説明

アウトリガ装置

【課題】フロートが格納位置に移動した状態でジャッキシリンダが伸長しても、スライド支持機構部が破損する虞がなく、シリンダのロッド端部を確実に保持して車体支持が可能なアウトリガ装置を提供する。
【解決手段】アウトリガ装置は、車体にアウトリガ内箱を張出可能に設け、この内箱の先端部にロッド側端部が下方に向いたジャッキシリンダ25を設け、このシリンダのロッド端部にフロート30を設け、フロート30の中央部にロッド端部が当接可能な第1球面座34を設け、フロート30の上部に、ロッド端部の下方に第1球面座34が位置する使用位置とロッド側部の下方にフロート端部側が位置する格納位置との間でフロート30をスライド可能に支持するスライド支持機構部50を設け、フロート30の端部側の上面に、フロート30が格納位置に移動した状態でジャッキシリンダ25のロッド端部が当接可能な第2球面座38を設けて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガ装置に設けられたジャッキシリンダのロッド端部に取り付けられたフロートを格納時にジャッキシリンダに対して車体幅方向内側に移動させて収容するアウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン車等の作業用車両には、作業時に車体が転倒する虞を未然に防止するために、車体幅方向に張り出して車体を安定支持するアウトリガ装置が設けられている。このアウトリガ装置は、車体に車体幅方向に延設したアウトリガ外箱内にアウトリガ内箱を張り出し可能に挿入し、アウトリガ内箱の先端部にロッド側端部を下方に向けたジャッキシリンダを取り付け、ジャッキシリンダのロッド端部にフロートを取り付けて構成されている。ジャッキシリンダは、アウトリガ内箱の先端部に取り付けられたアウターポストと、アウターポストの下端部から突出入自在に挿入されたインナーポストを備え、インナーポストの下端部にフロートが設けられている。
【0003】
このようなアウトリガ装置には、格納時にアウトリガ装置のフロートが車体の幅方向外側に延出した状態で収容されるとすると、法的に規制される車体の車幅寸法がフロートによって制約されることとなって好ましくない。そこで、アウトリガ装置には、格納時にフロートが車体の幅方向内側に収まるように構成されたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このアウトリガ装置は、ジャッキシリンダのインナーポストの下端部にスライド支持機構部を介してフロートが設けられている。スライド支持機構部は、フロートの上部に取り付けられたスライド部材と、ジャッキシリンダのアウターポストの下端部に取り付けられてスライド部材を掛止可能な掛止ブラケットを有してなる。
【0005】
スライド部材は、フロートの中央部から端部側に延設され、所定の間隔を有して対向配置されて上方に延びる一対の側板と、各側板の内側に取り付けられて対向する他方の側板側へ延びる板状の一対のガイド板とを有してなる。これらのガイド板は、インナーポストの下端部に設けられた環状の段部の一方側及び他方側に掛止されて、フロートはジャッキシリンダのロッド端部に吊り下げられた状態で支持されて、フロートの中央部と端部側との間をスライド自在である。つまり、フロートはロッド端部の下方にフロートの中央部が位置する使用位置とロッド端部の下方にフロートの端部側が位置する格納位置との間でスライド可能に支持されている。フロートの中央部には、ジャッキシリンダのロッド端部が当接する球面座が設けられている。この球面座は、ジャッキシリンダのロッド端部と当接した状態でジャッキシリンダが伸長すると、ジャッキシリンダを介して車体の荷重を支持する。
【0006】
また各側板の上部のフロート中央部側には、対向する側板側へ突出する掛止片が複数設けられている。これらの掛止片は、フロートが格納位置に移動された際に掛止ブラケットに設けられた掛止プレートに掛止されて、フロートは格納位置において掛止ブラケットを介してジャッキシリンダに支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−97183号公報(段落番号0017〜0026、図4〜9,図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなアウトリガ装置を備えた作業用車両は、狭い作業現場でも使用され、アウトリガ装置を張り出さずにジャッキシリンダを伸長して車体を支持したい場合や、アウトリガ装置を張り出した状態で、ジャッキシリンダよりも外側にフロートが突出しない状態でジャッキシリンダを伸長して車体を支持したい場合がある。このような場合、従来のアウトリガ装置のフロートには、ジャッキシリンダのロッド端部の下方に位置するフロートの端部側に球面座が設けられていないので、フロートが格納位置に移動した状態又はアウトリガ装置が張り出してフロートがジャッキシリンダに対して外側に突出しない状態にして、ジャッキシリンダを伸長させても、ジャッキシリンダのロッド端部を確実に支持することができない。
【0009】
またフロートが格納位置に移動した状態又はアウトリガ装置が張り出してフロートがジャッキシリンダに対して外側に突出しない状態でジャッキシリンダが伸長すると、アウターポストに対してインナーポストが伸長してフロートに取り付けられたスライド部材が下方に移動する一方、掛止ブラケットはスライド部材に対して上方へ離反する。このため、掛止プレートと掛止片は互いに反対方向に移動しようとし、これらが損傷する虞が生じ、フロートが格納位置に移動した状態で車体を支持することができない。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みて提案されたものであり、フロートが格納位置に移動した状態又はアウトリガ装置が張り出してフロートがジャッキシリンダに対して外側に突出しない状態でジャッキシリンダが伸長しても、スライド支持機構部が損傷する虞がなく、ジャッキシリンダのロッド端部が確実に支持されて、車体の支持が可能なアウトリガ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、本発明は、車体に車体幅方向に延設されたアウトリガ外箱内にアウトリガ内箱(例えば、実施形態における第1アウトリガ内箱22,第2アウトリガ内箱23)が張り出し可能に挿入され、アウトリガ内箱の先端部にロッド側端部が下方に向いたジャッキシリンダが設けられ、該ジャッキシリンダのロッド端部(例えば、実施形態における球面軸端部27b)側にフロートが設けられ、フロートの中央部にジャッキシリンダの伸長によって移動するロッド端部が当接可能な第1球面座が設けられ、フロートの上部に、ロッド端部の下方に第1球面座が位置する使用位置とロッド端部の下方にフロートの端部側が位置する格納位置との間でジャッキシリンダのロッド端部に対してフロートをスライド可能に支持するスライド支持機構部が設けられたアウトリガ装置であって、フロートの端部側の上面に、スライド支持機構部を介してフロートを格納位置に移動させた状態でジャッキシリンダの伸長によって移動するロッド端部を当接可能な第2球面座が設けられていることを構成要件とする(請求項1)
【0012】
スライド支持機構部は、ジャッキシリンダのロッド端部に対してフロートをスライド可能に支持する機能を有し、具体的には、スライド支持機構部は、ジャッキシリンダのロッド端部に設けられた環状段部の一方側及び他方側にスライド且つ掛止可能に支持される一対のガイド板を備える(請求項2)。
【0013】
格納位置とは、ロッド端部の下方にフロートの端部側が位置した状態で、フロートの端部が車体から突出しない状態にあるときのジャッキシリンダに対するフロートの位置、又はアウトリガ内箱がアウトリガ外箱に対して張り出してフロートの端部がジャッキシリンダよりも外側に突出しない状態にあるときのジャッキシリンダに対するフロートの位置をいう。このため、フロートが平面視において矩形状に形成されている場合、フロートが格納位置に移動した状態でフロートの周縁を形成する一辺が車体の側面と平行に配置され、またこの一辺が車体の側面と交差する方向に延びるように配置されてもよい。
【0014】
第2球面座は、ジャッキシリンダのロッド端部に形成された球面状の軸端部と略同一の曲率半径を有して形成される。第2球面座のフロートに対する位置は、フロートを格納位置に移動させた状態でジャッキシリンダのロッド端部の下方に位置するところであれば何れの位置でもよい。このため、フロートが矩形状に形成されている場合、第2球面座を対角線上に設け、また対角線からずれた位置に設けてもよい。また格納位置が複数設けられる場合には、格納位置に応じた数の第2球面座を設けてもよい。
【0015】
また、アウトリガ内箱の先端部に取り付けられたジャッキシリンダのシリンダチューブ又はアウトリガ内箱の先端部に補助支持部材を備えてもよい(請求項2)。この補助支持部材は、フロート側へ延びるアーム部と、該アーム部の先端部に設けられ一対のガイド板を掛止して該ガイド板に沿って移動自在なプレート部を有し、フロートが格納位置に移動した状態でプレート部が一対のガイド板のフロート中央部側を掛止する。
【0016】
プレート部は、一対のガイド板を掛止可能な大きさを有し、フロートが格納位置に移動した状態でプレート部は格納位置よりもフロート中央部側に配置される。これにより、フロートはジャッキシリンダのロッド端部と補助支持部材によって二点で支持され、フロートの格納姿勢時においてフロートが傾く事態を未然に防止している。
【0017】
補助支持部材が設けられるアウトリガ内箱とは、アウトリガ内箱が入れ子式に複数存在する場合には、最も内側に配置されたアウトリガ内箱をいう。
【0018】
補助支持部材のアーム部は、シリンダチューブ又はアウトリガ内箱の先端部に上下方向に揺動可能に設けられていることを構成要件とする(請求項3)。アーム部は、上下方向に揺動可能に設けられていればよく、アーム部の延伸方向の途中が屈伸可能に構成されたものや、アーム部の基端側が上下方向に回動自在に取り付けられたものでもよい。
【0019】
アーム部は、附勢手段(例えば、実施形態における引っ張りばね75)によって常に上方へ附勢されていることを構成要件とする(請求項4)。附勢手段は、引っ張りばねやねじりコイルばね等を用いることができる。
【0020】
またジャッキシリンダのシリンダチューブ又はアウトリガ内箱の先端部に取り付けられて下方へ延び、スライド支持機構部の延設方向に対して左右方向外側に配置されてフロートの上面側へ延びる一対の押さえ部材を備え、スライド支持機構部の左右方向両外側の前記フロートの上面に突設され、フロートが格納位置に位置した状態でジャッキシリンダの縮小時に一対の押さえ部材のいずれかに当接して該フロートの回動を規制するとともに、フロートに対する一対の押さえ部材の当接位置を案内して該フロートを略水平状態にする一対の案内回動規制部材を備えることを構成要件とする(請求項5)。
【0021】
アウトリガ内箱の先端部とは、アウトリガ内箱が入れ子式に複数存在する場合には、最も内側に配置されたアウトリガ内箱の先端部をいう。
【0022】
フロートは、これが格納位置に移動した状態でジャッキシリンダが縮小すると、ジャッキシリンダの縮小に伴ってフロートが上昇し、フロートの上面が押さえ部材の下端部に当接すると、フロートが押さえ部材に押し付けられた状態となってジャッキシリンダに固定される。このため、フロートが押さえ部材に押し付けられた状態でフロートが略水平になるように押さえ部材の長さを設定することで、フロートが格納姿勢になると、フロートを略水平状態で固定することができる。
【0023】
案内回動動規制部材は、スライド支持機構部の延設方向に対して左右方向両外側のフロートの上面に突設されるが、具体的には、フロートが格納位置に位置した状態でフロートがジャッキシリンダのロッド端部を回動中心として回動したときに移動する一対の押さえ部材の平面視における回動軌跡の範囲内のフロート上面に突設される。
【0024】
また、アウトリガ装置として、車体に車体幅方向に設けられたアウトリガ外箱内にアウトリガ内箱が張り出し可能に挿入され、アウトリガ内箱の先端部にロッド側端部が下方に向いたジャッキシリンダが設けられ、該ジャッキシリンダのロッド端部側にフロートが設けられ、フロートの中央部にジャッキシリンダの伸長によって移動するロッド端部が当接可能な第1球面座が設けられ、フロートの上部に、ロッド端部の下方に第1球面座が位置する使用位置とロッド端部の下方にフロートの端部側が位置する格納位置との間でジャッキシリンダのロッド端部に対してフロートをスライド可能に支持するスライド支持機構部が設けられ、フロートの端部側の上面に、フロートが格納位置に移動した状態でジャッキシリンダの伸長によって移動するロッド端部と当接可能な第2球面座が設けられ、アウトリガ内箱の先端部に取り付けられたジャッキシリンダのシリンダチューブ又はアウトリガ内箱の先端部に取り付けられ、フロート側へ延びるアーム部と、該アーム部の先端部に設けられ一対のガイド板を掛止して該ガイド板に沿って移動自在なプレート部を有し、フロートが格納位置に移動した状態でプレート部が一対のガイド板のフロート中央部側を掛止する補助支持部材が設けられたアウトリガ装置を用いる場合(請求項6)、フロートを格納位置に移動させた状態で車体を支持するには、以下のようにしてアウトリガ装置を作動させる。
【0025】
フロートを格納位置に移動させ、補助支持部材によってスライド支持機構部のフロート中央部側を掛止した状態で、フロートの中央部の上方にロッド端部が位置するようにスライド支持機構部を介してフロートをスライドさせて、補助支持部材によるスライド支持機構部への掛止状態を解除し、スライド支持機構部の延長線上に補助支持部材のプレート部が存在しないようにフロートをジャッキシリンダに対して回動させ、フロートの端部側に設けられた球面座がロッド端部の下方位置に移動するように、スライド支持機構部を介してフロートを格納位置にスライドさせ、ジャッキシリンダを伸長してロッド端部を第2球面座に当接させて車体を支持する(請求項6)。
【0026】
このように、ジャッキシリンダに対してフロートの位置変更を行うことで、フロートを格納位置に移動させた状態でジャッキシリンダが伸長しても、補助支持部材のプレート部やこれに掛止されたスライド支持機構部が損傷することはなく、格納位置において車体を支持することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係わるアウトリガ装置によれば、フロートの端部側の上面に、スライド支持機構部を介してフロートが格納位置に移動した状態でジャッキシリンダの伸長によって移動するジャッキシリンダのロッド端部が当接可能な第2球面座を設けることで、ジャッキシリンダの伸長時にジャッキシリンダのロッド端部を第2球面座で確実に支持することができる。また、格納位置に移動した状態のフロートは、ジャッキシリンダのロッド端部によってスライド支持機構部のみを介して支持されるので、この状態でジャッキシリンダが伸長してもスライド支持機構部が他の部材から外力を受けることはなく、スライド支持機構部が損傷することもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置のフロートを支持するフロート支持構造を示し、同図(a)はフロート支持構造の平面図であり、同図(b)はフロート支持構造の側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置を搭載した移動式クレーンの側面図を示す。
【図3】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置を搭載した移動式クレーンの平面図を示す。
【図4】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置を示し、同図(a)はアウトリガ装置の張り出し時におけるアウトリガ装置の平面図であり、同図(b)は図(a)の正面図であり、同図(c)はアウトリガ装置が格納状態にあるときの正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置のフロートを示し、同図(a)はフロートの平面図であり、同図(b)はフロートの側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置のスライド部材が取り付けられたフロートを示し、同図(a)はスライド部材付きフロートの平面図であり、同図(b)はスライド部材付きフロートの側面図であり、同図(c)はスライド部材付きフロートの正面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置のジャッキシリンダに取り付けられた押さえ部材を示し、同図(a)は押さえ部材の平面図であり、同図(b)は押さえ部材の正面図であり、同図(c)は押さえ部材の側面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係わるアウトリガ装置の動作を説明するための正面図を示す。
【図9】図8(a)のA矢視に相当するアウトリガ装置の側面図を示す。
【図10】本発明の第2実施形態に係わるアウトリガ装置のジャッキシリンダに取り付けられた掛止ブラケットを示し、同図(a)は掛止ブラケットの平面図であり、同図(b)は掛止ブラケットの側面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係わるアウトリガ装置のスライド部材が取り付けられたフロートを示し、同図(a)はスライド部材付きフロートの平面図であり、同図(b)はスライド部材付きフロートの側面図であり、同図(c)はスライド部材付きフロートの正面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係わるアウトリガ装置の動作を説明するための正面図を示す。
【図13】本発明の第3実施形態に係わるアウトリガ装置の動作を説明するための平面図を示す。
【図14】本発明に係るアウトリガ装置の他のフロートを示し、同図(a)はフロートの平面図であり、同図(b)はフロートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明に係わるアウトリガ装置の第1実施形態を図1から図14に基づいて説明する。本実施形態は、多段伸縮ブームを搭載した移動式クレーンを例にして説明する。
【0030】
先ず、アウトリガ装置を説明する前に、移動式クレーンについて概説する。移動式クレーン1は、図2(側面図)及び図3(平面図)に示すように、車体3の前側から後側の車体幅方向両側に複数の車輪4a、4b、4c、4d、4e、4fが設けられて走行可能である。車体3の前端部には運転キャビン7が設けられ、車体3の後側には旋回台6が旋回自在に設けられている。旋回台6には起伏シリンダ8を介して伸縮ブーム9が起伏可能に設けられている。
【0031】
車輪4aと車輪4bとの間及び後車輪4fよりも後側の車体後端部には、車体3を安定支持するアウトリガ装置20が設けられている。車体3の前端部及び後端部の各端部には、車幅方向に延びて車体前後方向に近接配置された2つのアウトリガ装置20が設けられている。アウトリガ装置20は、車体前端部に2つ設けられ、車体後端部に2つ設けられ、合計4つのアウトリガ装置20が車体3に設けられている。これら4つのアウトリガ装置20は同一構成であるので、車体前端部に設けられ車両進行方向に対して一方側に張り出し可能なアウトリガ装置20について説明し、他のアウトリガ装置20については同一態様部分については同一符号を附して説明を省略する。
【0032】
アウトリガ装置20は、図4(a)(平面図)、図4(b)(正面図)、図4(c)(正面図)を更に追加して説明すると、車体3に車体幅方向に延設されたアウトリガ外箱21内に外側から内側に第1アウトリガ内箱22及び第2アウトリガ内箱23を入れ子式に構成して張り出し可能であり、第2アウトリガ内箱23の先端部にはロッド側端部が下方に向いたジャッキシリンダ25が設けられ、ジャッキシリンダ25のロッド端部にはスライド支持機構部50を介してフロート30がスライド可能に取り付けられている。第1アウトリガ内箱22及び第2アウトリガ内箱23は、これらの内部に設けられた張出シリンダの伸縮によって張り出し・格納可能である。なお、図4(b)、図4(c)では図面の見易さの都合上、一部のフロート30の記載が省略されている。
【0033】
ジャッキシリンダ25は、第2アウトリガ内箱23の先端部に上下方向に延びて固着されたシリンダチューブ26と、シリンダチューブ26内に突出入可能に挿入されたシリンダロッド27とを有してなる。シリンダロッド27の下端部には、図7(b)(正面図)に示すように、シリンダロッド27の中心軸線Sと同軸上に延びてシリンダロッド27よりも小径のガイド軸部27aが延び、ガイド軸部27aの下部にはシリンダロッド27の中心軸線Sと同軸上に配置されて下面が球面状に形成された球面軸端部27bが設けられている。この球面軸端部27bは、フロート30(図1(b)参照)に設けられた第1球面座34及び第2球面座38(図1(b)参照)に接触して車体3の荷重を受ける働きをする。
【0034】
球面軸端部27bの上部は平面状の環状段部27cが形成されている。この環状段部27cにスライド支持機構部50(図1(a)参照)の一対のガイド板53がスライド可能に掛止される。球面軸端部27bの外径及びガイド軸部27aの外径については後述する。
【0035】
ジャッキシリンダ25を固定する第2アウトリガ内箱23の先端下部には、図7(a)(平面図)、図7(b)、図7(c)(側面図)に示すように、その幅方向両側から下方へ延びる一対の押さえ部材41を有した固定部材40が取り付けられている。固定部材40は、板金等の金属材料を折り曲げ成形して形成され、第2アウトリガ内箱23の先端下部に固定される天板部42と、天板部42の両側から屈曲して下方へ延びる押さえ部材41を有してなる。天板部42は矩形状に形成され、その内側にはシリンダチューブ26に嵌合可能な矩形状の切り欠き孔42aが設けられている。天板部42は切り欠き孔42aにシリンダチューブ26を嵌合した状態でボルト等の締結手段を介して第2アウトリガ内箱23の先端下部に固定されている。
【0036】
押さえ部材41は天板部42から所定長さを有して下方へ延び、ジャッキシリンダ25が縮小状態になると、各下端部がフロート30の上面に当接する。このため、一対の押さえ部材41の各下端部がフロート30の上面に当接すると、フロート30は略水平状態になる。押さえ部材41の下端部には横方向へ延びる突出する突出片41aが形成されている。突出片41aの下端部は略水平方向に延びる直線状に形成され、フロート30(図8(a)参照)の上面との接触面積を大きくしている。
【0037】
フロートは、図5(a)(平面図)、図5(b)(側面図)に示すように、平面視において矩形状、側面視において台形状に形成されたフロート本体部31と、フロート本体部31の上面側の中央部及び一方側端部に取り付けられた荷重受け部33,37とを有してなる。フロート本体部31の端部に取り付けられた荷重受け部37は、フロート本体部31の対角線上に配設されている。フロート本体部31の中央部に設けられた荷重受け部33の上面には第1球面座34が設けられ、フロート本体部31の端部に設けられた荷重受け部37の上面には第2球面座38が設けられている。これらの球面座の曲率半径は略同一であり、前述した球面軸端部27b(図7(b)参照)の球面状の下面と略同じ曲率半径を有している。このため、フロート30が傾いた状態で接地しても球面軸端部27bを球面座に常に密着した状態で当接させることができる。
【0038】
フロート本体部31に設けられた2つの第1球面座34、第2球面座38を中央にしてその両側であって2つの球面座間のフロート本体部31の上面には、上方へ突出する一対の案内回動規制部材44が設けられている。一対の案内回動規制部材44は、図6(b)及び図9を更に追加して説明すると、板状に形成されて略同一形状であり、2つの球面座の中心P、Qを通る中心線S1に対して左右対称に配置されている。案内回動規制部材44は、中心線S1に対して第2球面座38の上方にジャッキシリンダ25のロッド端部(球面軸端部27b)が位置すると(以下、「格納位置」と記す。)、一対の押さえ部材41の外側との間に所定の隙間45が形成可能な位置に配置されている。案内回動規制部材44の上部の球面座側には上方へ延びるに従って球面座から離反する方向に傾斜する傾斜面44aが設けられている。この傾斜面44aによって、ジャッキシリンダ25の伸長に伴って下方に移動する押さえ部材41が一対の案内回動規制部材44の内側に移動するのを容易にしている。
【0039】
フロート本体部31の上部には、図6(a)(平面図)、図6(b)(側面図)、図6(c)(正面図)に示すように、スライド支持機構部50が取り付けられている。スライド支持機構部50は、フロート30の第1球面座34から第2球面座38に亘って延び、側面視において逆U字状に形成されている。スライド支持機構部50は2つの球面座の中心P、Qを通る中心線S1に対して左右に配置された一対の側板51と、各側板51の上部から内側に屈曲して張り出して第1球面座34から第2球面座38に亘って略矩形状に形成された一対のガイド板53を有して構成されている。これらのガイド板53は、中心線S1に対して左右に対称に配置され、一対のガイド板53の先端部間には、矩形状の挿通孔54が形成されている。
【0040】
この挿通孔54の幅寸法Wは、ジャッキシリンダ25のロッド端部に設けられたガイド軸部27aの外径よりも大きく、且つ球面軸端部27bの外径よりも小さい大きさを有している。このため、一対のガイド板53とフロート30との間に球面軸端部27bを挿入すると、球面軸端部27bの上面に形成された環状段部27cの一方側と他方側にガイド板53を載置した状態になり、一対のガイド板53を介してフロート30をジャッキシリンダ25で支持することができるとともに、球面軸端部27bに対してフロート30をスライド支持機構部50の長手方向にスライドさせることができる。
【0041】
一対のガイド板53の第1球面座側の端部は先端部同士が繋がった板状のストッパ部55が形成されている。ストッパ部55は、その挿通孔側の端部が湾曲状に形成されてガイド軸部27aと大きな接触面積で当接可能にしている。一対のガイド板53の第2球面座側の端部は、側板51の第2球面座側の端部よりも手前側に位置している。このため、スライド支持機構部50の第2球面座側の端部には挿通孔54よりも大きな幅を有した挿通孔54'が形成されている。この挿通孔54'には第2球面座38の上方に移動した球面軸端部27bの環状段部27cに掛止可能な補助支持板57が着脱可能に取り付けられている。
【0042】
補助支持板57は、環状段部27c上に掛止される天板57aと、天板57aの両側から下方に屈曲して側板51に対向配置される左右一対の補助側板57bを有してなる。補助側板57bにはボルトが締結可能なナット部が設けられ、側板51の外側から挿通されたボルトをナット部に螺合することで、補助側板57bが一対の側板51間に着脱可能に固定される。天板57aには、半円状の孔部57cが形成され、ジャッキシリンダ25のロッド端部が第2球面座38の上方に位置(格納位置)した状態で、環状段部27cの一方側に補助支持板57の天板57aを掛止し、環状段部27cの他方側に一対のガイド板53を掛止して、フロート30をジャッキシリンダ25に支持することができる。
【0043】
なお、補助支持板57は、フロート30をジャッキシリンダ25のロッド端部に取り付ける際にスライド支持機構部50から取り外され、ジャッキシリンダ25の球面軸端部27bがスライド支持機構部50の開放された挿通孔54'から挿入されると、補助支持板57は一対の側板51間に取り付けられて、フロート30はジャッキシリンダ25のロッド端部に掛止状態にされる。
【0044】
一対の側板51の長手方向中間部には、第1球面座34の上方に移動したジャッキシリンダ25のロッド端部の第2球面座側への移動を規制するためのロックピン59を挿通する第1貫通孔60と、第2球面座38の上方に移動したジャッキシリンダ25のロッド端部の第1球面座側への移動を規制するためのロックピン59'を挿通する第2貫通孔61が設けられている。第1貫通孔60は、第1球面座34によって車体3を支持する場合にロックピン59が挿通されて使用され、第2貫通孔61は、第2球面座38によって車体3を支持する場合にロックピン59'が挿通されて使用される。
【0045】
このように構成されたアウトリガ装置20のフロート30が車体3に格納された状態でジャッキシリンダ25を伸長して車体3を支持する場合におけるアウトリガ装置20の作動について説明する。なお、フロート30が車体3に格納された状態では、アウトリガ装置20の第1アウトリガ内箱22及び第2アウトリガ内箱23は、アウトリガ外箱21に対して縮小状態にされ(4(c)参照)、ジャッキシリンダ25も縮小状態にされている。フロート30は、図8(a)に示すように、ジャッキシリンダ25の縮小時において、一対の案内回動規制部材44の内側に押さえ部材41の突出片41aが案内されるに伴って、ジャッキシリンダ25に対するフロート30の回動が規制されながらフロート30の上面が一対の押さえ部材41の下端部に突き当てられて略水平状態の姿勢で維持されている。また第2貫通孔61にはロックピン59'が挿入されている。
【0046】
このような状態でジャッキシリンダ25を伸長させると、図8(b)に示すように、ジャッキシリンダ25の伸長に伴ってフロート30が下方に移動する一方、一対の押さえ部材41がフロート30から離反して上方へ移動し、フロート30はジャッキシリンダ25の球面軸端部27bのみによって支持された状態になる。ここで、フロート30の重心位置Gに対してフロート30の支持位置Qは横方向にずれた位置にあるので、フロート30は支持位置Qを支点として斜め下方に傾斜する。
【0047】
そして、更にジャッキシリンダ25を伸長させると、図8(c)に示すように、フロート30が接地し、第2球面座38にジャッキシリンダ25の球面軸端部27bが当接し、ジャッキシリンダ25の伸長に伴って車体3が持ち上げ支持される。
【0048】
このように、フロート30が格納位置に移動した状態でジャッキシリンダ25を伸長させると、押さえ部材41はフロート30から離反する方向(上方)に移動するが、押さえ部材41はスライド支持機構部50の外側に配置されてスライド支持機構部50と非係合状態にあるので、押さえ部材41の上方への移動時に押さえ部材41がスライド支持機構部50に外力を及ぼすことはなく、スライド支持機構部50や押さえ部材41が破損する虞はない。
【0049】
また、第2球面座38はジャッキシリンダ25の球面軸端部27bの下面と略同一の曲率半径を有した球面状に形成されているので、フロート30が傾斜した状態で接地して第2球面座38の中心軸線Sがジャッキシリンダ25のそれとずれた場合でも、第2球面座38に球面軸端部27bが当接すると、両者は密着した状態になり、ジャッキシリンダ25に対するフロート30のずれを修正することができる。
【0050】
なお、格納位置Pkに移動しているフロート30を使用位置Ps(図8(d)参照)に移動させて第1球面座34で車体3を支持する場合には、図8(b)に示すように、ジャッキシリンダ25を全縮状態から少し伸長させ、第2貫通孔61に挿入されたロックピン59'を抜脱する。そして、図8(d)に示すように、ジャッキシリンダ25が第1球面座34側に移動するようにスライド支持機構部50に対してフロート30をスライドさせ、第1貫通孔60にロックピン59を挿入する。
【0051】
第1貫通孔60にロックピン59が挿入された状態になると、図8(e)に示すように、ジャッキシリンダ25を伸長させ、フロート30が接地し、第1球面座34にジャッキシリンダ25の球面軸端部27bが当接して、ジャッキシリンダ25の伸長に伴って車体3が持ち上げ支持される。なお、アウトリガ外箱21に対する第1アウトリガ内箱22及び第2アウトリガ内箱23の張り出し量は、作業現場に応じて調整される。
【0052】
[第2実施形態]
次に、アウトリガ装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、前述した第1実施形態との相違点のみについて説明し、第1実施形態と同一態様部分については同一符号を附して説明を省略する。アウトリガ装置20は、図12(a)に示すように、ジャッキシリンダ25のシリンダチューブ26の下端部に取り付けられた補助支持部材70と、フロート30の上部に設けられ補助支持部材70に掛止されるスライド支持機構部50'を有して構成される。
【0053】
補助支持部材70は、図10(a)(平面図)及び図10(b)(側面図)に示すように、シリンダチューブ26の下端部から斜め下方へ延びるアーム部71と、アーム部71の先端部に設けられたプレート部72を有してなる。アーム部71は、その長手方向中間部において分割され、基端側アーム部71aと先端側アーム部71bを有してなり、基端側アーム部71aと先端側アーム部71bの接続部分にはヒンジ部73が設けられ、先端側アーム部71bはヒンジ部73を介して基端側アーム部71aに対して上下方向に揺動自在である。
【0054】
ヒンジ部73は、両アーム部の一方側端部に設けられた突出部73aと、他方側端部に設けられ突出部73aが挿入される係合凹部73bとを有し、係合凹部73bに突出部73aが挿入された状態でこれらにピン74を挿入して構成されている。また両アーム部の上方には引っ張りばね75が接続されており、両アーム部が直線状に延びた状態で引っ張りばね75は伸長し、先端側アーム部71bが所定角度を有して揺動すると引っ張りばね75は自然長に戻るように構成されている。このため、補助支持部材70は、アーム部71が直線状態に延びた状態では、先端側アーム部71bは常に上方へ揺動可能に附勢されている。
【0055】
プレート部72は、スライド支持機構部50'の一対のガイド板53(図11(a)参照)を掛止可能な大きさを有し、フロート30が格納位置Pkに移動した状態でプレート部72は格納位置Pkよりもフロート中央部側に配置される(図12(a)参照)。
【0056】
スライド支持機構部50'は、図11(a)、図11(b)、図11(c)に示すように、前述したスライド支持機構部50と略同様に構成されているが、前述したスライド支持機構部50と比較して、ストッパ部55が第2球面座38側に位置するように配設されている点と、一対のガイド板53がスライド支持機構部50'の一方側の端部まで設けられている点で相違する。
【0057】
次に、このように構成されたアウトリガ装置20のフロート30が車体3に格納された状態でジャッキシリンダ25を伸長させて車体3を支持する場合におけるアウトリガ装置20の作動について説明する。なお、フロート30が車体3に格納された状態では、図12(a)に示すように、第2球面座38の上方にジャッキシリンダ25の球面軸端部27bが位置し(格納位置)、球面軸端部27bの環状段部27cにストッパ部55(図11(a)参照)と一対のガイド板53の一方側が掛止され、また補助支持部材70のプレート部72によっての一対のガイド板53の他方側が掛止されている。このため、フロート30は球面軸端部27b及びプレート部72によって2点で支持されて略水平状態に維持されている。また第2貫通孔61(図11(a)参照)にはロックピン59'が挿通されている。
【0058】
このようにフロート30が格納位置Pkにある状態において、先ず、第2貫通孔61(図11(a)参照)からロックピン59'を抜脱する。そして、図12(b)に示すように、球面軸端部27bが第1球面座34の上方位置(使用位置Ps)に移動するように、スライド支持機構部50'を介してフロート30を球面軸端部27bに対してスライドさせる。このスライド時においてプレート部72が一対のガイド板53の端部から外れると、引っ張りばね75(図10(b)参照)が縮小し、先端側アーム部71bが基端側アーム部71aに対して上方へ揺動し、プレート部72がスライド支持機構部50'の上方に移動する。
【0059】
次に、図12(c)に示すように、球面軸端部27bが第2球面座38の上方位置(格納位置Pk)に移動するように、スライド支持機構部50'を介してフロート30を球面軸端部27bに対してスライドさせる。このスライド時においてプレート部72はスライド支持機構部50'の上方に移動しているので、プレート部72がスライド支持機構部50'に当たってフロート30のスライドが規制されることはない。そして、図8(b)及び図8(c)で示す場合と同様に、第2貫通孔61にロックピン59'を挿入し、ジャッキシリンダ25を伸長させてフロート30を接地させ、球面軸端部27bが第2球面座38に当接し、フロート30を介して車体3をジャッキシリンダ25で支持することができる。
【0060】
このように、フロート30が格納位置Pkにあるときにジャッキシリンダ25によって車体3を支持する場合、プレート部72はスライド支持機構部50'から外された状態となってスライド支持機構部50'の上方に位置しているので、ジャッキシリンダ25が伸長しても、プレート部72がスライド支持機構部50'と接触することはなく、スライド支持機構部50'やプレート部72が破損することはない。
【0061】
[第3実施形態]
次に、アウトリガ装置の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、前述した第2実施形態との相違点のみについて説明し、第2実施形態と同一態様部分については同一符号を附して説明を省略する。図13(a)に示すように、アーム部71'は分割されたものではく、連続した1つの部材で形成されて揺動できない点で、揺動可能な第2実施形態のアーム部71と相違する。
【0062】
このようにアーム部71'を構成した場合、フロート30を格納位置Pkに移動させた状態でジャッキシリンダ25(図12(a)参照)により車体3を支持する場合には、フロート30が格納位置Pkに移動した状態(図13(a)参照)から、図13(b)に示すように、第1球面座34の上方にジャッキシリンダ25の球面軸端部27b(図12(a)参照)が位置(使用位置Ps)するようにスライド支持機構部50'を介してフロート30をスライドさせる。このスライド時に、補助支持部材70のプレート部72が一対のガイド板53の端部から外側に移動し、ガイド板53のプレート部72に対する掛止状態が解除される。
【0063】
次に、図13(c)に示すように、スライド支持機構部50'の延長線上に補助支持部材70のプレート部72が存在しないように、フロート30をジャッキシリンダ(図12(a)参照)に対して時計方向に回動させる。なお、図面上では約90度の角度を有してフロート30が回動した場合が記載されている。フロートの回動角度θは約90度に限るものではなく、スライド支持機構部50'の延長線上に補助支持部材70のプレート部72が位置することがなく、且つフロート30が車体3の幅方向端部から突出しない状態であれば、フロート30の回動角度θは90度よりも小さな鋭角でもよい。
【0064】
そして、図13(d)に示すように、フロート30の端部側に設けられた第2球面座38がジャッキシリンダ(図12(a)参照)のロッド端部の下方に位置にように、スライド支持機構部50'を介してフロート30をスライドさせ、フロート30は再び格納位置Pkに戻る。但し、図13(a)に示したフロート30の格納位置Pkと比較して、プレート部72はスライド支持機構部50'から外れてスライド支持機構部50'の横方向外側に移動している。このため、ジャッキシリンダ25が伸長してもプレート部72とスライド支持機構部50'が当接した状態で互いに反対方向に移動してこれらが損傷する虞はなく、プレート部72が格納位置Pkに移動した状態でフロート30を接地させて車体3を支持することができる。
【0065】
なお、前述した第1〜第3の実施例では、第2球面座38がフロート30の対角線上のフロート端部に配設されたものを示したが、図14(a)及び図14(b)に示すように、第2球面座38が第1球面座34に隣接し、これらの球面座の配置方向が矩形状に形成されたフロート80の一辺と略平行になるように第2球面座38を配置してもよい。フロート80は、矩形状に形成された底板81の上面の中央部に第1球面座34及び第2球面座38を設けたブロック82を固定し、このブロック82の周囲に放射状に延びるリブ83、83'が複数設けられてフロート80の剛性が強化されている。このフロート80は車体3の幅方向に平行にスライドさせてフロート80を格納位置に移動させるものである。第1球面座34及び第2球面座38の配設方向に対して直交する方向に延設された一対のリブ83の各上部には上方へ突出する突出部83aが形成され、この突出部83aは、前述した案内回動規制部材44(図6(b)参照)と同じ働きをする。
【0066】
なお、前述した実施例では、アウトリガ装置20のアウトリガ外箱21に対してアウトリガ内箱22,23が縮小された状態でフロート30が車体3の内側に格納される場合を例にして説明したが、アウトリガ外箱21に対してアウトリガ内箱22,23が張り出された状態で、フロート30の端部がジャッキシリンダ25よりも外側に突出しないように、フロート30をジャッキシリンダ25よりも内側に格納する場合も、前述した実施例と同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
3 車体
20 アウトリガ装置
21 アウトリガ外箱
22 第1アウトリガ内箱(アウトリガ内箱)
23 第2アウトリガ内箱(アウトリガ内箱)
25 ジャッキシリンダ
26 シリンダチューブ
27b 球面軸端部(ロッド端部)
27c 環状段部
30、80 フロート
34 第1球面座
38 第2球面座
41 押さえ部材
44 回動規制部材
50、50' スライド支持機構部
53 ガイド板
70 補助支持部材
71 アーム部
72 プレート部
75 引っ張りばね(附勢手段)
Pk 格納位置
Ps 使用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に車体幅方向に延設されたアウトリガ外箱内にアウトリガ内箱が張り出し可能に挿入され、前記アウトリガ内箱の先端部にロッド側端部が下方に向いたジャッキシリンダが設けられ、該ジャッキシリンダのロッド端部側にフロートが設けられ、前記フロートの中央部に前記ジャッキシリンダの伸長によって移動するロッド端部が当接可能な第1球面座が設けられ、前記フロートの上部に、前記ロッド端部の下方に前記第1球面座が位置する使用位置と前記ロッド端部の下方に前記フロートの端部側が位置する格納位置との間で前記ジャッキシリンダのロッド端部に対して前記フロートをスライド可能に支持するスライド支持機構部が設けられたアウトリガ装置であって、
前記フロートの端部側の上面に、前記スライド支持機構部を介して前記フロートを前記格納位置に移動させた状態で前記ジャッキシリンダの伸長によって移動する前記ロッド端部を当接可能な第2球面座が設けられていることを特徴とするアウトリガ装置。
【請求項2】
前記スライド支持機構部は、前記フロートの中央部から端部側に亘って延び、前記ジャッキシリンダのロッド端部に設けられた環状段部の一方側及び他方側にスライド且つ掛止可能に支持される一対のガイド板を備え、
前記アウトリガ内箱の先端部に取り付けられた前記ジャッキシリンダのシリンダチューブ又は前記アウトリガ内箱の先端部に取り付けられ、フロート側へ延びるアーム部と、該アーム部の先端部に設けられ前記一対のガイド板を掛止して該ガイド板に沿って移動自在なプレート部を有し、前記フロートが前記格納位置に移動した状態で前記プレート部が前記一対のガイド板のフロート中央部側を掛止する補助支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のアウトリガ装置。
【請求項3】
前記補助支持部材の前記アーム部は、前記シリンダチューブ又は前記アウトリガ内箱の先端部に上下方向に揺動可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のアウトリガ装置。
【請求項4】
前記アーム部は、附勢手段によって常に上方へ附勢されていることを特徴とする請求項3に記載のアウトリガ装置。
【請求項5】
前記ジャッキシリンダの前記シリンダチューブ又は前記アウトリガ内箱の先端部に取り付けられて下方へ延び、前記スライド支持機構部の延設方向に対して左右方向両外側に配置されて前記フロートの上面側へ延びる一対の押さえ部材を備え、
前記スライド支持機構部の左右方向両外側の前記フロートの上面に突設され、前記フロートが格納位置に位置した状態で前記ジャッキシリンダの縮小時に前記一対の押さえ部材のいずれかに当接して前記フロートの回動を規制するとともに、該フロートに対する前記一対の押さえ部材の当接位置を案内して前記フロートを略水平状態にする一対の案内回動規制部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のアウトリガ装置。
【請求項6】
車体に車体幅方向に設けられたアウトリガ外箱内にアウトリガ内箱が張り出し可能に挿入され、前記アウトリガ内箱の先端部にロッド側端部が下方に向いたジャッキシリンダが設けられ、該ジャッキシリンダのロッド端部側にフロートが設けられ、前記フロートの中央部に前記ジャッキシリンダの伸長によって移動するロッド端部が当接可能な第1球面座が設けられ、前記フロートの上部に、前記ロッド端部の下方に前記第1球面座が位置する使用位置と前記ロッド端部の下方に前記フロートの端部側が位置する格納位置との間で前記ジャッキシリンダのロッド端部に対して前記フロートをスライド可能に支持するスライド支持機構部が設けられ、
前記フロートの端部側の上面に、前記フロートが前記格納位置に移動した状態で前記ジャッキシリンダの伸長によって移動する前記ロッド端部と当接可能な第2球面座が設けられ、
前記アウトリガ内箱の先端部に取り付けられた前記ジャッキシリンダのシリンダチューブ又は前記アウトリガ内箱の先端部に取り付けられ、フロート側へ延びるアーム部と、該アーム部の先端部に設けられ前記一対のガイド板を掛止して該ガイド板に沿って移動自在なプレート部を有し、前記フロートが前記格納位置に移動した状態で前記プレート部が前記一対のガイド板のフロート中央部側を掛止する補助支持部材が設けられたアウトリガ装置を用い、
前記フロートを格納位置に移動させ、前記補助支持部材によってスライド支持機構部のフロート中央部側を掛止した状態で、前記フロートの中央部の上方にロッド端部が位置するように前記スライド支持機構部を介して前記フロートをスライドさせて、前記補助支持部材による前記スライド支持機構部への掛止状態を解除し、前記スライド支持機構部の延長線上に補助支持部材のプレート部が存在しないように前記フロートを前記ジャッキシリンダに対して回動させ、前記フロートの端部側に設けられた球面座が前記ロッド端部の下方位置に移動するように、前記スライド支持機構部を介して前記フロートを格納位置にスライドさせ、前記ジャッキシリンダを伸長して前記ロッド端部を前記第2球面座に当接させて前記車体を支持することを特徴とするアウトリガ装置による車体支持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−222138(P2010−222138A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74632(P2009−74632)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】