説明

ろ材

【課題】金型成形等でろ材を圧縮した場合でもろ材の剛軟度低下が起こりにくいろ材を提供することにより、プリーツ形状の乱れを抑えた圧力損失の低いフィルターを提供すること。
【解決手段】繊維およびリン系難燃剤を含有するシートからなるろ材であって、繊維の表面にリン系難燃剤を有し、前記リン系難燃剤の50%粒子径を5μm以下とすることで、高い剛軟度保持率のろ材を得ることができる。また、シートには繊維としてビニロンが含まれることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を有する気体透過用のろ材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災に対する安全対策として、電気電子機器をはじめ建築、自動車、車両、船舶、繊維衣類など広範囲の製品に難燃性が求められており、フィルターも例外ではなく難燃性付与の要求がある。
【0003】
難燃性を付与するために用いる難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が良く知られている。従来、一般に使用される難燃性ろ材には、難燃性を発現でき、経済的であることから臭素系難燃剤が使用されてきた。しかし、近年、臭素系および塩素系化合物は、焼却等によりダイオキシンなどの有害物質が発生することが判明し、これらの化合物を使用禁止にする方向で世界的に進んでいる。例えば、欧州における電気・電子機器ではRoHS指令によりPBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)等の一部の臭素系難燃剤が使用禁止になった。
【0004】
また、自動車用途でも臭素や塩素の使用を制限する動きがある。自動車用途に関しては内装製品の難燃性規格として米国連邦自動車安全規格であるFMVSS 302「内装材料の可燃性」がある。しかし、臭素系、塩素系難燃剤以外の難燃剤を用いて、この評価方法で自消性を満足させるのは容易ではない。
【0005】
フィルターに用いる新規な難燃ろ材として、リン系や無機系の難燃剤を用いることが種々検討されている(特許文献1)。ろ材は、フィルターに加工する際、プリーツ加工(山谷折り)を施すものが主流になっている。これにより、規格の間口サイズの中でろ材量を増やすことで、使用時の圧力損失を小さくし、高い捕集効率および長寿命を得ることができる。フィルターの枠体としては、射出成形による樹脂枠がキャビン用途を筆頭として主流となっている。射出成形では、金型にろ材をセットし、その周辺に樹脂を流し、樹脂枠を作製する。
【0006】
しかし、従来の難燃性ろ材を用いた場合、ろ材の厚み方向と垂直な方向に圧縮力がかかることにより剛軟度が低下するという問題が発生した。射出成形時に、ろ材が金型から圧縮力を受け、射出成形後のろ材の剛軟度が低下したため、プリーツ形状を保てずに圧力損失が増加するというかたちでフィルター性能が低下したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−227758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題に鑑み、金型成型等でろ材を圧縮した場合でも、ろ材の剛軟度低下が起こりにくく、プリーツ形状にしたときの形状の乱れが少ないろ材およびそれを用いたエアフィルターを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、 以下の構成からなる。
(1)繊維およびリン系難燃剤を含有するシートからなるろ材であって、繊維の表面にリン系難燃剤を有し、前記リン系難燃剤の50%質量粒子径が5μm以下であることを特徴とするろ材、
(2)前記リン系難燃剤が25℃の水に対する溶解度が5質量%以下であることを特徴とする前記ろ材、
(3)繊維としてビニロン繊維を必須とする前記いずれかに記載のろ材、
(4)リン系難燃剤を液体および樹脂に混合して加工液とし、該加工液を繊維シートに含浸せしめることを特徴とする前記いずれかに記載のろ材の製造方法、
(5)前記いずれかに記載のろ材または前記製造方法で製造されたろ材にプリーツ加工を施したエアフィルター、
(6)前記フィルターに枠体を設置したエアフィルターユニット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるろ材は、ろ材が圧縮された場合でも剛軟度の低下を抑えることができる。そのため、プリーツフィルターにおいて剛軟度低下によるプリーツ形状の乱れを抑えることができ、圧力損失の低いフィルターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のろ材は繊維およびリン系難燃剤を含有するシートからなるろ材であって、繊維の表面にリン系難燃剤を有し、前記リン系難燃剤の50%質量粒子径が5μm以下であることを特徴とする。
【0013】
ろ材の好ましい難燃性は、米国連邦自動車安全規格であるFMVSS 302「内装材料の可燃性」を満たすことである。ろ材を形成する繊維としては、従来からろ材に用いられている繊維であればよく特に限定されないが、例えば、ビニルアルコール重合体若しくはその共重合体が例示され、さらにはビニロン繊維を好ましく使用することができる。ビニロン繊維は、燃焼時に炭化する挙動を示し、後述するリン系難燃剤との組み合わせにより優れた難燃性を得ることができる。ビニロン繊維を用いる場合、他の合成繊維、例えばポリエステル繊維を他の繊維として使用することも好ましい。例えばビニロン繊維の伸度が6%程度なのに対してポリエステル繊維の伸度はより高い36%程度である。そこで、ポリエステル繊維を一部に用いることでろ材の引裂強さを向上させることができる。また、フィルターのプリーツ形状を固定するために、シートを形成する繊維に熱融着性繊維を使用し、熱処理により、繊維間を融着させることも好ましい。
【0014】
ろ材を形成する繊維の繊維径としては、使用する用途において目標とする通気性や集塵性能に応じて選択すればよいが、例えば1〜1000μmである。
【0015】
ろ材の構造は、通気性を有する繊維構造体であればよく、例えば綿状物、編物、織物、不織布、紙およびその他の三次元網状体等を挙げることができる。これらの構造をとることにより、通気性を確保しつつ、表面積を大きくとることができる。
【0016】
ろ材の目付けとしては、10〜500g/mが好ましく、より好ましくは30〜200g/mである。気体を通気させた際にフィルター構造を維持するのに必要な剛性が得られるために目付は高い方がよい。一方、プリーツ形状やハニカム形状に二次加工する際の取り扱い性の面からは、目付は低いほうが好ましい。以上の観点から上記範囲が好ましい。
【0017】
ろ材に難燃性を付与するために、ろ材へ難燃剤の添着加工を行う。難燃剤は、その構成成分により、それぞれ有機化合物であるリン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤およびこれらの複合系などの有機系難燃剤と、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンチモン系、シリコーン系などの無機系難燃剤に大別される。本発明では、上記難燃剤のなかでリン系難燃剤を用いる。具体的にはリン酸のほか、リン酸エステル、リン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、リン酸メラミン、リン酸グアニル尿素およびこれらの化合物のポリ化合物などが好ましい。リン系難燃剤は、ビニロンなどのポリビニルアルコール成分やパルプなどのセルローズ成分が燃焼した時に炭化を促進する効果が高い。またポリエステル繊維などの燃焼時に溶融するタイプの繊維が混合されても炭化を促進して燃え広がるのを防止することができる。
【0018】
リン系難燃剤の含有量は、繊維に対する質量比で、下の値としては10%以上、さらに12%以上、上の値として40%以下、さらに20%以下であることが好ましい。難燃剤の量が少ないとろ材の難燃性が得られなく、多すぎると繊維量が減少してしまうためにろ材の基本性能である通気量や寿命が低下してしまう。また、難燃剤の量が多いと、繊維シートの引張強度や硬さ(剛軟度)が低下する傾向がある。プリーツフィルターに適した繊維シートの剛軟度は3mN以上である。なお、剛軟度は実施例の欄の測定方法(2)項に記載の方法によるものである。
【0019】
リン系難燃剤は親水性でないものが好ましく、例えば25℃の水に対する溶解度は、5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。溶解度が5質量%を超えると、リン系難燃剤の親水性が高くなり、吸湿作用によりシートの剛軟度が低下する傾向がある。なお、溶解度は実施例の欄の測定方法(4)項に記載した方法によって測定した値をいう。リン系難燃剤の溶解度を5質量%以下にする手段としては、例えばリン酸の重縮合によってポリ合物とする方法が知られている。また、ポリフェノール化合物等を用いて、ろ材に抗アレルゲン性と難燃性を同時に付与する場合、ポリフェノール化合物等のポリ化合物抗アレルゲン性を阻害しない点で、リン酸アンモニウム、リン酸メラミンおよびこれらを併用することが好ましい。
【0020】
また、リン系難燃剤は有機物である樹脂や無機化合物を含んだ被覆材で被覆し、複合粒子、いわゆるマイクロカプセルとすることもできる。なかでも酸化ケイ素のようなケイ素化合物を含んだ被覆材で被覆されたものが好ましい。ケイ素系化合物には、リン系難燃剤の水に対する溶解度を低減させる効果があり、さらには難燃剤とポリフェノール化合物の相互作用を抑制し、共存状態を安定に保つことができるようになる。ケイ素系化合物としては、素材自体の難燃性にも優れ、かつ不活性でポリフェノールや他の樹脂バインダー成分と反応しないシリコーン樹脂が好ましい。
【0021】
リン系難燃剤の粒子径は、被覆材で被覆する場合、しない場合のいずれにおいても、50%粒子径が5μm以下であることが耐圧縮性を得るために重要である。上記繊維シートが含有するリン系難燃剤が大きいと、射出成形時にろ材にかかる圧縮力により、フィルター圧損は増加する傾向となる。通常は、繊維シートにリン系難燃剤が凝集した状態で付着するため、繊維シートに射出成形による圧縮力が加わると、凝集部分でクラックが発生し剛軟度が低下すると考えられる。そこで、粒子径を小さくすることにより、分散性を上げ凝集粒子径を小さくすることで、圧縮力を加える前後で剛軟度が大幅に低下しないと考えている。その観点から本発明のろ材は、後述の実施例の欄の圧縮性試験で示した方法で圧縮した後のガーレ法剛軟度の保持率が85%以上であることが好ましい。
【0022】
さらに、粒子径を小さくすることで難燃剤の表面積を増やすことができ、高い難燃効果も得ることができる。50%粒子径が5μm以下のリン径難燃剤を得る方法としては、50%粒子径が5μmよりも大きい粒子を粉砕し、篩い分けする方法を用いることができる。
【0023】
上記ろ材に上記リン系難燃剤を含有する方法として、リン系難燃剤とバインダー樹脂と液体とを混合した加工液を、含浸法によってシート状の繊維に付着させ乾燥させる方法がある。
加工液は、リン系難燃剤をバインダー樹脂と共に分散させたものである。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、スチレンーアクリル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、SBR樹脂、ポリエステル樹脂などを使用することが可能である。中でもスチレンーアクリル樹脂は、低コストでかつ加工液を含浸させるシートの剛性が得られやすい点で好ましい。分散性を向上させるために界面活性剤等の分散剤を添加してもよい。また、より難燃性を向上させるため難燃性樹脂を用いることもできる。
加工液を含浸させたシートは液体が残っているので、通常は乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、熱風乾燥方式、ヤンキードラム方式が好ましく使用される。乾燥温度は、液体が気化し、用いたバインダー樹脂が十分に硬化する温度で且つ繊維シートの軟化点以下であることが好ましい。バインダー樹脂が十分に硬化しなければろ材の剛軟度が低下し、繊維シートの軟化点以上でろ材の剛軟度が低下する。
【0024】
本発明のろ材は、極細繊維からなる不織布シートを積層してフィルター用ろ材として用いることも好ましい。例えば直行流型フィルターとして使用する場合においては、気体の下流側に極細繊維からなる不織布シートを積層すれことで、高い捕集効率化が可能となる。
【0025】
さらにこの極細繊維からなる不織布シートがエレクトレット処理されていれば、なお好ましい。エレクトレット処理がされていることにより、通常では除去しにくいサブミクロンサイズやナノサイズの微細塵を静電気力により捕集することができる。
【0026】
エレクトレット不織布を構成する材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成高分子材料等の、高い電気抵抗率を有する材料が好ましい。
【0027】
本発明のろ材は、エアフィルター用途、とくに、車両用のエアフィルター用途、更には自動車用のキャビンフィルタ用ろ材として好適に用いることができる。車両用や自動車用のキャビンフィルタには車両用としての難燃性が要求されている。また車両用のフィルターは通気風速が速いため、風圧に対し十分な強度を有し、プリーツなどの形状に加工した場合、その形状を維持して形状変化による圧力損失の上昇を抑制できること、プリーツ等の形状に成形する際の加工性に優れること、等の要求を満足しうるろ材が好ましい。本発明の抗アレルゲン性難燃ろ材は剛性を損なうことなく、難燃性と抗アレルゲン性を発揮できる点で、車両用、特に自動車用キャビンフィルタ用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何等限定されるものではない。まず、本実施例で用いたろ材の試験方法を以下に示す。
【0029】
(1)粒径測定
難燃剤の粒径は、レーザ回折式粒度分布装置(島津製作所製 SALD-2100)を用いて平均回数を64とし粒度分布を測定した。なお屈折率は標準屈折率(1.70-0.10i)を、分布基準は体積を選択した。粒子量の積算値(%)が50%となる粒径を50%粒子径とした。
【0030】
(2)剛軟度
剛軟度はJIS L 1096:1999(ガーレ法)に準拠し、幅25mm、長さ90mmのサンプルを、ガーレ式剛軟度試験機を用いて測定した。n数は5として、その平均値の値を測定した。
【0031】
(3)難燃性
難燃性試験は、JIS L−1091:1999 の水平法を用いて評価した。N数は5として、その平均値が5cm以下のものを「優れている」と評価し、表1中「○」印で表記した。その平均値が5cmを越えるものを「劣る」と評価し、表1中「×」印で表記した。
【0032】
(4)溶解度測定
対象化合物が塊状の場合はあらかじめ乳鉢で細かく粉砕して粒径を100μm以下にする。100gの純水を用意し、水温を25℃の一定温度に保ちながら、対象化合物が飽和するまで攪拌溶解する。水に不溶となった分はろ過して除去し、ろ液を減圧留去する。得られたものを100℃で完全に熱乾燥し、質量を測定しこれを溶解質量(A)とした。次に以下式により溶解度を算出した。
溶解度(質量%)=A/(100+A)×100 。
【0033】
(5)圧縮性試験
平らな台上に得られたろ材(サイズ:25cm×25cm)を置き、ロール(直径10cm、長さ27cm、質量15kg)を15cm/sの速度で10往復転がした。
【0034】
(6)湿潤試験
ろ材(サイズ:25cm×25cm)を35℃、90%RHの雰囲気下に24時間静置した。
【0035】
[実施例1]
(リン系難燃剤)
50%平均粒径が4.0μmであるポリリン酸アンモニウムを用いた。
(加工液)
リン系難燃剤、アクリル樹脂(Tg 30℃、粘度1000mpa・s)、水、界面活性剤を質量比25:30:44:1で分散混合し、加工液を作った。
(ろ材の製造)
それぞれ短繊維である、ビニロン繊維(φ15dtex×長さ8mm)21質量%、ビニロン繊維(φ7dtex×長さ10mm)15質量%、PET繊維(φ6dtex×長さ10mm)15質量%、PET繊維(φ0.5dtex×長さ5mm)16質量%、溶融PET繊維(φ2dtex×長さ5mm)18質量%、パルプ15質量%を湿式法に抄紙した厚み0.40mm、目付46g/m2のシートを加工液に浸し十分含浸したのち乾燥し、耐圧縮性難燃ろ材を作製した。繊維と加工液の質量比は、70:30とした。なお溶融PET繊維とは、芯をPETとし、鞘をPETのテレフタル酸構造の一部をイソフタル酸構造に置換したポリマーとした繊維である。
【0036】
得られたろ材は、繊維の表面に難燃剤が付着していた。また難燃性、溶解度、圧縮試験前後の剛軟度、湿潤試験後の剛軟度を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
[実施例2]
50%平均粒径が4.1μmであるポリリン酸メラミンを用いる以外は実施例1と同様にして耐圧縮性難燃ろ材を作製した。得られたろ材は、繊維の表面に難燃剤が付着していた。また難燃性、圧縮試験前後の剛軟度を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
[実施例3]
50%平均粒径が3.2μmであるポリリン酸メラミンを用いた以外は実施例1と同様にして耐圧縮性難燃ろ材を作製した。得られたろ材は、繊維の表面に難燃剤が付着していた。また難燃性、圧縮試験前後の剛軟度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2]
50%平均粒径が4.8μmであるポリリン酸メラミンを用いる以外は実施例1と同様にして耐圧縮性難燃ろ材を作製した。得られたろ材は、繊維の表面に難燃剤が付着していた。また難燃性、圧縮試験前後の剛軟度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
50%平均粒径が7.2μmであるポリリン酸メラミンを用いる以外は実施例1と同様にして耐圧縮性難燃ろ材を作製した。得られたろ材は、繊維の表面に難燃剤が付着していた。また難燃性、圧縮試験前後の剛軟度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
50%平均粒径が15.0μmであるポリリン酸メラミンを用いる以外は実施例1と同様にして耐圧縮性難燃ろ材を作製した。得られたろ材は、繊維の表面に難燃剤が付着していた。また難燃性、圧縮試験前後の剛軟度を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例3]
50%平均粒径が20.0μmであるリン酸グアニジンを用いる以外は実施例1と同様にして耐圧縮性難燃ろ材を作製した。得られたろ材は、繊維の表面に難燃剤が付着していた。また難燃性、圧縮試験前後の剛軟度を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
これらの結果から、リン系難燃剤の50%粒子径を5μm以下とすることで、圧縮試験後もろ材の剛軟度を保持することができる。すなわち、フィルター枠体成形時に射出成形でろ材が金型から圧縮力を受けた場合でも、射出成形したろ材の剛軟度を保持することができ、フィルター性能(圧力損失)を維持することができる。さらに、水に対する溶解度を5質量%以下とすることで、湿潤試験後のろ材の剛軟度も保持することができるが、フィルターが高湿度環境で使用された場合でも、圧力損失の低減に代表されるフィルター性能を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の難燃ろ材は、エアフィルター用途、とくに自動車用のキャビンフィルタ用ろ材として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維およびリン系難燃剤を含有するシートからなるろ材であって、繊維の表面にリン系難燃剤を有し、前記リン系難燃剤の50%粒子径が5μm以下であることを特徴とするろ材。
【請求項2】
前記リン系難燃剤が25℃の水に対する溶解度が5質量%以下であることを特徴とする請求項1のろ材。
【請求項3】
繊維としてビニロン繊維を必須とする請求項1または2に記載のろ材。
【請求項4】
リン系難燃剤を液体および樹脂に混合して加工液とし、該加工液を繊維シートに含浸せしめることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のろ材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載のろ材または請求項4の製造方法によって得られたろ材にプリーツ加工を施したエアフィルター。
【請求項6】
請求項5記載のエアフィルターに枠体を設置したエアフィルターユニット。

【公開番号】特開2012−210588(P2012−210588A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77717(P2011−77717)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】