説明

アクチノマデュラ・ナミビエンシス由来の高度に架橋したペプチド

本発明は、微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシス(Actinomadura namibiensis)(DSM6313)から得ることができる、式(I):
【化1】


[式中、{A}、{B}、{C}、R1−R6、mおよびnは本明細書中で定義されるとおりである]のいわゆるラビリントペプチン誘導体、細菌感染、ウイルス感染および/または疼痛の治療のためのその使用、それを含む薬学的組成物、プレプロ−ラビリントペプチン、プロ−ラビリントペプチン、ならびにプレプロ−ラビリントペプチンおよびプロ−ラビリントペプチンをコードするDNAに関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いくつかの高度に架橋したペプチド、例えばイモガイ(cone snail)から単離されたコノペプチド(conopeptides:概説については、例えば非特許文献1を参照のこと)又はグラム陽性菌源由来のいわゆるランチビオティクス(非特許文献2)が、文献において公知である。該ペプチドは様々な有用性を有する。例えば、ランチビオティックスのナイシンは、食品防腐剤として長年使用されている。
【0002】
コノペプチドは、例えば疼痛、糖尿病、多発性硬化症及び心臓血管疾患の治療に有用であり、現在、前臨床又は臨床開発に至っている。コノペプチドの例は、α−GI(配列:ECCNPACGRHYSC**アミド化、連結性:1−3、2−4)及びα−GID(配列:IRγCCSNPACRVNNOHVC、連結性:1−3、2−4)であり、ここで、O/Hypは、ヒドロキシプロリンであり、連結性は、各々特定のジスルフィド結合に関与するシステインの位置、例えばα−GIDにおけるように第1−第3及び第2−第4を示す:
【化1】

【0003】
ラビリントペプチンと呼ばれる高度に架橋されたペプチドの新しいグループが近年発見された(特許文献1)。このいわゆるラビリントペプチン類は、以下の式の化合物によって示されるようにそのペプチド鎖にまたがる独特な架橋モチーフを示す:
【化2】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願EP06020980.6
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Terlau&Olivera,Physiol.Rev.2004,84,41−68
【非特許文献2】Chatterjee et al.,Chem.Rev.2005,105,633−683
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、さらにラビリントペプチン類のさらに高度に架橋されたペプチドが、微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)から単離され得ることを発見した。これらの化合物は、特許出願EP06020980.6に記載したラビリントペプチン誘導体とは明確に異なるものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のある態様は、任意の立体化学形態にある、又は任意の立体化学形態の任意の比率の混合物である、式(I):
【化3】

【0008】
〔式中、
{A}は、以下から選択される基であり;
【化4】

{B}は、以下から選択される基であり;
【化5】

{C}は、以下から選択される基であり;
【化6】

【0009】
1は、R1’基または以下
【化7】

[式中、R1’は、H、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキルである]の基であり;
2は、OH、NH2、NH−(C1−C6)アルキル、NH−(C1−C4)アルキレン−フェニルまたはNH−(C1−C4)アルキレン−ピリジルであり;
3およびR4は、互いに独立してH、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH(C1−C4)アルキルもしくは(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C4)アルキル]2であるか、
またはR3およびR4は、それらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成し;
5およびR6は、互いに独立してHもしくはOHであるか、またはR5およびR6は一緒になって=Oであり;
mおよびnは、互いに独立して0、1または2である;
ただし、
【0010】
{A}が
【化8】

{B}が
【化9】

で、かつ
{C}が
【化10】

である場合は、
3およびR4は、それらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成しない〕
の化合物、またはその生理学的に許容される塩である。
【0011】
好ましくは、
{A}は、
【化11】

{B}は、
【化12】

{C}は、
【化13】

である。
【0012】
さらに好ましくは、
{A}は、
【化14】

{B}は、
【化15】

{C}は、
【化16】

であり、そして
1は好ましくはR1’基である。
【0013】
1’は、好ましくはHである。
【0014】
2は、好ましくはOHである。
【0015】
3およびR4は、好ましくは互いに独立してH、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2であるか、またはそれらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成する。より好ましくは、R3およびR4がHであるか、またはそれらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成する。最も好ましくはR3およびR4が、それらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成する。
【0016】
5およびR6は、好ましくはHまたはOHであり、R5がOHである場合はR6がHであり、およびR5がHである場合はR6がOHであるか、またはR5およびR6が一緒になって=Oである。より好ましくは、R5がOHでありR6がHであるか、またはR5がHでありR6がOHである。
【0017】
好ましくは、化合物(I)は、以下の式(II):
【化17】

〔式中、
1はR1’または以下:
【化18】

[式中、R1’はH、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキル、好ましくはHである]の基である〕
を特徴とする。
【0018】
さらに好ましくは、化合物(I)は、以下の式(III):
【化19】

〔式中、
1は、R1’または以下:
【化20】

[式中、
1’はH、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキル、好ましくはHである]の基であり;
2はOH、NH2、NH−(C1−C6)−アルキル、N[(C1−C6)−アルキル]2、NH−(C1−C4)−アルキレン−フェニルまたはNH(C1−C4)−アルキレン−ピリジル、好ましくはR2はHであり;そして
3およびR4は互いに独立してH、(C1−C6)アルキルまたは(C1−C4)−アルキレン−C(O)NH2である〕
を特徴とする。
【0019】
1がR1’である式(II)および(III)の化合物は、後にラビリントペプチンA1と名付けた。
【0020】
1が以下の基:
【化21】

である式(II)および(III)の化合物は、後にラビリントペプチンA3と名付けた。
【0021】
さらに好ましくは、化合物(I)は、以下の式(IV):
【化22】

〔式中、
1はH、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキルであり、
2はOH、NH2、NH−(C1−C6)−アルキル、N[(C1−C6)−アルキル]2、NH−(C1−C4)−アルキレン−フェニルまたはNH(C1−C4)−アルキレン−ピリジルであり、そして
3およびR4は互いに独立してH、(C1−C6)アルキルまたは(C1−C4)−アルキレン−C(O)NH2である〕
を特徴とする。
【0022】
この式(IV)の化合物は、ラビリントペプチンA2と名付けた。
【0023】
好ましくは、この式(I)の化合物は、mおよびnが0であるか、またはmおよびnが2であるか、またはmが0でありかつnが2であるか、またはmが2でありかつnが0である。最も好ましくは、mおよびnが0である。
【0024】
本発明は、さらに、本発明に従う式(I)の化合物の全ての自明な化学的均等物に関する。これらの均等物は、ほんの僅かな化学的差異を示しかつ同一の薬理学的効果を有する化合物、又は穏やかな条件下で本発明に従う化合物へ変換される化合物である。前記均等物はまた、例えば式(I)の化合物の塩、還元生成物、酸化生成物、部分加水分解処理エステル、エーテル、アセタール又はアミド、並びに当業者が標準的な方法を使用して製造し得る均等物、並びにこれに加えて、全ての光学的対掌体及びジアステレオマー及び全ての立体異性形態を含む。
【0025】
特に記載しない限り、式(I)の化合物のキラル中心は、R立体配置又はS立体配置で存在し得る。本発明は、光学的に純粋な化合物、並びに立体異性体混合物(例えばエナンチオマー混合物及びジアステレオマー混合物)の両方に関する。
【0026】
式(I)の化合物の生理学的に許容される塩は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(17th edition,page 1418(1985))に記載されるように、それらの有機塩及びそれらの無機塩の両方であると理解される。それらの物理的及び化学的安定性並びにそれらの溶解性のために、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウム塩が、特に酸性基について好ましく;塩酸、硫酸若しくはリン酸、又はカルボン酸若しくはスルホン酸、例えば酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸の塩が、特に塩基性基について好ましい。
【0027】
より好ましくは、式(I)〜(IV)の化合物は、式(V)
【化23】

の化合物について示される立体化学を特徴とする、すなわち式(I)[式中、
{A}が、
【化24】

{B}が、
【化25】

および
{C}が、
【化26】

1は、
【化27】

(式中、R1’はHである)の基であり、
2はOHであり;
3およびR4は、それらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成し;
5はHであり;
6はOHであり;かつ
mおよびnは0である]
の化合物であり:
【0028】
最も好ましくは、式(VI)
【化28】

に記載されるとおりである。
【0029】
本発明のさらなる態様は、式(VII):
【化29】

【0030】
好ましくは式(VIII):
【化30】

を特徴とする式(I)の化合物であって、式(V)および(VI)は、ラビリントペプチンA3と呼び、式(VII)および(VIII)をラビリントペプチンA1と呼ぶ。
【0031】
本発明の化合物のさらなるキャラクタライゼーションのために、ペプチド残基を、リボソームペプチド合成由来のそれらの可能性の高い前駆体へ変換し戻した。残基4及び13におけるα,α二置換アミノ酸は、文献に先行記載されていない。前記アミノ酸は、式(II)および(III)の化合物について下記に示すように、β位でヒドロキシル基が置換されたSer残基として記載され得る:
【化31】

【0032】
前出のラビリントペプチンA2に関する欧州特許出願(EP06020980.6)において、以下のリボソーム前駆体は、生合成における知識がないと想定された:
【化32】

【0033】
ラビリントペプチン(以下を参照)の生合成における新しい見識に基づいて、式(IV)の化合物の生合成前駆体は、以下のとおりに記載される:
【化33】

【0034】
本発明はまた、請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
a)培地において、アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)、又はその変異体及び/若しくは突然変異体の1つを、適した条件下、式(I)の化合物の1つ又はそれ以上が培地に生じるまで、発酵させること、
b)式(I)の化合物を培地から単離すること、並びに
c)必要に応じて、工程b)で単離された化合物を誘導体化し、および/または必要に応じて、工程b)で単離された化合物もしくは工程b)で単離された化合物の誘導体を生理学的に許容される塩へ変換すること
を含む方法に関する。
【0035】
好ましくは、工程b)において単離された化合物は、
mおよびnが0であり、
1はR1’または以下:
【化34】

(式中、R1’はHである)の基であり、
2がOHである、式(II)
を特徴とする。
【0036】
さらに好ましくは、工程b)において単離された化合物は、その後工程c)において式(IV):
〔式中、
mおよびnが両方とも0であり、
1はHであり、
2はOHであり、かつ
3およびR4は、互いに独立してH、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH(C1−C4)アルキルまたは(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C4)アルキル]2である〕の化合物に誘導体化される、ラビリントペプチンA2である。
【0037】
培地は、少なくとも1つの通常の炭素源及び少なくとも1つの窒素源並びに1又はそれ以上の通常の無機塩を含有する栄養溶液又は固形培地である。
【0038】
本発明の方法は、実験室規模(ミリリットル〜リットル規模)での発酵及び工業規模(立方メートル規模)での発酵に使用され得る。
【0039】
発酵のための好適な炭素源は、同化可能な炭水化物及び糖アルコール、例えばグルコース、ラクトース、スクロース又はD−マンニトール、並びに炭水化物含有天然物、例えば麦芽エキス又は酵母エキスである。窒素含有栄養素の例は、アミノ酸;ペプチド及びタンパク質並びにまたそれらの分解産物、例えばカゼイン、ペプトン又はトリプトン;肉エキス;酵母エキス;グルテン;例えばトウモロコシ、小麦、豆、大豆又はワタ由来の、粉砕した種子;製造アルコールからの蒸留残滓;肉粉;酵母エキス;アンモニウム塩;ニトレートである。好ましくは、窒素源は、合成的に又は生合成的に得られている1つ又はそれ以上のペプチドである。無機塩の例は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、亜鉛、コバルト及びマンガンの、塩化物、炭酸塩、硫酸塩又はリン酸塩である。微量元素の例は、コバルト及びマンガンである。
【0040】
本発明のラビリントペプチンを形成するために特に好適である条件は、以下の通りである:0.05〜5%、好ましくは0.1〜2.5%、酵母エキス;0.2〜5.0%、好ましくは0.1〜2%、カジトン(casitone);0.02〜1.0%、好ましくは0.05〜0.5%、CaCl2×2H2O;0.02〜1.5%、好ましくは0.05〜0.7%、MgSO4×7H2O、及び0.00001%〜0.001%シアノコバラミン。与えられるパーセンテージ値は、各場合において、栄養溶液全体の質量に基づく。
【0041】
前記微生物を、好気的に、即ち例えば必要に応じて空気又は酸素を通気させながら、振盪又は撹拌しながら振盪フラスコ又は発酵槽の液中、又は固形培地上において、培養する。微生物は、約18〜35℃、好ましくは約20〜32℃、特に27〜30℃の温度範囲で培養し得る。pH範囲は、4〜10、好ましくは6.5〜7.5とした方が良い。微生物を、一般的に、これらの条件下で、2〜10日間、好ましくは72〜168時間、培養する。有利には、数工程で微生物を培養する。即ち、最初に1つ又はそれ以上の予備培養物を液体栄養培地に調製し、次いでこれらの予備培養物を例えば1:10〜1:100の体積比で、実際の生産培地(即ち本培養)に接種する。予備培養物は、例えば前記株を栄養細胞又は胞子の形態で栄養溶液中に接種し、そしてそれを約20〜120時間、好ましくは48〜96時間増殖させることによって得られる。栄養細胞及び/又は胞子は、例えば前記株を約1〜15日間、好ましくは4〜10日間、固形又は液体栄養培地、例えば酵母寒天上において増殖させることによって、得ることができる。
【0042】
ラビリントペプチン誘導体は、公知の方法を使用し、かつ、該天然物質の化学的、物理的及び生物学的特性を考慮して、培養培地から単離しそして精製し得る。培地における又は個々の単離工程におけるそれぞれのラビリントペプチン誘導体の濃度を試験するためにHPLCを使用し、形成された物質の量を較正溶液と便宜的に比較した。
【0043】
単離のために、培養ブロス、又は固形培地と一緒の培養物を、場合により凍結乾燥し、そして有機溶媒、又は好ましくは有機溶媒を50〜90%含有する水と有機溶媒との混合液を使用して、ラビリントペプチン誘導体を凍結乾燥物から抽出する。有機溶媒の例は、メタノール及び2−プロパノールである。有機溶媒相は、本発明に従う天然物質を含有し;それは、必要に応じて真空で濃縮され、そしてさらなる精製に供される。
【0044】
本発明の1つ又はそれ以上の化合物のさらなる精製は、好適な材料、好ましくは例えばモレキュラーシーブ、シリカゲル、酸化アルミニウム、イオン交換体又は吸着樹脂又は逆相(RP)の、クロマトグラフィーによって行われる。このクロマトグラフィーは、ラビリントペプチン誘導体を分離するために使用される。ラビリントペプチン誘導体は、緩衝化された、塩基性又は酸性の水溶液又は水溶液と有機溶液との混合液を使用して、クロマトグラフィーに供される。
【0045】
水溶液又は有機溶液の混合液は、5〜99%有機溶媒、好ましくは5〜50%有機溶媒の濃度での、全ての水混和性有機溶媒、好ましくはメタノール、2−プロパノール若しくはアセトニトリル、又は有機溶媒と混和性である全ての緩衝化された水溶液であると理解される。使用される緩衝剤は、上記で挙げたものと同一である。
【0046】
ラビリントペプチン誘導体は、それらの異なる極性に基づいて、例えばMCI(吸着樹脂、三菱、日本)若しくはAmberlite XAD(TOSOHAAS)の、又は他の疎水性材料、例えばRP−8若しくはRP−18相の、逆相クロマトグラフィーによって分離される。さらに、分離は、例えばシリカゲル、酸化アルミニウムなどの、順相クロマトグラフィーによって行われ得る。
【0047】
緩衝化された、塩基性又は酸性水溶液は、例えば0.5Mまでの濃度での水、リン酸緩衝液、酢酸アンモニウム及びクエン酸緩衝液、並びに好ましくは1%までの濃度での、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、アンモニア及びトリエチルアミン、又は当業者に公知の全ての市販の酸及び塩基であると理解される。緩衝水溶液の場合、0.1%酢酸アンモニウムが、特に好ましい。
【0048】
クロマトグラフィーは、100%水から開始しそして100%有機溶媒で終了する勾配を使用して行うことができ;クロマトグラフィーは、好ましくは5から95%へのアセトニトリルの線形勾配で行った。
【0049】
あるいは、疎水性相のクロマトグラフィー又はゲルクロマトグラフィーを行うことも可能である。ゲルクロマトグラフィーは、例えばポリアクリルアミドゲル又はコポリマーゲルで行なうことができる。上述のクロマトグラフィー工程の順序は、逆にされ得る。
【0050】
ラビリントペプチンが立体異性体として存在する場合、それらは、公知の方法を使用して、例えばキラルカラムを使用する分離によって、分離され得る。
【0051】
OH基のエステル又はエーテル誘導体への誘導体化は、自体公知の方法(J.March,Advanced Organic Chemistry,John Wiley&Sons,4th edition,1992)を使用して、例えば酸無水物との反応、又は炭酸ジアルキル若しくは硫酸ジアルキルとの反応によって、行われる。COOH基のエステル又はアミド誘導体への誘導体化は、自体公知の方法(J.March,Advanced Organic Chemistry,John Wiley&Sons,4th edition,1992)を使用して、例えばアンモニアとのそれぞれのCONH2基への反応、又は場合により活性化されたアルキル化合物とのそれぞれのアルキルエステルへの反応によって、行われる。−CH2−S−CH2−基の−CH2−S(O)−CH2−又は−CH2−S(O)2−CH2−基への酸化は、それぞれのラビリントペプチン誘導体を酸素又は空気へ曝露することで達成され得る。ジスルフィドの還元(必要に応じて引き続くSH基のアルキル化)は、それ自体公知の方法(A.Henschen,Analysis of cyst(e)ine residues,disulfide bridges,and sulfhydryl groups in proteins:B.Wittmann−Liebold,J.Salnikov,V.A.Erdman(Eds.),Advanced Methods in Protein Microsequence Analysis,Springer,Berlin,1986,pp.244−255)を用いて、例えば、ジチオスレイトール還元法、およびヨウ化アルキルを用いるアルキル化によって実施される。R3およびR4がH、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH(C1−C4)アルキルまたは(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C4)アルキル]2である式(I)の化合物へのスルフィド還元は、R3およびR4が、それらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成している式(I)の化合物と、(C1−C6)アルキル−ハロゲン化物またはハロゲン−(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2、ハロゲン−(C1−C6)アルキレン−C(O)NH(C1−C4)アルキルまたはハロゲン−(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C4)アルキル]2とを、ジチオスレイトールの存在下で反応させることによって達成され得る(一般的な文献)。ハロゲンとは、F、Cl、BrまたはIである。
【0052】
微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシスの分離株は、番号:DSM 6313で、1991年1月23日に、ブダペスト条約の規則に従って、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen[German Collection of Microorganisms and Cell Cultures]GmbH(DSMZ),Mascheroder Weg 1B,38124 Braunschweig,Germanyに識別リファレンスFH−A 1198でHoest AG,Frankfurt,Germanyによって寄託された。微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシスは、Wink et al.,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 2003,53,721−724にさらに記載されている。
【0053】
アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)の代わりに、本発明の1つ又はそれ以上の化合物を合成するその突然変異体及び/又は変異体を使用することも可能である。
【0054】
突然変異体は、本発明化合物を産生する前記生物の能力の原因である遺伝子は機能性かつ遺伝性のまま、ゲノム中の1つ又はそれ以上の遺伝子で修飾されている微生物である。
【0055】
このような突然変異体は、物理的手段、例えば紫外線若しくはX線での照射、又は化学的突然変異原、例えばメタンスルホン酸エチル(EMS);2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(MOB)若しくはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)を使用して、自体公知の様式で、又はBrock et al.,“Biology of Microorganisms”,Prentice Hall,pages 238−247(1984)に記載されるように、生産することができる。
【0056】
変異体は、前記微生物の表現型である。微生物は、それらの環境に適応する能力を有し、従って高度に発達した生理学的適応性を示す。微生物の全ての細胞は、表現型適応に関与し、変化の性質は、遺伝的に条件付けされず、変更された条件下で可逆性である(H.Stolp,Microbial ecology:organism,habitats,activities.Cambridge University Press,Cambridge,GB,page 180,1988)。
【0057】
本発明の1つ又はそれ以上の化合物を合成する突然変異体及び/又は変異体のスクリーニングは、場合により発酵培地を凍結乾燥し、そして凍結乾燥物又は発酵ブロスを上述の有機溶媒又は水と有機溶媒との混合液で抽出し、そしてHPLC若しくはTLCにより分析することにより、又は生物学的活性を試験することにより、達成される。
【0058】
前記発酵条件は、アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)並びにその突然変異体及び/又は変異体に適用され得る。
【0059】
本発明のさらなる態様は、細菌感染、特にグラム陽性菌によって引き起こされる細菌感染の治療、ウイルス感染の治療及び/又は疼痛、特に神経因性疼痛若しくは炎症誘発疼痛の治療のための、上述の、式(I)の化合物の使用である。
【0060】
上述の薬剤(薬剤又は薬学的組成物ともいう)は、上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、好ましくは1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体物質(又はビヒクル)及び/又は添加物(又は添加剤)とを含有する。
【0061】
薬剤は、例えば丸剤、錠剤、ラッカー錠剤(lacquered tablet)、コーティング錠剤、顆粒剤、ゼラチン硬及び軟カプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又はエアゾール混合物の形態で、経口投与され得る。しかし、投与はまた、例えば坐剤の形態で、直腸投与で、又は非経口的に、例えば注射用液剤若しくは注入液剤、マイクロカプセル剤、インプラント剤若しくはロッド剤(rods)の形態で、静脈内に、筋肉内に若しくは皮下に、又は例えば軟膏剤、液剤若しくはチンキ剤の形態で、経皮的に若しくは局所的に、又は例えばエアゾール剤若しくは鼻スプレー剤の形態で、他の様式で、行われ得る。
【0062】
本発明の薬剤は、自体公知でかつ当業者によく知られている様式で調製され、薬学的に許容される不活性無機及び/又は有機担体物質及び/又は添加物が、上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I)の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物に加えて使用される。丸剤、錠剤、コーティング錠剤及びゼラチン硬カプセル剤の作製には、例えば、ラクトース、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを使用することが可能である。ゼラチン軟カプセル剤及び坐剤用の担体物質は、例えば、脂肪、ワックス、半固体及び液体ポリオール、天然又は硬化油などである。液剤(例えば、注射用液剤)又は乳剤若しくはシロップ剤の作製用の好適な担体物質は、例えば、水、生理食塩水、アルコール、グリセリン、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース、植物油などである。マイクロカプセル剤、インプラント剤又はロッド剤用の好適な担体物質は、例えばグリコール酸と乳酸とのコポリマーである。製剤は、通常、式(I)の化合物及び/又はそれらの生理学的に許容される塩及び/又はそれらのプロドラッグを約0.5〜約90質量%含有する。薬剤中における、上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I)の有効成分、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物の量は、通常、約0.5〜約1000mg、好ましくは約1〜約500mgである。
【0063】
上述の、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、式(I)の有効成分、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物、並びに担体物質に加えて、製剤は、1つ又はそれ以上の添加物、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、保存剤、甘味剤、着色剤、着香剤、芳香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝剤物質、溶剤、可溶化剤、デポー効果を達成するための薬剤、浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤又は抗酸化剤を含有し得る。それらはまた、任意の立体化学形態、又は任意の比率の任意の立体化学形態の混合物の、2つ若しくはそれ以上の式(I)の化合物、又はそれらの生理学的に許容される塩若しくは化学的均等物を含有し得る。製剤が式(I)の化合物を2つ又はそれ以上含有する場合、個々の化合物の選択は、製剤の特定の全体的な薬理学的プロフィールを目標とし得る。例えば、短い作用持続期間を有する非常に強力な化合物は、より低い効力の長く作用する化合物と組み合わせられ得る。式(I)の化合物中における置換基の選択に関して許されるフレキシビリティーのために、化合物の生物学的及び物理化学的特性の多くの制御が可能となり、従って、このような所望の化合物の選択が可能となる。さらに、少なくとも1つの式(I)の化合物に加えて、製剤はまた、1つ又はそれ以上の他の治療的又は予防的有効成分を含有し得る。
【0064】
式(I)の化合物を使用する場合、用量は、広い限度範囲内で変動し得、通例でありかつ医師に公知であるように、各個体の症例における個体の状態に適合すべきである。それは、例えば使用される特定の化合物、治療しようとする疾患の性質及び重症度、投与の様式及びスケジュール、又は急性若しくは慢性の状態を治療するかどうか、又は予防を行なうのかどうかに依存する。好適な用量は、医学の分野においてよく知られた臨床的アプローチを使用して確立し得る。一般的に、体重約75kgの成人において所望の結果を達成するための一日用量は、約0.01〜約100mg/kg、好ましくは約0.1〜約50mg/kg、特に約0.1〜約10mg/kg(各場合において、体重1kg当たりのmg)である。一日用量は、特に比較的多量の投与の場合に、いくつかの、例えば2、3又は4つの部分の投与へ分割し得る。通常であるように、個体の反応に依存して、示した一日用量から上方又は下方へ外す必要があり得る。
【実施例】
【0065】
実施例1:アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)のクライオ培養物(cryoculture)の調製
滅菌500ml エルレンマイヤーフラスコ中培地100ml(デンプン10g、酵母エキス2g、グルコース10g、グリセリン10g、コーンスティープ粉末2.5g、ペプトン2g、NaCl 1g、水道水1l中CaCO33g、滅菌前pH7.2)に、アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)を播種し、そして振盪器において120rpmで27℃にて72時間インキュベートした。引き続いて、培養物1ml及び滅菌保存溶液1ml(グリセリン20g、サッカロース10g、脱イオン水70ml)を混合し、そして−80℃で保存した。代替として、寒天上の十分に増殖させた培養物の小片を、50%滅菌グリセリン溶液1.5mlを含むCryotubes(登録商標)(Vangard International)に移し、そして液体窒素で−196℃で保存した。
【0066】
実施例2:ラビリントペプチンの調製
実施例1に記載の培地100mlを含有する滅菌500ml エルレンマイヤーフラスコに、寒天プレート上で増殖させたアクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)の培養物を播種し、そして振盪器において120rpmで27℃にてインキュベートした。72時間後、同一量の同一培地を含有するさらなるエルレンマイヤーフラスコに、各々、この前培養物2mlを播種し、そして同一条件下で168時間インキュベートした。代替として、実施例1に記載の培地100mlを含有する300ml エルレンマイヤーフラスコに、アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)の培養物を播種し、そして180rpmで25℃にてインキュベートした。72時間後、同一量の同一培地を含有するさらなるエルレンマイヤーフラスコに、各々、この前培養物5mlを播種し、そして同一条件下で168時間インキュベートした。
【0067】
実施例3:ラビリントペプチンの固相抽出
40Lのアクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM6313)の発酵が完了した後、その培養ブロスを濾過した。培養濾過液(約30L)を約3LのCHP−20P物質を充填したカラム(寸法:160×200mm)にローディングした。化合物を、5%〜95%へのイソプロパノール水溶液の勾配を使用して250ml/分の流量で溶離した。フラクションを45分間にわたり4分ごとに集めた。ラビリントペプチン含有フラクションをプールし、凍結乾燥した(フラクション8:MW=2190Da;フラクション9:MW=2190および2074Da;フラクション10−12:MW=2074Da)。
【0068】
実施例4:RP−18クロマトグラフィーを用いたラビリントペプチンA1の前精製
実施例3からのフラクション10−12(670mg)を500mlのメタノールに溶解し、Phenomenex Luna(登録商標)10μ C18(2)プレカラム(寸法21.2mm×60mm)を備えるPhenomenex Luna(登録商標)10μ C18(2)カラム(寸法50mm×250mm)にローディングした。化合物を、190ml/分の流量で40分間かけて5%から75%へのアセトニトリル水溶液の勾配で溶離した(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH9.0、30%のアンモニア水溶液を用いて調整)。フラクションを1分ごとに集めた。フラクション21−22は、所望のラビリントペプチン(MW=2074Da)を含有していた。凍結乾燥後、322mgの粗生産物を得た。
【0069】
実施例5:ラビリントペプチンA1の最終精製
実施例4からのフラクション21−22(60mg)を50mlのメタノールに溶解し、Waters XTerra(登録商標) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法19×10mm)を備えるPhenomenex Luna(登録商標)5μ C18(2)Axiaカラム(寸法30mm×100mm)にローディングした。化合物を、70ml/分の流量で40分間かけて5%から75%へのアセトニトリル水溶液の勾配で溶離した(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH4.6、酢酸水溶液を使用して調整)。溶離物をUVトリガリングを使用して10mlのフラクションに集めた。ラビリントペプチン含有フラクション(フラクション9−12)をプールした。凍結乾燥後、17mgのラビリントペプチンA1を得た。
【0070】
実施例6:RP−18クロマトグラフィーを用いたラビリントペプチンA3の前精製
実施例3からのフラクション8(約850mg)を500mlのメタノールに溶解し、Phenomenex Luna(登録商標)10μ C18(2)プレカラム(寸法21.2mm×60mm)を備えるPhenomenex Luna(登録商標)10μ C18(2)カラム(寸法50mm×250mm)にローディングした。化合物を、190ml/分の流量で40分間かけて5%から75%へのアセトニトリル水溶液の勾配で溶離した(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH7.0)。フラクションを1分ごとに集めた。フラクション19は、所望のラビリントペプチン(MW=2190Da)を含有していた。凍結乾燥後、48gの粗生産物を得た。
【0071】
実施例7:ラビリントペプチンA3の最終精製
実施例6からのフラクション19(48mg)を50mlのメタノールに溶解し、Waters XTerra(登録商標) Prep MS C18 10μプレカラム(寸法19×10mm)を備えるPhenomenex Luna(登録商標)5μ C18(2)Axiaカラム(寸法30mm×100mm)にローディングした。化合物を、70ml/分の流量で40分間かけて5%から75%へのアセトニトリル水溶液の勾配で溶離した(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH9.0、30%のアンモニア水溶液を用いて調整)。溶離物をUVトリガリングを使用してフラクションに集めた。ラビリントペプチン含有フラクション(フラクション9−12)をプールした。凍結乾燥後、12mgのラビリントペプチンA3を得た。
【0072】
実施例8:ラビリントペプチンA1およびA3の、ダイオードアレイおよび質量分析検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC−DAD−MS)によるキャラクタリゼーション
ラビリントペプチンA1およびA3を、Sample Manager、Binary Solvent ManagerおよびPDA(フォトダイオードアレイ検出器)を備えるWaters Acquity UPLC Systemで分析した。UPLCカラムとして、Waters Acquity UPLC BEH C18(1.7μ;2.1×100mm)を使用して、全ての溶媒を6.5mMの酢酸アンモニウムを使用してpH4.6に緩衝した水:アセトニトリル(9:1)の勾配を使用して、15分以内に100%アセトニトリルまで、0.6ml/分の流量で溶離した。UVスペクトルを、200〜600nMの波長でPDA検出器により記録した。質量スペクトルを、Brucker μTOF LC MSで、直交型エレクトロスプレーイオン化(orthogonal electrospray ionisation)、サンプリング速度0.5Hzおよび検出限界150−1500原子質量単位を用いて、記録した。
【0073】
実施例9:ラビリントペプチンA1のキャラクタリゼーション
ラビリントペプチンA1は、5.46分で溶離した(PDA)。このUVスペクトルは、218nm(sh)および279nmのλmaxによって特徴づけられる。
【0074】
二重荷電分子イオンが、ネガティブモードでは、m/z(I): 1035.87(4539)、1036.37(5566)、1036.87(4086)、1037.37(2296)、1037.87(1034)および1038.37(280)で観察された。ポジティブモードにおいては、m/z(I): 1037.88(2925)、1038.38(3252)、1038.88(2492)、1039.38(1396)、および1039.88(623)の二重荷電分子イオンが観察された。
【0075】
高分解能ESI−FTICR−質量分析器による、ラビリントペプチンA1のキャラクタリゼーション:メタノール中のラビリントペプチンA1溶液(c=0.2mg/ml)を、エレクトロスプレー源を備えたBruker Apex III FTICR MS (7T magnet)にシリンジポンプを通して2μl/分の流量で入れた。スペクトルを、外部校正を使用してポジティブモードで記録した。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例10:ラビリントペプチンA3のキャラクタリゼーション
ラビリントペプチンA3は、4.79分で溶離した(PDA)。このUVスペクトルは、218nm(sh)および274nm(sh)のλmaxによって特徴づけられる。
【0078】
二重荷電分子イオンが、ネガティブモードでは、m/z (I): 1093.38(1262)、1093.88(1587)、1094.39(1201)、1094.89(686)および1095.38(195)で観察された。ポジティブモードにおいては、m/z(I): 1095.40(365)、1095.91(433)および1096.41(294)の二重荷電分子イオンが観察された。
【0079】
高分解能ESI−FTICR−質量分析器による、ラビリントペプチンA3のキャラクタリゼーション(実施例9に記載したとおりの方法):
【表2】

【0080】
実施例11:ラビリントペプチンA1のアミノ酸分析
加水分解:ラビリントペプチンA1(0.05mg)を、6N HCl、5%フェノール(phenole)で、窒素雰囲気において110℃で24時間加水分解した。加水分解物を窒素流中乾燥した。
【0081】
アキラルGC−MS:前記加水分解物を、ビス−(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)/アセトニトリル(1:1)と共に150℃で4時間加熱した。GC−MS実験用に、DB5溶融シリカキャピラリーを使用した(ジメチル−(5%−フェニルメチル)−ポリシロキサンでコーティングされたl=15m×0.25μm溶融シリカ、df=0.10μm;温度プログラム:T=65°/3’/6/280℃)。
【0082】
キラルGC−MS:前記加水分解物を、エタノール中の2N HCl 200μlで、110℃で30分間エステル化し、そして乾燥した。引き続いて、混合物をジクロロメタン100μl中のトリフルオロ酢酸無水物(TFAA)25μlで、110℃で10分間アシル化し、そして乾燥した。GC−MS実験用に、溶融シリカキャピラリーを使用した(chirasil−S−Val(Machery−Nagel)でコーティングされたl=22m×0.25μm溶融シリカ、df=0.13μm;温度プログラム:T=55°/3’/3,2/180℃)。
【0083】
【表3】

【0084】
実施例12:ラビリントペプチンA1およびA3についての構造遺伝子の同定
微生物株アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)のコスミドバンクは、pWEB−コスミドベクター(Epicentre Biotechnologies,Madison,USA)をベースに、Agowa GmbH,Berlinによって作製された。フィルターは、Zehetner & Schafer,Methods Mol.Biol.2001,175,169−188に記載の方法を適用してRZPD GmbH,Berlinによって調製された。
【0085】
ラビリントペプチンA2の既知の構造をベースにして、伸長した変性プライマーをN−末端及びC−末端から推定した(Fw:5’−CAGGAAACAGCTATGACCGAYTGGWSNYTNTGGG−3’(配列番号4);Rev:5’−TGTAAAACGACGGCCAGTRCANGANGCRAANARRC−3’(配列番号5);Dabard et al.,Appl.Environ.Microbiol.2001,4111−4118.)。このプライマーの5’−伸長は、よりよい検出および取り扱いのために、予想されたPCR産物のサイズを増強するためである(PCR条件:3分 95℃;30×(60秒 95℃;30秒 50℃;60秒 72℃)7分 72℃;Taq−ポリメラーゼ)。PCR産物をゲル精製し、ベクターpDrive(Qiagen)中にクローニングした。配列決定により、A2遺伝子の中央から、18ヌクレオチド長の配列が得られた(AGTGCTGTAGCACGGGAA、配列番号6)。この18ヌクレオチド長の公知の配列をベースにして、2工程のPCRによりより多くの配列情報を得た。最初の工程において、A2のC末端の変性逆方向(rev)プライマー(5’−RCARCANGCRAANARRCTTCC−3’、配列番号7)および非特異的順方向(fw)プライマー(5’−CACGGTACCTAGACTAGTGACCAAGTGCGCCGGTC−3’、配列番号8)で、単一特異的プライマーPCRを行った(PCR−条件:3分 95℃;10×(45秒 95℃;45秒 38℃;3.5分 72℃);30×(45秒 95℃;45秒 52℃;3.5分 72℃) 5分 72℃;Taq−ポリメラーゼ)。プライマーを消化するためのエキソヌクレアーゼI消化(5μl PCR−サンプル+0.5μl エキソヌクレアーゼ−I(20U/μl);15分 37℃;15分 80℃ 熱失活)後、PCRサンプルを第2のPCR(PCR−条件:3分 95℃;30×(45秒 95℃;45秒 56℃;3.5分 72℃) 5分 72℃;Taq−ポリメラーゼ)のためのテンプレートとして用いた。第2のPCRを、最初のPCRからの非特異的fw−プライマーおよび特異的rev−プライマーからなるプライマー対(公知の18ヌクレオチド(5’−CTTCCCGTGCTACAGCACTCCC−3’、配列番号9)を含む)を用いてnested−PCR様式で行った。0.4kbpの産物をゲル精製し、pDrive中にクローニングした。配列決定により、A2のC末端の推定アミノ酸配列が示された。この0.4kbpの配列から、Dig標識されたプローブをPCRによって構築した(Fw:5’−ATGGACCTCGCCACGGGCTC−3’、配列番号10;5’−CTTCCCGTGCTACAGCACTCCC−3’、配列番号11)。このDig標識されたプローブを用いてハイブリダイゼーションによりフィルターをスクリーニングし、アルカリホスファターゼで標識された抗Dig抗体による検出を行った。この方法において、1つのポジティブコスミドを得、配列決定した。
【0086】
配列データをローカルblastおよびframeplotにより分析した。この分析により、ラビリントペプチンA2の構造遺伝子を含む、以下のオープンリーディングフレーム(orf)が得られた:
【化36】

【0087】
このorf内で、以下の配列は、プレプロ−ラビリントペプチンA2(停止コドンTGAが続くプロペプチドコード配列が続くリーダー配列)の構造遺伝子を示している:
【化37】

【0088】
配列番号13に示されるようなDNA配列の翻訳により、以下のプレプロ−ラビリントペプチンA2のアミノ酸配列(配列番号14)およびプロ−ラビリントペプチンA2のアミノ酸配列(配列番号15)が得られた:
【化38】

【0089】
このプロペプチド配列は、微生物アクチノマデュラ・ナミビエンシス(DSM 6313)の酵素による翻訳後修飾によって、ラビリントペプチンA2中に形質転換される。
【0090】
実施例13:ラビリントペプチンA1およびA3の構造決定
A2遺伝子の上流領域は、ラビリントペプチンA2の構造遺伝子に対して高い相同性を有する別の小さなorfをはっきりと示している。このオープンリーディングフレーム(orf)は、ラビリントペプチンA1およびA3の構造遺伝子を含んでいた。ラビリントペプチンA1についてのorfは、以下の遺伝子配列を有する:
【化39】

【0091】
このorf内で、以下の配列は、プレプロ−ラビリントペプチンA1およびA3(停止コドンTGAが続くプロペプチドコード配列が続くリーダー配列)の構造遺伝子を示している:
【化40】

【0092】
配列番号17に示されるようなDNA配列の翻訳により、以下のプレプロ−ラビリントペプチンA1のアミノ酸配列(配列番号18)およびプロ−ラビリントペプチンA1のアミノ酸配列(配列番号19)が得られた:
【化41】

【0093】
このアミノ酸配列は、ラビリントペプチンA1のアミノ酸分析およびMS分析の結果に基づく、ラビリントペプチンA1の推定アミノ酸組成(前出)と一致した。側鎖の翻訳後修飾は、ラビリントペプチンA2の翻訳後修飾と類似していると推論された。アミノ酸の立体化学は、アミノ酸分析(実施例11)から得られた。最終的に、デヒドロ酪酸を与えるスレオニン(Thr)残基の脱水は、高分解能MSから算出された実験的分子式に合致すると推定された。類似のラビリントペプチンA2の翻訳後修飾されたアミノ酸の立体化学に基づいて、式(VIII)はラビリントペプチンA1に誘導される。
【0094】
前出の質量分析により、ラビリントペプチンA1とA3の間の差異はAspであると示唆された。このことは、ラビリントペプチンA1のプロテアーゼ切断側前方の1位にAspを含むコードされた配列によって確認された。そのラビリントペプチンA1とA3が、リーダー配列のプロテアーゼ切断においてのみ異なり、同じ遺伝子によってコードされるという仮定の下で、さらなるAspはラビリントペプチンA3のN−末端にある。この方法で、式(V)はラビリントペプチンA3に誘導された。ラビリントペプチンA2と類似する翻訳後修飾されたアミノ酸の立体化学に基づいて、式(VI)はラビリントペプチンA3に誘導された。
【0095】
実施例14:ラビリントペプチンA1のジスルフィド架橋の切断および引き続くヨウ化メチルでのアルキル化
【化42】

ラビリントペプチンA1(50mg、0.024mmol)をメタノール(3ml)に溶解し、ジチオスレイトール溶液を室温で加えた(1ml、1mlの水に40mg NaHCO3を溶解した溶液中の75mgのジチオスレイトールから新たに調製した)。この混合物を60℃で1時間攪拌した。その後室温に冷却し、ヨウ化メチル(50μl、0.80mmol)を加えた。室温で4時間後、混合物を濾過し、Waters XTerra(登録商標) Prep MS C18 10μmプレカラム(寸法19mm×10mm)を備えたPhenomenex Luna(登録商標) Axia 5μm C18(2)カラム(寸法100mm×30mm)を使用して逆相HPLCにより精製した。30分以内の5%から95%への水中アセトニトリルの勾配を行なった(緩衝液:pH2.0、ギ酸で調整)。流量は60ml/分であり、ピークをUVにより分画した。フラクション12と13を合わせ、凍結乾燥後、23.1mg(45.5%)の所望の化合物を得た。生成物をUV分光法および質量分析法(Bruker Daltonics MicroTof)でキャラクタリゼーションした。
RTmin=5.46分(PDA;実施例8と同様のLC方法)
UV(λmax):217nm(sh)、279nm
ESI−MS(neg):[M−2H]2-=1050.894
実験的な中性モノアイソトピック質量 [M]=2103.802
9412523254について算出した中性モノアイソトピック質量: 2103.810
分子式:C9412523254
化学分子量=2105.44。
【0096】
実施例15:ラビリントペプチンA1のジスルフィド架橋の切断および引き続くヨードアセトアミドでのアルキル化
ラビリントペプチンA1(50mg、0.024mmol)をメタノール(3ml)に溶解し、ジチオスレイトール溶液を室温で加えた(1ml、1mlの水に40mg NaHCO3を溶解した溶液中の70mgのジチオスレイトールから新たに調製した)。この混合物を60℃で1時間攪拌した。その後室温に冷却し、ヨードアセトアミド(40mg、0.216mmol)を加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。溶液を濾過し、Waters XTerra(登録商標) Prep MS C18 10μmプレカラム(寸法19mm×10mm)を備えたPhenomenex Luna(登録商標) Axia 5μm C18(2)カラム(寸法100mm×30mm)を使用して逆相HPLCにより精製した。30分以内の5%から95%への水中アセトニトリルの勾配を行なった(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH4.6、酢酸で調整)。流量は60ml/分であり、ピークをUVにより分画した。以下の化合物を得た:
ビス−アセトアミド化ラビリントペプチンA1:
【化43】

【0097】
フラクション7と8を合わせ、凍結乾燥後、13.3mg(25.2%)の所望の化合物を得た。生成物をUV分光法および質量分析法(Bruker Daltonics MicroTof)でキャラクタリゼーションした。
RTmin=5.09分(PDA;実施例8と同様のLC方法)
UV(λmax): 218nm(sh)、280nm
ESI−MS (neg): [M−2H]2-=1093.9022
実験的な中性モノアイソトピック質量、[M]=2189.819
9612725274について算出した中性モノアイソトピック質量: 2189.822
分子式: C9612725274
化学分子量=2191.49。
【0098】
モノ−アセトアミド化ラビリントペプチンA1:
【化44】

フラクション10と11を合わせ、凍結乾燥後、5.3mg(10.3%)の所望の化合物を得た。生成物をUV分光法および質量分析法(BrukerDaltonics MicroTof)でキャラクタリゼーションした。
RTmin=5.31分(PDA;実施例8と同様のLC方法)
UV(λmax):217nm(sh)、280nm
ESI−MS(neg):[M−2H]2-=1065.390
実験的な中性モノアイソトピック質量 [M]=2132.794
9412424264について算出した中性モノアイソトピック質量: 2132.800
分子式: C9412424264
化学分子量=2134.44。
【0099】
実施例16:Boc−保護ラビリントペプチンA1の合成
【化45】

ジメチルホルムアミド(3ml)中のラビリントペプチンA1のの溶液(50mg、0.024mmol)に、ジ−tert−ブチル−ジカルボナート(11mg、0.048mmol)およびn−エチルジイソプロピルアミン(6mg、0.048mmol)を室温で加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。その後Waters XTerra(登録商標) Prep MS C18 10μmプレカラム(寸法19mm×10mm)を備えたPhenomenex Luna(登録商標) Axia 5μm C18(2)カラム(寸法100mm×30mm)を使用して逆相HPLCにより精製した。30分以内の5%から95%への水中アセトニトリルの勾配を行なった(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH7.0)。流量は60ml/分であり、ピークをUVにより分画した。フラクション4〜7を合わせ、凍結乾燥後、21.4mg(40.8%)の所望の化合物を得た。生成物をUV分光法および質量分析法(Bruker Daltonics MicroTof)でキャラクタリゼーションした。
RTmin=5.30分(PDA;実施例8と同様のLC方法)
UV(λmax):219nm(sh)、278nm
ESI−MS(neg):[M−2H]2-=1085.895
実験的な中性モノアイソトピック質量[M]=2173.805
9712723274について算出した中性モノアイソトピック質量:2173.815分子式:C9712723274
化学分子量=2174.49。
【0100】
実施例17:ラビリントペプチンA1のベンジル誘導体
ジメチルホルムアミド(2ml)中のラビリントペプチンA1(50mg、0.024mmol)の溶液に、ジ−tert−ブチル−ジカルボナート(10mg、0.046mmol)およびn−エチルジイソプロピルアミン(7mg、0.054mmol)を室温で加えた。室温での1時間後、ラビリントペプチンA1は完全になくなった。ベンジルアミン(6.8mg、0.063mmol)およびn−プロピルホスホン酸無水物(T3P(登録商標)、50μl、0.072mmol、DMF中50%)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。その後Waters XTerra(登録商標)Prep MS C18 10μmプレカラム(寸法19mm×10mm)を備えたPhenomenex
Luna(登録商標)Axia 5μm C18(2)カラム(寸法100mm×30mm)を使用して逆相HPLCにより精製した。30分以内の5%から95%への水中アセトニトリルの勾配を行なった(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH7.0)。流量は60ml/分であり、ピークをUVにより分画した(220nm)。以下の2つの化合物を得た:
【0101】
ラビリントペプチンA1のモノベンジル誘導体:
【化46】

フラクション7と8を合わせ、凍結乾燥後、10.4mg(19.1%)の所望の化合物を得た。生成物をUV分光法および質量分析法(Bruker Daltonics MicroTof)でキャラクタリゼーションした。
RTmin=7.03分(PDA;実施例8と同様のLC方法)
UV(λmax):217nm(sh)、275nm
ESI−MS(neg):[M−2H]2-=1130.427
実験的な中性モノアイソトピック質量[M]=2262.868
10413424264について算出した中性モノアイソトピック質量:2262.878
分子式:C10413424264
化学分子量=2264.63。
【0102】
ラビリントペプチンA1のビス−ベンジル誘導体:
【化47】

フラクション13と14を合わせ、凍結乾燥後、9.9mg(17.5%)の所望の化合物を得た。生成物をUV分光法および質量分析法(Bruker Daltonics MicroTof)でキャラクタリゼーションした。
RTmin=8.31分(PDA;実施例8と同様のLC方法)
UV(λmax):214nm(sh)、276nm
ESI−MS(pos):[M+2(NH4)]2+=1194.002
実験的な中性モノアイソトピック質量[M]=2351.937
11114125254について算出した中性モノアイソトピック質量:2351.941
分子式:C11114125254
化学分子量=2353.77。
【0103】
実施例18:ラビリントペプチンA1のN−末端におけるアシル化反応
【化48】

ジメチルホルムアミド(2ml)中の2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT、5mg、0.028mmol)の溶液に、n−メチルモルホリン(8.6mg、0.085mmol)を室温で加えた。室温で1時間経過後、n−ヘキサンカルボン酸(3.3mg、0.028mmol)を加えた。混合物を30分間攪拌した後、ラビリントペプチンA1(50mg、0.024mmol)を加え、その後室温で2時間攪拌した。混合物を、Waters XBridge Shield(登録商標)C18 10μmプレカラム(寸法19mm×10mm)を備えるWaters XBridge Shield(登録商標)5μm C18カラム(寸法100mm×30mm)を用いた逆相HPLCによって精製した。30分以内の5%から95%への水中アセトニトリルの勾配を行なった(緩衝液:0.1%酢酸アンモニウム、pH7.0)。流量は60ml/分であり、ピークをUVにより分画した(220nm)。フラクション39より、凍結乾燥後、2.0mg(3.8%)の所望の化合物を得た。生成物をUV分光法および質量分析法(Bruker Daltonics MicroTof)でキャラクタリゼーションした。
RTmin=5.41分(PDA;実施例8と同様のLC方法)
UV(λmax):216nm(sh)、266nm
ESI−MS(neg):[M−2H]2-=1084.906
実験的な中性モノアイソトピック質量[M]=2171.827
について算出した中性モノアイソトピック質量C9812923264:2171.836分子式:C9812923264
化学分子量=2173.52。
【0104】
実施例19:ラビリントペプチンおよび誘導体の抗菌活性
化合物を最終濃度が1mg/mlとなるように10%MeOHを含む水に溶解した。バイオアッセイ用に24×24cmサイズの滅菌Nuncプレートを用いた。1つのプレートについて200mlの寒天を使用した。寒天を、オートクレービング後55℃に冷却し、2〜4mlの試験生物の培養懸濁液をプレーティング前に加えた。各プレートに、直径6mmの64フィルタープレートを加えた。各フィルターに20μlの試験溶液を加え、28℃または37℃で1〜3日間インキュベートした。この阻害ゾーンをmmで報告した。この方法の詳細な記載については、Bauer et al.,Amer.J.Clin.Pathol.1966,45,493−496;Mueller & Melchinger,Methoden in der Mikrobiologie,Franckhsche Verlagshandlung,Stuttgart(1964);Mueller & Hinton,Proc.Soc.Expt.Biol.Med.1941,48,330−333を参照のこと。
【0105】
【表4】

【0106】
実施例20:神経障害性疼痛(neuropathic pain)活性
接触性アロディニアに対する活性を試験するために、ラビリントペプチンA1を神経障害性疼痛の坐骨神経部分損傷(spared nerve injury)(SNI)マウスモデルで研究した。全身麻酔下で、腓腹神経はインタクトのまま、成体雄性C57B6マウス(22.8g±0.35SEM)における坐骨神経の2つの主要な枝を結紮しそして切断した。接触性アロディニアを、自動von Freyテストで測定した:ダンプニードルスティックを使用して、後肢の足底皮膚を、5gまで増加する強度の圧力刺激に曝露した。動物が後肢を引込めて反応したグラム力を接触性アロディニアの読み出しとして使用した。研究を神経損傷の7日後に6時間にわたって行い、24時間後さらに測定した。神経切断後2日以内に、接触性アロディニアが完全に発症し、そして少なくとも2週間にわたって安定したままであった。化合物を単回投与(3mg/kg)として静脈内投与した。静脈内投与のビヒクルとして、1:1:18(エタノール:ソルトール(Solutol):リン酸化緩衝生理食塩水)ビヒクルを選択した。
【0107】
肢逃避反応閾値(paw withdrawal threshold)(PWT)測定値を使用して、有意な治療効果を計算し、そして基準期間(6時間)にわたるAUC計算及び引き続いての%便益計算を行った。統計分析のために、同側後肢のPWT値を2つの様式で使用した:第1に、特定の時間(24時間の期間内)のPWT値に基づく2ウエイANOVA、及び第2に、非変換デルタAUC値|AUC1−6時間|の1ウエイANOVA。
【0108】
反復測定(repeated measures)の2ウエイ分散分析(反復要因(Repeated factor):TIME、分析変数(Analysis variable):PWT)続いての補完的分析(Complementary Analysis)(要因TIMEの各レベルについての要因GROUPの効果(Winer分析)、分析変数:PWT)及び要因TIMEの各レベルについての要因TREATMENTに関する引き続いてのDunnett検定(両側比較 対 レベルVEHICLE)によって、各化合物についての静脈内投与後1〜6時間のビヒクル群に対する高度に有意な差が明らかとなった。効果は投与の24時間後なくなった。デルタ|AUC1−6時間|値を使用する1ウエイANOVAは、p<0.0001のp値を示した。Dunnett分析はラビリントペプチンA1について有意な治療効果を与えた。治療のパーセント便益を、同側ビヒクル群(0%便益)の|AUC1−6時間|値、及び反対側の3つ全ての群[100%便益=最大可能効果(maximal possible effect)]の全ての|AUC1−6時間|値を使用して評価した。これらのマージンを比較すると、ラビリントペプチンA1は95%便益を達成した。
【0109】
結論として、式(I)の化合物は、神経障害性疼痛のSNIマウスモデルにおける接触性アロディニアを有意に軽減した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の立体化学形態にある、又は任意の立体化学形態の任意の比率の混合物である、式(I):
【化1】

〔式中、
{A}は、以下から選択される基であり;
【化2】

{B}は、以下から選択される基であり;
【化3】

{C}は、以下から選択される基であり;
【化4】

1は、R1’基または以下
【化5】

[式中、R1’は、H、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキルである]の基であり;
2は、OH、NH2、NH−(C1−C6)アルキル、NH−(C1−C4)アルキレン−フェニルまたはNH−(C1−C4)アルキレン−ピリジルであり;
3およびR4は、互いに独立してH、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH(C1−C4)アルキルもしくは(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C4)アルキル]2であるか、
またはR3およびR4は、それらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成し;
5およびR6は、互いに独立してHもしくはOHであるか、またはR5およびR6は一緒になって=Oであり;
mおよびnは、互いに独立して0、1または2である;
ただし、
{A}が
【化6】

{B}が
【化7】

で、かつ
{C}が
【化8】

である場合は、
3およびR4は、それらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成しない〕
の化合物、またはその生理学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)の化合物であって、
式中、
{A}は、
【化9】

{B}は、
【化10】

{C}は、
【化11】

である、上記化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、
式中、
{A}は、
【化12】

{B}は、
【化13】

{C}は、
【化14】

であり、そして
1は好ましくはR1’基である、化合物。
【請求項4】
1’がHである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
2がOHである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
3およびR4が互いに独立してH、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2であるか、またはそれらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
3およびR4がHであるか、またはそれらが結合するS原子と一緒になってジスルフィド基S−Sを形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
5およびR6が、HもしくはOHであり、ここでR5がOHである場合はR6がHであり、R5がHである場合はR6がOHであり、またはR5およびR6が一緒になって=Oである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
5がOHでありR6がHであり、R5がHでありR6がOHである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
以下の式(II):
【化15】

〔式中、
1は、R1’または以下:
【化16】

[式中、R1’はH、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキル、好ましくはHである]の基である〕
を特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
以下の式(III):
【化17】

〔式中、
1は、R1’または以下:
【化18】

[式中、
1’はH、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキル、好ましくはHである]の基であり;
2はOH、NH2、NH−(C1−C6)−アルキル、N[(C1−C6)−アルキル]2、NH−(C1−C4)−アルキレン−フェニルまたはNH(C1−C4)−アルキレン−ピリジル、好ましくはR2はHであり;そして
3およびR4は互いに独立してH、(C1−C6)アルキルまたは(C1−C4)−アルキレン−C(O)NH2である〕
を特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
以下の式(IV):
【化19】

〔式中、
1はH、C(O)−(C1−C6)アルキルまたはC(O)−O−(C1−C6)アルキルであり、
2はOH、NH2、NH−(C1−C6)−アルキル、N[(C1−C6)−アルキル]2、NH−(C1−C4)−アルキレン−フェニルまたはNH(C1−C4)−アルキレン−ピリジルであり、そして
3およびR4は互いに独立してH、(C1−C6)アルキルまたは(C1−C4)−アルキレン−C(O)NH2である〕
を特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
mおよびnが0であるか;またはmおよびnが2であるか;またはmが0でありかつnが2であるか;またはmが2でありかつnが0である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項14】
mおよびnが0である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項15】
a)培地において、アクチノマデュラ・ナミビエンシス株(DSM 6313)、又はその変異体及び/若しくは突然変異体の1つを、適した条件下、式(I)の化合物の1つ又はそれ以上が培地に生じるまで、発酵させること、
b)式(I)の化合物を培地から単離すること、並びに
c)必要に応じて、工程b)で単離された化合物を誘導体化し、および/または必要に応じて、工程b)で単離された化合物もしくは工程b)で単離された化合物の誘導体を生理学的に許容される塩に変換すること、
を含む、請求項1に記載の式(I)の化合物を製造する方法。
【請求項16】
工程b)で単離された化合物が、式(II):
【化20】

[式中、
mおよびnは0であり、
1はR1’または以下:
【化21】

(式中、R1’はHである)の基であり、
2はOHである]
を特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程b)で単離された化合物がラビリントペプチンA2であり、そしてここで工程c)において、該化合物が式(IV):
【化22】

〔式中、
mおよびnが両方とも0であり、
1はHであり、
2はOHであり、かつ
3およびR4は、互いに独立してH、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH2、(C1−C6)アルキレン−C(O)NH(C1−C4)アルキルまたは(C1−C6)アルキレン−C(O)N[(C1−C4)アルキル]2である〕
で特徴づけられる化合物に誘導体化される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
細菌感染、ウイルス感染および/または疼痛の治療用の薬剤を製造するための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される成分を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
配列番号13に示される核酸配列を有するプレプロ−ラビリントペプチンA2をコードするDNA。
【請求項21】
配列番号14に示されるアミノ酸配列を有する、プレプロ−ラビリントペプチンA2。
【請求項22】
配列番号15に示されるアミノ酸配列を有する、プロ−ラビリントペプチンA2。
【請求項23】
配列番号17に示される核酸配列を有する、プレプロ−ラビリントペプチンA1をコードするDNA。
【請求項24】
配列番号18に示されるアミノ酸配列を有する、プレプロ−ラビリントペプチンA1。
【請求項25】
配列番号19に示されるアミノ酸配列を有する、プロ−ラビリントペプチンA1。

【公表番号】特表2011−516048(P2011−516048A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502252(P2011−502252)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001982
【国際公開番号】WO2009/121483
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】