説明

アウトリガ装置

【課題】格納および張り出しを狭い空間で行うことができるアウトリガ装置を提供する。
【解決手段】横アウトリガ10と、シリンダ21が横アウトリガ10に対して上下動可能なジャッキシリンダ20と、シリンダ21を上方に動かした状態と、下方に動かした状態とで固定するシリンダ固定手段31、32と、ロッド22をその先端が横アウトリガ10と地面との中間に位置する状態で固定するロッド固定手段33とを備える。格納および張り出しを狭い空間で行うことができる。アウトリガ装置の張り出しおよび格納は、ジャッキシリンダ20の伸縮と、シリンダ固定手段31、32およびロッド固定手段33の動作により行われるので、ジャッキシリンダ20の重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガ装置に関する。さらに詳しくは、格納時にジャッキシリンダを上方に配置できるアウトリガ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図17に示すように、積載形トラッククレーン101は、汎用トラック110の運転室111と荷台112との間の車両フレーム113に小型クレーン120が搭載されたものである。小型クレーン120は、車両フレーム113上に固定されたベース121にアウトリガ装置122が備えられている。
【0003】
一般に、アウトリガ装置122は、ベース121に固定された横アウトリガ123と、横アウトリガ123に上端部が固定されたジャッキシリンダ124とで構成されている。そして、作業開始時には横アウトリガ123を張り出し、ジャッキシリンダ124を伸長して下端のフロートを接地させる。これにより、積載形トラッククレーン101の安定が確保される。また、作業終了時には、ジャッキシリンダ124を収縮し、横アウトリガ123を引き込んで、アウトリガ装置122を格納する。
【0004】
従来のアウトリガ装置122は、格納時のジャッキシリンダ124の最低地上高さhが、積載形トラッククレーン101の走行時に障害とならない範囲で可能な限り低くなるように取り付けられている。しかし、車両フレーム113には、バッテリー、エアタンク等の補機類114や燃料タンク115等の装備が取り付けられているため、格納時にジャッキシリンダ124がその装備114、115と干渉する恐れがある。そのため、ジャッキシリンダ124と干渉しない位置に装備114、115を移設した後に、小型クレーン120を汎用トラック110に搭載する必要があった。
【0005】
これに対して、特許文献1に記載のアウトリガ装置は、格納時にジャッキシリンダを車両フレームより上方に配置できる構成とし、装備を移設せずとも小型クレーンを汎用トラックに搭載できるようにしたものである。
【0006】
図18に示すように、特許文献1に記載のアウトリガ装置210は、横アウトリガ211と、横アウトリガ211に連結された縦アウトリガ212とで構成されている。横アウトリガ211は、アウトリガ外箱213と、アウトリガ外箱213の内部に挿入されたアウトリガ内箱214とから構成されており、縦アウトリガ212は、アウトリガステー215と、アウトリガステー215の内部に設けられたジャッキシリンダ216とから構成されている。アウトリガステー215の基端部にはボス218が横アウトリガ211側に向けて突設されており、このボス218がアウトリガ内箱214の側端のプレート219に設けた軸受220に回転可能に支承されて回転機構を構成している。
【0007】
図19に示すように、プレート219には、軸受220を中心として左右対称に2つのピン孔221、221が設けられており、アウトリガステー215のピンブラケット223にはピン孔221に嵌脱するピン222が設けられている。
【0008】
作業開始時には、まず横アウトリガ211を車幅方向へ張り出す。このとき縦アウトリガ212は上方に保持されている(図19における実線)。つぎに、ピン222をピン孔221から抜き、縦アウトリガ212を下方へ180°回転させ(図19における二点鎖線)、ピン222を反対側のピン孔221に挿入する。そして、ジャッキシリンダ216を伸長してフロート217を接地させて、積載形トラッククレーンの安定を確保する。
作業終了時には、まずジャッキシリンダ216を収縮させ、ピン222をピン孔221から抜き、縦アウトリガ212を上方へ180°回転させ、ピン222を反対側のピン孔221に挿入して縦アウトリガ212を上方に保持する。そして、横アウトリガ211を引き込んでアウトリガ装置210を格納する。
【0009】
図18に示すように、アウトリガ装置210は、格納時には最低地上高さhが車両フレーム201の上面の高さHより高くなる。そのため、燃料タンク202等の装備と縦アウトリガ212との干渉が生じることはなく、小型クレーンを汎用トラックに搭載するときに装備202の移設は不要であり、容易に搭載することができる。
【0010】
しかるに、上記従来のアウトリガ装置210は、縦アウトリガ212を下方に降ろしたり、上方に格納したりする際に、回転させる必要があるため、その回転を許容する広い空間を確保する必要があり、積載形トラッククレーンを停車させる際などに場所を選ぶ必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−274783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、格納および張り出しを狭い空間で行うことができるアウトリガ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明のアウトリガ装置は、横アウトリガと、シリンダが前記横アウトリガに対して上下動可能なジャッキシリンダと、前記ジャッキシリンダのシリンダを、上方に動かした状態と、下方に動かした状態とで固定するシリンダ固定手段と、前記ジャッキシリンダのロッドを、その先端が前記横アウトリガと地面との中間に位置する状態で固定するロッド固定手段と、を備えることを特徴とする。
第2発明のアウトリガ装置は、第1発明において、前記シリンダ固定手段は、前記シリンダを上方に動かした状態で、該シリンダのロッド側端部を支持する支持具と、前記シリンダを下方に動かした状態で、該シリンダのキャップ側端部を前記横アウトリガに固定する固定ピンと、からなり、前記ロッド固定手段は、前記横アウトリガに回動可能に取り付けられ、下垂した状態において、前記ロッドの先端を支持するアームであることを特徴とする。
第3発明のアウトリガ装置は、第1発明において、前記シリンダ固定手段は、前記シリンダを上方に動かした状態で、該シリンダのロッド側端部を支持する支持具と、前記シリンダを下方に動かした状態で、該シリンダのキャップ側端部を前記横アウトリガに固定する固定ピンと、からなり、前記ロッド固定手段は、前記ロッドの先端と前記横アウトリガとを所定距離を離して連結する連結部材であることを特徴とする。
第4発明のアウトリガ装置は、第1発明において、前記シリンダ固定手段は、前記シリンダを上方に動かした状態で、該シリンダのロッド側端部を前記横アウトリガに固定する第1固定ピンと、前記シリンダを下方に動かした状態で、該シリンダのキャップ側端部を前記横アウトリガに固定する第2固定ピンと、からなり、前記ロッド固定手段は、前記ロッドの内部に挿入され、該ロッドの先端から下方に引き出した状態で、該ロッドに固定可能な補助ロッドであることを特徴とする。
第5発明のアウトリガ装置は、横アウトリガと、シリンダが前記横アウトリガに固定されたジャッキシリンダと、前記ロッドの内部に挿入された第2ロッドと、前記第2ロッドを前記ロッドの内部に挿入した状態と、下方に引き出した状態とで、該ロッドに固定する固定ピンと、前記第2ロッドに対して上下動可能であり、該第2ロッドの先端から下方に突出した状態で固定可能な補助ロッドと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、シリンダは横アウトリガに対して上下動可能であるので、格納および張り出しを狭い空間で行うことができる。また、アウトリガ装置の張り出しおよび格納は、ジャッキシリンダの伸縮と、シリンダ固定手段およびロッド固定手段の動作により行われるので、ジャッキシリンダの重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
第2発明によれば、ジャッキシリンダの伸縮と、支持具、固定ピンおよびアームの動作により、アウトリガ装置の張り出しおよび格納を行うことができるので、ジャッキシリンダの重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
第3発明によれば、ジャッキシリンダの伸縮と、支持具、固定ピンおよび連結部材の動作により、アウトリガ装置の張り出しおよび格納を行うことができるので、ジャッキシリンダの重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
第4発明によれば、ジャッキシリンダの伸縮と、第1固定ピン、第2固定ピンおよび補助ロッドの動作により、アウトリガ装置の張り出しおよび格納を行うことができるので、ジャッキシリンダの重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
第5発明によれば、第2ロッドの収縮は、ジャッキシリンダの伸縮と、固定ピンおよび補助ロッドの動作により行われるので、第2ロッドの重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアウトリガ装置のジャッキシリンダ部分の拡大正面図である。
【図2】同アウトリガ装置の格納状態における正面図である。
【図3】同アウトリガ装置の張り出し状態における正面図である
【図4】同アウトリガ装置の張り出し手順の説明図である。
【図5】同アウトリガ装置の格納手順の説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るアウトリガ装置のジャッキシリンダ部分の拡大正面図である。
【図7】同アウトリガ装置のアームでフロートを係止させた状態のジャッキシリンダ部分の拡大正面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るアウトリガ装置のジャッキシリンダ部分の拡大正面図である。
【図9】同アウトリガ装置の張り出し手順の説明図である。
【図10】同アウトリガ装置の格納手順の説明図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るアウトリガ装置のジャッキシリンダ部分の拡大正面図である。
【図12】同アウトリガ装置の張り出し手順の説明図である。
【図13】同アウトリガ装置の格納手順の説明図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係るアウトリガ装置のジャッキシリンダ部分の拡大正面図である。
【図15】同アウトリガ装置の張り出し手順の説明図である。
【図16】同アウトリガ装置の格納手順の説明図である。
【図17】一般的な積載形トラッククレーンの側面図である。
【図18】従来のアウトリガ装置の正面図である。
【図19】同アウトリガ装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るアウトリガ装置1は、積載形トラッククレーンに積載される小型クレーンに備えられるものである。小型クレーンは、ベースbを有しており、そのベースbにアウトリガ装置1が固定されている。
【0017】
アウトリガ装置1は、ベースbの左右に水平に設けられた一対の横アウトリガ10、10と、各横アウトリガ10に連結されたジャッキシリンダ20とを備えている。横アウトリガ10は、アウトリガ外箱11とアウトリガ内箱12とからなり、アウトリガ外箱11の内部にアウトリガ内箱12が挿入され、テレスコピック状に構成されている。また、ジャッキシリンダ20は、シリンダ21とロッド22とからなり、ロッド22の先端にフロート23が取り付けられている。
なお、汎用トラックの車両フレームfにアウトリガ外箱11の底面が固定されることにより、小型クレーンが汎用トラックに搭載され、積載形トラッククレーンが構成される。
【0018】
図1に示すように、アウトリガ内箱12の先端には、筒状部13が形成されており、その筒状部13の内部にジャッキシリンダ20のシリンダ21が褶動可能に保持されている。筒状部13はその軸が鉛直方向を向くように形成されており、シリンダ21は横アウトリガ10に対して上下動可能となっている。
【0019】
アウトリガ内箱12の先端には、その底面に支持具31が取り付けられている。支持具31は、正面視L字型の部材であり、一端がアウトリガ内箱12に回動可能に取り付けられており、他端がジャッキシリンダ20側(図1における右側)を向いている。筒状部13に対してシリンダ21を上方に褶動させた状態において、支持具31をジャッキシリンダ20側に回動させると、支持具31がシリンダ21のロッド側端部に係止し、ジャッキシリンダ20を支持できるようになっている。また、支持具31をアウトリガ内箱12側(図1における左側)に回動させると、ジャッキシリンダ20の支持を解除できるようになっている。
【0020】
筒状部13には、固定ピン32が取り付けられており、その先端は筒状部13の内周面から突出、引き込み可能となっている。一方、シリンダ21のキャップ側端部には、固定ピン32の先端が嵌合可能な嵌合穴32hが形成されている。そのため、筒状部13に対してシリンダ21を下方に褶動させた状態において、固定ピン32を嵌合穴32hに嵌合させれば、シリンダ21をアウトリガ内箱12に対して固定できるようになっている。
【0021】
また、筒状部13には、アーム33が取り付けられている。アーム33は長尺部33aと短尺部33bとからなる側面視L字型の部材であり、長尺部33aの一端が筒状部13の正面視左右中央に回動可能に取り付けられている。アーム33が下垂した状態において、短尺部33bはジャッキシリンダ20側に突出している。そのため、シリンダ21を下方に褶動させるか、ロッド22を伸長させると、短尺部33bがフロート23に係止し、ジャッキシリンダ20を支持できるようになっている。
【0022】
図4に示すように、このアウトリガ装置1は以下の手順で張り出しが行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を格納した状態では、シリンダ21が上方に位置し、支持具31によりジャッキシリンダ20が支持され、ロッド22が収縮し、アーム33が上方に跳ね上がった状態となっている。
(ii)まず、アーム33を回転させ、下垂させる。
(iii)つぎに、ロッド22を伸長させ、フロート23をアーム33の短尺部33bに係止させる。ここで、フロート23はまだ接地しておらず、アウトリガ内箱12と地面との中間に位置している。
(iv)つぎに、支持具31を回動させてジャッキシリンダ20の支持を解除する。ここで、ジャッキシリンダ20はアーム33により支持されているので、支持具31の支持を解除してもジャッキシリンダ20は上下動しない。
【0023】
(v)つぎに、ロッド22を収縮させることにより、筒状部13に対してシリンダ21を下方に褶動させる。ここで、シリンダ21は自重により下方に褶動する。また、アーム33の長尺部33aの長さは、ロッド22が最収縮した状態で、シリンダ21が最下降したときに、フロート23が短尺部33bに係止する寸法となっている。
(vi)つぎに、固定ピン32を嵌合穴32hに嵌合させて、シリンダ21をアウトリガ内箱12に対して固定する。また、アーム33を回動させてジャッキシリンダ20の支持を解除する。
(vii)つぎに、ロッド22を伸長して、フロート23を接地させる。
(viii)最後に、再びアーム33を下方に回転させ、アーム33が作業の邪魔にならないようにする。
【0024】
図3に示すように、フロート23を接地させることで、積載形トラッククレーンを安定して支えることができる。なお、横アウトリガ10は、アウトリガ内箱12をアウトリガ外箱11から引き出すことにより、車幅方向(図3における左右方向)へ張り出される。横アウトリガ10の張り出しは手作業で行うか、横アウトリガ10に備えられた油圧シリンダにより行われる。
【0025】
図5に示すように、このアウトリガ装置1は以下の手順で格納が行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を張り出した状態では、シリンダ21が下方に位置し、固定ピン32によりシリンダ21が固定され、ロッド22が伸長し、アーム33が下方に降ろされた状態となっている。
(ii)まず、アーム33を上方に回転させる。
(iii)つぎに、ロッド22を収縮させ、フロート23を地面から離間させる。
(iv)つぎに、アーム33を下垂させて、フロート23をアーム33の短尺部33bに係止させる。また、固定ピン32の固定を解除する。ここで、ジャッキシリンダ20はアーム33により支持されているので、固定ピン32の固定を解除してもジャッキシリンダ20は上下動しない。
【0026】
(v)つぎに、ロッド22を伸長させることにより、筒状部13に対してシリンダ21を上方に褶動させる。このとき、シリンダ21のロッド側端部が支持具31に係止できる位置まで、シリンダ21を上昇させる。
(vi)つぎに、支持具31を回動させてジャッキシリンダ20を支持する。
(vii)最後に、アーム33を上方に回転させ、格納する。ここで、アーム33の長尺部33aの長さを、アーム33を垂直に跳ね上げても、短尺部33bがシリンダ21に干渉しない寸法とすれば、アーム33をシリンダ21に沿って格納できるため好ましい。
【0027】
以上のように、アウトリガ装置1は、ジャッキシリンダ20の伸縮と、支持具31、固定ピン32およびアーム33の動作により、張り出しおよび格納を行うことができる。そのため、特に大型のアウトリガ装置において、ジャッキシリンダ20の重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
【0028】
また、シリンダ21は横アウトリガ10に対して上下動可能であるので、ジャッキシリンダ20は、その鉛直方向の空間のみで張り出しおよび格納を行うことができる。そのため、ジャッキシリンダ20の張り出しおよび格納のために、余分な空間を確保する必要がない。
【0029】
さらに、アウトリガ装置1は、格納した状態ではジャッキシリンダ20の大部分が横アウトリガ10より上方に配置され、横アウトリガ10の底面より下方にはほとんど突き出さない。そのため、汎用トラックの他の装備とジャッキシリンダ20とが干渉することはなく、小型クレーンを汎用トラックに搭載するときに装備の移設は不要であり、容易に搭載することができる。
【0030】
(第2実施形態)
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係るアウトリガ装置2は、第1実施形態に係るアウトリガ装置1において、アーム33の長尺部33aの一端が筒状部13の車幅方向外側寄り(図6における右側寄り)に回動可能に取り付けられているものである。その余の構成は第1実施形態に係るアウトリガ装置1と同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係るアウトリガ装置2においても、第1実施形態に係るアウトリガ装置1と同様の手順で、張り出しおよび格納が行われる(図4および図5参照)。
ただし、アウトリガ装置2においては、長尺部33aの一端が筒状部13の車幅方向外側寄りに回動可能に取り付けられていることから、図7に示すように、短尺部33bは、フロート23の端に係止される。そのため、アーム33を回動させてジャッキシリンダ20を支持(図5(iv)参照)したり、解除(図4(vi)参照)したりする際に、フロート23と短尺部33bとの引っ掛かりが少なく、スムーズにアーム33を回動させることができる。
【0032】
(第3実施形態)
図8に示すように、本発明の第3実施形態に係るアウトリガ装置3は、第1実施形態に係るアウトリガ装置1において、アーム33に代えて連結部材34が備えられたものである。その余の構成は第1実施形態に係るアウトリガ装置1と同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
連結部材34は、フロート23の上面に立設された棒状部材であり、その上端にリング34rが形成されている。一方、アウトリガ内箱12の側面には、嵌合穴34hが形成されており、リング34rと嵌合穴34hとは、図示しない固定ピンにより互いに固定できるようになっている。そのため、フロート23が下降し、フロート23と嵌合穴34hとの間の距離が連結部材34の長さと等しくなったときに、固定ピンにより連結部材34とアウトリガ内箱12とを固定して、フロート23の上下位置をアウトリガ内箱12に対して固定することができる。
【0034】
図9に示すように、このアウトリガ装置3は以下の手順で張り出しが行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を格納した状態では、シリンダ21が上方に位置し、支持具31によりジャッキシリンダ20が支持され、ロッド22が収縮した状態となっている。
(ii)まず、ロッド22を伸長させる。ここで、フロート23はまだ接地しておらず、アウトリガ内箱12と地面との中間に位置している。
(iii)つぎに、連結部材34のリング34rとアウトリガ内箱12の嵌合穴34hとを固定ピンで固定する。
(iv)つぎに、支持具31を回動させてジャッキシリンダ20の支持を解除する。ここで、ジャッキシリンダ20は連結部材34により支持されているので、支持具31の支持を解除してもジャッキシリンダ20は上下動しない。
【0035】
(v)つぎに、ロッド22を収縮させることにより、筒状部13に対してシリンダ21を下方に褶動させる。ここで、シリンダ21は自重により下方に褶動する。また、連結部材34の長さは、ロッド22が最収縮した状態で、シリンダ21が最下降したときに、リング34rが嵌合穴34hと同位置に来る寸法となっている。
(vi)つぎに、固定ピン32を嵌合穴32hに嵌合させて、シリンダ21をアウトリガ内箱12に対して固定する。
(vii)つぎに、リング34rと嵌合穴34hの固定を解除し、連結部材34によるジャッキシリンダ20の支持を解除する。そして、ロッド22を伸長して、フロート23を接地させる。
【0036】
図10に示すように、このアウトリガ装置3は以下の手順で格納が行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を張り出した状態では、シリンダ21が下方に位置し、固定ピン32によりシリンダ21が固定され、ロッド22が伸長した状態となっている。
(ii)まず、ロッド22を収縮させ、フロート23を地面から離間させる。そして、連結部材34のリング34rとアウトリガ内箱12の嵌合穴34hとを固定ピンで固定する。
(iii)つぎに、固定ピン32の固定を解除する。ここで、ジャッキシリンダ20は連結部材34により支持されているので、固定ピン32の固定を解除してもジャッキシリンダ20は上下動しない。
(iv)つぎに、ロッド22を伸長させることにより、筒状部13に対してシリンダ21を上方に褶動させる。このとき、シリンダ21のロッド側端部が支持具31に係止できる位置まで、シリンダ21を上昇させる。
【0037】
(v)つぎに、支持具31を回動させてジャッキシリンダ20を支持する。
(vi)。つぎに、リング34rと嵌合穴34hの固定を解除し、連結部材34によるジャッキシリンダ20の支持を解除する。
(Vii)最後に、ロッド22を収縮させ、格納する。
【0038】
以上のように、アウトリガ装置3は、ジャッキシリンダ20の伸縮と、支持具31、固定ピン32および連結部材34の動作により、張り出しおよび格納を行うことができる。そのため、特に大型のアウトリガ装置において、ジャッキシリンダ20の重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
【0039】
また、シリンダ21は横アウトリガ10に対して上下動可能であるので、ジャッキシリンダ20は、その鉛直方向の空間のみで張り出しおよび格納を行うことができる。そのため、ジャッキシリンダ20の張り出しおよび格納のために、余分な空間を確保する必要がない。
【0040】
さらに、アウトリガ装置3は、格納した状態ではジャッキシリンダ20の大部分が横アウトリガ10より上方に配置され、横アウトリガ10の底面より下方にはほとんど突き出さない。そのため、汎用トラックの他の装備とジャッキシリンダ20とが干渉することはなく、小型クレーンを汎用トラックに搭載するときに装備の移設は不要であり、容易に搭載することができる。
【0041】
(第4実施形態)
図11に示すように、本発明の第4実施形態に係るアウトリガ装置4は、アウトリガ内箱12の先端にアリ溝14aが形成されており、ジャッキシリンダ20のシリンダ21にアリ溝14aに嵌合して褶動可能なT形鋼14tが設けられている。アリ溝14aおよびT形鋼14tは鉛直方向を向くように形成されており、シリンダ21は横アウトリガ10に対して上下動可能となっている。
【0042】
アウトリガ内箱12の先端面には、図示しない嵌合穴が形成されている。また、シリンダ21には、そのロッド側に第1固定ピン35が設けられており、キャップ側に第2固定ピン36が設けられている。第1固定ピン35および第2固定ピン36は、その先端がアウトリガ内箱12の先端面に対して突出、引き込み可能となっており、アウトリガ内箱12の先端面に形成された嵌合穴に嵌合して、シリンダ21をアウトリガ内箱12に対して固定できるようになっている。そのため、第1固定ピン35によりシリンダ21を上方に動かした状態でアウトリガ内箱12に固定でき、第2固定ピン36によりシリンダ21を下方に動かした状態でアウトリガ内箱12に固定できる。
【0043】
ジャッキシリンダ20のロッド22には、その内部に補助ロッド37が挿入されている。ロッド22および補助ロッド37はテレスコピック状に構成されており、補助ロッド37はロッド22の先端から引き出し、格納可能となっている。また、補助ロッド37の両端には、それぞれ嵌合穴37hが形成されており、ロッド22の先端には固定ピン37pが設けられている。固定ピン37pは補助ロッド37に形成された嵌合穴37hに嵌合可能となっており、固定ピン37pを嵌合穴37hに嵌合させることにより、補助ロッド37をロッド22に対して引き出した状態、または格納した状態で固定できるようになっている。
【0044】
図12に示すように、このアウトリガ装置4は以下の手順で張り出しが行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を格納した状態では、シリンダ21が上方に位置し、第1固定ピン35によりジャッキシリンダ20が支持され、ロッド22が収縮し、補助ロッド37がロッド22に格納された状態となっている。
(ii)まず、補助ロッド37をロッド22から下方に引き出し、固定ピン37pで固定する。
(iii)つぎに、ロッド22を伸長し、補助ロッド37の先端を接地させる。ここで、フロート23はまだ接地しておらず、アウトリガ内箱12と地面との中間に位置している。
(iv)つぎに、第1固定ピン35の固定を解除する。ここで、ジャッキシリンダ20は補助ロッド37により支えられているので、第1固定ピン35の固定を解除してもジャッキシリンダ20は上下動しない。
【0045】
(v)つぎに、ロッド22を収縮させることにより、シリンダ21を下方に褶動させる。ここで、シリンダ21は自重により下方に褶動する。また、補助ロッド37の長さは、ロッド22が最収縮した状態で、シリンダ21が最下降したときに、補助ロッド37が接地してジャッキシリンダ20を支えることができる寸法となっている。
(vi)つぎに、第2固定ピン36により、シリンダ21をアウトリガ内箱12に対して固定する。
(vii)つぎに、固定ピン37pを解除し、ロッド22に対する補助ロッド37の固定を解除する。
(viii)最後に、ロッド22を伸長して、フロート23を接地させる。同時に、補助ロッド37がロッド22の内部に格納される。
【0046】
図13に示すように、このアウトリガ装置4は以下の手順で格納が行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を張り出した状態では、シリンダ21が下方に位置し、第2固定ピン36によりシリンダ21が固定され、ロッド22が伸長した状態となっている。
(ii)まず、ロッド22を収縮させ、フロート23を地面から離間させる。同時に、補助ロッド37が自重によりロッド22から引き出される。
(iii)つぎに、固定ピン37pで補助ロッド37をロッド22に対して固定する。
(iv)つぎに、第2固定ピン36の固定を解除する。ここで、ジャッキシリンダ20は補助ロッド37により支えられているので、第1固定ピン35の固定を解除してもジャッキシリンダ20は上下動しない。
【0047】
(v)つぎに、ロッド22を伸長させることにより、シリンダ21を上方に褶動させる。
(vi)つぎに、第1固定ピン35でシリンダ21をアウトリガ内箱12に固定する。
(vii)つぎに、ロッド22を収縮させる。また、固定ピン37pを解除し、ロッド22に対する補助ロッド37の固定を解除する。
(Vii)最後に、補助ロッド37をロッド22に挿入し、固定ピン37pで固定して、格納する。
【0048】
以上のように、アウトリガ装置4は、ジャッキシリンダ20の伸縮と、第1固定ピン35、第2固定ピン36および補助ロッド37の動作により、張り出しおよび格納を行うことができる。そのため、特に大型のアウトリガ装置において、ジャッキシリンダ20の重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
【0049】
また、シリンダ21は横アウトリガ10に対して上下動可能であるので、ジャッキシリンダ20は、その鉛直方向の空間のみで張り出しおよび格納を行うことができる。そのため、ジャッキシリンダ20の張り出しおよび格納のために、余分な空間を確保する必要がない。
【0050】
さらに、アウトリガ装置4は、格納した状態ではジャッキシリンダ20の大部分が横アウトリガ10より上方に配置され、横アウトリガ10の底面より下方にはほとんど突き出さない。そのため、汎用トラックの他の装備とジャッキシリンダ20とが干渉することはなく、小型クレーンを汎用トラックに搭載するときに装備の移設は不要であり、容易に搭載することができる。
【0051】
(第5実施形態)
図14に示すように、本発明の第5実施形態に係るアウトリガ装置5は、アウトリガ内箱12の先端にジャッキシリンダ20のシリンダ21が固定されている。
ジャッキシリンダ20のロッド22には、その内部に第2ロッド38が挿入されている。ロッド22および第2ロッド38はテレスコピック状に構成されており、第2ロッド38はロッド22の先端から引き出し、格納可能となっている。また、第2ロッド38の両端には、それぞれ嵌合穴38hが形成されており、ロッド22の先端には固定ピン38pが設けられている。固定ピン38pは第2ロッド38に形成された嵌合穴38hに嵌合可能となっており、固定ピン38pを嵌合穴38hに嵌合させることにより、第2ロッド38をロッド22に対して引き出した状態、または格納した状態で固定できるようになっている。また、第2ロッド22の先端にフロート23が取り付けられている。
【0052】
フロート23には、フロート23に対して上下動可能な補助ロッド39が取り付けられている。補助ロッド39の両端には、それぞれ嵌合穴39hが形成されており、フロート23には固定ピン39pが設けられている。固定ピン39pは補助ロッド39に形成された嵌合穴39hに嵌合可能となっており、固定ピン39pを嵌合穴39hに嵌合させることにより、補助ロッド39をフロート23の下方に突出させた状態、または上方に格納した状態で固定できるようになっている。
【0053】
図15に示すように、このアウトリガ装置5は以下の手順で張り出しが行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を格納した状態では、ロッド22が収縮し、第2ロッド38がロッド22に格納され、補助ロッド39が上方に格納された状態となっている。
(ii)まず、固定ピン38pの固定を解除し、第2ロッド38のロッド22に対する固定を解除する
(iii)そうすると、第2ロッド38は、自重によりロッド22から下方に引き出される。
(iv)つぎに、固定ピン38pにより、第2ロッド38をロッド22に対して引き出した状態で固定する。
(v)最後に、ロッド22を伸長して、フロート23を接地させる。
【0054】
図16に示すように、このアウトリガ装置5は以下の手順で格納が行われる。
(i)ジャッキシリンダ20を張り出した状態では、ロッド22および第2ロッド38が伸長した状態となっている。
(ii)まず、ロッド22を収縮させ、フロート23を地面から離間させる。また、固定ピン39pの固定を解除して、補助ロッド39のフロート23に対する固定を解除する。
(iii)そうすると、補助ロッド39が自重により下方に動き、フロート23から下方に突出して先端が接地した状態となる。この状態で、固定ピン39pで補助ロッド39をフロート23に対して固定する。
(iv)つぎに、固定ピン38pの固定を解除する。
(v)つぎに、ロッド22を伸長させる。ここで、第2ロッド38は補助ロッド39により支えられているので、ロッド22の伸長に伴いロッド22の内部に格納される。
【0055】
(vi)つぎに、固定ピン38pにより、第2ロッド38をロッド22に対して固定する。
(vii)つぎに、ロッド22を収縮させる。
(viii)つぎに、固定ピン39pの固定を解除して、補助ロッド39を上方に動かす。
(ix)最後に、固定ピン39pで補助ロッド39をフロート23に対して固定して、格納する。
【0056】
以上のように、アウトリガ装置5は、ジャッキシリンダ20の伸縮と、固定ピン38pおよび補助ロッド39の動作により第2ロッド38の収縮を行うことができる。そのため、特に大型のアウトリガ装置において、第2ロッド38の重量が重い場合であっても、容易に作業を行うことができる。
【0057】
また、ロッド22および第2ロッド38を伸長することにより、フロート23を接地できるので、ジャッキシリンダ20を回転等させる必要がなく、ジャッキシリンダ20の張り出しおよび格納のために、余分な空間を確保する必要がない。
【0058】
さらに、アウトリガ装置5は、格納した状態ではジャッキシリンダ20の大部分が横アウトリガ10より上方に配置され、横アウトリガ10の底面より下方にはほとんど突き出さない。そのため、汎用トラックの他の装備とジャッキシリンダ20とが干渉することはなく、小型クレーンを汎用トラックに搭載するときに装備の移設は不要であり、容易に搭載することができる。
【0059】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、小型クレーンに備えられるアウトリガ装置を例に説明したが、本発明のアウトリガ装置は、クレーン車や高所作業車など、種々の作業車両のアウトリガ装置として採用できる。
【符号の説明】
【0060】
1〜5 アウトリガ装置
10 横アウトリガ
11 アウトリガ外箱
12 アウトリガ内箱
13 筒状部
20 ジャッキシリンダ
21 シリンダ
22 ロッド
23 フロート
31 支持具
32 固定ピン
33 アーム
34 連結部材
35 第1固定ピン
36 第2固定ピン
37 補助ロッド
38 第2ロッド
39 補助ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横アウトリガと、
シリンダが前記横アウトリガに対して上下動可能なジャッキシリンダと、
前記ジャッキシリンダのシリンダを、上方に動かした状態と、下方に動かした状態とで固定するシリンダ固定手段と、
前記ジャッキシリンダのロッドを、その先端が前記横アウトリガと地面との中間に位置する状態で固定するロッド固定手段と、を備える
ことを特徴とするアウトリガ装置。
【請求項2】
前記シリンダ固定手段は、
前記シリンダを上方に動かした状態で、該シリンダのロッド側端部を支持する支持具と、
前記シリンダを下方に動かした状態で、該シリンダのキャップ側端部を前記横アウトリガに固定する固定ピンと、からなり、
前記ロッド固定手段は、前記横アウトリガに回動可能に取り付けられ、下垂した状態において、前記ロッドの先端を支持するアームである
ことを特徴とする請求項1記載のアウトリガ装置。
【請求項3】
前記シリンダ固定手段は、
前記シリンダを上方に動かした状態で、該シリンダのロッド側端部を支持する支持具と、
前記シリンダを下方に動かした状態で、該シリンダのキャップ側端部を前記横アウトリガに固定する固定ピンと、からなり、
前記ロッド固定手段は、前記ロッドの先端と前記横アウトリガとを所定距離を離して連結する連結部材である
ことを特徴とする請求項1記載のアウトリガ装置。
【請求項4】
前記シリンダ固定手段は、
前記シリンダを上方に動かした状態で、該シリンダのロッド側端部を前記横アウトリガに固定する第1固定ピンと、
前記シリンダを下方に動かした状態で、該シリンダのキャップ側端部を前記横アウトリガに固定する第2固定ピンと、からなり、
前記ロッド固定手段は、前記ロッドの内部に挿入され、該ロッドの先端から下方に引き出した状態で、該ロッドに固定可能な補助ロッドである
ことを特徴とする請求項1記載のアウトリガ装置。
【請求項5】
横アウトリガと、
シリンダが前記横アウトリガに固定されたジャッキシリンダと、
前記ロッドの内部に挿入された第2ロッドと、
前記第2ロッドを前記ロッドの内部に挿入した状態と、下方に引き出した状態とで、該ロッドに固定する固定ピンと、
前記第2ロッドに対して上下動可能であり、該第2ロッドの先端から下方に突出した状態で固定可能な補助ロッドと、を備える
ことを特徴とするアウトリガ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−75753(P2013−75753A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217665(P2011−217665)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】