説明

アイドルストップ車の制御装置

【課題】アイドルストップ復帰時に発進クラッチへの供給油圧を制御するリニアソレノイド弁を適正に制御し、ベルト滑りと発進遅れを防止すること。
【解決手段】発進クラッチB1への供給油圧を制御する常開型のリニアソレノイド弁SLSと、リニアソレノイド弁を複数の電流−油圧特性に応じて制御するソレノイド弁駆動回路100とを備え、アイドルストップからの復帰時に、オイルポンプが発生する油圧を検出し、その発生油圧が許容値未満である場合に、リニアソレノイド弁の弁開度が大きくなる電流−油圧特性を選択して、リニアソレノイド弁への指示電流を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイドルストップ車の制御装置、特にアイドルストップ状態からの発進時における無段変速機及び発進クラッチの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両停止時にエンジンを自動停止させ、アイドリング中の無駄な燃料消費や排出ガスの発生を抑えるアイドルストップ車が知られている。このようなアイドルストップ車におけるエンジン停止条件としては、車両停止やブレーキONなどがあり、エンジン始動条件としては、ブレーキOFFやアクセルペダルの踏み込みなどがある。
【0003】
このようなアイドルストップ車において、エンジンによって駆動されるオイルポンプと、出力軸が駆動輪と連結されたベルト式無段変速機と、エンジンと無段変速機との間に設けられた発進クラッチと、オイルポンプが発生する油圧に基づいて無段変速機及び発進クラッチに油圧を供給する油圧制御装置とを備えた車両がある。このような車両では、アイドルストップに伴いオイルポンプも停止するため、時間と共に無段変速機や発進クラッチから作動油が抜けてしまう。その後、アイドルストップ状態から発進しようとして、エンジンによりオイルポンプが駆動されると、無段変速機や発進クラッチに作動油が供給されるが、この時、無段変速機が所定のベルト挟圧力を持つ前に発進クラッチが係合してしまうと、ベルト滑りが発生するという問題がある。
【0004】
発進クラッチへの供給油圧を常開タイプのリニアソレノイド弁によって制御するものが知られている。常開タイプを使用する理由は、走行中に万一リニアソレノイド弁の給電回路に断線等の不良が生じても、発進クラッチへ常に油圧を供給し、走行不能になる事態を避けるためである。このような常開タイプのリニアソレノイド弁を使用した場合、アイドルストップ復帰時にクラッチ伝達トルクがベルト伝達トルクを上回らないように、発進クラッチへの供給油圧をリニアソレノイド弁により制御することにより、ベルト滑りを防止しながら発進クラッチを速やかに締結する方法が考えられる。そのためには、アイドルストップ復帰時にまずリニアソレノイド弁に最大指示電流を供給して開弁状態とする必要がある。
【0005】
リニアソレノイド弁は、元圧である供給油圧が所定値(例えば1.2MPa)以上でかつ供給電圧が所定値(例えば12V)という条件下で、予め設定された電流−油圧特性(IP特性)に従って指示電流に基づいた出力油圧を発生する。しかし、アイドルストップ復帰時にはそれまで停止していたオイルポンプがエンジン始動と共に駆動されるため、オイルポンプの発生油圧そのものが低く、リニアソレノイド弁の供給油圧が即座に上がらない。また、エンジン始動用スタータを駆動するために大電流を必要とするので、バッテリ電圧が一時的に低下し、リニアソレノイド弁への供給電圧も十分ではない。そのため、予め設定された電流−油圧特性に従った指示電流をリニアソレノイド弁へ供給しても、目標とする出力油圧が得られず、発進クラッチの係合遅れの原因になる。
【0006】
特許文献1には、エンジンにより駆動されるオイルポンプを油圧供給源とし、ベルト式無段変速機を搭載したアイドルストップ車において、アイドルストップ後のエンジン再始動時に、発進クラッチの係合開始に十分な油圧と判断しても、エンジン再始動の時点から所定の時間を待って係合を開始するものが知られている。
【0007】
特許文献1では、発進クラッチの経年変化や、油温・アイドルストップ時間に応じて発進応答性がばらつくという課題を解決するため、所定の待ち時間を設定しているが、待ち時間分だけ発進クラッチの係合開始が遅れ、アイドルストップ復帰後の発進遅れが発生する。また、待ち時間を発進クラッチの締結圧や油温に応じて変化させる方法が開示されているが、アイドルストップ復帰時には、上述のようにオイルポンプの発生油圧そのものが低く、かつバッテリ電圧も降下するので、待ち時間を発進クラッチの締結圧や油温に応じて決定しても、最適な時間になるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−24129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アイドルストップ復帰時に発進クラッチへの供給油圧を制御するリニアソレノイド弁を適正に制御し、発進遅れを防止できるアイドルストップ車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、所定のエンジン停止条件が成立したときにアイドルストップされ、所定のエンジン始動条件が成立したときに始動されるエンジンと、前記エンジンによって駆動されるオイルポンプと、エンジン動力を駆動輪に伝達するベルト式無段変速機と、前記エンジンと前記無段変速機との間に設けられた発進クラッチと、前記オイルポンプが発生する油圧に基づいて、前記無段変速機及び前記発進クラッチに油圧を供給し、前記無段変速機のベルト挟圧力及び前記発進クラッチの係合力を制御する油圧制御装置と、を備えたアイドルストップ車において、前記油圧制御装置は、前記無段変速機のベルト挟圧力を検出するベルト挟圧力検出手段と、前記検出されたベルト挟圧力から前記無段変速機のベルト伝達トルクを計算する伝達トルク計算手段と、前記ベルト挟圧力が所定値以下では、前記発進クラッチのクラッチ伝達トルクが前記計算されたベルト伝達トルクを上回らないように、前記発進クラッチの目標クラッチ圧を設定する手段と、前記発進クラッチへの供給油圧を制御するリニアソレノイド弁と、複数の電流−油圧特性を設定し、そのうちの何れかの電流−油圧特性に基づいて前記目標クラッチ圧となるように前記リニアソレノイド弁へ指示電流を出力するソレノイド弁駆動手段と、前記オイルポンプの発生油圧に関連する値を検出する油圧検出手段と、を備え、前記ソレノイド弁駆動手段は、前記油圧検出手段により検出されたオイルポンプの発生油圧が許容値未満である場合に、前記オイルポンプの発生油圧が許容値以上である場合に比べて、前記リニアソレノイド弁の弁開度が大きくなる電流−油圧特性に基づいて、前記リニアソレノイド弁へ指示電流を出力することを特徴とする、アイドルストップ車の制御装置を提供する。
【0011】
アイドルストップ復帰時には、ベルト滑りを防止するため、クラッチ伝達トルク容量がベルト伝達トルク容量を上回らないように、発進クラッチの目標クラッチ圧を設定し、その目標クラッチ圧になるようにクラッチ圧を制御する。発進クラッチのクラッチ圧は、リニアソレノイド弁の指示電流(デューティ比)によって制御できる。リニアソレノイド弁は所定の電流−油圧特性によって作動されるが、その電流−油圧特性は、元圧である供給油圧が所定値(例えば1.2MPa)以上という条件でのみ有効である。しかし、アイドルストップ復帰直後のようなオイルポンプの吐出圧が低い条件下では、同じ指示電流を入力しても、リニアソレノイド弁は所定の出力油圧を発生できない。
【0012】
そこで、本発明では、リニアソレノイド弁を作動させるための複数の電流−油圧特性(IP特性)を設定しておき、エンジン・クランキング中のようなオイルポンプの吐出圧が許容値未満である場合には、リニアソレノイド弁の弁開度が大きくなる電流−油圧特性を選択し、その特性にしたがってリニアソレノイド弁へ指示電流を出力する。その結果、所定の目標クラッチ圧を得るための指示電流を変更してリニアソレノイド弁の弁開度を大きくでき(常開型リニアソレノイド弁の場合には指示電流を低くする)、アイドルストップ復帰直後のような低油圧の条件下でも、目標クラッチ圧へより短時間で近づけることができる。
【0013】
本発明では、無段変速機のベルト挟圧力を検出するベルト挟圧力検出手段と、オイルポンプの発生油圧を検出する油圧検出手段とを用いているが、一方の検出手段を他方の検出手段で代用することもできる。一般に、オイルポンプの吐出圧はレギュレータ弁、挟圧コントロール弁を介してセカンダリプーリの油室へ供給されるが、アイドルストップ復帰時にはオイルポンプの吐出圧が所定のライン圧まで達していないので、オイルポンプの吐出圧は挟圧コントロール弁を介してセカンダリプーリの油室へ直接供給される。つまり、セカンダリ圧(ベルト挟圧力)とオイルポンプの吐出圧とはほぼ同一圧力であり、ベルト挟圧力を検出すれば、オイルポンプの吐出圧も知ることができるからである。
【0014】
一般にリニアソレノイド弁では、指示電流の下降時と上昇時とで電流−油圧特性が異なる、所謂ヒステリシスを有する。アイドルストップ復帰時にはスタータ駆動に伴うバッテリ電圧の一時的低下により、リニアソレノイド弁への供給電圧も低くなるため、リニアソレノイド弁のヒステリシスが大きくなり、所望の出力油圧がでなくなる。そこで、バッテリ電圧又はリニアソレノイド弁の電源電圧を検出する手段をさらに設け、ソレノイド弁駆動手段は、検出されたバッテリ電圧又はリニアソレノイド弁の電源電圧が基準値未満の場合に、当該電圧が基準値以上である場合に比べて、リニアソレノイド弁のヒステリシスが大きくなる電流−油圧特性に基づいて、リニアソレノイド弁へ指示電流を出力するのが望ましい。つまり、アイドルストップ復帰直後のような低電圧下では、ヒステリシスを見込んで、通常時とは異なる電流−油圧特性を用いてリニアソレノイド弁を制御することにより、目標クラッチ圧へより近づけることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、クラッチ伝達トルク容量がベルト伝達トルク容量を上回らないように、発進クラッチの油圧を目標クラッチ圧へ近づけることにより、ベルト滑りを未然に防止できると共に、アイドルストップ復帰直後のような低油圧の条件下では、リニアソレノイド弁の弁開度が大きくなる電流−油圧特性に従って指示電流を出力することにより、目標クラッチ圧へ短時間で近づけることができ、発進クラッチの係合遅れを解消して発進遅れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るアイドルストップ車の構成を示すスケルトン図である。
【図2】図1に示す無段変速機の油圧回路図である。
【図3】ソレノイド圧Psls に対する、ライン、クラッチモジュレータ圧、クラッチ制御圧及びセカンダリ圧の各特性を示す図である。
【図4】供給圧が1.2MPa、0.5MPa、0.3MPa、0.1MPaのときのリニアソレノイド弁のIP特性図である。
【図5】供給電圧が12Vと8.5Vのときのリニアソレノイド弁のIP特性図である。
【図6】(a)はアイドルストップ復帰時におけるエンジン回転数とバッテリ電圧の時間変化図、(b)はアイドルストップ復帰時におけるポンプ吐出圧、セカンダリ圧、目標クラッチ圧、実クラッチ圧(本発明と対策前)の時間変化図である。
【図7】本発明にかかる制御方法の一例のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係るアイドルストップ車の構成の一例を示す。エンジン1の出力軸1aは、無段変速機2を介してドライブシャフト32に接続されている。無段変速機2には、トルクコンバータ3、変速装置4、油圧制御装置7及びエンジン1により駆動されるオイルポンプ6などが設けられている。なお、エンジン1にはエンジン始動用のスタータ(セルモータ)1bが設けられている。
【0018】
無段変速機2は、トルクコンバータ3のタービン軸5の回転を正逆切り替えてプライマリ軸10に伝達する前後進切替装置8、プライマリプーリ11、セカンダリプーリ21及び両プーリ間に巻き掛けられたVベルト15を有する変速装置4、セカンダリ軸20の動力をドライブシャフト32に伝達するデファレンシャル装置30などで構成されている。タービン軸5とプライマリ軸10とは同一軸線上に配置され、セカンダリ軸20とドライブシャフト32とがタービン軸5に対して平行でかつ非同軸に配置されている。したがって、この無段変速機2は全体として3軸構成とされている。ここで用いられるVベルト15は、例えば無端状張力帯とこの張力帯に摺動自在に支持された多数のブロックとで構成された公知の圧縮駆動タイプの金属ベルトである。
【0019】
前後進切替装置8は、遊星歯車機構80と逆転ブレーキB1と直結クラッチC1とで構成され、逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1が本発明における発進クラッチに相当する。逆転ブレーキB1と直結クラッチC1は、それぞれ湿式多板式のブレーキ及びクラッチである。遊星歯車機構80のサンギヤ81が入力部材であるタービン軸5に連結され、リングギヤ82が出力部材であるプライマリ軸10に連結されている。遊星歯車機構80はシングルピニオン方式であり、逆転ブレーキB1はピニオンギヤ83を支えるキャリア84とトランスミッションケースとの間に設けられ、直結クラッチC1はキャリア84とサンギヤ81との間に設けられている。直結クラッチC1を解放して逆転ブレーキB1を締結すると、タービン軸5の回転が逆転され、かつ減速されてプライマリ軸10へ伝えられる。そして、セカンダリ軸20を経てドライブシャフト32がエンジン回転方向と同方向に回転するため、前進走行状態となる。逆に、逆転ブレーキB1を解放して直結クラッチC1を締結すると、キャリア84とサンギヤ81とが一体に回転するので、タービン軸5とプライマリ軸10とが直結される。そして、セカンダリ軸20を経てドライブシャフト32がエンジン回転方向と逆方向に回転するため、後進走行状態となる。
【0020】
変速装置4のプライマリプーリ11は、プライマリ軸10上に一体に固定された固定シーブ11aと、プライマリ軸10上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ11bとを備えている。可動シーブ11bの背後には、プライマリ軸10に固定されたシリンダ12が設けられ、可動シーブ11bとシリンダ12との間に油室13が形成されている。この油室13への供給油量を制御することにより、変速制御が実施される。
【0021】
セカンダリプーリ21は、セカンダリ軸20上に一体に固定された固定シーブ21aと、セカンダリ軸20上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ21bとを備えている。可動シーブ21bの背後には、セカンダリ軸20に固定されたピストン22が設けられ、可動シーブ21bとピストン22との間に油室23が形成されている。この油室23への供給油圧を制御することにより、トルク伝達に必要なベルト挟圧力が与えられる。なお、油室23には初期挟圧力を与えるバイアススプリングを配置してもよい。セカンダリプーリ21の油室23の近傍の供給油路中には、後述するように油室23の供給油圧を検出する油圧センサ108が設けられている。
【0022】
セカンダリ軸20の一方の端部はエンジン側に向かって延び、この端部に出力ギヤ27が固定されている。出力ギヤ27はデファレンシャル装置30のリングギヤ31に噛み合っており、デファレンシャル装置30から左右に延びるドライブシャフト32に動力が伝達され、車輪が駆動される。
【0023】
エンジン1及び無段変速機2は電子制御装置100によって制御される。電子制御装置100には、エンジン回転数センサ101、車速(又はセカンダリプーリ回転数)センサ102、スロットル開度(又はアクセル開度)センサ103、シフトポジションセンサ104、プライマリプーリ回転数(又はタービン回転数)センサ105、ブレーキ信号センサ106、CVTの作動油温センサ107、及びセカンダリプーリ21への供給油圧を検出する油圧センサ108、バッテリ電圧センサ109から信号が入力されている。入力信号としては、そのほかに、路面傾斜角、アイドル信号、スタート信号、エンジン水温、吸入空気量、エアコン信号、イグニッション信号などを入力してもよい。なお、図1では説明を簡単にするため、単一の電子制御装置100によってエンジン1と無段変速機2の両方を制御する例を示したが、実際には個別の電子制御装置によって制御され、両電子制御装置は通信用バスによって相互に連携している。
【0024】
電子制御装置100は、エンジン停止条件が成立したときにエンジン1を停止(アイドルストップ)させ、エンジン再始動条件が成立したときにスタータ1bを駆動してエンジン1を再始動させるアイドルストップ制御を実施する。エンジン停止条件としては、例えば車両停止かつブレーキON(ブレーキペダルの踏み込み)などがある。但し、エンジン水温が低いときや、バッテリ電圧の消耗時、電気負荷が大きいとき、アクセルペダルが踏まれているとき等には、アイドルストップを許可しない。一方、エンジン再始動条件(アイドルストップ復帰条件)としては、例えばブレーキOFF、アクセルペダル踏み込み、車速信号の入力などがある。エンジン停止条件及び再始動条件は公知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0025】
電子制御装置100は、油圧制御装置7に内蔵されたソレノイド弁を制御している。油圧制御装置7は、オイルポンプ6、プライマリ油室13、セカンダリ油室23、逆転ブレーキB1、直結クラッチC1と配管を介して接続されている。電子制御装置100は、車速とスロットル開度とに応じて予め設定された変速マップに従って目標プライマリ回転数を決定し、油圧制御装置7内のデューティソレノイド弁DS1,DS2を制御することによって、プライマリ油室13への供給油量を調整し、プライマリ回転数を目標値へと変速制御すると共に、リニアソレノイド弁SLSを制御することによって、セカンダリ油室23の油圧(ベルト挟圧力)をベルト滑りを発生させない値へと制御している。さらに、油圧制御装置7は、リニアソレノイド弁SLSを用いて逆転ブレーキB1及び直結クラッチC1への供給油圧を制御する機能も有しており、この制御には後述するアイドルストップ復帰時の逆転ブレーキ(発進クラッチ)B1の係合制御も含まれる。
【0026】
図2は油圧制御装置7の一例の油圧回路図である。図2において、71はレギュレータ弁、72はクラッチモジュレータ弁、73はソレノイドモジュレータ弁、74はガレージシフト弁、75はマニュアル弁、76はアップシフト用レシオ制御弁、77はダウンシフト用レシオ制御弁、78はレシオチェック弁、79は挟圧コントロール弁である。また、リニアソレノイド弁SLSはライン圧の調圧制御、逆転ブレーキB1及び直結クラッチC1の過渡制御、及びセカンダリプーリ21の油室23の調圧制御を行うため、ソレノイド圧Psls を出力する。DS1はアップシフト用信号圧Pds1 を調圧制御するアップシフト用ソレノイド弁、DS2はダウンシフト用信号圧Pds2 を調圧制御するダウンシフト用ソレノイド弁である。ソレノイド弁DS1,DS2は、ガレージシフト弁74を過渡圧側に切り替えるための信号圧を発生するソレノイド弁としての機能も有する。本実施形態では、リニアソレノイド弁SLSは常開型のリニアソレノイド弁、ソレノイド弁DS1,DS2は共に常閉型のデューティソレノイド弁を使用している。
【0027】
図2では、プライマリプーリ11、セカンダリプーリ21、逆転ブレーキB1及び直結クラッチC1に関する油圧回路だけを示してあるが、トルクコンバータ3に内蔵されたロックアップクラッチ3aの油圧回路等については、本発明と直接関係がないので省略する。なお、油圧制御装置7の油圧供給源は、エンジン1によって駆動されるオイルポンプ6のみであり、電動ポンプなどの格別のオイルポンプは備えていない。
【0028】
レギュレータ弁71は、オイルポンプ6の吐出圧を所定のライン圧PL に調圧する弁であり、信号ポート71aに入力されるソレノイド圧Psls に応じてライン圧PL を調圧している。
【0029】
クラッチモジュレータ弁72は、直結クラッチC1および逆転ブレーキB1への供給圧(PC1,PB1)の元圧となるクラッチモジュレータ圧Pcmを出力する弁である。入力ポート72aにはライン圧PL が入力され、出力ポート72bからクラッチモジュレータ圧Pcmが出力される。また、第1信号ポート72cには出力圧がスプリング荷重と対向するようにフィードバックされている。そのため、クラッチモジュレータ圧Pcmは、スプリング荷重に相当する一定圧に調圧される。
【0030】
ソレノイドモジュレータ弁73は、クラッチモジュレータ圧Pcmを調圧して、スプリング荷重に相当する一定のソレノイドモジュレータ圧Psmを発生する弁である。このソレノイドモジュレータ圧Psmは、アップシフト用ソレノイド弁DS1及びダウンシフト用ソレノイド弁DS2の元圧となると共に、ガレージシフト弁74及び挟圧コントロール弁79にも供給されている。
【0031】
マニュアル弁75はシフトレバーと機械的に連結された手動操作弁であり、P、R、N、D、S、Bの各レンジに切り換えられ、ガレージシフト弁74から供給される油圧を直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1に選択的に導くものである。入力ポート75aにはガレージシフト弁74から油圧が供給され、出力ポート75bは直結クラッチC1と接続され、出力ポート75c,75dは共に逆転ブレーキB1に接続されている。マニュアル弁75は、Rレンジでは直結クラッチC1に油圧を供給するとともに逆転ブレーキB1の油圧をドレーンし、D、S、Bレンジでは逆転ブレーキB1に油圧を供給するとともに直結クラッチC1の油圧をドレーンし、非走行レンジであるP、Nレンジでは直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1の油圧を共にドレーンする。
【0032】
アップシフト用レシオ制御弁76及びダウンシフト用レシオ制御弁77は、アップシフト用信号圧Pds1 とダウンシフト用信号圧Pds2 との相対関係によってプライマリ油室13に給排される作動油量を調整する流量制御弁である。また、レシオチェック弁78は、閉じ込み制御のために、プライマリ油室13を流量制御から油圧制御に切り替えて、プライマリ油室13の油圧とセカンダリ油室23の油圧との比率を予め設定された関係に保持し、変速比を保持するための弁である。アップシフト用レシオ制御弁76及びダウンシフト用レシオ制御弁77については、例えば特開2007−263207号公報等によって公知であるため、説明を省略する。
【0033】
挟圧コントロール弁79は、セカンダリ油室23の油圧を制御するための圧力制御弁であり、スプリングによって一方向に付勢されたスプールを備えている。スプリング荷重と対向する一端側の信号ポート79aにソレノイドモジュレータ弁73から一定圧Psmが供給されている。入力ポート79bにはライン圧PL が供給されており、出力ポート79cはセカンダリ油室23と接続され、出力圧はポート79dにフィードバックされている。スプリングが収容された他端側の信号ポート79eにはソレノイド圧Psls が供給される。そのため、信号ポート79eに入力されたソレノイド圧Psls を所定の増幅度で増幅した油圧をセカンダリ油室23に供給することができる。セカンダリ油室23の油圧(セカンダリ圧)は油圧センサ108によって検出され、検出された油圧に基づいてベルト伝達トルクを求めることができる。
【0034】
ガレージシフト弁74は、シフトレバーをN→D又はN→Rへ切り替えた時(ガレージシフト時)に、直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1への供給圧を過渡制御できるように油路を切り替えるための切替弁である。図2の中心線より右側が過渡状態、左側が保持状態である。スプリング74aによって一方向に付勢されたスプール74bを備えており、スプリング荷重と同方向にアップシフト用信号圧Pds1 とダウンシフト用信号圧Pds2 とが入力される信号ポート74c,74dが形成されている。カウンタポート74hには、スプリング荷重と対向方向にソレノイドモジュレータ圧Psmが入力されている。ガレージシフト時にはソレノイド弁DS1,DS2は共にONとなるので、信号ポート74c,74dに入力される信号圧Pds1 ,Pds2 も共にONになり、スプール74bはスプリング74aに抗して下方へ移動し、右側の過渡状態になる。ポート74eに入力されたソレノイド圧(過渡圧)Psls は出力ポート74fから出力され、マニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。そのため、ソレノイド圧Psls によって直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の係合ショックを回避しつつ緩やかに係合を開始することができる。信号圧Pds1 ,Pds2 の少なくとも一方がOFFになると、左側の保持状態になり、ポート74gに入力されたクラッチモジュレータ圧(保持圧)Pcmが出力ポート74fから出力され、マニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。そのため、リニアソレノイド弁SLSの作動如何にかかわらず直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の締結状態を保持できる。アイドルストップ復帰時には、ガレージシフト弁74は過渡位置に保持され、リニアソレノイド弁SLSによって制御されたソレノイド圧Psls が逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1に供給される。このソレノイド圧Psls によって、後述するように、発進クラッチB1を介してプライマリ軸10に伝達されるトルクがベルト伝達トルク容量を上回らないように発進クラッチB1の伝達トルク容量を制御することにより、ベルト滑りを防止できる。
【0035】
マニュアル弁75はシフトレバーと機械的に連結された手動操作弁であり、P、R、N、D、S、Bの各レンジに切り換えられ、ガレージシフト弁74から供給される油圧を直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1に選択的に導くものである。入力ポート75aにはガレージシフト弁74から油圧が供給され、出力ポート75bは直結クラッチC1と接続され、出力ポート75c,75dは共に逆転ブレーキB1に接続されている。マニュアル弁75は、Rレンジでは直結クラッチC1に油圧を供給するとともに逆転ブレーキB1の油圧をドレーンし、D、S、Bレンジでは逆転ブレーキB1に油圧を供給するとともに直結クラッチC1の油圧をドレーンする。非走行レンジであるP、Nレンジでは直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1の油圧を共にドレーンする。
【0036】
図3にソレノイド圧Psls に対する、ライン圧PL 、クラッチモジュレータ圧Pcm、クラッチ制御圧、及びセカンダリ圧の各特性を示す。ライン圧PL はソレノイド圧Psls にほぼ比例した油圧に調圧される。クラッチモジュレータ圧Pcmは、ソレノイド圧Psls が所定値に達するまではライン圧PL と同圧であり、所定値を超えると一定圧に制限される。また、逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1には過渡状態においてソレノイド圧Psls が直接供給されるので、クラッチ制御圧はソレノイド圧Psls そのものとなる。セカンダリ圧はソレノイド圧Psls に比例し、油圧ライン圧PL より僅かに低い油圧に調圧される。図2に示したように、クラッチ制御圧とセカンダリ圧は共にソレノイド圧Psls によって制御されるが、常にセカンダリ圧がクラッチ制御圧を上回るように設定されている。セカンダリ圧は、油圧センサ108によって検出される。
【0037】
リニアソレノイド弁SLSはデューティ制御される。デューティ制御とは、パルス幅変調制御(PWM)とも呼ばれ、リニアソレノイド弁SLSに供給されるパルス信号の周期に対するON時間の比(デューティ比)を変化させることにより、デューティ比(指示電流)にほぼ比例した出力油圧を発生させるものである。デューティ信号を用いる理由は、リニアソレノイド弁SLSへの指示電流をコンピュータ制御できると共に、常にリニアソレノイド弁を作動させながら出力油圧を調圧することで、摩擦による油圧変化を少なくするためである。
【0038】
図4は供給電圧12Vにおけるリニアソレノイド弁の電流−油圧特性(IP特性)の一例を示す。リニアソレノイド弁SLSは常開タイプであるため、電流値が増加するに従い出力油圧は減少する。このうち、特性Aはリニアソレノイド弁の元圧(厳密にはクラッチモジュレータ圧)が1.2MPaであるとき(通常時)の特性であり、出力油圧を0〜1.2MPaまで広い範囲で制御できる。一方、特性B〜Dはリニアソレノイド弁の元圧が0.5MPa、0.3MPa、0.1MPaであるときの特性であり、最大油圧がそれぞれ0.5MPa、0.3MPa、0.1MPaに制限されているので、電流値を低下させても、元圧以上の出力油圧は発生しない。ここでは4つの特性A〜Dの油圧が電流の増加につれて低下する例を示したが、必ずしもこれに限定する必要はなく、電流と油圧とが所定の関係にあれば任意に設定できる。
【0039】
本発明では、エンジン・クランキング中のようなリニアソレノイド弁の元圧が低い時には、元圧に応じてリニアソレノイド弁の弁開度が大きくなる特性B〜Dを選択し、エンジン始動後の元圧が安定した状態では特性Aを選択して、リニアソレノイド弁へ指示電流を出力する。例えば、図4の油圧0.1MPaを得るために、特性Aでは高い指示電流(I1 )が必要になるが、特性Dでは電流値I2 以下の電流値であれば、どの電流値でも元圧に等しい油圧0.1MPaを供給できる。電流値が低くなると、リニアソレノイド弁の弁開度が大きくなるので、油圧応答性が向上する。つまり、クランキング中のような元圧が低い条件下では、リニアソレノイド弁の弁開度が増大する特性を選択することにより、発進クラッチの目標クラッチ圧への油圧応答性が高くなる。
【0040】
図5は、供給圧が1.2MPaにおいて、供給電圧が12Vの場合と8.5Vの場合のリニアソレノイド弁の電流−油圧特性の一例を示す。図5に示すように、リニアソレノイド弁は電流降下時と電流上層時とでヒステリシスを有し、供給電圧が低下するに従いヒステリシスが増加する。例えば、12Vの時のヒステリシスをΔH12とした場合、8.5Vの時のヒステリシスはΔH8.5 へと増大する。ヒステリシスの増加は、リニアソレノイド弁の摺動性の低下を意味し、油圧応答性の低下に繋がる。供給電圧の低下はスタータ駆動に伴うバッテリ電圧の低下により起こり、図6の(a)に示すようにクランキング中のバッテリ電圧は約8.5Vまで降下する。そこで、供給電圧が基準値より低くなった場合に、通常時とは異なるIP特性を利用してリニアソレノイド弁を制御することで、ヒステリシス増加に伴う油圧応答性の低下を抑制することができる。ここでは、供給電圧が12Vの場合と8.5Vの場合を示したが、それ以外の特性も設定してもよいことは勿論である。
【0041】
次に、図6を参照しながら本発明におけるアイドルストップ復帰時における、エンジン回転数、バッテリ電圧、ポンプ吐出圧、セカンダリ油圧及び発進クラッチB1のクラッチ圧の時間変化について説明する。
【0042】
アイドルストップ中には、オイルポンプが停止するので、全ての油圧がドレーンされ、リニアソレノイド弁SLSへの指令信号もOFFされる。ガレージシフト弁74はスプリングにより過渡位置で保持される。
【0043】
時刻0でエンジン始動条件が成立(アイドルストップ復帰判定)すると、スタータ1bによってエンジンが始動される。この時、スタータを駆動するために大電流を必要とするので、バッテリ電圧が一時的に低下する。エンジン回転数の上昇に伴ってオイルポンプの吐出圧は上昇するが、クランキング中はその上昇速度が遅く、セカンダリ圧の上昇も遅れる。クランキング中は、油圧センサ108によって検出されたセカンダリ圧からベルト挟圧力を求め、このベルト挟圧力からベルト伝達トルクを計算する。この計算方法としては、例えばセカンダリ圧と受圧面積とからセカンダリ挟圧を計算し、このセカンダリ挟圧、ベルトとの摩擦係数、巻き掛け径などからベルト伝達トルクを計算することができる。そして、発進クラッチのクラッチ伝達トルクがこのベルト伝達トルクを上回らないように、発進クラッチの目標クラッチ圧を設定する。しかし、元圧であるポンプ吐出圧が低いので、目標クラッチ圧になるようにリニアソレノイド弁に指示電流を指令しても、出力油圧が追従せず、実クラッチ圧も追従できない。図6(b)の破線で示す実クラッチ圧は、通常のIP特性(図4のA参照)を用いてリニアソレノイド弁を制御した場合であり、クランキングが終了するまで実クラッチ圧は殆ど上昇しないことがわかる。さらに、クランキング終了後も目標クラッチ圧への追従性が悪い。
【0044】
そこで、本発明では、通常のIP特性のほかに、クランキング中のような低油圧時のためのIP特性(図4のB〜D参照)を別に設定し、セカンダリ圧が許容値(例えば0.2MPa)未満である場合、セカンダリ圧に応じてリニアソレノイド弁の弁開度が大きくなるIP特性(例えばD特性)を選択し、この特性にしたがってリニアソレノイド弁へ指示電流を出力する。D特性ではA特性に比べてリニアソレノイド弁の開度が大きいので、クランキングの途中から実クラッチ圧が上昇し始め、しかも目標クラッチ圧への追従性が向上することがわかる。但し、発進クラッチのクラッチ伝達トルクがベルト伝達トルクを上回らないように、目標クラッチ圧を設定しているため、ベルト滑りを確実に防止できる。
【0045】
発進クラッチB1が締結された後、ソレノイド弁DS1,DS2の少なくとも一方がOFFされるので、ガレージシフト弁74が保持位置へ切り替わり、発進クラッチB1には保持圧(クラッチモジュレータ圧Pcm)が供給され、締結状態で保持される。その後は、挟圧コントロール弁79がリニアソレノイド弁SLSのソレノイド圧Psls によって制御され、伝達トルクに応じたベルト挟圧力になるようにセカンダリ圧が制御される。
【0046】
図7は、本発明にかかる発進クラッチの制御方法の一例のフローチャートを示す。制御がスタートすると、まず油圧センサ108によってセカンダリ圧を検出し(S1)、続いてこのセカンダリ圧からベルト伝達トルクを計算する(S2)。次に、発進クラッチのクラッチ伝達トルクが計算されたベルト伝達トルクを上回らないように、発進クラッチの目標クラッチ圧を設定する。つまり、目標クラッチ圧の上限を設定する(S3)。次に、セカンダリ圧を許容値と比較する(S4)。許容値としては、クランキング中における最大油圧に設定すればよく、例えば0.2MPaに設定すればよい。もし、セカンダリ圧が許容値以上であれば、リニアソレノイド弁のIP特性をA(図4参照)に選定し(S5)、セカンダリ圧が許容値未満であれば、セカンダリ圧に応じてB〜D(図4参照)のいずれかのIP特性を選定する(S6)。その後、バッテリ電圧を検出し(S7)、バッテリ電圧に応じたヒステリシスを決定し(S8)、選定されたIP特性及びヒステリシスに応じて、リニアソレノイド弁への指示電流を決定する(S9)。
【0047】
前記実施例では、発進クラッチのクラッチ圧を制御するリニアソレノイド弁と、無段変速機のセカンダリ圧を制御するのリニアソレノイド弁とを1個のソレノイド弁で共用したが、これに限るものではなく、個別のリニアソレノイド弁を用いて両者の油圧制御を個別に実施してもよい。
【0048】
無段変速機及び発進クラッチの油圧回路は、図2に示すものに限らない。例えば、リニアソレノイド弁による出力油圧Psls を発進クラッチへ直接供給する例に代えて、出力油圧Psls を圧力制御弁に信号油圧として供給し、この圧力制御弁の出力油圧を発進クラッチへ供給することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 エンジン
1b スタータ
2 無段変速機
4 変速装置
6 オイルポンプ
7 油圧制御装置
11 プライマリプーリ
21 セカンダリプーリ
71 レギュレータ弁
72 クラッチモジュレータ弁
73 ソレノイドモジュレータ弁
74 ガレージシフト弁
75 マニュアル弁
76 アップシフト用レシオ制御弁
77 ダウンシフト用レシオ制御弁
78 レシオチェック弁
79 挟圧コントロール弁
80 遊星歯車機構
100 電子制御装置(ECU)
101 エンジン回転数センサ
102 車速センサ
103 スロットル開度センサ
104 シフト位置センサ
105 プライマリプーリ回転数センサ
106 ブレーキセンサ
107 油温センサ
108 油圧センサ
109 バッテリ電圧
B1 逆転ブレーキ(発進クラッチ)
C1 直結クラッチ
SLS リニアソレノイド弁
DS1 デューティソレノイド弁
DS2 デューティソレノイド弁
Psls ソレノイド圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエンジン停止条件が成立したときにアイドルストップされ、所定のエンジン始動条件が成立したときに始動されるエンジンと、
前記エンジンによって駆動されるオイルポンプと、
エンジン動力を駆動輪に伝達するベルト式無段変速機と、
前記エンジンと前記無段変速機との間に設けられた発進クラッチと、
前記オイルポンプが発生する油圧に基づいて、前記無段変速機及び前記発進クラッチに油圧を供給し、前記無段変速機のベルト挟圧力及び前記発進クラッチの係合力を制御する油圧制御装置と、を備えたアイドルストップ車において、
前記油圧制御装置は、
前記無段変速機のベルト挟圧力を検出するベルト挟圧力検出手段と、
前記検出されたベルト挟圧力から前記無段変速機のベルト伝達トルクを計算する伝達トルク計算手段と、
前記ベルト挟圧力が所定値以下では、前記発進クラッチのクラッチ伝達トルクが前記計算されたベルト伝達トルクを上回らないように、前記発進クラッチの目標クラッチ圧を設定する手段と、
前記発進クラッチへの供給油圧を制御するリニアソレノイド弁と、
複数の電流−油圧特性を設定し、そのうちの何れかの電流−油圧特性に基づいて前記目標クラッチ圧となるように前記リニアソレノイド弁へ指示電流を出力するソレノイド弁駆動手段と、
前記オイルポンプの発生油圧に関連する値を検出する油圧検出手段と、を備え、
前記ソレノイド弁駆動手段は、前記油圧検出手段により検出されたオイルポンプの発生油圧が許容値未満である場合に、前記オイルポンプの発生油圧が許容値以上である場合に比べて、前記リニアソレノイド弁の弁開度が大きくなる電流−油圧特性に基づいて、前記リニアソレノイド弁へ指示電流を出力することを特徴とする、アイドルストップ車の制御装置。
【請求項2】
前記油圧制御装置は、バッテリ電圧又は前記リニアソレノイド弁の電源電圧を検出する手段をさらに備え、
前記ソレノイド弁駆動手段は、前記検出されたバッテリ電圧又はリニアソレノイド弁の電源電圧が基準値未満の場合に、当該電圧が基準値以上である場合に比べて、前記リニアソレノイド弁のヒステリシスが大きくなる電流−油圧特性に基づいて、前記リニアソレノイド弁へ指示電流を出力することを特徴とする、請求項1に記載のアイドルストップ車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196497(P2011−196497A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65626(P2010−65626)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】