説明

アクチノマデュラ・ナミビエンシス由来の抗菌性・抗ウイルス性ペプチド

本発明は、アクチノマデュラ・ナミビエンシス(Actinomadura namibiensis)(DSM
6313)から得ることができる式(I):
【化1】


(式中、R3及びR4は、独立して、H又はOHであり、m及びnは、互いに独立して0、1又は2である)の化合物、細菌感染、ウイルス感染及び/又は疼痛の治療のためのその使用、並びにそれを含む薬学的組成物に関する。式(I)の化合物は、ラビリントペプチン類(labyrinthopeptins)として定義されており、ランチオニン様残基およびα二置換アミノ酸アナログを含む18個のアミノ酸の高度に架橋されたペプチド構造からなる。アミノ酸配列は、XDWXLWEXCXTGXLFAXCであり、ここで、2つのCys残基がジスルフィド架橋を形成し、各Xは、独立して、架橋形成結合に関与する非天然アミノ酸の1つを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチノマデュラ・ナミビエンシス(Actinomadura namibiensis)(DSM 6313)から単離された新規なペプチド、その製造方法、並びに細菌感染の治療、ウイルス感染の治療及び/又は疼痛の治療用の薬剤の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの高度に架橋されたペプチド、例えばイモガイ(cone snail)から単離されたコノペプチド(conopeptides:概説については、例えば非特許文献1を参照のこと)又はグラム陽性菌源由来のいわゆるランチビオティック(非特許文献2)が、文献において公知である。前記ペプチドは様々な用途を有する。ランチビオティックのナイシンは、数ある用途の中でも特に、食品防腐剤として長年使用されている。
【0003】
コノペプチドは、例えば疼痛、糖尿病、多発性硬化症及び心臓血管疾患の治療に有用であり、現在、前臨床又は臨床開発に至っている。コノペプチドの例は、α−GI(配列:ECCNPACGRHYSC**アミド化、連結性:1−3、2−4)及びα−GID(配列:IRγCCSNPACRVNNOHVC、連結性:1−3、2−4)であり、ここで、O/Hypは、ヒドロキシプロリンであり、連結性は、各々特定のジスルフィド結合に関与するシステインの位置、例えばα−GIDにおけるように第1−第3及び第2−第4を示す:
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Terlau & Olivera, Physiol. Rev. 2004, 84, 41-68
【非特許文献2】Chatterjee et al., Chem. Rev. 2005, 105, 633-683
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
今回、驚くべきことに、高度に架橋されたペプチドが、微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)から単離され得、細菌感染、ウイルス感染及び/又は疼痛の治療に有用であることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のある態様は、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I):
【化2】

[式中、
R1は、H、C(O)−(C1−C6)アルキル又はC(O)−O−(C1−C6)アルキルであり;
R2は、OH、NH2、NH−(C1−C6)アルキル、NH−(C1−C4)アルキレン−フェニル又はNH−(C1−C4)アルキレン−ピリジルであり;
R3及びR4は、互いに独立して、H又はOHであり、又はR3及びR4は、一緒になって=Oであり;
m及びnは、互いに独立して、0、1又は2である]
の化合物、又はその生理学的に許容される塩である。
【0007】
さらなる態様において、式(I)の化合物は、式(II)
【化3】

の化合物を特徴とし、式中、R1、R2、R3、R4、m及びnは、上記に定義される通りである。
【0008】
R1は、好ましくはHである。R2は、好ましくはOHである。R3及びR4は、好ましくはH又はOHであり、ここで、R3がOHである場合はR4はHであり、R3がHである場合はR4はOHであり、又はR3及びR4は、一緒になって=Oである。より好ましくは、R3及びR4は、H又はOHであり、ここで、R3がOHである場合はR4はHであり、R3がHである場合はR4はOHである。
【0009】
好ましくは、m及びnは両方とも0であるか、又はm及びnは両方とも2であるか、又はmは0でありかつnは2であるか、又はmは2でありかつnは0である。最も好ましくは、m及びnは両方とも0である。
【0010】
本発明のさらなる態様は、
R1が、Hであり;
R2が、OHであり;
R3及びR4が、H又はOHであり、ここで、R3がOHである場合はR4はHであり、R3がHである場合はR4はOHであり;
m及びnが、互いに独立して、0、1又は2であり、好ましくはm及びnが両方とも0であるか、又はm及びnが両方とも2であるか、又はmが0でありかつnが2であるか、又はmが2でありかつnが0であり、特に好ましくはm及びnが両方とも0である、
式(I)若しくは式(II)の化合物、又はその生理学的に許容される塩である。
【0011】
最も好ましくは、化合物(I)は、式(III)の化合物を特徴とする:
【化4】

【0012】
本発明の化合物のさらなるキャラクタライゼーションのために、ペプチド残基を、リボソームペプチド合成由来のそれらの可能性の高い前駆体へ変換し戻した。残基1及び10におけるα,α二置換アミノ酸は、文献に先行記載されていない。前記アミノ酸は、下記に示すように、メチレン基によって架橋されかつβ位で置換されたAla残基として記載され得る:
【化5】

【0013】
本発明は、さらに、本発明に従う式(I)、(II)及び(III)の化合物の全ての自明な化学的均等物に関する。これらの均等物は、ほんの僅かな化学的差異を示しかつ同一の薬理学的効果を有する化合物、又は穏やかな条件下で本発明に従う化合物へ変換される化合物である。前記均等物はまた、例えば式(I)、(II)及び(III)の化合物の塩、還元生成物、酸化生成物、部分加水分解処理エステル、エーテル、アセタール又はアミド、並びに当業者が標準的な方法を使用して製造し得る均等物、並びにこれに加えて、全ての光学的対掌体及びジアステレオマー及び全ての立体異性形態を含む。
【0014】
特に記載しない限り、式(I)の化合物のキラル中心は、R立体配置又はS立体配置で存在し得る。本発明は、光学的に純粋な化合物、並びに立体異性体混合物、例えばエナンチオマー及びジアステレオマー混合物、の両方に関する。
【0015】
式(I)、(II)及び(III)の化合物の生理学的に許容される塩は、Remington's Pharmaceutical Sciences (17th edition, page 1418 (1985))に記載されるように、それらの有機塩及びそれらの無機塩の両方であると理解される。それらの物理的及び化学的安定性並びにそれらの溶解性のために、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウム塩が、特に酸性基について好ましく;塩酸、硫酸若しくはリン酸、又はカルボン酸若しくはスルホン酸、例えば酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸の塩が、特に塩基性基について好ましい。
【0016】
本発明の化合物を、本明細書全体にわたってラビリントペプチン(Labyrinthopeptin)と命名している。
【0017】
本発明はまた、m及びnが互いに独立して0、1又は2である式(I)の化合物の製造方法であって、
a)アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)、又はその変異体及び/若しくは突然変異体の1つを、好適な条件下で培地において、式(I)の化合物の1つ又はそれ以上が培地中において増加するまで、発酵させること、
b)式(I)の化合物を培地から単離すること、並びに
c)必要に応じて、式(I)の化合物を誘導体化し、及び/又は必要に応じて、生理学的に許容される塩へ変換すること、
を含む方法に関する。
【0018】
本発明は、好ましくは化合物(I)が式(II)の化合物を特徴とする式(I)の化合物の製造方法に関し、より好ましくは、本発明は、m及びnが両方とも0であるか、又はm及びnが両方とも2であるか、又はmが0でありかつnが2であるか、又はmが2でありかつnが0である、式(I)又は好ましくは(II)の化合物の製造方法に関する。
【0019】
特に好ましくは、本発明は、好ましくは、化合物(I)が式(III)の化合物を特徴とする式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0020】
培地は、少なくとも1つの通常の炭素源及び少なくとも1つの窒素源並びに1又はそれ以上の通常の無機塩を含有する栄養溶液又は固形培地である。
【0021】
本発明の方法は、実験室規模(ミリリットル〜リットル規模)での発酵及び工業規模(立方メートル規模)での発酵に使用され得る。
【0022】
発酵のための好適な炭素源は、同化可能な炭水化物及び糖アルコール、例えばグルコース、ラクトース、スクロース又はD−マンニトール、並びに炭水化物含有天然物、例えば麦芽エキス又は酵母エキスである。窒素含有栄養素の例は、アミノ酸;ペプチド及びタンパク質並びにまたそれらの分解産物、例えばカゼイン、ペプトン又はトリプトン;肉エキス;酵母エキス;グルテン;例えばトウモロコシ、小麦、豆、大豆又はワタ由来の、粉砕した種子;製造アルコールからの蒸留残滓;肉粉;酵母エキス;アンモニウム塩;ニトレートである。好ましくは、窒素源は、合成的に又は生合成的に得られている1つ又はそれ以上のペプチドである。無機塩の例は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、亜鉛、コバルト及びマンガンの、塩化物、炭酸塩、硫酸塩又はリン酸塩である。微量元素の例は、コバルト及びマンガンである。
【0023】
本発明のラビリントペプチンを形成するために特に好適である条件は、以下の通りである:0.05〜5%、好ましくは0.1〜2.5%、酵母エキス;0.2〜5.0%、好ましくは0.1〜2%、カジトン(casitone);0.02〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%、CaCl2×2H2O;0.02〜1.5%、好ましくは0.05〜0.7%、MgSO4×7H2O、及び0.00001%〜0.001%シアノコバラミン。与えられるパーセンテージ値は、各場合において、栄養溶液全体の質量に基づく。
【0024】
前記微生物を、好気的に、即ち例えば必要に応じて空気又は酸素を通気させながら、振盪又は撹拌しながら振盪フラスコ又は発酵槽の液中、又は固形培地上において、培養する。微生物は、約18〜35℃、好ましくは約20〜32℃、特に27〜30℃の温度範囲で培養し得る。pH範囲は、4〜10、好ましくは6.5〜7.5とした方が良い。微生物を、一般的に、これらの条件下で、2〜10日間、好ましくは72〜168時間、培養する。有利には、数工程で微生物を培養する。即ち、最初に1つ又はそれ以上の予備培養物を液体栄養培地に調製し、次いでこれらの予備培養物を例えば1:10〜1:100の体積比で、実際の生産培地(即ち本培養)に接種する。予備培養物は、例えば前記株を栄養細胞又は胞子の形態で栄養溶液中に接種し、そしてそれを約20〜120時間、好ましくは48〜96時間増殖させることによって得られる。栄養細胞及び/又は胞子は、例えば前記株を約1〜15日間、好ましくは4〜10日間、固形又は液体栄養培地、例えば酵母寒天上において増殖させることによって、得ることができる。
【0025】
ラビリントペプチン誘導体は、公知の方法を使用し、かつ、該天然物質の化学的、物理的及び生物学的特性を考慮して、培養培地から単離しそして精製し得る。培地における又は個々の単離工程におけるそれぞれのラビリントペプチン誘導体の濃度を試験するためにHPLCを使用し、形成された物質の量を較正溶液と便宜的に比較した。
【0026】
単離のために、培養ブロス、又は固形培地と一緒の培養物を、場合により凍結乾燥し、そして有機溶媒、又は好ましくは有機溶媒を50〜90%含有する水と有機溶媒との混合液を使用して、ラビリントペプチン誘導体を凍結乾燥物から抽出する。有機溶媒の例は、メタノール及び2−プロパノールである。有機溶媒相は、本発明に従う天然物質を含有し;それは、必要に応じて真空で濃縮され、そしてさらなる精製に供される。
【0027】
本発明の1つ又はそれ以上の化合物のさらなる精製は、好適な材料、好ましくは例えばモレキュラーシーブ、シリカゲル、酸化アルミニウム、イオン交換体又は吸着樹脂又は逆相(RP)の、クロマトグラフィーによって行われる。このクロマトグラフィーは、ラビリントペプチン誘導体を分離するために使用される。ラビリントペプチン誘導体は、緩衝化された、塩基性又は酸性の水溶液又は水溶液と有機溶液との混合液を使用して、クロマトグラフィーに供される。
【0028】
水溶液又は有機溶液の混合液は、5〜99%有機溶媒、好ましくは5〜50%有機溶媒の濃度での、全ての水混和性有機溶媒、好ましくはメタノール、2−プロパノール若しくはアセトニトリル、又は有機溶媒と混和性である全ての緩衝化された水溶液であると理解される。使用される緩衝剤は、上記で挙げたものと同一である。
【0029】
ラビリントペプチン誘導体は、それらの異なる極性に基づいて、例えばMCI(吸着樹脂、三菱、日本)若しくはAmberlite XAD(TOSOHAAS)の、又は他の疎水性材料の、例えばRP−8若しくはRP−18相の、逆相クロマトグラフィーによって分離される。さらに、分離は、例えばシリカゲル、酸化アルミニウムなどの、順相クロマトグラフィーによって行われ得る。
【0030】
緩衝化された、塩基性又は酸性水溶液は、例えば0.5Mまでの濃度での水、リン酸緩衝液、酢酸アンモニウム及びクエン酸緩衝液、並びに好ましくは1%までの濃度での、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、アンモニア及びトリエチルアミン、又は当業者に公知の全ての市販の酸及び塩基であると理解される。緩衝水溶液の場合、0.1%酢酸アンモニウムが、特に好ましい。
【0031】
クロマトグラフィーは、100%水から開始しそして100%有機溶媒で終了する勾配を使用して行うことができ;クロマトグラフィーは、好ましくは5から95%へのアセトニトリルの線形勾配で行った。
【0032】
あるいは、疎水性相のクロマトグラフィー又はゲルクロマトグラフィーを行うことも可能である。ゲルクロマトグラフィーは、例えばポリアクリルアミドゲル又はコポリマーゲルで行なうことができる。上述のクロマトグラフィー工程の順序は、逆にされ得る。
【0033】
ラビリントペプチンが立体異性体として存在する場合、それらは、公知の方法を使用して、例えばキラルカラムを使用する分離によって、分離され得る。
【0034】
OH基のエステル又はエーテル誘導体への誘導体化は、自体公知の方法(J. March, Advanced Organic Chemistry, John Wiley & Sons, 4th edition, 1992)を使用して、例えば酸無水物との反応、又は炭酸ジアルキル若しくは硫酸ジアルキルとの反応によって、行われる。COOH基のエステル又はアミド誘導体への誘導体化は、自体公知の方法(J. March, Advanced Organic Chemistry, John Wiley & Sons, 4th edition, 1992)を使用して、例えばアンモニアとのそれぞれのCONH2基への反応、又は場合により活性化されたアルキル化合物とのそれぞれのアルキルエステルへの反応によって、行われる。−CH2−S−CH2−基の−CH2−S(O)−CH2−又は−CH2−S(O)2−CH2−基への酸化は、それぞれのラビリントペプチン誘導体を酸素又は空気へ曝露することで達成され得る。
【0035】
微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシスの分離株は、番号:DSM 6313で、1991年1月23日に、ブダペスト条約の規則に従って、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen [German Collection of Microorganisms and Cell Cultures] GmbH (DSMZ), Mascheroder Weg 1B, 38124 Braunschweig, Germanyに識別リファレンスFH−A 1198で寄託された。微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシスは、Wink et al., International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 2003, 53, 721-724にさらに記載されている。
【0036】
アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)の代わりに、本発明の1つ又はそれ以上の化合物を合成するその突然変異体及び/又は変異体を使用することも可能である。
【0037】
突然変異体は、本発明化合物を産生する前記生物の能力の原因である遺伝子は機能性かつ遺伝性のまま、ゲノム中の1つ又はそれ以上の遺伝子が修飾されている微生物である。
【0038】
このような突然変異体は、物理的手段、例えば紫外線若しくはX線での照射、又は化学的突然変異原、例えばメタンスルホン酸エチル(EMS);2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(MOB)若しくはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)を使用して、自体公知の様式で、又はBrock et al., “Biology of Microorganisms”, Prentice Hall, pages 238-247 (1984) に記載されるように、生産することができる。
【0039】
変異体は、前記微生物の表現型である。微生物は、それらの環境に適応する能力を有し、従って高度に発達した生理学的適応性を示す。微生物の全ての細胞は、表現型適応に関与し、変化の性質は、遺伝的に条件付けされず、変更された条件下で可逆性である(H. Stolp, Microbial ecology: organism, habitats, activities. Cambridge University Press, Cambridge, GB, page 180, 1988)。
【0040】
本発明の1つ又はそれ以上の化合物を合成する突然変異体及び/又は変異体のスクリーニングは、場合により発酵培地を凍結乾燥し、そして凍結乾燥物又は発酵ブロスを上述の有機溶媒又は水と有機溶媒との混合液で抽出し、そしてHPLC若しくはTLCにより分析することにより、又は生物学的活性を試験することにより、達成される。
【0041】
前記発酵条件は、アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)並びにその突然変異体及び/又は変異体に適用され得る。
【0042】
本発明のさらなる態様は、細菌感染、特にグラム陽性菌によって引き起こされる細菌感染の治療、ウイルス感染の治療及び/又は疼痛、特に神経因性疼痛若しくは炎症誘発疼痛の治療のための、上述の、式(I)の化合物、好ましくは式(II)又は(III)の化合物の使用である。
【0043】
上述の薬剤(薬剤又は薬学的組成物ともいう)は、上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、好ましくは1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体物質(又はビヒクル)及び/又は添加物(又は添加剤)とを含有する。
【0044】
薬剤は、例えば丸剤、錠剤、ラッカー錠剤(lacquered tablet)、コーティング錠剤、顆粒剤、ゼラチン硬及び軟カプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又はエアゾール混合物の形態で、経口投与され得る。しかし、投与はまた、例えば坐剤の形態で、直腸投与で、又は非経口的に、例えば注射用液剤若しくは注入液剤、マイクロカプセル剤、インプラント剤若しくはロッド剤(rods)の形態で、静脈内に、筋肉内に若しくは皮下に、又は例えば軟膏剤、液剤若しくはチンキ剤の形態で、経皮的に若しくは局所的に、又は例えばエアゾール剤若しくは鼻スプレー剤の形態で、他の様式で、行われ得る。
【0045】
本発明の薬剤は、自体公知でかつ当業者によく知られている様式で調製され、薬学的に許容される不活性無機及び/又は有機担体物質及び/又は添加物が、上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I)の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物に加えて使用される。丸剤、錠剤、コーティング錠剤及びゼラチン硬カプセル剤の作製には、例えば、ラクトース、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを使用することが可能である。ゼラチン軟カプセル剤及び坐剤用の担体物質は、例えば、脂肪、ワックス、半固体及び液体ポリオール、天然又は硬化油などである。液剤(例えば、注射用液剤)又は乳剤又はシロップ剤の作製用の好適な担体物質は、例えば、水、生理食塩水、アルコール、グリセリン、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース、植物油などである。マイクロカプセル剤、インプラント剤又はロッド剤用の好適な担体物質は、例えばグリコール酸と乳酸とのコポリマーである。製剤は、通常、式(I)の化合物及び/又はそれらの生理学的に許容される塩及び/又はそれらのプロドラッグを約0.5〜約90質量%含有する。薬剤中における、上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I)の有効成分、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物の量は、通常、約0.5〜約1000mg、好ましくは約1〜約500mgである。
【0046】
上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I)の有効成分、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物、並びに担体物質に加えて、製剤は、1つ又はそれ以上の添加物、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、保存剤、甘味剤、着色剤、着香剤、芳香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝剤物質、溶剤、可溶化剤、デポー効果を達成するための薬剤、浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤又は抗酸化剤を含有し得る。それらはまた、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I)の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物を、2つ又はそれ以上含有し得る。製剤が式(I)の化合物を2つ又はそれ以上含有する場合、個々の化合物の選択は、製剤の特定の全体的な薬理学的プロフィールを目標とし得る。例えば、短い作用持続期間を有する非常に強力な化合物は、より低い効力の長く作用する化合物と組み合わせられ得る。式(I)の化合物中における置換基の選択に関して許されるフレキシビリティーのために、化合物の生物学的及び物理化学的特性の多くの制御が可能となり、従って、このような所望の化合物の選択が可能となる。さらに、少なくとも1つの式(I)の化合物に加えて、製剤はまた、1つ又はそれ以上の他の治療的又は予防的有効成分を含有し得る。
【0047】
式(I)の化合物を使用する場合、用量は、広い限度範囲内で変動し得、通例でありかつ医師に公知であるように、各個体の症例における個体の状態に適合すべきである。それは、例えば使用される特定の化合物、治療しようとする疾患の性質及び重症度、投与の様式及びスケジュール、又は急性若しくは慢性の状態を治療するかどうか、又は予防を行なうのかどうかに依存する。好適な用量は、医学の分野においてよく知られた臨床的アプローチを使用して確立し得る。一般的に、体重約75kgの成人において所望の結果を達成するための一日用量は、約0.01〜約100mg/kg、好ましくは約0.1〜約50mg/kg、特に約0.1〜約10mg/kg(各場合において、体重1kg当たりのmg)である。一日用量は、特に比較的多量の投与の場合に、いくつかの、例えば2、3又は4つの部分の投与へ分割し得る。通常であるように、個体の反応に依存して、示した一日用量から上方又は下方へ外す必要があり得る。
【0048】
実施例1:アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)の凍結培養物(cryoculture)の作製
滅菌500ml エルレンマイヤーフラスコ中培地100ml(デンプン10g、酵母エキス2g、グルコース10g、グリセリン10g、コーンスティープ粉末2.5g、ペプトン2g、NaCl 1g、水道水1l中CaCO33g、滅菌前pH7.2)に、アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)を播種し、そして振盪器において120rpmで27℃にて72時間インキュベートした。引き続いて、培養物1ml及び滅菌保存溶液1ml(グリセリン20g、サッカロース10g、脱イオン水70ml)を混合し、そして−80℃で保存した。代替として、寒天上の十分に増殖させた培養物の小片を、50%滅菌グリセリン溶液1.5mlを含むCryotubes(登録商標)(Vangard International)に移し、そして液体窒素で−196℃で保存した。
【0049】
実施例2:ラビリントペプチンの作製
実施例1に記載の培地100mlを含有する滅菌500ml エルレンマイヤーフラスコに、寒天プレート上で増殖させたアクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)の培養物を播種し、そして振盪器において120rpmで27℃にてインキュベートした。72時間後、同一量の同一培地を含有するさらなるエルレンマイヤーフラスコに、各々、この前培養物2mlを播種し、そして同一条件下で168時間インキュベートした。代替として、実施例1に記載の培地100mlを含有する300ml エルレンマイヤーフラスコに、アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)の培養物を播種し、そして180rpmで25℃にてインキュベートした。72時間後、同一量の同一培地を含有するさらなるエルレンマイヤーフラスコに、各々、この前培養物5mlを播種し、そして同一条件下で168時間インキュベートした。
【0050】
実施例3:ラビリントペプチンの単離
2% Hyflo Super−cel珪藻土(Hyflo Supercell;VWR,Darmstadt,Germany)を、実施例2の培養ブロス10Lへ加え、そして培養溶液をミセル(mycel)から分離するために培養物をフィルタープレスで濾過した。濾液を、Amberlite XAD−16樹脂1Lを含有するカラム(カラム直径:5.5cm、カラムの高さ:42cm)に加え、そして脱イオン5L水及び20%メタノール水溶液5Lで洗浄した。ラビリントペプチンを、60%メタノール水溶液5L及び80%メタノール水溶液5 lで溶離した。ラビリントペプチン含有フラクションを、HPLC−DAD及びLC−ESI−MSによって確認し、水性残留物が得られるまでロータリーエバポレーターでまとめて濃縮し、そして引き続いて凍結乾燥した。粗生成物300mgが得られた。
【0051】
実施例4:ラビリントペプチンの、ダイオードアレイ検出を伴う高速液体クロマトグラフィー(HPLC−DAD)
カラム:Nucleosil 100−C18;20+125mm×4.6mm,5μ(Machery−Nagel)
移動相:
0.1%H3PO4水溶液(溶離剤A)及びアセトニトリル(溶離剤B)
溶離剤A中0%から100%への溶離剤Bの線形勾配
15分間
流量:毎分2ml
【0052】
UV/Vis吸収による検出によって、210、230、260、280、310、360、435及び500nmでピークが得られた。
【0053】
式(II)のラビリントペプチンの保持時間:7.75分。
【0054】
実施例5:ラビリントペプチンの、エレクトロスプレーイオン化質量分析を伴う高速液体クロマトグラフィー(HPLC−ESI−MS)
カラム:Purospher RP−18e;125mm×4mm,5μ(Agilent)
移動相:
水(Wasser)中0.1%トリフルオロ酢酸(溶離剤A)及び
アセトニトリル(Acetonitril)中0.1%トリフルオロ酢酸(溶離剤B)
溶離剤A中5%から100%への溶離剤Bの線形勾配
10分間
流量:毎分1.5ml。質量分析計のESインターフェースへの流量は、Tスプリッターによって毎分0.4mlへ減らした。
【0055】
210nmでのUV吸収及びESI−MS(ポジティブモード)による検出;ここで、イオントラップを質量分析器として使用した。
【0056】
式(III)のラビリントペプチンの保持時間は5.9分であった。分子質量は1922Daであった。
【0057】
実施例6:ラビリントペプチンの精製
実施例3に従って得られたラビリントペプチン粗生成物(300mg)を、ジメチルスルホキシド、メタノール及び水(1:3:6)の混合液に溶解し、そして成分を、毎分20mlの流量で定組成溶離(水+0.1%ギ酸/メタノール 35:65)を使用して、Nucleosil 100−C18カラム(粒径:10μ、カラムサイズ:250×16mm)におけるクロマトグラフィーによって分離した。フラクションをHPLC(実施例4を参照のこと)で分析した。式(III)のラビリントペプチン62mgが99%純度で得られた。
【0058】
実施例7:ラビリントペプチン(III)の一般的特性
式(III)の化合物を、空気への曝露で酸化してそれぞれのスルホキシドにした。式(III)の化合物は、2Asp−3Trp及び11Thr−12Gly間に2つのcisアミドを含有する。
【0059】
実施例8:高分解能ESI−FTICR−質量分析
メタノール中の式(III)のラビリントペプチンの溶液(c=0.2mg/ml)を、エレクトロスプレー源を備えたBruker Apex III FTICR MS(7T magnet)に2μl/分の流量でシリンジポンプを通して入れた。スペクトルを、外部較正を使用してポジティブモードで記録した。
【表1】

【0060】
実施例9:アミノ酸分析
加水分解:ラビリントペプチン(III)(0.05mg)を、6N HCl、5%フェノール(phenole)で、窒素雰囲気において110℃で24時間加水分解した。加水分解物を窒素流中において乾燥した。
【0061】
アキラルGC−MS:前記加水分解物を、ビス−(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)/アセトニトリル(Acetonitril)(1:1)と共に150℃で4時間加熱した。GC−MS実験用に、DB5溶融シリカキャピラリーを使用した(ジメチル−(5%−フェニルメチル)−ポリシロキサンでコーティングされたl=15m×0.25μm溶融シリカ、df=0.10μm;温度プログラム:T=65°/3`/6/280°C)。
【0062】
キラルGC−MS:前記加水分解物を、エタノール中の2N HCl 200μlで、110℃で30分間エステル化し、そして乾燥した。引き続いて、混合物をジクロロメタン100μl中のTFAA 25μlで、110℃で10分間アシル化し、そして乾燥した。GC−MS実験用に、溶融シリカキャピラリーを使用した(chirasil−S−Val(Machery−Nagel)でコーティングされたl=22m×0.25μm溶融シリカ、df=0.13μm;温度プログラム:T=55°/3`/3,2/180°C)。
【表2】

【0063】
実施例10:NMR分光法
2−D NMRスペクトル(COSY、TOCSY、NOESY、HSQC、HMBC)を、5mm Z−Grad三重共鳴プローブヘッドを備えたAMX 600MHz NMR分光計(Bruker,Karlsruhe,Germany)で、及び5mm Z−Gradブロードバンドインバースプローブヘッドを備えたDRX500 NMR分光計(Bruker,Karlsruhe,Germany)で測定した。下記表は、測定において得られたシグナルを示す。
【0064】
【表3】

【0065】
実施例11:ラビリントペプチン(III)のX線結晶学
結晶化条件:前記タンパク質を0.02M Tris pH8.2に溶解した(濃度7mg/ml)。タンパク質溶液と、60%エタノール、0.75%PEG6000、0.025M酢酸ナトリウム及び0.05M塩化ナトリウムの溶液との1:1混合液からの蒸気ドロップ拡散(vapour drop diffusion)によって、室温で結晶を成長させた。結晶は約1週間以内に成長した。
【0066】
測定:X線データを、回転陽極及びミラー単色化(mirror monochromated)CuKα線を備えたBruker 3サークル回折計で収集した。強度をSMART 6000 CCDエリアディテクターで収集した。
【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
実施例12:ラビリントペプチン(III)の酸化
【化6】

ラビリントペプチン(III)50mg(0.026mmol)を、室温で、DMSO1 mlに溶解し、そして1−ヒドロキシ−1−オキシド−1,2−ベンゾヨードキソール−3(1H)−オン11mg(IBX,0.039mmol)と混合した。混合物を40℃で6時間そしてさらに室温で12時間撹拌し、引き続いて、XTerra(登録商標)Prep MS C18 10μmプレカラム(Waters、寸法:19×10mm)を備えるPhenomenex Luna(登録商標)Axia 5μm C18(2)カラム(寸法:100mm×30mm)の逆相HPLCによって精製した。30分かけての水中5%から95%アセトニトリルへの勾配(0.1%酢酸アンモニウムを含有、pH7.0)を溶離剤として使用した。カラム流量(60ml/分)をフラクションに分け、そしてUV検出した。該フラクション7〜11が所望の化合物を含有した。フラクションから、凍結乾燥後、25mg(50%)が得られた。生成物を質量分析(Bruker
Daltonics MicroTof)によってキャラクタライズした。
UV:222sh、278nm
ESI−MS:MW=1920.66518[モノアイソトピック質量(mono) MW)]
分子式:C85H108N20O24S4
分子量(MW)=1922.2
【0073】
実施例13:ラビリントペプチン(III)のC末端におけるペプチド合成
【化7】

ラビリントペプチン(III)40mg(0.021mmol)を、無水(abs.)ジメチルホルムアミド2mlに溶解し、そしてジ−tert−ブチル−ジカーボネート(Boc2O)10mg(0.045mmol)及びジイソプロピルエチルアミン7mg(0.054mmol)で室温で1時間処理した。引き続いて、ベンジルアミン6.8mg(0.063mmol)及びDMF中のプロピルホスホン酸無水物の50%溶液50μl(0.072mmol)を添加した。反応混合物を、XBridge Shield(登録商標)C18 10μmプレカラム(Waters、寸法:19×10mm)を含有するWaters XBridge Shield(登録商標)5μm C18 Saeule(寸法:100mm×30mm)の逆相HPLCによって精製した。30分かけての水中5%から95%へのアセトニトリルの勾配(0.1%酢酸アンモニウムを含有、pH7.0)を溶離剤として使用した。カラム流量(60ml/分)をフラクションに分け、そしてUV検出した。フラクション30及び31を合わせ、そして所望の化合物9.6mg(22%)が得られた。生成物を質量分析(Bruker Daltonics MicroTof)によってキャラクタライズした。
UV:222sh、276nm
ESI−MS:MW=2111.79018(mono MW)
分子式:C97H125N21O25S4
分子量(MW)=2113.5
【0074】
実施例14:ラビリントペプチン(III)のN末端におけるペプチド合成
【化8】

2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)5mg(0.028mmol)を、無水ジメチルホルムアミド2mlに溶解し、そしてN−メチルモルホリン(NMM)8.6mg(0.085mmol)と混合した。混合物を室温で1時間撹拌した。n−カプロン酸3.3mg(0.028mmol)を添加し、そして混合物を室温でさらに30分間撹拌した。引き続いて、ラビリントペプチン(III)40mg(0.021mmol)を添加し、そして得られた混合物を室温でさらに2時間撹拌した。反応混合物を、XBridge Shield(登録商標)C18 10μmプレカラム(Waters,寸法:19×10mm)を備えるWaters XBridge Shield(登録商標)5μm C18 Saeule(寸法:100mm×30mm)の逆相HPLCによって精製した。30分かけての水中5%から95%アセトニトリルへの勾配(0.1%ギ酸を含有、pH2.0)を溶離剤として使用した。カラム流量(60ml/分)をフラクションに分け、そしてUV検出した。フラクション38〜40を合わせ、そして所望の化合物11.0mg(26%)が得られた。生成物を質量分析(Bruker Daltonics MicroTof)によってキャラクタライズした。
UV:220sh、278nm
ESI−MS:MW=2020.75738(mono MW)
分子式:C91H120N20O25S4
分子量(MW)=2022.3
【0075】
実施例15:抗菌活性
液体牛肉エキスブロスにおいて前記微生物を培養した後、細菌の懸濁液を、新鮮な培地で希釈することによって所定の密度へ調整した(5・105微生物/ml)。
【0076】
ラビリントペプチン(III)を、幾何学的希釈系列(ファクター2)で水に溶解及び希釈した。個々の希釈段階の溶液1.5mlを、約45℃で液体寒天(Mueller−Hinton寒天)13.5mlと混合した。
【0077】
ペトリ皿における最大化合物濃度は、通常、100mg/lであった。化合物を含まない寒天プレートをコントロールとして利用した。
【0078】
培地を冷却して固化した後、寒天プレートに、1接種スポット当たり5・104コロニー形成単位(cfu)を送り出す多点接種装置(Multipoint Inoculator)を使用して20種の異なる細菌株を同時に接種し、次いで好気条件下において37℃で17時間インキュベートした。
【0079】
インキュベーション後、細菌増殖がもはや目に見えない最小化合物濃度について、プレートを肉眼で検査した。接種スポットでの単一コロニー又はかすんだ増殖は無視した。
【0080】
抗菌効果を、試験化合物の最小阻止濃度(MIC:細菌増殖がもはや肉眼で見えない最小化合物濃度)として評価した:
【表9】

【0081】
実施例16:抗ウイルス活性
ウイルスは、生細胞においてのみ増殖し得る。従って、ウイルス研究を細胞培養物において行った。ウイルスは、感染因子としてのそれらの重要性、又は典型的な生化学的若しくは形態学的構造のいずれかの理由で、選択した。
【0082】
ラビリントペプチン(III)の希釈系列を96ウェルマイクロタイタープレートにおいて調製した。感染性ウイルスに従って、ヒーラ(Hela)又はベロ(Vero)細胞を添加し、24時間のインキュベーション内にコンフルエントな単層が得られた。3時間インキュベーションした後、それぞれのウイルスを、2日内に細胞単層を完全に破壊すると予想される濃度で細胞に添加した。培養物を、脱気したインキュベーター(空気中5%CO2)において37℃でインキュベートした。24時間後、細胞培養物における試験化合物の最大耐用量(MTD)を、顕微鏡検査によって評価した。結果を、感染していない組織コントロール及び対応する感染コントロールと比較した:
【表10】

【0083】
実施例17:神経因性疼痛活性
接触性アロディニアに対する活性を試験するために、ラビリントペプチン(III)を神経因性疼痛の坐骨神経部分損傷(spared nerve injury)(SNI)マウスモデルで研究した。全身麻酔下で、腓腹神経はインタクトのまま、成体雄性C57B6マウス(22.7g±0.26SEM)における坐骨神経の2つの主要な枝を結紮しそして切断した。接触性アロディニアを、自動von Freyテストで測定した:ダンプニードルスティックを使用して、後肢の足底皮膚を、5gまで増加する強度の圧力刺激に曝露した。動物が後肢を引込めて反応したグラムの力を接触性アロディニアの読み出しとして使用した。研究を神経損傷の7日後に6時間にわたって行い、24時間後さらに測定した。神経切断後2日以内に、接触性アロディニアが完全に発症し、そして少なくとも2週間にわたって安定したままであった。化合物を単回適用(3mg/kg)として静脈内投与した。静脈内適用についてのビヒクルとして、1:1:18(エタノール:ソルトール(Solutol):リン酸緩衝食塩水)ビヒクルを選択した。
【0084】
肢逃避反応閾値(paw withdrawal threshold)(PWT)測定値を使用して、有意な治療効果を計算し、並びに基準期間(6時間)にわたるAUC計算及び引き続いての%便益計算を行った。統計分析のために、同側後肢のPWT値を2つの様式で使用した:第1に、特定の時間(24時間の期間内)のPWT値に基づく2ウエイANOVA、及び第2に、非変換デルタAUC値|AUC1−6時間|の1ウエイANOVA。
【0085】
反復測定(repeated measures)の2ウエイ分散分析(反復要因(Repeated factor):TIME、分析変数(Analysis variable):PWT)続いての補足分析(Complementary Analysis)(要因TIMEの各レベルについての要因GROUPの効果(Winer分析)、分析変数:PWT)及び要因TIMEの各レベルについての要因TREATMENTに関する引き続いてのDunnett検定(両側比較 対 レベルVEHICLE)によって、各化合物についての静脈内適用後1〜6時間のビヒクル群に対する非常に有意な差が明らかとなった。効果は適用の24時間後なくなった。デルタ|AUC1−6時間|値を使用する1ウエイANOVAは、p<0.0001のp値を示した。Dunnett分析は両方の化合物について有意な治療効果を与えた。治療のパーセント便益を、同側ビヒクル群(0%便益)の|AUC1−6時間|値、及び反対側の3つ全ての群[100%便益=最大可能効果(maximal possible effect)]の全ての|AUC1−6時間|値を使用して評価した。これらのマージンを比較すると、ラビリントペプチン(III)は97%便益を達成した。
【0086】
結論として、本化合物は、神経因性疼痛のSNIマウスモデルにおける接触性アロディニアを有意に軽減した。
【0087】
実施例18:炎症誘発疼痛活性
炎症誘発疼痛についての典型的な読み出しである温熱性痛覚過敏に対する活性を試験するために、ラビリントペプチン(III)を、カラゲナン(CAR)誘発後肢炎症マウスモデルで研究した。
【0088】
後肢炎症の誘発:軽い全身イソフルラン麻酔下で、20μl食塩水中CAR2%(Sigma,Deisenhofen,Germany)を、雄性C57B6マウスの両側の後肢の足底面内に注射した。肢逃避反応潜時(paw withdrawal latency)(PWL)を、問題の後肢の下における赤外線熱の適切な配置を確実にするための小型カメラが取り付けられた市販の装置(Plantar Test Ugo Basile Biological Research Apparatus,Comerio,Italy)を使用して、所定の熱刺激への肢の曝露時に測定した。マウスを、全研究期間(6時間)にわたって試験ケージ内に維持した。
【0089】
温熱性痛覚過敏の測定:後肢によって赤外線に反射する持続期間を測定するタイマーを、研究者がスタートし、そして動物が冒された後肢を振っている場合、ストップした。組織損傷を防止するために、カットオフを16秒に設定した。研究を、CAR注射前及びCAR注射後6時間にわたって行った。肢逃避反応潜時(秒)を、さらなる分析についての読み出しとして使用した。
【0090】
静脈内適用についてのビヒクルとして、1:1:18(エタノール:ソルトール:リン酸緩衝食塩水)ビヒクルを選択した。
【0091】
肢逃避反応潜時(PWL)測定値を使用して、顕著な治療効果を計算し、並びに基準期間(6時間)にわたるAUC計算及び引き続いての%便益計算を行った。統計分析のために、両方の後足のPWL値を2つの様式で使用した:第1に、特定の時間(6時間の期間内)のPWL値に基づく変動の2ウエイ分析(ANOVA)、及び第2に、非変換デルタAUC値|AUC1−6時間|の1ウエイANOVA。
【0092】
反復測定の2ウエイ分散分析(反復要因:TIME、分析変数:PWL)続いての補足分析(要因TIMEの各レベルについての要因GROUPの効果(Winer分析)、分析変数:PWL)及び要因TIMEの各レベルについての要因DOSAGEに関する引き続いてのDunnett検定(両側比較 対 レベル0=VEHICLE)によって、両方の用量についての静脈内適用後1〜2時間のビヒクル群に対する非常に有意な差が明らかとなった。効果は適用の4時間後なくなった。デルタ|AUC1−6時間|値を使用する1ウエイANOVAは、p<0.0001のp値を示した。Dunnett分析は両方の用量について有意な治療効果を与えた。治療のパーセント便益を、ビヒクル群(0%便益)の|AUC1−6時間|値、及びCARが注射される前(6時間にわたる理論的ベースライン=最大可能効果=100%効果)の全ての|AUC1−6時間|値を使用して評価した。これらのマージンを比較すると、1mg/kg用量群が37%便益を達成し、10mg/kg群が34%便益を達成した。
【0093】
結論として、本化合物は、炎症誘発疼痛のCARマウスモデルにおける温熱性痛覚過敏を有意に軽減した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I):
【化1】

[式中、
R1は、H、C(O)−(C1−C6)アルキル又はC(O)−O−(C1−C6)アルキルであり;
R2は、OH、NH2、NH−(C1−C6)アルキル、NH−(C1−C4)アルキレン−フェニル又はNH−(C1−C4)アルキレン−ピリジルであり;
R3及びR4は、互いに独立して、H又はOHであり、又はR3及びR4は、一緒になって=Oであり;そして
m及びnは、互いに独立して、0、1又は2である]
の化合物、又はその生理学的に許容される塩。
【請求項2】
式(II):
【化2】

を特徴とする、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
R1がHである、請求項1または2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
R2がOHである、請求項1または3に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
R3及びR4がH又はOHであり、ここで、R3がOHである場合はR4はHであり又はR3がHである場合はR4はOHであり、又はR3及びR4が一緒になって=Oである、請求項1または4に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
R3がOHでありかつR4がHであるか、又はR3がHでありかつR4がOHである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
m及びnが両方とも0であるか、又はm及びnが両方とも2であるか、又はmが0でありかつnが2であるか、又はmが2でありかつnが0である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
m及びnが両方とも0である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
R1がHであり:R2がOHであり;R3及びR4が互いに独立してH又はOHであり、ここで、R3がOHである場合はR4はHであり、R3がHである場合はR4はOHであり;m及びnが互いに独立して0、1又は2である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
R1がHであり:R2がOHであり;R3及びR4が互いに独立してH又はOHであり、ここで、R3がOHである場合はR4はHであり、R3がHである場合はR4はOHであり;m及びnが両方とも0であるか、又はm及びnが両方とも2であるか、又はmが0でありかつnが2であるか、又はmが2でありかつnが0である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
R1がHであり:R2がOHであり;R3及びR4が互いに独立してH又はOHであり、ここで、R3がOHである場合はR4はHであり、R3がHである場合はR4はOHであり;m及びnが両方とも0である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
式(III):
【化3】

の化合物を特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
モノアイソトピック中性分子質量1922.6872Da、及び分子式C8511020244を特徴とする、アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)より単離された化合物。
【請求項14】
細菌感染、ウイルス感染及び/又は疼痛の治療用の薬剤を製造するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される成分を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
a)アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)、又はその変異体及び/若しくは突然変異体の1つを、好適な条件下で培地において、式(I)の化合物の1つ又はそれ以上が培地中において増加するまで、発酵させること、
b)式(I)の化合物を培地から単離すること、並びに
c)必要に応じて、式(I)の化合物を誘導体化し、及び/又は必要に応じて、生理学的に許容される塩へ変換すること、
を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項17】
化合物(I)が式(II)の化合物を特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
化合物(I)が式(III)の化合物を特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
m及びnが両方とも0であるか、又はm及びnが両方とも2であるか、又はmが0でありかつnが2であるか、又はmが2でありかつnが0である、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−505777(P2010−505777A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530775(P2009−530775)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008294
【国際公開番号】WO2008/040469
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】