説明

アウタロータ式インホイールモータの軸受構造

【課題】アウタロータ式インホイールモータの軸受を小型且つ軽量に構成し、これを搭載した車両の悪路における乗り心地を改善し、車両の走行性を向上させる。
【解決手段】電気自動車に装備されるアウタロータ式インホイールモータの軸受構造において、固定子部11の内径部に軸受箱3を一体に設け、軸受箱3の内部に複列アンギュラ玉軸受2と回転センサ4とを軸方向に直列に配置し、複列アンギュラ玉軸受2を介してアウタロータ部12の車軸12aを支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に装備されるアウタロータ式インホイールモータの軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の車輪軸受装置を示しており、これは車輪固定用のフランジ100aを有するハブ100の外輪軌道と、懸架装置に支持される取付部を外周面に有する外輪相当部101の内輪軌道の間に、玉列(ボール列)102、102を適宜な間隔を開けて設置し、外輪相当部101の内側にハブ100を回転自在に支持した構成のものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−232343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記図示したようなモータ軸受では、ラジアル荷重を受けるために前記二つの単列玉軸受102、102を配置する場合が多いが、その軸受でタイヤ反力を支持する車輪軸受を兼ねると、軸力を支持するために、前記軸受102、102として負荷容量が大きな大型のものを用いる必要があり、両軸受102、102の配置間隔も大きく確保する必要がある。
【0005】
前記構成のモータ軸受をアウタロータ式インホイールモータに適用した場合、モータの車軸と車輪から大きな力がかかっても固定子部とアウタロータ部の電磁素子間の間隔が一定に保持されるようにするには、スラスト方向の荷重を支えるために大型の玉軸受を用いなければならず、且つ単列玉軸受の配置間隔を大きく広げる必要があることに変わりはなく、必然的にモータ軸受は大型にならざるを得ない。インホイールモータを装備した電気自動車にあっては、モータ軸受が大型且つ重量の場合、ばね下重量に起因する悪路における乗り心地が悪化してしまい、また、懸架装置において操舵軸(キングピン軸)と車両中心間の距離(キングピンオフセット)が大きくなって車両の走行性能を低下させる。車両の走行性を向上するには、キングピンオフセットを小さくして駆動力、制動力及び路面外乱による車両の回頭を抑制する必要がある。
【0006】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、アウタロータ式インホイールモータの軸受を小型且つ軽量に構成し、これを搭載した車両の悪路における乗り心地を改善し、車両の走行性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、電気自動車に装備されるアウタロータ式インホイールモータの軸受構造において、固定子部の内径部に複列アンギュラ玉軸受を配置し、この複列アンギュラ玉軸受を介してアウタロータ部の車軸を支持した構成を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記構成の軸受構造において、固定子部の内径部に軸受箱を一体に設け、この軸受箱の内部に複列アンギュラ玉軸受とアウタロータ部の回転角を検出する回転センサとを軸方向に直列に配置した構成を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の軸受構造によれば、回転抵抗の小さい複列アンギュラ玉軸受をモータ軸受に配置してアウタロータ部が固定子部内に回転自在に支持されるように設けてあるので、モータ反力とタイヤ反力の双方の荷重を複列アンギュラ玉軸受で受けて支持することができ、従来のものよりもモータ軸受を小型且つ軽量に構成することが可能である。本発明の軸受構造を搭載した車両では、ばね下重量が軽減されるので、悪路における乗り心地を改善し、車室内居住性を向上させることができる。
また、固定子部の内径部に一体に設けた軸受箱内に前記複列アンギュラ玉軸受と回転センサとを軸方向に並べてコンパクトに収納して設置することができ、また、この軸受箱は固定子部内に納まる大きさに設定することができるので、これを搭載した車両では懸架装置におけるキングピンオフセットの軽減が図られ、車両の直進性を向上させて良好な走行性及び操舵性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した一実施形態のアウタロータ式インホイールモータの概略断面図である。
【図2】本発明で用いる複列アンギュラ玉軸受の一例の断面図である。
【図3】従来の車輪軸受装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明のモータ軸受構造を適用したアウタロータ式インホイールモータ(以下、「モータ」という)の概略断面を示しており、このモータ1は、図示されない懸架装置を介して車体に取付けられる固定子部11の内径部に、複列アンギュラ玉軸受2を配置し、この複列アンギュラ玉軸受2を介してアウタロータ部12の車軸12aを連結して、固定子部11の外周側に配設されたアウタロータ部12を回転自在に支持して構成されている。
【0012】
より詳しくは、固定子部11内には周方向に多数のコイル11aが列設して巻かれ、アウタロータ部12には同じく周方向に多数のマグネット12bが列設されており、これらコイル11aの外周面とマグネット12bの内周面とは僅かな間隙を挟んで対向させてある。なお、図示されない車輪のホイールは、アウタロータ部12の側面に設けたロータヨーク12cに締結される。
【0013】
固定子部11の内径部には、リング状の軸受箱3が当該内径部内周面に一体に取付けられており、この軸受箱3内に前記複列アンギュラ玉軸受2を収納してある。ここで複列アンギュラ玉軸受2は、例えば図2に示されるように、外輪21と内輪22の間に複数個の転動体である玉23、23を所定の間隔を開けて二列に並置し、それぞれの列の玉23、23が接触しないように保持器24によって一定の間隔に保持した構成のものを用いることができる。
【0014】
また、前記軸受箱3内には、複列アンギュラ玉軸受2とともに回転センサ4が軸方向に直列に配置されており、当該回転センサ4でアウタロータ部12の回転角を検出し、図示されないモータコントローラへと信号出力するように設けてある。
【0015】
このように構成されたモータ1は、図示されない懸架装置で固定子部11を支持し、アウタロータ部12にホイールを締結して車体に取付けるとともに、車体に設置されるバッテリ、モータコントローラ、インバータなどの回路装置と電気的に接続される。そして、前記回路装置によりモータ1を作動させ、前記軸受箱3内に設置された角度センサ4でアウタロータ部12の回転角を検出し、この角度センサ4からモータコントローラへと回転情報を出力し、受信した回転情報に応じてインバータから固定子部11の各コイル11aに必要電力を供給して、駆動輪が目標回転数及び駆動トルクとなるようにモータ1が制御される。
【0016】
本形態のモータ1によれば、モータ軸受として回転抵抗の小さい複列アンギュラ玉軸受2を用いているので、モータ反力とタイヤ反力の双方の荷重を受けて支持することができ、モータ軸受は、軸方向の幅の狭い小型且つ軽量なものに構成することが可能である。モータ軸受が小型化されるので、懸架装置におけるキングピンオフセットを小さくすることができ、車両の走行性及び操舵性を良好なものにすることが可能である。
【0017】
なお、図示したモータ1は本発明を適用した形態の一例を示すものであり、本発明のモータ軸受構造は図示した形態に限定されない。
【符号の説明】
【0018】
1 モータ、11 固定子部、11a コイル、12 アウタロータ部、12a 車軸、12b マグネット、12c ロータヨーク、2 複列アングギュラ玉軸受、3 軸受箱、4 回転センサ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に装備されるアウタロータ式インホイールモータの軸受構造において、固定子部の内径部に複列アンギュラ玉軸受を配置し、この複列アンギュラ玉軸受を介してアウタロータ部の車軸を支持した構成を有することを特徴とするアウタロータ式インホイールモータの軸受構造。
【請求項2】
固定子部の内径部に軸受箱を一体に設け、この軸受箱の内部に複列アンギュラ玉軸受とアウタロータ部の回転角を検出する回転センサとを軸方向に直列に配置した構成を有することを特徴とする請求項1に記載のアウタロータ式インホイールモータの軸受構造。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202547(P2012−202547A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70790(P2011−70790)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(511073571)株式会社SIM−Drive (8)
【Fターム(参考)】