説明

アクセルペダル装置

【課題】より確実にエンジンの省エネルギー化を図ること。
【解決手段】アーム部材30から突出する態様で設けたプラグ70と、ペダル部材20の操作量が予め設定した閾値を超えた高出力領域にある場合にアーム部材30のプラグ70に当接する態様でペダル部材20に配設し、ペダル部材20に対するアーム部材30の揺動を抑制する方向に弾性力を付与することによってペダル部材20の操作力を増大させる板バネ部材80とを備え、ペダル部材20の操作量が高出力領域にある場合、ペダル部材20の操作量が閾値以下の場合に比べて常にペダル部材20の操作力が高くなるように板バネ部材80に予め取付荷重を設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダル装置に関するもので、特に、建設機械のようにペダル部材を配設する床面に泥、埃、砂、雨水等の異物の付着する機会が多い車両用として好適なアクセルペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアクセルペダル装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。このアクセルペダル装置は、ベースプレートにペダル部材が揺動可能に支持されているとともに、ペダル部材にアーム部材が揺動可能に支持されている。アーム部材は、ペダル部材の裏面においてその長手方向の略中央となる部位に設けられている。このアーム部材には、ペダル部材との間に捩りバネ及びロータリポテンショメータが設けられている。捩りバネは、アーム部材の先端部をペダル部材の裏面から離隔した状態に維持するように弾性力を付与するものである。ロータリポテンショメータは、ペダル部材に対してアーム部材が揺動した場合に、揺動量に応じて検出信号を出力する。
【0003】
このアクセルペダル装置では、アーム部材の先端部がベースプレートに当接し、無負荷状態においては捩りバネの弾性力によりペダル部材の先端部がベースプレートから離隔した待機姿勢に保持される。この状態からペダル部材を押圧操作すると、捩りバネの弾性力に抗してアーム部材が揺動され、ペダル部材の先端部がベースプレートに近接する方向に揺動する。
【0004】
一方、ペダル部材への操作力を除去すると、捩りバネの弾性復元力によってアーム部材の先端部がペダル部材の裏面から離隔する方向に揺動し、これによってペダル部材の先端部がベースプレートから離隔した待機姿勢に復帰することになる。
【0005】
これらの動作の間、ペダル部材に対するアーム部材の揺動によってロータリポテンショメータから検出信号が出力され、この検出信号をペダル部材の操作量としてエンジンの回転数が制御されることになる。
【0006】
上記のように構成されたアクセルペダル装置では、ロータリポテンショメータ及び捩りバネがいずれもベースプレートから離隔した位置に配置されることになる。従って、建設機械のようにペダル部材を配設する床面に泥、埃、砂、雨水等の異物が付着する機会の多い車両に適用した場合にも、これらの異物がロータリポテンショメータや捩りバネの動作に影響を与える虞れがない。
【0007】
ところで、ペダル部材の操作量が大きくなれば、エンジンの回転数が上昇することになる。従って、例えばエンジンによって駆動される油圧ポンプを備えた建設機械にあっては、エンジンの回転数増大に伴って油圧ポンプからの吐出油量が増大することになり、車速を増大させたり油圧作業機の動作スピードを増大させることができるようになる。但し、エンジンの回転数を増大させた場合には、当然に燃料消費量も多くなる。このため、省エネルギーの観点から見れば、要求される車速や油圧作業機の動作スピードに応じてペダル部材の操作量を調節することが好ましいのは言うまでもない。特に、車速や油圧作業機の動作スピードに対する要求が小さい場合には、燃料消費量の多いエンジン回転数域とならないようにペダル部材を操作することが好ましい。
【0008】
しかしながら、従前のアクセルペダル装置は、ペダル部材の操作力が増大すると、その操作量も単純に増大するように設定されているが一般的である。このため、ペダル部材の操作によって省エネルギー化を図るためには、ペダル部材に与える操作力を常に加減しなければならないことになり、その操作がきわめて煩雑となる。さらに、現在のペダル部材の操作量とエンジンの燃料消費量との関係は、これを正確に認識することが困難であり、長年の経験と勘に頼るところが大となる。
【0009】
ここで、昨今においては、ペダル部材の操作力に変化を与えるようにしたアクセルペダル装置も提供されている。例えば特許文献2には、ペダル部材が所定角度揺動されたときにペダル部材に対して反力を及ぼす機械式の荷重発生機構を設けたものが記載されている。このアクセルペダル装置によれば、ペダル部材の操作量を増大させた場合、その途中において荷重発生機構による反力が加えられ、例えば操作力に節度感を得ることができる。このため、ペダル部材を踏み込んだ場合の操作量が所定角度に達したか否かを認識できるようになり、熟練を要さずとも燃料消費量の多いエンジン回転数域とならないようにペダル部材を操作することが可能となる。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4976166号明細書
【特許文献2】特開2002−283871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した特許文献2の荷重発生機構は、プランジャの先端がリーフスプリングの先端切欠部に係合した状態から突出する際に大きな操作力が必要になるのを利用したものであり、プランジャが先端切欠部を通過した直後にあっては操作力が急激に減少することになる。このため、プランジャが先端切欠部を通過した場合、大きな操作力を加えていたペダル部材が直ちに操作終端に達することになり、荷重発生機構が動作した時点から操作終端までのペダル部材の操作量を把握するのは難しい。しかも、プランジャを再びリーフスプリングの先端切欠部に係合させる場合には、大きな操作力を要しない。このため、一旦、プランジャが先端切欠部を通過した後にあっては、ペダル部材の操作量が小さくなった場合、現在のペダル部材の操作量が省エネルギーに適したものであるか否かを把握することが困難となる場合がある。特に、建設機械にあっては、車両に加えられる振動が大きく、かつ頻繁であるため、この振動に伴ってペダル部材に加える操作力も変化することになり、上述した問題が一層顕著となる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて、より確実にエンジンの省エネルギー化を図ることのできるアクセルペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係るアクセルペダル装置は、基端部を介してベースプレートに揺動可能に支持させたペダル部材と、先端部がペダル部材の裏面に近接離反移動する態様でペダル部材に揺動可能に支持させたアーム部材と、ペダル部材に対するアーム部材の揺動に応じて検出信号を出力する操作検出手段と、ペダル部材及びアーム部材の間に弾性力を付与することによってアーム部材の先端部をペダル部材の裏面から離隔した状態に維持するバネ部材とを備え、アーム部材の先端部をベースプレートに当接させることにより無負荷状態においてはペダル部材の先端部をベースプレートから離隔した待機姿勢に保持する一方、ペダル部材を押圧操作した場合にバネ部材の弾性力に抗してアーム部材を揺動させることによりペダル部材の先端部をベースプレートに近接する方向に揺動させるようにしたアクセルペダル装置であって、アーム部材から突出する態様で配設し、ペダル部材が押圧操作された場合にペダル部材の裏面に近接移動するプラグと、ペダル部材の操作量が予め設定した閾値を超えた高出力領域にある場合にアーム部材のプラグに当接する態様でペダル部材に配設し、ペダル部材に対するアーム部材の揺動を抑制する方向に弾性力を付与することによってペダル部材の操作力を増大させる板バネ部材とを備え、ペダル部材の操作量が前記高出力領域にある場合、ペダル部材の操作量が前記閾値以下の場合に比べて常にペダル部材の操作力が高くなるように前記板バネ部材に予め取付荷重を設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ペダル部材の操作量が高出力領域にある場合のペダル部材の操作力が常にペダル部材の操作量が閾値以下の場合に比べて高くなるように板バネ部材に予め取付荷重を設定している。従って、如何なる状況下にあっても、ペダル部材の操作力を通じてその操作量が高出力領域にあるか否かを容易に、かつ正確に認識することができるようになる。これにより、不必要時にも関わらずエンジンが燃料消費量の多い回転数域となってしまうような事態を招来する虞れがなく、確実に省エネルギー化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るアクセルペダル装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3は、本発明の実施の形態であるアクセルペダル装置を示したものである。ここで例示するアクセルペダル装置は、建設機械の運転席においてエンジンの回転数を制御すべく足踏み操作するためのもので、ベースプレート10及びペダル部材20を備えている。
【0017】
ベースプレート10は、金属製の板状部材を適宜曲折することによって成形したもので、支持部11及び軌道部12が一体に構成してある。支持部11は、建設機械において運転席の床面となる部位に取り付けられる部分である。この支持部11には、ボルト挿通孔13が設けてあるとともに、軸受部14が上方に向けて突設してある。軌道部12は、支持部11の前端部から上方に向けて前方に傾斜延在した部分である。このベースプレート10は、操作者が大きな操作力を加えた場合にも容易に変形することのないように十分な板厚を有して構成してある。
【0018】
ペダル部材20は、操作者が足踏み操作する部分であり、ベースプレート10と同様、操作者の操作力に対して十分な強度を確保して構成してある。このペダル部材20は、基端部に設けた支持軸21を介してベースプレート10の軸受部14に支持させてあり、先端部がベースプレート10の軌道部12に近接離反移動する態様で支持軸21の軸心回りに揺動することが可能である。ペダル部材20の表面には、足踏み操作中の滑りを防止するために、ブロック状の凹凸パターンを有したゴム製のカバー22が装着してある。
【0019】
一方、ペダル部材20の裏面には、長手方向の略中間となる部位にアーム部材30が設けてある。アーム部材30は、ペダル部材20の全長の1/2よりも小さい長さを有したリンク状部材であり、基端部にアーム軸31を備える一方、先端部にローラ32を備えている。アーム軸31は、図2に示すように、その一端部に検出片31aを有した軸状部材であり、アーム部材30の基端部に固着してある。ローラ32は、ローラ軸33を介してアーム部材30の基端部に回転可能に支持させた転動部材であり、ローラ軸33がアーム軸31に対して平行となるように配設してある。このアーム部材30は、ローラ32の周面がペダル部材20の裏面に近接離反移動し、かつアーム軸31が支持軸21と平行となる態様でアーム軸31を介してペダル部材20に揺動可能に取り付けてある。
【0020】
ペダル部材20とアーム部材30との間には、揺動角規制手段40、捩りバネ(バネ部材)50及びロータリポテンショメータ(操作検出手段)60が設けてある。
【0021】
揺動角規制手段40は、アーム部材30にストッパ片41を設ける一方、ペダル部材20にストッパ受面42を設けることによって構成してある。ストッパ片41は、アーム部材30の基端部においてアーム軸31の径外方向に延在する態様で突設した部分である。ストッパ受面42は、アーム部材30のストッパ片41に当接することによってペダル部材20に対するアーム部材30の揺動角を規制するものである。より具体的には、図1に示すように、ペダル部材20の先端部からアーム部材30の先端部を離隔する方向へ揺動させた場合、ペダル部材20とアーム部材30との挟角が約60°となった時点でアーム部材30のストッパ片41に当接し、以降の揺動を阻止するように構成してある。尚、図3に示すように、ペダル部材20の先端部に対してアーム部材30の先端部を近接させる方向へ揺動させる場合には、揺動角規制手段40のストッパ片41及びストッパ受面42は何等機能せず、アーム部材30がペダル部材20の裏面に当接することになる。
【0022】
捩りバネ50は、アーム部材30の基端部においてアーム軸31の周囲を巻回する態様で配設した弾性部材である。この捩りバネ50は、一方の端部51がペダル部材20に当接する一方、他方の端部52がアーム部材30に当接することによってこれらの間に弾性力を付与し、アーム部材30のストッパ片41を常時ペダル部材20のストッパ受面42に当接させた状態に維持するものである。捩りバネ50の取付荷重は、建設機械に加えられた振動によってペダル部材20が揺動することのないように適宜設定してある。
【0023】
ロータリポテンショメータ60は、図2に示すように、ペダル部材20においてアーム軸31の一端部延長上となる部位に取り付けたものである。このロータリポテンショメータ60は、ペダル部材20に対してアーム部材30が揺動した場合にアーム軸31の検出片31aを通じて相対的な揺動を検出し、その検出信号を外部出力するものである。
【0024】
一方、上記アクセルペダル装置には、図1に示すように、アーム部材30にプラグ70が設けてある一方、ペダル部材20に板バネ部材80が設けてある。プラグ70は、アーム部材30の中間部外表面に設けた凸状部材であり、ペダル部材20に対してアーム部材30の先端部が近接する方向に揺動した場合に、ペダル部材20の裏面に対向する部位に設けてある。板バネ部材80は、矩形の板状に構成した弾性部材であり、ペダル部材20に対してアーム部材30の先端部が近接する方向に揺動した場合にプラグ70によって押圧操作される部分に設けてある。より具体的には、板バネ部材80の基端部がペダル部材20の先端部裏面にスペーサ81及びシムプレート82を介してネジ止めしてある。板バネ部材80の先端部は、ペダル部材20の裏面に設けた係止部23に係止させてあり、予めペダル部材20の裏面に近接する方向に向けて撓ませてある。この板バネ部材80の初期撓み量は、板バネ部材80に予め付与する取付荷重を設定するためのもので、ペダル部材20との間に介在させるスペーサ81及びシムプレート82によって適宜調整することが可能である。すなわち、スペーサ81及びシムプレート82の板厚を増大させれば、板バネ部材80の初期撓み量も増大するため、取付荷重を大きく設定することができる。逆に、スペーサ81及びシムプレート82の板厚を減少させれば、板バネ部材80の初期撓み量も減少するため、取付荷重を小さく設定することができる。
【0025】
上記のように構成したアクセルペダル装置は、支持部11を介してベースプレート10が運転席の床面に固定され、図1に示す待機姿勢の状態で提供される。すなわち、待機姿勢においては、捩りバネ50の弾性力によりアーム部材30のストッパ片41がペダル部材20のストッパ受面42に当接し、さらに支持軸21の軸心回りにペダル部材20を適宜揺動させることにより、ローラ32を介してアーム部材30の先端部がベースプレート10の軌道部12に当接した状態となる。この待機姿勢においては、アーム部材30の先端部がペダル部材20の裏面から離隔しているため、ベースプレート10に対してペダル部材20の先端部が大きく離隔した状態となる。
【0026】
この待機姿勢からペダル部材20を押圧操作すると、図3に示すように、アーム部材30の先端部がペダル部材20に近接する方向に揺動し、この結果、ペダル部材20の先端部が捩りバネ50の弾性力に抗してベースプレート10の軌道部12に近接する方向に揺動することになる。
【0027】
ペダル部材20に対する操作力がさらに大きくなると、やがてアーム部材30に設けたプラグ70がペダル部材20に設けた板バネ部材80に当接することになる。この結果、以降、ペダル部材20の操作量を増大する場合には、板バネ部材80の弾性力を加算した操作力が必要となる。尚、本実施の形態では、ペダル部材20の操作量が約80%に達した場合にプラグ70が板バネ部材80に当接するものとして個々の寸法が設定してある。
【0028】
一方、ペダル部材20に対する操作力を除去すると、板バネ部材80及び捩りバネ50の弾性復元力によってアーム部材30の先端部がペダル部材20の裏面から離隔する方向に揺動し、図1に示すように、アーム部材30のストッパ片41がペダル部材20のストッパ受面42に当接することになる。これにより、ペダル部材20の先端部がベースプレート10から離隔した待機姿勢に復帰することになる。
【0029】
これらの動作の間、ペダル部材20に対するアーム部材30の揺動によってロータリポテンショメータ60から検出信号が出力され、この検出信号をペダル部材20の操作量としてエンジンの回転数が制御されることになる。この場合、このアクセルペダル装置では、ロータリポテンショメータ60をペダル部材20の裏面であってアーム部材30の基端部が支持される部分に取り付けるようにしているため、上述したペダル部材20及びアーム部材30の揺動の際にも常に運転席の床面から離隔した状態に維持される。同様に、ペダル部材20とアーム部材30との間に介在される捩りバネ50や板バネ部材80に関しても、常に運転席の床面から離隔した状態に維持される。従って、運転席の床面に泥、埃、砂、雨水等の異物が付着した状況下であっても、ロータリポテンショメータ60や捩りバネ50及び板バネ部材80の動作が影響を受ける虞れがなく、高い信頼性を確保することができるようになる。
【0030】
図4は、上述したアクセルペダル装置においてペダル部材20に加える操作力(踏力)とその操作量との関係を示したものである。以下、図4を適宜参照しながら、アクセルペダル装置の動作について説明し、併せて本願発明の特徴部分についてさらに詳述する。
【0031】
まず、待機姿勢から操作者がペダル部材20を押圧操作し、その操作力が所定の操作開始荷重を超えると、ペダル部材20がベースプレート10に対して近接する方向に揺動する。以降、このペダル部材20の操作量は、操作力の増大に伴って順次増大することになる(図4中のO点→A点→B点)。
【0032】
上述の操作開始荷重とは、捩りバネ50の取付荷重と、各種摺動部分を摺動させる際の摩擦抵抗力とを合計した値である。また摺動部分とは、ペダル部材20をベースプレート10に向けて揺動させる際に摺動する部分のことである。本実施の形態では、支持軸21とペダル部材20との揺動摺接部、アーム軸31とペダル部材20との揺動摺接部、ローラ軸33とローラ32との転動摺接部が摺動部分に相当する。これら摺動部分の摩擦抵抗力は、ペダル部材20の操作量を増大する場合にこれを抑制するように作用するため、操作開始荷重として捩りバネ50の取付荷重に加算されることになる。
【0033】
操作力の増大に伴ってペダル部材20の操作量が順次増大する範囲は、アーム部材30に設けたプラグ70が板バネ部材80に当接するまでの間である。この場合、ペダル部材20の操作力の変化に対する操作量の変化の割合は、捩りバネ50のバネ定数によって決定される一定の値である。
【0034】
アーム部材30のプラグ70が板バネ部材80に当接した時点からペダル部材20に対する操作力を除去すると、捩りバネ50の弾性復元力によってペダル部材20の先端部がベースプレート10から離隔した待機姿勢に復帰する。ペダル部材20の操作量が減少する際の操作力は、上述した摺動部分の摩擦抵抗力がペダル部材20の復帰移動を抑制する方向に作用することになるため、同じ操作力であってもペダル部材20の操作量を増大する場合に比べて小さい値となる(図4中のB点→G点→H点→O点)。つまり、摺動部分の摩擦抵抗力が操作量を増大させる場合と減少させる場合とでペダル部材20の操作力にヒステレシスを生じさせることになる。この結果、例えばペダル部材20の操作中に大きな振動が加えられ、これによってペダル部材20に付与した操作力が多少変化したとしても、ペダル部材20の操作量が敏感に反応して変化することはなく、ロータリポテンショメータ60の出力がチャタリングするのを防止することができるようになる。尚、この場合においても、ペダル部材20の操作力の変化に対する操作量の変化の割合は、捩りバネ50のバネ定数によって決定される一定の値であり、図4中のA点→B点へとペダル部材20の操作量を増大する際の値と同じである。
【0035】
一方、アーム部材30に設けたプラグ70が板バネ部材80に当接した以降では、板バネ部材80の取付荷重を超える操作力がペダル部材20に対してさらに加えられた場合に板バネ部材80が弾性変形する。板バネ部材80が弾性変形すると、その先端部がペダル部材20の係止部23から離隔するため、アーム部材30がペダル部材20に対して近接する方向に揺動する。以降、ペダル部材20の操作量は、操作力の増大に伴って順次増大することになる(図4中のB点→C点→D点)。
【0036】
プラグ70が板バネ部材80に当接した以降、操作力の増大に伴ってペダル部材20の操作量が順次増大する範囲は、アーム部材30がペダル部材20の裏面に当接するまでの間、つまり、ペダル部材20が操作終端に至るまでの間である。この場合、ペダル部材20の操作力の変化に対する操作量の変化の割合は、捩りバネ50及び板バネ部材80のバネ定数によって決定される一定の値であり、プラグ70が板バネ部材80に当接する以前に比べて小さな値となる。
【0037】
アーム部材30がペダル部材20の裏面に当接した時点からペダル部材20に対する操作力を除去すると、捩りバネ50及び板バネ部材80の弾性復元力によって板バネ部材80の先端部がペダル部材20の係止部23に当接した状態に復帰する(図4中のD点→E点→F点)。ペダル部材20の操作量を増大する場合と減少させる場合とで摺動部分の摩擦抵抗力が逆方向に作用するのは、板バネ部材80の先端部が係止部23から離隔する以前と同じである。従って、図4中のE点→F点へとペダル部材20の操作量が減少する際の操作力は、図4中のC点→D点へとペダル部材20の操作量を増大する際の操作力よりも小さい値となる。但し、この場合のペダル部材20の操作力の変化に対する操作量の変化の割合は、捩りバネ50及び板バネ部材80のバネ定数によって決定される一定の値であり、図4中のC点→D点へとペダル部材20の操作量を増大する際の値と同じである。
【0038】
以降、ペダル部材20に付与する操作力に応じてペダル部材20の操作量が上述した条件に応じて変化することになる。
【0039】
ここで、上述したアクセルペダル装置では、アーム部材30のプラグ70が板バネ部材80に当接した以降、板バネ部材80の取付荷重を加算した操作力が加わらない限り、ペダル部材20の操作力を増大させた場合にもペダル部材20の操作量は変化しない。つまり、ペダル部材20の操作量を増大させる場合には、その途中において操作力に大きな変化を付与することが可能となる。
【0040】
さらに、待機姿勢からアーム部材30のプラグ70が板バネ部材80に当接するまでの間に必要となる最大操作力(図4中のB点)に対して、プラグ70が板バネ部材80に当接してからペダル部材20が操作終端に至るまでの間に必要となる最小操作力(図4中のF点)を大きく設定した場合には、ペダル部材20の操作量を減少させる途中においても操作力に大きな変化を付与することが可能となる。つまり、図4中のF点からB点に至る際にも操作力が大きく減少する変化点を通過することになる。
【0041】
上述した図4中におけるB点とF点との関係は、板バネ部材80の取付荷重を調整することによって設定することが可能である。すなわち、上述した摺動部分の摩擦抵抗力を考慮した上で板バネ部材80の取付荷重を設定すれば、常にB点よりもF点が大きくなるようにその操作力を設定することが可能となる。しかも、板バネ部材80については、板厚を増大することにより、取付スペースを増大することなく大きな弾性力を設定することが可能である。
【0042】
上記のように操作力を設定したアクセルペダル装置によれば、ペダル部材20の操作量を増大させた場合、その途中において操作力が大きく増大するため、燃料消費量の多いエンジン回転数域(以下、「高出力領域」という)とならないようにペダル部材20を操作することが容易に実施可能となる。つまり、図4中においてC点を超えない範囲の操作力を付与し続ければ、ペダル部材20の操作量が高出力領域に至る虞れが全くない。
【0043】
一方、建設機械の車速を大きく増大させたり、油圧作業機の動作スピードを大きく増大させる必要がある場合には、ペダル部材20の操作力を意識的に大きく増大させれば、その操作量が高出力領域に至ることになる。この結果、エンジンの回転数が増大し、上述した要求を満たすことが可能となる。しかも、この高出力領域にあっては、ペダル部材20の操作量を維持する際の操作力が捩りバネ50と板バネ部材80とを加えたものになる。従って、ペダル部材20の操作を意識的に行わない限り、その操作量が直ちに高出力領域から逸脱することになり、不必要時に継続してエンジンの燃料消費量が増大する事態を招来することもない。
【0044】
さらに、上記アクセルペダル装置によれば、ペダル部材20の操作量が高出力領域に到達した後、ペダル部材20の操作量が変化してこれが減少した場合であっても、その操作力の大小により、現在の操作量が高出力領域であるか否かを容易に、かつ正確に判断することが可能である。つまり、待機姿勢からアーム部材30のプラグ70が板バネ部材80に当接するまでの間に必要となる最大操作力に対して、プラグ70が板バネ部材80に当接してからペダル部材20が操作終端に至るまでの間に必要となる最小操作力を大きく設定してある。従って、ペダル部材20の操作量が減少した場合、その途中において操作力が大きく減少する変化があれば、現在の操作量が高出力領域から逸脱していると認識することが可能となる。逆に、ペダル部材20の操作量が減少した場合にも、その途中において操作力が大きく減少する変化がなければ、依然としてペダル部材20の操作量が高出力領域の範囲内にあると認識することができる。
【0045】
これらの結果、上記アクセルペダル装置を適用した建設機械によれば、常に要求される車速や油圧作業機の動作スピードに応じてペダル部材20の操作量を最適に調節することが可能になり、エンジンの燃料消費量を大幅に削減できる等、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0046】
尚、上述した実施の形態では、建設機械に適用するアクセルペダル装置を例示しているが、その他の車両にももちろん適用することは可能である。
【0047】
また、上述した実施の形態では、ペダル部材の先端部に対してアーム部材の先端部が近接するように構成しているが、ペダル部材の基端部に対してアーム部材の先端部が近接するように構成することも可能である。但しこの場合には、板バネ部材及びプラグに関してもそれぞれの取付位置を変更する必要がある。
【0048】
さらに、上述した実施の形態では、ペダル部材20の操作量が約80%を超えた範囲を高出力領域として設定しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、ペダル部材20に対するアーム部材30の取付位置、アーム部材30の長さを変更すれば、ペダル部材20の操作量と高出力領域との関係を適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態であるアクセルペダル装置においてペダル部材が待機姿勢の状態を示す側面一部破断図である。
【図2】図1における II−II 線断面図である。
【図3】図1に示したアクセルペダル装置においてペダル部材が揺動した状態を示す側面一部破断図である。
【図4】図1に示したアクセルペダル装置に適用するペダル部材の操作量とペダル部材に付与する踏力との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0050】
10 ベースプレート
20 ペダル部材
21 支持軸
22 カバー
23 係止部
30 アーム部材
31 アーム軸
31a 検出片
32 ローラ
33 ローラ軸
40 揺動角規制手段
41 ストッパ片
42 ストッパ受面
50 捩りバネ
60 ロータリポテンショメータ
70 プラグ
80 板バネ部材
81 スペーサ
82 シムプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部を介してベースプレートに揺動可能に支持させたペダル部材と、
先端部がペダル部材の裏面に近接離反移動する態様でペダル部材に揺動可能に支持させたアーム部材と、
ペダル部材に対するアーム部材の揺動に応じて検出信号を出力する操作検出手段と、
ペダル部材及びアーム部材の間に弾性力を付与することによってアーム部材の先端部をペダル部材の裏面から離隔した状態に維持するバネ部材と
を備え、アーム部材の先端部をベースプレートに当接させることにより無負荷状態においてはペダル部材の先端部をベースプレートから離隔した待機姿勢に保持する一方、ペダル部材を押圧操作した場合にバネ部材の弾性力に抗してアーム部材を揺動させることによりペダル部材の先端部をベースプレートに近接する方向に揺動させるようにしたアクセルペダル装置であって、
アーム部材から突出する態様で配設し、ペダル部材が押圧操作された場合にペダル部材の裏面に近接移動するプラグと、
ペダル部材の操作量が予め設定した閾値を超えた高出力領域にある場合にアーム部材のプラグに当接する態様でペダル部材に配設し、ペダル部材に対するアーム部材の揺動を抑制する方向に弾性力を付与することによってペダル部材の操作力を増大させる板バネ部材と
を備え、ペダル部材の操作量が前記高出力領域にある場合、ペダル部材の操作量が前記閾値以下の場合に比べて常にペダル部材の操作力が高くなるように前記板バネ部材に予め取付荷重を設定したことを特徴とするアクセルペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−132871(P2008−132871A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320489(P2006−320489)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】