説明

わらまたは他の軽量嵩高材料の処理容器

【課題】 わらなどの軽量嵩高セルロース系材料を効率的に化学的に処理する方法を提供する。
【解決手段】 略垂直な処理容器の上部注入口に軽量嵩高セルロース系材料を導入し、
前記材料が下方に向かって前記容器を移動する際に、前記材料を前記容器の内表面に設けられた少なくとも一つの耐圧縮性リングを通過するように移動させ、
前記容器内の前記材料を揺動させ、
前記容器の下部排出口から処理された材料を排出する、
ことを含むことを特徴とする軽量嵩高セルロース系材料を化学的に処理する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はわら(ストロー)や他の非木材セルロース系材料などの軽量嵩高セルロース系材料をパルプに加工する処理に関する。本発明は特にこのような材料の化学的処理に関する。
【背景技術】
【0002】
わらや他の軽量嵩高セルロース系材料は紙、建材や他のパルプを原料とする製品に使用するためにパルプに転換される。これらの材料は化学的および機械的処理により加工される。これらの材料の化学的処理は、典型的には苛性化学薬品を用いて短い加工時間で行われる。
【0003】
わらや他の軽量嵩高セルロース系材料を処理する化学的処理容器は、これらの材料の加水分解などの化学的処理に伴う過酷な化学的条件と短い滞留時間に適応する。従来の化学的処理容器は隣り合って配置された一連の水平管を含むもので、パンディア式蒸解釜(Pandia digester)と呼ばれている。導管によってこれらの管は繋がっており、導管は一つの管の出口から次の管の入口に流れる材料の流路になっている。管を配置するには、パンディア式蒸解釜を支持するための比較的複雑な機械的アセンブリが必要である。処理される材料はある管から次の管へと流れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管の中では、材料は30分未満の滞留時間で200℃の温度と20バール(約290ポンド/平方インチ(psi)の圧力に保たれる。各管内に配置されたスクリューにより各管内の材料を移動させる。これらのスクリューには材料が目詰まりしやすく、メンテナンスが必要である。
【0005】
これら複数の管のためにパンディア式蒸解釜はスクリューなどの多数の可動部材を有する機械的に複雑な装置となる。少なくともパンディア式蒸解釜における複数のスクリュー・コンベアよりも少ない可動部材を有する処理容器が長い間切実に求められてきた。また、たとえば、容器内で4分間という滞留時間で一日あたり400トンもの大量の材料を処理することのできる化学的処理容器も長い間切実に求められてきた。従って、比較的簡単な構造を持ち、大量のわらや他の軽量嵩高セルロース系材料を処理することのできる化学的処理容器が以前から求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、わらや他の非木材セルロース系材料のような軽量嵩高セルロース系材料の化学的処理用に単一容器が提供された。好ましくは、この容器は密閉された上部と下部を持つ内部処理槽を有する円筒で構成されており、少なくとも20バール、好ましくは少なくとも40バールの圧力と、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃の温度で使用可能である。処理槽は略垂直、たとえば、垂直から10度の範囲内に配置され、処理槽内での材料の流量や滞留時間にもよるが、直径1.5メートルから4メートル、高さ0.5メートルから20メートルである。
【0007】
材料は、容器の上部注入口から容器に供給すればよい。処理液(必要ならば、処理液は加水分解を促進する酸性の化学薬品であることが好ましいが、アンモニアによる処理も適している)および水を加えて処理槽内の材料の処理を促進し、より少ない排出量で材料を輸送することができる。耐圧縮性リングを処理槽の上部高さに配置してもよく、耐圧縮性リングの近くに振動機を設けてもよい。処理槽の下部排出部は、材料の排出を促進するための装置、たとえば材料の流れを促進するための処理槽の一次元側壁遷移部、材料を排出部に移動させるための回転装置、および処理槽底部への流体の注入を可能にし、材料が処理槽から排出されるときの材料に対する流体の比を増加させるバッフル板、あるいはこれらを組み合わせたものを含んでもよい。
【0008】
本発明によれば、軽量嵩高セルロース系材料を化学的に処理するための方法が提供され、この方法は、
略垂直な処理容器の上部注入口に軽量嵩高セルロース系材料を導入し、
前記材料が下方に向かって前記容器を移動する際に、前記材料を前記容器の内表面に設けられた少なくとも一つの耐圧縮性リングを通過するように移動させ、
前記容器内の前記材料を揺動させ、
前記容器の下部排出口から処理された材料を排出する、
ことを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、軽量嵩高セルロース系材料を化学的に処理するための処理容器が提供され、この処理容器は、
密閉された上部および下部ならびに上部から下部に延びる側壁を有し、少なくとも20バールの圧力と少なくとも100℃の温度で操作される略垂直な容器と、
前記容器の上部に設けられ、前記セルロース系材料を受け入れる材料注入口と、
前記容器内に、または前記材料注入口に接続された材料供給系中に設けられた水または液体注入口と、
前記側壁の内面に設けられた少なくとも一つの耐圧縮性リングと、
前記耐圧縮性リングの近くに設けられ、前記容器内の前記材料を揺動させる振動機と、
前記容器の下部に設けられた排出口と、
を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の好適かつ最良の実施形態を、添付図面で説明する。
図1はわらなどの軽量嵩高セルロース系材料(軽量セルロース系材料と総称する)を処理するために開発された化学的処理容器10の模式図である。一例として、軽量セルロース系材料は50〜120kg/m(キログラム/立方メートル)の密度を持つが、これは在来の木材チップよりも小さい。ここに述べる例では、この容器10は一日に400トンの軽量セルロース系材料を処理することができ、14立方メートルの容量を持つ垂直反応槽である。容器10は直径が一定の断面を有する円筒本体を持つ密閉容器で、円筒本体は上端と下端が密閉されていてもよい。
【0011】
一実施形態において、円筒容器10は、1.5メートルの直径と8メートルの高さを有する。他の実施形態においては、容器は1メートル〜10メートルの範囲、より狭くは3メートル〜4メートルの範囲の高さを有する。容器の高さは0.5メートル〜40メートルの範囲であればよい。容器の直径と高さは容器を流れる材料の所望の流量や材料の容器内の滞留時間によって選択することができる。
【0012】
容器の形状はここに記述した円筒容器の実施形態と異なっていてもよい。容器は非円形の断面形状を有し、一定ではなく、異なる寸法を有するものでよく、たとえば円錐体、角柱体または楕円体、あるいは単純な円筒、矩形または楕円よりも複雑な形状体であってもよい。本発明の容器の好ましい特徴は、従来の複数管からなる処理容器とは異なり、単一容器ということである。
【0013】
容器は少なくとも20バールの圧力と少なくとも200℃の温度、好ましくは少なくとも40バール(約580psi)の圧力と少なくとも300℃の温度で操作できるものである。これらの温度と圧力は加水分解のような処理により軽量セルロース系材料を加工するのに適している。容器に加えられる液体、例えば容器の排出口からの材料の輸送を促進する液体あるいは冷却液などは、好ましくは水あるいは酸性液である。酢酸、ギ酸、エタノール、メタノールなどの有機処理液を用いてもよい。一実施形態では、容器10は、たとえば、わらなどの非木材軽量セルロース系材料を酸性処理条件で加水分解処理するために用いられる。一実施形態では、容器内の材料の滞留時間は10分〜120分の間が好ましいが、さらに滞留時間を長くするとさらに有利な場合がある。
【0014】
容器10の運転には材料レベルの制御のような、化学的処理容器内のセルロース系材料の流量を制御する従来型装置を含んでもよい。制御システムは、たとえばガンマ・ゲージを用いて容器内の固体レベルを監視し、材料供給系12から槽に入る材料の流量と下部排出口20から排出されるパルプの流量を制御するために使用するフィードバック信号を提供することができる。また、ストレイルゲージなどの力センサーを容器内に装備して容器内の圧力と力を監視することもできる。さらに、センサーは供給系12中のスクリューコンベアなどの供給系の中の可動部材の回転速度や振動機の動きを監視してもよい。
【0015】
容器内のセルロース系材料の滞留時間と温度を一定レベルに保つように制御することが好ましい。滞留時間と温度を制御すると、容器内の材料と液体の化学反応により生成物が所望の収率で得られる。さらに、滞留時間と温度の制御は、所望の反応生成物の損失をもたらす容器内での副反応の発生を防ぐためにも必要である。
【0016】
容器10は軽量セルロース系材料の供給系12を含む。供給系は、従来型の供給系、例えばチップビン、チップスクリューコンベアでよく、これらは、材料の容器への輸送と容器内の輸送を促進するために、蒸気および液体の注入口を備えている。容器は頂部あるいは上部に注入口14を有する。供給系12はセルロース系材料を常圧で稼働するチップビンから、200℃の温度と20バールの圧力のような加圧条件下(この条件で容器が運転される)にある容器注入口14へ輸送するために使用される。
【0017】
容器10はセルロース系材料の均一な流れを維持することができる圧力容器である。容器に導入される液体、例えばセルロース系材料を蒸解してパルプにするための薬品を含む液体の量を最小にして、容器内で処理される材料を効率的に加熱し、材料の温度を保つことが好ましい。蒸気、高温ガス、あるいは他の加熱媒体などの熱エネルギー16を容器に与えてもよい。
【0018】
容器10は垂直側壁を有する内部処理槽18を持っていてもよく、そこでは、材料は容器底部にある材料排出口20に向かって下方に流れる。処理槽内の側壁に沿った種々の位置で、耐圧縮性リング22あるいは他の適当なリングが設けられ、容器内の材料の圧縮を減少させる。これらのリングは容器内のセルロース系材料の移動を促進する。これらのリングは処理槽内の種々の高さに、好ましくは、たとえば処理槽の上半分のような、処理槽の上部高さに配置される。
【0019】
図2は耐圧縮性リング22の一例を示す。これは、一般に右向きの三角断面形状を有する環状リングである。リングの頂部24は容器の内壁26に取り付けられており、第1の垂直円筒形脚部28は内壁26に取り付けられている。耐圧縮性リングは容器に対し内側に傾いている傾斜側壁30を含んでいてもよい。耐圧縮性リングにより、容器の高さ方向全体にわたる材料の流れの均一な圧縮が促進される。リングは、リングの傾斜側壁30に沿って下方に移動する材料にわずかな圧縮を適用する。リングによって適用された圧縮力は、容器の上部高さにある材料を支持し、上部高さにある材料から下部高さにある材料にかかる力を緩和する。材料がリングを流れ過ぎると圧縮力は速やかに開放される。というのは、側壁30の底端部を通過した材料は容器内壁26のより大きい直径に広がるからである。好適な圧縮性リングは米国特許第6,280,569号および第5,454,490号の各明細書に記載されている。
【0020】
処理槽18には振動機32を設けて材料の容器内の移動、特に耐圧縮性リングを通過する材料の移動を促進することができる。振動機は耐圧縮性リング22の近く、できれば耐圧縮性リング22に連結することが好ましい。振動機32は容器の表面、たとえば傾斜側壁30に接続された棒あるいはシャフトであってもよく、振盪、往復動、振動などの揺動を発生する。揺動はセルロース系材料に適用され、容器内の材料の移動を促進する。
【0021】
揺動を付与するために原動力34が振動機に適用される。振動機はセルロース系材料の容器内の移動を助けるために用いられる従来の振動機であってもよい。傾斜側壁30に取り付けた振盪腕のような、圧縮抑制リングと振動機を組み合わせることで、容器内の部材、特に可動部材の数を減らすことができる。さらに、振動機と耐圧縮性リングを組み合わせると、材料と接触する機械部品の数を減らし、容器内を移動する材料の流れを妨害する部材の数を減らすことができる。
【0022】
図3は容器の下部に設けられた排出装置36の一例を示す。この排出装置36において、側壁は円筒壁から一次元的先細とサイドレリーフを有する壁へと遷移しており、ダイヤモンド型の刻み目が排出装置の両側に形成されている。排出装置36は、排出装置の底部に隣接して装着された水平供給スクリュー38を含んでいてもよい。容器の下部にある排出装置36は米国特許第5,500,083号、第5,628,873号および第5,617,975号の各明細書に記載されているような流動促進装置であってもよい。
【0023】
水平供給スクリューの代替物として、回転スクレーパー40(従来型設計品でよい)を容器の下部に設けてもよい。スクレーパーによってセルロース系材料を容器底部にある中央排出先端部20に押し込むことができる。
【0024】
容器の下部で、排出先端部20のすぐ上流にバッフル板44を設けてもよい。バッフル板は材料を排出先端部に掃き集める。さらに、希釈液を導管44からバッフル域に導入してもよい。希釈液はバッフル域から排出先端部に向かって移動する材料の方へ流れる。希釈液は、材料の排出先端部への動きを促進するように、材料に対する液体の比率を増加させる。
【0025】
本発明者にとって現時点における最良の実施形態に関連して本発明を説明してきた。しかし、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求範囲に含まれる種々の変更や均等な処理のすべてを包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】軽量嵩高セルロース系材料の蒸解などの化学的処理により、たとえばパルプを製造するための処理容器の模式図。
【図2】図1に示す容器に使用される耐圧縮性リングの一例を示す断面図。
【図3】図1に示す容器の排出部の側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略垂直な処理容器の上部注入口に軽量嵩高セルロース系材料を導入し、
前記材料が下方に向かって前記容器を移動する際に、前記材料を前記容器の内表面に設けられた少なくとも一つの耐圧縮性リングを通過するように移動させ、
前記容器内の前記材料を揺動させ、
前記容器の下部排出口から処理された材料を排出する、
ことを含むことを特徴とする軽量嵩高セルロース系材料を化学的に処理する方法。
【請求項2】
前記容器内で前記材料を少なくとも20バールの圧力と少なくとも140℃の温度に維持することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記容器内で蒸解液を用いて前記材料を処理することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記容器内の前記材料において自己加水分解を起こさせることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記軽量嵩高セルロース系材料がわら、サトウキビの絞りかす、トウモロコシ葉茎、およびエネルギー作物(energy crops)のうちの少なくとも一つを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記耐圧縮性リングの近くで前記容器を揺動させることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記容器が少なくとも20バールの圧力と少なくとも200℃の温度に維持されている請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記容器が前記材料を化学的に蒸解してパルプ化するための単一槽容器である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記揺動が前記耐圧縮性リングによる揺動である請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記耐圧縮性リングが容器の上部にある請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記材料を前記容器内に30分以内の時間滞留させることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記処理が前記材料の加水分解を含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
密閉された上部および下部ならびに上部から下部に延びる側壁を有し、少なくとも20バールの圧力と少なくとも100℃の温度で操作される略垂直な容器と、
前記容器の上部に設けられ、前記セルロース系材料を受け入れる材料注入口と、
前記容器内に、または前記材料注入口に接続された材料供給系中に設けられた水または液体注入口と、
前記側壁の内面に設けられた少なくとも一つの耐圧縮性リングと、
前記耐圧縮性リングの近くに設けられ、前記容器内の前記材料を揺動させる振動機と、
前記容器の下部に設けられた排出口と、
を含むことを特徴とする軽量嵩高セルロース系材料を化学的に処理するための容器。
【請求項14】
前記容器が円筒状で、0.5メートルから20メートルの高さおよび3メートルから4メートルの直径を有する請求項13記載の処理容器。
【請求項15】
前記振動機によって前記耐圧縮性リングの傾斜壁に揺動を与える請求項13記載の処理容器。
【請求項16】
前記容器が少なくとも20バールの圧力と少なくとも100℃の温度に維持されている請求項13記載の処理容器。
【請求項17】
前記容器が前記材料を化学的に蒸解してパルプ化するための単一槽容器である請求項13記載の処理容器。
【請求項18】
前記耐圧縮性リングが前記容器の上部に設けられている請求項13記載の処理容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−91714(P2009−91714A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258453(P2008−258453)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(503111263)アンドリッツ・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Andritz Inc.
【Fターム(参考)】