説明

ろ過装置、ろ過器及びろ過方法

【課題】縣濁物質を多く含むサンプル液であっても簡易な構成で逆洗の頻度を抑制して連続的にろ過することが可能なろ過器、ろ過装置及びろ過方法を提供する。
【解決手段】ろ過器1は、サンプル液が供給されるサンプル入口21と、ろ液を排出するろ液出口41と、供給されたサンプル液のうちろ過されなかったサンプル液を排出するドレイン出口42と、を有する。サンプル入口21から所定の圧力をもって供給されたサンプル液は、ケース2の内部空間Aに導かれる。サンプル液は、その一部がディスクフィルタ3によりろ過されてろ液としてカバー4のろ液出口41から排出される。ケース2の内部空間Aに供給されたサンプル液の一部は、貫通穴37からドレイン出口42の方向へ所定の流速で流れる。この流れにより、ディスクフィルタ3の外周面に付着した縣濁物質が速やかに剥離される。剥離された縣濁物質は、サンプル液と共にドレイン出口42から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被ろ過水をろ過するろ過装置、ろ過器及びろ過方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水や環境水の成分のオンライン分析を行う場合に、サンプル液中のゴミ等の縣濁物質が分析装置に混入して測定値の精度が落ちたり、分析装置の配管が目詰まりして測定が困難になったりする問題が発生する。その対策として、従来では、サンプル液をフィルタ等によりろ過をして縣濁物質を取り除き、分析装置に導入する構成が採用されている。その場合に用いるフィルタとして、ろ過面積を広く確保可能で洗浄が容易である等の理由により、いわゆるディスクフィルタが採用される場合がある。
【0003】
このディスクフィルタは、半径方向に延びる複数の溝が形成された樹脂製の薄いディスクを複数枚重ね合わせて構成されたものである。そして、重ね合わされた複数枚のディスク同士が互いに密着するように押し付けることにより、ディスクの溝よりも大きな縣濁物質がろ過される。すなわち、ディスクフィルタの外周面にサンプル液が圧力をもって搬送されると、サンプル液に含まれる縣濁物質のうち互いに密着したディスク間の隙間を通過できない縣濁物質が外周面に残存する。このように、搬送されたサンプル液は全量ろ過されてディスクフィルタの内周面へ進み、更に所定の流路を経て分析装置にろ液として供給される。
【0004】
このようにディスクフィルタを用いてサンプル液をろ過すると、ディスクフィルタの表面に縣濁物質が付着する。そして、継続的なろ過により縣濁物質が蓄積されてゆくと、ろ過効率が低下し、分析装置へのろ液の供給量が減少する。このため、ディスクフィルタのろ過方向とは反対の方向に高圧空気(高圧エア)及び水道水を流すことによって、ディスクフィルタの表面に蓄積している縣濁物質を除去するいわゆる逆洗(逆洗浄)を定期的に行う必要がある。このような逆洗を行うことが可能なろ過装置は、従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1には、逆流フィルタ洗浄サイクルのための装置と共に一群の円筒状フィルタ部材ディスクを具えた型式の液体ろ過装置が開示されている。すなわち、特許文献1に開示の液体ろ過装置は、筒状のノズル付き導管を具えた一体形成のフィルタコア部材が設けられ、水が導管内の圧力によりフィルタディスクの自由回転を可能にするようにジェットの形態で吐出されるように構成されている。これにより、じょうご形のゴムスリーブ形態の一方向弁は、出口ポートへのろ過水の流れを許容するが、出口ポートからフィルタ部材を通って入口ポートの方向への洗浄水の流れを妨げている。
【0006】
【特許文献1】特表2002−508234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、このような逆洗は、サンプル液に含まれる縣濁物質の量に応じて定期的に行われる。したがって、サンプル液が縣濁物質を多く含むときには、逆洗を頻繁に行わなければならなくなる。更には、縣濁物質を大量に含むサンプル液をろ過するときには、逆洗を頻繁に行っても十分に洗浄することができず、ディスクフィルタを取り外して洗浄しなければならないことも考えられる。このような逆洗や洗浄の際には、サンプル液をろ過することができず、したがって、サンプル液に縣濁物質が大量に含まれると、サンプル液をろ過したろ液を分析装置へ連続的に供給することが困難になる。また、逆洗直後には供給量が回復するものの、急激に供給量が低下してしまい、分析装置へろ液を安定的に供給することが困難になる。
また、大量に縣濁物質を含むサンプル液に対応するために、ディスクフィルタを並列配置する構成も考えられるが、ろ過装置の大型化やコストアップになってしまい、好ましくない場合がある。
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、縣濁物質を多く含むサンプル液であっても簡易な構成で逆洗の頻度を抑制して連続的にろ過することが可能なろ過器、ろ過装置及びろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもと、本発明が適用されるろ過装置は、被ろ過液である液体を供給する第1流路と、当該第1流路により供給される液体をフィルタでろ過してろ液を排出するろ過器と、当該ろ過器から排出されるろ液を搬送する第2流路と、を含むろ過装置であって、前記フィルタは、薄板円盤の中心に形成された貫通穴と当該薄板円盤の少なくとも片方の面に形成されたろ過用の溝とを有する溝付き部材を整列して積み重ねて隣り合う当該溝付き部材を互いに密着させて構成されたディスクフィルタであり、前記ろ過器は、前記第1流路と接続されて液体が供給される液体入口と、前記第2流路に接続され、前記ディスクフィルタを使用して当該液体をろ過してろ液を排出するろ液出口と、当該液体の一部を当該ディスクフィルタを使用したろ過を行わずに排出する液体出口と、を備え、前記ろ過器の前記液体出口に接続され、当該ろ過器から排出される液体を搬送する第3流路を更に含むことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、前記ディスクフィルタの前記溝付き部材の積み重ね方向が上下方向となるように当該ディスクフィルタが前記ろ過器に配設され、前記ろ過器の液体入口が前記ディスクフィルタの下方に位置することを特徴とすることができる。また、前記ろ過器は、前記ディスクフィルタの前記溝付き部材の円周方向に沿って略等間隔になるように配設された複数の通水穴を前記液体入口の近傍に有し、前記液体入口は、前記複数の通水穴を介して前記ろ過器の内部に連通することを特徴とすることができる。また、前記ディスクフィルタを洗浄するための高圧空気及び/又は洗浄水を前記液体入口から前記ろ過器に供給する第4流路を含むことを特徴とすることができる。
【0011】
他の観点から捉えると、本発明が適用されるろ過器は、薄板円盤の中心に貫通穴を有する溝付きのフィルタ部材を保持部材に整列して積み重ねて構成されたディスクフィルタが容器の内部に設置されるろ過器であって、前記ディスクフィルタは、隣り合う前記フィルタ部材同士が互いに密着するための付勢力を受けると共に、隣り合う当該フィルタ部材の間を液体が通過することにより当該液体をろ過するものであり、ろ過される液体を前記容器の内部に供給する供給路に接続される第1開口部を備え、前記第1開口部から供給される液体を前記ディスクフィルタでろ過して生成されるろ液を排出するろ液排出路に接続される第2開口部を備え、前記第1開口部から供給される液体の一部を前記ディスクフィルタでろ過せずに排出する液体排出路に接続される第3開口部を備えることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、前記第1開口部は、前記ディスクフィルタに対して前記フィルタ部材の厚さ方向の延長線上に位置することを特徴とすることができる。また、前記ディスクフィルタを構成する前記フィルタ部材の円周方向に沿って略等間隔になるように配設された複数の通水穴を前記第1開口部の近傍に有し、前記第1開口部は、前記複数の通水穴を介して前記容器の内部に連通することを特徴とすることができる。
【0013】
更に他の観点から捉えると、本発明が適用されるろ過方法は、溝付きのフィルタ部材を整列して積み重ねると共に隣り合う当該フィルタ部材同士が互いに密着するディスクフィルタを使用して液体をろ過するろ過方法であって、供給される液体の一部が前記ディスクフィルタを通過してろ液としてろ液出口から排出し、前記液体の残部を前記ディスクフィルタでろ過せずに液体出口から排出することを特徴とするものである。
【0014】
ここで、前記ディスクフィルタの下方から液体を供給することを特徴とすることができる。また、前記ディスクフィルタの前記フィルタ部材の円周方向に略均等な流量となるように液体を供給することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、縣濁物質を多く含むサンプル液であっても従来の場合と比べて簡易な構成で逆洗の頻度を抑制して連続的にろ過することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るろ過器1を示す概略構成図である。図2は、図1のろ過器1の分解斜視図である。
図1に示すように、ろ過器1は、縣濁物質(縣濁物、水中に浮遊する粒子状物質、浮遊物質(Suspended Solids))が含まれるサンプル液(サンプル、被ろ過液、試料水)をろ過してろ液(ろ過水)を生成するためのものであり、後述するように、サンプル液が供給されるサンプル入口(液体入口、第1開口部)21と、ろ液を排出するろ液出口(第2開口部)41と、供給されたサンプル液のうちろ過されなかったサンプル液を排出するドレイン出口(液体出口、第3開口部)42と、を有する。更に説明すると、ろ過器1は、供給されたサンプル液の全量をろ過する構造(全量ろ過の構造)を採用しておらず、供給されたサンプル液の一部をろ過する一方で、残りのサンプル液をろ過せずに排出する構造(部分ろ過の構造)を採用している。
【0017】
ろ過器1は、図1又は図2に示すように、主要な構成部品として、内部空間Aを有するケース2と、ケース2の内部空間Aに設置されるディスクフィルタ3と、ケース2に取り付けられるカバー4と、を備えている。
【0018】
ケース2は、ろ過器本体としての部品である。このケース2は、サンプル液を内部空間Aに導き入れるためのサンプル入口21を備えている。このサンプル入口21は、ケース2の下側に形成されている。
また、ケース2は、ディスクフィルタ3をケース2の内部空間A内に取り付ける際に用いられると共にディスクフィルタ3に付勢力を与えるバネ5を取り付けるための取付部(図1参照)22を備えている。この取付部22は、サンプル入口21に連通する両端開放の管形状であり、その外周には、バネ5が取り付けられる。
【0019】
ディスクフィルタ3は、サンプル液をろ過する機能を有する部品である。このディスクフィルタ3は、図2に示すように、中心に1つの貫通穴が形成された薄板円盤状のディスク(溝付き部材、フィルタ部材)31と、複数のディスク31が整列して積み重ねて取り付けられるホルダ32と、ホルダ32に取り付けられたディスク31を押さえる押さえ部材33と、を備えている。更に説明すると、ディスクフィルタ3は、後述するホルダ32の保持部34に複数枚のディスク31を挿入して後述するホルダ32のフランジ部35上に複数枚のディスク31を積み重ねた後に押さえ部材33を載せて構成されている。後述するように、ディスクフィルタ3は、ディスク31の積み重ね方向が上下方向となるように、ケース2に配設される。
【0020】
ディスク31の少なくとも片方の面には、半径方向に延びる図示しない溝が複数形成されている。この溝の大きさにより、ろ過するサンプル液の縣濁物質の大きさが決定される。すなわち、隣り合う溝付きのディスク31同士を密着させると、ディスク31の外周面から中心に向けて延びる所定の大きさの流路が形成される。この流路を通過できないサンプル液の縣濁物質がディスク31の外周面に残り、サンプル液がろ過される。
【0021】
ホルダ32は、ディスク31の貫通穴に対応する形状の保持部34と、保持部34の一端に形成されたフランジ部35と、保持部34とは反対側のフランジ部35の面に位置してケース2の取付部22と係合する管形状の係合部36と、係合部36に半径方向に延在するように形成され、係合部36の円周方向に関して略均等間隔で位置する複数の貫通穴(通水穴)37と、を備えている。
【0022】
更に説明すると、ディスクフィルタ3がケース2の取付部22に取り付けられると、サンプル入口21がディスクフィルタ3の下方に位置する。言い換えると、サンプル入口21は、ディスクフィルタ3のディスク31の厚さ方向の延長線上に位置する。
また、ディスクフィルタ3がケース2の取付部22に取り付けられると、取付部22はフランジ部35により閉塞される一方で、取付部22により画定された入口領域Bは、貫通穴37を介してケース2の内部空間Aと連通する。したがって、サンプル入口21は、取付部22及び係合部36から貫通穴37を通じてケース2の内部空間Aと接続される。
また、ディスクフィルタ3がケース2の取付部22に取り付けられると、係合部36は、取付部22に取り付けられているバネ5と当接する。したがって、ディスクフィルタ3は、係合部36を介してバネ5による付勢力を受ける。ディスクフィルタ3がそのような付勢力を受けると、隣り合うディスク31同士が互いに密着し、これにより、ディスクフィルタ3はろ過機能を発揮する。
【0023】
押さえ部材33は、ディスク31とほぼ同じ形状であり、中心に1つの貫通穴が形成された円盤状の部材である。押さえ部材33は、ホルダ32のフランジ部35と共に複数枚のディスク31を束ねる部材である。すなわち、押さえ部材33がホルダ32に取り付けられると、押さえ部材33は、保持部34に対して軸方向に相対移動可能である。そして、押さえ部材33とフランジ部35とが互いに近づく方向の付勢力を係合部36を介してバネ5から受けることで、押さえ部材33とフランジ部35との間に挟まれた複数枚のディスク31は互いに密着し、これにより、ディスクフィルタ3のろ過機能が確保される。
【0024】
カバー4は、サンプル入口21から供給されたサンプル液の一部がディスクフィルタ3によりろ過されたろ液を排出するろ液出口41と、ろ過されないサンプル液の残りをそのまま排出するドレイン出口42と、ディスクフィルタ3の押さえ部材33が当接する当接部43と、を備えている。
【0025】
このように構成されたろ過器1において、ケース2のサンプル入口21から所定の圧力をもって供給されたサンプル液は、ケース2の取付部22そしてディスクフィルタ3の係合部36からディスクフィルタ3の貫通穴37を通ってケース2の内部空間Aに導かれる。その後、サンプル液は、その一部がディスクフィルタ3によりろ過されてろ液としてカバー4のろ液出口41から排出される。サンプル液がろ過されると、ディスクフィルタ3の外周面にサンプル液の縣濁物質が付着する。
【0026】
ろ過に伴って付着した縣濁物質の処理について更に説明すると、ケース2の内部空間Aに供給されたサンプル液の一部は、貫通穴37からドレイン出口42の方向へ所定の流速で流れる。すなわち、貫通穴37からディスクフィルタ3の外側を通ってドレイン出口42へのサンプル液の流れが形成される。そして、上述したように、貫通穴37が円周方向に略均等間隔で位置しているため、サンプル液は、ディスクフィルタ3の外周面に関して略均等に分散されて流れる。かかるサンプル液の水流により、ディスクフィルタ3の外周面に付着した縣濁物質が速やかに剥離される。すなわち、サンプル液に含まれる縣濁物質がディスクフィルタ3の外周面に蓄積しにくくなる。剥離された縣濁物質は、サンプル液と共にドレイン出口42から排出される。
【0027】
このように、本実施の形態に係るろ過器1は、ろ過されたろ液が排出される流路とろ過されずに排出される流路とを有する構造であることから、逆洗を行わなくてもディスクフィルタ3の外周面に付着した縣濁物質を洗い流す自浄作用を有する。したがって、例えば、製紙工場での排水処理前の廃水(縣濁物質が多いサンプル液)をろ過してろ液を分析装置に供給する設備においても、連続的なろ過を行うことが可能になる。また、自浄作用のために、逆洗を行う時間間隔を長くすることができ、ろ過器1を並列配置しなくてもろ液の安定的な供給という要求に対応することが可能になる。
また、ドレイン出口42から排出されるサンプル液の量を調整することにより、必要な量のろ液をろ液出口41から排出することができ、必要以上にろ液を採取しないため、ディスクフィルタ3の詰まりを防止することが可能になる。
【0028】
なお、本実施の形態では、サンプル入口21からサンプル液を供給し、その一部をドレイン出口42から排出する場合を説明したが、ドレイン出口42からサンプル液を供給し、その一部をサンプル入口21から排出する場合であっても良い。すなわち、2つの出口を備え、そのうちの一方の出口は、供給されたサンプル液がろ過されてろ液として排出される排出口であり、他方の出口は、供給されたサンプル液がろ過されずに排出される排出口である構成を備えるように構成することが考えられ、その中の一態様としてろ過器1を図示して説明したものである。
【0029】
ここで、逆洗について付言する。本実施の形態に係るろ過器1では、上述したようにディスクフィルタ3の外周面への縣濁物質の付着・蓄積を防止することが可能であるが、サンプル液に極めて多量の縣濁物質が含まれているときには、定期的に逆洗を行う必要がある。
【0030】
本実施の形態に係るろ過器1で逆洗を行うときには、ろ液出口41からろ過器1に高圧空気及び水道水を供給する。すると、ディスクフィルタ3のフランジ部35がバネ5の付勢力に抗してケース2のサンプル入口21の方向に移動し、それまで互いに密着していたディスクフィルタ3のディスク31の隙間が拡がる。このため、ディスクフィルタ3の外周面に蓄積した縣濁物質が除去される。そして、除去された縣濁物質は、サンプル入口21ないしドレイン出口42から排出される。
【0031】
また、逆洗の他の態様としては、高圧空気及び水道水をろ液出口41から供給すると共にサンプル入口21からも、高圧空気及び/又は水道水を供給する。すなわち、サンプル入口21から、高圧空気と水道水を供給する方式、高圧空気を供給する方式又は水道水を供給する方式を採用することが考えられる。このようにすることにより、ディスクフィルタ3の外周面に蓄積した縣濁物質がより確実に除去され、かつ、ケース2内の洗浄も行うことが可能になる。
【0032】
図3は、本実施の形態に係るろ過装置6の構成を示す概略構成図である。
図3に示すろ過装置6は、上述したろ過器1を組み込んで構成されている。具体的に説明すると、ろ過装置6は、ユーザの操作に従って制御する操作・制御部61と、サンプル液をろ過するろ過器1と、ろ過器1から排出されたろ液が収容される受水槽62と、ろ過器1から排出されたろ液が供給される計測器63と、を備えている。
【0033】
また、ろ過装置6は、ろ過器1のサンプル入口21に接続され、ろ過器1にサンプル液を供給するための流路(第1流路、供給路)71と、ろ過器1のろ液出口41に接続され、ろ過器1から排出されたろ液を排水するための流路(第2流路、ろ液排出路)72と、ろ過器1のドレイン出口42に接続され、ろ過器1でろ過されずにろ過器1から排出されたサンプル液を排水するための流路(第3流路、液体排出路)73と、を備えている。また、ろ過装置6は、逆洗を行う際に高圧空気をろ過器1に供給する流路74と、逆洗を行う際に水道水をろ過器1に供給する流路75と、を備えている。これらの流路71,72,73,74,75の各々は、配管で構成されている。
【0034】
流路72の途中には、計測器63への流路部分と受水槽62への流路部分とに分岐する分岐点C1が設けられている。すなわち、分岐点C1では、ろ過器1からのろ液が計測器(分析計)63へ流れ、また、ろ過器1からのろ液が受水槽62へ流れるように構成されている。このように、流路72は、ろ過器1から計測器63にろ液を搬送するように構成されている。計測器63については後述する。
【0035】
ろ過装置6には、流路72と流路74及び流路75とが互いに接続する接続点C2が配設されている。また、ろ過装置6には、流路71と流路74とが互いに接続する接続点C3が配設されている。このように、流路74は、流路72と接続点C2で接続するように構成され、かつ、流路71と接続点C3で接続するように構成されている。すなわち、接続点C2では、流路74からの高圧空気及び流路75からの水道水を流路72に供給することが可能であり、また、接続点C3では、流路74からの高圧空気を流路71に供給することが可能である。付言すると、接続点C2は、分岐点C1のろ液流れ方向上流側に位置している。
【0036】
流路72には、接続点C2と分岐点C1との間に電磁弁81が設置されている。流路72には、分岐点C1と受水槽62との間に電磁弁82が設置されている。また、流路73には、流量調整弁(ボールバルブ)83が設置されている。電磁弁81,82は、開状態と閉状態とを切り替え可能に構成されている。流量調整弁83は、ろ過器1から排出されるサンプル液の流量を変えることができるように流量可変に構成されている。
【0037】
また、流路74には、高圧空気を減圧する減圧弁84が設置されている。また、減圧弁84と接続点C2との間の流路74には、高圧空気を接続点C2に供給したり供給を中止したりするための電磁弁85が設置されている。また、流路75には、水道水を接続点C2へ供給したり供給を中止したりするための電磁弁86が設置されている。電磁弁85,86は、開状態と閉状態とを切り替え可能に構成されている。
【0038】
また、流路74には、減圧弁84と電磁弁85との間に分岐点C4が設けられている。この分岐点C4は、接続点C2への高圧空気の流路部分の途中で接続点C3への流路部分に分岐するためのものである。すなわち、分岐点C4は、流路74からの高圧空気を、接続点C3を介してろ過器1のサンプル入口21に供給するためのものである。
そして、分岐点C4と接続点C3との間の流路74には、高圧空気を接続点C3に供給したり供給を中止したりするための電磁弁87が設置され、かつ、電磁弁87と接続点C3との間の流路74には、流量調整弁(ボールバルブ)88が設置されている。電磁弁87は、開状態と閉状態とを切り替え可能に構成され、流量調整弁88は、ろ過器1へ供給する高圧空気の流量を変えることができるように流量可変に構成されている。
【0039】
上述した電磁弁81,82,85,86,87及び流量調整弁83,88の各々は、操作・制御部61によりその作動が制御されている。すなわち、操作・制御部61は、サンプル液のろ過を行う時(サンプリング時)とろ過に伴うディスクフィルタ3(図1又は図2参照)の詰まりを除去する逆洗時とで、予め定められた処理手順に基づいて、これらの電磁弁81,82,85,86,87の開閉の切り替え動作や流量調整弁83,88の開度調整動作を行う。
以下、サンプリング時及び逆洗時の場合の各々の作動について以下、具体的に説明する。
【0040】
サンプリング時には、操作・制御部61は、電磁弁81,82を開状態にし、かつ、電磁弁85,86,87を閉状態にする。また、操作・制御部61は、流量調整弁83を所定の開度にする。この状態で、流路71からろ過器1のサンプル入口21にサンプル液を供給する。上述したように、ろ過器1にてサンプル液がろ過されたろ液がろ液出口41から排出されると、ろ液は、流路72を流れて計測器63に供給される。また、ろ液の一部は、受水槽62に流れ、オーバーフロー分として排出される。
【0041】
そして、サンプル入口21から供給されたサンプル液の一部は、ディスクフィルタ3(図1又は図2参照)によりろ過されず、かつ、ディスクフィルタ3の外周面に付着した縣濁物質が速やかに外周面から離れるような流れを形成して、そのままドレイン出口42から排出され、流路73を流れて排出される。流路73を流れるサンプル液の流量は、流量調整弁83により調整可能である。更に説明すると、サンプル入口21から供給されるサンプル液流量に対してドレイン出口42から排出されるサンプル液流量の割合が大きくなると、ろ過する量が減り、ディスクフィルタ3のろ過に伴う汚れの程度が少なくなる一方で、ろ液出口41から排出されるろ液の量が減少する。また、ドレイン出口42から排出されるサンプル液流量の割合が小さくなると、ろ液出口41から排出されるろ液の量が増大する一方で、ディスクフィルタ3のろ過に伴う汚れの程度が多くなる。ユーザは、このような事情と計測器63に供給すべき必要量を考慮して、流量調整弁83を制御することになる。
【0042】
逆洗時には、操作・制御部61は、電磁弁81を閉状態にした後に電磁弁85,86を開状態にする。また、操作・制御部61は、流量調整弁83を所定の開度にする。この状態で、流路74及び流路75から接続点C2を介して流路72のろ液流れ方向とは逆の方向に高圧空気及び水道水を流してろ液出口41に供給する。すると、ディスクフィルタ3に付着・蓄積した縣濁物質がディスクフィルタ3から剥離してサンプル入口21ないしドレイン出口42から排出される。
【0043】
なお、逆洗時に、操作・制御部61は、電磁弁87を開状態にし、かつ、流量調整弁88を所定の開度にする制御も考えられる。この場合には、流路75からの高圧空気が、分岐点C4から接続点C3へ流れた後に流路71を介してろ過器1のサンプル入口21から供給される。供給された高圧空気により、ディスクフィルタ3(図1又は図2参照)の外周面が洗浄される。したがって、より確実にディスクフィルタ3の外側に付着した汚れを洗浄することが可能になる。
【0044】
上述した逆洗は、定期的に行われるものであり、その時間間隔は、計測器63の要求するサンプリングのタイミングによるが、サンプル液の汚れ度合いやディスクフィルタ3の目詰まり度合いにより、適切に設定することになる。すなわち、操作・制御部61は、計測器63との測定タイミングにより、連動して電磁弁81等を自動的に制御する。
【0045】
ろ過器1でサンプル液がろ過されたろ液が流路72を介して供給される計測器63について説明する。この計測器63は、ろ液について所定の事項を計測するためのものであり、計測器63としては、その図示を省略するが、例えば、COD(Chemical Oxygen Demand)計測器やTOC(Total Organic Carbon)計測器、UV(UltraViolet)計測器(紫外線吸光度計測器)を挙げることができる。
【0046】
更に説明すると、事業所や工場からの排水に含まれる汚濁物質の監視は、水質汚濁防止法および水質総量規制などの観点から重要になってきている。特に、排水量の多い製紙・石油化学・鉄鋼などの大規模工場においては、最終放流よりも上流の複数箇所でのモニタリングを行い、総合排水処理管理システムを構築している。排水処理工程ごとに水質監視を行うことで最終放流の水質汚濁事故を未然に防止している。その際、有機汚濁物質の監視用計測器としては、上述したCOD計測器、TOC計測器又はUV計測器等の連続測定機器が使用されている。なお、ここにいう総量規制とは、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海などの閉鎖性水質保全対策として、CODを指定項目とする汚濁負荷量の総量を削減するために定められた規制をいう。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態では、ろ過器1に供給されるサンプル液の一部をろ過する部分ろ過の構造を採用し、かつ、ろ過器1内では、ろ過されないサンプル液がディスクフィルタ3の外周面に向かった後にドレイン出口42から排出される流れを形成することで、サンプル液のろ過に伴うディスクフィルタ3の外周面の汚れを洗浄している。このため、縣濁物質が多く含まれているサンプル液をろ過する場合であっても、簡易な構成によりディスクフィルタ3の目詰まりを防止することが可能になる。したがって、逆洗の時間間隔を長くすることが可能になり、逆洗の頻度を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施の形態に係るろ過器を示す概略構成図である。
【図2】図1のろ過器の分解斜視図である。
【図3】本実施の形態に係るろ過装置の構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1…ろ過器、2…ケース、21…サンプル入口、22…取付部、3…ディスクフィルタ、31…ディスク、32…ホルダ、33…押さえ部材、34…保持部、35…フランジ部、36…係合部、37…貫通穴、4…カバー、41…ろ液出口、42…ドレイン出口、43…当接部、5…バネ、6…ろ過装置、61…操作・制御部、62…受水槽、63…計測器、71,72,73,74、75…流路、81,82,85,86,87…電磁弁、83,88…流量調整弁、84…減圧弁、A…内部空間、B…入口領域、C1,C4…分岐点、C2,C3…接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ろ過液である液体を供給する第1流路と、当該第1流路により供給される液体をフィルタでろ過してろ液を排出するろ過器と、当該ろ過器から排出されるろ液を搬送する第2流路と、を含むろ過装置であって、
前記フィルタは、薄板円盤の中心に形成された貫通穴と当該薄板円盤の少なくとも片方の面に形成されたろ過用の溝とを有する溝付き部材を整列して積み重ねて隣り合う当該溝付き部材を互いに密着させて構成されたディスクフィルタであり、
前記ろ過器は、前記第1流路と接続されて液体が供給される液体入口と、前記第2流路に接続され、前記ディスクフィルタを使用して当該液体をろ過してろ液を排出するろ液出口と、当該液体の一部を当該ディスクフィルタを使用したろ過を行わずに排出する液体出口と、を備え、
前記ろ過器の前記液体出口に接続され、当該ろ過器から排出される液体を搬送する第3流路を更に含むことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記ディスクフィルタの前記溝付き部材の積み重ね方向が上下方向となるように当該ディスクフィルタが前記ろ過器に配設され、
前記ろ過器の液体入口が前記ディスクフィルタの下方に位置することを特徴とする請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記ろ過器は、前記ディスクフィルタの前記溝付き部材の円周方向に沿って略等間隔になるように配設された複数の通水穴を前記液体入口の近傍に有し、
前記液体入口は、前記複数の通水穴を介して前記ろ過器の内部に連通することを特徴とする請求項2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記ディスクフィルタを洗浄するための高圧空気及び/又は洗浄水を前記液体入口から前記ろ過器に供給する第4流路を含むことを特徴とする請求項3に記載のろ過装置。
【請求項5】
薄板円盤の中心に貫通穴を有する溝付きのフィルタ部材を保持部材に整列して積み重ねて構成されたディスクフィルタが容器の内部に設置されるろ過器であって、
前記ディスクフィルタは、隣り合う前記フィルタ部材同士が互いに密着するための付勢力を受けると共に、隣り合う当該フィルタ部材の間を液体が通過することにより当該液体をろ過するものであり、
ろ過される液体を前記容器の内部に供給する供給路に接続される第1開口部を備え、
前記第1開口部から供給される液体を前記ディスクフィルタでろ過して生成されるろ液を排出するろ液排出路に接続される第2開口部を備え、
前記第1開口部から供給される液体の一部を前記ディスクフィルタでろ過せずに排出する液体排出路に接続される第3開口部を備えることを特徴とするろ過器。
【請求項6】
前記第1開口部は、前記ディスクフィルタに対して前記フィルタ部材の厚さ方向の延長線上に位置することを特徴とする請求項5に記載のろ過器。
【請求項7】
前記ディスクフィルタを構成する前記フィルタ部材の円周方向に沿って略等間隔になるように配設された複数の通水穴を前記第1開口部の近傍に有し、
前記第1開口部は、前記複数の通水穴を介して前記容器の内部に連通することを特徴とする請求項6に記載のろ過器。
【請求項8】
溝付きのフィルタ部材を整列して積み重ねると共に隣り合う当該フィルタ部材同士が互いに密着するディスクフィルタを使用して液体をろ過するろ過方法であって、
供給される液体の一部が前記ディスクフィルタを通過してろ液としてろ液出口から排出し、
前記液体の残部を前記ディスクフィルタでろ過せずに液体出口から排出することを特徴とするろ過方法。
【請求項9】
前記ディスクフィルタの下方から液体を供給することを特徴とする請求項8に記載のろ過方法。
【請求項10】
前記ディスクフィルタの前記フィルタ部材の円周方向に略均等な流量となるように液体を供給することを特徴とする請求項9に記載のろ過方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−142746(P2009−142746A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322481(P2007−322481)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)