説明

アガリクス・ブラゼイ・ムリルから効率良く抗腫瘍物質の高い成分を製造する方法

【課題】アガリクス・ブラゼイ・ムリルを原料とし、これに含有される抗腫瘍活性の高い成分を効率良く抽出する製造方法を開発し産業上、有用に利用出来る機能を有する食品を提供することを目的とする
【解決手段】アガリクス・ブラゼイ・ムリルから抗腫瘍活性の高い成分を効率良く抽出する方法について、鋭意研究した結果、アガリクス・ブラゼイ・ムリルにペプチダーゼ・プロテアーゼを加えて酵素処理して抽出することにより、抗腫瘍活性の高い成分を高収率で得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍活性の高いアガリクス・ブラゼイ・ムリルから効率良く抗腫瘍物質の高い成分を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アガリクス・ブラゼイ・ムリルはブラジル原産の担子菌類のキノコであり、多くの多糖類、蛋白質を含み、抗腫瘍活性成分を含むことから、健康食品として多大な注目と期待が寄せられている。
【0003】
アガリクス・ブラゼイ・ムリル含まれる抗腫瘍活性成分についての文献も多く見られ、抗腫瘍活性成分について報告されている。
【0004】
近年、アガリクス・ブラゼイ・ムリルを原料として、多くの製品が市販されている。例えばアガリクス・ブラゼイ・ムリルに含まれるβ−グルカンを多量に含有する物質を主成分とする食品も開発され、またアガリクス・ブラゼイ・ムリルにヘミセルラーゼを加えて酵素分解することで得られた物質を主成分とする製品も市販されている。
【0005】
アガリクス・ブラゼイ・ムリルに含まれる抗腫瘍性物質の多くは、多糖類と蛋白質であるが、従来の方法は水等の適当な溶媒を用いて、加熱あるいは加圧加熱等の条件下で抽出される方法が用いられてきた。しかしながらこれら従来の方法ではアガリクス・ブラゼイ・ムリルに含まれる抗腫瘍物質を有効に抽出できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−128641
【特許文献2】特開平10−287584
【特許文献3】特開平11−32723
【特許文献4】特開昭64−67194
【特許文献5】特開昭61−47519
【特許文献6】特開2001−112438
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる現状に鑑み、アガリクス・ブラゼイ・ムリルを原料とし、これに含有される抗腫瘍活性の高い成分を効率良く抽出する製造方法を開発し産業上、有用に利用出来る機能を有する食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため、アガリクス・ブラゼイ・ムリルから抗腫瘍活性の高い成分を効率良く抽出する方法について、鋭意研究した結果、アガリクス・ブラゼイ・ムリルにペプチダーゼ・プロテアーゼを加えて酵素処理して抽出することにより、抗腫瘍活性の高い成分を高収率で得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、アガリクス・ブラゼイ・ムリルを粉砕し、水を加え加熱後酵素処理をして抽出することを特徴とし、抗腫瘍活性の高い物質を抽出する方法を提供するものである。抽出方法は80〜100℃の熱水で5分以上一次加熱し、冷却後酵素処理を行い、更に80℃〜100℃で5分以上加熱し、冷却後個液分離を行い、抽出エキスを得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アガリクス・ブラゼイ・ムリルから抗腫瘍活性を有する食品が提供される。
【発明を実地するための最良の形態】
【0011】
本発明のアガリクス・ブラゼイ・ムリルから抗腫瘍活性物質の抽出方法について、詳しく述べる。原料のアガリクス・ブラゼイ・ムリルはハラタケ科ハラタケ属に属するキノコであり、正式にはアガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus Blazei Murrill)である。
【0012】
アガリクス・ブラゼイ・ムリルは子実体あるいは菌糸体が使用される。子実体は生のままあるいは乾燥したものいずれも使用出来るが、好ましくは乾燥した子実体がよい。菌糸体は生のままあるいは乾燥したものいずれも使用できるが、乾燥したものが好ましい。本発明をより効果的に実地するには乾燥子実体が好ましい。
【0013】
アガリクス・ブラゼイ・ムリルを物理的処理で粉砕する。粉砕手段としては、ハンマーミル、オリエント粉砕機、ワーリングブレンダー等による粉砕機器が使用される。この場合粉砕した粒子サイズは0.1mm〜20mm程度である。粉砕された原料に水を加え80℃〜100℃に加熱される。加熱時間は5分以上であるが、好ましくは2〜5時間程度である。
【0014】
加熱後50℃以下に冷却し、酵素反応を行う。酵素はペプチダーゼ・プロテアーゼが使用出来る。
【0015】
ペプチダーゼ・プロテアーゼは蛋白分解能を有するペプチダーゼ・プロテアーゼであれば、本発明に使用出来る。例えば、ウマミザイムG,精製パパイン、ビオプラーゼSP−4FG等が使用出来る。
50℃以下に冷却されたアガリクス・ブラゼイ・ムリル液にプロテアーゼをアガリクス・ブラゼイ・ムリルの原料に対して0.01〜10重量%を添加し、20〜60℃で10分〜15時間、好ましくは2〜5時間程度攪拌しながら反応を行う。
【0016】
酵素処理が終了したアガリクス・ブラゼイ・ムリル液は90℃以上で10分〜2時間加熱し酵素を失活させる。その後固液分離を行い、抽出液を得る。この抽出液をスプレードライ、フリーズドライあるいは減圧濃縮等の処理をして、アガリクス・ブラゼイ・ムリルの抽出物を得ることが出来る。
【0017】
本発明によれば、アガリクス・ブラゼイ・ムリルを酵素処理して抽出することにより、抗腫瘍活性が高い抽出液が提供される。この抽出液はそのまま所望の目的のために使用しても差し支えないし、また粉末化して使用しても差し支えない。
【0018】
本発明のアガリクス・ブラゼイ・ムリル抽出物は所定の方法で加工することで、レトルト、粉末、錠剤あるいは顆粒等の形態として機能性食品とすることが出来る。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
実施例1
アガリクス・ブラゼイ・ムリルの乾燥子実体1kgをオリエント粉砕機で粒子径を10mm以下に粉砕する。粉砕された原料はステンレスの釜に移され、水20Lを加える。90℃に加熱し、1時間抽出する。50℃以下に冷却し、精製パパイン20gを加え、2時間酵素反応を行う。反応終了後90℃、30分加熱し酵素を失活させる。50℃以下に冷却し100メッシュの網を用いて濾別する。濾別された液体を噴霧乾燥機にて粉化を行う。本発明のアガリクス・ブラゼイ・ムリル抽出物450gを得た。
【0021】
比較例1
アガリクス・ブラゼイ・ムリルの乾燥子実体1kgをオリエント粉砕機で粒子径を10mm以下に粉砕する。粉砕された原料はステンレスの釜に移され、水20Lを加える。90℃に加熱し、1時間抽出する。50℃以下に冷却し、更に90℃、30分加熱を行う。50℃以下に冷却し100メッシュの網を用いて濾別する。濾別された液体を噴霧乾燥機にて粉化を行う。本発明のアガリクス・ブラゼイ・ムリル抽出物395gを得た。
【0022】
上記実施例および比較例で実施したアガリクス・ブラゼイ・ムリル抽出物の抗腫瘍活性を以下に述べる方法で評価した。
【0023】
検体50mgに水1mlを加え攪拌した懸濁液(50mg/ml)を試験原液とした。試験原液を培地で希釈し、検体濃度を1.25mg/ml,313μg/ml及び78μg/mlとして試験を行った。濃度はすべて細胞上清中の濃度として示した。
マウス白血病細胞P388(ヒューマンサイエンス振興財団)細胞の数を、生細胞由来の酸化還元酵素により生成するホルマザン色素の量として測定した。検体を共存させたときの色素生成量から、未処理対照の生成量に対する相対値(増殖率)を求め、細胞増殖抑制作用を評価した。
【0024】
評価結果を下記に示す。
【表−1】

【表−2】

【0025】
表1および表2より実施例1の方が抗腫瘍活性が強いことが分かる。
【0026】
たんぱく質の分子量分布を表3に示す。
【表3】

【0027】
表3より実施例1の分子量は30,000以下の分子量が多いことが分かる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、アガリクス・ブラゼイ・ムリルを原料とし抗腫瘍活性の強い抽出物を得ることが出来る。このことから優れた抗腫瘍活性を有する食品を提供することが出来、消費者に対して健康に寄与できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アガリクス・ブラゼイ・ムリルに、ペプチダーゼ・プロテアーゼを加え酵素処理をして抽出することを特徴とする抗腫瘍活性の高いアガリクス・ブラゼイ・ムリル抽出物の製造方法。
【請求項2】
分子量3万以下の低分子たんぱく質に富むアガリクス抽出物であることを特徴とする請求項1に記載のアガリクス・ブラゼイ・ムリル抽出物の製造方法。

【公開番号】特開2013−116(P2013−116A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143509(P2011−143509)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(307027636)ヤマノ株式会社 (3)
【出願人】(595108583)株式会社アトラスワールド (1)
【Fターム(参考)】