撚り合わせて芯糸と押さえ糸との間に花糸を挟み込んだものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
上記したろ材は、軽量で取り扱いが容易であるとともに、洗浄が容易であるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3994392号公報
【特許文献2】特許第4029781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来のろ材は、洗浄すると、ほつれることがある。
また、ろ材は洗浄するのにつれて痩せ、細くなるため、ろ材の洗浄につれてろ過効率が悪化するという不都合がある。
【0008】
この発明は、上記した不都合を解消するためになされたもので、ほつれにくく(花糸が抜け落ちにくく)、懸濁物質を捕捉し易く、懸濁物質の捕捉効率が高いろ材、このろ材を用いたろ過装置、そのろ材を製造するろ材の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)この発明のろ材は、少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸との間に花糸を挟み込んだろ材であって、前記花糸を、毛羽立たせた溶着性を有する糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸との少なくとも一方に溶着したことを特徴とする。
【0010】
(2)この発明のろ材は、(1)に記載のろ材において、前記花糸を、複数の短繊維に撚りをかけて毛羽立たせた溶着性を有する糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸との少なくとも一方に溶着したことを特徴とする。
【0011】
(3)この発明のろ過装置は、ろ過槽内に設けたろ材層で被処理液をろ過するろ過装置において、前記ろ材層を形成するろ材を、(1)または(2)に記載のろ材にしたことを特徴とする。
【0012】
(4)この発明のろ材の製造方法は、第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1樹脂を芯にし、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、前記撚糸を芯糸および押さえ糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
(5)この発明のろ材の製造方法は、第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にし、前記第2溶融温度以上の第3溶融温度の第3樹脂を芯にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、前記撚糸を芯糸および押さえ糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
(6)この発明のろ材の製造方法は、第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1樹脂を芯にし、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
(7)この発明のろ材の製造方法は、第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にし、前記第2溶融温度以上の第3溶融温度の第3樹脂を芯にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
(8)この発明のろ材の製造方法は、(4)から(7)のいずれか1つに記載のろ材の製造方法において、前記第1樹脂は、前記第2溶融温度に加熱されると、表面が軟らかくなることを特徴とする。
【0017】
(9)この発明のろ材の製造方法は、(4)から(8)のいずれか1つに記載のろ材の製造方法において、前記第1樹脂と前記第2樹脂とは、同じ系統(同じ種類)の樹脂であることを特徴とする。
【0018】
(10)この発明のろ材の製造方法は、(4)から(9)のいずれか1つに記載のろ材の製造方法において、前記撚糸を複数本束ねて前記花糸としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明のろ材によれば、花糸を毛羽立たせた糸としたので、良好な空隙性を確保できることにより、懸濁物質を効率よく捕捉することができる。
また、芯糸と押さえ糸との少なくとも一方と、花糸とが溶着性を有しているので、花糸を芯糸と押さえ糸とに強固に溶着することができることにより、洗浄してもろ材がほつれにくくなることによって花糸が抜け落ちにくく、ろ材の寿命を向上させることができる。
【0020】
この発明のろ過装置によれば、毛羽立たせた花糸によって懸濁物質が効率よく捕捉することができるので、被処理水を効率よくろ過することができる。
【0021】
この発明のろ材の製造方法によれば、モール糸を第2溶融温度に加熱して、花糸を構成している撚糸を内部から強固に溶着するとともに、少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とに溶着させたので、洗浄してもろ材がほつれにくくなることによって花糸が抜け落ちにくく、ろ材の寿命を向上させることができる。
また、モール糸を第2溶融温度に加熱したので、花糸が毛羽立ち、良好な空隙性を確保できることにより、懸濁物質を効率よく捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図(ポリエステル繊維の断面図)である。
【図2】この発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図(芯鞘構造樹脂短繊維の断面図)である。
【図3】この発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図で、(a)は撚糸の縦断面図、(b)は図3(a)の3B−3B線による断面図である。
【図4】この発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図(モール糸の側面図)である。
【図5】この発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図(モール糸の側面図)である。
【図6】この発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図で、(a)はモール糸の側面図、(b)は図6(a)のモール糸を右側から見た図である。
【図7】この発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図(ろ材の側面図)である。
【図8】この発明のろ過装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図9】この発明のろ過装置の他の実施例を示す概略構成図である。
【図10】この発明のろ過装置のさらに他の実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0024】
図1〜図7はこの発明のろ材の製造方法の一実施例を示す説明図である。
【0025】
図1において、11は高融点のポリエステル繊維(樹脂短繊維)を示し、例えば、溶融温度が220℃(第1溶融温度)の高融点のポリエステル(第1樹脂)を0.5デニール〜20デニール(最適値は1デニール〜6デニール)の繊度とし、例えば、20mm〜100mmにカットしたものである。
【0026】
図2において、13は芯鞘構造樹脂短繊維を示し、高融点のポリエステル繊維11と同じ高融点のポリエステル繊維14を芯にし、220℃(第1溶融温度)よりも低い200℃(第2溶融温度)の低融点のポリエステル(第2樹脂)15を鞘にした構成で、例えば、0.5デニール〜20デニール(最適値は1デニール〜6デニール)の繊度とし、例えば、20mm〜100mmにカットしたものである。
【0027】
図3において、17は撚糸を示し、ポリエステル繊維11と、芯鞘構造樹脂短繊維13とを、例えば、重量比で7:3〜1:9(最適重量比は4:6)に混紡し、方向を揃えて撚りをかけ、例えば、150デニール〜3000デニール(最適値は530デニール)の繊度としたものである。
【0028】
図4において、19はモール糸を示し、溶着性を有する芯糸20と、溶着性を有する押さえ糸21とを撚り合わせて芯糸20と押さえ糸21の間に花糸22を挟み込んだものである。
【0029】
図5において、24はモール糸を示し、モール糸19の花糸22を所定の長さ、例えば、2mm〜20mmに切断して花糸22aとしたものである。
【0030】
図6において、24Aはモール糸を示し、モール糸24を200℃(第2溶融温度)に加熱したものである。
【0031】
図7において、26はろ材を示し、モール糸24Aを所定の長さ(例えば、L/D=1〜10、Lはろ材長さで、Dは花糸22aの長さである。)に切断したものである。
【0032】
次に、図1〜図7を参照しながらろ材26の製造方法の一例について説明する。
【0033】
まず、図1に示すポリエステル繊維11と、図2に示す芯鞘構造樹脂短繊維13とを重量比で7:3〜1:9(最適重量比は4:6)に混紡し、方向を揃えて撚りをかけて、図3(a)、(b)に示す、例えば、150デニール〜3000デニール(最適値は530デニール)の繊度の撚糸17とする(撚糸製造工程)。
【0034】
次に、撚糸17を芯糸20とし、撚糸17を押さえ糸21とするとともに、撚糸17を花糸22とし、芯糸20と押さえ糸21とを撚り合わせて芯糸20と押さえ糸21の間に花糸22を、例えば、1本〜6本挟み込み、図4に示すモール糸19を製造する(モール糸製造工程)。
【0035】
そして、花糸22を所定の長さ、例えば、2mm〜20mmに切断し、図5に示す花糸22aを有するモール糸24とする(花糸切断工程)。
このとき、花糸22aの切断面は、若干撚りがほどけて拡がる。
【0036】
次に、モール糸24を第2溶融温度(200℃)に加熱して芯糸20、押さえ糸21および花糸22aを溶着するとともに、芯糸20、押さえ糸21および花糸22aを毛羽立たせ、図6(a)、(b)に示すモール糸24Aとする(加熱溶着工程)。
このように、芯糸20、押さえ糸21および花糸22aを第2溶融温度(200℃)に加熱すると、高融点のポリエステル繊維11の表面が軟らかくなることにより、高融点のポリエステル(ポリエステル繊維11)と低融点のポリエステル(ポリエステル15)とを溶着し易くなる。
【0037】
具体的には、撚糸17を構成している高融点のポリエステル繊維11と芯鞘構造樹脂短繊維13のうち、芯鞘構造樹脂短繊維13の鞘部の低融点のポリエステル15が溶融し、撚糸17内外部において高融点のポリエステル繊維11,14同士を各接触点で融着する。
これにより、撚糸17内部で適度な空隙が形成されるとともに、溶融していない高融点のポリエステル繊維11,14の端部が撚糸17から毛羽立つ。
また、花糸22aの切断面は、若干撚りがほどけて拡がった状態で溶着する。
【0038】
そして、モール糸24Aを所定の長さ(例えば、L/D=1〜10、Lはろ材長さで、Dは花糸22aの長さである。)に切断し、図7に示す、比重が1.38のろ材26とする(モール糸切断工程)。
【0039】
この発明のろ材26の製造方法の一実施例によれば、モール糸24を第2溶融温度(200℃)に加熱して短繊維の芯糸20、押さえ糸21、花糸22aの内外部、芯糸20、押さえ糸21、花糸22a同士を緻密に、強固に溶着させたので、加熱溶着工程後にモール糸24Aを所定の長さに切断してもろ材26がほつれにくくなり、洗浄しても花糸22aや撚糸17を構成する樹脂短繊維が抜け落ちにくく、ろ材26の寿命を向上させることができる。
また、モール糸24を第2溶融温度(200℃)に加熱したので、芯糸20、押さえ糸21、花糸22aを構成している樹脂短繊維が毛羽立ち、良好な空隙性を確保できることにより、懸濁物質を効率よく捕捉することができる。
【0040】
上記したろ材26の製造方法では、樹脂短繊維を構成する第1樹脂と、芯鞘構造樹脂短繊維の芯を構成する樹脂とを高融点のポリエステル樹脂とし、芯鞘構造樹脂短繊維の鞘を構成する第2樹脂を低融点のポリエステル樹脂として説明したが、樹脂短繊維を構成する樹脂と、芯鞘構造樹脂短繊維の芯を構成する樹脂とを、溶融温度(第1の溶融温度)が、例えば、140℃の高融点のポリプロピレン樹脂とし、芯鞘構造樹脂短繊維の鞘を構成する樹脂を、溶融温度(第2の溶融温度)が、例えば、115℃の低融点のポリプロピレン樹脂とし、他の条件をろ材26を製造する条件と同じにすることにより、比重が0.91のろ材を製造することができ、ろ材26と同様な効果を得ることができる。
【0041】
また、樹脂短繊維を構成する第1樹脂と、芯鞘構造樹脂短繊維の芯を構成する樹脂とを高融点のポリエステル樹脂または高融点のポリプロピレン樹脂とし、芯鞘構造樹脂短繊維の鞘を構成する第2樹脂を低融点のポリエステル樹脂または低融点のポリプロピレン樹脂とし、すなわち、各樹脂を同じ系統(同じ種類)の樹脂として説明したが、樹脂短繊維を構成する第1溶融温度の第1樹脂と、芯鞘構造樹脂短繊維の鞘を構成する第2溶融温度(第1溶融温度よりも低い温度)の第2樹脂とが互いに溶着性を有するものであれば、さらに、第2溶融温度で第1樹脂の表面が柔らかくなるものであれば、第1樹脂と、第2樹脂とは同じ系統(同じ種類)の樹脂でなくてもよく、例えば、第1樹脂をポリプロピレン樹脂、第2樹脂をポリエチレン樹脂としてもよい。
この場合、樹脂短繊維を構成する第1樹脂の第1溶融温度よりも芯鞘構造樹脂短繊維の鞘を構成する第2樹脂の第2溶融温度を低くし、芯鞘構造樹脂短繊維の芯を構成する第3樹脂の第3溶融温度を鞘の第2樹脂の第2溶融温度以上とすることにより、芯鞘構造樹脂短繊維の変形を抑制することができ、意図した所期のろ材を得ることができる。
【0042】
また、芯糸20と押さえ糸21とを、溶着性を有する撚糸として説明したが、芯糸と押さえ糸との少なくとも一方が花糸との溶着性を有していれば、同様な効果を得ることができる。
【0043】
図8はこの発明のろ過装置の一実施例を示す概略構成図であり、図1〜図7と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図8において、31は下降流方式のろ過装置を示し、ろ過槽33と、このろ過槽33内に被処理液(被処理水)を供給する被処理液供給管39と、ろ過槽33内に洗浄攪拌用のエアーを供給するエアー供給管43と、ろ過槽33から処理液(処理水)や洗浄済液(洗浄済水)を排出する配管系統とで構成されている。
【0045】
上記した濾過槽33内には、下端から所定の高さにろ材26が流出するのを防止するろ材流出防止スクリーン35が設置されている。
そして、ろ材流出防止スクリーン35の上側に、ろ材26によって所定の厚さのろ材層37が形成されている。
【0046】
上記した被処理液供給管39は、ろ材層37の上側へ被処理水を供給するように、ろ過槽33に接続されている。
そして、被処理液供給管39には、ろ過槽33内へ供給する被処理水を制御する開閉弁41が設けられている。
【0047】
上記したエアー供給管43は、供給するエアーでろ材層37を構成するろ材26を攪拌して洗浄できるように、ろ材層37の下側部分に対応する、すなわち、ろ材流出防止スクリーン35の上側部分に対応するろ過槽33に接続されている。
そして、エアー供給管43には、ろ材層37内へ供給するエアーを制御する開閉弁45が設けられている。
【0048】
上記したろ過槽33のろ材流出防止スクリーン35よりも下側部分には、被処理液(被処理水)などを排出する排出管47が接続されている。
この排出管47には、上流から下流に向かって流量を制御する2つの開閉弁49,51が設けられている。
【0049】
上記した開閉弁49,51の間の排出管47には、処理液(処理水)を排出する処理液排出管53が接続されている。
そして、開閉弁51よりも下流の排出管47と、処理液排出管53との間には、廃棄処理液管55が接続され、この廃棄処理液管55には、廃棄処理水の流量を制御する開閉弁57が設けられている。
【0050】
次に、ろ過装置31におけるろ過の一例について説明する。
【0051】
まず、開閉弁45,57を閉め、開閉弁41,49,51を開けた状態にする。
そして、被処理液供給管39からろ過槽33内に被処理水を供給することにより、被処理水はろ材層37内を下降してろ過され、排出管47を介して排出される。
【0052】
このようにしてろ過を開始し、排出管47から得られる処理水が所定の基準に達したならば、開閉弁51を閉じることにより、処理液排出管53を介して処理水を所望の場所へ供給する。
また、処理水の所望の場所への供給を中止する場合や、ろ過処理を終了して処理水などをろ過槽33から排出する場合は、開閉弁57を開け、被処理水などを排出させる。
【0053】
そして、例えば、ろ材層37で捕捉した懸濁物質による目詰まりにより、圧力損失が上昇した場合、または、累積稼働時間が所定時間に達したならば、または、処理水が所定の基準に達しなくなったならば、開閉弁45を開けてエアーを供給するとともに、開閉弁51を開ける。
このように、ろ過槽33内に被処理水およびエアーを供給すると、エアーによってろ材26が攪拌されることにより、ろ材26が洗浄され、ろ材26が捕捉している懸濁物質が剥離、沈降し、排出管47を介して排出される。
【0054】
このろ材26の洗浄を所定時間行った後、開閉弁45を閉じることにより、上述したろ過を初期状態から開始することができる。
なお、ろ材26を洗浄する場合、ろ過槽33内へ供給する洗浄液(洗浄水)は、所定の基準に達して洗浄水、例えば、処理液(処理水)を供給してもよい。
また、被処理水あるいは処理水の供給を止めてエアーを供給し、ろ材26を洗浄後、開閉弁49,51を開いて排出管47を介して洗浄済液(洗浄済水)を排出してもよい。
【0055】
この発明のろ過装置31の実施例によれば、毛羽立った花糸を有するろ材26が懸濁物質を効率よく捕捉するので、被処理水を効率よくろ過することができる。
また、ろ材26が毛虫状で洗浄し易いので、大きな洗浄力(攪拌力)を必要とせず、洗浄用の動力を少動力とすることが可能になる。
また、繊度が小さい(細い)ので、懸濁物質の補足能力が高くなる。
また、ろ材26でろ材層37を形成する際、花糸部分が適度に圧縮されて充填されるため、ろ材26間の空隙を均一に保つことができ、効率よくろ過することができる。
【0056】
図9はこの発明のろ過装置の他の実施例を示す概略構成図であり、図1〜図8と同一部分または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0057】
図9において、31Aは上向流方式のろ過装置を示し、ろ過槽33と、このろ過槽33内に被処理液(被処理水)を供給する被処理液供給管39と、ろ過槽33内に洗浄攪拌用のエアーを供給するエアー供給管43と、ろ過槽33から処理液(処理水)や洗浄済液(洗浄済水)を排出する配管系統とで構成されている。
【0058】
上記した濾過槽33内には、下端から所定の高さにろ材が流出するのを防止するろ材流出防止下側スクリーン35Dが設置されるとともに、上端から所定の低さにろ材が流出するのを防止するろ材流出防止上側スクリーン35Uが設置されている。
そして、ろ材流出防止上側スクリーン35Uの下側に、ろ材によって所定の厚さのろ材層37Aが形成されている。
【0059】
上記した被処理液供給管39は、ろ材流出防止下側スクリーン35Dの下側へ被処理水を供給するように、ろ過槽33に接続されている。
【0060】
上記したエアー供給管43は、供給するエアーでろ材層37Aを構成するろ材を攪拌して洗浄できるように、ろ材流出防止下側スクリーン35Dの上側部分に対応するろ過槽33に接続されている。
【0061】
上記したろ過槽33のろ材流出防止下側スクリーン35Dよりも下側部分には、被処理液(被処理水)などを排出する排出管47が接続されている。
【0062】
上記したろ過槽33のろ材流出防止上側スクリーン35Uよりも上側部分には、処理液(処理水)を排出する処理液排出管53が接続されている。
【0063】
なお、このろ過装置31Aに使用するろ材は、段落〔0040〕に記載した比重が0.91のろ材26Aを使用する。
【0064】
次に、ろ過装置31Aにおけるろ過の一例について説明する。
【0065】
まず、開閉弁45,49を閉め、開閉弁41,57を開けた状態にする。
そして、被処理液供給管39からろ過槽33内に被処理水を供給することにより、被処理水はろ材層37A内を上向してろ過され、処理液排出管53、廃棄処理水管55、排出管47を介して排出される。
【0066】
このようにしてろ過を開始し、排出管47から得られる処理水が所定の基準に達したならば、開閉弁57を閉じることにより、処理液排出管53を介して処理水を所望の場所へ供給する。
また、処理水の所望の場所への供給を中止する場合は、開閉弁57を開け、被処理水を排出させる。
【0067】
そして、例えば、ろ材層37Aで捕捉した懸濁物質による目詰まりにより、圧力損失が上昇した場合、または、累積稼働時間が所定時間に達したならば、または、処理水が所定の基準に達しなくなったならば、開閉弁45を開けてエアーを供給するとともに、開閉弁57を開ける。
このように、ろ過槽33内に被処理水およびエアーを供給すると、エアーによってろ材26Aが攪拌されることにより、ろ材26Aが洗浄され、ろ材26Aが捕捉している懸濁物質が剥離、上昇し、処理液排出管53、廃棄処理水管55、排出管47を介して排出される。
【0068】
このろ材26Aの洗浄を所定時間行った後、開閉弁57を閉じることにより、上述したろ過を初期状態から開始することができる。
なお、ろ材26Aを洗浄する場合、ろ過槽33内へ供給する洗浄液(洗浄水)は、所定の基準に達して洗浄水、例えば、処理液(処理水)を供給してもよい。
また、被処理水あるいは処理水の供給を止めてエアーを供給し、ろ材26Aを洗浄後、開閉弁49を開いて排出管47を介して洗浄済液(洗浄済水)を排出してもよい。
【0069】
この発明のろ過装置31Aによれば、先に説明した実施例のろ過装置31と同様な効果を得ることができる。
また、このろ材26Aは、図10に示すような従来の密閉式の上向流方式のろ過装置31Bにも適用可能で、同様のろ過性能を発揮するとともに、撹拌翼59によるろ材洗浄でも同様の洗浄効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0070】
11 高融点のポリエステル繊維(樹脂短繊維)
13 芯鞘構造樹脂短繊維
14 高融点のポリエステル繊維
15 低融点のポリエステル(第2樹脂)
17 撚糸
19 モール糸
20 芯糸
21 押さえ糸
22 花糸
22a 花糸
24 モール糸
24A モール糸
26 ろ材
26A ろ材
31 ろ過装置
31A ろ過装置
31B ろ過装置
33 ろ過槽
35 ろ材流出防止スクリーン
35D ろ材流出防止下側スクリーン
35U ろ材流出防止上側スクリーン
37 ろ材層
37A ろ材層
39 被処理液供給管
41 開閉弁
43 エアー供給管
45 開閉弁
47 排出管
49 開閉弁
51 開閉弁
53 処理液排出管
55 廃棄処理液管
57 開閉弁
59 攪拌翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸との間に花糸を挟み込んだろ材であって、
前記花糸を、毛羽立たせた溶着性を有する糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸との少なくとも一方に溶着した、
ことを特徴とするろ材。
【請求項2】
請求項1に記載のろ材において、
前記花糸を、複数の短繊維に撚りをかけて毛羽立たせた溶着性を有する糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸との少なくとも一方に溶着した、
ことを特徴とするろ材。
【請求項3】
ろ過槽内に設けたろ材層で被処理液をろ過するろ過装置において、
前記ろ材層を形成するろ材を、請求項1または請求項2に記載のろ材にした、
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項4】
第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1樹脂を芯にし、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、
前記撚糸を芯糸および押さえ糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、
前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、
前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、
前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有する、
ことを特徴とするろ材の製造方法。
【請求項5】
第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にし、前記第2溶融温度以上の第3溶融温度の第3樹脂を芯にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、
前記撚糸を芯糸および押さえ糸とし、前記芯糸と前記押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、
前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、
前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、
前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有する、
ことを特徴とするろ材の製造方法。
【請求項6】
第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1樹脂を芯にし、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、
少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、
前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、
前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、
前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有する、
ことを特徴とするろ材の製造方法。
【請求項7】
第1溶融温度の第1樹脂からなる樹脂短繊維と、前記第1溶融温度よりも低い第2溶融温度の第2樹脂を鞘にし、前記第2溶融温度以上の第3溶融温度の第3樹脂を芯にした芯鞘構造樹脂短繊維とを混紡し、方向を揃えて撚りをかけて撚糸とする撚糸製造工程と、
少なくとも一方が溶着性を有する芯糸と押さえ糸とを撚り合わせて前記芯糸と前記押さえ糸の間に前記撚糸を花糸として挟み込んでモール糸を製造するモール糸製造工程と、
前記花糸を所定の長さに切断する花糸切断工程と、
前記モール糸を前記第2溶融温度に加熱して前記芯糸、前記押さえ糸および前記花糸を溶着する加熱溶着工程と、
前記モール糸を所定の長さに切断するモール糸切断工程と、を有する、
ことを特徴とするろ材の製造方法。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のろ材の製造方法において、
前記第1樹脂は、前記第2溶融温度に加熱されると、表面が軟らかくなる、
ことを特徴とするろ材の製造方法。
【請求項9】
請求項4から請求項8のいずれか1項に記載のろ材の製造方法において、
前記第1樹脂と前記第2樹脂とは、同じ系統の樹脂である、
ことを特徴とするろ材の製造方法。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれか1項に記載のろ材の製造方法において、
前記撚糸を複数本束ねて前記花糸とした、
ことを特徴とするろ材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−120948(P2012−120948A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271779(P2010−271779)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【出願人】(510178275)永井撚糸合資会社 (2)
【Fターム(参考)】