説明

アウターロータ型モータの固定子構造

【課題】コイルの占積率を低下させずかつコイルと固定子ヨーク間の絶縁の信頼性を落とさずに固定子ユニット間の僅かな空間に作業性良く配線することができるアウターロータ型モータの固定子構造を提供する。
【解決手段】4段積層される固定子ヨーク8bは、周方向に2分割された分割固定子ヨーク8a1,8a2をリング状に組み合わせてコイル7外周側に組み付けられ、各固定子ユニット9a〜9dのコイル7の内周側から引き出されたコイルリード7aをコイル7外周側と磁極歯8c,8dの隙間を通過して駆動回路端子台11のリード端子11bと各々配線接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、産業機器、事務機器などに用いられるアウターロータ型モータの固定子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、固定子ユニットに設けられるコイルに流す電流方向を切り換えることにより、固定子ヨークの磁極歯に対向して設けられる永久磁石を備えた回転子が回転する。コイルは電流方向を切り換える等の制御をするためモータ基板に接続される。例えば、通常のブラシレスモータの場合、固定子鉄心に出力軸と平行な方向にマグネットワイヤーが巻き付けられ(巻芯方向が軸方向と直交するように巻付けられ)、コイルの巻き始めと巻き終わりのコイル端が共に軸方向に引き出されて駆動回路に接続される。
【0003】
インナーロータ型のPMステップモータの固定子ユニットは、固定子ヨークの磁極歯の外周に設けられたコイルボビンにマグネットワイヤーを巻いて内周側及び外周側のコイル端を端子を介して固定子の外周側の空間へ引き出してコネクタ又はプリント基板と接続していた(特許文献1,2参照)。
【0004】
アウターロータ型のPMステップモータの固定子は、固定子ヨークの磁極歯の内側に設けられたコイルボビンにマグネットワイヤーを巻いてコイルボビンの内周側と軸受ハウジングの外周側との隙間にコイルリードを通すためのガイドを設けて当該ガイド内にコイルリードを配線してコイル端をコネクタ又はプリント基板に接続していた(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−78268号公報
【特許文献2】特開2005−110377号公報
【特許文献3】特開2007−49844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アウターロータ型PMステップモータは、インナーロータ型PMステップモータに比べて、同体格で比較した場合に大きなトルクを発生出来る利点がある一方で、コイルリードの配線をモータ内部で行わなければならないために、コイルリードを配線するための空間が十分に確保できない。そのために、モータ内部の非常に狭い空間に配線を行わなければならないために、配線作業の作業性は悪いとともに固定子ヨークとコイルの絶縁の信頼性の確保が困難であるという問題がある。
逆に、コイルリードの配線のための空間を確保するには、コイルの占積率又は磁路となる固定子ヨークの体積を減らす方法が考えられるが、この方法の場合、モータの特性が低下してしまうという問題がある。
即ち、大きなトルクを発生するモータを、絶縁の信頼性の高い構造で実現することが困難であり、かつ組立に手間取り生産性が低いことが、アウターロータ型PMステップモータの普及し難い理由となっている。
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、コイルの占積率を低下させずかつコイルと固定子ヨーク間の絶縁の信頼性を落とさずに固定子ユニットの僅かな空間に作業性良く配線することができるアウターロータ型モータの固定子構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
マグネットワイヤーを巻いた空芯コイルを、軸受部の周囲で櫛歯状の磁極歯が形成された固定子ヨークにより挟み込んだ固定子ユニットが同芯状に複数段積層される固定子と、前記軸受部に挿入される出力軸と、前記磁極歯に対向して磁極が形成される永久磁石を備え前記出力軸を中心に回転可能に支持された回転子ヨークを備えた回転子と、前記コイルに通電してモータを駆動する駆動回路の端子である駆動回路端子部と、を備えたアウターロータ型モータの固定子構造であって、前記複数段積層される固定子ヨークは、周方向に複数個に分割された分割固定子ヨークをリング状に組み合わせて前記コイル外周側に組み付けられ、各固定子ユニットの前記コイルの内周側から引き出されたコイルリードをコイル外周側と磁極歯の隙間を通過して前記駆動回路端子部と各々配線接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、軸受部の外周にコイルを組み付けた後で分割固定子ユニットどうしをリング状に組み合わせて多段の固定子ユニットを組み付けることができ、各固定子ユニットのコイルの内周側から引き出されたコイルリードがコイル外周側と磁極歯の隙間を通過して駆動回路端子部まで配線されるので、複数段形成される固定子ヨークの組み付け作業及びコイルリードの配線作業性が極めて簡素化して行え、組立性が向上するうえに、コイルの占積率又は固定子ヨークの体積を減らすことなく、コイルから駆動回路端子部へ省スペースで配線することが可能となる。
【0010】
また、本発明においては、前記出力軸を回転可能に支持する筒状の軸受ハウジングの外周に絶縁塗装されたリング状の固定子ガイド板を嵌め込んで軸方向に複数段形成されるボビンに前記マグネットワイヤーが巻かれたコイルが各々組み付けられ、各固定子ガイド板に内周側から外周側にわたって設けられた配線空間を通じて前記コイルリードがコイル外周面側に引き出されることが好ましい。
上記構成によれば、コイルの内周側からコイルリードの引き出しが各固定子ガイド板に内周側から外周側にわたって設けられた配線空間を通じて行えるので、コイルリードの配線作業がしやすくなる。
【0011】
また、本発明においては、前記軸受ハウジングの外周に、前記固定子ガイド板に代えて、一対のリング状の固定子ガイド板が内周側連結部で連結されるように一体成形されたボビンが複数段積層されてはめ込まれ、各ボビンに前記マグネットワイヤーが巻かれたコイルが各々組み付けられていてもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記各固定子ガイド板には、内周側から外周側に連続する起立壁が突設されたスリットと該スリットと径方向反対側に起立壁側に隆起したガイド部と、前記ガイド部の外周縁部に切欠き部が各々形成されており、前記起立壁とガイド部が重なり合う位置に形成される凹溝部を通じて前記コイルリードがコイル外周面側に引き出され、かつ前記切欠き部、起立壁を通じて隣接する前記コイル外周面に沿って配線されることが好ましい。
上記構成によれば、コイル内周側より凹溝部を通じてコイル外周側に引き出されたコイルリードを隣接するコイル外周面に沿ってわずかな空間部に効率よく配線することができる。
【0013】
各固定子ユニット間で隣り合う固定子ガイド板間に形成される前記各凹溝部が周方向にシフトして形成されていることが好ましい。
各凹溝部が周方向にシフトして形成されているので、各コイル内周側から外周側へ引き出されたコイルリードをコイル外周側において錯綜することなく駆動回路端子部までの配線することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記各分割固定子ヨークの周方向両端部が、前記起立壁及びガイド部に各々突き当てられて装着され前記コイルの外周側で磁極歯どうしが噛み合うように組み付けられ、分割固定子ヨークどうしが溶接、接合或いは圧入のいずれかにより周方向で一体となるように組み付けられていることが好ましい。
これによって、分割固定子ヨークを固定子ユニットごとに組み付けることもできるし、複数段の固定子ユニットにわたって連なった状態で組み付けることも可能になり、分割固定子ヨークの固定子ガイド板に対する位置決めと組付けが容易に行えるため、組立性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明においては、固定子全体がモールドされていることを特徴とする。
上記構成によれば、モータに振動や熱膨張や熱収縮を繰り返す過酷な使用環境に置かれても、コイルリードが位置ずれすることなく、回転子側に飛び出すこともないので耐候性や信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
上述したアウターロータ型モータの固定子構造を用いれば、コイルの占積率を低下させずかつコイルと前記駆動回路端子部間の絶縁の信頼性を落とさずに固定子ユニット間の僅かな空間に作業性良く配線することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】固定子ユニットの斜視図である。
【図2】図1の固定子ガイド板の斜視図である。
【図3】軸受ハウジングに固定子ガイド板を組付けた状態の斜視図である。
【図4】図3の固定子ガイド板間にコイルを巻いてコイルリードを駆動回路端子部に配線接続した状態の斜視図である。
【図5】分割固定子ヨークの斜視図である。
【図6】図4のコイル外周から分割固定子ヨークを取り外した状態の斜視図である。
【図7】モールドされた固定子とこれに組み付けられる回転子の分解斜視図である。
【図8】他例に係る固定子ガイド板を含んで一体成形されたボビンの斜視図である。
【図9】軸受ハウジングに図8のボビンを組付けた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るアウターロータ型モータの固定子構造の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るアウターロータ型モータは、固定子が空芯状に巻かれたコイルを櫛歯状の磁極歯(クローポール)を有する固定子ヨークにより挟み込んで形成される複数の固定子ユニットが同芯状に積層されるクローポール型の2相ステッピングモータを例示して説明する。
【0019】
2相ステッピングモータの概略構成について図1及び図7を参照して説明する。図7において、回転子1は、周方向にN・S交互に着磁された永久磁石2が筒状の回転子ヨーク3の内周面に設けられている。永久磁石2は、後述する固定子ヨークの磁極歯(クローポール)に対向して設けられる。回転子ヨーク3の底部には回転子ハブ4が設けられており、回転子ハブ4には、出力軸5が圧入、焼嵌などにより一体に連結されている。
【0020】
図1において、固定子6は、マグネットワイヤーが空芯状に巻かれたコイル7を一対の固定子ヨーク8a,8bにより挟み込んだ固定子ユニット9a〜9dが同芯状に複数(本実施例では4段)積層されてなる。本実施例では2相モータであるため、電気角で位相が180度異なるA相コイルとB相コイルが例えばA−A−B−B、A−B−A−B若しくはA−B−B−Aとなるように積層されている。図7に示すように、固定子ユニット9a〜9dの中心部には出力軸5を挿通する筒状の軸受ハウジング10が挿入され、駆動回路端子台11に一体に組み付けられる。軸受ハウジング10内には、円筒状のスペーサー12、軸受(ベアリング)13が同心状に嵌め込まれ、回転子1の出力軸5が筒孔を貫通して嵌め込まれ、抜け止め用ワッシャ14により抜け止めされて組み付けられる。固定子6は、固定子ユニット9a〜9dの周囲がモールド樹脂15によりモールドされている。尚、固定子ヨーク8a,8bの磁極歯8c,8dは、モールド樹脂15より露出しても露出しなくてもいずれでもよい。
【0021】
図1において、駆動回路端子台11には、コイル7に通電してモータを駆動する駆動回路の端子である接続端子11aが突設されている。また、コイル7の引き出し端部であるコイルリード7aを接続するリード端子11bが突設されている。接続端子11aやリード端子11bは、例えばインサート成形により駆動回路端子台11と一体に成形されている。本実施例では固定子ユニット9a〜9dが2相×2で4段に積層されており、4箇所でコイルリード7aを接続するリード端子11bが設けられる。
【0022】
各固定子ユニット9a〜9dのコイル7の内周側より外周側へ引き出されたコイルリード7aが当該コイル7の外周と固定子ヨーク8a,8bの磁極歯8c,8d(クローポール)の内周面との隙間を通過して各固定子ユニット間を駆動端子台11のリード端子11bに接続するように配線されている。
【0023】
次に各固定子ユニットの構成について具体的に説明する。固定子ユニット9a〜9dは同様の構成であるので、以下では一の固定子ユニットの構成について説明するものとする。図1において、コイル7は、出力軸5を回転可能に支持する筒状の軸受ハウジング10の外周に絶縁塗装されたリング状の固定子ガイド板16をはめ込んで軸方向に複数段形成されるボビンにマグネットワイヤーが巻かれたコイル7が各々組み付けられている。
【0024】
図2に示すように、リング状に形成された固定子ガイド板16には内周側から外周側にわたって設けられたスリット16a、該スリット16から軸方向に起立する起立壁16bが形成されている。また、スリット16aとは径方向反対側に内周側から外周側にわたって起立壁16b側に門型に膨らんだガイド部16cが形成されている。ガイド部16cの外周側縁部は、内周側に向かって切り欠かれた切欠き部16eが形成されている。この切欠き部16eを通じてコイル外周側と固定子ヨーク8a,8bの磁極歯8c,8dとの隙間に軸受ハウジング10の長手方向に配線することができる。固定子ガイド板16は表面が絶縁被膜で覆われている。
【0025】
図3の最上段に設けられた一対の固定子ガイド板16について説明する。固定子ガイド板16は、起立壁16b及びガイド部16cが上方に突設するように配置され、対向する固定子ガイド板16は、起立壁16b及びガイド部16cが下方に突設されるように180度反転させて組み付けられる。同様にして軸受ハウジング10の長手方向に一対の固定子ガイド板16が4対(8枚)組み付けられる。このとき、隣り合う固定子ガイド板16は、ガイド部16cの凸面と起立壁16bとが当接するように組み付けられる。これにより、ガイド部16cの凹面側である凹溝部16dと切欠き部16eとこれに連続する起立壁16bにより囲まれた部分がコイルリード7aを引き出すための配線空間となる。この凹溝部16dを通じてコイルリード7aがコイル内周側からコイル外周面側に径方向に引き出され、引き出されたコイルリード7aが折り曲げられて切欠き部16eとこれに連続する起立壁16bとの間を通過させて隣接する(2段目)のコイル7の外周側に配線されるようになっている。尚、最下側の固定ガイド板16は起立壁16bが駆動回路端子台11に当接しており、起立壁16bと端子台上面に囲まれた凹溝部16dが配線空間となる。
【0026】
図3に示すように、各固定子ユニット間に形成される凹溝部16dは周方向にシフトして形成されている。よって、図4に示すように、例えば最上段のコイル7の内周側より凹溝部16dを通じて外周側に引き出されたコイルリード7aは、切欠き部16eを通過して2段目のコイル外周側と磁極歯8c,8dとの隙間に配線され、2段目のボビンと3段目のボビンを形成する隣り合う固定子ガイド板16の切欠き部16e及び起立壁16b間を通過して更に3段目のコイル外周側と磁極歯8c,8dとの隙間に配線され、3段目のボビンと4段目のボビンを形成する隣り合う固定子ガイド板16の切欠き部16e及び起立壁16b間を通過して更に4段目のコイル外周側と磁極歯8c,8dとの隙間に配線され、最下段の固定子ガイド板16の切欠き部16eを通過して駆動回路端子台11のリード端子11bと接続される。
2段目以降のコイル7の内周側より凹溝部16dを通じて外周側に引き出されたコイルリード7aも切欠き部16eを通過して3段目のコイル外周側と磁極歯8c,8dとの隙間に同様に配線され最終的に駆動回路端子台11のリード端子11b(駆動回路端子部)と接続される。
【0027】
図5は、2分割された場合の固定子ヨーク8aの分割固定子ヨーク8a1を示す。図1に示すように、コイル7が巻かれた一対の固定子ガイド16は、固定子ヨーク8aと固定子ヨーク8bとで挟み込まれる。固定子ヨーク8aと固定子ヨーク8bには、櫛歯状の磁極歯8c,8dが周方向に一定の位相差を形成して配置される。固定子ヨーク8a,8bの外面は絶縁膜に覆われており、その膜は塗料が塗布されてものでも良い。仮に固定子ヨーク8a,8bが絶縁膜で覆われていない場合には、マグネットワイヤーに通常施されている絶縁コーティングとは別にコイルリード7aに絶縁コーティングされているか又は絶縁材(樹脂チューブなど)で覆われていることが信頼性を確保するうえでは好ましい。
【0028】
図1に示すように、各分割固定子ヨーク8a1,8a2の周方向両端部が、起立壁16b及びガイド部16dに各々突き当てられて装着されコイル7の外周側で磁極歯8c,8dどうしが噛み合うように組み付けられる。分割固定子ヨーク8a1,8a2どうしは溶接、接合或いは圧入のいずれかにより周方向に一体となるように組み付けられている。
【0029】
固定子ヨーク8a,8bは固定子ユニット9a〜9dごとに組み付けることもできるし、図6に示すように複数段(例えば4段)に連なった状態で2分割されている分割固定子ヨーク8A1,8A2どうしを組み合わせて組み付けることも可能である。
これにより、分割固定子ヨーク8a1,8a2、8A1,8A2の固定子ガイド板16に対する位置決めと組付けが容易に行えるため、組立性を向上させることができる。
【0030】
上述した固定子6を組み立てるには、図1において駆動回路端子台11に軸受ハウジング10を組み付け、該軸受ハウジング10の外周に図3に示すように固定子ガイド板16を、一対ずつガイド部16cとスリット16aが向かい合うように嵌め込む。
また、4段目と3段目、3段目と2段目、2段目と1段目の隣り合う固定子ガイド板16どうしは、起立壁16bとガイド部16cが重なり合うように順次組み付けることで4段のボビンが形成される。
【0031】
図4に示すように4段のボビンに各々コイル7を巻いて、最上段である1段目のコイルリード7aが凹溝部16dを通じて内周側から外周側に引き出し、1段目と2段目の固定子ガイド板16間に形成された切欠き部16e、起立壁16bを通過させて2段目のコイル7の外周側を経て2段目と3段目の固定子ガイド板16間に形成された切欠き部16e、起立壁16bを通過させる配線を繰り返し行って、コイルリード7aを駆動回路端子台11のリード端子11bと各々接続させる。尚、例えば1段目のコイル7の巻き終わりと2段目のコイル7の巻き始めをつなぎ合わせて巻かれており、3段目のコイル7の巻き終わりと4段目のコイル7の巻き始めをつなぎ合わせて巻かれていてもよい。
【0032】
次に、分割固定子ヨーク8a1,8a2を4段あるボビンごと、或いは図6に示す4段)に連なった状態で2分割されている分割固定子ヨーク8A1,8A2どうしを組み合わせて組み付ける。分割固定子ヨーク8a1,8a2、8A1,8A2は、周方向両端を起立壁16bとガイド部16cに突き当てて装着され、溶接、接着、圧入のうちいずれかで一体に組み付けられる。
この後、固定子6の外周面及び駆動回路端子台11を一括してモールドしても良い。尚、先に固定子6の外周面をモールドし、その後端子台11のリード端子11bを覆ってモールドするようにしても良い。
【0033】
なお、必ずしも固定子ユニット9a〜9dの各磁極歯8c,8dの磁束作用面を露出させる必要は無く、製品や用途(実施状況)によって露出させるか、しないか決めればよい。また、磁極歯8c,8dの磁束作用面が露出していると、永久磁石2とのギャップが小さいのでトルクが出やすいという特徴があるが、モールド樹脂が固定子ユニット9a〜9dから剥がれてバリになる危険性が高まる。一方、磁極歯8c,8dの磁束作用面が露出していない場合は、それとは逆でトルクは出にくいが、モールド樹脂が剥がれ落ちにくいという特徴がある。
【0034】
上記アウターロータ型モータの固定子構造を用いれば、コイル7の占積率を低下させずかつコイル7と駆動回路端子台11の絶縁の信頼性を落とさずに固定子ユニット9a〜9d間の僅かな空間に作業性良く配線することができる。
【0035】
また、軸受ハウジング10の外周にコイル7を組み付けた後で分割固定子ユニット8a1,8a2どうしをリング状に組み合わせて多段の固定子ユニット9a〜9dを組み付けることができ、各固定子ユニットのコイル7の内周側から引き出されたコイルリード7aが隣接するコイル外周側と磁極歯の隙間を通過して駆動回路端子部11まで配線されるので、複数段形成される固定子ヨーク8a,8bの組み付け作業及びコイルリード7aの配線作業性が極めて簡素化して行え、組立性が向上する。
【0036】
次にアウターロータ型モータの固定子構造の他例について図8及び図9を参照して説明する。前記実施形態と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。以下では、異なる構成を中心に説明する。
また、本実施形態は、軸受ハウジング10の外周に、固定子ガイド板16に代えて、一対のリング状のガイド板17aが内周側連結部17bで連結されるように一体成形されたボビン17が複数段(例えば図9に示す17A〜17Dの4段)積層されて嵌め込まれ、各ボビン17にマグネットワイヤーが巻かれたコイル7が各々組み付けられていてもよい。
【0037】
図8において、リング状に形成された一対のガイド板17aには内周側から外周側にわたって設けられたスリット17c、該スリット17cから軸方向に起立する起立壁17dが形成されている。また、スリット17cとは径方向反対側に内周側から外周側にわたって起立壁17d側に門型に膨らんだガイド部17eが形成されている。ガイド部17eの外周側縁部は、内周側に向かって切り欠かれた切欠き部17fが形成されている。
ボビン17は一対のガイド板17aは、起立壁17d及びガイド部17eが対向面と反対側に突設され、対向するガイド板17は、起立壁17dとガイド部17eとが対向するように180度反転させた状態で一体成形されている。
【0038】
ボビン17A〜17Dを軸受ハウジング10の外周にガイド部17eと起立壁17dが重なり合うように積層されて嵌め込まれている。ガイド部17eの凹面側である凹溝部17gと切欠き部17fとこれに続く起立壁17dに囲まれた部分が配線空間として用いられる。各ボビン17A〜17Dに巻き付けられるコイル7は、コイルリード7aが凹溝部17gに沿って内周側から外周側へ引き出され、切欠き部17f、起立壁17dを通じて隣接するコイル外周側に配線するようになっている点は上述した実施例と同様である。
【0039】
上述した実施例では、クローポール型の2相ステッピングモータについて例示したが、これに限定されるものではなく、軸方向の長さが長くなるが低振動を実現した3相、4相、…n相などの多相ステッピング(ブラシレス)モータに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 回転子
2 永久磁石
3 回転子ヨーク
4 回転子ハブ
5 出力軸
6 固定子
7 コイル
7a コイルリード
8a,8b 固定子ヨーク
8a1,8a2、8A,8B 分割固定子ヨーク
8c,8d 磁極歯
9a,9b,9c,9d 固定子ユニット
10 軸受ハウジング
11 駆動回路端子台
11a 接続端子
11b リード端子
12 スペーサー
13 軸受
14 ワッシャ
15 モールド樹脂
16 固定子ガイド板
16a スリット
16b,17d 起立壁
16c,17e ガイド部
16d,17g 凹溝部
16e,17f 切欠き部
17,17A,17B,17C,17D ボビン
17a ガイド板
17b 内周側連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットワイヤーを巻いた空芯コイルを、軸受部の周囲で櫛歯状の磁極歯が形成された固定子ヨークにより挟み込んだ固定子ユニットが同芯状に複数段積層される固定子と、前記軸受部に挿入される出力軸と、前記磁極歯に対向する磁極が形成された永久磁石を備え前記出力軸を中心に回転可能に支持された回転子ヨークを備えた回転子と、前記コイルに通電してモータを駆動する駆動回路の端子である駆動回路端子部と、を備えたアウターロータ型モータの固定子構造であって、
前記複数段積層される固定子ヨークは、周方向に複数個に分割された分割固定子ヨークをリング状に組み合わせて前記コイル外周側に組み付けられ、各固定子ユニットの前記コイルの内周側から引き出されたコイルリードをコイル外周側と前記磁極歯の隙間を通過して前記駆動回路端子部と各々配線接続されていることを特徴とするアウターロータ型モータの固定子構造。
【請求項2】
前記出力軸を回転可能に支持する筒状の軸受ハウジングの外周に絶縁塗装されたリング状の固定子ガイド板を嵌め込んで軸方向に複数段形成されるボビンに前記マグネットワイヤーが巻かれたコイルが各々組み付けられ、各固定子ガイド板に内周側から外周側にわたって設けられた配線空間を通じて前記コイルリードが隣接するコイル外周面側に引き出される請求項1記載のアウターロータ型モータの固定子構造。
【請求項3】
前記軸受ハウジングの外周に、請求項2の固定子ガイド板に代えて、一対のリング状のガイド板が内周側連結部で連結されるように一体成形されたボビンが複数段積層されて嵌め込まれ、各ボビンに前記マグネットワイヤーが巻かれたコイルが各々組み付けられ、各ガイド板に内周側から外周側にわたって設けられた配線空間を通じて前記コイルリードが隣接するコイル外周面側に引き出される請求項1記載のアウターロータ型モータの固定子構造。
【請求項4】
前記各固定子ガイド板には、内周側から外周側に連続する起立壁が突設されたスリットと該スリットと径方向反対側に起立壁側に隆起したガイド部と、前記ガイド部の外周縁部に切欠き部が各々形成されており、前記起立壁とガイド部が重なり合う位置に形成される凹溝部を通じて前記コイルリードがコイル外周面側に引き出され、かつ前記切欠き部、起立壁を通じて隣接する前記コイル外周面に沿って配線される請求項2又は3記載のアウターロータ型モータの固定子構造。
【請求項5】
前記各固定子ユニット間で隣り合う前記固定子ガイド板間に形成される前記各凹溝部が周方向にシフトして形成されている請求項4記載のアウターロータ型モータの固定子構造。
【請求項6】
前記各分割固定子ヨークの周方向両端部が、前記起立壁及びガイド部に各々突き当てられて装着され前記コイルの外周側で磁極歯どうしが噛み合うように組み付けられ、前記分割固定子ヨークどうしが溶接、接合或いは圧入のいずれかにより周方向で一体となるように組み付けられている請求項4又は請求項5記載のアウターロータ型モータの固定子構造。
【請求項7】
前記固定子全体がモールドされている請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のアウターロータ型モータの固定子構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−13209(P2013−13209A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143691(P2011−143691)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】