説明

アイスクリーム用可食容器及びその製造方法

【課題】通常のアイスクリーム入りのモナカの生産性を維持し原料コストを高め
ることなく、和菓子の最中種様の風味を有しながらアイスクリームの風味をこれ
までになく味わえる可食容器を得る。
【解決手段】小麦粉に変えて、もち米粉を主体とし、もち米粉、ワキシーコーン
スターチ、タピオカ澱粉およびこれらの加工澱粉を主体とした水種生地を調整し
、はさみ焼きし、内側のアイスクリーム本来の美味しさを体感するのに好適な可
食容器を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリーム用の可食容器として使用されるモナカに関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリームなどの冷菓(アイスクリーム類及び氷菓公正取引協議会の規定する「アイスクリーム類」。本特許願では単に「アイスクリーム」という)に用いられるモナカは、通常小麦粉やとうもろこしの粉などの穀物の粉を主原料として、馬鈴薯澱粉やとうもろこしより採取した澱粉(いわゆるコーンスターチ)、油脂、膨脹剤、着色料等を適宜配合したものに適量の水を入れて混合した水種生地を金型内に入れて焼成し、製造され焼菓子特有の香ばしい風味を有する。
この場合、モナカを構成する成分としては油脂・澱粉・たんぱく質などがあるが、成分中の澱粉はその50%以上が穀粉(大半の例は小麦粉)に由来するものであ
る。
【0003】
いっぽうもち米粉はもっぱら高級な和菓子に主として使用されることが多かった。大量生産されるアイスクリーム用のモナカにはもち米粉を大量に使用した製品はなかった。このひとつの原因はもち米粉が比較的値段が高いことから、大量生産されしかも安価なアイスクリーム用として使うとコストがあわなかったことが原因のひとつと考えられる。
【0004】
和菓子で使う最中種(もち米粉100%)はもち米粉を蒸し、餅状に搗いたものをシート状に成型し、小片に切断した生地を上下2枚の焼板(金型)の間に挟んで焼成膨化させる製法で、アイスクリーム用の小麦粉を主原料とした水種を用いる製法とは全く異なる。
【0005】
一般に高級和菓子によく用いられるもち米粉を主成分とするモナカは組織がもろい。ともすると喫食するときにモナカ表面が指の汗にくっついてはがれ落ちるというような場合すらあり、水分に対してきわめて弱い。このようなモナカは物性強度が小麦粉配合のものより擦れや接触による衝撃に対して弱くなり、出来上がったモナカをアイスクリーム工場で取り扱う場合等に擦れてボロボロになり製品として使えなくなる、あるいはアイスクリーム中、あるいは冷凍流通中に冷却されて凝結した水分を吸いやすく、モナカ特有の好ましい食感を容易に失う。
【0006】
飲食店などの店頭で可食容器にアイスクリームを盛ってすぐに提供する場合は、もち粉の比率が高い和菓子用モナカでも物性強度の弱さは問題にならないが、「パックされ、冷凍流通する可食容器との組合せアイスクリーム」(以下、単に「冷凍流通組合せアイスクリーム」という)においては衝撃に対する弱さは商品価値の低下につながる。以上がもち粉の配合率の高いモナカは使用されなかったもうひとつの理由と考えられる。これまでモナカ生地中のもち米粉の使用率は小麦粉の30%というのが上限に近かった。
【0007】
通常のアイスクリーム入りのモナカは、焼菓子特有の香ばしさを有するため、ア
イスクリーム自体に強い香味を持たせなければ、内部のアイスクリームの存在感
を強く出しにくい。すなわち本来のアイスクリーム部分そのものの美味しさを味わうには、焼菓子特有の香ばしさはマイナスに働く場合もあった。モナカの香ばしさを減らすという目的のためには小麦粉の比率を減らすことが有効である。その意味では小麦粉を排し、もち米粉を主成分としたモナカを用いることは内部のアイスクリーム部分の存在感を出した製品を作るうえでは有効である。しかしながら、上記2つの理由で、もち米粉を主成分としたモナカは「冷凍流通組合せアイスクリーム」においては散見されなかった。
【0008】
また最近、アイスクリーム用モナカとして小麦粉を全く使用せずワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの加工澱粉のいずれか1種又は2種以上より構成されるものも見られるが、香ばしさを抑えることはできても澱粉特有の風味が強く好ましくない欠点が見られた。
【0009】
以上のとおり、小麦粉はアイスクリーム用のモナカの原材料としては従来必須と考えられており、「冷凍流通組合せアイスクリーム」用モナカ皮において小麦粉を排して好ましい品質を有する製品は製造されておらず、とくにもち米粉を主成分としたモナカ皮は報告されていなかった。
【特許文献1】特開平7−147883号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、従来になかった和菓子の最中種的な風味特徴を有するアイスクリー
ム用の可食容器を開発すべく、鋭意研究した結果、「冷凍流通組合せアイスクリーム」において従来必須原料と位置づけられていた小麦粉を全く使わず、さらに従来、30%以上配合することが困難とされていたもち米粉を主体としてこれに馬鈴薯澱粉やとうもろこしより採取した澱粉(いわゆるコーンスターチ)を加えて水種生地を調整し、はさみ焼きし、内側のアイスクリーム本来の美味しさを体感するのに好適な可食容器を提供できるこの発明を見出した。
【0011】
本発明で得られる可食容器は、従来「冷凍流通組合せアイスクリーム」用モナカに主として使用されてきた小麦粉を全く使用せず、和菓子の最中種として使われているもち米粉を主体としており高級感を与えるものである。なおかつワキシーコーンスターチやタピオカ澱粉、およびこれらの加工澱粉を補助的に配合した水種に調整することで、原料コストを抑え、しかも製造条件や生産性を変えることなく強度、香ばしさも満足ゆく製品を、利用可能にしたもので、加えてモナカの香ばしさを抑え、組み合わせるアイスクリームの風味を引き立てる効果を有する。
【0012】
本特許願は店頭で可食容器に盛ってすぐに客に喫食させるタイプのアイスクリームを意図しない。

【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の方法を検討した。
【0014】
本発明者らは、目的とするアイスクリーム用の可食容器を得るにためには、従来
使用していた小麦粉を主成分とすることなく、可食容器を構成する澱粉のうち、
30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上がもち米粉およびその澱粉で、残りをワキシーコーンスターチ、及びタピオカ澱粉およびこれらの加工澱粉のいずれか1種又は2種以上より構成することで課題を解決できることを見出した。
【0015】
好ましくは、もち米粉の内の15%は米粉澱粉であり、これにワキシーコーンスタ
ーチの加工澱粉15%、タピオカ澱粉15%で構成し、それらに必要に応じ、モ
ナカで通常使用される油脂、乳化剤、調味料、糖類、着色料、膨脹剤を配合して
成る生地に1.5〜2.0倍量好ましくは1.6〜1.8倍量の水を加え、さらに水種の沈
澱防止のために0.8〜1.2%の増粘剤を加え、調整したものを焼成して得た可食容
器がこの目的に合うことを突き止めた。

【発明の効果】
【0016】
このようにして製造した可食容器は小麦粉を主成分とした可食容器同様に焼き上げても香ばしさを抑えたものとなり、組み合わせるアイスクリームの風味を邪魔しない。そのため、とくにプレーンな味のアイスクリームを組み合わせる場合に有効である。とりわけもち米粉の比率を高めていることから和素材(あずき、抹茶、きなこ)との味の相性に優れており、和菓子の最中種的なうまみがあるモナカが得られる。
【0017】
本発明において、生産性を高めるために必須の水種製法を行なうと粉類の沈澱が
生じるが、この防止のために用いる増粘剤としては、グルテン、α化小麦粉、
ガム類があげられる。
【0018】
油脂類は必ずしも使用しなくてもよい。加える場合は植物性油脂、動物性油脂のいずれでも良く、液状油、固形油のいずれでも良い。食品用として用いられるものであれば良い。油脂類が多すぎると目的とする口溶けの良いモナカが得られなかったり、金型からの離型が良すぎるため油脂の金型表面への浮き出したりするため、連続生産に適さない。
配合量としては、焼成前の重量比で5%以下、好ましくは3%以下である。
【0019】
乳化剤は、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセ
リン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン
及びその混合物で食用に用いられるものであればいずれでも良いが、通常、加水
量を考慮しO/W型の乳化を形成するシュガーエステル等及び他の乳化剤との併用
が焼成後の風味食感と金型からの離型性の点から望ましい。乳化剤は少なすぎる
と油脂の分散が十分でなく、十分に膨化しないモナカが発生するなど連続生産に
適さない。但し、油脂を使用しない場合はこの限りではない。
【0020】
次に糖類としては、砂糖、上白糖、グラニュー糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、
水あめなどが、着色料としては、アナトー色素、カロチン色素など任意のものが
使用でき、1種類のみで用いても良いし、2種類以上が組み合わされて用いても
良いが、必要に応じてのみ使用し、全く使用しなくても良い。アイスクリームと
の一体感を強調するために白色度合いの高いモナカ・コーンを焼成しようとする
場合、いずれも用いないのが好ましい。
【0021】
着香料としてはバニリン等の焼菓子に用いられるものであれば良いが、必要に応
じてのみ使用し、全く使用しなくても良い。
【0022】
調味料としては食塩、香料、ステビア等の甘味料など焼菓子に用いられるもので
あれば良い。
【0023】
膨脹剤は炭酸水素ナトリウム(通称重曹)、炭酸水素アンモニウム(重炭アン)
、炭酸アンモニウム(炭アン)、焼きミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)
など一般的に焼菓子に使用されるものであればいずれでも良いが、これらも必要
に応じてのみ使用し、全く使用しなくても良い。
【実施例】
【0024】
以下、実施例および比較例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の
実施例に限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
餅米粉(CHO HENG RICE VERMICELLI FACTORY CO.,LTD製)2500g、ワキシスターチ(三和澱粉社製)1000g、サラダ油(日清製油社製)100g、大豆レシチン(昭和産業社製)30g、塩(日本海水社製)30g、グアガム(HBガム社製)80g、水6300gをカントーミキサー(関東混合機工業社製)にて混合し、あらかじめ180℃
に予熱した連続はさみ焼き金型に約11gずつ充填し、2分10秒焼成しモナカ皮を得
た。
【0026】
<比較例1> 従来の小麦粉配合モナカ
比較例として、小麦粉(日清製粉社製)2500g、コーンスターチ(三和澱粉社製
)800g、サラダ油(日清製油社製)60g、大豆レシチン(昭和産業社製)20g、
塩(日本海水社製)10g、グラニュー糖(大日本明治製糖社製)30g、乳化剤(
三菱化学フーズ社製)20g、ベーキングパウダー(三栄源エフエフアイ社製)30gを水
4300gをカント-ミキサーにて混合、焼成しモナカ皮を得た。
【0027】
<比較例2> 従来のモナカ配合の内、30%をもち米粉で置き換えたもち米粉をも
っとも多く使ったモナカ
比較例として、小麦粉(日清製粉社製)2500g、餅米粉(CHO HENG RICE VERMI-
-CELLI FACTORY CO.,LTD製)800g、サラダ油(日清製油社製)100g、大豆レシ
チン(昭和産業社製)30g、塩(日本海水社製)10g、、乳化剤(三菱化学フー
ズ社製)40g、ベーキングパウダー(三栄源エフエフアイ社製)30gを水3500gをカントー
ミキサーにて混合、焼成しモナカ皮を得た。
【0028】
<実施例1および比較例1、比較例2の評価>
得られたもなか皮及びもなか皮に市販のバニラアイスクリーム(江崎グリコ社製)
を充填したものをパネラー18名で評価した。

【表1】

【0029】



【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の可食容器は和菓子の最中種様の風味を有し、しかもアイスクリーム本来
の美味しさが味わえる。
【0031】
本発明の可食容器の製造法は従来の160−190℃にて焼成することができ、生産性
を落とすことがない上に、白色〜乳白色の外観でしかも歯切れがよく口溶けのよ
い食感であるためアイスクリームとの一体感が得られる。
【0032】
本発明はモナカ焼成時の膨化を良くし比重を軽くすることで小麦粉に比べて高価
なもち米粉を従来の倍量以上使いながらしかも粗同等の原料コストで仕上ること
ができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食容器を構成する澱粉の30%以上がもち米粉で、残部がワキシーコーンスターチ、
タピオカ澱粉およびこれらの加工澱粉のいずれか1種又は2種以上より構成され、
焼成後比重が0.07−0.18であることを特徴とする冷菓用可食容器。
【請求項2】
可食容器を構成する澱粉の70%以上がもち米粉である請求項1記載の可食容器。

【請求項3】
もち米粉の内、もち粉澱粉が15%以上であることを特徴とする請求項1または2に
記載の可食容器。

【請求項4】
水以外の原料に対し、重量比で1.5−2.0倍、好ましくは1.6−1.8倍量の水を加えて
水種とし、これにグルテン、α化澱粉、ガム類を0.8−1.2%を加えたことを特徴と
する請求項1、2または3に記載の可食容器。

【請求項5】
はさみ焼き型をもちいて160−190℃にて焼成することを特徴とする請求項1または
2、3、4いずれかに記載の可食容器の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法で得られる可食容器

【請求項7】
焼成後の風味が和菓子の最中種的な特徴があり、しかも色が白色ないしは乳白色
であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5いずれかに記載の可食容器。


【公開番号】特開2006−340673(P2006−340673A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170252(P2005−170252)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(390040062)小川食品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】