説明

ろ格機

【課題】下水道施設の沈砂池の粗目スクリーンに好適なろ格機を提供する。
【解決手段】水路の幅全体に亘って上下方向に伸びる複数のスクリーンバーを互いに所定の間隔を保って平行状に配置して構成されるろ格機であって、前記複数のスクリーンバーは、その下端側が前記水路を流れる水流の上流側に位置するとともに、その上端側がその水流の下流側に位置するように、その水路の底面方向に対して10°〜30°の傾斜角を有していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はろ格機に係わり、特に、下水処理施設の沈砂池の粗目スクリーンに好適なろ格機に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、下水処理施設の一つであるポンプ所の沈砂池aの概略図であり、この沈砂池aは、通常、地下数十mに設けられている下水道の幹線に接続されている。そしてその水路1の所定箇所には、上下動するゲート2が設けられている。したがって、このゲート2を降下させたときは、図6の左側に示される矢印のように流れてくる汚水を堰き止めることができ、このゲート2の下流側に設けられているろ格機に相当する粗目スクリーンS´側に汚水が流れるのを阻止することができる。
【0003】
粗目スクリーンS´は、水路1の水路幅全体に亘って上下方向に伸びる複数のスクリーンバーB,B…を互いに所定の間隔を保って平行状に配置し、かつ所定の傾斜角を有して構成されている。具体的には、2〜3mを有する水路1の水路幅全体に亘って、所定太さの棒状(例えば、汚水の流れと直交する側の厚さが10mm前後で、その流れと平行する側の長さが100mm前後の矩形断面を有する棒状)の鋼製のスクリーンバーBを150mmの間隔を保って平行状に配置して構成されている。また、これらスクリーンバーB,B…は、図6のイ部を拡大して示されるように、下端側が水流の上流側に位置するとともに、その上端側が水流の上流側に位置するように、水路1の底面方向に対して60°の傾斜角を有して設けられている。
【0004】
上記構成からなる粗目スクリーンS´は、スクリーンバーB,B…の設置間隔である粗目スクリーンS´の目開きを超える大きさの固形物を捕捉することができ、粗目スクリーンS´以降への流出を阻止することができる。そしてこの粗目スクリーンS´のスクリーンバーB,B…に捕捉された固形物は、作業員が鈎棒を用いて掻き揚げ、その掻き揚げられた固形物を外部に排出するようにしている。
【0005】
図6中、3は揚砂機であって、粗目スクリーンS´の下流側の水路1の底面を所定深さに掘って設けられた沈砂部1aの箇所に設けられている。この揚砂機3は、沈砂部1aに沈降した砂をバケットですくい取って外部へ排出することができるように構成されている。
【0006】
図6中、4は揚砂機3の下流側に設けられた後スクリーンであって、上記粗目スクリーンS´と同様に水路1の水路幅全体に亘って上下方向に伸びる複数のスクリーンバーを互いに所定の間隔を保って平行状に、かつ所定の角度を有して構成されている。この後スクリーンの具体的構成は、スクリーンバーの傾斜角は粗目スクリーンS´と同じ60°であるが、スクリーンバーの間隔である目開きは、25mmと小さく形成されている。また、この後スクリーン4には、スクリーンバーで捕捉した固形物を自動的に掻き揚げるスクレーパを備えた掻揚機構が設けられている。したがって、この後スクリーン4では、前段の粗目スクリーンS´で捕捉できなかった固形物を汚水から捕捉して固形物の除去された汚水を汚水ポンプ(図示せず)側に流出させることができる。
【特許文献1】特になし。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の粗目スクリーンは、スクリーンバーで捕捉した固形物の掻揚作業を作業員の手作業で行っているので、作業員に極めて大きな負担を強いる結果となっていた。しかも、この粗目スクリーンの設置されている箇所は、地下数十mの密閉された空間であり、さらに、スクリーンバーで捕捉されている固形物が下水道管内で成長したオイルボールの場合は、強烈な異臭を放つので、極めて劣悪な環境の下で作業しなければならないという問題点を有していた。
【0008】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、スクリーンバーで捕捉された固形物を極めて小さい力で容易に掻き揚げることができるようにするとともに、自動的に固形物を掻き揚げることができるようにした粗目スクリーンに好適なろ格機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るろ格機は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、水路の幅全体に亘って上下方向に伸びる複数のスクリーンバーを互いに所定の間隔を保って平行状に配置して構成されるろ格機であって、前記複数のスクリーンバーは、その下端側が前記水路を流れる水流の上流側に位置するとともに、その上端側がその水流の下流側に位置するように、その水路の底面方向に対して10°〜30°の傾斜角を有していることを特徴としている。
本発明の請求項2に記載のろ格機は、スクリーンバーの傾斜角を20°にしたことを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項3に記載のろ格機は、複数のスクリーンバーに、それらスクリーンバーが捕捉した固形物を掻き揚げる掻揚機構が設けられていることを特徴としている。
本発明の請求項4に記載のろ格機は、掻揚機構が掻き揚げた固形物を搬出する搬出機構が設けられていることを特徴としている。
本発明の請求項5に記載のろ格機は、水路は下水道施設の幹線に接続された沈砂池の水路であり、複数のスクリーンバーはその沈砂池の粗目スクリーンのスクリーンバーであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載のろ格機は、複数のスクリーンバーは下端側が水路を流れる水流の上流側に位置するとともに、上端側がその水流の下流側に位置するように、その水路の底面方向に対して10°〜30°の傾斜角を有しているので、スクリーンバーに捕捉された固形物はスクリーンバー上を滑り落ちることがないから小さい力で掻き揚げることができ、また、その掻揚力が小さいので、簡単な掻揚機構で足りる効果が得られる。
本発明の請求項2に記載のろ格機は、スクリーンバーの傾斜角を20°としたので、スクリーンバーの長さを必要以上に長くしなくともスクリーンバーに捕捉された固形物を小さい力で掻き揚げることができる。
本発明の請求項3に記載のろ格機は、複数のスクリーンバーに、スクリーンバーが捕捉した固形物を掻き揚げる掻揚機構が設けられているので、スクリーンバーで捕捉した固形物を自動的に掻き揚げることができる。
本発明の請求項4に記載のろ格機は、掻揚機構が掻き揚げた固形物を搬出する搬出機構が設けられているので、掻揚機構が掻き揚げた固形物を自動的に外部へ排出することができる。
本発明の請求項5に記載のろ格機は、水路は下水道施設の幹線に接続された沈砂池の水路であり、スクリーンバーはその沈砂池の粗目スクリーンのスクリーンバーであるので、地下の密閉された環境での粗目スクリーンの作業を容易にすることができるとともに、掻揚機構及び排出機構を設けたときは、捕捉した固形物の排出の自動化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るろ格機を適用した下水処理施設の沈砂池の一部の概略構成図であって、上述の図6の粗目スクリーンS´が設けられている部分の沈砂池aに相当している。なお、上述の図6と同一構成要素には同一符号を用いて説明する。
【0013】
図1中、1は下水道の幹線に接続された沈砂池aの水路であり、通常、地下数十mに設けられている。そして、この水路1は、通常、2〜3mの水路幅を有しており、この水路1の図示しない左側には、上述の図6に示されているゲート2と同様のゲートが設けられている。また、この水路1の図示しない右側には、上述の図6に示されている揚砂機3及び後スクリーン4と同様の揚砂機及び後スクリーンがそれぞれ設けられている。
【0014】
図1中、Sは本発明のろ格機に相当する粗目スクリーンであり、図2はその粗目スクリーンSの拡大平面図及び図3は図2を下側から見たときの側面図である。
【0015】
この粗目スクリーンSは、従来の粗目スクリーンと同様に複数のスクリーンバーB,B…を有している。すなわちこの粗目スクリーンSは、水路1の水路幅全体に亘って上下方向に伸びる複数のスクリーンバーB,B…を互いに所定の間隔を保って平行状に配置し、かつ10°〜30°の範囲内で決められた所定の傾斜角(図1のθ参照)を有して水路1の所定の箇所に設置されている。
【0016】
上記複数のスクリーンバーB,B…の各部材は、従来のスクリーンバーと同様に、断面が矩形状で水流と交差する側の長さが10mm前後であり、水流と平行する側の長さが100mm前後に決められたステンレス製の所定の長さを有する棒状体から構成されている。そしてこの棒状体からなる複数のスクリーンバーB,B…は、図示しない桟材に互いに150mm前後の所定の間隔を保って平行状に取付けられて一つのスクリーンを形成している。
【0017】
上記複数のスクリーンバーB,B…は、上述したように10°〜30°の範囲内の所定の傾斜角を有して水路1中に配置されている。すなわち、スクリーンバーB,B…の下端側が水路1中を流れる水流の上流側に位置し、その下端側がその水流の下流側に位置するように、水路1の底面方向に対して10°〜30°の範囲内の所定の傾斜角θを有して配置されている。
【0018】
上記10°〜30°の角度は、スクリーンバーB,B…に捕捉された固形物Kが自然に落下しない、いわゆる物質の安息角を基に決められている。すなわちこのスクリーンバーB,B…は、梁簀で魚を捕らえる原理で水路1中を流れてくる固形物(この固形物は、浮遊性を有しているので、通常、「スカム」と呼ばれている。)Kを捕捉できるように構成されている。したがって、スクリーンバーB,B…の傾斜角θは、10°より小さいほどスクリーンバーB,B…上の固形物Kの滑り落ちを阻止するために有利であるが、傾斜角θが小さくなりすぎるとスクリーンバーB,B…自体の長さが長くなって材料費等の面から好ましくなく、傾斜角θは10°〜30°の範囲が好ましい。特に、傾斜角θが20°の場合は、スクリーンバーB,B…の長さも長くなりすぎず、後述する掻揚機構も大型化することなく実施できるので最適な傾斜角である。
【0019】
上記傾斜角θの上限の30°は、スクリーンバーB,B…で捕捉される固形物の安息角によって決められる。特に、傾斜角θが30°以下の場合は、固形物が下水道管に付着して成長したオイルボールと呼ばれる悪臭を放つ固形物(スカム)Kであり、その固形物Kが降雨によって水嵩が増して流れ出し、スクリーンバーB,B…で捕捉された場合でも、その自重によってスクリーンバーB,B…上を降下することがないので好都合である。
【0020】
上述のように、本発明に係る粗目スクリーンSのスクリーンバーB,B…の傾斜角θは、10°〜30°の範囲なので、スクリーンバーB,B…上に捕捉された固形物を掻き揚げる際の力は、スクリーンバーB,B…上をほぼ水平に移動させる力で足り、従来のように固形物の重力に抗して持ち上げる力を必要とせずに人力でも容易に掻き揚げることができる。また、固形物Kの掻揚力が小さくて済むので、後述する掻揚機構も簡素化できる特長がある。
【0021】
図示の実施例では、後述する掻揚機構の設置のために、スクリーンバーB,B…の下端側は水路1の底面から離れているが、後述する掻揚機構を用いない場合は、スクリーンバーB,B…の下端を水路1の底面に達するまで伸ばしてもよい。なお、スクリーンバーB,B…の下端と水路1の底面との間に間隙があっても、固形物Kは浮遊性を有しているので問題はない。
【0022】
次に、スクリーンバーB,B…上に捕捉された固形物Kの掻揚機構10について説明する。この掻揚機構10は、スクリーンバーB,B…の上端下側にそのスクリーンバーB,B…の長さ方向と直交する方向に設けられた回転駆動軸11と、スクリーンバーB,B…の下端下側にそのスクリーンバーB,B…の長さ方向と直交する方向に設けられた回転従動軸12とを有している。そしてこれら軸11,12には、スクリーンバーB,B…を中間に挟む形でスプロケット13,13…がそれぞれ設けられている。
【0023】
図中、14,14は、相対する一対のスプロケット13,13間に掛け渡された一対の無端チェーンである。これら一対の無端チェーン14,14は、スクリーンバーB,B…を中間に挟む形で設けられている。そして、スプロケット13,13間の一対の無端チェーン14の上側は、スクリーンバーB,B…の長手方向と同方向に伸びるとともに、スクリーンバーB,B…の上面とほぼ同じ上面を有するように設けられている一対のガイドレール15,15上をそれぞれ移動できるように構成されている。
【0024】
図中、16,16…は長板状のスクレーパであって、一対の無端チェーン14,14間にスクリーンバーB,B…の長手方向と直交する方向に掛け渡す形で設けられている。そして、各スクレーパ16,16…の設置間隔は等間隔となるように決められている。なお、図示の例では、スクレーパ16の数は4本であるが、1〜3本又は5本以上であってもよい。
【0025】
図2中、Mは、高所に設けられている架台Fに設置された防水性の減速機構を備えたモータである。このモータMの回転軸にはスプロケット17が設けられている。そしてこのスプロケット17は、回転駆動軸11に設けられているスプロケット18と無端チェーン19を介して接続されている。したがって、モータMが回転駆動されると、回転駆動軸11が回転して一対の無端チェーン14,14を図3の矢印に示される方向に回転させ、スクレーパ16,16…を移動させることができる。そして、スクレーパ16,16…がスクリーンバーB,B…上を移動する際、スクリーンバーB,B…上に固形物Kが存在すれば、その固形物KをスクリーンバーB,B…の上端側へ移動させることができ、その上端側から固形物Kを排出することができる。
【0026】
図中、20は、本発明の排出機構の一部をなすベルトコンベヤであって、スクレーパ16を介してスクリーンバーB,B…から排出された固形物Kを受け入れることができるように配置されている。したがって、このベルトコンベヤ20の搬送面はスクリーンバーB,B…の上端辺に対向した下方に位置している。そして、このベルトコンベヤ20の搬送方向端部は、固形物Kを外部へ排出する、本発明の排出機構の一部をなすスキップホイスト21側に向けられている。
【0027】
上記スキップホイスト21は、ベルトコンベヤ20で搬送されてきた固形物Kを受け入れるバケット22を備えており、このバケット22は、上方へ持ち上げられたときに、上階に用意されているコンテナ23内にバケット22内の固形物Kを反転して排出できるように構成されている。このコンテナ23は、地上に持ち上げられた後、焼却炉等の固形物処理施設に運ばれて固形物Kの処理が行われる。
【0028】
上述のように、コンベヤ20及びスキップホイスト21を用いたときは、粗目スクリーンSで捕捉された固形物を人手をかけずに、つまり自動的に外部へ運び出すことができる。
【0029】
上述の例では、掻揚機構10は、スクリーンバーB,B…の下側に設けた例を示したが、これを図4に示されるように、スクリーンバーB,B…の上側に設けるようにしてもよい。すなわち、掻揚機構10の回転駆動軸11及び回転従動軸12をスクリーンバーB,B…の上側に設けるようにしてもよい。この場合は、スクリーンバーB,B…の下端部を水路1の底面まで伸ばすことができる。また、ここに示されるスクレーパ16,16…には、図6に示されるように、各スクレーパ16,16…の長手方向に沿ってスクリーンバーB,B…の目開きに挿入できる大きさに形成されたくし歯16a,16a…が設けられている。このように、スクレーパ16にくし歯16aが設けられているので、スクリーンバーB,B…の目詰まりを効果的に防止することができる。
【0030】
また、上述の例では、本発明に係るろ格機を沈砂池の粗目スクリーンに適用した例を示したが、沈砂池の後スクリーンに適用することもでき、さらに、他の水処理施設や他の技術分野のスクリーン装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るろ格機を下水道施設の沈砂池の粗目スクリーンに適用したときの概略構成図である。
【図2】図1の粗目スクリーンの拡大平面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】掻揚機構をスクリーンバーの上側に設けたときの側面図である。
【図5】図4のA−A線拡大断面図である。
【図6】従来の粗目スクリーンを備えた下水道施設の沈砂池の概略構成図である。
【符号の説明】
【0032】
a 沈砂池
B スクリーンバー
F 架台
K 固形物(スカム)
S 粗目スクリーン
1 水路
10 掻揚機構
11 回転駆動軸
12 回転従動軸
13 スプロケット
14 無端チェーン
15 ガイドレール
16 スクレーパ
17 スプロケット
18 スプロケット
19 無端チェーン
20 ベルトコンベヤ
21 スキップホイスト
22 バケット
23 コンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の幅全体に亘って上下方向に伸びる複数のスクリーンバーを互いに所定の間隔を保って平行状に配置して構成されるろ格機であって、
前記複数のスクリーンバーは、その下端側が前記水路を流れる水流の上流側に位置するとともに、その上端側がその水流の下流側に位置するように、その水路の底面方向に対して10°〜30°の傾斜角を有していることを特徴とするろ格機。
【請求項2】
請求項1に記載のろ格機において、前記傾斜角は、20°であることを特徴とするろ格機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のろ格機において、前記複数のスクリーンバーには、それらスクリーンバーが捕捉した固形物を掻き揚げる掻揚機構が設けられていることを特徴とするろ格機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のろ格機において、前記掻揚機構が掻き揚げた固形物を搬出する搬出機構が設けられていることを特徴とするろ格機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のろ格機において、前記水路は、下水道施設の幹線に接続された沈砂池の水路であり、前記複数のスクリーンバーは、その沈砂池の粗目スクリーンのスクリーンバーであることを特徴とするろ格機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−204965(P2007−204965A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22844(P2006−22844)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(504036291)宇都宮工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】