説明

ろ材型遠心脱水機

【課題】 ボールの終端部の直径を拡大し、ケーキを充満させて質量を高め、遠心効果により強圧搾を可能にするろ材型遠心脱水機を提供する。
【解決手段】 外筒ボール2の終端部に直径を拡大した圧搾室5を配設し、スクリュー軸3の後端部に設けたインペラ隔壁板12を圧搾室5に延設し、圧搾室5を表圧搾室13と裏圧搾室14に分割すると共に、表圧搾室13側のインペラ隔壁板12に遅れ羽根の表インペラ15と、裏圧搾室14側のインペラ隔壁板12に迎え羽根の裏インペラ16を止着したもので、表圧搾室13の表インペラ15の遠心力及び遅れ羽根の搬送作用により、圧搾圧力を高めて強圧搾を作用させ、ろ液を分離しながら圧搾ケーキを外周に向かって移動させ、裏圧搾室14の迎え羽根の裏インペラ16で圧搾ケーキを軸面方向に移動させて、低含水率の圧搾ケーキを排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業排水汚泥、下水汚泥などの原液を濃縮脱水する高速回転のデカンター型遠心脱水機において、デカンター型遠心脱水機の終端部にろ材を張設して直径を拡大した圧搾部を形成し、脱水効率及び低含水率を可能とするろ材型遠心脱水機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデカンター型遠心分離機は、高速回転の外筒ボールに、相対速度差で回転する内筒スクリューを内設し、外筒ボールに供給された原液を遠心力により、固形物と分離液に分離させて、原液を濃縮脱水している。
特許文献1に開示しているように、デカンター型脱水機は外筒ボールと内筒スクリューの回転数について変速機を介して変化させており、ろ過力と搬送速度を各々操作できる利点があり、大量処理を可能とするが低含水率のケーキは得られない。
特許文献2に開示しているように、下水汚泥等の有機系の脱水において、無機凝集剤と高分子凝集剤が供給された汚泥を濃縮し、塩化鉄等の無機凝集剤を濃縮終了時点から圧搾序盤の辺りで機内添加する技術が提案されている。
従来のデカンター型遠心脱水機でろ材を用いるタイプは、特許文献3に記載しているように、ソリッドボールのビーチゾーンの後段に直胴のろ材ボールを設けるケースが多い。無機系のケーキを洗浄、或いは、すすぐ用途に実用化されている。
従来技術の遠心脱水機ではボール内面に遠心力でケーキが押し付けられて円筒状に形成され、軸芯とケーキの間に円環状の空間が形成される。軸面から高分子凝集剤や無機凝集剤等の薬剤を均等に散布し易い構造となっており、粒子がしっかりしたケーキの洗浄装置として、酸・アルカリ洗浄、不純物除去純粋洗浄等で実用化されている。
【0003】
特許文献4に開示しているように、直胴型脱水機では、終盤の強圧搾の手段としてビーチゾーンを設けずにボール直胴のまま最終端部で軸面方向にケーキを移動させ、通常のスクリュープレスのプレッサーと同様に排出口を絞ってケーキを充満させ高圧搾を作用させている。
また、特許文献5に中粘稠度懸濁液のクリーニング装置として、環状のスクリーニング室に高速で回転する円板の第1面と第2面に半径方向に延びる羽根を止着して、スクリーニング室の軸芯部に懸濁液の入口と外環部に廃棄物出口を開口した装置が開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−75855号公報 (実用新案登録請求の範囲、第1図)
【特許文献2】特開2010−264417号公報 (段落番号0035及び段落番号0048、図1B及び図2B)
【特許文献3】特許第2718418号公報 (請求項2、図4)
【特許文献4】特許第3997059号公報 (段落番号0016、図1及び図2)
【特許文献5】特公平3−43394号公報 (特許請求の範囲、Fig1乃至Fig3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の高圧搾を可能とするスクリュープレスは、スクリューの回転がろ過力と搬送速度の両方に影響するので、プレッサーの調整機能があるがろ過力と搬送速度を各々独立させて設定することはできない。
特許文献1に開示してあるデカンター型脱水機は、テーパーによる傾斜で水分を後送りにする機能はあるが、圧搾ゾーンのビーチゾーンは直径が小さくなり、圧搾力を増加させていく構造ではなく、遠心効果が落ちる。近年ビーチゾーンの傾斜角を大きくして、ケーキ堆積量を増やすタイプのものが提案されているが、やはり遠心効果が減少する。
特許文献2に記載の遠心分離装置は、無機凝集剤添加で汚泥のフロック強度が大幅に強化されるが構造的には圧搾力が弱いので、含水率の低下度を確保するための遠心効果は期待できない。
特許文献3に記載のように、ろ材を使った遠心脱水機は数多く開示されているが、このような構成の遠心脱水機に下水汚泥等の有機系のケーキを用いて、塩化鉄等の機内薬剤添加を実施している先行技術は見当らない。
【0006】
特許文献4に記載の直胴型脱水機は、低含水のケーキでは搬送効率が悪化して、排出不能の恐れがある。
特許文献5に記載の中粘稠度懸濁液のスクリーニング装置は、木材パルプ原料から結束繊維、ごみ等の除去は容易であるが、産業排水汚泥、下水汚泥などの粘稠汚泥を濃縮脱水しても強圧搾は不可能であり、低含水率のケーキを得ることは出来ない。
本願発明は、従来の技術を応用し、デカンター型遠心脱水機の終端部のボールにろ材を配して直径を拡大し、ケーキを充満させて質量を高め、遠心効果により強圧搾を可能にするろ材型遠心脱水機に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のろ材型遠心脱水機の要旨は、高速回転の外筒ボールに、相対速度差で回転する内筒スクリューを内設し、スクリュー軸の原液供給口から外筒ボールに供給された原液を遠心力により固形物と濃縮液に分離するデカンター型遠心分離機において、外筒ボールの終端部に直径を拡大した円環状の圧搾室を形成し、圧搾室に延設したスクリュー軸の後端部に平面視がインペラ状のインペラ隔壁板を連結して、圧搾室を表圧搾室と裏圧搾室に分割すると共に、表圧搾室側のインペラ隔壁板に遅れ羽根の表インペラと、裏圧搾室側のインペラ隔壁板に迎え羽根の裏インペラを止着して、圧搾室の前面にろ過板を配設し、後面の排出板の中心部近傍に排出孔を開口したもので、外筒ボールに同調して高速回転する圧搾室と、相対速度差で回転する内筒スクリューに同調してインペラ隔壁板が回転し、表圧搾室の表インペラの遠心力及び遅れ羽根の搬送作用により、圧搾圧力を高めて強圧搾を作用させ、ろ液を分離しながら圧搾ケーキを外周に向かって移動させ、裏圧搾室の迎え羽根の裏インペラが圧搾ケーキを軸面方向に移動させて、高圧搾ケーキを排出することができる。
【0008】
ろ材型遠心脱水機は、高速回転する外筒ボールを円錐状の濃縮ボールとろ材を張設した円筒状のろ材ボールで構成し、相対速度差で回転する内筒スクリューを円錐スクリューとピッチを漸減させた円筒スクリューで構成して、濃縮ゾーンと脱水ゾーンを形成し、脱水ゾーンの終端部に圧搾ゾーンの圧搾室を連設したもので、脱水ゾーンのろ材ボールで含水率が低下して体積が減少し、ケーキ厚みが薄くなる脱水ケーキを円筒スクリューのピッチを漸減し、遠心力と圧搾力を維持しながらすき返し作用を発生させるので、脱水効率が良くなる。大容量の原液を濃縮脱水して強圧搾脱水できる。
ろ材型遠心脱水機は脱水ゾーンを省略し、外筒ボールと内筒スクリューを円錐状に構成して濃縮ゾーンを形成し、外筒ボールの終端部に圧搾ゾーンの圧搾室を配設しても良いもので、濃縮ゾーンから直接強制圧搾ゾーンに濃縮汚泥を投入するので、脱水性が良好で容易にケーキ化する汚泥に適する。
また、ろ材型遠心脱水機は濃縮ゾーンを省略し、外筒ボールとピッチを漸減させた内筒スクリューを円筒状に構成して脱水ゾーンを形成し、外筒ボールの終端部に圧搾ゾーンの圧搾室を配設しても良いもので、遠心脱水機の動力は、供給汚泥を脱水機の回転数まで加速するためのエネルギーが最も大きな比率を占めるので、機外でスクリュー濃縮機やベルト濃縮機等の低動力濃縮機を用いて水分量を減少させれば、総合的に動力を大幅に減少できる。
【0009】
外筒ボールの終端部に形成する圧搾ゾーンの圧搾室を更に拡大して、裏圧搾室に配設する排出板の外周部に金属ろ材を張設し、中心部近傍に排出孔を開口するもので、直径の拡大寸法を大きく設定した場合、或いは、装置が大型になった場合は、裏圧搾室にもろ材を配するスペースが確保でき裏圧搾室の強圧搾が可能となる。
ろ材型遠心脱水機を構成するデカンター型遠心脱水機に原液と凝集剤の供給方法が、スクリュー軸に原液供給管と、高分子凝集剤供給管、及び、無機凝集剤供給管を内設し、スクリュー軸の中間部に原液供給口と高分子凝集剤添加口を開口し、スクリュー軸の終端部に無機凝集剤添加口を開口したもので、濃縮汚泥は軸面まで充満せずにバームクーヘン状に形性されるので、機内の薬剤添加が容易となる。本願発明のろ材型遠心脱水機は、外筒ボールの薬剤の供給位置の外径が小さくて遠心効果が少ないので凝集フロックの破壊の心配がなく凝集効率が良い、
圧搾室を構成する表圧搾室のろ過板にろ材洗浄管を対設させれば、ろ過面を洗浄して再生させることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明のろ材型遠心脱水機は、デカンター型遠心脱水機の終端部の外筒ボールにろ材を配して直径を拡大し、ここにケーキを充満させて質量を高め、遠心効果により強圧搾を可能としたもので、塩化鉄等の無機凝集剤の機内添加による強固な凝集フロックを限界まで低動力で絞りきることが出来る。この推進力は表裏ケーキ堆積深さの差による遠心力差、及び迎え羽根の搬送作用に基づき発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係るろ材型遠心脱水機の縦断面図である。
【図2】同じく、ろ材型遠心脱水機の圧搾室の縦断面図である。
【図3】同じく、圧搾室のインペラ隔壁板に止着する表インペラの平面図である。
【図4】同じく、圧搾室のインペラ隔壁板に止着する裏インペラの平面図である。
【図5】同じく、他の実施例の圧搾室の縦断面図である。
【図6】同じく、他の実施例のろ材型遠心脱水機の縦断面図である。
【図7】同じく、他の実施例のろ材型遠心脱水機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係るろ材型遠心脱水機を図面に基づき詳述すると、図1はろ材型遠心脱水機の縦断面図であって、ろ材型遠心脱水機1の外筒ボール2は円錐状の濃縮ボール2aと直胴のろ材ボール2bで構成されている。ろ材ボール2bは直胴部に金属ろ材を張設してあり、濃縮ボール2aの後段に連結している。外筒ボール2の内部に配設した円筒状のスクリュー軸3に内筒スクリュー4を巻き掛けてあり、内筒スクリュー4は濃縮ボール2aの内周面に近接させて等ピッチで巻き掛けた円錐スクリュー4aと、直胴のろ材ボール2bにピッチを漸減させて巻き掛けた円筒スクリュー4bで構成している。直胴のろ材ボール2bに近接させた円筒スクリュー4bの外周端に弾性体のスクレパー48を止着して、ろ材ボール2bのろ材面に摺接させている。外筒ボール2と内部に配設した内筒スクリュー4で円錐部の濃縮ゾーンAと直胴部の脱水ゾーンBを形成したデカンター型遠心脱水機を構成している。
脱水ゾーンBのろ材ボール2bで含水率を低下させ、体積が減少してケーキ厚みが薄くなった脱水ケーキを、ピッチを漸減した円筒スクリュー4bで遠心力と圧搾力を維持しながらすき返し作用を発生させて、脱水効率を良くする。大容量の原液を濃縮脱水して強圧搾脱水できる。
デカンター型遠心脱水機を構成する直胴のろ材ボール2bの終端部には、直径を拡大してろ材遠心圧搾を行う円環状の圧搾室5を形成している。
【0013】
図2はろ材型遠心脱水機の圧搾室の縦断面図であって、脱水ゾーンBの直胴のろ材ボール2bに直径を拡大してろ材遠心圧搾を行う圧搾室5を配設している。圧搾室5はろ材ボール2bの終端部に連結した円板状の金属ろ材のろ過板6と、ろ材ボール2bと同径の後端部に設けた円筒軸7に連結した円板状の排出板8に、環状の圧搾室外環9を固着している。排出板8の内周部の円周面に摺動自在なダム板10で開口度を調整する脱水ケーキの排出孔11・・を複数開口している。スクリュー軸3の後端部に平面視がインペラ状のインペラ隔壁板12を連結し、圧搾室5の内部に延設させて圧搾室5を表圧搾室13と裏圧搾室14に分割している。
【0014】
図3及び図4は、圧搾室のインペラ隔壁板に止着する表インペラと裏インペラの平面図であって、圧搾室5を分割するインペラ隔壁板12に平面視が同形の遅れ羽根を形成する表インペラ15と、迎え羽根を形成する裏インペラ16を止着して、それぞれ表圧搾室13と裏圧搾室14に配設している。インペラ隔壁板12に止着した表インペラ15と裏インペラ16の羽根外周部の間隙を表圧搾室13から裏圧搾室14へのケーキ通路17としている。デカンター型遠心脱水機を形成する濃縮ゾーンA及び脱水ゾーンBの後に、圧搾ゾーンCの圧搾室5を配設してろ材型遠心脱水機1を構成している。
【0015】
図5は、他の実施例の圧搾室の縦断面図であって、デカンター型遠心脱水機を形成するろ材ボール2b終端部に直径を更に拡大した圧搾室5aが配設してあり、差速高速回転する圧搾室5の遠心力を高める。圧搾室5aは直径を拡大した円板状の金属ろ材のろ過板6aと、直径を拡大した円板状の排出板8aに内周部の円周面に脱水ケーキのダム板11aで開口度を調整する排出孔10a・・を複数開口して、排出板8aの拡大した外周面に金属ろ材8bを張設し、環状の圧搾室外環9aを固着している。スクリュー軸3の終端部に平面視がインペラ状のインペラ隔壁板12aを連結し、圧搾室5aに延設させて圧搾室5aを表圧搾室13aと裏圧搾室14aに分割している。
【0016】
表圧搾室13a側と裏圧搾室14a側のインペラ隔壁板12aに、図3及び図4に示すような、羽根径を拡大した遅れ羽根の表インペラ15aと迎え羽根の裏インペラ16aを止着している。直径の拡大寸法を大きく設定した場合、或いは、装置が大型になった場合には、裏圧搾室14aにろ材を配するスペースが確保でき、裏圧搾室14aの強圧搾も可能となる。
【0017】
図1に示すように、外筒ボール2は円錐状の濃縮ボール2aの拡大端部にフランジ18が嵌着してあり、濃縮ボール2aとフランジ18の間に開口度を調設する調整板19を設けた濃縮液排出口20が開口している。フランジ18のボス部が架台21に設けた軸受22に回動自在に支架されており、フランジ18の内部に嵌着した軸受23に濃縮液排出側のスクリュー軸3の先端部を軸支している。圧搾室5に連結した円筒軸7のケーキ排出側の後端側にフランジ24を嵌着して、フランジ24のボス部を架台25に設けた軸受26に回動自在に支架してあり、フランジ24の先端部にプーリー27を嵌着している。スクリュー軸3はフランジ24の内部に設けた軸受28に軸支して減速機29に連結している。図示を省略する駆動機でプーリー27と減速機29を作動させて、外筒ボール2及び圧搾室5,5aと内筒スクリュー4を高速で差速回転自在としている。
【0018】
図1に示すように、濃縮液排出側のスクリュー軸3に原液供給管30が延設してあり、濃縮ゾーンAを形成する円錐状の濃縮ボール2aに内設するスクリュー軸3に原液供給口31を開口して、円錐スクリュー4aの中間部に原液を供給する。原液供給管30の内部に高分子凝集剤供給管32が内設してあり、濃縮ゾーンAの終端部の濃縮ボール2aの縮小部に内設するスクリュー軸3に高分子凝集剤添加口33を開口している。濃縮ゾーンAの終端部の濃縮液を分離した濃縮汚泥に高分子凝集剤を供給し、円錐スクリュー4aで撹拌混合して凝集フロックを形成させる。原液供給管30に内設した高分子凝集剤供給管32の内部に無機凝集剤供給管34が配設してあり、脱水ゾーンBを形成する円筒状のろ材ボール2bの中間部のスクリュー軸3に無機凝集剤添加口35を開口している。円筒スクリュー4bの中間部に、例えば無機凝集剤である塩化鉄を濃縮汚泥に供給して混練し、強固な凝集フロックを形成して、円筒スクリュー4bの先端部に止着したスクレパー48でろ材ボール2bのろ材面をクリーニングしながらろ液を分離して脱水汚泥とする。
【0019】
高速回転の外筒ボール2と相対差速回転するスクリュー軸3から供給された原液は、遠心力により濃縮液を分離する。濃縮液を分離した濃縮汚泥はスクリュー軸3の軸面まで充満せずに外筒ボール2の内周面にバームクーヘン状に形成され、機内の薬剤添加が容易となる。外筒ボール2のろ材ボール2bと、圧搾室5,5aに配設した表圧搾室13,13aのろ過板6,6aにろ材洗浄管49が対設してあり金属ろ材を洗浄再生する。なお、高分子凝集剤による原液の凝集は機外で凝集混和槽を用いてもよく、原液供給管30にライン注入しても良い。本願発明では外筒ボール2の薬剤の供給位置の外径が小さく、遠心効果が少ないので凝集フロックの破壊の心配が少なく効率が良い、
【0020】
上記のように構成したろ材型遠心脱水機1は、デカンター型遠心脱水機を形成する濃縮ゾーンAで濃縮した濃縮汚泥を、脱水ゾーンBのろ材ボール2bのろ材面からろ液を分離して質量を高める。脱水ゾーンBを経たケーキを搬送堆積させてスクリュー軸3に巻き掛けた円筒スクリュー4bで脱水ケーキを圧搾ゾーンCの圧搾室5の表圧搾室13の中心部に供給する。ろ材ボール2bに連結した圧搾室5とスクリュー軸3に連結したインペラ隔壁板12の高速差速回転により、表圧搾室13では表インペラ15の遠心力及び遅れ羽根の搬送作用によってケーキを軸面から外周に向かって移動させる。その際、脱水ケーキにせん断作用を及ぼしながら圧搾し、ろ過板6からろ液を分離し、遠心効果による圧搾圧力を高めて強圧搾を作用させる。直径を拡大した圧搾室5の外周端に到達したケーキは、圧搾室外環9内部の表インペラ15a,15a間のケーキ通路17・・・から裏圧搾室14に移動し、内筒スクリュー4bに同調して高速回転する迎え羽根の裏インペラ16で軸面方向に移動させる。排出板8の排出孔11・・・から水分を均一化した圧搾ケーキを排出する。
この時の推進力は表裏ケーキ堆積深さの差による遠心力差、及び迎え羽根の搬送作用に基づくものである。脱水のための圧搾力は遠心効果により発生するので、搬送速度(スクリュー差速)とは別の回転数で制御できる。
【0021】
図6は他の実施例のろ材型遠心脱水機の縦断面図であって、図1に示すろ材型遠心脱水機から脱水ゾーンBを除いた構造であり、共通する差速回転支持機構の符号説明は省略する。ろ材型遠心脱水機36は、円錐状の外筒ボール37の内部に配設した円筒状のスクリュー軸38に外筒ボール37の内周面に近接させて等ピッチで巻き掛けた円錐状の内筒スクリュー39で濃縮ゾーンAを形成している。
円錐状の外筒ボール37の終端部に、図2に示す、直径を拡大してろ材遠心圧搾を行う圧搾ゾーンCの圧搾室5を連結している。圧搾室5に配設した表圧搾室13のろ過板6にろ材洗浄管40が対設してあり、ろ過面を洗浄して再生させる。
【0022】
図1に示すろ材型遠心脱水機と同様に、外筒ボール37とフランジ18の間に開口度を調設する調整板19を設けた濃縮液排出口20が開口してあり、圧搾室5の排出板8の内周部の円周面に摺動自在なダム板10で開口度を調整する脱水ケーキの排出孔11・・を複数開口している。外筒ボール37の終端部に連結する圧搾ゾーンCは、図5に示す、直径を拡大してろ材遠心圧搾を行う円環状の圧搾室5aを連結しても良い。
【0023】
図6に示すように、濃縮液排出側のスクリュー軸38に原液供給管30が延設してあり、スクリュー軸38に原液供給口41を開口して、濃縮ゾーンAを形成する円錐状の外筒ボール37の中間部に原液を供給する。原液供給管30の内部に高分子凝集剤供給管32が内設してあり、スクリュー軸38に開口する原液供給口41の近傍に高分子凝集剤添加口42を開口している。外筒ボール37の中間部でバームクーヘン状に形性された原液に高分子凝集剤を供給して、内筒スクリュー39で撹拌混合して凝集フロックを形成させ、濃縮液を濃縮液排出口20から排出する。
原液供給管30に内設した高分子凝集剤供給管32の内部に無機凝集剤供給管34が配設してあり、濃縮ゾーンAを形成する円錐状の外筒ボール37の縮小した終端部(ビーチゾーン)のスクリュー軸3に無機凝集剤添加口43を開口してあり、バームクーヘン状に形性された濃縮汚泥に無機凝集剤を添加して強固なフロックを形成して、圧搾室5に供給する。濃縮ゾーンAから直接強制圧搾ゾーンCの圧搾室5へ濃縮汚泥を投入するもので、脱水性の良好な濃縮ゾーンAで容易にケーキ化する汚泥に適する。
【0024】
図7は他の実施例のろ材型遠心脱水機の縦断面図であって、図1に示すろ材型遠心脱水機から濃縮ゾーンAを除いた構造であり、機外で濃縮した汚泥、或いは、脱水した含水率の高いケーキを投入するもので、共通する差速回転支持機構の符号説明は省略する。
ろ材型遠心脱水機44は、直胴の金属ろ材を張設した外筒ボール45の内部に、円筒状のスクリュー軸46にピッチを漸減させた円筒状の内筒スクリュー47を巻き掛けている。外筒ボール45に近接させた内筒スクリュー47に弾性体のスクレパー48を止着して、外筒ボール45のろ材面に摺接させている。金属ろ材を張設した外筒ボール45と内部に配設した内筒スクリュー47で直胴の脱水ゾーンBを形成している。直胴の金属ろ材を張設した外筒ボール45の終端に、図2に示す、直径を拡大してろ材遠心圧搾を行う圧搾ゾーンCの圧搾室5を連結している。外筒ボール45のろ過面と、圧搾室5のろ過板6にろ材洗浄管49が対設してあり、ろ過面を洗浄して再生させる。外筒ボール45の終端に連結する圧搾ゾーンCは、図5に示す、直径を拡大してろ材遠心圧搾を行う円環状の圧搾室5aを連結しても良い。
【0025】
図7に示すように、スクリュー軸46の始端側に原液供給管30が延設してあり、スクリュー軸46に原液供給口50を開口して、脱水ゾーンBを形成する外筒ボール45の始端部に原液を供給する。原液供給管30の内部に高分子凝集剤供給管32が内設してあり、スクリュー軸46に開口する原液供給口50の近傍に高分子凝集剤添加口51を開口している。外筒ボール45の始端部に供給して高速差速回転によりバームクーヘン状に形成された原液に高分子凝集剤を添加して、円筒スクリュー47で撹拌混合して凝集フロックを形成させて、直胴の金属ろ材を張設した外筒ボール45のろ過面からろ液を分離する。高分子凝集剤は脱水ケーキの再凝集が必要な場合に添加するが、機外添加でもよい。
原液供給管30に内設した高分子凝集剤供給管32の内部に無機凝集剤供給管34が配設してあり、脱水ゾーンBを形成する円筒状の外筒ボール45の後半部のスクリュー軸3に無機凝集剤添加口52を開口している。ろ液を外筒ボール45から分離しながらピッチを漸減させる内筒スクリュー47で濃縮汚泥を脱水し、バームクーヘン状の脱水ケーキの空間部に無機凝集剤を添加して強固なフロックを形成する。薬液の供給ラインを利用して洗浄水を供給すればケーキ洗浄が可能であり、運転終了時には外筒ボール45内のケーキを排出し、薬液の供給ラインを利用して洗浄水を供給すればろ材内面の洗浄も可能でいる。
【0026】
脱水ゾーンBを経た脱水ケーキを圧搾ゾーンCの圧搾室5の表圧搾室13に供給して、表インペラ15の遠心力及び遅れ羽根の搬送作用によりケーキを圧搾して外周に向かって移動させ、遠心効果による圧搾圧力を高めて強圧搾を作用させる。裏圧搾室14では、迎え羽根の裏インペラ16で軸面方向に移動させて、排出板8に設けたダム板10で開口度を調整する排出孔11・・・から圧搾ケーキを排出する。遠心脱水機の動力の内、供給汚泥を脱水機の回転数まで加速するためのエネルギーが最も大きな比率を占めるので、機外でスクリュー濃縮機やベルト濃縮機等の低動力濃縮機を用いて水分量を減少させれば、総合的に動力を大幅に減少できる。
【実施例】
【0027】
遠心効果はG=γN/895で表わされ、従来のデカンター型遠心脱水機でも終端部のボール直径を拡大すれば、遠心力により大きな圧搾力を受けることができる。従来のデカンター型遠心脱水機は水分の逃げ道は後退路しかなく、効率良く遠心分離ろ液を排出できないので大きな水分低下の効果は得られない。ろ材を配しない構造では遠心分離の作用で分離されるろ液の移動方向(軸面向き)とケーキの投入方向(円周向き)が相反する向きとなり、スムーズなろ液移動を阻害して効率の良い含水率の低下は期待できない。脱水ゾーンBに円筒金属ろ材を配設すれば、ろ液はケーキの移動路に沿ったろ材から効率良く排出される。
外筒ボール2,37,45の終端部に直径を拡大した円環状の圧搾室5,5aを形成して、圧搾室5,5aの前面にろ過板6,6aを配設すれば、大きな圧搾力が発生し、ケーキは大幅な含水率低下が達成される。
【0028】
外筒ボール2,37,45の終端部に形成する円環状の圧搾室5,5aは、直径の拡大寸法を大きく設定した場合、或いは、装置が大型になった場合は、裏圧搾室14,14aにも金属ろ材8bを配するスペースが確保でき裏圧搾室14,14aでの強圧搾も可能となる。デカンター型圧搾脱水機の濃縮ゾーンA、脱水ゾーンBを小径として、終端部に直径を拡大した円環状の圧搾室5,5aを形成すれば、濃縮ゾーンA、脱水ゾーンBでは遠心効果が小さいので、凝集フロックの破壊の心配が少なくなり、機内添加では撹拌が不足するケースもある。脱水が少し進行した時点(下水汚泥含水率80〜90%)で、無機凝集剤として例えば塩化鉄を添加すれば、ろ液とともに流出する薬剤の無効量が少なく効率が良くなる。
デカンター型遠心脱水機の終端部に直径を拡大した圧搾室5,5aを形成すれば、脱水効率が高くなり、従来のデカンター型遠心脱水機の遠心効果が2000〜2500G、特に低動力型のデカンター型遠心脱水機でも1500Gであった遠心効果が、直径を拡大した圧搾室を配設すれば、100〜300Gまで低下でき、遠心効果1/10、回転数も従来型の1/3まで下げられる。脱水ゾーンに円筒金属ろ材の外筒とすれば、すき返し作用が発生して、ろ液の分離効率が良くなる。
【0029】
上記の実験結果により、動力は従来型の1/3程度となり、起動・停止時のロスタイムを短縮でき、ろ材の摩耗は従来よりも軽微で、軸受、強度、バランス、騒音などの対応が大幅に軽減できることが分かった。
この発明は、直径を拡大した円環状の圧搾室5,5aに濃縮脱水したケーキを充満させて質量を高め、遠心効果により強圧搾を可能にするろ材型遠心脱水機1,36,44とすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明のろ材型遠心脱水機は、デカンター型遠心脱水機の外筒ボールの終端部に直径を拡大した圧搾室を配設し、圧搾室に延設したスクリュー軸の後端部にインペラ隔壁板を連結して表圧搾室と裏圧搾室に分割して、表圧搾室側のインペラ隔壁板に遅れ羽根の表インペラと、裏圧搾室側のインペラ隔壁板に迎え羽根の裏インペラを止着したもので、表圧搾室の表インペラの遠心力及び遅れ羽根の搬送作用により、圧搾圧力を高めて強圧搾を作用させ、ろ液を分離し、裏圧搾室の迎え羽根の裏インペラで高圧搾ケーキを排出できる。
従って、下水汚泥や食品排水汚泥、し尿汚泥等の原液を濃縮脱水し、脱水したケーキを円環状の圧搾室に充満させて質量を高め、遠心効果により強圧搾を可能にするろ材型遠心脱水機となるものである。
【符号の説明】
【0031】
1、36、44 ろ材型遠心脱水機
2、37、45 外筒ボール
2a 濃縮ボール
2b ろ材ボール
3、38、46 スクリュー軸
4、39、47 内筒スクリュー
4a 円錐スクリュー
4b 円筒スクリュー
5、5a 圧搾室
6、6a ろ過板
8、8a 排出板
8b 金属ろ材
11、11a 排出孔
12、12a インペラ隔壁板
13、13a 表圧搾室
14、14a 裏圧搾室
15、15a 表インペラ
16、16a 裏インペラ
30 原液供給管
31、41、50 原液供給口
32 高分子凝集剤供給管
34 無機凝集剤供給管
33、42、51 高分子凝集剤添加口
35,43、52 無機凝集剤添加口
40、49 ろ材洗浄管
A 濃縮ゾーン
B 脱水ゾーン
C 圧搾ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速回転の外筒ボール(2、37、45)に、相対速度差で回転する内筒スクリュー(4、39、47)を内設し、スクリュー軸(3、38、46)の原液供給口(31、41、50)から外筒ボール(2、37、45)に供給された原液を遠心力により、固形物と濃縮液に分離するデカンター型遠心分離機において、外筒ボール(2、37、45)の終端部に直径を拡大した円環状の圧搾室(5、5a)を形成し、圧搾室(5、5a)に延設したスクリュー軸(3、38、46)の後端部にインペラ状のインペラ隔壁板(12、12a)を連結して、圧搾室(5、5a)を表圧搾室(13、13a)と裏圧搾室(14、14a)に分割すると共に、表圧搾室(13、13a)側のインペラ隔壁板(12、12a)に遅れ羽根の表インペラ(15、15a)と、裏圧搾室(14、14a)側のインペラ隔壁板(12、12a)に迎え羽根の裏インペラ(16、16a)を止着して、圧搾室(5、5a)の前面にろ過板(6、6a)を配設し、後面の排出板(8、8a)に排出孔(11、11a)を開口したことを特徴とするろ材型遠心脱水機。
【請求項2】
上記外筒ボール(2)を円錐状の濃縮ボール(2a)とろ材を張設した円筒状のろ材ボール(2b)で構成し、外筒ボール(2)に内設する内筒スクリュー(4)を円錐スクリュー(4a)とピッチを漸減させた円筒スクリュー(4b)で構成して、濃縮ゾーン(A)と脱水ゾーン(B)を形成し、脱水ゾーン(B)の終端部に圧搾ゾーン(C)の圧搾室(5、5a)を連設したことを特徴とする請求項1に記載のろ材型遠心脱水機。
【請求項3】
上記外筒ボール(37)と内筒スクリュー(39)を円錐状に構成して濃縮ゾーン(A)を形成し、外筒ボール(37)の終端部に圧搾ゾーン(C)の圧搾室(5、5a)を配設したことを特徴とする請求項1に記載のろ材型遠心脱水機。
【請求項4】
上記外筒ボール(45)とピッチを漸減させた内筒スクリュー(47)を円筒状に構成して脱水ゾーン(B)を形成し、外筒ボール(45)の終端部に圧搾ゾーン(C)の圧搾室(5、5a)を配設したことを特徴とする請求項1に記載のろ材型遠心脱水機。
【請求項5】
上記外筒ボール(2、37、45)の終端部に形成する圧搾ゾーン(C)の圧搾室(5a)を更に拡大して、裏圧搾室(14a)に配設する排出板(8a)の外周部に金属ろ材(8b)を張設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のろ材型遠心脱水機。
【請求項6】
上記スクリュー軸(3、38、46)に原液供給管(30)と、高分子凝集剤供給管(32)、及び、無機凝集剤供給管(34)を内設し、スクリュー軸(3、38、46)の中間部に原液供給口(31、41、50)と高分子凝集剤添加口(33、42、51)を開口し、スクリュー軸(3、38、46)の終端部に無機凝集剤添加口(35,43、52)を開口したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のろ材型遠心脱水機。
【請求項7】
上記表圧搾室(13、13a)のろ過板(6、6a)にろ材洗浄管(40、49)を対設させたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のろ材型遠心脱水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107022(P2013−107022A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251732(P2011−251732)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】