説明

アウターロータ型モータ

【課題】コイルの占積率を低下させずかつ小型化したままでコイルリードの配線作業や接続作業の省力化を実現したアウターロータ型モータを提供する。
【解決手段】同相の固定子ユニットが複数分割されて積層される各固定子ユニット7a〜7dの同相のコイル5から引き出されたコイルリード11の一端が固定子ユニット7a〜7dの極歯6c,6dの隙間を通過して端子台本体9aに突設された相間端子部10a,10bに各々接続されて互いに直列に接続され、各相コイル5から引き出されたコイルリード11の他端が各々接続される駆動信号入力端子10cと外部入力端子10e、各相コイル5から引き出されたコイルリード11の他端が各々接続される駆動信号入力端子10dと外部入力端子10fとが端子台本体9a内で各々配線接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、産業機器、事務機器などに用いられるアウターロータ型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、固定子ユニットに設けられるコイルに流す電流方向を切り換えることにより、固定子ヨークの極歯に対向して設けられる永久磁石を備えた回転子が回転する。コイルは電流方向を切り換える等の制御をするためモータ基板に接続される。例えば、通常のブラシレスモータの場合、固定子鉄心に軸方向と平行な方向にマグネットワイヤーが巻き付けられ(巻芯方向が軸方向と直交するように巻付けられ)、コイルの巻き始めと巻き終わりのコイル端が共に軸方向に引き出されて駆動回路に接続される。
【0003】
インナーロータ型のPMステッピングモータの固定子ユニットは、固定子ヨークの極歯の外周に設けられたコイルボビンにマグネットワイヤーを巻いて内周側及び外周側のコイル端をモータケースの巻き付け部を介して固定子の外周側の空間へ引き出して配線基板と接続されていた(特許文献1参照)。
【0004】
或いは配線基板を用いることなくボビン形状を大きくし端子ピンの一端を保持させると共にボビンに巻き回したマグネットワイヤーの巻き始めと巻き終わりを各々接続し、各端子ピンを軸方向に引き出して他端側を回路基板に直接接続するようにしたインナーロータ型のPMステッピングモータも提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、アウターロータ型のPMステップモータにおいては、ボビンの巻き芯部にフランジ部に貫通する貫通孔を設けたボビンにコイルを巻いたもの貫通孔どうしが連通するように位置合わせして複数段重ね合せ、貫通孔に嵌め込まれた端子棒に外向きフランジ部の案内溝に引き出されたコイルリードを絡めて給電するようになっている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−78268号公報
【特許文献2】特開平5−64411号公報
【特許文献3】特開平9−74731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アウターロータ型PMステップモータは、インナーロータ型PMステップモータに比べて、同体格で比較した場合に大きなトルクを発生出来る利点がある一方で、コイルリードの配線をモータ内部で行わなければならないために、コイルリードを配線するための空間が十分に確保できない。
【0008】
具体的には、先ず、特許文献1においては給電用の回路基板を用いるため回路基板そのものの部品が嵩む上に、回路基板は回転子軸と垂直方向に配置されるため、アウターロータ型のモータでは採用できない。
また、特許文献2のボビン外径を外側に拡大した構造であると、コイルリードの巻き始め端部及び巻き終わり端部を端子ピンと各々接続するまでの距離が長くなりコイルリードの引き回しが直線的でないため、作業が手間取り組立自動化には向いていない。また、コイルリードを回転子軸と直交する方向に引き出すため、アウターロータ型のモータでは採用できない。
また、特許文献3の端子棒は回転子軸と平行にボビンを貫通して嵌め込まれるため、貫通孔への端子棒の圧入代を考慮するとアウターロータ型モータが大型化する。また、各ボビンに巻き回されたコイルから引き出されるコイルリードをフランジ部の案内溝を通じて端子棒に絡めるまで距離が長く、引き回し作業は直線的でないため組立自動化が困難である。
【0009】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、コイルの占積率を低下させずかつ小型化したままでコイルリードの配線作業や接続作業の省力化を実現したアウターロータ型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
マグネットワイヤーを巻いた空芯コイルを、軸受部の周囲で櫛歯状の極歯が形成された固定子ヨークにより挟み込んだ固定子ユニットが同芯状に複数段積層される固定子と、前記軸受部に挿入される回転子軸と、前記極歯に対向する磁極が形成された永久磁石を有し前記回転子軸を中心に回転可能に支持された回転子ヨークを備えた回転子と、前記コイルに通電してモータを駆動する駆動回路の駆動信号入力端子及び相間接続端子並びに外部入力端子が端子台本体に一体成形された駆動回路端子台と、を備えたアウターロータ型モータであって、同相の固定子ユニットが複数分割されて積層される各固定子ユニットの前記同相のコイルから引き出されたコイルリードの一端が前記固定子ユニットの極歯の隙間を通過して前記端子台本体に突設された前記相間端子部に各々接続されて互いに直列に接続され、各相コイルから引き出されたコイルリードの他端が各々接続される前記駆動信号入力端子と前記外部入力端子とが前記端子台本体内で各々配線接続されていることを特徴とする。
上記構成によれば、モータを駆動する駆動回路の駆動信号入力端子及び相間接続端子並びに外部入力端子が端子台本体に一体成形された駆動回路端子台用いているので、配線用基板は不要であり、各コイルより引き出されたコイルリードの配線接続も直線的に行うことができ、しかも端子台本体内の配線を省略することができる。よって、モータ体格を小型化したまま組立自動化に寄与することができる。
【0011】
また、前記駆動回路端子台は、前記相間接続端子と前記駆動信号入力端子と前記外部入力端子が連結部にて連続して形成されたリードフレームがインサート成形されて前記連結部が切断されて各端子が前記端子台本体より突設されているのが好ましい。
これにより、端子台本体をリードフレームを用いたインサート成形により製造することができ、しかもコイルリードを接続する端子部は連結部を切断するだけで形成することができるため、安価でかつ大量生産に適したアウターロータ型モータを提供することができる。
【0012】
また、前記端子台本体を形成するモールド樹脂として放熱性樹脂(例えば窒化アルミ、セラミック粉末等をフィラーとして混入した樹脂)を用いることで、駆動回路端子台をモータ取付板と放熱板を兼用して使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
上述したアウターロータ型モータを用いれば、コイルの占積率を低下させずかつ小型化したままでコイルリードの配線作業や接続作業の省力化を実現したアウターロータ型モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】固定子ユニットの斜視図である。
【図2】リードフレームの平面図である。
【図3】モールド後の駆動回路端子台の透視平面図である。
【図4】連結部を切除した後の駆動回路端子台の平面図である。
【図5】他例に係る駆動回路端子台の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るアウターロータ型モータの一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るアウターロータ型モータは、固定子が空芯状に巻かれたコイルを櫛歯状の極歯(クローポール)を有する固定子ヨークにより挟み込んで形成される複数の固定子ユニットが同芯状に積層されるクローポール型の2相ステッピングモータを例示して説明する。
【0016】
2相ステッピングモータの概略構成について図1を参照して説明する。図1において、回転子1は、周方向にN・S交互に着磁された永久磁石2が筒状の回転子ヨーク3の内周面に設けられている。永久磁石2は、後述する固定子ヨークの極歯(クローポール)に対向して設けられる。有底筒状に形成された回転子ヨーク3の底部には回転子ハブが設けられており、回転子ハブには、回転子軸が圧入、焼嵌などにより一体に連結されている。
【0017】
図1において、固定子4は、マグネットワイヤーが空芯状に巻かれたコイル5を一対の固定子ヨーク6a,6bにより挟み込んだ固定子ユニット7a〜7dが同芯状に複数(本実施例では4段)積層されてなる。本実施例では2相モータであるため、電気角で位相が180度異なるA相コイルとB相コイルが例えばA−A−B−B、A−B−A−B若しくはA−B−B−Aとなるように積層されている。固定子ユニット7a〜7dの中心部には回転子軸を挿通する筒状の軸受ハウジング8が挿入され、駆動回路端子台9に一体に組み付けられる。軸受ハウジング8内には、円筒状のスペーサー、軸受(ベアリング)が同心状に嵌め込まれ、回転子軸が筒孔を貫通して嵌め込まれ、抜け止め用ワッシャにより抜け止めされて組み付けられる。尚、固定子4は、固定子ユニット7a〜7dの周囲がモールド樹脂によりモールドされていてもよい。
【0018】
図1において、駆動回路端子台9にはA相及びB相コイルに通電してモータを駆動する駆動回路の相間接続端子10a,10b、駆動信号入力端子10c,10d及び外部入力端子10e,10fが端子台本体9aに一体成形されている。
【0019】
具体的には、A相及びB相の固定子ユニット7a〜7dが複数分割(2分割)されて積層される各固定子ユニットのコイル5の内周側から引き出されたコイルリード11をコイル外周側であって極歯6c,6dの隙間を通過して端子台本体9aに突設された相間接続端子10a,10bを通じて同相(A相若しくはB相)の固定子コイルの巻き始めと巻き終わりが配線接続されている。また、各相コイル5のコイルリード11と駆動信号入力端子10cと駆動信号入力端子10dとが各々配線接続されている。駆動信号端子10cは外部入力端子10eと配線接続され、駆動信号入力端子10dは外部入力端子10fと配線接続されている。
【0020】
図1において、例えば4段の固定子ユニットが図面上方向からA相−A´相−B相−´B相に積層されているとすると、1段目の固定子ユニット7aのコイル5(A相)から引き出された一端側(外周端又は内周端)コイルリード11は駆動信号入力端子10cと接続され、2段目の固定子ユニット7bのコイル5(A´相)から引き出された一端側(外周端又は内周端)コイルリード11は駆動信号入力端子10dと接続されている(図1の一点鎖線参照)。また、1段目の固定子ユニット7aのコイル5から引き出された他端側(内周端又は外周端)コイルリード11は相間接続端子10aと接続され、2段目の固定子ユニット7bのコイル5から引き出された他端側(内周端又は外周端)コイルリード11は相間接続端子10aと各々接続されている(図1の一点鎖線参照)。B相側の固定子ユニット7c,7dについても同様である。
【0021】
上記構成によれば、モータを駆動する駆動回路の相間接続端子10a,10b、駆動信号入力端子10c,10dが端子台本体9aに一体成形された駆動回路端子台9を用いているので、配線用基板は不要であり、各コイル5より引き出されたコイルリード11の配線接続も直線的に配線でき、しかも配線長を省略することができる。よって、モータ体格を小型化したまま組立自動化に寄与することができる。また駆動回路端子台9は外部取付板としても使用することができる。
【0022】
図2に示すように、駆動回路の相間接続端子10a,10b及び外部入力端子10e,10fに連なる駆動信号入力端子10c,10dが連結部10gにて連続して形成されたリードフレーム10が用いられる。このリードフレーム10がインサート成形されて図3に示すように軸受ハウジング8を含む端子台本体9aが一体成形される。
【0023】
この連結部10gが切断されて図4に示すように端子台本体9aより相間接続端子10a,10b、駆動信号入力端子10c,10d及び外部入力端子10e,10fが突設される。端子台本体9a内では駆動信号入力端子10cと外部入力端子10eとが配線接続され、駆動信号入力端子10dと外部入力端子10fが配線接続されている。また、相間接続端子10a,10a(例えばA相‐A´相接続用)どうし、相間接続端子10b,10bどうし(例えばB相‐B´相接続用)も配線接続されている。
これにより、リードフレーム10を用いたインサート成形をおこなうことにより駆動回路端子台9を製造することができ、しかもコイルリード11を接続する各端子は連結部10gを切断するだけで足りるため、安価でかつ大量生産に適したアウターロータ型モータを提供することができる。
【0024】
また、端子台本体9aを形成するモールド樹脂として放熱性樹脂(例えば窒化アルミ、セラミック粉末等をフィラーとして混入した樹脂)を用いることで、駆動回路端子台9をモータ取付板と放熱板を兼用して使用することができる。
【0025】
また、端子台本体9aを成形する際に図5に示すように鍔部9bを形成してもよい。これにより、端子台本体9aを、モータ取付板として使用する際に取り付け孔として使用することができる。
【0026】
上記アウターロータ型モータを用いれば、コイルの占積率を低下させず、かつコイルと駆動回路端子台9の絶縁の信頼性を落とさずに固定子ユニット7a〜7d間の僅かな空間に作業性良く配線することができる。
【0027】
また、各固定子ユニットのコイルの内周側から引き出されたコイルリード11が隣接するコイル外周側と極歯の隙間を通過して駆動回路端子台9の端子まで直線的に配線されるので、コイルリード11の配線作業性が極めて簡素化して行え、組立性が向上する。
【0028】
尚、相間接続端子10a,10bに接続されるコイルリード11はA相,B相のいずれであってもよく、駆動信号入力端子10c,10d及び外部入力端子10e,10fも入力端子の位置が入れ替わっていてもよい。
上述した実施例では、クローポール型の2相ステッピングモータについて例示したが、これに限定されるものではなく、軸方向の長さが長くなるが低振動を実現した3相、4相、…n相などの多相ステッピング(ブラシレス)モータに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 回転子
2 永久磁石
3 回転子ヨーク
4 固定子
5 コイル
6a,6b 固定子ヨーク
6c,6d 極歯
7a,7b,7c,7d 固定子ユニット
8 軸受ハウジング
9 駆動回路端子台
9a 端子台本体
9b 鍔部
10 リードフレーム
10a,10b 相間接続端子
10c,10d 駆動信号入力端子
10e,10f 外部入力端子
11 コイルリード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットワイヤーを巻いた空芯コイルを、軸受部の周囲で櫛歯状の極歯が形成された固定子ヨークにより挟み込んだ固定子ユニットが同芯状に複数段積層される固定子と、前記軸受部に挿入される回転子軸と、前記極歯に対向する磁極が形成された永久磁石を有し前記回転子軸を中心に回転可能に支持された回転子ヨークを備えた回転子と、前記コイルに通電してモータを駆動する駆動回路の駆動信号入力端子及び相間接続端子並びに外部入力端子が端子台本体に一体成形された駆動回路端子台と、を備えたアウターロータ型モータであって、
同相の固定子ユニットが複数分割されて積層される各固定子ユニットの前記同相のコイルから引き出されたコイルリードの一端が前記固定子ユニットの極歯の隙間を通過して前記端子台本体に突設された前記相間端子部に各々接続されて互いに直列に接続され、各相コイルから引き出されたコイルリードの他端が各々接続される前記駆動信号入力端子と前記外部入力端子とが前記端子台本体内で各々配線接続されていることを特徴とするアウターロータ型モータ。
【請求項2】
前記駆動回路端子台は、前記相間接続端子と前記駆動信号入力端子と前記外部入力端子が連結部にて連続して形成されたリードフレームがインサート成形されて前記連結部が切断されて各端子が前記端子台本体より突設されている請求項1記載のアウターロータ型モータ。
【請求項3】
前記端子台本体を形成するモールド樹脂として放熱性樹脂が用いられる請求項1又は2記載のアウターロータ型モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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