説明

アキシャルギャップ型の回転電機

【課題】 回転子と固定子とのギャップを変えることなく、固定子コイルに鎖交する磁束量を調整することができるアキシャルギャップ型の回転電機を提供する。
【解決手段】 アキシャルギャップ型のモータ100の固定子120a、120bを、ヨーク部121a、121bとティース部123a、123bとに分離する。ティース部123a、123bを固定すると共に、回転軸130と同軸でヨーク部121a、121bを回動させる。ヨーク部121a、121bの鉄心部301には、ティース部123a、123bと対向する位置であって、周方向の沿った位置に、凹部と凸部が繰り返し形成されており、この凹部に非磁性体302を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子と回転子とが回転軸の方向においてギャップを有して対向して配置されるアキシャルギャップ型の回転電機に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、周方向に配置された複数の永久磁石(磁極)を備えた回転子(ロータ)と、磁性体板を積み重ねて形成したコアと、前記コアに対して巻き回された固定子コイル(励磁コイル)とを備えた固定子(ステータ)とを有し、固定子と回転子とが回転軸の方向にギャップを有して対向するように配置された、所謂アキシャルギャップ型の回転電機(電動機・発電機)がある。
このような回転電機の用途として、インホイールモータがある。このインホイールモータは、自動車の車輪の回転数と同じ回転数で回転するものである。自動車が高速で走行する場合には、インホイールモータの回転数も上昇する。このため、インホイールモータの回転子に備えた永久磁石を通り、固定子コイルに鎖交する磁束の周波数が増える。よって、固定子コイルに誘起する電圧が高くなり、高速回転させるためにはモータ駆動電流の位相制御による、いわゆる弱め界磁により固定子コイルに鎖交する磁束を減少させる必要がある。また、固定子コイルに鎖交する磁束が大きいほど、モータ鉄心での損失、いわゆる鉄損が増加する傾向がある。通常、インホイールモータでは、自動車の発進時や上り坂の走行時に、大きなトルクを発生させる必要があるが、その他の状況では、それ程大きなトルクを発生させる必要はない。
【0003】
したがって、自動車の発進時や上り坂の走行時以外の場合では、高速回転時に、インホイールモータにおいて余計な損失が発生する虞がある。
また、自動車の減速時には、インホイールモータを発電機として動作させ、エネルギーを回生することが行われる。このような自動車の減速時においては、前述した磁束が原因でコギングが生じる(固定子と回転子との磁気的吸引力が、回転子の回転角度に依存して脈動する)。よって、自動車の減速時には、このコギングの問題が生じない範囲でしかエネルギーを十分に回生できない。
そこで、特許文献1、2には、回転子と固定子とのギャップを可変にし、所望の磁束の量に応じて当該ギャップの量を調整する技術が開示されている。このようにすれば、回転数に応じて固定子コイルに鎖交する磁束量を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4294993号公報
【特許文献2】特許第4518903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術のように、回転子と固定子とのギャップを可変にするためには、回転電機の構造を複雑にしなければならないという問題や、回転電機の回転軸の方向の大きさが大きくなるという問題がある。また、回転中の回転子を動かすことが困難であるという問題がある。更に、回転子と固定子とのギャップを変えることは、回転電機の形状を変えることになるので、回転電機の特性を変えてしまうという問題もある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、回転子と固定子とのギャップを変えることなく、固定子コイルに鎖交する磁束量を調整することができるアキシャルギャップ型の回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアキシャルギャップ型の回転電機は、回転軸と同軸で回転する回転子と、前記回転子と前記回転軸に沿う方向においてギャップを有して対向する位置に配置される固定子と、を有するアキシャルギャップ型の回転電機であって、前記回転子は、前記回転電機の周方向に配置された複数の永久磁石と、前記複数の永久磁石の前記回転軸に沿う方向の端面のうち、前記固定子と対向しない方の端面に配置され、前記複数の永久磁石との間で磁路を形成する回転子側ヨーク部と、を有し、前記固定子は、前記回転軸に沿う方向の端面のうち、前記回転子と対向する方の端面が前記永久磁石と前記ギャップを有して相互に対向する位置に配置されたティース部と、前記ティース部の前記回転軸に沿う方向の端面のうち、前記回転子と対向しない方の端面に、前記ティース部に対し絶縁及び潤滑された状態で配置され、前記ティース部との間で磁路を形成する固定子側ヨーク部と、を有し、前記ティース部と、前記固定子側ヨーク部と、の一方は固定され、他方は前記回転軸と同軸で回動し、前記ティース部は、前記回転電機の周方向において間隔を有して配置された複数のティース側鉄心部を有し、前記固定子側ヨーク部の、前記複数のティース側鉄心部と対向し得る位置には、磁性を有する領域と非磁性の領域とが存在し、前記ティース部と、前記固定子側ヨーク部との何れかが前記回転軸と同軸で回動することにより、前記複数のティース側鉄心部と対向する、前記固定子側ヨーク部の磁性を有する領域の面積が変わるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固定子を、周方向において間隔を有して配置された複数のティース側鉄心部を有するティース部と、固定子側ヨーク部とに分離し、固定子側ヨーク部の、ティース部と対向する位置に、磁性を有する領域と非磁性の領域を形成する。そして、ティース部と、固定子側ヨーク部との何れかが回転軸と同軸で回動することにより、複数のティース側鉄心部と対向する、固定子側ヨーク部の磁性を有する領域の面積が変わるようにした。よって、回転子と固定子とのギャップを変えることなく、固定子コイルに鎖交する磁束量を調整することができるアキシャルギャップ型の回転電機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】モータの概略構成の第1の例を示す断面図である。
【図2】回転子の構成の第1の例を示す図である。
【図3】ヨーク部の構成の第1の例を示す図である。
【図4】絶縁潤滑シートの構成の一例を示す図である。
【図5】ティース部の構成の一例を示す図である。
【図6】ヨーク部の回動によってヨーク部とティース部との位置関係が変わる様子の第1の例を概念的に示す図である。
【図7】モータの概略構成の第2の例を示す断面図である。
【図8】回転子の構成の第2の例を示す図である。
【図9】ヨーク部の構成の第2の例を示す図である。
【図10】ヨーク部の回動によってヨーク部とティース部との位置関係が変わる様子の第2の例を概念的に示す図である。
【図11】モータの概略構成の第3の例を示す断面図である。
【図12】図11の固定子の部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、回転電機の一例であるモータの概略構成の一例を示す断面図である。具体的に図1は、モータの回転軸に沿って切ったときの断面図である。尚、以下の各図では、説明に必要な構成のみを簡略化して示す。
図1において、モータ100は、所謂アキシャルギャップ型のモータであり、回転子110と、2つの固定子120a、120bと、回転軸130とを有し、それらがハウジング(フレーム)140に収められている。
【0011】
回転子110は、回転軸130の方向において、2つの固定子120a、120bに両側(図1では上下)から挟まれる位置に配置されている。回転子110は、円盤状部材150の外周側の領域に取り付けられる。円盤状部材150は、例えば、鉄等の強磁性体により形成されるものであり、その中心部が回転軸130に取り付けられている(固定されている)。
【0012】
回転子110は、複数の永久磁石111と、回転子側ヨーク部の一例であるヨーク部112と、を有する。
図2は、回転子110の構成の一例を示す図である。具体的に図2(a)は、回転子110を、回転軸130に沿う方向から見た図である。図2(b)は、図2(a)のI−Iで切ったときの断面図である。図2(c)は、図2(b)のII−IIで切ったときの断面図である。尚、部材の特徴を分かりやすく示すために、各断面図では、必要に応じて、記載を省略している。
【0013】
本実施形態では、ヨーク部112は、例えば軟磁性材料で中空円筒状に一体で形成され、回転軸130と同軸となる位置に配置される。ヨーク部112の「回転軸130に沿う方向」の両端面に、それぞれ24個の永久磁石111a〜111xが周方向に配置される。24個の永久磁石111a〜111xで全体として円環状になっており、この円環状の部分の面方向の大きさ及び形状は、ヨーク部112の面方向の大きさ及び形状と略同じである。更に、この円環状の部分の軸が回転軸130と同軸となるように各永久磁石111a〜111xが配置される。
【0014】
また、周方向で相互に隣り合う永久磁石(例えば永久磁石111b1と永久磁石111a1、111c1)は、相互に異なる極となっている。また、回転軸130に沿う方向(図1、図2(b)では上下方向)で相互に対向する永久磁石111(例えば、図1、図2(b)に示す永久磁石111r1、111s2や、永久磁石111f1、111g2)も相互に異なる極となっている。図2に示すように永久磁石111r1はS極であるので、永久磁石111s2はN極である。同様に永久磁石111f1はS極であるので、永久磁石111g2はN極である。また、図2では、図示を省略しているが、周方向で相互に隣り合う永久磁石111の間には、非磁性体が配置されている。このようにすることにより、24個の永久磁石111a〜111xとヨーク部112との間に磁路が形成される。
【0015】
図1の説明に戻り、固定子120a、120bは、固定子側ヨーク部の一例であるヨーク部121a、121bと、絶縁潤滑シート122a、122bと、ティース部123a、123bと、駆動機構124a、124bと、を有する。尚、固定子120a、120bは、ヨーク部121a、121bと、絶縁潤滑シート122a、122bと、ティース部123a、123bとの位置関係が逆であることに基づく構成が異なる他は同じである。よって、以下の説明では、固定子120a、120bのうち、固定子120aのみの説明を行い、固定子120bの詳細な説明を省略する。
【0016】
図3は、ヨーク部121aの構成の一例を示す図である。具体的に図3(a)は、ヨーク部121aを、回転子110が形成されている側(図1に示す例では上側)から見た図である。図3(b)、図3(c)は、それぞれ、図3(a)のI−I、II−IIで切ったときの断面図である。
図3に示すように、ヨーク部121aは、ヨーク側鉄心部の一例である鉄心部301と、非磁性体部302a〜302fとを有する。
鉄心部301は、軟磁性材料を用いて形成されたものであり、回転軸130と同軸となる位置に配置される。鉄心部301は、中空円筒に対し、回転軸130の方向の両端面のうちの一端面(図1、図3に示す例では上面)に、同一の凹部と凸部とが周方向に繰り返し形成された形状を有している(図3(a)、(c)を参照)。
鉄心部301の凸部の先端面(図3(a)に示されている面)の形状及び大きさは、後述するティース部123aの各鉄心部501a〜501fの先端面(図5(a)に示されている面)の形状及び大きさと略同じである。
【0017】
鉄心部301に形成されている凹部には、当該凹部と形状及び大きさが略同じである非磁性体302a〜302fが、例えば接着剤を用いて、それぞれ個別に取り付けられる(図3(c)を参照)。非磁性体としては、例えば、セラミックフィラーを含むエポキシ樹脂が用いられる。ただし、非磁性体302a〜302fは、エポキシ樹脂に限定されず、鉄心部301に形成されている凹部と形状及び大きさが略同じになるように加工することができる非磁性体の材料であれば、どのようなものを非磁性体302a〜302fとして用いてもよい。非磁性体302a〜302fの露出面(図3(c)に示す例では上面)と、鉄心部301の凸部の先端面(図3(b)に示す例では上面)は略面一となっている。このように、ヨーク部121aの形状は、鉄心部301に、非磁性体部302a〜302fを組み合わせることにより、全体として中空円筒状となっている。
【0018】
そして、この中空円筒状の部分の面方向の形状及び大きさは、回転子110(複数の永久磁石111、ヨーク部112)の面方向の形状及び大きさと略同じである。
更に、図1に示すように、ヨーク部121aは、その非磁性体302a〜302fが露出している面(図1では上側の面)が、回転軸130に沿う方向において、ティース部123aを介して、回転子110の回転軸130に沿う方向における一端面(図1では下側の面)と相互に対向する位置に配置される。
【0019】
また、本実施形態では、鉄心部301を巻鉄心としている。具体的に説明すると、本実施形態では、方向性電磁鋼板を用いて、方向性電磁鋼板の磁化容易軸方向(圧延方向)が巻方向(周方向)となるように巻鉄心を形成し、この巻鉄心を鉄心部301としている。このようにすれば、磁束の方向と磁化容易軸とを揃えることができ、鉄心部301における磁気抵抗を低減することができるので好ましいからである。
【0020】
尚、必ずしも鉄心部301をこのようにして形成する必要はない。例えば、方向性電磁鋼板の代わりに無方向性電磁鋼板を採用してもよい。また、電磁鋼板を回転軸130に沿う方向に積層して鉄心部301を形成してもよい。更に、鉄心部301を圧粉鉄心としてもよい。
【0021】
図4は、絶縁潤滑シート122aの構成の一例を示す図である。具体的に図4(a)は、絶縁潤滑シート122aを、回転軸130の方向に沿う方向から見た図である。図4(b)は、図4(a)のI−Iで切ったときの断面図である。
本実施形態では、絶縁潤滑シート122aは、潤滑性を有する絶縁シートである。絶縁潤滑シート122aの形状は、円環状であり、この円環状の部分の面方向の形状及び大きさは、ヨーク部121aの面方向の形状及び大きさと略同じである(図3(a)を参照)。絶縁潤滑シート122aは、その円環状の面が、ヨーク部121aの円環状の面と略一致するように、例えば接着剤を用いてヨーク部121aに取り付けられる。絶縁潤滑シート122aの厚みは、ヨーク部121aとティース部123aとの間の絶縁を確保することができる範囲で可及的に薄い方が好ましい。このように、ヨーク部121aとティース部123aとの間の絶縁を確保するのは、固定子120に渦電流が発生するのを抑制するためである。
また、後述するようにヨーク部121aは、回転軸130を回動軸として回動する。よって、絶縁潤滑シート122aは、ヨーク部121aの回動により、ティース部123aとの間で発生する摩擦熱を抑制させて、ヨーク部121aの回動を潤滑に行えるようにする。絶縁潤滑シート122aとしては、例えば、ガラスクロスに含浸させたテフロン(登録商標)製の極薄シートが用いられる。
【0022】
尚、本実施形態では、絶縁潤滑シート122aを用いて、ヨーク部121aとティース部123aとの間の絶縁を確保することと、ヨーク部121aの回動を潤滑にすることとを実現するようにした。しかしながら、これらを実現することができれば、必ずしも絶縁潤滑シート122aを用いる必要はない。例えば、ヨーク部121aのティース部123aとの接触面に(潤滑性のある)絶縁皮膜を付けるようにしてもよい。
【0023】
図5は、ティース部123aの構成の一例を示す図である。具体的に図5(a)は、ティース部123aを、回転軸130の方向に沿う方向から見た図である。図5(b)、図5(c)は、それぞれ、図5(a)のI−I、II−IIで切ったときの断面図である。
図5に示すように、ティース部123aは、ティース側鉄心部の一例である複数の鉄心部501a〜501fと、モールド部502と、鉄心部501a〜501fと同数のコイル部503a〜503fとを有する。
【0024】
鉄心部501a〜501fは、同じものであり、本実施形態では、それぞれ矩形状の概形を有する。また、鉄心部501a〜501fは、軟磁性材料を用いて形成される。具体的に本実施形態では、鉄心部501a〜501fの「回転軸130に沿う方向で切ったときの各断面」の形状に合うように打ち抜かれた複数の方向性電磁鋼板を積み重ねることにより、鉄心部501a〜501fが形成される。鉄心部501a〜501fを構成する複数の方向性電磁鋼板を積み重ねる方向は、モータ100の周方向になる。このようにすれば、永久磁石111a〜111fからの磁束が鉄心部501a〜501fに流れることを抑制することができる。更に、本実施形態では、方向性電磁鋼板の磁化容易軸方向(圧延方向)が回転軸130に沿う方向となるようにしている。このようにすれば、磁束(磁路)の方向と磁化容易軸とを揃えることができ、鉄心部501における磁気抵抗を低減することができるので好ましいからである。
【0025】
尚、必ずしも鉄心部501a〜501fをこのようにして形成する必要はない。例えば、方向性電磁鋼板の代わりに無方向性電磁鋼板を採用してもよい。また、鉄心部501a〜501fの「回転軸130に垂直な方向で切ったときの各断面」の形状に合うように打ち抜かれた複数の方向性電磁鋼板を積層することにより、鉄心部を形成するようにしてもよい。このようにした場合、鉄心部を構成する複数の方向性電磁鋼板の積層方向は、回転軸130に沿う方向になる。
【0026】
コイル部503a〜503fは、鉄心部501a〜501fの側周部(鉄心部501a〜501fの外周面のうち回転軸130に垂直な方向の面を除く部分)の中央付近を囲む位置に個別に配置される。コイル部503a〜503fを構成するコイルは、分布巻であっても集中巻であってもよい。尚、図5では、コイル部503a〜503fを構成するコイルが集中巻である場合を例に挙げて示している。
本実施形態では、コイル部503a〜503fを形成した後、コイル部503a〜503fの中空部分に鉄心部501a〜501fを差し込むようにしている。よって、鉄心部501a〜501fは、自身が差し込まれるコイル部503a〜503fの中空部分に応じた形状を有する。よって、コイル部503a〜503fの中空部分の形状に合わせて異なる大きさ・形状の電磁鋼板を積層させて鉄心部501a〜501fを形成することができる。すなわち、鉄心部501a〜501fの概形は矩形状に限定されるものではない。
【0027】
モールド部502は、コイル部503a〜503fに差し込まれた鉄心部501a〜501fを所定の位置に固定するためのものであり、絶縁材料により形成される。例えば、コイル部503a〜503fに差し込まれた鉄心部501a〜501fを、ティース部123aの外形に合わせた型の中に配置する。そして、型の隙間に液状の絶縁材料を流し込み、当該絶縁材料が硬化すると、鉄心部501a〜501f及びコイル部503a〜503fと固着されたモールド部502が形成されるようにする。このようにして一体となった「鉄心部501a〜501f、モールド部502、及びコイル部503a〜503f」を当該型から取り出すことにより、全体として概ね中空円筒状のティース部123aが形成される。
【0028】
モールド部502としては、例えば、セラミックフィラーを含浸させたエポキシ樹脂が用いられる。ただし、モールド部502は、エポキシ樹脂に限定されず、コイル部503a〜503fに差し込まれた鉄心部501a〜501fを固定することができれば、どのような材料を用いてモールド部502を形成してもよい。
【0029】
以上のようにして形成されるティース部123aは、その回転軸130に沿う方向の一端面(図1では上面)が、回転子110の一端面(図1では下面)と相互に対向すると共に、他端面(図1では下面)が、絶縁潤滑シート122aを介して、ヨーク部121aの非磁性体302a〜302fが形成されている面(図1では上面)と相互に対向するように、その軸心が回転軸130と同軸となる位置に固定される。
【0030】
以上のようにすることで、モータ100を動作させると、ヨーク部121a(121b)とティース部123a(123b)との間に磁路が形成される。前述したように、鉄心部501a〜501fの先端面(図5(a)に示されている面)の形状及び大きさは、鉄心部301の凸部の先端面(図3(a)に示されている面)の形状及び大きさと略同じである。よって、これらの面の全てが相互に対向する状態になったときに、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量が最大となる。
【0031】
駆動機構124aは、ヨーク部121aを回転軸130と同軸で回動させるためのものである。駆動機構124aは、例えば、ウォームギア(ウォーム及びウォームホイール)と、ウォームを駆動するモータとを備える。このモータに対して、モータ100の回転数に応じた電流を流すことによって、駆動機構124aは、ヨーク部121aを回転軸130と同軸で回動させる。駆動機構124aは、ヨーク部121aを両方向(右回り方向及び左回り方向)に回動させることができる。尚、ウォームギアは公知の技術であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。また、ヨーク部121aを回転軸130と同軸で回動させることができれば、必ずしもこのようにして駆動機構124aを構成する必要はない。
【0032】
図6は、ヨーク部121aの回動によってヨーク部121aとティース部123aとの位置関係が変わる様子を概念的に示す図である。具体的に図6は、固定子120aの一部を、モータ100の周方向に展開して2次元で表現した図である。図6の上図と下図の右端に示している両矢印の方向がモータ100の周方向に対応する。図6の上図は、ティース部123aが有する鉄心部501a〜501fの先端面の全ての領域と、ヨーク部121aが有する鉄心部301の凸部の先端面の全ての領域と、が相互に対向する状態を示す。図6の下図は、ティース部123aが有する鉄心部501a〜501fの先端面の一部の領域と、ヨーク部121aが有する鉄心部301の凸部の先端面の一部の領域と、が相互に対向する状態を示す。
【0033】
本実施形態では、図6の上図及び下図の右端に両矢印で示しているように、ヨーク部121aは、モータ100の周方向の両方向に(すなわち右回りにも左回りにも)回動することが可能である。そして、本実施形態では、図6の上図に示す状態を基準に、相互に隣接するティース部501(例えば、ティース部501a、501b)の間隔Gの1/2倍に対応する回動角度までヨーク部121aを回動させることができるようにしている。図6の下図では、図6の上図に示す状態から距離Lに対応する回動角度だけヨーク部121aを回動させている。
【0034】
前述したように、図6の上図に示す状態では、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量が最大となる。一方、図6の下図に示す状態では、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量は、図6の上図に示す状態よりも少なくなる。そして、図6の上図に示す状態を基準に、相互に隣接するティース部501の間隔Gの1/2倍に対応する回動角度までヨーク部121aを回動させると、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量が最小となる。
【0035】
よって、モータ100に必要な回転数に応じてヨーク部121aの回動角度を変えることにより、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量を変えることができる。例えば、電気自動車における減速時には、モータ100を低速で回転させる。このようなときには、ヨーク部121aを回動させて、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量を減少させることにより、コギングを抑制させることができ、ブレーキ制御をスムーズに行うことができる。一方、増速時には、モータを高速で回転させる。このようなときにも、ヨーク部121aを回動させて、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量を減少させることにより、当該コイルの誘起起電力が低下するので、モータ100の高速回転か可能になる。
【0036】
尚、ヨーク部121aの回動角度の範囲は前述した範囲に限定されず、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量の低減量や、駆動装置124aの性能等に応じて適宜決定することができる。ただし、ヨーク部121aとティース部123aは、軸対称の形状を有しているので、相互に隣接するティース部501の間の間隔Gに対応する角度を最大の回動角度にするのが好ましい。また、ヨーク部121a、122aを同じ方向に同じ角度だけ同時に回動させるようにする。
【0037】
以上のように本実施形態では、アキシャルギャップ型のモータ100の固定子120a、120bを、ヨーク部121a、121bとティース部123a、123bとに分離する。ティース部123a、123bを固定すると共に、回転軸130と同軸でヨーク部121a、121bを回動させる。ヨーク部121a、121bの鉄心部301には、ティース部123a、123bと対向する位置であって、周方向の沿った位置に、凹部と凸部が繰り返し形成されており、この凹部に非磁性体302を取り付ける。これにより、ヨーク部121a、121bを回動させると、ティース部123a、123bの鉄心部501と、ヨーク部121a、121bの鉄心部301との対向面積が変化する。よって、回転子110と固定子120a、120bとのギャップを変えることなく、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量を調整することができる。
【0038】
本実施形態では、2つの固定子120a、120bを用いるようにしたが、固定子の数は1つでもよい。
また、本実施形態では、ヨーク部121を回動させるようにしたが、ティース部123を回動させるようにしてもよい。ただし、ティース部123a、123bはヨーク部121a、121bに比べて位置がずれ易い。したがって、ティース部123a、123bを回動させたときに、固定子120a、120bと回転子110との間に発生する磁気吸引力や、回動によりティース部123a、123bが受ける反力によって、ティース部123a、123bの位置がずれないように強固にティース部を形成する必要がある。よって、ヨーク部121a、121bを回動させるようにした方が、モータ100がガタつかないようにするための構成を簡単に実現することができ、好ましい。
【0039】
また、本実施形態では、非磁性体302a〜302fを用いるようにしたが、必ずしも非磁性体302a〜302fを用いる必要はない。すなわち、ヨーク部121a、121bの鉄心部301に形成される凹部に何も取り付けない場合には、凹部の中は空気となる。よって、ヨーク部121a、121bを回動させることにより、固定子120a、120bのコイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量を調整することができる。ただし、非磁性体302a〜302fを用いた方が、固定子120a、120bのコイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量の変動を大きくすることができる。さらに、非磁性体302a〜302fの露出面と、鉄心部301の凸部の先端面とを略面一にすることにより、ヨーク部121a、121bの回動を安定して行うことができる。
また、本実施形態では、回転電機の一例としてモータを例に挙げて説明したが、モータ(電動機)以外に、例えば発電機にも本実施形態を適用することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態では、1つの回転子110と2つの固定子120a、120bを備えたモータ100を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、2つの回転子と1つの固定子を備えたモータについて説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、固定子及び回転子の数が異なることによる構成が主として異なる。よって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図6に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0041】
図7は、回転電機の一例であるモータの概略構成の一例を示す断面図である。図7は、図1に対応する図である。
図7において、モータ700も、第1の実施形態のモータ100と同様に、所謂アキシャルギャップ型のモータである。モータ700は、2つの回転子710a、710bと、固定子720と、回転軸130とを有し、それらがハウジング(フレーム)740に収められている。
【0042】
回転子710a、710bは、回転軸130に沿う方向で固定子720を介して相互に対向する位置に配置されている。これら2つの回転子710a、710bは、それぞれ円盤状部材750の外周下側、外周上側の領域に取り付けられる。円盤状部材750は、例えば、鉄等の強磁性体により形成されるものであり、その中心部が回転軸130に取り付けられている(固定されている)。
回転子710a、710bは、複数の永久磁石711と、回転子側ヨーク部の一例であるヨーク部712と、を有する。尚、回転子710a、710bは、複数の永久磁石711と、ヨーク部712との位置関係が逆であることに基づく構成が異なる他は同じである。よって、以下の説明では、回転子710a、710bのうち、回転子710aのみの説明を行い、回転子710bの説明を省略する。
【0043】
図8は、回転子710aの構成の一例を示す図である。図8は、図2に対応する図である。
本実施形態では、図8に示すように、ヨーク部712aは、例えば軟磁性材料で中空円筒状に一体で形成され、回転軸130と同軸となる位置に配置される。ヨーク部712aの「回転軸130に沿う方向」の両端面のうち、固定子720と対向する側の面に、24個の永久磁石711a〜711xが周方向に配置されている。24個の永久磁石711a〜711xで全体として円環状になっており、この円環状の部分の面方向の大きさ及び形状は、ヨーク部712の面方向の大きさ及び形状と略同じである。更に、この円環状の部分の軸が回転軸130と同軸となるように各永久磁石711a〜711xが配置される。
【0044】
また、周方向で相互に隣り合う永久磁石(例えば永久磁石711b1と永久磁石711a1、711c1)は、相互に異なる極となっている。また、回転子710aが備える永久磁石と、回転子710bが備える永久磁石のうち、回転軸130に沿う方向(図7、図7(b)では上下方向)で相互に対向する永久磁石711(例えば、図7に示す永久磁石711a1、111b2や、永久磁石711m1、711n2)も相互に異なる極となっている。図8に示すように永久磁石711a1はN極であるので、永久磁石711b2はS極である。同様に永久磁石111m1はN極であるので、永久磁石711n2はN極である。また、図8でも図2と同様に、図示を省略しているが、周方向で相互に隣り合う永久磁石711の間には、非磁性体が配置されている。このようにすることにより、24個の永久磁石711a1〜711x1、711b1〜711x2とヨーク部712との間に磁路が形成される。
【0045】
図7の説明に戻り、固定子720は、固定子側ヨーク部の一例であるヨーク部721と、絶縁潤滑シート722a、722bと、ティース部723a、723bと、駆動機構724と、を有する。尚、絶縁潤滑シート722a、722b及びティース部723a、723bは、それらの位置関係が逆であることに基づく構成が異なる他は同じである。また、絶縁潤滑シート722a、722b、ティース部723a、723bは、それぞれ、図4、図5に示したものと同じである。よって、以下の説明では、ティース部723a、723b及び絶縁潤滑シート722a、722bの詳細な説明を省略する。
【0046】
尚、ティース部723a、723bは、それぞれ、その回転軸130に沿う方向の一端面(図7では下面、上面)が、回転子110の一端面(図7では上面、下面)と相互に対向すると共に、他端面(図7では上面、下面)が、絶縁潤滑シート722a、723bを介して、ヨーク部721の回転軸130に沿う方向の一端面(図7では下面、上面)と相互に対向するように、その軸心が回転軸130と同軸となる位置に固定される。
【0047】
図9は、ヨーク部721の構成の一例を示す図である。具体的に図9(a)は、ヨーク部721を、回転軸130に沿う方向から見た図である。図9(b)、図9(c)は、それぞれ、図9(a)のI−I、II−IIで切ったときの断面図である。
図9に示すように、ヨーク部721は、ヨーク側鉄心部の一例である鉄心部901と、非磁性体部902a〜902fとを有する。
鉄心部901は、軟磁性材料を用いて形成されたものであり、回転軸130と同軸となる位置に配置される。鉄心部901は、中空円筒に対し、当該中空円筒の周方向に垂直な方向において貫通している同一の空間が等間隔で周方向に繰り返し形成された形状を有している(図9(a)、(c)を参照)。
鉄心部901の空間となっていない部分の先端面(図9(a)に示されている面)の形状及び大きさは、ティース部723a、723bの各鉄心部501a〜501f(図5(a)に示されている面)の形状及び大きさと略同じである。
【0048】
鉄心部901に形成されている空間には、当該空間と形状及び大きさが略同じである非磁性体902a〜902fが、例えば接着剤を用いて、それぞれ個別に取り付けられる。非磁性体としては、例えば、第1の実施形態と同様のものが用いられる。ただし、非磁性体902a〜902fは、鉄心部901に形成されている空間と形状及び大きさが略同じになるように加工することができる非磁性体の材料であれば、どのようなものを非磁性体902a〜902fとして用いてもよい。非磁性体902a〜902fの露出面(図9(c)に示す例では上下面)と、鉄心部901の空間となっていない部分の先端面(図9(b)に示す例では上下面)は略面一となっている。このように、ヨーク部721の形状は、鉄心部901に、非磁性体部902a〜902fを組み合わせることにより、全体として中空円筒状となっている。
【0049】
そして、この中空円筒状の部分の面方向の形状及び大きさは、回転子710a、710b(複数の永久磁石711、ヨーク部712)の面方向の形状及び大きさと略同じである。
更に、図7に示すように、ヨーク部721は、その非磁性体902a〜902fが露出している両端面が、回転軸130に沿う方向において、ティース部723a、723bを介して、回転子710a、710bの回転軸130に沿う方向における一端面(図1では上面、下面)とそれぞれ相互に対向する位置に配置される。
【0050】
また、本実施形態では、鉄心部901を、巻鉄心を用いて形成している。具体的に説明すると、方向性電磁鋼板を用いて、方向性電磁鋼板の磁化容易軸方向(圧延方向)が巻方向(周方向)となるように巻鉄心を形成し、この巻鉄心に対し、前記空間となる領域を切断したものを鉄心部901としている。このようにすれば、磁束(磁路)の方向と磁化容易軸とを揃えることができ、鉄心部901における磁気抵抗を低減することができるので好ましいからである。
【0051】
尚、必ずしも鉄心部901をこのようにして形成する必要はない。例えば、方向性電磁鋼板の代わりに無方向性電磁鋼板を採用してもよい。また、電磁鋼板を回転軸130に沿う方向に積層して鉄心部901を形成してもよい。更に、鉄心部901を圧粉鉄心としてもよい。
【0052】
駆動機構724は、ヨーク部721を回転軸130と同軸で回動させるためのものである。駆動機構724は、例えば、第1の実施形態と同様に、ウォームギア(ウォーム及びウォームホイール)と、ウォームを駆動するモータとを備える。このモータに対して、モータ700の回転数に応じた電流を流すことによって、駆動機構724は、ヨーク部721を回転軸130と同軸で回動させる。駆動機構724は、ヨーク部721を両方向(右回り方向及び左回り方向)に回動させることができる。尚、ウォームギアは公知の技術であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。また、ヨーク部721を回転軸730と同軸で回動させることができれば、必ずしもこのようにして駆動機構724を構成する必要はない。
【0053】
図10は、ヨーク部721の回動によってヨーク部721とティース部723a、723bとの位置関係が変わる様子を概念的に示す図である。具体的に図10は、固定子720の一部を、モータ700の周方向に展開して2次元で表現した図である。図10の上図と下図の右端に示している両矢印の方向がモータ700の周方向に対応する。図10の上図は、ティース部723a、723bが有する鉄心部501a1〜501f1、501a2〜501f2の先端面の全ての領域と、ヨーク部721が有する鉄心部901の空間となっていない部分の先端面の全ての領域と、が相互に対向する状態を示す。図10の下図は、ティース部723a、723bが有する鉄心部501a1〜501f1、501a2〜501f2の先端面の一部の領域と、ヨーク部721が有する鉄心部901の空間となっていない部分の先端面の一部の領域と、が相互に対向する状態を示す。
【0054】
本実施形態では、図10の上図及び下図の右端に両矢印で示しているように、ヨーク部721は、モータ700の周方向の両方向に(すなわち右回りにも左回りにも)回動することが可能である。そして、本実施形態では、図10の上図に示す状態を基準に、相互に隣接するティース部501(例えば、ティース部501a、501b)の間隔Gの1/2倍に対応する回動角度までヨーク部721を回動させることができるようにしている。図10の下図では、図10の上図に示す状態から距離Lに対応する回動角度だけヨーク部721を回動させている。
【0055】
モータ700を動作させると、ヨーク部721とティース部723a、723bとの間に磁路が形成される。図10の上図に示す状態では、コイル部503a1〜503f1、503a2〜503f2を構成するコイルに鎖交する磁束の量が最大となる。一方、図10の下図に示す状態では、コイル部503a1〜503f1、503a2〜503f2を構成するコイルに鎖交する磁束の量は、図10の上図に示す状態よりも小さくなる。そして、図10の上図に示す状態を基準に、相互に隣接するティース部501の間隔Gの1/2倍に対応する回動角度までヨーク部721を回動させると、コイル部503a1〜503f1、503a2〜503f2を構成するコイルに鎖交する磁束の量が最小になる。
【0056】
よって、第1の実施形態のモータ100と同様に、モータ700に必要な回転数に応じてヨーク部721の回動角度を変えることにより、コイル部503a〜503fを構成するコイルに鎖交する磁束の量を変えることができる。
尚、ヨーク部721の回動角度の範囲は前述した範囲に限定されず、コイル部503a1〜503f1、503a2〜503f2を構成するコイルに鎖交する磁束の量の低減量や、駆動装置724の性能等に応じて適宜決定することができる。ただし、ヨーク部721とティース部723a、723bは、軸対称の形状を有しているので、相互に隣接するティース部501の間の間隔Gに対応する角度を最大の回動角度にするのが好ましい。
【0057】
以上のように、2つの回転子710a、710bと1つの固定子720を備えたモータ700でも、第1の実施形態で説明したのと同様の効果を得ることができる。
尚、第1の実施形態で説明したように、ティース部723a、723bを回動させるよりも、ヨーク部721を回動させる方が好ましいが、ティース部723a、723bを回動させるようにしてもよい。このようにする場合、ティース部723a、723bを同じ方向に同じ角度だけ回動させるようにする。その他、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。前述した第1、第2の実施形態では、絶縁潤滑シート122a、122b、722a、722bを用いたり、ヨーク部121a、121b、721とティース部123a、123b、723a・723bとの接触面に(潤滑性のある)絶縁皮膜を付けたりすることにより、ヨーク部121a、121b、721とティース部123a、123b、723a・723bとの間の絶縁を確保した。これに対し、本実施形態では、絶縁油等の液状の絶縁材を用いて、これらの間の絶縁を確保する場合について説明する。このように、本実施形態と第1及び第2の実施形態とは、ヨーク部121a、121b、721とティース部123a、123b、723a・723bとの絶縁方法が異なることに基づく構成が主として異なる。よって、本実施形態の説明において、第1及び第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図10に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。尚、本実施形態は、第2の実施形態のモータ700を基にした実施形態である。
【0059】
図11は、回転電機の一例であるモータの概略構成の一例を示す断面図である。図11は、図7に対応する図である。図12は、図11に示す固定子1120の部分を拡大して示す断面図である。
図11において、モータ1100も、第2の実施形態のモータ700と同様に、所謂アキシャルギャップ型のモータであり、2つの回転子710a、710bと、固定子1120と、回転軸130とを有し、それらがハウジング(フレーム)740に収められている。
【0060】
固定子1120は、ヨーク部721と、絶縁材1122a、1122bと、絶縁部材1125a〜1125dと、ティース部723a、723bと、駆動機構724と、を有する。
絶縁材1122a、1122bは、液状のものであり、例えば、絶縁油である。
絶縁部材1125a〜1125dは、絶縁材1122a、1122bが、ヨーク部721とティース部723a・723bとの間から外部に流れ出ることを防止するための堰となるものである。本実施形態では、絶縁部材1125a、1125bは、その概形が円環状であり、且つ、その周方向の断面の形状が円状である。絶縁部材1125a、1125cは同じものであり、絶縁部材1125b、1125dは同じものである。
【0061】
絶縁部材1125a、1125cの径(直径)は、ヨーク部721(中空円筒)の底面の外径と略同じ長さを有する。これら絶縁部材1125a、1125cは、ヨーク部721(中空円筒)の底面の外周側端部(図9(a)に示す領域の外周側端部)と、ティース部723a、723bの底面の外周側端部(図5に示す領域の外周側端部)との間に配置される。
一方、絶縁部材1125b、1125dの径(直径)は、ヨーク部721(中空円筒)の底面の内径と同じ長さを有する。これら絶縁部材1125b、1125dは、ヨーク部721(中空円筒)の底面の内周側端部(図9(a)に示す領域の内周側端部)と、ティース部723a、723bの底面の内周側端部(図5に示す領域の内周側端部)との間に配置される。
このような絶縁部材1125a〜1125dは、モータ1100の動作により破損しない程度の強度を有する絶縁材料を用いて形成される。
【0062】
絶縁材1122a、1122bは液状であり、絶縁部材1125a、1125bの周方向の断面の形状が円状であることから、絶縁部材1125a、1125bの内周側の端面に絶縁材1122a、1122bが付着する。したがって、ヨーク部721とティース部723a・723bとの絶縁を確保しつつ、ヨーク部721の回動を潤滑に行うことができる。よって、以上のようにしても第1及び第2の実施形態で説明したのと同様の効果を得ることができる。
【0063】
尚、絶縁潤滑シート122a、122bの代わりに、絶縁材1122a、1122b及び絶縁部材1125a〜1125dと同様のものを用いれば、第1の実施形態のモータ100に本実施形態の構成を適用することもできる。また、液状の絶縁材1122a、1122bが、ヨーク部721とティース部723a・723bとの間から外部に流れ出ることを防止することができ、これらの間を絶縁し、且つ、ヨーク部721の回動を潤滑に行うことができれば、絶縁部材1125a〜1125dは前述したものに限定されない。その他、第1及び第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0064】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
100、700、1100 モータ
110、710 回転子
111、711 永久磁石
112、712 ヨーク部
120、720 固定子
121、721 ヨーク部
122、722 絶縁潤滑シート
123、723 ティース部
124、724 駆動機構
130 回転軸
140、740 ハウジング
301、901 鉄心部
302、902 非磁性体
501 鉄心部
1122 絶縁材
1125 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と同軸で回転する回転子と、前記回転子と前記回転軸に沿う方向においてギャップを有して対向する位置に配置される固定子と、を有するアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記回転子は、
前記回転電機の周方向に配置された複数の永久磁石と、
前記複数の永久磁石の前記回転軸に沿う方向の端面のうち、前記固定子と対向しない方の端面に配置され、前記複数の永久磁石との間で磁路を形成する回転子側ヨーク部と、を有し、
前記固定子は、
前記回転軸に沿う方向の端面のうち、前記回転子と対向する方の端面が前記永久磁石と前記ギャップを有して相互に対向する位置に配置されたティース部と、
前記ティース部の前記回転軸に沿う方向の端面のうち、前記回転子と対向しない方の端面に、前記ティース部に対し絶縁及び潤滑された状態で配置され、前記ティース部との間で磁路を形成する固定子側ヨーク部と、を有し、
前記ティース部と、前記固定子側ヨーク部と、の一方は固定され、他方は前記回転軸と同軸で回動し、
前記ティース部は、前記回転電機の周方向において間隔を有して配置された複数のティース側鉄心部を有し、
前記固定子側ヨーク部の、前記複数のティース側鉄心部と対向し得る位置には、磁性を有する領域と非磁性の領域とが存在し、
前記ティース部と、前記固定子側ヨーク部との何れかが前記回転軸と同軸で回動することにより、前記複数のティース側鉄心部と対向する、前記固定子側ヨーク部の磁性を有する領域の面積が変わるようにしたことを特徴とするアキシャルギャップ型の回転電機。
【請求項2】
前記固定子側ヨーク部は、
前記磁性を有する領域に配置され、軟磁性材料を用いて形成されたヨーク側鉄心部と、
前記非磁性の領域に配置された非磁性体と、を有し、
前記固定子側ヨーク部の前記回転軸に沿う方向の端面のうち、前記ティース部と対向する側の端面は、略面一であることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型の回転電機。
【請求項3】
前記ヨーク側鉄心部の、前記ティース部と対向する位置には、前記回転電機の周方向において、凹部と凸部とが繰り返し存在し、
前記非磁性体は、前記鉄心部に形成された凹部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のアキシャルギャップ型の回転電機。
【請求項4】
前記ティース部は、前記固定子側ヨーク部の、前記回転軸に沿う方向の両端面のそれぞれに対して個別に配置され、
前記回転子は、前記固定子側ヨーク部の、前記回転軸に沿う方向の両端面のそれぞれに配置されたティース部と前記ギャップを有して相互に対向する位置のそれぞれに個別に配置され、
前記ヨーク側鉄心部の、前記ティース部と対向する位置には、前記回転電機の周方向に垂直な方向において貫通している空間が、前記回転電機の周方向において、間隔を有して繰り返し存在し、
前記非磁性体は、前記ヨーク側鉄心部に存在している前記空間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のアキシャルギャップ型の回転電機。
【請求項5】
前記ティース部と前記固定子側ヨーク部は、それぞれ、方向性電磁鋼板を用いて構成され、
前記方向性電磁鋼板の磁化容易軸方向は、前記ティース部と前記固定子側ヨーク部との間に形成される前記磁路に沿う方向であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のアキシャルギャップ型の回転電機。
【請求項6】
前記ティース部が固定され、
前記固定子側ヨーク部が前記回転軸と同軸で回動することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のアキシャルギャップ型の回転電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−85323(P2013−85323A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221811(P2011−221811)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】