説明

アイドルストップ車両

【課題】クラッチ操作系での遊びが大きくても、クラッチの断状態を検出できるアイドルストップ車両を提供する。
【解決手段】(c)において、クラッチスイッチ60Aは、レバー46の揺動端51の軌跡上に配置されると共に、ハンドル12の左端部に設けられる。レバー46の揺動中心111から揺動端51の検出片接触点112までの距離をレバー揺動半径R2とし、レバー46を所定角度θ2だけ操作することにより、レバー揺動端51の移動量Δ2を大きく取ることができるので、クラッチ操作系での遊びが大きくてもケーブルを引くことができ、クラッチスイッチオンのときにクラッチの断状態を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチの断条件等に基づきエンジンを停止させるアイドルストップ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチレバーの操作状態をクラッチスイッチで検出して、クラッチの断条件及びその他の諸条件に基づいてエンジンを停止させるようにしたアイドルストップ車両が各種提案されている(例えば、特許文献1(図7)参照。)。
【0003】
特許文献1の図7に示すように、制御手段となるECUにハンドクラッチスイッチ(43)(括弧付き番号は特許文献1に記載されている符号を示す。以下同じ)が接続されている。このようなハンドクラッチスイッチ(43)がアイドルストップ車両に備えられる。
【0004】
ハンドクラッチスイッチ(43)は、ハンドクラッチレバーの揺動中心側端部に設けられるものである。ハンドクラッチレバーとクラッチはケーブルで接続される。このようなクラッチ操作系には遊びが備えられる。つまり、遊び量だけハンドクラッチレバーを操作した後に、クラッチが接状態から断状態に移行する。次にハンドクラッチレバーを所定角度だけ操作することでハンドクラッチスイッチ(43)がオンとなり、クラッチの断状態を検出できる。
【0005】
しかし、ハンドクラッチスイッチ(43)は、ハンドクラッチレバーの揺動中心側端部に設けられるため、揺動中心から揺動中心側端部までの距離(揺動半径)が小さくなり、ハンドクラッチレバーを所定角度操作したときの揺動中心側端部の移動量も小さくなる。揺動中心側端部の移動量が小さく、且つクラッチ操作系で大きな遊びがある場合、ハンドクラッチスイッチ(43)がオンであっても、ケーブルの引張り量が不足してクラッチは接状態のままであることが起こり得る。
ハンドクラッチスイッチ(43)の検出とクラッチの状態とが不一致であることは好ましくないため、クラッチ操作系の調整を頻繁に且つ精密に行う必要があり、煩雑である。
【0006】
そこで、クラッチ操作系で大きな遊びがある場合でも、クラッチの断状態を検出することが可能な技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−226514公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クラッチ操作系での遊びが大きくても、クラッチの断状態を検出できるアイドルストップ車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ハンドルに揺動可能に支持され運転者が手で操作するクラッチレバーと、このクラッチレバーから延ばしたケーブルに接続され前記クラッチレバーの操作で断状態又は接状態になるクラッチと、前記クラッチレバーの操作状態を検出するクラッチスイッチとを有し、前記クラッチの断条件及びその他の諸条件に基づいてエンジンを停止させるようにしたアイドルストップ車両において、前記クラッチスイッチは、前記クラッチレバーの揺動端の軌跡上に配置されると共に、前記ハンドルの端部に設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、クラッチスイッチの配線は、ハンドルの内部に挿入されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、クラッチスイッチは、磁石とこの磁石が接近すると電気特性が変化する発振コイルとを有する近接スイッチであり、前記磁石がクラッチレバーの揺動端に設けられ、前記発振コイルがハンドルの端部に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、クラッチスイッチは、ハンドル端部の外周面からクラッチレバーに向かって突出する検出片を備えるプッシュ式スイッチであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、クラッチスイッチは、ハンドル端部の外周面より内方に、クラッチレバーに向かって突出する検出片を備えるプッシュ式スイッチであり、前記クラッチレバーの揺動端に、前記検出片に向かって突出する突部が備えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、クラッチスイッチは、クラッチレバーの揺動端の軌跡上に配置されると共に、ハンドルの端部に設けられるので、クラッチレバーを握ることでクラッチスイッチがクラッチレバーの揺動を検出する。また、クラッチレバーの揺動中心から揺動端までの距離をレバー揺動半径とし、クラッチレバーを所定角度だけ操作することにより、レバー揺動端の移動量を大きく取ることができるので、クラッチ操作系での遊びが大きくてもケーブルを引くことができ、クラッチスイッチオンのときにクラッチの断状態を検出できる。
【0015】
請求項2に係る発明では、クラッチスイッチの配線が、ハンドルの内部に挿入されるため、配線をハンドルの外面に沿わせる必要がなくなり、ハンドルの外観性が良好になる。
【0016】
請求項3に係る発明では、クラッチスイッチは、磁石と発振コイルとを有する近接スイッチであり、磁石を発振コイルに近づけるだけでよいから、磁石をクラッチレバー内部に設け、且つ発振コイルをハンドル内部に設けることができる。クラッチレバーからの磁石の出っ張り及びハンドル側から発振コイルの出っ張りがないので、クラッチレバー及びハンドルの外観性を維持できる。
【0017】
請求項4に係る発明では、クラッチスイッチは、ハンドル端部の外周面からクラッチレバーに向かって突出する検出片を備える。ハンドル端部には検出片が備えられるが、クラッチレバーには新たな部品を取付ける必要がなく、既存のレバーを用いることができるため、レバーのコストアップが抑えられる。
【0018】
請求項5に係る発明では、クラッチスイッチは、ハンドル端部の外周面より内方に、クラッチレバーに向かって突出する検出片を備え、クラッチレバーの揺動端に、検出片に向かって突出する突部が備えられる。検出片がハンドル端部内に収まっているため、ハンドルの外観性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るアイドルストップ車両の左側面図である。
【図2】クラッチレバー及び左グリップの平面図である。
【図3】左グリップの断面図である。
【図4】エンジンの右側面図である。
【図5】図4の5矢視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】クラッチスイッチの作用図である。
【図8】クラッチレバーの移動量に関する実施例と比較例を説明する図である。
【図9】アイドルストップ装置の構成を説明する図である。
【図10】図3の変更例を示す図である。
【図11】図10に示すスイッチカバーの作用を説明する図である。
【図12】別のクラッチスイッチの断面構造を説明する図である。
【図13】別のクラッチスイッチの作用を説明する図である。
【図14】更に別のクラッチスイッチの断面構造を説明する図である。
【図15】更に別のクラッチスイッチの作用を説明する図である。
【図16】図14の変更例を示す図である。
【図17】図16に示すスイッチカバーの作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。以下の説明で用いる前後、左右、上下は乗員シートに座った乗員を基準に定める。
【実施例】
【0021】
本発明に係るアイドルストップ車両を自動二輪車を例に図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10は、ヘッドパイプ11に転舵可能に取付けられハンドル12を上端に備えるフロントフォーク13と、このフロントフォーク13の下端に回転自在に取付けられる前輪14と、ヘッドパイプ11を前端に備える車体フレーム15と、この車体フレーム15に懸架されるパワーユニット16と、このパワーユニット16の上方にて車体フレーム15に支持される燃料タンク17と、この燃料タンク17の車両後方位置にて車体フレーム15に支持されるシート18と、車体フレーム15の下部に揺動可能に取付けられ車両後方に延びるリヤスイングアーム19と、このリヤスイングアーム19の後端に回転可能に取付けられる後輪21と、車体フレーム15とリヤスイングアーム19の後部との間に渡されるリヤクッションユニット22と、車体フレーム15の下部から下方に延ばされ車体を起立状態に保持するスタンド23とを主要素とするアイドルストップ車両である。
【0022】
パワーユニット16は、エンジン24と変速機25とを一体化したものである。エンジン24の駆動力は変速機25に伝達され、変速機25からチェーン伝動機構26を介して後輪21に伝達される。
エンジン24の前部から排気管27が下方へ延ばされ、排気管27が更に後方へ延ばされる。このような排気管27に消音器28に連結される。エンジン24の上部後部にスロットルボディ29を含む吸気系31が接続される。
【0023】
前輪14の上方位置にてフロントフォーク13にフロントフェンダ32が取付けられ、ヘッドパイプ11の前方位置にてフロントフォーク13にフロントカウル33が取付けられる。
後輪21の上方位置にて車体フレーム15にリヤカウル34が取付けられ、後輪21の後上方位置にて車体フレーム15にリヤフェンダ35が取付けられる。
【0024】
クラッチレバー及び左グリップの構造を図2に基づいて説明する。
図2に示すように、ハンドル12のパイプ部42L(Lは左を示す添え字。以下同様)の車幅方向左側に、運転者が左手で握るグリップ43Lが嵌められる。このグリップ43Lよりも車幅中心側に位置するようにパイプ部42Lに、ブラケット44が取付けられ、このブラケット44に、左手で操作するクラッチレバー46がボルト45で揺動可能に支持される。
【0025】
クラッチレバー46は、ブラケット44の車両前後方向前側に設けられる二股部53に差込まれ揺動中心となるボルト45の近傍に位置する揺動中心側端部54と、この揺動中心側端部54から車幅方向外側に延ばされて更に曲げて延ばされるV字状の延長部55と、この延長部55から車幅方向外側に延ばされ運転者が左手の人差し指・中指・薬指・小指を掛ける指掛け部56と、この指掛け部56の車幅方向外側端に設けられる揺動端51とからなる。
【0026】
加えて、クラッチレバー46の揺動端51の軌跡52上に配置され、且つパイプ部42Lの左端部に、クラッチレバー46の操作状態を検出するクラッチスイッチ60A(詳細後述)が取付けられる。
クラッチレバー46の車幅中心側端部からクラッチ(後述)側へクラッチケーブル48が延ばされ、このクラッチケーブル48がアウターチューブ47で覆われる。ブラケット44に、クラッチケーブル48の張り具合を調整するハンドル側調整部49が設けられる。
【0027】
クラッチスイッチ60Aの構造を図3に基づいて説明する。
図3に示すように、クラッチスイッチ60Aは、パイプ部42Lの左端穴に嵌められる嵌合部61及びこの嵌合部61の車幅方向左側にグリップ43Lの握り部外径よりも大径に設けられるキャップ部62で構成されるスイッチケース63と、このスイッチケース63の上端に圧縮ばね64を介して車体前後方向に移動可能に設けられ運転者がクラッチレバー46を所定角度操作したときに揺動端51に押される検出片65と、この検出片65を押さえるようにしてスイッチケース63に取付けられる押さえ部材66と、嵌合部61の車幅中心側に取付けられ検出片65の後端67で押されて車体前後方向後方へ撓む可動接点68と、嵌合部61の車幅中心側に取付けられ可動接点68の突起69が接触する静止接点71とからなる。
【0028】
押さえ部材66は、パイプ部42Lにスイッチケース63を介して設けられるため、ハンドル12の左端部となる。
加えて、検出片65の前端72は、押さえ部材66の外周面73からクラッチレバー46に向かって突出している。
【0029】
検出片65の前端72がクラッチレバー46の揺動端51で押されると、圧縮ばね64が圧縮されると同時に可動接点68が検出片65の後端67で押される。結果、可動接点68の突起69が静止接点71に接触する。すなわち、クラッチスイッチ60Aはプッシュ式スイッチである。
【0030】
可動接点68と静止接点71は、カプラ74を介して配線75に接続され、この配線75は、パイプ部42Lの内部に挿入される。パイプ部42Lの配線貫通部には、グロメット76が取付けられ、グロメット76で雨水の浸入を防止する。
【0031】
スイッチケース63及び押さえ部材66の車幅方向右側に、グリップ43Lの握り部外径よりも大径に形成される規制壁部77が設けられる。この規制壁部77で、左手が検出片65の前端72に掛かることを規制する。
【0032】
次にエンジン24の構成を図4に基づいて説明する。
図4に示すように、エンジン24は、クランク軸を囲うクランクケース81と、このクランクケース81の上面に設けられピストンを収納するシリンダブロック82と、このシリンダブロック82の上面に設けられ動弁機構を備えるシリンダヘッド83と、このシリンダヘッド83の上面に設けられ動弁機構を覆うシリンダヘッドカバー84とからなる。
【0033】
クランクケース81の車幅方向右側は、右クランクケースカバー85によって覆われ、この右クランクケースカバー85の上方に、クラッチシャフト(後述)に支持された操作アーム86(詳細後述)が配置される。
【0034】
クラッチケーブル48と操作アーム86の接続構造を図5に基づいて説明する。
図5に示すように、クラッチケーブル48の後端87は、操作アーム86の車幅中心側端部に連結部材88を介して連結される。アウターチューブ47のクラッチ側端部に、クラッチケーブル48の張り具合を調整するクラッチ側調整部89が設けられる。
一方、クラッチケーブル48の前端(図2、符号37)は、クラッチレバー(図2、符号46)の車幅中心側端部に連結される。
【0035】
クラッチの構造を図6に基づいて説明する。
図6に示すように、クラッチ90は、変速機(図1、符号25)の従動ギヤ39に取付けられ駆動側摩擦板91を有するクラッチハウジング92と、従動ギヤ39に組付けられ車幅方向外方に突出する複数のボス部93を有する受圧板94と、この受圧板94に車幅方向外方から組付けられ駆動側摩擦板91と離間又は圧接する従動側摩擦板95を有するクラッチインナ96と、クラッチインナ96に接触させ各々のボス部93に嵌合させると共に車幅方向外側から加圧板97をボス部93に組付けることでクラッチインナ96をクラッチハウジング92側へ付勢するクラッチばね98と、加圧板97に設けた凸部99と係合するカム部101を有しクラッチばね98の力に抗してクラッチインナ96をクラッチハウジング92の側へ押圧すると共にクラッチ90の断接を行わせるクラッチシャフト102とからなる。このクラッチシャフト102の上端部103に操作アーム86が一体に取付けられる。
【0036】
以上に述べたクラッチスイッチ(図3、符号60A)の作用を次に述べる。
図7(a)に示すように、運転者は、左手104(親指105、人差し指106、中指107、薬指108、小指109)でグリップ43Lを握る。
(b)に示すように、運転者は、人差し指106、中指107、薬指108、小指109)でクラッチレバー46を操作する。
【0037】
(c)に示すように、検出片65の前端72がクラッチレバー46の揺動端51で押され、圧縮ばね64が圧縮されると同時に可動接点68が検出片65の後端67で押される。可動接点68の突起69が静止接点71に接触してスイッチオンとなり、クラッチの断状態を検出することができる。
【0038】
次にクラッチレバーの移動量に関する実施例と比較例を図8に基づいて説明する。
図8(a)、(b)で比較例を説明し、(c)で実施例を説明する。
(a)において、運転者がクラッチレバー201を操作したときに、クラッチレバー201の揺動中心側端部に備える突出部材202で、クラッチスイッチ203の検出片204を押す。想像線で示されるクラッチレバー201の位置は、初期位置である。
【0039】
(b)は(a)のb部拡大図である。揺動中心205から突出部材202の検出片接触点206までの距離(揺動半径R1)が小さく、クラッチレバー201を所定角度θ1だけ操作したときの検出片接触点206の移動量Δ1も小さくなる。移動量Δ1が小さく、且つクラッチ操作系で大きな遊びがある場合、クラッチスイッチ203がオンであっても、クラッチケーブルの引張り量が不足してクラッチは接状態のままであることが起こり得る。
【0040】
これに対し、(c)では、揺動中心111から揺動端51の検出片接触点112までの距離(揺動半径R2)が大きく、クラッチレバー46を所定角度θ2だけ操作したときの検出片接触点112の移動量Δ2も大きくなる。移動量Δ2が大きいと、クラッチ操作系での遊びが大きくても、クラッチケーブル(図3、符号48)の引張り量が大きくなる。したがって、クラッチスイッチ60Aがオンのときに、クラッチ(図6、符号90)を断接状態にすることができる。
【0041】
次にアイドルストップ装置の構成と制御部の機能を図9に基づいて説明する。
図9において、自動二輪車(図1、符号10)は、諸条件に基づいてエンジン(図1、符号24)を自動停止させるアイドルストップ装置120を備える。このアイドルストップ装置120に、クラッチスイッチ60Aがオンになったときにクラッチ(図6、符号90)の断条件が満たされたと判断してエンジンを停止させるように制御する制御部130が設けられる。
【0042】
制御部130に、スタータモータ131と、スロットルボデイ(図1、符号29)に備えられ燃料を噴射するインジェクタ132と、燃料タンク(図1、符号17)に備えられ燃料を供給する燃料ポンプ133と、点火プラグ(図4、符号38)を含む点火装置134と、ギヤのポジションを検出するギヤポジションセンサ135と、アクセル開度を検出するスロットルセンサ136と、車両の速度を検出する車速センサ137と、クランクケース内のエンジンオイルの温度を検出するエンジンオイル油温センサ138と、スタンド(図1、符号23)が格納位置にあることを検出するスタンドスイッチ139と、シート(図1、符号18)に乗員が着座していることを検出するシートスイッチ141と、バッテリ142とが、各々ケーブルを介して電気的に接続される。
【0043】
ギヤポジションセンサ135、スロットルセンサ136、車速センサ137、エンジンオイル油温センサ138、スタンドスイッチ139、シートスイッチ141での検知に基づいて、エンジン(図1、符号24)を自動停止させる諸条件が整っているかどうか判断する。
【0044】
制御部130とバッテリ142との間にメインスイッチ143が介在される。加えて、制御部130とスタータモータ131との間に別系統のケーブルが接続され、このケーブルにスタータボタン144が介在される。
【0045】
スタータモータ131は、クランクケース(図4、符号81)に設けられ、制御部130の指令に応じて駆動しパワーユニット(図1、符号16)を始動させる。インジェクタ132は、制御部130の指令に応じて燃料噴射する。点火装置134は、制御部130の指令に応じて、所定タイミングで点火する。
【0046】
これまでに説明したクラッチスイッチ60Aは、検出片(図3、符号65)の前端(図3、符号72)が、押さえ部材(図3、符号66)の外周面(図3、符号73)からクラッチレバー(図3、符号46)に向かって突出するスイッチであった。
ところで、検出片を外方から覆うようにすれば、カバー付きのクラッチスイッチにすることができる。そのようなクラッチスイッチの例を次に説明する。
【0047】
図10において、図3と共通の構造は符号を流用して詳細な説明は省略する。
主たる変更点は、検出片をスイッチカバーで覆ったことである。
クラッチスイッチ60Bは、検出片65を押さえるようにしてスイッチケース63に取付けられる押さえ部材151を備える。
【0048】
押さえ部材151は、スイッチケース63に嵌められるケース嵌合部152と、このケース嵌合部152の車体前後方向前側に設けられケース嵌合部152の外径よりも大きな外径になるように車幅方向に突出するフランジ部153と、このフランジ部153の車体前後方向前側に設けられケース嵌合部152と略同径に形成される前方突出部154とからなる。
【0049】
このような押さえ部材151に、検出片65及び押さえ部材151を覆うようにして形成されるスイッチカバー155を取付けた。スイッチカバー155には、フランジ部153に嵌合する大径嵌合部156と、この大径嵌合部156の外径よりも小さな外径を有し前方突出部154に嵌合する小径嵌合部157とを備える。
【0050】
スイッチカバー155は、ゴム等の弾性部材が好適であり、嵌合部156、157の内径をフランジ部153及び前方突出部154の外径よりも小径に製作することで、フランジ部153及び前方突出部154に対する嵌合部156、157の密着性が高まる。雨水が飛んできても、スイッチカバー155で遮ることができる。
【0051】
スイッチカバー155の作用を図11に基づいて説明する。
図11において、スイッチカバー155の上部がクラッチレバー46の揺動端51で押し潰されることで、クラッチスイッチ60Bの検出片65の前端72が押される。
クラッチスイッチ60Bをオンにするには、スイッチカバー155の上部を押し潰し、スイッチカバー155をスイッチカバー155の上部と検出片65の前端72までの距離(図10、L1)だけを移動させることが必要である。すなわち、運転者が左手をスイッチカバー155に載せただけでは、スイッチがオンになりにくくなる。
【0052】
クラッチスイッチ60Bは、スイッチカバー155を備えるようにしたが、スイッチカバー155の出っ張りを無くすと更に好ましいクラッチスイッチとなる。そのようなクラッチスイッチを次に説明する。
【0053】
図12において、図3と共通の構造は符号を流用して詳細な説明は省略する。
主たる変更点は、クラッチスイッチを非接触式スイッチにしたことである。
クラッチスイッチ160は、パイプ部42Lの車幅方向左端部161に嵌合する嵌合溝162及びパイプ部42Lの内周面に嵌合する嵌合部163を有するスイッチケース164と、このスイッチケース164の内面に取付けられる鉄心165と、スイッチケース164に設けた一対の接点166、167に接続され鉄心165に巻付けられる発振コイル168と、スイッチケース164の左端部に取付けられるキャップ部169とからなる近接スイッチである。
【0054】
クラッチレバー46の揺動端51に、磁石171が設けられ、鉄心165及び発振コイル168がパイプ部42Lの端部に支持される。なお、磁石171と鉄心165と発振コイル168の組み合わせに替えて、磁性体とコイルで近接スイッチを構成させてもよい。
【0055】
キャップ部169は、パイプ部42Lにスイッチケース164を介して設けられるため、ハンドル12の左端部となる。なお、スイッチケース164は、実施例ではパイプ部42Lと別体に設けたが、パイプ部42Lと一体に形成してもよい。
【0056】
クラッチスイッチ160の作用を図13に基づいて説明する。
図13に示すように、磁石171が鉄心165及び発振コイル168に近づくと、矢印(1)のように磁界が発生し、発振コイル168に電流が流れる。この電流がアンプユニット172に流れると、アンプユニット172から出力信号が出されてクラッチの断状態を検出できる。なお、アンプユニット172は、例えば発振回路、検出回路、出力回路で構成される。
【0057】
前述したクラッチスイッチ60A(図3参照)は、クラッチレバーの揺動端でクラッチスイッチの検出片を押すプッシュ式スイッチであった。クラッチスイッチ60A以外のプッシュ式スイッチの例を次に説明する。
【0058】
図14において、図3と共通の構造は符号を流用して詳細な説明は省略する。
主たる変更点は、検出片の前端を押さえ部材で囲んだことである。
クラッチスイッチ180は、検出片65を押さえるようにしてスイッチケース63に取付けられる押さえ部材181を備える。押さえ部材181は、前方に突出する突出部182を備え、突出部182の車幅方向中央部に、検出片65の前端72を囲うように凹部183を設けた。すなわち、クラッチスイッチ180は、押さえ部材181の外周面184より内方に、クラッチレバー46に向かって突出する検出片65を備えるプッシュ式スイッチである。
【0059】
加えて、押さえ部材181は、パイプ部42Lにスイッチケース63を介して設けられるため、ハンドル12の左端部となる。
【0060】
一方、クラッチレバー46の揺動端51に、検出片65の前端72に向かって突出する突部185が設けられる。
【0061】
クラッチスイッチ180の作用を図15に基づいて説明する。
図15に示すように、検出片65の前端72が揺動端51の突部185に押され、可動接点68の突起69が静止接点71に接触してスイッチオンとなり、クラッチの断状態が検出される。クラッチスイッチ180は、検出片65の前端72が突出部182で囲われるため、運転者が検出片65の前端72に触れにくくなる。
【0062】
クラッチスイッチ180を外方からカバーで覆うようにすれば更に好ましい。そのようなクラッチスイッチの例を次に説明する。
【0063】
図16において、図14と共通の構造は符号を流用して詳細な説明は省略する。
主たる変更点は、検出片をスイッチカバーで覆ったことである。
クラッチスイッチ190は、検出片65を押さえるようにしてスイッチケース63に取付けられる押さえ部材191を備える。押さえ部材191の前端部に、突出部182の外周面に凹部183に向けて凹むように形成する凹み部192が設けられる。
【0064】
検出片65の前端72及び押さえ部材191を覆うようにして、凹み部192と、凹部183の側壁面を形成する内周面193とに、スイッチカバー194が嵌合している。
スイッチカバー194の大径内周面195が凹み部192に密着し、スイッチカバー194の小径内周面196が内周面193に密着するため、外方からの雨水を遮ることができる。
【0065】
スイッチカバー194の作用を図17に基づいて説明する。
図17において、スイッチカバー194の上部がクラッチレバー46の突部185で押し潰されることで、クラッチスイッチ190の検出片65の前端72が押される。
クラッチスイッチ190をオンにするには、スイッチカバー194の上部を押し潰し、スイッチカバー194をスイッチカバー194の上部と検出片65の前端72までの距離(図16、L2)だけを移動させることが必要である。すなわち、運転者が左手をスイッチカバー194に載せただけでは、スイッチがオンになりにくくなる。
【0066】
以上に述べた自動二輪車10の作用効果を以下に記載する。
図8(c)に示す構成により、クラッチレバー46の揺動中心111から揺動端51の検出片接触点112までの距離をレバー揺動半径R2とし、クラッチレバー46を所定角度θ2だけ操作することにより、レバー揺動端51の移動量Δ2を大きく取ることができるので、クラッチ操作系での遊びが大きくてもケーブルを引くことができ、クラッチスイッチオンのときにクラッチの断状態を検出できる。
【0067】
図3に示す構成により、クラッチスイッチ60Aの配線75が、ハンドル12の内部に挿入されるため、配線75をハンドル12の外面に沿わせる必要がなくなり、ハンドル12の外観性が良好になる。
【0068】
図12に示す構成により、クラッチレバー46からの磁石171の出っ張り及びハンドル12側から発振コイル168の出っ張りがないので、クラッチレバー46及びハンドル12の外観性を維持できる。
【0069】
図3に示す構成により、ハンドル端部66には検出片65が備えられるが、クラッチレバー46には新たな部品を取付ける必要がなく、既存のレバーを用いることができるため、レバーのコストアップが抑えられる。
【0070】
図14に示す構成により、検出片65がハンドル端部181内に収まっているため、ハンドル12の外観性が高まる。
【0071】
尚、本発明に係るアイドルストップ車両は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、鞍乗型の三輪車や四輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のアイドルストップ車両は、多板式クラッチを備えた自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0073】
10…アイドルストップ車両、12…ハンドル、24…エンジン、46…クラッチレバー、48…ケーブル、51…揺動端、52…軌跡、60A、160、180…クラッチスイッチ、65…検出片、66、169、181…ハンドル端部、73、184…外周面、75…配線、90…クラッチ、168…発振コイル、171…磁石、185…突部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(12)に揺動可能に支持され運転者が手で操作するクラッチレバー(46)と、このクラッチレバー(46)から延ばしたケーブル(48)に接続され前記クラッチレバー(46)の操作で断状態又は接状態になるクラッチ(90)と、前記クラッチレバー(46)の操作状態を検出するクラッチスイッチ(60A、160、180)とを有し、
前記クラッチ(90)の断条件及びその他の諸条件に基づいてエンジン(24)を停止させるようにしたアイドルストップ車両(10)において、
前記クラッチスイッチ(60A、160、180)は、前記クラッチレバー(46)の揺動端(51)の軌跡(52)上に配置されると共に、前記ハンドル(12)の端部(66、169、181)に設けられることを特徴とするアイドルストップ車両。
【請求項2】
前記クラッチスイッチ(60A、160、180)の配線(75)は、前記ハンドル(12)の内部に挿入されることを特徴とする請求項1記載のアイドルストップ車両。
【請求項3】
前記クラッチスイッチ(160)は、磁石(171)とこの磁石(171)が接近すると電気特性が変化する発振コイル(168)とを有する近接スイッチであり、
前記磁石(171)が前記クラッチレバー(46)の揺動端(51)に設けられ、
前記発振コイル(168)が前記ハンドル(12)の端部(169)に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアイドルストップ車両。
【請求項4】
前記クラッチスイッチ(60A)は、前記ハンドル端部(66)の外周面(73)から前記クラッチレバー(46)に向かって突出する検出片(65)を備えるプッシュ式スイッチであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアイドルストップ車両。
【請求項5】
前記クラッチスイッチ(180)は、前記ハンドル端部(181)の外周面(184)より内方に、前記クラッチレバー(46)に向かって突出する検出片(65)を備えるプッシュ式スイッチであり、
前記クラッチレバー(46)の揺動端(51)に、前記検出片(65)に向かって突出する突部(185)が備えられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアイドルストップ車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−71519(P2013−71519A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210641(P2011−210641)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】