説明

ろ過布およびバグフィルター

【課題】高捕集効率でかつ設定圧損に到達するまでの所要時間が長いろ過布およびバグフィルターを提供する。
【解決手段】単糸繊度が1dtex以下、かつフィラメント数が50本以上のポリエステルマルチフィラメント糸Aを含む織物でろ過布を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高捕集効率でかつ設定圧損に到達するまでの所要時間が長いろ過布およびバグフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電炉などの製造工程で発生する鉄粉を捕集するために使用されているバグフィルターなどのろ過布として、フェルト状、織布状のものなど各種提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
しかしながら、かかるろ過布において、捕集効率および設定圧損に到達するまでの所要時間長さにおいて、まだ充分とはいえなかった。
なお、単糸繊度が極めて小さい極細繊維は、例えば特許文献5などにより提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−140588号公報
【特許文献2】特開2006−334457号公報
【特許文献3】特公平7−96089号公報
【特許文献4】特開2005−133272号公報
【特許文献5】特開2007−2364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、高捕集効率でかつ設定圧損に到達するまでの所要時間が長いろ過布およびバグフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、細繊度かつフィラメント数が大きいポリエステルマルチフィラメント糸を用いて織物を得てろ過布を構成すると、高捕集効率でかつ設定圧損に到達するまでの所要時間が長いろ過布が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「単糸繊度が1dtex以下、かつフィラメント数が50本以上のポリエステルマルチフィラメント糸Aを含む織物で構成されることを特徴とするろ過布。」が提供される。
【0007】
その際、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aの単糸繊度が0.000001〜0.01dtexの範囲内であることが好ましい。また、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aのフィラメント数が1000本以上であることが好ましい。また、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aの総繊度が10〜150dtexの範囲内であることが好ましい。また、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた繊維であることが好ましい。また、前記織物に他の繊維として、単糸繊度が1.1〜6.0dtexであり、かつ総繊度が100〜1700dtexのポリエステルマルチフィラメント糸Bが含まれることが好ましい。その際、前記織物に含まれる、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの総繊度比(ポリエステルマルチフィラメント糸A総繊度:ポリエステルマルチフィラメント糸B総繊度)が、1:99〜60:40の範囲内であることが好ましい。また、前記織物に含まれる、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの重量比(ポリエステルマルチフィラメント糸A総重量:ポリエステルマルチフィラメント糸B総重量)が、1:99〜49:51の範囲内であることが好ましい。また、前記織物に他の繊維として導電性繊維が含まれることが好ましい。また、前記織物が朱子組織を有することが好ましい。また、前記織物のカバーファクターCFが1000〜5000の範囲内であることが好ましい。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0008】
また、前記織物の引裂き強さが20N以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記のろ過布を用いてなるバグフィルターが提供される。その際、バグフィルターの捕集効率が90%以上であることが好ましい。また、バグフィルターの設定圧損到達所用時間が5分以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高捕集効率でかつ設定圧損に到達するまでの所要時間が長いろ過布およびバグフィルターが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で用いた織組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のろ過布において、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aの単糸繊度は、1dtex以下(より好ましくは0.000001〜0.01dtex)、フィラメント数が50本以上(より好ましくは1000本以上、特に好ましくは3000〜30000本)であることが肝要である。ここで、単糸繊度が3dtexよりも大きいと、また、フィラメント数が50本よりも小さいと、単糸間空隙が大きくなるため捕集効率が低下する恐れがあり好ましくない。なお、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aの総繊度としては、10〜150dtexの範囲内であることが好ましい。ポリエステルマルチフィラメント糸Aの総繊度が10dtexよりも小さいと織物を生産する上で取り扱いが困難となるおそれがある。逆に総繊度が150dtexよりも大きいと、後記のようなポリエステルマルチフィラメント糸Bとともに織物を形成した際に織物表面の凹凸が小さくなり、ダストが堆積しやすく、圧損の立ち上がりが早くなる恐れがある。
【0012】
前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aを形成するポリマーの種類としては、ポリエステル系ポリマーであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。なお、ポリエステル以外のポリアミドなどのポリマーでは、布帛の耐光性や耐摩耗性が損われるため好ましくない。
【0013】
また、該ポリエステルマルチフィラメント糸Aの繊維形態は、長繊維であれば特に限定はなく、通常の延伸糸、通常の仮撚捲縮加工が施された仮撚捲縮加工糸や、通常の空気加工が施された空気加工糸、さらには、2種以上の構成糸条を空気混繊加工や複合仮撚加工させた複合糸であってもよい。また、単糸の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。
【0014】
ここで、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aにおいて、特願2006−511882号公報で開示されているような、島成分と海成分とからなり島成分の径が10〜1000nmである海島型複合繊維マルチフィラメントの海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより得られた極細繊維が好ましい。
【0015】
すなわち、海成分ポリマーとしては、繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
【0016】
一方、島成分ポリマーは、繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0017】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる該海島型複合マルチフィラメントは、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合したり、島成分の大部分が接合して海島型複合マルチフィラメントとは異なるものになり難い。
【0018】
次に、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。その際、該径は長径と短径との平均を求める。該径が10nm未満の場合には繊維構造自身が不安定で物性や繊維形態が不安定で好ましくない。前記の海島型複合マルチフィラメントにおいて、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
【0019】
前記の海島型複合マルチフィラメントは、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型複合マルチフィラメントは、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。かかる海島型複合マルチフィラメントにおいて、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度0.5〜10.0dtex、フィラメント数5〜75本、総繊30〜170dtexの範囲内であることが好ましい。
【0020】
次いで、海島型複合マルチフィラメント(または該海島型複合マルチフィラメントを用いて得られた織物)にアルカリ水溶液を用いたアルカリ減量加工を施すことにより、前記海島型複合繊維マルチフィラメントの海成分を溶解除去することにより、前記海島型複合繊維マルチフィラメントは、単繊維径が10〜1000nm、フィラメント数が島数と、前記海島型複合繊維マルチフィラメントのフィラメント数との積である極細マルチフィラメントとなる。なお、除去方法は特に限定されず、海成分が完全に溶解除去し得る方法であればいずれの方法で行ってもよい。
【0021】
本発明のろ過布を構成する織物は、前記のポリエステルマルチフィラメント糸Aのみからなるものでもよいが、他の繊維として、単糸繊度が1.1〜6.0dtexであり、かつ総繊度が100〜1700dtex(より好ましくは300〜1500dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸Bが含まれることが好ましい。その際、前記織物に含まれる、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの総繊度比(ポリエステルマルチフィラメント糸A総繊度:ポリエステルマルチフィラメント糸B総繊度)が、1:99〜60:40の範囲内であることが好ましい。織物に単糸繊繊度および/または総繊度の異なるポリエステルマルチフィラメント糸を複合することで織物表面に適度な凹凸が形成されるため、ダストの付着量が抑制され、圧損の立ち上がりが低くなり、設定圧損到達所要時間が長くなる。つまり、払い落とし回数が少なく済み、経済的に有利である。
【0022】
ここで、ポリエステルマルチフィラメント糸Bの総繊度が100dtexよりも小さいと織物の強度が低下する恐れがある。逆に総繊度が1700dtexよりも大きいとバグフィルターとして使用するには織物の重量が大きくなり過ぎる恐れがある。また、単糸繊度が1.1dtexより小さいと、織物の強度が低下する恐れがある。逆に単糸繊度が6dtexよりも大きいと、織物の剛性が高くなるためダストの払い落とし性が低下したり、単糸間空隙が大きくなるため捕集効率が低下する恐れがある。
【0023】
その際、前記織物に含まれる、ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの重量比(ポリエステルマルチフィラメント糸A総重量:ポリエステルマルチフィラメント糸B総重量)が、1:99〜49:51の範囲内であることが好ましい。前記ポリエステルマルチフィラメント糸Bの重量比が該範囲よりも小さいと(ポリエステルマルチフィラメント糸Aの重量比が該範囲よりも大きいと)、捕集効率が低くなる恐れがある。また、ポリエステルマルチフィラメント糸Aの重量比が該範囲よりも小さいと(ポリエステルマルチフィラメント糸Bの重量比が該範囲よりも大きいと)、目的の性能が得られないおそれがある。
【0024】
前記ポリエステルマルチフィラメント糸Bを形成するポリマーの種類としては、ポリエステル系ポリマーであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。なお、ポリエステル以外のポリアミドなどのポリマーでは、布帛の耐光性や耐摩耗性が損われるため好ましくない。
【0025】
ここで、該ポリエステルマルチフィラメント糸Bの繊維形態は、長繊維であれば特に限定はなく、通常の延伸糸、通常の仮撚捲縮加工が施された仮撚捲縮加工糸や、通常の空気加工が施された空気加工糸、さらには、2種以上の構成糸条を空気混繊加工や複合仮撚加工させた複合糸であってもよい。なかでも、高い捕集効率を得る上で仮撚捲縮加工糸が好ましい。単糸の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。
【0026】
本発明のろ過布を構成する織物において、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸B以外に、織物重量に対して30重量%以下、さらに他の繊維を含ませることも好ましい。特に、導電性の繊維が含まれていると、該織物をバグフィルターとして用いた際に、帯電を防止できるため粉塵爆発の危険性を軽減でき好ましい。
【0027】
前記織物において、その織組織としては、特に制限はなく、通常の方法で製織されたものでよく、例えば、平組織、斜文組織、朱子組織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示されるが、なかでも、朱子組織であることが、捕集効率を向上させる点で好ましい。
【0028】
前記織物は、例えば、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aまたは該ポリエステルマルチフィラメント糸A用の前記海島型複合マルチフィラメントを用いて常法により織物を製織して織物を得た後、次いで、該織物にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、前記海島型複合マルチフィラメントをポリエステルフィラメントAとするとよい。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。
【0029】
さらに、染色加工、起毛加工、吸湿吸水加工、制電加工、抗菌防臭加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工など公知の加工が適宜付加されていてもさしつかえない。
【0030】
かくして得られた織物において、織物のカバーファクターCFが1000〜5000(より好ましくは2000〜4000)の範囲内であることが好ましい。該カバーファクターCFが1000よりも小さいと十分な捕集効率が得られないおそれがある。逆に該カバーファクターCFが5000よりも大きいと製造が困難になるおそれがあるうえ、圧力損失が大きくなるおそれがある。ここで、織物のカバーファクターCFは下記のように算出するものとする。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0031】
かかる織物には、単糸繊度が3dtex以下、かつフィラメント数が50本以上と、細繊度かつ高フィラメント数のポリエステルマルチフィラメント糸Aが含まれているので、優れた捕集効率を有し、かつ設定圧損に到達するまでの所要時間が長い。また、前記のポリエステルマルチフィラメント糸Bが含まれる場合には優れた引裂き強力を有する。その際、織物の引裂き強力が20N以上であることが好ましい。引裂き強力が20Nよりも小さいと長期使用中に破断するおそれがある。
【0032】
本発明のろ過布はかかる織物で構成される。その際、ろ過布は織物単層で構成されることが好ましいが、不織布や織編物など他の布帛を積層してもよい。
次に、本発明のバグフィルターは、前記のろ過布を用いてなるバグフィルターである。かかるバグフィルターは前記のろ過布が含まれているので、優れた捕集効率を有し、かつ、設定圧損到達所要時間が長くなり、経済的である。
その際、捕集効率が90%以上であることが好ましい。また、設定圧損到達所用時間が5分以上であることが好ましい。
【0033】
ただし、捕集効率は以下により測定する。すなわち、ドイツの工業規格であるVDI3926のI型機と同様の評価設備を用い、ろ過面積0.09m、ろ過速度2.5m/sec、ダスト供給量1.8g/m、払い落とし能力0.1MPa、払い落とし時間0.2sec、払い落としにいたるまでの設定圧力損失700Paの条件で評価する。使用ダストはJIS8901試験用標準ダスト10種(フライアッシュ)である。そして、捕集効率は、ろ過布を通り抜けたダスト濃度から下記式により算出した。この数値が高いほど捕集効率が良いといえる。
[(ダスト供給濃度―吹き漏れダスト濃度)/ダスト供給濃度]×100
【0034】
また、設定圧力損失を700Paとしたときに、設定圧力損失になるまでのの時間を設定圧損到達所要時間とした。この数値が高いほど圧損の立ち上がりが低く、払い落とし回数が少なく済み経済的といえる。
なお、前記ろ過布は優れた捕集効率を有し、かつ、設定圧損到達所要時間が長いので、バグフィルター以外に、汚染土壌の処理のための袋詰脱水処理工法に用いられるジオテキスタイルやそのチューブ、エアーバッグ水処理フィルター、エアフィルター、マスクなど他の用途に用いてもよい。
【実施例】
【0035】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<単繊維径>生地を電子顕微鏡で写真撮影した後、n数5で単繊維径を測定しその平均値を求めた。
<カバーファクター>下記の式により算出した。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
<織物の引裂き強力>JIS L 1096 8.15(シングルタンク法)に従って測定した。
<ろ布性能>ドイツの工業規格であるVDI3926のI型機と同様の評価設備を用い、ろ過面積0.09m、ろ過速度2.5m/sec、ダスト供給量1.8g/m、払い落とし能力0.1MPa、払い落とし時間0.2sec、払い落としにいたるまでの設定圧力損失700Paの条件で評価した。
<使用ダスト>JIS8901試験用標準ダスト10種(フライアッシュ)
<捕集効率>ろ過布を通り抜けたダスト濃度から下記式により算出した。この数値が高いほど捕集効率が良いといえる。
[(ダスト供給濃度―吹き漏れダスト濃度)/ダスト供給濃度]×100
<設定圧損到達所要時間>設定圧力損失を700Paとしたときに、設定圧力損失になるまでのの時間を設定圧損到達所要時間とした。この数値が高いほど圧損の立ち上がりが低く、払い落とし回数が少なく済み経済的といえる。
【0036】
[実施例1]
ポリエステルマルチフィラメント糸A用糸条として、島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合延伸糸は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の直径は700nmであった。
【0037】
一方、ポリエステルマルチフィラメント糸Bとして、ポリエチレンテレフタレートからなる仮撚捲縮加工糸530dtex/144fil(帝人ファイバー(株)製、単糸繊度3.7dtex)を用意した。
織物の経糸として、前記の仮撚捲縮加工糸530dtex/144fil(ポリエステルマルチフィラメント糸B)69本に対し導電性繊維20dtex/2fil(商品名:テナベル)を1本の割合で配し、緯糸として、前記仮撚捲縮加工糸と前記の海島型複合延伸糸56dtex/10fil(ポリエステルマルチフィラメント糸A用糸条)とを1本交互に配し、通常のレピア織機を用いて、経密度64本/2.54cm、緯密度74本/2.54cmの織密度にて、常法の製織方法により5枚朱子組織(図1)の織物生機を得た。
【0038】
次いで、該織物生機から海島型複合延伸糸の海成分を除去するために、2.5%NaOH水溶液で55℃にて6%減量した。その後、180℃で45秒間乾熱処理を行った。
得られた織物において、含まれるポリエステルマルチフィラメント糸Aは、総繊度39dtexで、単糸繊度は0.005dtex(直径700nm)であった。また、ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの重量比は、(ポリエステルマルチフィラメント糸A:ポリエステルマルチフィラメント糸B)4:96であった。織物のカバーファクターCFは2706、織物の引裂き強力はタテ方向114N/ヨコ方向86Nであった。得られた織物を用いて、濾布性能を測定したところ、捕集効率は99.7%、設定圧損到達所要時間は21分と長く、優れたものであった。
【0039】
[実施例2]
実施例1と同様に、ポリエステルマルチフィラメント糸Bとして、ポリエチレンテレフタレートからなる仮撚捲縮加工糸530dtex/144fil(帝人ファイバー(株)製、単糸繊度3.7dtex)を用意した。
ポリエステルマルチフィラメント糸Aとして、ポリエチレンテレフタレートからなるマルチフィラメント延伸糸35dtex/72fil(帝人ファイバー(株)製、単糸繊度0.5dtex)を用意した。
織物の経糸は実施例1と同様にし、緯糸は、前記仮撚捲縮加工糸1本に対し、前記のポリエステルマルチフィラメント延伸糸35dtex/71fil(ポリエステルマルチフィラメント糸A)を4本の割合で配し、通常のレピア織機を用いて、経密度64本/2.54cm、緯密度129本/2.54cmの織密度にて、常法の製織方法により5枚朱子組織(図1)の織物生機を得た。
次いで、該織物生機に180℃で45秒間乾熱処理を行った。
得られた織物において、ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの重量比は、(ポリエステルマルチフィラメント糸A:ポリエステルマルチフィラメント糸B)8:92であった。織物のカバーファクターCFは3020、織物の引裂き強力はタテ方向106N/ヨコ方向71Nであった。得られた織物を用いて、濾布性能を測定したところ、捕集効率は96.0%、設定圧損到達所要時間は36分と長く、優れたものであった。
【0040】
[比較例1]
経糸および緯糸に、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸530dtex/144fil(帝人ファイバー(株)製、単糸繊度3.7dtex)を全量配し、通常のレピア織機を用いて、経密度64本/2.54cm、緯密度63本/2.54cmの織密度にて、常法の製織方法により5枚朱子組織(図1)の織物生機を得た。
次いで、該織物生機に180℃で45秒間乾熱処理を行った。
得られた織物において、織物のカバーファクターCFは2987、織物の引裂き強力はタテ方向107N/ヨコ方向105Nであった。得られた織物を用いて、濾布性能を測定したところ、捕集効率は98.9%と優れたものであったが、設定圧損到達所要時間は3分と短く、劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、高捕集効率でかつ設定圧損に到達するまでの所要時間が長いろ過布およびバグフィルターが提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が1dtex以下、かつフィラメント数が50本以上のポリエステルマルチフィラメント糸Aを含む織物で構成されることを特徴とするろ過布。
【請求項2】
前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aの単糸繊度が0.000001〜0.01dtexの範囲内である、請求項1に記載のろ過布。
【請求項3】
前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aのフィラメント数が1000本以上である、請求項1または請求項2に記載のろ過布。
【請求項4】
前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aの総繊度が10〜150dtexの範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載のろ過布。
【請求項5】
前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載のろ過布。
【請求項6】
前記織物に他の繊維として、単糸繊度が1.1〜6.0dtexであり、かつ総繊度が100〜1700dtexのポリエステルマルチフィラメント糸Bが含まれる、請求項1〜5のいずれかに記載のろ過布。
【請求項7】
前記織物に含まれる、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの総繊度比(ポリエステルマルチフィラメント糸A総繊度:ポリエステルマルチフィラメント糸B総繊度)が、1:99〜60:40の範囲内である、請求項6に記載のろ過布。
【請求項8】
前記織物に含まれる、前記ポリエステルマルチフィラメント糸Aとポリエステルマルチフィラメント糸Bとの重量比(ポリエステルマルチフィラメント糸A総重量:ポリエステルマルチフィラメント糸B総重量)が、1:99〜49:51の範囲内である、請求項6または請求項7に記載のろ過布。
【請求項9】
前記織物に他の繊維として導電性繊維が含まれる、請求項1〜8のいずれかに記載のろ過布。
【請求項10】
前記織物が朱子組織を有する、請求項1〜9のいずれかに記載のろ過布。
【請求項11】
前記織物のカバーファクターCFが1000〜5000の範囲内である、請求項1〜10のいずれかに記載のろ過布。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項12】
前記織物の引裂き強さが20N以上である、請求項1〜11のいずれかに記載のろ過布。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のろ過布を用いてなるバグフィルター。
【請求項14】
捕集効率が90%以上である、請求項13に記載のバグフィルター。
【請求項15】
設定圧損到達所用時間が5分以上である、請求項13または請求項14に記載のバグフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2010−184217(P2010−184217A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31143(P2009−31143)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】