説明

ろ過膜エレメントの取り出し方法

【課題】簡便な方法でろ過膜の破損を防ぐことができる、ろ過膜エレメントの取り出しおよび保管方法を提供する。
【解決手段】ろ過膜モジュール2と、集水管4に連通した送水配管(c)5と、送水配管(c)5に連通した送水配管(d)8を備え、ろ過膜モジュール2は前記被膜ろ過液に浸漬されており、透過水流路(b)3、集水管4、送水配管(c)5のいずれかがバルブ7を有している膜ろ過装置からろ過膜エレメント1を取り出すに際し、バルブ7において前記透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせた状態でバルブ7を閉にし、次いで送水配管(c)5と送水配管(d)9とを離してろ過膜モジュール2および送水配管(c)5を前記被膜ろ過液の外に出し、その後ろ過膜モジュール2からろ過膜エレメント1を取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水、下水、し尿、産業廃水等の処理などにおいて好適に使用することができるろ過膜エレメントの取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離法は、省エネルギー、省スペース、省力化および製品の品質向上などの特徴を有するため、適用分野を拡大しながら普及している技術である。膜分離法には、逆浸透、限外ろ過、精密ろ過などの方法がある。また、ろ過膜の形態には、中空糸膜、平膜、および管状膜などがあり、各分離対象物の性質や特徴に応じて使い分けられている。
【0003】
たとえば、従来、精密ろ過の分野では、比較的少量処理で、かつ比較的清澄な水溶液を分離・ろ過する目的で、小型のディスクフィルターや平膜プリーツ型カートリッジフィルタが使用されていた。また、限外ろ過の分野では、超純水の製造や食品製造および清涼飲料の製造などに平膜ろ過装置や中空糸型膜モジュールが使用されていた。そして、最近では環境保全の観点から、廃水処理にも膜分離技術を適用しようとする研究が進められている。
【0004】
廃水処理では、多くの場合、沈殿による固液分離を行っていたが、その代替として膜分離技術が実施できれば、高品位な処理水が得られるだけでなく、広大な沈殿池の省略あるいは縮小ができ、スペースメリットが非常に大きい。また、廃水処理では、活性汚泥と呼ばれる微生物により、廃水中の有機物を分解した後に、フロック化した汚泥と処理水を分離する活性汚泥処理プロセスが広く用いられているが、かかる活性汚泥処理プロセスで処理効率を上げるために活性汚泥を高濃度化すると、分解処理が進む一方で後段の沈殿池において汚泥の沈降性不良を生じる場合があり、水質の悪化を防止するための管理作業が煩雑である。しかし、沈殿分離の代替として膜分離技術を採用すれば、水質の悪化、スペース確保といった問題点を解決することができるため、膜分離技術が注目されている。
【0005】
以上のような点から、近年、活性汚泥を含む水槽内にろ過膜モジュールを浸漬してモジュールの透過側をポンプで吸引、あるいはサイホンなどのように水位差を利用して処理水を得る、浸漬タイプのろ過膜モジュールの研究が行われている。活性汚泥処理では通常、好気性の微生物を飼育するための曝気が行われており、この浸漬タイプは曝気により水槽内に形成される旋回流を利用して膜面の汚れをかきとりながら固液分離を行うことができ非常に低コストで運転が可能である。
【0006】
浸漬タイプのろ過膜モジュールとしては、たとえば特許文献1に示されるような平膜を用いたろ過膜エレメントを複数設置したものが提案されている。このようなモジュールにおいては、散気管を交換する必要が生じた場合など、被膜ろ過液の外にモジュールを取り出して保管および維持管理を行うことがある。このとき、ろ過膜モジュールを被膜ろ過液の外に取り出すためには、透過水を所望する場所へ送水するための送水配管の部分でモジュールを分離する必要があるが、結合を分離すると、その結果ろ過膜の透過側が大気圧開放されることになるので、送水管内の透過水が高低差によりろ過膜エレメントに逆流することになる。そして、ろ過膜エレメントの支持材とろ過膜との間隙に透過水が溜まってしまい、個々のろ過膜エレメントが膨らんだ状態となる。その結果、ろ過膜同士が接触するため、ろ過膜エレメントを上方に取り出そうとしてもなかなか取り出すことができず、無理に取り出すとろ過膜の損傷を招いてしまうという問題があり、またろ過膜同士が接触した状態でモジュールを保管すると、保管中に膜同士が固着し、保管終了後膜ろ過を再開する際にろ過不能となってしまうという問題があった。
【0007】
そのため、ろ過膜同士の接触を防ぐ技術として、ろ過膜エレメント以降の透過水流路および送水配管のいずれかに閉塞可能部を設け、ろ過膜エレメントを取り出す際にまず閉塞可能部を閉にし、その状態でろ過膜モジュールを被膜ろ過液の外に取り出し、その後ろ過膜エレメントを取り出す方法が提案されている(特許文献2)。しかしながらこの方法では、閉塞可能部より上流側に既にある被膜ろ過液は除去できないため、閉塞可能部より上流側にあるろ過膜エレメント内に既に溜まっている透過水を完全に除去することができず、ろ過膜エレメントがいくらか膨らんだ状態となるため、ろ過膜同士の接触を防ぐという観点からは不十分である。
【0008】
また、ろ過膜同士の接触を防ぐ他の技術として、ろ過膜エレメントおよび/またはろ過膜エレメントに接続する透過水流路に大気開放可能部を設け、ろ過膜エレメントを取り出す際にまずろ過膜モジュールを被膜ろ過液の外に取り出し、その後上記大気開放可能部から溜まった透過水を吸引排出し、その後ろ過膜エレメントを取り出す方法が提案されている(特許文献3)。しかしながらこの方法では、ろ過膜エレメント内に溜まった透過水を十分に排出するためには全てのエレメントから個別に透過水を吸引排出する必要があり、大気開放可能部の脱着操作や吸引排出操作が相当煩雑となる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-112017号公報
【特許文献2】特開2009-95759号公報
【特許文献3】特開2009-95760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、ろ過膜モジュールを被膜ろ過液の外に取り出してからろ過膜エレメントの取り出しを行う際に、簡便な操作でろ過膜同士の接触を防止して安全な状態でろ過膜エレメントの取り出し・ろ過膜エレメントの保管を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、以下のとおり規定されるものである。
【0012】
(1)平板状の支持部材の両面もしくは片面にシート状の分離膜が貼付され、前記分離膜では被膜ろ過液が膜ろ過されて前記支持部材と前記分離膜との間に形成された透過水流路(a)で透過水が取り出されるろ過膜エレメントが、互いに間隔を空けて設けられた複数のろ過膜エレメントと、前記透過水流路(a)にそれぞれ連通した複数の透過水流路(b)と、前記複数の透過水流路(b)の全てに連通した集水管とを有するろ過膜モジュールと、前記集水管に連通した送水配管(c)と、前記送水配管(c)に連通した送水配管(d)を備え、前記ろ過膜モジュールは前記被膜ろ過液に浸漬されており、前記透過水流路(b)、前記集水管、前記送水配管(c)のいずれかが閉塞可能部を有している浸漬型膜ろ過装置から前記ろ過膜エレメントを取り出すに際し、前記閉塞可能部において前記透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせた状態で前記閉塞可能部を閉にし、次いで前記送水配管(c)と前記送水配管(d)とを離して前記ろ過膜モジュールおよび前記送水配管(c)を前記被膜ろ過液の外に出し、その後前記ろ過膜モジュールからろ過膜エレメントを取り出すことを特徴とするろ過膜エレメントの取り出し方法。
【0013】
(2)平板状の支持部材の両面もしくは片面にシート状の分離膜が貼付され、前記分離膜では被膜ろ過液が膜ろ過されて前記支持部材と前記分離膜との間に形成された透過水流路(a)で透過水が取り出されるろ過膜エレメントが、互いに間隔を空けて設けられた複数のろ過膜エレメントと、前記透過水流路(a)にそれぞれ連通した複数の透過水流路(b)と、前記複数の透過水流路(b)の全てに連通した集水管とを有するろ過膜モジュールと、前記集水管に連通した送水配管(c)と、前記送水配管(c)に連通した送水配管(d)を備え、前記ろ過膜モジュールは前記被膜ろ過液に浸漬されており、前記透過水流路(b)、前記集水管、前記送水配管(c)のいずれかが閉塞可能部を有している浸漬型膜ろ過装置から前記ろ過膜エレメントを取り出すに際し、前記送水配管(c)と前記送水配管(d)とを離して前記ろ過膜モジュールおよび前記送水配管(c)を被膜ろ過液の外に出し、次いで前記閉塞可能部において前記透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせた状態で前記閉塞可能部を閉にし、その後前記ろ過膜モジュールからろ過膜エレメントを取り出すことを特徴とするろ過膜エレメントの取り出し方法。
【0014】
(3)前記閉塞可能部よりも膜ろ過方向における下流側であって、前記送水配管(c)または前記送水配管(d)に接続された流れ発生ユニットによって前記透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせることを特徴とする(1)または(2)に記載のろ過膜エレメントの取り出し方法。
【0015】
(4)前記流れ発生ユニットが真空ポンプである(3)に記載のろ過膜エレメントの取り出し方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、簡便な操作にて全てのろ過膜エレメント内に溜まった透過水を十分に除去し、ろ過膜同士の接触がない状態でろ過膜エレメントを取り出すことができるので、ろ過膜エレメント取り出し時の膜損傷を防止することができる。またろ過膜モジュールの保管の際もろ過膜同士の接触・固着を避けられるので、ろ過膜エレメントが保管前の膜ろ過性能を保った状態でろ過膜運転を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における浸漬型膜ろ過装置の一実施態様を示す概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における浸漬型膜ろ過装置を、図1に示す実施態様に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す浸漬型膜ろ過装置は、被膜ろ過液を膜ろ過して透過水流路(a)から透過水を得るためのろ過膜エレメント1が複数枚互いに間隔を空けて設置されている複数のろ過膜エレメント1と、前記透過水流路(a)にそれぞれ連通した複数の透過水流路(b)3と、複数の透過水流路(b)3の全てに連通した集水管4とを有するろ過膜モジュール2と、ろ過膜モジュール2を被膜ろ過液に浸漬するための処理槽7と、ろ過膜モジュール2の下流側に設けられた、被膜ろ過液をろ過することによって得られる透過水を系外に取り出すための送水配管(c)5および送水配管(d)9を有している。図1において送水配管(c)5、送水配管(d)9はフランジ部8を介して連通結合されているが、必要に応じて連結を分離することができるように構成されている。
【0020】
ろ過膜モジュール2は、上記したように複数枚のろ過膜エレメント1を有しているが、個々のろ過膜エレメント1は、ろ過膜の取り扱い性や物理的耐久性を向上させるため、平板状の支持部材の両面もしくは片面に、たとえば使用時における鉛直方向の長さが400〜2000mmとなるような大きさのシート状の分離膜が貼付されることで、前記支持部材と前記分離膜との間に透過水流路(a)が形成されて構成されている。
【0021】
そして、本発明においては、上記のような構成の浸漬型膜ろ過装置を送水配管(c)5と送水配管(d)9との間で切り離し、ろ過膜モジュール2を被膜ろ過液から取り出すときのために、透過水流路(b)3、集水管4、送水配管(c)5のいずれかに閉塞可能部を設けるとともに、閉塞可能部において透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせるユニットを設ける。図1に示す形態においては、閉塞可能部として送水配管(c)5にバルブ6を設け閉塞可能とするとともに、閉塞可能部において透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせるユニットとして、同じ送水配管(c)5に真空ポンプを設けており、以下、この形態に基づいて本発明を説明する。
【0022】
本発明においては、浸漬型ろ過膜装置を以上のような構成とし、被膜ろ過液に浸漬しているろ過膜エレメント1を該浸漬型ろ過膜装置から取り出す際には、以下の2つの手順のいずれかを取る。
【0023】
1つ目の手順は、真空ポンプ10を運転した状態でバルブ6を閉にし、送水配管(c)5と送水配管(d)9とをフランジ部8の部分で分離してろ過膜モジュール2および送水配管(c)5を被膜ろ過液の外に取り出し、その後、ろ過膜モジュール2からろ過膜エレメント1を取り出す方法である。
【0024】
2つ目の手順は、送水配管(c)5と送水配管(d)9とをフランジ部8の部分で分離してろ過膜モジュール2および送水配管(c)5を被膜ろ過液の外に取り出した後、真空ポンプ10を運転した状態でバルブ6を閉にし、その後、ろ過膜モジュール2からろ過膜エレメント1を取り出す方法である。
【0025】
このような装置構成および手順でろ過膜エレメント1を取り出すことで、ろ過膜エレメント1内に透過水が溜まっていない状態でバルブ6を閉にすることができるため、簡便な操作にて、ろ過膜エレメント1を取り出す際にろ過膜エレメント1内に透過水が滞留してしまうことを確実に防ぐことができる。そのため、ろ過膜エレメント1の膨張や隣接するろ過膜同士の接触を防ぐことができ、従来ろ過膜エレメント1を取り出す際に発生していたろ過膜の損傷という問題を解決できる。
【0026】
またろ過膜モジュール2を保管する際にも同様の手順を取ることで、ろ過膜エレメント1の膨張や隣接するろ過膜同士の接触・固着を防ぐことができ、ろ過膜エレメント1が保管前の膜ろ過性能を保った状態でろ過膜運転を再開することができる。
【0027】
閉塞可能部において透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせるユニットは、送水配管(d)9に接続されている膜ろ過用ポンプを用いてもよいが、膜ろ過用ポンプとは別の流れ発生ユニットが前記閉塞可能部よりも膜ろ過方向における下流側であって、送水配管(c)5または送水配管(d)9のいずれかに接続されていることが操作性向上の観点から好ましい。また、さらにこの流れ発生ユニットとしては真空ポンプであることが好ましい。このようにすることで透過水の除去が確実となり、ろ過膜エレメント1の膨張や隣接するろ過膜同士の接触をより確実に防ぐことができる。
【0028】
また、隣接するろ過膜エレメント1の設置間隔が狭い方が上記課題が顕著となるため、ろ過膜エレメント1の設置間隔が4〜10mmであるような浸漬型膜ろ過装置からろ過膜エレメント1を取り出す場合に本発明は特に好適である。
【0029】
処理槽7は被膜ろ過液を貯え、ろ過膜モジュール2を被膜ろ過液に浸漬することができれば特に制限されるものではなく、コンクリート槽、繊維強化プラスチック槽などが好ましく用いられる。また、処理槽7の内部が複数に分割されていても構わないし、複数に分割されている槽のうち一部をろ過膜エレメントを浸漬する槽として、他方を脱窒槽として利用し、被膜ろ過液を互いの分割されている槽間で循環されるようにしていてもよい。
【0030】
支持部材は分離膜を貼り付けて形状を保持することができれば特に制限されるものではなく、ABSや塩化ビニル、ポリプロピレン等の樹脂製のものが好ましく用いられる。
【0031】
分離膜は被膜ろ過液からの透過水の分離ができれば特に制限されるものではなく、ポリエチレンやポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンなどの樹脂からなるものが好ましく用いられる。
【0032】
透過水流路(b)3、集水管4、送水配管(c)5および送水配管(d)9は透過水を所定の位置まで導くことができれば特に制限されるものではなく、ポリエチレンや塩化ビニル、ポリプロピレン等の樹脂製のもの、ステンレス等の鋼管が必要に応じて組み合わされて用いられる。
【0033】
閉塞可能部はボール弁、バタフライ弁やゲート弁等のバルブが好ましく用いられる。
【0034】
膜ろ過用ポンプは、ろ過膜モジュールによる膜ろ過固液分離に必要な吸引力を与えるために、透過水を吸引するポンプであり、特に形状を制限されるものではないが、通常は減圧状態から300kPa以下で運転されるポンプが使用される。また、吸引ポンプの代わりに、自然水頭差を駆動力として膜ろ過を行うことも可能である。
【実施例】
【0035】
<実施例1>
ポリエステル不織布にポリフッ化ビニリデン膜がコーティングされた複合平膜(細孔径0.08μm)を有効膜部分より若干大きい形状に裁断し、ABS樹脂製のフレームの両面に貼り付けた平膜のろ過膜エレメント1(有効膜部分:縦1010mm、幅470mm、有効膜面積0.9m)50枚を図1に示す浸漬式膜ろ過装置(ろ過膜エレメントの設置間隔7.5mm)のコンクリート製の処理槽7(内寸の幅2.8m×奥行1.2m×深さ2.1mの直方体状)に浸漬した。透過水流路(b)3にはポリウレタン製のチューブ(内径8mmφ×外径11mmφ×全長360mm)を使用した。集水管4と送水配管(c)5の内径はそれぞれ32mmであった。バルブ6は送水配管(c)5の中間に設置し、被膜ろ過液の液面水位より1m上位に設置した。また真空ポンプ10をバルブ6とフランジ部8の中間に設置した。被処理液として活性汚泥の濃度(MLSS)が18,000ppmである生活系廃水を供給し、膜ろ過ポンプをバルブ6よりも下流側にある配管9に設け、16.0L/分で膜ろ過運転を行った。
【0036】
その後、膜ろ過ポンプを停止して上記条件の膜ろ過運転を停止し、真空ポンプ10を運転した状態でバルブ6を閉とし、バルブ6の下流側にあるフランジ部8における連通結合を切り離し、送水配管(c)5、送水配管(d)9を分離して、ろ過膜モジュール2を処理槽7外に出し、安定した場所にろ過膜モジュール2を静置した後、ろ過膜エレメントを取り出した。その結果、隣接するろ過膜同士が接触せず、ろ過膜を傷つけずにろ過膜エレメントを1枚ずつ交換することができた。
【0037】
<実施例2>
実施例1と同条件にて運転しているろ過膜モジュール2について、同条件での膜ろ過運転を停止し、真空ポンプ10を運転した状態でバルブ6を閉とし、バルブ6の下流側にあるフランジ部8における連通結合を切り離し、送水配管(c)5、送水配管(d)9を分離して、ろ過膜モジュール2を処理槽7外に出し、安定した場所にろ過膜モジュール2を静置した。その状態で3ヶ月保管した後、処理槽7内に戻して再度膜ろ過運転を開始した。その結果、運転再開後も以前と同じ条件での膜ろ過流量を得ることができた。
【0038】
<実施例3>
実施例1と同条件にて運転しているろ過膜モジュール2について、上記条件の膜ろ過運転を停止し、バルブ6の下流側にあるフランジ部8における連通結合を切り離し、送水配管(c)5、送水配管(d)9を分離して、ろ過膜モジュール2を処理槽7外に出し、安定した場所にろ過膜モジュール2を静置した後、真空ポンプ10を運転した状態でバルブ6を閉とし、ろ過膜エレメントを取り出した。その結果、隣接するろ過膜同士が接触せず、ろ過膜を傷つけずにろ過膜エレメントを1枚ずつ交換することができた。
【0039】
<実施例4>
実施例1と同条件にて運転しているろ過膜モジュール2について、上記条件の膜ろ過運転を停止し、バルブ6の下流側にあるフランジ部8における連通結合を切り離し、送水配管(c)5、送水配管(d)9を分離して、ろ過膜モジュール2を処理槽7外に出し、安定した場所にろ過膜モジュール2を静置した後、真空ポンプ10を運転した状態でバルブ6を閉とした。その状態で3ヶ月保管した後、処理槽7内に戻して再度膜ろ過運転を開始した。その結果、運転再開後も以前と同じ条件での膜ろ過流量を得ることができた。
【0040】
<比較例1>
実施例1と同条件にて運転しているろ過膜モジュール2について、上記条件の膜ろ過運転を停止した後バルブ6を閉とし、バルブ6の下流側にあるフランジ部8における連通結合を切り離し、送水配管(c)5、送水配管(d)9を分離して、ろ過膜モジュール2を処理槽7外に出し、安定した場所にろ過膜モジュール2を静置した後、ろ過膜エレメントを取り出した。その結果、ろ過膜モジュール2内に溜まっていた透過水によって、ろ過膜モジュール2内のろ過膜エレメント100枚中30枚の隣接する膜ろ過同士が接触し、ろ過膜を取り出す際にろ過膜面の擦過による損傷が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、浄水、下水、し尿、産業廃水等を浄化処理するための膜分離方法、それに用いられるろ過膜モジュールおよびエレメント、さらにそれらの取り出しおよび保管に用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1:ろ過膜エレメント
2:ろ過膜モジュール
3:透過水流路(b)
4:集水管
5:送水配管(c)
6:バルブ
7:処理槽
8:フランジ部
9:送水配管(d)
10:真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の支持部材の両面もしくは片面にシート状の分離膜が貼付され、前記分離膜では被膜ろ過液が膜ろ過されて前記支持部材と前記分離膜との間に形成された透過水流路(a)で透過水が取り出されるろ過膜エレメントが、互いに間隔を空けて設けられた複数のろ過膜エレメントと、前記透過水流路(a)にそれぞれ連通した複数の透過水流路(b)と、前記複数の透過水流路(b)の全てに連通した集水管とを有するろ過膜モジュールと、前記集水管に連通した送水配管(c)と、前記送水配管(c)に連通した送水配管(d)を備え、前記ろ過膜モジュールは前記被膜ろ過液に浸漬されており、前記透過水流路(b)、前記集水管、前記送水配管(c)のいずれかが閉塞可能部を有している浸漬型膜ろ過装置から前記ろ過膜エレメントを取り出すに際し、前記閉塞可能部において前記透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせた状態で前記閉塞可能部を閉にし、次いで前記送水配管(c)と前記送水配管(d)とを離して前記ろ過膜モジュールおよび前記送水配管(c)を前記被膜ろ過液の外に出し、その後前記ろ過膜モジュールからろ過膜エレメントを取り出すことを特徴とするろ過膜エレメントの取り出し方法。
【請求項2】
平板状の支持部材の両面もしくは片面にシート状の分離膜が貼付され、前記分離膜では被膜ろ過液が膜ろ過されて前記支持部材と前記分離膜との間に形成された透過水流路(a)で透過水が取り出されるろ過膜エレメントが、互いに間隔を空けて設けられた複数のろ過膜エレメントと、前記透過水流路(a)にそれぞれ連通した複数の透過水流路(b)と、前記複数の透過水流路(b)の全てに連通した集水管とを有するろ過膜モジュールと、前記集水管に連通した送水配管(c)と、前記送水配管(c)に連通した送水配管(d)を備え、前記ろ過膜モジュールは前記被膜ろ過液に浸漬されており、前記透過水流路(b)、前記集水管、前記送水配管(c)のいずれかが閉塞可能部を有している浸漬型膜ろ過装置から前記ろ過膜エレメントを取り出すに際し、前記送水配管(c)と前記送水配管(d)とを離して前記ろ過膜モジュールおよび前記送水配管(c)を被膜ろ過液の外に出し、次いで前記閉塞可能部において前記透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせた状態で前記閉塞可能部を閉にし、その後前記ろ過膜モジュールからろ過膜エレメントを取り出すことを特徴とするろ過膜エレメントの取り出し方法。
【請求項3】
前記閉塞可能部よりも膜ろ過方向における下流側であって、前記送水配管(c)または前記送水配管(d)に接続された流れ発生ユニットによって前記透過水を膜ろ過時と同じ方向に流れを生じさせることを特徴とする請求項1または2に記載のろ過膜エレメントの取り出し方法。
【請求項4】
前記流れ発生ユニットが真空ポンプである請求項3に記載のろ過膜エレメントの取り出し方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−81904(P2013−81904A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223608(P2011−223608)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】