アクチビン−ActRIIaアンタゴニストおよび骨成長を促進するための使用
【課題】骨成長および石灰化を促進する組成物および方法を提供すること。
【解決手段】一定の態様において、本発明は、骨成長を促進し、骨密度を高める組成物および方法を提供する。本開示は一部においては、アクチビンアンタゴニスト活性またはActRIIaアンタゴニスト活性を有する分子(「アクチビンアンタゴニスト」および「ActRIIaアンタゴニスト」)を用いて、骨密度を高め、骨成長を促進し、および/または骨強度を高めることができることを示す。特に本開示は、可溶形態のActRIIaが、インビボにおいてアクチビン−ActRIIaシグナル伝達の阻害物質としての役割を果たし、骨密度、骨成長および骨強度の増加を促進することを示す。
【解決手段】一定の態様において、本発明は、骨成長を促進し、骨密度を高める組成物および方法を提供する。本開示は一部においては、アクチビンアンタゴニスト活性またはActRIIaアンタゴニスト活性を有する分子(「アクチビンアンタゴニスト」および「ActRIIaアンタゴニスト」)を用いて、骨密度を高め、骨成長を促進し、および/または骨強度を高めることができることを示す。特に本開示は、可溶形態のActRIIaが、インビボにおいてアクチビン−ActRIIaシグナル伝達の阻害物質としての役割を果たし、骨密度、骨成長および骨強度の増加を促進することを示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2005年11月23日に出願された米国仮特許出願第60/739,462号、2006年3月17日に出願された米国仮特許出願第60/783,322号、および2006年9月15日に出願された米国仮特許出願第60/844,855号の利益を主張し、これらの出願は、本明細書の全体にわたって参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨粗鬆症から骨折までの様々な骨疾患は、有効な医薬品がほとんどない一連の病的状態である。かわりに処置では、固定、運動、および食生活の改善を含めた、物理療法および行動療法に重点がおかれる。様々な骨疾患を処置する目的において骨成長を促進し、骨密度を高める治療薬があれば有益である。
【0003】
骨成長および石灰化は、破骨細胞と造骨細胞という二つの細胞型の活動に依存するが、軟骨細胞および血管の細胞も、これらのプロセスの重要な側面に関わる。発生的には、骨形成は、軟骨内骨化と膜内骨化という二つのメカニズムにより生じ、前者は長径方向の骨形成を担い、後者は、頭蓋の骨など、位相的に扁平な骨の形成を担う。軟骨内骨化は、造骨細胞、破骨細胞の形成、血管系、および後の石灰化の鋳型の役割をする成長板の軟骨構造の、順次的な形成および分解を要する。膜内骨化の間には、結合組織内に骨が直接形成される。いずれのプロセスも、造骨細胞の浸入およびその後のマトリクス堆積を要する。
【0004】
骨折や他の構造的な骨破壊は、軟骨組織の形成およびその後の石灰化を含む、一連の骨形成の発生事象に少なくとも表面的に類似するプロセスにより、治癒される。骨折治癒のプロセスは、二つの態様で生じうる。直接的または一次的な骨治癒は、仮骨形成を伴わずに生じる。間接的または二次的な骨治癒は、仮骨前駆段階を伴って生じる。骨折の一次的治癒は、密着された破壊部全体の、物理的連続性の再形成を伴う。適切な条件下で、破壊部を囲む骨吸収細胞が、トンネル吸収反応を示し、血管の浸透およびその後の治癒の経路を確立する。骨の二次的治癒は、炎症、軟らかい仮骨形成、仮骨石灰化、および仮骨再形成のプロセスを経る。炎症段階では、損傷部位の骨膜および骨内膜の血管の破壊により、血腫および出血の形成が生じる。炎症細胞が領域に侵入する。軟らかいカルス形成の段階では、細胞が新しい血管、繊維芽細胞、細胞内物質、および支持細胞を生み出し、骨折破片の間のスペースに肉芽組織が形成される。繊維または軟骨組織(軟らかい仮骨)により、破壊部全体の臨床的癒着が確立される。造骨細胞が形成され、軟らかい仮骨の石灰化を媒介し、その後これが層板骨に置き換えられ、正常な再形成プロセスにしたがう。
【0005】
骨構造の骨折をはじめとする物理的破壊に加えて、骨塩量および骨量の減少が、様々な状態により生じ、重大な医学的問題をもたらしうる。骨量の変化は、個体の一生にわたり、比較的予測可能な態様で生じる。30歳頃までは、男性も女性も、軟骨成長板の縦の成長、および半径方向の成長により、骨が最大質量まで成長する。(骨梁、例えば椎骨および骨盤等の扁平骨では)30歳頃および(皮質骨、例えば四肢に見られる長骨では)40歳頃を過ぎると、男性も女性もゆっくりと骨量減少が生じる。女性の場合は、おそらくは閉経期後のエストロゲン欠乏を原因とする、最終段階の実質的骨量減少も生じる。この段階において女性の骨量は、皮質骨からさらに10%、骨梁のコンパートメントから25%失われうる。進行する骨量減少により、骨粗鬆症などの病的状態が生じるかは、個体の最初の骨量と、増悪条件の有無によるところが大きい。
【0006】
骨量減少は、正常な骨再形成プロセスの不均衡として特徴づけられる場合がある。健康な骨は、常に再形成が行われている。再形成は、破骨細胞による骨吸収により開始する。吸収された骨は、造骨細胞によるコラーゲン形成、およびその後の石灰化を特徴とする、新しい骨組織に置き換えられる。健康な個体においては、吸収と形成の割合のバランスが保たれている。骨粗鬆症は、吸収への偏りを特徴とし、骨量および骨石灰化の全体的減少をもたらす、慢性的な進行性の状態である。ヒトの骨粗鬆症は、臨床的オステオペニア(若年成人の平均値を1標準偏差以上2.5標準偏差未満下回る骨塩密度)に続いておこる。世界中で、約7500万人が骨粗鬆症のリスクを抱えている。
【0007】
したがって、破骨細胞と造骨細胞の間の活動のバランスを制御するための方法は、骨折やその他の骨損傷の治癒を促進するためだけではなく、骨量および骨石灰化の減少を伴う骨粗鬆症などの病気の処置に有用となりうる。
【0008】
骨粗鬆症に関しては、エストロゲン、カルシトニン、ビタミンKとオステオカルシン、または高用量の食事性カルシウムが、いずれも治療的介入として用いられる。骨粗鬆症に対する他の治療的アプローチには、ビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、カルシミメティクス、スタチン、アナボリックステロイド、ランタンおよびストロンチウム塩およびフッ化ナトリウムが含まれる。しかし、このような治療法は、有害な副作用を伴うことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、骨成長および石灰化を促進する組成物および方法を提供することが、本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本開示は一部においては、アクチビンアンタゴニスト活性またはActRIIaアンタゴニスト活性を有する分子(「アクチビンアンタゴニスト」および「ActRIIaアンタゴニスト」)を用いて、骨密度を高め、骨成長を促進し、および/または骨強度を高めることができることを示す。特に本開示は、可溶形態のActRIIaが、インビボにおいてアクチビン−ActRIIaシグナル伝達の阻害物質としての役割を果たし、骨密度、骨成長および骨強度の増加を促進することを示す。骨成長を促進し、または骨量減少を阻害するほとんどの医薬品は、抗異化剤(一般に「異化剤」とも呼ばれる)(例えばビスホスホネート)または同化剤(例えば、適切に投与される副甲状腺ホルモン、PTH)として作用するが、可溶性ActRIIaタンパク質は異化作用および同化作用の両方を有し、二重の活性をもつ。したがって、本開示は、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達経路のアンタゴニストを用いて、骨密度を高め、骨成長を促進できることを証明する。可溶性ActRIIaは、アクチビン拮抗作用以外の機序により骨に作用しうるが、本開示はなお、アクチビン−ActRIIaアンタゴニスト活性にもとづき望ましい治療薬を選択できることを示す。したがって、一定の実施形態においては、本開示は、骨粗鬆症等の低骨密度または低骨強度を伴う病気を処置するため、または骨折した患者など、骨成長が必要な患者の骨成長を促進するために、アクチビン結合ActRIIaポリペプチド、抗アクチビン抗体、抗ActRIIa抗体、アクチビンまたはActRIIaを標的とする小分子およびアプタマー、および、アクチビンおよびActRIIaの発現を抑える核酸などを含む、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用する方法を提供する。さらに、可溶性ActRIIaポリペプチドは、筋肉量の一貫して測定可能な増加を生じさせることなく、骨成長を促進する。
一定の態様においては、本開示は、アクチビンと結合する可溶性のアクチビン結合ActRIIaポリペプチドを含むポリペプチドを提供する。ActRIIaポリペプチドは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドと薬学的に受容可能な担体とを含む薬学的調製物として調製されうる。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1ミクロモル未満または100、10または1ナノモル未満のKDで、アクチビンと結合するのが好ましい。あるいは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、GDF11および/またはGDF8よりアクチビンに選択的に結合し、好ましくは、GDF11および/またはGDF8に対する場合よりもアクチビンに対して少なくとも10倍、20倍、または50倍低いKDで結合する。特定の作用機序に拘束されるものではないが、GDF11/GDF8阻害を上回るアクチビン阻害のこのような選択性の程度により、筋肉に対する一貫した測定可能な効果を伴わない、骨に対する選択的効果が説明されることが予想される。多くの実施形態において、ActRIIaポリペプチドは、骨に対する望ましい効果を達成する用量において、15%未満、10%未満、または5%未満の筋肉増加を生させることから選択される。組成物は、サイズ排除クロマトグラフィでの評価により、他のポリペプチド成分に関して少なくとも95%純粋であるのが好ましく、組成物が、少なくとも98%純粋であるのがさらに好ましい。そのような調合に使用されるアクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、本明細書に開示される任意のものでよく、たとえば、配列番号2、3、7または12より選択されるアミノ酸配列、または、配列番号2、3、7、12または13より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドでよい。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドには、C末端の10〜15アミノ酸(「テール」)が欠けた、配列番号1〜3より選択される配列または配列番号2の配列の少なくとも10、20、または30アミノ酸を含むものなど、天然のActRIIaポリペプチドの機能的断片が含まれうる。
【0011】
可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドには、天然のActRIIaポリペプチドに対する、アミノ酸配列における一つ以上の改変(例えば、リガンド結合ドメインにおける)が含まれうる。改変されたActRIIaポリペプチドの例は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2006/012627号,pp.59−60に提供される。アミノ酸配列の改変により、天然のActRIIaポリペプチドと比較して、例えば、哺乳類、昆虫または他の真核細胞において産出されるポリペプチドのグリコシル化が変更され、または、ポリペプチドのタンパク質分解的切断が変更される。
【0012】
アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、一つのドメインとしてのActRIIaポリペプチド(例えばActRIIaのリガンド結合部分)と、薬物動態の改善、精製し易い、特定の組織を標的とする、などの望ましい性質を提供する一つ以上の他のドメインとを有する融合タンパク質でありうる。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製の一つ以上を改善しうる。アクチビン結合ActRIIa融合タンパク質には、免疫グロブリンFcドメイン(野生型または突然変異型)または血清アルブミン、または、薬物動態の改善、溶解性の改善、または安定性の改善などの望ましい特性を提供する他のポリペプチド部分が含まれうる。好ましい実施形態では、ActRIIa−Fc融合には、FcドメインとActRIIaの細胞外ドメインとの間にある、比較的不定形なリンカーが含まれる。この不定形なリンカーは、ActRIIaの細胞外ドメインのC末端にある、ほぼ15アミノ酸の不定形領域(「テール」)に相当し、または二次構造を比較的含まない1、2、3、4または5アミノ酸からなる、または5から15、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸からなる人工的な配列であり得、または、両者の混合であり得る。リンカーは、グリシンおよびプロリン残基を多く含み、たとえば、トレオニン/セリンおよびグリシンの単一配列、または、トレオニン/セリンおよびグリシンの繰り返し配列を含みうる(例えばTG4またはSG4の単一配列または繰り返し配列)。融合タンパク質には、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合などの精製用のサブ配列が含まれうる。選択的に、可溶性ActRIIaポリペプチドには、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸より選択される、一つ以上の修飾アミノ酸残基が含まれる。薬学的調製物には、骨の病気を処置するために使用される化合物など、一つ以上の追加的な化合物も含まれうる。薬学的調製物は、実質的に発熱性物質を含まないのが好ましい。一般的には、患者に不適切な免疫応答が生じる可能性を減ずるように、ActRIIaタンパク質が、ActRIIaタンパク質の自然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株に発現されるのが好ましい。ヒトおよびCHO細胞株が良好に使用されており、他の一般的な哺乳類の発現システムも有用であることが予想される。
【0013】
本明細書に記載されるとおり、ActRIIa−Fcで表わされるActRIIaタンパク質(ActRIIa部分とFc部分の間に必要最低限のリンカーを有する形態)は、動物モデルにおける、GDF8および/またはGDF11と比べたアクチビンへの選択的結合、高親和性リガンド結合、および二週間より長い血中半減期などを含む望ましい特性を有する。一定の実施形態では、本発明は、ActRIIa−Fcポリペプチド、および、このようなポリペプチドと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的調製物を提供する。
【0014】
一定の態様においては、本開示は、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドをコードする核酸を提供する。単離されたポリヌクレオチドには、上述のような、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドのコード配列が含まれうる。例えば、単離された核酸には、ActRIIaの細胞外ドメイン(例えばリガンド結合ドメイン)をコードする配列、ならびに、膜貫通ドメインまたは細胞質ドメイン内、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインまたは細胞質ドメインの間にある停止コドンを除く、ActRIIaの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部または全体をコードする配列が含まれうる。例えば、単離されたポリヌクレオチドには、配列番号4または5のような全長ActRIIaポリヌクレオチド配列、または一部切断された形が含まれ、当該単離されたポリヌクレオチドには、3´末端の少なくとも600ヌクレオチド手前に、あるいはポリヌクレオチドの翻訳により、全長ActRIIaから一部切断された部分に選択的に融合した細胞外ドメインが生じるように配置された転写終結コドンがさらに含まれる。好ましい核酸配列は、配列番号14である。本明細書に開示される核酸は、発現のためにプロモータに作動可能に結合でき、本開示は、そのような組換えポリヌクレオチドにより形質転換される細胞を提供する。細胞は、CHO細胞等の哺乳動物細胞であるのが好ましい。
【0015】
一定の態様においては、本開示は、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを作製するための方法を提供する。このような方法には、本明細書に開示される任意の核酸(例えば配列番号4、5または14)を、Chineseハムスター卵巣(CHO)細胞などの適切な細胞に発現させる工程が含まれうる。このような方法には、a)可溶性ActRIIaポリペプチドの発現に適切な条件下で細胞を培養する工程であり、当該細胞が、可溶性ActRIIaコンストラクトにより形質転換される工程と、b)こうして発現された可溶性ActRIIaポリペプチドを回収する工程が含まれうる。可溶性ActRIIaポリペプチドは、粗製、一部精製、または高度に精製されたフラクションとして回収されうる。精製は一連の精製工程により達成でき、これには例えば、以下のうちの一つ、二つ、または三つまたはそれ以上が、任意の順序で含まれる:プロテインAクロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ(例えばQセファロース)、疎水性相互作用クロマトグラフィ(例えばフェニルセファロース)、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィ。
【0016】
一定の態様では、被験体の骨成長を促進し、または骨密度を高める方法において、本明細書に開示される可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドなどの、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用しうる。一定の実施形態では、本開示は、必要な患者において低骨密度を伴う病気を処置し、または骨成長を促進するための方法を提供する。方法には、それを必要とする被験体に、有効量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストを投与する工程が含まれうる。一定の態様では、本開示は、本明細書に記載される病気または状態を処置するための医薬を作るための、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストの使用を提供する。
【0017】
一定の態様においては、本開示は、骨の成長または石灰化の増加を促進する薬剤を同定するための方法を提供する。方法には、a)アクチビンまたはActRIIaポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験薬剤を同定する工程と、b)骨の成長または石灰化に対する薬剤の効果を評価する工程が含まれる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号7のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、アクチビン結合ActRIIaポリペプチド。
(項目2)
前記ポリペプチドが、サイズ排除クロマトグラフィによる測定により、タンパク質汚染物について少なくとも95%純粋である、項目1に記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチド。
(項目3)
前記ポリペプチドが、GDF−11に対するよりもアクチビンに対して、解離定数で少なくとも10倍の選択性を有する、項目1または2に記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチド。
(項目4)
項目1〜3のいずれかに記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチドと、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、薬学的調製物。
(項目5)
前記調製物が、実質的に発熱性物質を含まない、項目4に記載の薬学的調製物。
(項目6)
項目1〜3のいずれかに記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチドのコード配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
(項目7)
前記単離されたポリヌクレオチドが、配列番号14の配列を含む、項目6に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目8)
項目6または7に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータ配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
(項目9)
項目6〜8のいずれかに記載の組換えポリヌクレオチドにより形質転換された、細胞。
(項目10)
前記細胞が、哺乳動物細胞である、項目9に記載の細胞。
(項目11)
前記細胞が、CHO細胞またはヒト細胞である、項目10に記載の細胞。
(項目12)
アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを作製する方法であって、
a)該可溶性ActRIIaポリペプチドの発現に適切な条件下で、細胞を培養する工程であって、該細胞が、項目6〜8のいずれかに記載の組換えポリヌクレオチドにより形質転換される工程;と、
b)そのようにして発現された該アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを回収する工程;と
を含む、方法。
(項目13)
骨成長を促進するか、骨密度を高めるか、または骨強度を高めるための方法であって、該方法が、
a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;
からなる群より選択される有効な量のポリペプチドを、被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目14)
前記ポリペプチドが、以下:
i)少なくとも10−7MのKDで、ActRIIaリガンドに結合する特性;および
ii)細胞内のActRIIaシグナル伝達を阻害する特性;
のうちの一つ以上を有する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記ポリペプチドが、ActRIIaポリペプチドドメインに加えて、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、および/あるいは精製の一つ以上を向上させる一つ以上のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、項目13または14に記載の方法。
(項目16)
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸より選択される一つ以上の修飾アミノ酸残基を含む、項目13〜16のいずれかに記載の方法。
(項目18)
骨関連障害を処置するための方法であって、該方法が、これを必要とする被験体に、有効な量のアクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストを投与する工程を含む、方法。
(項目19)
前記アクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストが、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、
a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;
からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、以下:
i)少なくとも10−7MのKDで、ActRIIaリガンドに結合する特性;および
ii)細胞内のActRIIaシグナル伝達を阻害する特性;
のうちの一つ以上を有する、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、ActRIIaポリペプチドドメインに加えて、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、および/あるいは精製の一つ以上を向上させる一つ以上のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、項目19〜21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸より選択される一つ以上の修飾アミノ酸残基を含む、項目19〜23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記骨関連障害が、原発性骨粗鬆症および続発性骨粗鬆症からなる群より選択される、項目18〜24のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記骨関連障害が、閉経後骨粗鬆症、性腺機能低下性の骨量減少、腫瘍により誘発される骨量減少、癌療法により誘発される骨量減少、骨転移、多発性骨髄腫、およびパジェット病からなる群より選択される、項目18〜24のいずれかに記載の方法。
(項目27)
第二の骨活性剤を投与する工程をさらに含む、項目18〜26のいずれかに記載の方法。
(項目28)
前記骨活性剤が、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、カルシウム補助剤およびビタミンD補助剤からなる群より選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
(a)アクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニスト;および
(b)第二の骨活性剤;
を含む、薬学的調製物。
(項目30)
骨成長を促進するか、または骨密度を高める薬剤を同定する方法であって、該方法は、
(a)アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドと競合して、ActRIIaポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験薬剤を同定する工程;と、
(b)組織成長に対する該薬剤の効果を評価する工程;と
を含む、方法。
(項目31)
骨関連障害を処置するための医薬を作製するための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドの、使用。
(項目32)
骨関連障害を予防するための方法であって、該方法が、これを必要とする被験体に、有効な量のアクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストを投与する工程を含む、方法。
(項目33)
前記被験体が、骨転移を伴う癌を有する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記被験体は、骨密度の低下、骨吸収、または骨転移の指標について陽性である、項目32〜33に記載の方法。
(項目35)
前記被験体が、骨減少を伴う癌治療レジメンのレシピエントである、項目32〜34のいずれかに記載の方法。
(項目36)
前記被験体は、骨減少を伴う癌を有する、項目32〜34のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記ポリペプチドがグリコシル化されている、項目1〜3のいずれかに記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチド、項目4〜5または29のいずれかに記載の薬学的調製物、あるいは、項目13〜28のいずれかに記載の方法。
(項目38)
患者の骨成長を促進するためおよび骨吸収を阻害するための方法であって、該方法が、有効な量のActRIIa−Fc融合タンパク質を該患者に投与する工程を含み、該ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目39)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、項目38または39に記載の方法。
(項目41)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、項目38〜40のいずれかに記載の方法。
(項目42)
前記方法による前記患者の骨格筋質量の増加が、10%未満である、項目38〜41のいずれかに記載の方法。
(項目43)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、前記患者において少なくとも0.2μg/kgの血清濃度に達するように投与される、項目38〜41のいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号7のアミノ酸配列を有する、項目38〜43のいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質の血中半減期が、15日と30日との間である、項目38〜44のいずれかに記載の方法。
(項目46)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、週一回以下の頻度で前記患者に投与される、項目38〜45のいずれかに記載の方法。
(項目47)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、月一回以下の頻度で前記患者に投与される、項目38〜46のいずれかに記載の方法。
(項目48)
骨成長を促進するか、骨密度を高めるか、または骨強度を高めるための医薬の調製のための、(a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;からなる群より選択されるポリペプチドの、使用。
(項目49)
骨関連障害を予防するための医薬の調製のための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドの、使用。
(項目50)
骨成長を促進するためおよび骨吸収を阻害するための医薬の調製のための、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むActRIIa−Fc融合タンパク質の、使用。
(項目51)
骨成長を促進すること、骨密度を高めること、または骨強度を高めることに使用するための、(a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;からなる群より選択される、ポリペプチド。
(項目52)
骨関連障害の処置に使用するための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチド。
(項目53)
骨関連障害の予防に使用するための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチド。
(項目54)
骨成長を促進することおよび骨吸収を阻害することに使用するための、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、ActRIIa−Fc融合タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、CHO細胞に発現されたActRIIa−hFcの精製を示す。タンパク質は、単一の明確なピークとして精製する。
【図2】図2は、BiaCore(商標)アッセイで測定した、アクチビンおよびGDF−11に対するActRIIa−hFcの結合を示す。
【図3】図3は、A−204レポータージーンアッセイの概略図を示す。図は、レポーターベクターpGL3(CAGA)12(Dennler等,1998年,EMBO 17:3091−3100に記載)を示す。CAGA12モティーフはTGF−ベータ応答遺伝子(PAI−1遺伝子)に存在するため、このベクターはSmad2および3を経由するシグナル伝達因子で一般的に利用できる。
【図4】図4は、A−204レポータージーンアッセイにおける、GDF−8シグナル伝達に対するActRIIa−hFc(ダイヤモンド)およびActRIIa−mFc(四角)の効果を示す。両方のタンパク質は、ピコモルのオーダーの濃度でGDF−8を介したシグナル伝達を実質的に阻害した。
【図5】図5は、A−204レポータージーンアッセイにおける、GDF−11シグナル伝達に対するActRIIa−hFcの三つの異なる調製物の効果を示す。
【図6】図6は、コントロールおよびActRIIa−mFcで処置したBALB/cマウスの、12週間の処置期間の前(上パネル)および後(下パネル)のDEXA画像の例を示す。陰影が薄いほど、骨密度が増加していることを示す。
【図7】図7は、12週間の期間にわたる、BALB/cマウスの骨塩密度に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(ダイヤモンド)、ActRIIa−mFcの2mg/kgの投薬(四角)、ActRIIa−mFcの6mg/kgの投薬(三角)、およびActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(丸)であった。
【図8】図8は、12週間の期間にわたる、BALB/cマウスの骨塩量に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(ダイヤモンド)、ActRIIa−mFcの2mg/kgの投薬(四角)、ActRIIa−mFcの6mg/kgの投薬(三角)、およびActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(丸)であった。
【図9】図9は、6週間の期間後の、卵巣切除(OVX)、または偽手術(SHAM)を施したC57BL6マウスにおける、骨梁の骨塩密度に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(PBS)、またはActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(ActRIIa)であった。
【図10】図10は、12週間の期間にわたる、卵巣切除を施した(OVX)C57BL6マウスにおける、骨梁に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(ActRIIa;濃い色の棒)であった。
【図11】図11は、6週間または12週間の処置期間後の、偽手術を施したC57BL6マウスにおける、骨梁に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(ActRIIa;濃い色の棒)であった。
【図12】図12は、12週間の処置にわたる、卵巣切除マウスにおける骨密度のpQCT分析の結果を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFc(濃い色の棒)であった。y軸:mg/ccm。
【図13】図13は、12週間の処置にわたる、偽手術マウスにおける骨密度のpQCT分析の結果を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFc(濃い色の棒)であった。y軸;mg/ccm。
【図14】図14Aおよび14Bは、12週間の処置後の、全身のDEXA分析(A)および大腿骨のエキソビボ分析(B)を示す。明るい領域は、高骨密度の領域を示す。
【図15】図15は、12週間の処置後の、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析を示す。処置は、溶媒コントロール(PBS、濃い色の棒)、およびActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の四本の棒は総骨密度を示し、右側の四本の棒は皮質骨密度を示す。各四本の棒の組のうち最初の対は、卵巣切除マウスからのデータであり、第二の棒の対は、偽手術マウスからのデータである。
【図16】図16は、12週間の処置後の、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析および骨幹の骨量を示す。処置は、溶媒コントロール(PBS、濃い色の棒)、またはActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の四本の棒が総骨量を示し、右側の四本の棒が皮質骨量を示す。各四本の棒の組のうち最初の対は、卵巣切除マウスからのデータであり、第二の棒の対は、偽手術マウスからのデータである。
【図17】図17は、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析および大腿骨の皮質厚を示す。処置は、コントロール(PBS、濃い色の棒)、およびActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の四本の棒は、骨内膜周径を示し、右側の四本の棒は骨膜周径を示す。各四本の棒の組のうち最初の対は、卵巣切除マウスからのデータであり、第二の棒の対は、偽手術マウスからのデータである。
【図18】図18は、12週間の処置後の、大腿骨の機械的テストの結果を示す。処置は、コントロール(PBS、濃い色の棒)、およびActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の二本の棒は、卵巣切除マウスからのデータであり、右側の二本の棒は、偽手術マウスからのデータである。
【図19】図19は、骨梁の体積に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図20】図20は、遠位大腿骨の骨梁構造に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図21】図21は、皮質骨に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図22】図22は、骨の機械的強度に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図23】図23は、三つの異なる投与量における、骨の特性に対する異なる用量のActRIIa−mFcの効果を示す。
【図24】図24は、ActRIIa−mFcが二重の同化および抗吸収作用を有することを示す、骨組織形態計測である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
1.概要
トランスフォーミング成長因子β(TGFベータ)スーパーファミリーには、共通の配列要素および構造モティーフを共有する、様々な成長因子が含まれる。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の両方において、多種多様な細胞型に生体影響を及ぼすことが知られている。スーパーファミリーのメンバーは、胚発生過程におけるパターン形成および組織特定化に重要な機能を果たし、脂肪生成、筋形成、軟骨形成、心臓発生、造血、神経形成、および上皮細胞分化を含む様々な分化プロセスに影響しうる。ファミリーは、二つの一般的なブランチに分けられる:BMP/GDFおよびTGFベータ/アクチビン/BMP10ブランチであり、そのメンバーは、多様かつ多くの場合に相補的な効果を有する。TGFβファミリーのメンバーの活性を操作することで、生物に大きな生理的変化を生じうる場合が多い。例えば、Piedmontese種およびBelgian Blue種の牛は、筋肉量の際立った増加をもたらす、GDF8(別名マイオスタチン)遺伝子の機能喪失突然変異をもっている。Grobet等,Nat Genet.1997年,17(l):71−4。さらに、人間では、GDF8の不活性の対立遺伝子が、筋肉量の増加および並外れた力を伴うことが報告されている。Schuelke等,N Engl J Med 2004年,350:2682−8。
【0020】
アクチビンは、TGFベータスーパーファミリーに属する二量体ポリペプチド成長因子である。二つの密接に関連するβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体である(βAβA、βBβBおよびβAβB)、三つの原則的なアクチビンの形態(A、BおよびAB)がある。ヒトゲノムもアクチビンCおよびアクチビンEをコードし、これらは主に肝臓に発現される。TGFベータスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣細胞および胎盤細胞におけるホルモン生産を促進し、ニューロン細胞の生存を支え、細胞型に応じて細胞周期の進行にプラスまたはマイナスの影響を与え、少なくとも両生類の胚における中胚葉分化を誘発することができる、固有かつ多機能の因子である(DePaolo等,199
1年,Proc Soc Ep Biol Med.198:500−512;Dyson等,1997年,Curr Biol.7:81−84;Woodruff,1998
年,Biochem Pharmacol.55:953−963)。さらに、刺激されたヒト単核球性白血病細胞から単離された赤芽球分化誘導因子(EDF)が、アクチビンAと同一であることが発見された(Murata等,1988年,PNAS,85:24
34)。アクチビンAが、骨髄の赤血球生成の天然の正の調節因子としての役割を果たすことが示唆されている。いくつかの組織においては、アクチビンのシグナル伝達を、関連するヘテロ二量体であるインヒビンが拮抗する。例えば、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出される間には、アクチビンがFSH分泌および合成を促進する一方で、インヒビンはFSH分泌および合成を妨げる。アクチビンの生理活性を調節し、および/またはアクチビンに結合しうる他のタンパク質には、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、α2−マクログロブリン、Cerberus、およびendoglinが含まれる。
【0021】
TGF−βシグナルは、リガンド刺激に応じて下流のSmadタンパク質をリン酸化および活性化する、I型およびII型セリン/トレオニンキナーゼレセプターのヘテロ複合体により媒介される(Massague,2000年,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1:169−178)。これらのI型およびII型レセプターは、システインリッチ部分を伴う細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびセリン/トレオニン特異性をもつと推測される細胞質ドメインからなる、膜貫通タンパク質である。I型レセプターはシグナル伝達に必須であり、II型レセプターは、リガンド結合およびタイプIレセプターの発現に必要である。I型およびII型のアクチビンレセプターは、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型レセプターによるI型レセプターのリン酸化を生じる。
【0022】
二つの関連するII型レセプターであるActRIIaおよびActRIIbが、アクチビンのII型レセプターとして同定されている(MathewsおよびVale,1991年,Cell 65:973−982;Attisano等,1992年,Cell
68:97−108)。ActRIIaおよびActRIIbは、アクチビンの他、BMP7、Nodal、GDF8およびGDF11を含む、他のいくつかのTGF−βファミリータンパク質と生化学的に相互作用しうる(Yamashita等,1995年,J
.Cell Biol.130:217−226;LeeおよびMcPherron,2001年,Proc.Natl.Acad.Sci.98:9306−9311;YeoおよびWhitman,2001年,Mol.Cell 7:949−957;Oh等,2002年,Genes Dev.16:2749−54)。ALK4が、アクチビン、特にアクチビンAの主なI型レセプターであり、ALK−7も、アクチビン、特にアクチビンBのレセプターとしての役割を果たしうる。
【0023】
本明細書に示されるとおり、GDF8またはGDF11等の他のTGFベータファミリーのメンバーではなくアクチビンAに結合する実質的選択性を示す可溶性ActRIIaポリペプチド(sActRIIa)は、インビボで骨成長を促進し、骨密度を高める上で有効である。特定の機序にとらわれるものではないが、これらの研究において使用された特定のsActRIIaコンストラクトにより示された極めて強力なアクチビン結合(ピコモルの解離定数)を前提とすると、sActRIIaの効果は、主にアクチビンアンタゴニスト効果により生じると考えられる。機序に関わらず、ActRIIa−アクチビンアンタゴニストにより、正常なマウスおよび骨粗鬆症のマウスモデルにおける骨密度が増加することが、本明細書に提示されるデータから明白である。骨は、骨を生産し石灰化を促す因子(主に造骨細胞)と、骨を破壊し脱灰する因子(主に破骨細胞)のバランスに応じて成長または収縮し、密度が増減する動的組織であることに留意する必要がある。生産因子を増加させるか、破壊因子を減少させることにより、または両者により、骨成長および石灰化を増加させることができる。「骨成長を促進する」および「骨石灰化を増加させる」という用語は、骨の観察可能な物理的変化をさし、骨の変化が生じる機序に関しては中立の意味である。
【0024】
本明細書に記載の研究で使用される骨粗鬆症のマウスモデルおよび骨成長/密度からは、ヒトへの効果が高度に予測されると考えられるため、本開示は、ActRIIaポリペプチドおよび他のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用して、ヒトにおいて骨成長を促進し、骨密度を高める方法を提供する。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストには、たとえば、アクチビン結合可溶性ActRIIaポリペプチド、アクチビン(特にβAまたはβBとも呼ばれるアクチビンAまたはBサブユニット)と結合してActRIIaの結合を妨げる抗体、ActRIIaと結合してアクチビンの結合を妨げる抗体、アクチビンまたはActRIIa結合により選択される非抗体タンパク質(このようなタンパク質の例、ならびにその設計および選択については、国際公開第2002/088171号、国際公開第2006/055689号、国際公開第2002/032925号、国際公開第2005/037989号、米国特許出願公開第2003/0133939号、および米国特許出願公開第2005/0238646号などを参照)、アクチビンまたはActRIIa結合により選択される、多くの場合にFcドメインに結合したランダムペプチドが含まれる。アクチビンまたはActRIIa結合活性を有する二つの異なるタンパク質(または他の部分)、特にI型(たとえば、可溶性I型アクチビンレセプター)およびII型(たとえば、可溶性II型アクチビンレセプター)結合部位をそれぞれブロックするアクチビン結合タンパク質どうしを連結して、二機能性結合分子をつくることができる。アクチビン−ActRIIaシグナル伝達軸を阻害する核酸アプタマー、小分子および他の薬剤。様々なタンパク質が、アクチビン−ActRIIaアンタゴニスト活性を有し、インヒビン(すなわち、インヒビンαサブユニット)(ただし全ての組織で普遍的にアクチビンに拮抗するわけではない)や、フォリスタチン(例えばフォリスタチン−288およびフォリスタチン−315)、Cerberus、FSRP、endoglin、アクチビンC、α(2)−マクログロブリン、およびM108A(108番目のメチオニンをアラニンに置換)突然変異型アクチビンAが含まれる。一般に、代替的形態のアクチビン、特にI型レセプター結合ドメインが改変されたものは、II型レセプターに結合できるが、活性化した三重複合体を形成できないためアンタゴニストとして作用する。さらに、アクチビンA、B、CまたはE、または、特にActRIIaの発現を阻害するアンチセンス分子、siRNAsまたはリボザイムなどの核酸を、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストとして使用できる。使用されるアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、他のTGFβファミリーのメンバーに対して、特にGDF8およびGDF11に対して、アクチビンを介したシグナル伝達を阻害する選択性を有することが好ましい。可溶性ActRIIbタンパク質はアクチビンに結合するが、野生型タンパク質はGDF8/11に対してアクチビンと結合する有意な選択性をもたず、このタンパク質により骨に対する所望の効果は得られないだけでなく、筋肉の実質的成長も生じることが予備実験により示唆される。しかし、異なる結合特性を有する改変された形態のActRIIbが同定されており(たとえば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2006/012627号,pp.55−59を参照)、これらのタンパク質は、骨に対する所望の効果を達成しうる。天然または改変ActRIIbは、第二のアクチビン選択的結合剤と結びつけることにより、アクチビンに対するさらなる特異性を与えうる。
【0025】
本明細書において使用する用語は、一般に、本発明の文脈および各用語が使用される特定の文脈において、従来技術における通常の意味を有する。一定の用語は、本発明の組成物および方法、ならびにそれらを製作し使用する方法を記載する上で、実務家にさらなる指針を提供するために、本明細書の以下または他所に説明される。用語の一切の使用の範囲または意義は、用語が使用される特定の文脈から明らかとなる。
【0026】
「約」および「ほぼ」は、一般に、測定の性質または精度を前提として、測定された量の許容できる程度の誤差を意味する。典型的には、代表的な誤差の程度は、特定の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
【0027】
あるいは、特に生物系においては、「約」および「ほぼ」という用語は、好ましくは特定の値の5倍以内、より好ましくは2倍以内である概略値を意味しうる。本明細書に与えられた数量は、特に明記しない限り概算であり、すなわち、「約」および「ほぼ」という用語は特に明示がなければ推量されうる。
【0028】
本発明の方法には、野生型配列と一つ以上の突然変異型(配列変異体)の比較を含めて、配列を互いに比較する工程が含まれうる。このような比較には、通常はポリマー配列のアラインメントが含まれ、たとえば、公知技術の配列アラインメント・プログラムおよび/またはアルゴリズムが使用される(例えば、BLAST、FASTAおよびMEGALIGNを例として含む)。熟練技術者には当然のことながら、かかるアラインメントでは、突然変異に残基の挿入または欠失が含まれる場合には、配列アラインメントに、挿入または欠失した残基を含まないポリマー配列の「ギャップ」(通常はダッシュまたは「A」で表わされる)が導入される。
【0029】
「相同」とは、全ての文法形態およびつづり方において、同じ生物種のスーパーファミリーのタンパク質、ならびに、異なる生物種の相同タンパク質を含む、「共通の進化上の起源」を有する二つのタンパク質の関係をさす。そのようなタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は配列相同性を有し、それは配列間の同一性の割合、あるいは特定の残基やモティーフの存在およびそれらの保存された位置などにもとづく配列類似度に反映される。
【0030】
「配列類似度」という用語は、全ての文法形態において、共通の進化上の起源を共有し得るまたは共有し得ない核酸またはアミノ酸配列間の、同一性または対応の程度をさす。
【0031】
しかしながら、一般的な使用法および本出願においては、「相同」という用語は、「高度に」などの副詞で修飾される場合には、配列類似度をさすことができ、共通の進化上の起源に関する場合も関しない場合もある。
【0032】
2.ActRIIaポリペプチド
一定の態様においては、本発明はActRIIaポリペプチドに関する。本明細書で使用されるところの「ActRIIa」という用語は、任意の種のアクチビンIIa型レセプター(ActRIIa)タンパク質のファミリー、および突然変異誘発またはその他の修飾によりそのようなActRIIaタンパク質から得られた変異体をさす。本明細書におけるActRIIaへの言及は、現在同定されている形態のいずれか一つへの言及であるものとする。ActRIIaファミリーのメンバーは一般に、システインリッチ部分を伴う細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびセリン/トレオニン活性をもつと推測される細胞質ドメインからなる、膜貫通タンパク質である。
【0033】
「ActRIIaポリペプチド」という用語には、ActRIIaファミリーメンバーに属する任意の天然のポリペプチド、ならびにその任意の変異体(突然変異型、断片、融合、およびペプチドミメティクスの形態を含む)で有用な活性を維持するものを含むポリペプチドが含まれる。例えば、ActRIIaポリペプチドには、ActRIIaポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一であり、好ましくは同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、99%またはそれ以上である配列を有する、任意の公知のActRIIaの配列から得られたポリペプチドが含まれる。例えば、本発明のActRIIaポリペプチドは、ActRIIaタンパク質および/またはアクチビンに結合し、機能を阻害しうる。ActRIIaポリペプチドは、骨成長および骨石灰化を促進するのが好ましい。ActRIIaポリペプチドの例には、ヒトActRIIa前駆体ポリペプチド(配列番号1)および可溶性ヒトActRIIaポリペプチド(例えば、配列番号2,3,7および12)が含まれる。
【0034】
ヒトActRIIa前駆体タンパク質の配列は、以下の通りである:
【0035】
【化1】
シグナルペプチドには一重下線が引かれており、細胞外ドメインは太字であり、N結合グリコシル化の可能性がある部位は二重下線が引かれている。
【0036】
加工されたヒトActRIIaの可溶性(細胞外)ポリペプチド配列は、以下の通りである:
【0037】
【化2−1】
細胞外ドメインのC末端「テール」は下線が引かれている。「テール」が欠失した配列(Δ15配列)は以下の通りである:
【0038】
【化2−2】
ヒトActRIIa前駆体タンパク質コードする核酸配列は、以下の通りである(GenbankエントリNM_01616の164−1705のヌクレオチド):
【0039】
【化3】
ヒトActRIIa可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は、以下の通りである:
【0040】
【化4】
特定の実施形態においては、本発明は、可溶性ActRIIaポリペプチドに関する。本明細書に記載されるところの、「可溶性ActRIIaポリペプチド」という用語は、一般に、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書で用いられるところの「可溶性ActRIIaポリペプチド」という用語には、ActRIIaタンパク質の天然に生じる全ての細胞外ドメインならびにその任意の変異体(突然変異型、断片、融合、およびペプチドミメティクスの形態を含む)が含まれる。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、アクチビン、特にアクチビンAA、ABまたはBBに結合する能力を維持するものである。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1nM以下の解離定数でアクチビンAAと結合するのが好ましい。ヒトActRIIa前駆体タンパク質のアミノ酸配列が下記に提供される。ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインは、アクチビンと結合し、一般に可溶性であるため、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドと称することができる。可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドの例には、配列番号2、3、7、12および13で表わされる可溶性ポリペプチドが含まれる。配列番号7は、ActRIIa−hFcと称され、実施例にさらに記載される。可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドの他の例には、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインに加えて、例えば、ミツバチメリチンリーダー配列(配列番号8)、組織プラミノーゲン(plaminogen)活性化因子(TPA)リーダー(配列番号9)、または天然ActRIIaリーダー(配列番号10)などのシグナル配列が含まれる。配列番号13で表わされるActRIIa−hFcポリペプチドは、TPAリーダーを使用する。
【0041】
ActRIIaポリペプチドの機能的に活性の断片は、ActRIIaポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組換えにより生産されたポリペプチドをスクリーニングすることにより得られる。さらに、断片は、従来のメリフィールド固相f−Mocまたはt−Boc化学反応などの公知技術を使用して、化学合成できる。断片を(組換えまたは化学合成により)生産し、テストして、ActRIIaタンパク質またはアクチビンにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害物質)として機能できるペプチジル断片を同定できる。
【0042】
ActRIIaポリペプチドの機能的に活性の変異体は、ActRIIaポリペプチドをコードする対応する突然変異核酸から組換えにより生産された修飾ポリペプチドのライブラリをスクリーニングすることにより得られる。断片を(組換えまたは化学合成により)生産し、テストして、ActRIIaタンパク質またはアクチビンにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害物質)として機能できるものを同定できる。一定の実施形態では、ActRIIaポリペプチドの機能的変異体には、配列番号2または3より選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列が含まれる。一定の場合には、機能的変異体は、配列番号2または3より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一のアミノ酸配列を有する。
【0043】
機能的変異体は、治療効果または安定性(エキソビボにおける貯蔵寿命およびインビボにおけるタンパク質分解に対する抵抗など)を高める等の目的で、ActRIIaポリペプチドの構造を修飾することにより作り出すことができる。このような修飾ActRIIaポリペプチドは、アクチビンの結合を維持するために選択される場合には、天然のActRIIaポリペプチドの機能的等価物とみなされる。修飾ActRIIaポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失または付加などにより生産することもできる。例えば、イソロイシンまたはバリンでのロイシンの、グルタミン酸でのアスパラギン酸の、セリンでのトレオニンの単離置換、または構造的に関連したアミノ酸でのアミノ酸の類似の置換(たとえば保存的変異)は、得られる分子の生物活性に大きく影響しないことが合理的に予期される。保存的置換は、側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの中で行われる置換である。ActRIIaポリペプチドのアミノ酸配列の変更により機能的ホモログが得られるかどうかは、細胞内で野生型ActRIIaポリペプチドと類似の態様で反応する変異ActRIIaポリペプチドの能力を評価することにより、直ちに判定できる。
【0044】
一定の実施形態では、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を改変するための、ActRIIaポリペプチドの特異的突然変異を予定する。このような突然変異は、O結合またはN結合グリコシル化部位などの一つ以上のグリコシル化部位を導入または除去するために選択されうる。アスパラギン結合グリコシル化認識部位には、一般に、適当な細胞のグリコシル化酵素により特異的に認識されるトリペプチド配列、アスパラギン−X−トレオニン(またはアスパラギン−X−セリン)(「X」は任意のアミノ酸)が含まれる。野生型ActRIIaポリペプチドの配列に対する、(O結合グリコシル化部位における)一つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加または置換によっても改変がなされうる。グリコシル化認識部位の第一または第三アミノ酸位の一方又は両方における、様々なアミノ酸置換または欠失(および/または第二位におけるアミノ酸欠失)は、修飾トリペプチド配列における非グリコシル化をもたらす。ActRIIaポリペプチドの炭化水素部分の数を増大する別の方法は、ActRIIaポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的結合による。使用される結合方法に応じて、糖(類)を(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのもの等の遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、またはヒドロキシプロリンのもの等の遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのもの等の芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基と結合しうる。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれる、1987年9月11日に公開された国際公開第87/05330号、および、AplinおよびWriston(1981年)CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306に記載されている。ActRIIaポリペプチドに存在する一つ以上の炭化水素部分の除去は、化学的または酵素的に達成されうる。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価の化合物への、ActRIIaポリペプチドの曝露を伴いうる。この処理は、アミノ酸配列を完全に残しながら、結合糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除く大部分または全ての糖を切断する。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin等(1987年)Arch.Biochem.Biophys.259:52、およびEdge等(1981年)Anal.Biochem.118:131により、さらに説明される。ActRIIaポリペプチドの炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等(1987年)Meth.Enzymol.138:350により記載されるように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成できる。哺乳類、イースト、昆虫および植物細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列の影響を受けうる異なるグリコシル化パターンを導入しうるため、ActRIIaポリペプチドの配列を、使用される発現系のタイプに応じて適切に調節しうる。一般に、ヒトに用いられるActRIIaタンパク質は、適切なグリコシル化を提供するHEK293またはCHO細胞株などの哺乳動物細胞株に発現されるが、他の哺乳類由来の発現細胞株や、人工グリコシル化酵素を有するイースト細胞株、および昆虫細胞も、同様に有用であることが期待される。
【0045】
本開示は、突然変異体、特にActRIIaポリペプチドの一連のコンビナトリアル突然変異体、ならびにトランケーション突然変異体を作り出す方法をさらに予定する。コンビナトリアル突然変異体のプールは、機能的変異体配列を同定する上で特に有用である。このようなコンビナトリアルライブラリをスクリーニングする目的は、たとえばアゴニストまたはアンタゴニストとして作用しうる、あるいは、新規の活性を全てもつActRIIaポリペプチド変異体を作り出すためでありうる。様々なスクリーニングアッセイが下記に提供され、このようなアッセイを用いて変異体を評価できる。例えば、ActRIIaリガンドと結合して、ActRIIaリガンドのActRIIaポリペプチドに対する結合を妨げ、または、ActRIIaリガンドによるシグナル伝達を妨げる能力について、ActRIIaポリペプチド変異体をスクリーニングできる。
【0046】
ActRIIaポリペプチドまたはその変異体の活性は、細胞ベースまたはインビボのアッセイでテストすることもできる。例えば、骨生産または骨破壊に関わる遺伝子の発現に対する、ActRIIaポリペプチド変異体の効果を評価しうる。これは、必要に応じて、一つ以上の組換えActRIIaリガンドタンパク質(例えばアクチビン)の存在下で行うことができ、ActRIIaポリペプチドおよび/またはその変異体、および選択的にActRIIaリガンドを産出するために、細胞をトランスフェクションしうる。同様に、ActRIIaポリペプチドを、マウスまたは他の動物に投与し、密度または体積等、一つ以上の骨特性を評価できる。骨折の治癒率も、評価できる。二重エネルギーX線吸光光度定量法(DEXA)は、動物の骨密度を評価するための、非侵襲性の定量的技術として定着している。ヒトにおいては、躯幹骨DEXAシステムを用いて、脊椎および骨盤の骨密度を評価できる。これらは、全体の骨密度の最善の予測手段である。末梢骨DEXAシステムは、手、手首、足関節および足の骨など、末梢骨の骨密度を評価するために用いることができる。CATスキャンを含む従来のX線造影システムを用いて、骨成長および骨折治癒を評価できる。骨の機械的強度も、評価できる。
【0047】
天然のActRIIaポリペプチドと比較して選択的または全般的に高められた能力を有する、コンビナトリアル的に得られる変異体を作製できる。同様に、突然変異誘発により、対応する野生型ActRIIaポリペプチドとは細胞内半減期が全く異なる変異体を生み出すことができる。例えば、改変されたタンパク質は、天然ActRIIaポリペプチドの破壊あるいは不活性化につながる、タンパク質分解または他の細胞過程に対する安定性を高め、または低めることができる。このような変異体およびそれらをコードする遺伝子を利用して、ActRIIaポリペプチドの半減期を調整することによりActRIIaポリペプチドのレベルを変更できる。例えば、半減期を短くすれば生体影響がより過渡的になり、患者の体内の組換えActRIIaポリペプチドレベルを、より厳密に制御することが可能になる。Fc融合タンパク質においては、タンパク質の半減期を変更するために、変異をリンカー(あれば)および/またはFc部分に入れることができる。
【0048】
コンビナトリアルライブラリは、各々が潜在的ActRIIaポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリをコードする遺伝子の縮重ライブラリとして作製できる。例えば、潜在的ActRIIaポリペプチドのヌクレオチド配列の縮重組が、個々のポリペプチドとして、あるいは、より大きな融合タンパク質(例えば、ファージ)組として発現できるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートしうる。
【0049】
多くの方法により、縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的ホモログのライブラリを作り出せる。自動化DNA合成装置において、縮重遺伝子配列の化学合成を行うことができ、その後、合成遺伝子を適切な発現ベクターにライゲートできる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は公知技術である(たとえば、Narang,SA(1983年)Tetrahedron 39:3;Itakura等,(1981年)Recombinant D
NA,Proc.3rd Cleveland Sympos.Macromolecules,ed.AG Walton,Amsterdam:Elsevier pp273−289;Itakura等,(1984年)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura等,(1984年)Science 198:1056;Ike等,(1983年)Nucleic Acid Res.11:477を参照。)。このような技術は、他のタンパク質の定向進化において使用されている(たとえば、Scott等,(1990年)Science 249:386−390;Roberts等,(1992年)PNAS USA 89:2429−2433;Devlin等,(1990年)Science 249:404−406;Cwirla等,(1990年)PNAS USA 87:6378−6382;ならびに米国特許第5,223,409号,第5,198,346号,および第5,096,815号を参照)。
【0050】
あるいは、コンビナトリアルライブラリを作り出すために、他の形態の突然変異誘発を利用できる。例えば、アラニンスキャンニング突然変異誘発などを用いたスクリーニング(Ruf等,(1994年)Biochemistry 33:1565−1572;Wang等,(1994年)J.Biol.Chem.269:3095−3099;Balint等,(1993年)Gene 137:109−118;Grodberg等,(1993年)Eur.J.Biochem.218:597−601;Nagashima等,(1993年)J.Biol.Chem.268:2888−2892;Lowman等,(1991年)Biochemistry 30:10832−10838;およびCunningham等,(1989年)Science 244:1081−1085)、リンカースキャニング突変異誘発、(Gustin等,(1993年)Virology 193:653−660;Brown等,(1992年)Mol.Cell
Biol.12:2644−2652;McKnight等,(1982年)Science 232:316);飽和突然変異誘発(Meyers等,(1986年)Science 232:613)、PCR突然変異誘発(Leung等,(1989年)Method Cell Mol Biol 1:11−19)、または化学的突然変異誘発
などを含むランダム突然変異誘発(Miller等,(1992年)A Short Course in Bacterial Genetics,CSHL Press,Cold Spring Harbor,NY;およびGreener等,(1994年)Strategies in Mol Biol 7:32−34)により、ActRIIaポリペプチド変異体を作り出し、ライブラリから単離できる。リンカースキャニング突然変異誘発は、特にコンビナトリアルの場合において、トランケート(生物活性)型のActRIIaポリペプチドを同定する魅力的な方法である。
【0051】
点突然変異およびトランケーションによりつくられるコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物をスクリーニングするため、および、一定の性質を有する遺伝子産物につきcDNAライブラリをスクリーニングするための、多様な技術が従来技術において周知である。このような技術は、ActRIIaポリペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発により作出された遺伝子ライブラリの迅速なスクリーニングに、一般に使用できる。大きな遺伝子ライブラリをスクリーニングするために最も広く使われている技術には、典型的には、遺伝子ライブラリを複製可能な発現ベクターにクローニングする工程と、得られたベクターのライブラリで適切な細胞を形質転換する工程と、所望の活性の検出によって、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的簡単な単離が容易になる条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させる工程が含まれる。好ましいアッセイには、アクチビン結合アッセイおよびアクチビンを介した細胞シグナルアッセイが含まれる。
【0052】
一定の実施形態においては、本発明のActRIIaポリペプチドには、ActRIIaポリペプチドに自然に存在するものに加えて、翻訳後修飾がさらに含まれうる。このような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれるが、これに限られない。その結果、修飾ActRIIaポリペプチドには、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸塩等の、非アミノ酸成分が含まれうる。ActRIIaポリペプチドの機能に対するこのような非アミノ酸成分の効果は、他のActRIIaポリペプチド変異体につき本明細書に記載されているようにテストできる。新生ActRIIaポリペプチドを切断することにより細胞内でActRIIaポリペプチドが生産される場合には、翻訳後プロセシングは、タンパク質の適切な折りたたみおよび/または機能にも重要でありうる。異なる細胞(CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293など)は、かかる翻訳後活性のための特異的な細胞機構および特徴的機序を有し、ActRIIaポリペプチドの適切な修飾およびプロセシングが確保されるように選択できる。
【0053】
一定の態様においては、ActRIIaポリペプチドの機能的変異体または修飾形態には、少なくともActRIIaポリペプチドの一部および一つ以上の融合ドメインを有する融合タンパク質が含まれる。このような融合ドメインの周知の例には、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが含まれるが、これに限られない。所望の性質を与えるために、融合ドメインを選択できる。例えば、一部の融合ドメインは、アフィニティークロマトグラフィによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティー精製の目的においては、グルタチオン、アミラーゼ、およびニッケルまたはコバルトを含む樹脂など、アフィニティークロマトグラフィのための関連のマトリクスが使用される。このようなマトリクスの多くは、ファルマシアGST精製システムおよび(HIS6)融合パートナーとともに有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)ような、「キット」の形で入手できる。別の例として、融合ドメインは、ActRIIaポリペプチドの検出が容易になるように選択できる。このような検出ドメインの例には、様々な蛍光タンパク質(例えばGFP)、ならびに、一般に特定の抗体が入手可能な短いペプチド配列である「エピトープタグ」が含まれる。特異的モノクローナル抗体が直ちに入手可能である周知のエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルスヘムアグルチニン(HA)、およびc−mycタグが含まれる。いくつかの場合においては、融合ドメインはFactor XaまたはThrombinなどのプロテアーゼ切断部位を有し、これによって、関連するプロテアーゼが融合タンパク質を一部消化して、組換えタンパク質を遊離させることができる。そして、遊離したタンパク質を、その後のクロマトグラフ分離により、融合ドメインから単離できる。一定の好ましい実施形態では、ActRIIaポリペプチドは、インビボでActRIIaポリペプチドを安定化するドメイン(「スタビライザ」ドメイン)と融合される。「安定化する」とは、血中半減期を増加させる一切のものを意味し、これが、破壊の減少、腎臓による除去の減少、あるいは他の薬物動態学的効果によるものであるかは問わない。免疫グロブリンのFc部分との融合は、多様なタンパク質に望ましい薬物動態学的特性を与えることが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンに対する融合も、望ましい特性を与えうる。選択できる他のタイプの融合ドメインには、多量体化(たとえば二量体化、四量体化)ドメインおよび(所望の骨成長または筋成長をさらに刺激するなど、さらなる生物学的機能を与える)機能的ドメインが含まれる。
【0054】
特定の例として、本発明は、Fcドメインに融合したActRIIaの可溶性細胞外ドメインを含む融合タンパク質を提供する(例えば配列番号6)。
【0055】
【化5】
選択的に、Fcドメインは、Asp−265、リシン322、およびAsn−434等の残基において、一つ以上の突然変異を有する。一定の場合には、これらの突然変異の一つ以上を有する突然変異Fcドメイン(例えばAsp−265突然変異)は、野生型Fcドメインと比較して、Fcγレセプターと結合する能力が低い。他の場合には、これらの突然変異の一つ以上を有する突然変異Fcドメイン(例えばAsn−434突然変異)は、野生型Fcドメインと比較して、MHCクラスI関連Fcレセプター(FcRN)と結合する能力が高い。
【0056】
当然のことながら、融合タンパク質の様々な要素は、所望の機能に整合すれば、どうように配置することもできる。例えば、ActRIIaポリペプチドを、異種ドメインのC末端側に、あるいは、異種ドメインを、ActRIIaポリペプチドのC末端側に配置しうる。ActRIIaポリペプチドドメインと異種ドメインは、融合タンパク質において隣接する必要はなく、いずれかのドメインのC末端またはN末端側またはドメイン間に、さらなるドメインまたはアミノ酸配列が含まれうる。
【0057】
一定の実施形態では、本発明のActRIIaポリペプチドには、ActRIIaポリペプチドを安定化できる、一つ以上の修飾が含まれる。例えば、このような修飾により、ActRIIaポリペプチドのインビトロ半減期が延長され、ActRIIaポリペプチドの血中半減期が延長され、ActRIIaポリペプチドのタンパク質分解が減少する。このような安定化修飾には、融合タンパク質(例えば、ActRIIaポリペプチドおよび安定化ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIaポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を含む)、および炭化水素部分の修飾(例えば、ActRIIaポリペプチドからの炭化水素部分の除去を含む)が含まれるが、これに限られない。融合タンパク質の場合には、ActRIIaポリペプチドが、IgG分子(例えばFcドメイン)などの安定化ドメインに融合される。本明細書で使用されるところの、「安定化ドメイン」という用語は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えばFc)を指すだけでなく、炭化水素部分などの非タンパク質系の修飾や、ポリエチレングリコールなどの非タンパク質系のポリマーも含む。
【0058】
一定の実施形態において、本発明により、他のタンパク質から単離され、あるいは他のタンパク質を実質的に含まない、単離および/または精製された形のActRIIaポリペプチドが入手可能になる。ActRIIaポリペプチドは一般に、組換え核酸からの発現により産出される。
【0059】
3.ActRIIaポリペプチドをコードする核酸
一定の態様においては、本発明は、本明細書に開示される断片、機能的変異体および融合タンパク質を含む任意のActRIIaポリペプチド(例えば可溶性ActRIIaポリペプチド)をコードする、単離および/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号4は、天然のヒトActRIIa前駆体ポリペプチドをコードし、他方で配列番号5は、加工されたActRIIaの細胞外ドメインをコードする。対象の核酸は、一本鎖でも二本鎖でもよい。このような核酸は、DNAまたはRNA分子でありうる。例えば、ActRIIaポリペプチドを作製する方法において、または(遺伝子治療アプローチなどにおける)直接的な治療薬として、これらの核酸を使用できる。
【0060】
一定の態様においては、目的のActRIIaポリペプチドをコードする核酸は、さらに、配列番号4または5の変異体である核酸を含む。変異体ヌクレオチド配列には、対立遺伝子変異体など、一つ以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失により異なる配列を含む。
【0061】
一定の実施形態では、本発明は、配列番号4または5と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である、単離または組換え核酸配列を提供する。当業者には当然のことながら、配列番号4または5と相補的な核酸配列、および配列番号4または5の変異体も、本発明の範囲内である。さらなる実施形態においては、本発明の核酸配列は、異種ヌクレオチド配列と、またはDNAライブラリで、単離、組み換え、および/または融合されうる。
【0062】
他の実施形態においては、本発明の核酸には、配列番号4または5で表わされるヌクレオチド配列、配列番号4または5の相補配列、またはその断片に、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も含まれる。上述のように、当業者には当然のことながら、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は様々でありうる。当業者には当然のことながら、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は様々でありうる。例えば、約45℃で6.0x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーションを行ったあと、50℃で2.0xSSCの洗浄を行いうる。例えば、洗浄工程の塩濃度は、50℃での約2.0xSSCの低ストリンジェンシーから50℃での約0.2xSSCの高ストリンジェンシーまでから選択できる。さらに、洗浄工程の温度は、室温、約22℃の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで高められる。温度および塩は、ともに様々であり、あるいは、他の変数を変える一方で温度または塩濃度を一定に保ってもよい。一実施形態においては、本発明は、室温における6xSSCの低ストリンジェンシー条件でハイブリダイズした後に、室温における2xSSCでの洗浄が行われる核酸を提供する。
【0063】
遺伝コードの縮退により、配列番号4または5に記載の核酸と異なる単離された核酸も、本発明の範囲内である。例えば、多数のアミノ酸が、複数トリプレットによりコードされる。同一のアミノ酸を指定するコドン、すなわち同義語コドン(例えばCAUおよびCACはヒスチジンの同義語)は、ポリペプチドのアミノ酸配列に影響しない「静かな」突然変異をもたらし得る。しかし、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の変化を引き起こすDNA配列多型が哺乳類間に存在することが予想される。当業者には当然のことながら、特定のタンパク質をコードする核酸の一つ以上のヌクレオチド(ヌクレオチド中の約3〜5%以下)のこれらの変異が、天然の対立遺伝子変異により、所定の種の個体中に存在し得る。このようなヌクレオチド変異および結果としてのアミノ酸多型は、いずれも全て本発明の範囲内である。
【0064】
一定の実施形態では、本発明の組換え核酸は、発現コンストラクトにおいて一つ以上の制御ヌクレオチド配列に作動可能に連結されうる。制御ヌクレオチド配列は、一般に発現に使用される宿主細胞に適切である。様々な宿主細胞のための、多数の種類の適切な発現ベクターおよび適切な制御配列が、従来技術で周知である。典型的には、当該一つ以上の制御ヌクレオチド配列には、プロモータ配列、リーダーまたはシグナル配列、リボゾーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサまたはアクチベーター配列が含まれるが、これに限られない。周知の構成的プロモータまたは誘導性プロモータが、本発明に予定される。プロモータは、天然のプロモータまたは複数のプロモータ要素を組み合わせるハイブリッドプロモーターのいずれかでありうる。発現コンストラクトは、細胞内においてプラスミドなどのエピソームとして存在してもよいし、発現コンストラクトは、染色体に挿入されてもよい。好ましい実施形態では、発現ベクターには、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための、選択可能なマーカー遺伝子が含まれる。選択可能なマーカー遺伝子は公知技術であり、使用する宿主細胞により異なる。
【0065】
本発明の一定の態様においては、目的の核酸は、ActRIIaポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供され、少なくとも一つの制御配列に作動可能に連結される。制御配列は、当分野で認められており、ActRIIaポリペプチドの発現を導くように選択される。したがって、制御配列という用語には、プロモータ、エンハンサおよび他の発現制御エレメントが含まれる。例示的な制御配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990年)に記載される。例えば、DNA配列に作動可能に連結された場合にその発現を制御する様々な発現制御配列の任意のものを、これらのベクターにおいて使用して、ActRIIaポリペプチドをコードするDNA配列を発現させうる。このような有用な発現制御配列には、たとえばSV40の初期および後期プロモータ、tetプロモータ、アデノウイルスまたはサイトメガロウィルス最初期プロモータ、RSVプロモータ、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼにより発現が導かれるT7プロモータ、λファージの主要なオペレータおよびプロモータ領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモータ、Pho5などの酸性ホスファターゼのプロモータ、酵母α接合系のプロモータ、バキュロウイルスシステムの多角体プロモータ、および、原核または真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、ならびにそれらの種々の組み合わせが含まれる。当然のことながら、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、および/または発現させたいタンパク質のタイプなどの要素に依存しうる。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、および、抗生物質マーカーなど、ベクターによりコードされる任意の他のタンパク質の発現も、考慮されなければならない。
【0066】
本発明の組換え核酸は、クローン化遺伝子またはその部分を、原核細胞、真核細胞(イースト、鳥、昆虫または哺乳類)、または両方における発現に適するベクターに、ライゲーションすることにより産出できる。組換えActRIIaポリペプチドを産出するための発現媒体には、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、以下のタイプのプラスミドが含まれる:大腸菌(E.coli)など、原核生物細胞における発現用のpBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミド、およびpUC由来のプラスミド。
【0067】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を促進するための原核細胞の配列を有し、真核細胞で発現する一つ以上の真核生物の転写ユニットも有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo、およびpHygに由来するベクターが、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターの一部は、原核細胞および真核細胞の両方における複製と薬剤耐性選択を促進するために、pBR322などの細菌プラスミドの配列により修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)、またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来、およびp205)などのウイルスの誘導体を、真核細胞におけるタンパク質の一時的発現に使用できる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、以下の遺伝子治療送達システムの記載の中に見ることができる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換に使用される種々の方法が、公知技術である。原核細胞および真核細胞の両方に適切な他の発現系、ならびに一般的な組換え方法については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第3版,Sambrook,Fritsch,およびManiatis編集(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001年)を参照。一定の場合には、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現することが望ましい。このようなバキュロウイルス発現系の例には、pVL−由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393、およびpVL941)、pAcUW−由来のベクター(例えば、pAcUW1)、およびpBlueBac−由来のベクター(たとえば、β−gal含有性pBlueBac III)が含まれる。
【0068】
好ましい実施形態では、ベクターは、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,カリフォルニア州ラホヤ)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)、およびpCIネオ・ベクター(Promega,ウィスコンシン州マディソン)など、CHO細胞における目的のActRIIaポリペプチドの産出のためにデザインされる。明らかながら、目的の遺伝子コンストラクトを用いて、培養で繁殖させた細胞に目的のActRIIaポリペプチドを発現させることにより、例えば融合タンパク質または変異体タンパク質を含めたタンパク質を産出し、精製しうる。
【0069】
本開示は、目的のActRIIaポリペプチドの一つ以上のコード配列(例えば配列番号4または5)を含む組換え遺伝子によりトランスフェクションされる宿主細胞にも関連する。宿主細胞は、任意の原核生物または真核生物細胞でありうる。例えば、本発明のActRIIaポリペプチドを、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用)、イースト、または哺乳動物細胞に発現させうる。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0070】
したがって本発明は、目的のActRIIaポリペプチドを産出する方法にさらに関連する。例えば、ActRIIaポリペプチドをコードする発現ベクターによりトランスフェクションされた宿主細胞を、適切な条件下で培養して、ActRIIaポリペプチドを発現させることができる。ActRIIaポリペプチドが、細胞とActRIIaポリペプチドを含む培地の混合物から分泌され、単離されうる。あるいは、ActRIIaポリペプチドは、細胞質または膜分画に維持され、細胞が採取され、溶解され、タンパク質が単離されればよい。細胞培養には、宿主細胞、培地および他の副産物が含まれる。細胞培養の適切な培地は、公知技術である。目的のActRIIaポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、限外濾過、電気泳動、ActRIIaポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体によるイムノアフィニティー精製、およびActRIIaポリペプチドに融合されたドメインと結合する薬剤によるアフィニティー精製(例えば、プロテインAカラムを使用してActRIIa−Fc融合を精製しうる)を含む、タンパク質を精製する公知技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞、または両者から単離されうる。好ましい実施形態においては、ActRIIaポリペプチドは、その精製を促進するドメインを含む融合タンパク質である。好ましい実施形態においては、精製は、一連のカラムクロマトグラフィの工程により行われる。これには例えば、任意の順序で以下のうちの三つ以上が含まれる:プロテインAクロマトグラフィ、Qセファロースクロマトグラフィ、フェニルセファロースクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィ。精製は、ウイルス濾過およびバッファー交換で完了しうる。本明細書に示されるとおり、ActRIIa−hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィによる測定により>98%の純度、SDS PAGEによる測定により>95%の純度に精製された。このレベルの純度は、マウスの骨に対する望ましい効果、ならびにマウス、ラット、およびヒト以外の霊長類における許容できる安全性プロフィルを達成するために十分だった。
【0071】
別の実施形態では、組換えActRIIaポリペプチドの所望の部分のN末端のポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列などの、精製リーダー配列をコードする融合タンパク質によって、Ni2+金属樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィによる、発現融合タンパク質の精製が可能になりうる。その後エンテロキナーゼによる処理により精製リーダー配列を除去し、精製ActRIIaポリペプチドを提供し得る(たとえばHochuli等,(1987年)J.Chromatography 411:177;およびJanknecht等,PNAS USA 88:8972を参照)。
【0072】
融合遺伝子を作製する技術は、周知である。基本的には、従来技術により、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、粘着末端の適切な充填、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーションを用いて、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の連結を行いうる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動化されたDNA合成装置を含む従来技術により合成できる。あるいは、二つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うことができ、その後二つの連続した遺伝子フラグメントをアニーリングし、キメラ遺伝子配列を生成することができる(たとえばCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel等,John Wiley & Sons:1992年を参照)。
【0073】
4.代替アクチビンおよびActRIIaアンタゴニスト
本明細書に提示されるデータは、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達のアンタゴニストを用いて、骨成長および骨石灰化を促進できることを示す。可溶性ActRIIaポリペプチド、および特にActrlla−Fcが好ましいアンタゴニストであり、このようなアンタゴニストはアクチビン拮抗作用以外の機序により骨に影響しうるが(たとえばアクチビンの阻害は、薬剤が、TGFベータスーパーファミリーに属する他のメンバーをおそらく含む分子のスペクトルの活性を阻害する傾向の指標となり得、そのような集団的な阻害が、骨に対する所望の効果をもたらしうる)、抗アクチビン(例えばA、B、CまたはE)抗体、抗ActRIIa抗体、アンチセンス、ActRIIaの産出を阻害するRNAiまたはリボザイムの核酸および、特にアクチビン−ActRIIaの結合を阻害する、アクチビンまたはActRIIaのその他の阻害物質を含む、他のタイプのアクチビン−ActRIIaアンタゴニストも有用であると予想される。
【0074】
ActRIIaポリペプチド(例えば可溶性ActRIIaポリペプチド)に特異的に反応し、ActRIIaポリペプチドと競合してリガンドに結合するか、ActRIIaを介したシグナル伝達を阻害する抗体を、ActRIIaポリペプチド活性のアンタゴニストとして使用しうる。同様に、アクチビンAポリペプチドに特異的に反応し、ActRIIaの結合を阻害する抗体を、アンタゴニストとして使用しうる。
【0075】
ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチドから得た免疫原を用いて、標準プロトコルにより抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体を作製できる(たとえばHarlowおよびLane編集、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press:1988年)を参照)。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳類を、免疫原の形のActRIIaポリペプチド、抗体反応を誘発できる抗原のフラグメント、または融合タンパク質で免疫化しうる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を与える技術には、担体への接合または他の公知技術が含まれる。ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドの免疫原の部分を、補助剤の存在下で投与できる。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体価の検出によりモニタできる。免疫原を抗体のレベルを評価する抗原として用いた、標準ELISAまたは他のイムノアッセイを利用できる。
【0076】
ActRIIaポリペプチドの抗原調製物により動物を免疫化した後、抗血清を得、必要に応じてポリクローナル抗体を血清から単離できる。モノクローナル抗体をつくるためには、免疫化した動物から抗体産生細胞(リンパ球)を採取し、標準の体細胞融合法により骨髄腫細胞等の不死化細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を産生しうる。このような技術は公知技術であり、例えば、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilsteinが最初に開発、(1975年)Nature,256:495−497)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbar等,(1983年)Immunology Today,4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Cole等,(1985年)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.pp.77−96)が含まれる。ActRIIaポリペプチドに特異的に反応する抗体の産出につき
ハイブリドーマ細胞を免疫化学的にスクリーニングし、このようなハイブリドーマ細胞を含む培養から、モノクローナル抗体を単離できる。
【0077】
本明細書で用いられるところの「抗体」という用語には、やはり当該ポリペプチドに特異的に反応するフラグメントも含まれる。抗体は従来技術を使用してフラグメント化でき、完全な抗体につき上述したのと同様に、フラグメントの有用性をスクリーニングしうる。例えば、抗体をペプシンで処置することにより、F(ab)2フラグメントを生成できる。得られたF(ab)2フラグメントに、ジスルフィド架橋を減らす処置を行い、Fabフラグメントを産出できる。本発明の抗体にはさらに、抗体の少なくとも一つのCDR領域によって与えられるActRIIaまたはアクチビンポリペプチドに対する親和性を有する二重特異性、一本鎖、キメラ、ヒト化および完全ヒト分子も含まれる。抗体にはさらに標識が取り付けられ、検出されうる(たとえば標識は、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、酵素または酵素補因子でありうる)。
【0078】
一定の実施形態においては、抗体は組換え抗体であり、この用語には、CDR移植またはキメラ抗体、ライブラリから選択された抗体ドメインからなるヒトまたは他の抗体、一本鎖抗体および単一ドメイン抗体(例えばヒトVHタンパク質またはラクダ科VHHタンパク質)を含め、一部分子生物学の技術により生み出される任意の抗体が含まれる。一定の実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、一定の実施形態では、本発明により、新規の抗体をつくる方法が得られる。たとえば、ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生み出す方法には、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効な量の抗原ポリペプチドを含む免疫原組成物をマウスに投与する工程と、マウスから抗体産生細胞(例えば脾臓の細胞)を得て抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させ、抗体産生ハイブリドーマを得る工程と、抗体産生ハイブリドーマをテストして、抗原に特異的に結合するモノコローナル(monocolonal)抗体を産出するハイブリドーマを特定する工程が含まれうる。得られたハイブリドーマは、細胞培養において、選択的に、ハイブリドーマ由来の細胞が抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産出する培養条件で、繁殖させうる。細胞培養からモノクローナル抗体を精製しうる。
【0079】
抗体について用いられる「特異的に反応する」という形容詞は、従来技術において一般に理解されているように、抗体が、目的の抗原(例えばActRIIaポリペプチド)と目的以外の他の抗原との間で十分に選択的であるために、抗体が、少なくとも特定のタイプの生体試料中の目的の抗原の存在を検出するのに役立つことを意味する。治療的応用など、抗体を用いた一定の方法では、より高い結合の特異性が望ましい。モノクローナル抗体は一般に、所望の抗原と交差反応ポリペプチドを有効に識別する傾向(ポリクローナル抗体と比較して)が強い。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を与える一つの特性は、抗体の抗原に対する親和性である。所望の特異性は、様々な親和性の範囲で達されうるが、一般に好ましい抗体は、約10−6、10−7、10−8、10−9またはそれ以下の親和性(解離定数)を有する。アクチビンとActRIIaの間の非常に強力な結合を前提とすると、中和抗アクチビンまたは抗ActRIIa抗体は一般に、10−10またはそれ以下の解離定数を有すると予想される。
【0080】
さらに、望ましい抗体を同定するための抗体のスクリーニングに用いられる技術が、得られる抗体の特性に影響を与えうる。例えば、溶液中の抗原を結合するために抗体が使用される場合には、溶液の結合をテストすることが望ましいであろう。抗体と抗原の間の相互作用をテストして特に望ましい抗体を同定するために、様々な異なる技術を利用できる。このような技術には、ELISAs、表面プラスモン共鳴結合アッセイ(例えばBiacore(商標)結合アッセイ、Biacore AB,ウプサラ,スウェーデン)、サンドイッチアッセイ(たとえばIGEN International,Inc.,メリーランド州ゲイザーズバーグの常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学が含まれる。
【0081】
アクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストである核酸化合物のカテゴリの例には、アンチセンス核酸、RNAiコンストラクトおよび触媒核酸コンストラクトが含まれる。核酸化合物は、一本鎖または二本鎖でありうる。二本鎖化合物には、鎖のいずれか一方が一本鎖である、オーバーハングまたは非相補的領域も含まれうる。一本鎖化合物は、自己相補的な領域を含みうる。すなわち化合物は、二重螺旋構造の領域をもつ、いわゆる「ヘアピン」または「ステム−ループ」構造を形成する。核酸化合物には、全長ActRIIa核酸配列またはアクチビンβAまたはアクチビンβB核酸配列の1000以下、500以下、250以下、100以下または50、35、30、25、22、20または18以下のヌクレオチドからなる領域と相補的なヌクレオチド配列が含まれうる。相補的領域は少なくとも8ヌクレオチドであることが好ましく、選択的に少なくとも10または少なくとも15ヌクレオチド、および選択的に15〜25ヌクレオチドの間である。相補的領域は、コード配列部分など、標的転写産物のイントロン、コード配列、または非コード配列のどこにでも含まれうる。一般に、核酸酸化合物は約8〜約500ヌクレオチドの長さ、または塩基対の長さを有し、選択的に、約14〜約50ヌクレオチドの長さとなる。核酸は、DNA(特にアンチセンスとしての用途)、RNA、またはRNA:DNAハイブリッドでありうる。任意の一本鎖には、DNAおよびRNAの混合物、ならびにDNAともRNAとも直ちに分類できない修飾形態が含まれうる。同様に、二本鎖化合物はDNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAであり得、任意の一本鎖にはDNAおよびRNAの混合物、ならびにDNAともRNAとも直ちに分類できない修飾形態が含まれうる。核酸化合物には、バックボーン(ヌクレオチド間の連結を含む、天然核酸の糖−リン酸塩部分)または塩基部分(天然核酸のプリンまたはピリミジン部分)への一つまたは修飾を含む、様々な修飾の任意のものが含まれうる。アンチセンス核酸化合物は、好ましくは約15〜約30ヌクレオチドの長さを有し、細胞内、または経口的送達化合物の場合には胃や、吸入化合物の場合には肺などといった化合物が送達される可能性のある場所において、血清における安定性などの特性を改善する一つ以上の修飾を含むことが多い。RNAiコンストラクト場合には、標的転写産物に相補的な鎖は一般に、RNAまたはその修飾である。他の鎖は、RNA、DNAまたは他のバリエーションでありうる。二本鎖または一本鎖「ヘアピン」RNAiコンストラクトの二重部分は、Dicerの基質として利用できる限り、18〜40ヌクレオチドの長さを有するのが好ましく、選択的に約21〜23ヌクレオチドの長さとなる。触媒または酵素として働く核酸は、リボザイムまたはDNA酵素であればよく、修飾形態も含みうる。核酸化合物は、生理学的条件下およびナンセンスまたはセンスコントロールが効果をほとんど有しない濃度で細胞と接触させると、標的の発現を約50%、75%、90%またはそれ以上阻害できる。核酸化合物の効果をテストするのに好ましい濃度は、1、5および10ミクロモルである。核酸化合物は、例えば骨成長および石灰化に対する効果をテストすることもできる。
【0082】
5.スクリーニングアッセイ
一定の態様においては、本発明は、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(薬剤)を同定するための、ActRIIaポリペプチド(例えば可溶性ActRIIaポリペプチド)およびアクチビンポリペプチドの利用に関する。このスクリーニングで同定される化合物をテストして、インビトロで骨成長または石灰化を調整する能力を評価できる。選択的に、これらの化合物をさらに動物モデルでテストして、インビボで組織成長を調整する能力を評価できる。
【0083】
アクチビンおよびActRIIaポリペプチドを標的とすることにより組織成長を調整する治療薬をスクリーニングするには、多数のアプローチがある。一定の実施形態では、アクチビンまたはActRIIaを介した骨への効果を乱す薬剤を同定するために、化合物のハイ−スループットスクリーニングを行いうる。一定の実施形態では、ActRIIaポリペプチドのアクチビンに対する結合を特異的に阻害または減じる化合物をスクリーニングし、同定するために、アッセイが行われる。あるいは、ActRIIaポリペプチドのアクチビンに対する結合を増強する化合物を同定するために、アッセイを利用できる。さらなる実施形態では、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドと相互作用する能力により、化合物を同定できる。
【0084】
十分なアッセイフォーマットが様々あり、当業者が本開示を考慮すれば、本明細書に特に記載されていないものも包含される。本明細書に記載されるように、本発明のテスト化合物(薬剤)は、任意のコンビナトリアル化学法によりつくられうる。あるいは、当該化合物は、インビボまたはインビトロで合成される天然の生体分子でもよい。組織成長のモジュレーターとしての役割を果たす能力をテストされる化合物(薬剤)は、たとえば細菌、イースト、植物または他の生物(例えば天然物)などにより生産され、化学的に生産され(例えばペプチドミメティクスを含む小分子)、または組み換えにより生産されうる。本発明に予定されるテスト化合物には、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティクス、糖類、ホルモン類、および核酸分子が含まれる。特定の実施形態においては、試験薬剤は、約2,000ダルトンを下回る分子量を有する小有機分子である。
【0085】
本発明のテスト化合物は、単一の不連続的な存在として提供されることも、あるいは、例えばコンビナトリアル化学により作られる複雑度の高いライブラリにおいて提供されることもできる。これらのライブラリには、例えばアルコール類、ハロゲン化アルキル類、アミン類、アミド類、エステル類、アルデヒド類、エーテル類および他の種類の有機化合物が含まれうる。テストシステムへのテスト化合物の提示は、特に最初のスクリーニング工程では、単離された形でも、化合物の混合物としてでもよい。選択的に、化合物は他の化合物により選択的に誘導体化されればよく、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有する。誘導体化基の非限定的な例には、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位元素、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化可能な架橋剤またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0086】
化合物および天然抽出物のライブラリをテストする多くの薬物スクリーニング計画においては、所定の時間で調査される化合物の量を最大にするために、ハイスループットアッセイが望ましい。精製タンパク質または半精製タンパク質などを用いた無細胞系において実施されるアッセイは、テスト化合物により媒介される分子標的の迅速な開発および改変の比較的簡単な検出ができるように作製できるという点から、多くの場合「一次」スクリーニングとして好まれる。さらにインビトロ系では、テスト化合物の細胞毒性の効果および/またはその生物学的利用能を一般に無視でき、その代わりにアッセイは、ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の結合親和性の改変から明らかになる、分子標的への薬剤の効果に主に集中される。
【0087】
単なる例示として、本発明の代表的なスクリーニングアッセイにおいては、目的の化合物が、アクチビンに通常結合できる、単離および精製されたActRIIaポリペプチドと接触させられる。その後、化合物およびActRIIaポリペプチドの混合物に、ActRIIaリガンドを含む組成物が加えられる。ActRIIa/アクチビン複合体の検出および数量化は、ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の複合体形成を阻害する(または強化する)化合物の効力を判定する手段を提供する。テスト化合物の様々な濃度を使用して得られたデータから用量応答曲線を作製することにより、化合物の効力を評価できる。さらに、比較のベースラインを提供するために、コントロールアッセイも行われうる。例えば、コントロールアッセイでは、単離および精製されたアクチビンがActRIIaポリペプチドを含む組成物に加えられ、テスト化合物の非存在下でActRIIa/アクチビン複合体の形成が数量化される。当然のことながら、一般に、反応物が混合される順序は変えられ、同時に混合されてもよい。さらに、精製タンパク質の代わりに、細胞抽出物および溶解物用いて、適切な無細胞アッセイシステムを提供してもよい。
【0088】
ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の複合体形成は、様々な技術により検出できる。例えば、放射標識(例えば32P、35S、14Cまたは3H)、蛍光標識(例えばFITC)、または酵素標識されたActRIIaポリペプチドまたはアクチビンなど、検出可能に標識されたタンパク質を用いて、イムノアッセイにより、またはクロマトグラフィ検出により、複合体形成の変化を数量化できる。
【0089】
一定の実施形態では、本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質の間の相互作用の程度の直接または間接的な測定において、蛍光偏光法アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイの利用を予定する。さらに、光導波路に基づくもの(国際公開第96/26432号および米国特許第5,677,196号)、表面プラスモン共鳴(SPR)、表面電荷センサ、および表面力センサなど、他の検出の様式も本発明の多くの実施形態に適合する。
【0090】
さらに本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を阻害または強化する薬剤を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても知られる相互作用トラップアッセイの利用を予定する。たとえば、米国特許第5,283,317号;Zervos等(1993年)Cell 72:223−232;Madura等(1993年)J Biol Chem 268:12046−12054;Bartel等(1993年)Biotechniques 14:920−924;Iwabuchi等(1993年)Oncogene 8:1693−1696)を参照。特定の実施形態においては、本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を分離する化合物(例えば小分子またはペプチド)を同定するための、リバース・ツーハイブリッド系の利用を予定する。例えば、VidalおよびLegrain,(1999年)Nucleic Acids Res 27:919−29;VidalおよびLegrain,(1999年)Trends Biotechnol 17:374−81;および米国特許第5,525,490号;第5,955,280号;および第5,965,368号を参照。
【0091】
一定の実施形態では、目的の化合物は、本発明のActRIIaまたはアクチビンポリペプチドと相互作用する能力により同定される。化合物とActRIIaまたはアクチビンポリペプチドの間の相互作用は、共有結合的でも非共有結合的でもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射標識リガンド結合、およびアフィニティークロマトグラフィを含む、インビトロの生化学的方法を使用してタンパク質レベルで同定できる(Jakoby WB等,1974年,Methods in Enzymology 46:1)。一定の場合には、化合物は、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドに結合する化合物を検出するアッセイなど、機序ベースのアッセイでスクリーニングできる。これには、固相または液相結合事象が含まれうる。あるいは、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドをコードする遺伝子を、リポーターシステム(例えばβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)により細胞にトランスフェクションし、好ましくはハイスループット・スクリーニングにより、または、ライブラリの個々のメンバーにつき、ライブラリに対してスクリーニングしうる。たとえば自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイなど、他の機序ベースの結合アッセイを利用してもよい。結合アッセイは、標的をウェル、ビーズまたはチップに固定し、または固定された抗体に捕捉し、またはキャピラリー電気泳動法により分解して、行うことができる。結合した化合物は、比色または蛍光または表面プラスモン共鳴を通常使用して検出できる。
【0092】
一定の態様においては、本発明は、骨形成を調整(刺激または阻害)し、骨量を増加するための方法および薬剤を提供する。したがって、同定された任意の化合物を、細胞全体または組織においてインビトロまたはインビボでテストして、骨成長または石灰化を調整する能力を確認しうる。公知技術の様々な方法を、この目的に利用できる。
【0093】
例えば、細胞ベースのアッセイにおいて、Msx2の誘導または骨前駆細胞の造骨細胞への分化を測定することにより、骨または軟骨成長に対するActRIIaもしくはアクチビンポリペプチドまたはテスト化合物の効果を判定できる(たとえば、Daluiski等,Nat Genet.2001年,27(1):84−8;Hino等,Front Biosci.2004年,9:1520−9を参照)。細胞ベースのアッセイの別の例には、間葉系前駆細胞および骨芽細胞における、目的のActRIIaまたはアクチビンポリペプチドおよびテスト化合物の骨形成活性の分析が含まれる。例示として、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドを発現する組換えアデノウイルスを構築し、多分化能の間葉系前駆C3H10T1/2細胞、前骨芽C2C12細胞、および骨芽TE−85細胞にインフェクションしうる。その後、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、およびマトリクス石灰化の誘導を測定することにより、骨形成活性が判定される(たとえばCheng等,J bone Joint Surg Am.2003年,85−A(8):1544−52を参照)。
【0094】
本発明は、骨または軟骨成長を測定するための、インビボアッセイも予定する。たとえば、Namkung−Matthai等,Bone,28:80−86(2001年)は、ラットの骨粗鬆症モデルを開示し、骨折後初期の期間中の骨修復を研究している。Kubo等,Steroid Biochemistry & Molecular Biology,68:197−202(1999年)も、ラットの骨粗鬆症モデルを開示し、骨折後後期の期間中の骨修復を研究している。Andersson等,J.Endocrinol.170:529−537は、マウスの卵巣切除がなされ、そのためにマウスの骨塩量および骨塩密度が大幅に減少し、骨梁では骨塩密度がほぼ50%減少する、マウスの骨粗鬆症モデルを記載する。副甲状腺ホルモン等の因子の投与により、卵巣切除マウスの骨密度を高められる。一定の態様においては、本発明は、従来技術において周知の骨折治癒アッセイを利用する。これらのアッセイには、骨折技術、組織分析、および生体力学的分析が含まれ、これらはたとえば、骨折を生じさせ、骨折の程度を測定するための実験プロトコルおよび修復プロセスの開示が参照により全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,521,750号に記載されている。
【0095】
6.治療上の利用例
一定の実施形態においては、本発明のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト(例えばActRIIaポリペプチド)は、例えば、骨折、減少または脱灰を問わない骨損傷を伴う病気または状態を処置または予防するために使用できる。一定の実施形態においては、本発明は、治療的に有効な量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、特にActRIIaポリペプチドを個体に投与することにより、骨損傷を処置または予防するための方法を、それを必要とする個体に提供する。一定の実施形態においては、本発明は、治療的に有効な量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、特にActRIIaポリペプチドを個体に投与することにより、骨成長または石灰化を、それを必要とする個体において促進するための方法を提供する。これらの方法は、動物、より好ましくはヒトの、治療的および予防的処置を目的とする。一定の実施形態では、本開示は、低骨密度または骨強度の低下を伴う病気の処置のための、アクチビン−ActRIIaアンタゴニスト(特に可溶性ActRIIaポリペプチド、およびアクチビンまたはActRIIaを標的とする中和抗体)の利用を提供する。
【0096】
本明細書で使用されるところの、病気または状態を「予防する」治療とは、統計サンプルにおいて、未処置のコントロール試料と比較して、処置されたサンプルにおいて病気または状態の発生を減らすか、または、未処置のコントロール試料と比較して、病気または状態の一つ以上の症状の発症を遅らせ、または重症度を抑える化合物を指す。本明細書で用いられるところの「処置する」という用語には、特定の状態の予防、または、状態がいったん確定した後の改善または除去が含まれる。いずれの場合にも、予防または処置は、医師の提供する診断と治療薬の投与目的により識別されうる。
【0097】
本開示は、骨および/または軟骨形成を誘発し、骨量減少を予防し、骨石灰化を増加させ、または骨脱灰を予防するための方法を提供する。例えば、目的のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、ヒトおよび他の動物における骨粗鬆症の処置、ならびに骨折および軟骨欠損の治癒において適用される。ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドは、骨粗鬆症の進行に対する予防手段として、準臨床的な低骨密度と診断された患者に役立ちうる。
【0098】
一つの特定の実施形態においては、本発明の方法および組成物は、ヒトおよび他の動物における骨折および軟骨欠損の回復に医学的有用性を見出だすことができる。当該方法および組成物は、骨折の観血的整復ならびに非観血的整復、さらに人工関節の固定の改善において予防的に利用できる。骨形成剤により誘導される新たな骨形成は、先天性、外傷または腫瘍切除により誘発される頭蓋顔面の欠損の修復に貢献し、さらに美容整形外科手術においても有用である。一定の場合においては、目的のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、骨形成細胞を引きつけ、骨形成細胞の成長を刺激し、または骨形成細胞の前駆体の分化を誘発する環境を提供できる。本発明のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、骨粗鬆症の処置にも役立ちうる。
【0099】
本発明の方法および組成物は、骨粗鬆症(続発性骨粗鬆症を含む)、副甲状腺機能亢進症、クッシング病、パジェット病、甲状腺亢進症、慢性的な下痢状態または吸収不良、尿細管性アシドーシス、または神経性食欲不振など、骨量減少を特徴とするか、骨量減少を生じる状態に適用できる。
【0100】
骨粗鬆症は、様々な要因が原因となり、または関連する。女性、特に閉経期後の女性であること、低体重であること、坐位の生活様式は、すべて骨粗鬆症の危険因子である(骨折の危険につながる骨塩密度の減少)。以下のプロフィルのいずれかを有する人は、ActRIIaアンタゴニストによる処置の候補となりうる:閉経女性であり、エストロゲンまたは他のホルモン補充療法を受けていない女性;自分または母親に股関節部骨折または喫煙の経験がある人;背が高く(5フィート7インチ以上)または痩せている(125ポンド未満)閉経女性;骨量減少を伴う臨床状態をもつ男性;Prednisone(商標)などのコルチコステロイド、Dilantin(商標)および一定のバルビツレートなどの様々な抗発作薬、または高用量の甲状腺補充薬物を含む、骨量減少を生じることが知られている薬を使用している人;一型糖尿病、肝疾患、じん臓病、または家族に骨粗鬆症の人がいる人;骨代謝回転が高い人(例えば尿サンプル中のコラーゲンが過剰);甲状腺機能亢進症など、甲状腺機能異常の状態である人;軽い外傷だけで骨折が生じた人;X線から脊椎骨折または他の骨粗鬆症の兆候が判明した人。
【0101】
上述のとおり、骨粗鬆症は、別の病気に伴う状態として、または、一定の薬の使用から生じることもある。薬物または別の医学的状態から生じる骨粗鬆症は、続発性骨粗鬆症として知られている。クッシング病として知られる状態においては、体により産出される過剰なコルチゾールが、骨粗鬆症および骨折につながる。続発性骨粗鬆症に関連する最も一般的な薬は、コルチコステロイドであり、これは、副腎により自然に産出されるホルモンであるコルチゾールのように作用する薬物の種類である。骨格の発達には適切なレベルの甲状腺ホルモン(甲状腺により産出される)が必要であるが、過剰な甲状腺ホルモンは、しだいに骨量を減少させうる。アルミニウムを含む制酸剤は、腎障害の人、特に透析を受けている人が高用量で服用すると、骨量減少につながりうる。続発性骨粗鬆症を生じうる他の薬には、発作を予防するために使用されるフェニトイン(ディランチン)およびバルビツレート;一定の種類の関節炎、癌、および免疫不全のための薬物であるメトトレキセート(Rheumatrex、Immunex、Folex PFS);自己免疫疾患を処置し、臓器移植患者の免疫系を抑制するために使用される薬物である、サイクロスポリン(Sandimmune、Neoral);前立腺癌および子宮内膜症を処置するために使用される、黄体形成ホルモン放出ホルモンのアゴニスト(Lupron、Zoladex);抗凝固薬ヘパリン(Calciparine、Liquaemin);および高コレステロールを処置するために使用されるコレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)が含まれる。癌治療によって生じる骨量減少は、癌治療起因性骨量減少(CTIBL)と呼ばれて広く認識されている。骨転移により骨に空洞が生じうるが、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストによる処置によりこれを修正できる。
【0102】
好ましい実施形態においては、本明細書に開示されるアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、特に可溶性ActRIIaを、癌患者に使用できる。一定の腫瘍(例えば前立腺、乳腺、多発性骨髄腫、または副甲状腺機能亢進症を生じる任意の腫瘍)を患う患者は、腫瘍起因性骨量減少ならびに骨転移および治療薬による骨量減少のリスクが高い。このような患者は、骨量減少または骨転移の徴候がない場合であっても、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストで処置しうる。患者の骨量減少または骨転移の徴候をモニタして、指標がリスクの増加を示した場合に、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストで処置することもできる。一般に、骨密度の変化を評価するためにDEXAスキャンが用いられ、骨再形成の指標を用いて骨転移の可能性を評価できる。血清マーカーが、モニタされうる。骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)は、造骨細胞に存在する酵素である。骨転移およびその他の骨再形成の増加を生じる状態の患者においては、BSAPの血中濃度が増加する。オステオカルシンおよびプロコラーゲンペプチドも、骨形成および骨転移に関連する。前立腺癌による骨転移の患者、およびより、低い程度では乳癌からの骨転移の患者に、BSAPの増加が検出されている。骨形成タンパク質−7(BMP−7)のレベルは、骨に転移した前立腺癌では高いが、膀胱、皮膚、肝臓、または肺癌による骨転移では低い。I型カルボキシ末端テロペプチド(ICTP)は、骨吸収の間に形成されるコラーゲンに見られる架橋である。骨は常に破壊され、再形成されているため、ICTPは体中に見られる。しかし、骨転移の部位では、正常骨の領域よりもレベルが大幅に高くなる。前立腺、肺、および乳癌による骨転移においては、ICTPが高レベルで見られている。別のコラーゲン架橋であるI型N末端テロペプチド(NTx)は、骨代謝回転の間にICTPとともに産出される。肺、前立腺、および乳癌を含む多様なタイプの癌から生じる骨転移において、NTxの量が増加する。また、骨転移の進行とともにNTxのレベルが高まる。したがって、このマーカーは、転移の検出および病気の程度の測定の両方に用いることができる。他の吸収のマーカーには、ピリジノリンおよびデオキシピリジノリンが含まれる。吸収マーカーまたは骨転移マーカーの一切の増加は、患者にアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト治療が必要であることを示す。
【0103】
アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、他の医薬品と一緒に投与できる。共同投与は、単一の複合処方物の投与により、同時投与により、または、別々の時間での投与により行われうる。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、他の骨活性剤(bone−active agent)とともに投与されると、特に有益でありうる。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストとともに、カルシウム補助剤、ビタミンD、適切な運動および/または、場合によっては他の薬を併用することが、患者に利益となりうる。他の薬の例には、ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネートおよびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、副甲状腺ホルモンおよびラロキシフェンが含まれる。ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネートおよびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲンおよびラロキシフェンは、骨再形成サイクルに影響を及ぼし、抗吸収薬として分類される。骨再形成は、骨吸収および骨形成という二つの異なる段階からなる。抗吸収薬は、骨再形成サイクルの骨吸収の部分を減速または停止させるが、サイクルの骨形成の部分は減速させない。その結果、新たな形成が骨吸収より高い率で続き、骨密度がしだいに増加しうる。副甲状腺ホルモンの一種であるテリパラタイドは、骨再形成サイクルにおける骨形成の率を高める。アレンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の予防(一日5mgまたは週一回35mg)および処置(一日10mgまたは週一回70mg)の両方に承認されている。アレンドロネートは、骨量減少を抑え、骨密度を高め、脊椎、手首および股関節部骨折のリスクを減らす。アレンドロネートは、これらの薬(すなわち、プレドニソンおよびコーチゾン)の長期的利用の結果である男性および女性における糖質コルチコイド起因性骨粗鬆症の処置、および男性における骨粗鬆症の処置にも承認されている。アレンドロネートとビタミンDは、閉経女性の骨粗鬆症の処置(週一回70mgとビタミンD)、および骨粗鬆症の男性の骨量を改善するための処置に承認されている。イバンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の予防および処置のために承認されている。月一回のピル(150mg)として服用されるイバンドロネートは、毎月同じ日に服用されなければならない。イバンドロネートは、骨量減少を抑え、骨密度を高め、脊椎骨折のリスクを減らす。リセドロネートは、閉経後骨粗鬆症の予防および処置のために承認されている。毎日(5mg用量)または毎週(35mg用量、または、35mg用量とカルシウム)服用されるリセドロネートは、骨量減少を抑え、骨密度を高め、脊椎および非脊椎骨折のリスクを減らす。リセドロネートは、これらの薬(すなわち、プレドニソンまたはコーチゾン)の長期的利用から生じる糖質コルチコイド起因性骨粗鬆症を予防および/または処置するための、男性および女性による使用にも承認されている。カルシトニンは、カルシウム調節および骨代謝に関わる天然のホルモンである。閉経から5年以上経った女性においては、カルシトニンは骨量減少を抑え、脊椎の骨密度を高め、骨折に伴う痛みを和らげることができる。カルシトニンは、脊椎骨折のリスクを減らす。カルシトニンは、注射(毎日50−100IU)または点鼻薬(毎日200IU)として入手可能である。エストロゲン療法(ET)/ホルモン療法(HT)は、骨粗鬆症の予防に承認されている。ETは、閉経女性の骨量減少を抑え、脊椎および股関節部の両方の骨密度を高め、股関節部および脊椎の骨折リスクを減らすことが分かっている。ETは、最も一般的には、毎日約0.3mgの低用量、または毎日約0.625mgの標準用量を送達する、ピルまたは皮膚パッチの形で投与され、70歳を過ぎてから開始しても有効である。エストロゲンを単独で服用すると、女性が子宮内層の癌(子宮内膜癌)を発症するリスクが高まりうる。このリスクを除去するために、医療提供者は、完全な子宮を有する女性には、エストロゲン(ホルモン補充療法またはHT)とともにホルモンのプロゲスチンを処方する。ET/HTは、更年期症状を和らげ、骨の健康状態に有益な効果があることが分かっている。副作用には、膣出血、乳房圧痛、気分障害および胆嚢疾患が含まれうる。1日60mgのラロキシフェンは、閉経後骨粗鬆症の予防および処置に承認されている。これは、潜在的不都合を伴わずにエストロゲンの有益な効果を提供するために開発された、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERMs)と呼ばれる薬物の種類に属する。ラロキシフェンは、骨量を増加させ、脊椎骨折のリスクを減らす。ラロキシフェンが股関節および他の非脊椎骨折のリスクを減じうることを示すデータは、まだ入手不可能である。副甲状腺ホルモンの一種であるテリパラタイドは、骨折のリスクが高い閉経女性および男性の骨粗鬆症の処置に承認されている。この薬は、新規の骨形成を刺激し、骨塩密度を大幅に増加させる。閉経女性においては、脊椎、股関節部、足、肋骨および手首の骨折の減少が認められた。男性においては、脊椎の骨折減少が見られたが、他の部位での骨折減少を評価するためのデータは不足であった。テリパラタイドは、毎日注射により最高24ヶ月間自己投与される。
【0104】
7.医薬組成物
一定の実施形態では、本発明のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト(例えばActRIIaポリペプチド)は、薬学的に受容可能な担体とともに調製される。例えば、ActRIIaポリペプチドは、単独で投与されてもよいし、医薬処方物(治療組成物)の成分として投与されてもよい。目的の化合物は、人間または動物用医薬品に用いられる、任意の便利な方法による投与のために調製されうる。
【0105】
一定の実施形態では、本発明の治療法には、インプラントまたはデバイスとして、全身的または局所的に組成物を投与する工程が含まれる。投与される本発明に使用される治療組成物は、当然ながら発熱性物質を含まず、生理的に許容できる形態である。上述のとおり、組成物に選択的に含まれうるActRIIaアンタゴニスト以外の治療上役立つ薬剤も、本発明の方法において、当該化合物(例えばActRIIaポリペプチド)とともに、同時または順に投与されうる。
【0106】
典型的には、ActRIIaアンタゴニストは、非経口的に投与される。非経口投与に適切な医薬組成物には、一つ以上の薬学的に受容可能な無菌等張性の水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、または使用直前に無菌の注射可能な溶液または分散液に戻せる無菌粉末であり、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、処方物を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤または増粘剤を含みうるものと組み合わせた、一つ以上のActRIIaポリペプチドが含まれうる。本発明の医薬組成物に使用できる適切な水性および非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル類が含まれる。適当な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング材の使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持できる。
【0107】
さらに組成物は、標的組織部位(例えば骨)に送達するための形にカプセル化または注入されればよい。一定の実施形態では、本発明の組成物には、一つ以上の治療化合物(例えばActRIIaポリペプチド)を標的組織部位(例えば骨)に送達し、発達する組織のための構造を提供し、最適には体内に吸収されることが可能なマトリクスが含まれうる。例えば、マトリクスは、ActRIIaポリペプチドの徐放を提供しうる。このようなマトリクスは、他の移植用医療品に現在使用される物質から形成できる。
【0108】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、力学的性質、審美的な外観およびインターフェイス特性に基づく。当該組成物の特定の用途により、どのような処方物が適切かが決まる。組成物の潜在的マトリクスは、生分解性であり、化学的に定義された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、およびポリアンヒドリドでありうる。他の潜在的マトリクスは、生分解性であり、生物学的に明確に定義された、例えば骨又は真皮コラーゲンである。さらなるマトリクスは純粋タンパク質又は細胞外マトリクス成分からなる。他の潜在的マトリクスは、非生分解性であり、化学的に定義された、例えば焼結ヒドロキシアパタイト、生体ガラス、アルミナート、または他のセラミクスである。マトリクスは上述の任意の種類の材料、例えばポリ乳酸およびヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムの組合せからなってもよい。バイオセラミクスは、カルシウム−アルミナート−ホスファートなど、組成を変更でき、孔径、粒子径、粒子形および生分解性を変更するためのプロセスが施されていてもよい。
【0109】
一定の実施形態においては、本発明の方法は、たとえば、予め決められた量の薬剤を主成分としてそれぞれ含む、カプセル、カシェ剤、ピル、錠剤、トローチ剤(風味をつけた基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカンタを使用)、粉剤、顆粒剤の形で、または、水性もしくは非水性の溶液もしくは懸濁液として、または、水中油もしくは油中水の乳濁液として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性の基剤を使用)として、および/または口内洗剤などとして、経口的に行われうる。薬剤は、ボーラス、し剤またはペーストとして投与されることもできる。
【0110】
経口投与のための固体投与形態(カプセル、錠剤、ピル、糖衣丸、粉剤、顆粒剤など)においては、本発明の一つ以上の治療化合物を、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなどの一つ以上の薬学的に受容可能な担体および/または以下の任意のものと混合できる:(1)デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸等の充填材または増量剤;(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアカシア等の結合剤;(3)グリセロール等の保湿剤:(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、一定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム等の崩壊剤;(5)パラフィン等の溶液緩染剤;(6)第四アンモニウム化合物等の吸収促進剤;(7)たとえばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物等の潤滑剤;および(10)着色剤。カプセル剤、錠剤およびピルの場合には、医薬組成物には緩衝剤も含まれうる。ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセルの充填剤として、同様のタイプの固形組成物を使用してもよい。
【0111】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に受容可能な乳濁液、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形には、活性成分に加えて、水や他の溶媒のような当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、溶解剤および乳化剤、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に綿実、ラッカセイ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステルなど、およびそれらの混合物を含みうる。経口組成物には、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および保存剤などの補助剤も含みうる。
【0112】
懸濁液には、活性化合物に加えて、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁剤が含まれうる。
【0113】
本発明の組成物には、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤も含まれうる。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など、様々な抗菌剤および抗真菌剤を含むことにより確保され得る。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含むことが望ましい場合もある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤を含むことにより、注射可能型薬剤形態の吸収を遅延させることができる。
【0114】
当然のことながら、用法用量は、本発明の目的の化合物(例えばActRIIaポリペプチド)の作用を変更する様々な要因を考えて、主治医により判断される。様々な要因には、限定はされないが、形成されるのが好ましい骨重量、骨密度の減少の程度、骨損傷の部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別、および食生活、骨量減少に寄与している可能性のある任意の病気の重症度、投与の時間、および他の臨床的要因が挙げられる。選択的に、投与量は、再構築に使用されるマトリクスのタイプおよび組成物中の化合物のタイプにより異なりうる。最終的組成物に他の公知の成長因子を加えることも、投与量に影響しうる。例えばX線(DEXAを含む)、組織形態学的調査、およびテトラサイクリン標識による、骨成長および/または修復の周期的評価により、進行をモニタできる。
【0115】
マウスによる実験で、血清濃度が0.2μg/kg以上となるのに十分な間隔および量で化合物が投薬される場合に、骨に対するActRIIa−Fcの効果が検出可能であることが示されており、骨密度および骨強度に対する有意な効果を達成する上では、1μg/kgまたは2μg/kg以上の血中濃度が望ましい。より高用量のActRIIa−Fcは副作用のために不適当であるという徴候はないが、投与レジメンは、血清濃度が0.2〜15μg/kgの間、および選択的に1〜5μg/kgの間になるように設計されうる。ヒトにおいては、0.1mg/kg以上の一回量により0.2μg/kgの血清濃度を達成でき、0.3mg/kg以上の一回量により1μg/kgの血清濃度を達成できる。観察された分子の血中半減期は、約20日と30日との間であり、大抵のFc融合タンパク質より大幅に長く、したがって、例えば0.2〜0.4mg/kgを毎週または隔週の頻度で投薬することにより、有効な血清濃度を持続でき、あるいは投薬の間隔をもっとあけて、さらに高用量が用いられてもよい。例えば、1〜3mg/kgの用量が、毎月または隔月の頻度で使用されてもよく、骨に対する効果は十分に持続しうるため、投薬は3、4、5、6、9、12ヶ月またはそれ以上に一度で足りる。
【0116】
一定の実施形態では、本発明は、ActRIIaポリペプチドのインビボ産出のための遺伝子治療も提供する。このような療法は、上に列挙されたような病気を有する細胞または組織にActRIIaポリヌクレオチド配列を導入することにより、治療効果を達成する。ActRIIaポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスまたはコロイド分散系などの組換え発現ベクターを使用して達成できる。ActRIIaポリヌクレオチド配列の治療的送達に好ましいのは、標的リポソームの利用である。
【0117】
本明細書に教示される遺伝子治療に利用できる様々なウィルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが含まれる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、ネズミ科または鳥類のレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、およびニワトリ肉腫ウイルス(RSV)などが含まれる。多くの他のレトロウイルスベクターが、複数の遺伝子を組み込みうる。これらベクターの全てが、形質導入細胞を同定および作製できるように、選択マーカーの遺伝子を移入または組み込むことができる。例えば、糖、グリコリピド、またはタンパク質を付着させることにより、レトロウイルスベクターを標的特異的にできる。抗体を用いることにより標的化を行うことが好ましい。特異的ポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノム中に挿入し、またはウイルス・エンベロープに付着して、ActRIIaポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターを標的特異的に送達できることは当業者に公知である。好ましい実施形態では、ベクターは、骨または軟骨を標的とする。
【0118】
あるいは、レトロウイルスの構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドにより、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、培養細胞を直接トランスフェクションできる。これらの細胞はその後、目的の遺伝子を含むベクタープラスミドによりトランスフェクションされる。得られた細胞が、培地にレトロウイルスベクターを放出する。
【0119】
ActRIIaポリヌクレオチドの別の標的送達システムは、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、および、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。本発明の好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボにおける送逹媒体として有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよび完全なビリオンを、水性の内部に被包し、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(たとえばFraley,等,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981年を参照)。リポソーム媒体を用いた効率的な遺伝子導入の方法は、公知技術であり、たとえばMannino,等,Biotechniques,6:682,1988年を参照。リポソームの組成は、通常は、リン脂質の組み合わせであり、ステロイド、特にコレステロールと組み合わせられるのが通常である。他のリン脂質または他の脂質が用いられてもよい。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0120】
リポソーム生成に有用な脂質には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴリピド、セレブロシド、およびガングリオシドなどのホスファチジル化合物が含まれる。代表的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。リポソームの標的化は、例えば、臓器特異性、細胞特異性、および小器官特異性に基づくこともでき、当該分野において公知である。
【実施例】
【0121】
本発明を一般的に記載したが、以下の実施例を参照することで理解がさらに容易になる。以下の実施例は、一定の実施形態および本発明の実施形態を説明する目的で含まれるにすぎず、本発明を制限することを意図したものではない。
【0122】
(実施例1:ActRIIa−Fc融合タンパク質)
出願人は、必要最低限のリンカーにより、ヒトまたはマウスのFcドメインに融合されたヒトActRIIaの細胞外ドメインを有する、可溶性ActRIIa融合タンパク質を構築した。コンストラクトはそれぞれ、ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcと呼ばれる。
【0123】
CHO細胞株から精製されたActRIIa−hFcは、以下に示される(配列番号7):
【0124】
【化6】
ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcタンパク質は、CHO細胞株に発現された。三つの異なるリーダー配列が考えられた:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号8)
(ii)組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号9)
(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号10)。
【0125】
選択された形は、TPAリーダーを用い、以下の加工されていないアミノ酸配列を有する:
【0126】
【化7】
このポリペプチドは、以下の核酸配列によりコードされる:
【0127】
【化8】
ActRIIa−hFcもActRIIa−mFcも、組換え発現に非常に適した。図1に示されるように、タンパク質は、タンパク質の単一の明確なピークとして精製された。N末端シーケンシングにより、ILGRSETQEの単一配列が明らかになった(配列番号11)。精製は、例えば、以下の三つ以上を任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィ工程により行いうる:プロテインAクロマトグラフィ、Qセファロースクロマトグラフィ、フェニルセファロースクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィ。精製は、ウイルス濾過およびバッファー交換で完了しうる。ActRIIa−hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィによる測定により>98%の純度、およびSDS PAGEによる測定により>95%の純度に精製された。
【0128】
ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcは、リガンド、特にアクチビンAに対する高親和性を示した。GDF−11またはアクチビンA(「ActA」)は、標準のアミンカップリング法を用いてBiacore CM5チップに固定された。ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcタンパク質がシステムにロードされ、結合が測定された。ActRIIa−hFcは5x10−12の解離定数(KD)でアクチビンに結合し、タンパク質は9.96x10−9のKDでGDF11に結合した。図2を参照。ActRIIa−mFcも、同様に作用した。
【0129】
A−204レポータージーンアッセイを用いて、GDF−11およびアクチビンAによるシグナル伝達に対するActRIIa−hFcタンパク質の効果を評価した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉から得たもの)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennler等,1998年,EMBO 17:3091−3100に記載。)図3を参照。CAGA12モティーフはTGF−ベータ応答遺伝子(PAI−1遺伝子)に存在するため、このベクターはSmad2および3を経由するシグナル伝達因子で一般的に利用される。
【0130】
1日目:A−204細胞を48ウェルプレートに分割する。
【0131】
2日目:A−204細胞が、10μgのpGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10μg)+pRLCMV(1μg)およびFugeneでトランスフェクションされる。
【0132】
3日目:因子を加える(培地+0.1%BSAに希釈)。阻害剤は、細胞に加える前に、因子とともに1時間プレインキュベートすることが必要である。6時間後に、細胞をPBSで洗浄し、細胞を溶解する。
【0133】
次にルシフェラーゼアッセイが行われる。このアッセイでは典型的に、阻害剤の非存在下で、アクチビンAはリポーター遺伝子発現に関して約10倍の促進を示し、ED50は〜2ng/mlである。GDF−11:16倍の促進、ED50:〜1.5ng/ml。GDF−8は、GDF−11と類似の効果を示す。
【0134】
図4に示されるように、ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcは、ピコモルのオーダーの濃度でGDF−8を介したシグナル伝達を阻害する。図5に示されるように、ActRIIa−hFcの三つの異なる調製物は、約200pMのIC50でGDF−11のシグナル伝達を阻害した。
【0135】
ActRIIa−hFcは、薬物動態学的研究において極めて安定していた。1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのActRIIa−hFcタンパク質がラットに投薬され、24、48、72、144および168時間でのタンパク質の血漿中濃度が測定された。別の研究においては、1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgがラットに投薬された。ラットにおいて、ActRIIa−hFcは11〜14日の血中半減期を有し、2週後における薬物の循環レベルは非常に高かった(最初の投与1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgに対してそれぞれ、11μg/ml、110μg/mlまたは304μg/ml。)カニクイザルにおいては、血漿中半減期は14日よりずっと長く、薬物の循環レベルは、最初の投与1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgに対してそれぞれ、25μg/ml、304μg/mlまたは1440μg/mlであった。ヒトにおける予備段階の結果からは、血中半減期が約20日と30日との間であることが示唆される。
【0136】
(実施例2:ActRIIa−mFcはインビボで骨成長を促進する)
正常な雌のマウス(BALB/c)に、ActRIIa−mFcを、1mg/kg/用量、3mg/kg/用量または10mg/kg/用量のレベルで、週に二回投薬した。骨塩密度および骨塩量がDEXAで判定された、図6を参照。
【0137】
BALB/c雌のマウスにおいては、DEXAスキャンにより、ActRIIa−mFcによる処置の結果として、骨塩密度および量に実質的増加(>20%)が見られた。図7および8を参照。
【0138】
したがって、ActRIIaの拮抗作用により、正常な雌のマウスにおいて、骨密度および量の増加が生じた。次の工程として、骨粗鬆症のマウスモデルの骨に対する、ActRIIa−mFcの効果がテストされた。
【0139】
Andersson等(2001年)は、卵巣を切除されたマウスの骨量が大幅に減少(手術から6週間後に骨梁が大体50%減少)すること、およびこれらのマウスの骨量減少が、副甲状腺ホルモンなどの候補治療薬により修正されうることを証明した。
【0140】
出願人は卵巣切除(OVX)、または偽手術を施した、生後4−5週間のC57BL6雌のマウスを使用した。手術後8週で、ActRIIa−mFc(10mg/kg、毎週二回)またはコントロール(PBS)による処置が開始された。骨密度が、CTスキャナで測定された。
【0141】
図9に示されるように、6週後において、未処置の卵巣切除マウスには、虚手術のコントロールと比較して骨梁密度の大幅な減少が見られた。ActRIIa−mFcによる処置により、骨密度は虚手術マウスのレベルまで回復した。処置から6および12週目には、ActRIIa−mFcにより、OVXマウスの骨梁が大幅に増加した。図10を参照。処置から6週間後には、骨密度は、PBSコントロールと比較して24%増加した。12週後には、増加は27%であった。
【0142】
虚手術マウスにおいても、ActRIIa−mFcは、骨梁の実質的増加をもたらした。図11を参照。6および12週後には、処置により、コントロールと比較して35%の増加が生じた。
【0143】
さらなる一連の実験においては、上述のように卵巣切除(OVX)または虚手術を施したマウスが、12週にわたりActRIIa−mFc(10mg/kg、毎週二回)またはコントロール(PBS)で処置された。ActRIIa−mFcにつき上述した結果と同様に、ActRIIa−mFcを受けているOVXマウスは、骨梁密度が早くも四週後に15%増加し、処置から12週後には25%増加した(図12)。ActRIIa−mFcを受けている虚手術マウスも、同様に、骨梁密度が早くも四週後に22%増加し、処置から12週後には32%増加した(図13)。
【0144】
ActRIIa−mFcによる処置から12週後には、全身およびエキソビボ大腿骨DEXA分析から、処置により、卵巣切除および虚手術を施したマウスの両方において骨密度の増加が誘発されることが示された(それぞれ図14Aおよび14B)。これらの結果は、ActRIIa−mFcによる処置から12週後における、総骨密度および皮質骨密度の実質的増加を示した、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析によっても支持される。溶媒で処置されたコントロールの卵巣切除マウスは、溶媒で処置された偽手術マウスと同等の骨密度を示した(図15)。ActRIIa−mFCの処置後には、骨密度に加えて、骨量が増加した。大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析により、ActRIIa−mFcによる処置から12週後における、総骨量および皮質骨量の実質的増加が示され、卵巣切除および偽手術を受けた溶媒で処置されたコントロールマウスは、同等の骨量を示した(図16)。大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析により、ActRIIa−mFcで処置されたマウスにおいて、骨膜周径が変化しないことも示された;しかしActRIIa−mFcの処置により、骨内膜周径が減少し、このことは、大腿骨の内部表面の成長による皮質厚の増加を示している(図17)。
【0145】
大腿骨の機械的テストからは、ActRIIa−mFcにより骨の外的特性(最大負荷、剛さおよび破壊強度)を高めることができ、これが骨の内的特性(極限強度)の実質的増加に寄与したことが測定された。ActRIIa−mFcで処置された卵巣切除マウスは、偽手術の、溶媒処置されたコントロールを上回るレベルまで骨強度が増加し、骨粗鬆症の表現型とは完全に逆になった(図18)。
【0146】
これらのデータは、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストにより正常な雌のマウスにおける骨密度を高められ、さらに、骨粗鬆症のマウスモデルにおいて、骨密度、骨量、および究極的には骨強度の異常を修正しうることを示す。
【0147】
さらなる一連の実験においては、マウスは4週目に卵巣切除または偽手術を施され、12週目から開始してさらに12週間にわたり、プラセボまたはActRIIa−mFc(2回/週、10mg/kg)を受けた(図19−24でRAP−11とも称される)。様々な骨パラメータが評価された。図19に示されるように、ActRIIa−mFcにより、OVXおよびSHAM手術マウスの両方において、全体積に対する脊椎の骨梁体積の比率(BV/TV)が増加した。ActRIIa−mFcにより、骨梁構造も改善し(図20)、皮質厚も増加し(図21)、骨強度も改善した(図22)。図23に示されるように、ActRIIa−mFcは、1mg/kgから10mg/kgの用量の範囲で、望ましい効果を生み出した。
【0148】
偽手術マウスにおいて、2週目時点で、骨組織形態計測が行われた。図24に示されるこれらのデータからは、ActRIIa−mFcが、骨吸収を阻害するとともに骨成長を促進する、二重の効果を有することを示す。したがって、ActRIIa−mFcは、骨成長を刺激し(同化作用)、骨吸収を阻害する(抗異化作用)。
【0149】
(実施例4:代替ActRIIa−Fcタンパク質)
代替コンストラクトは、C末端テール(ActRIIaの細胞外ドメインの最後の15アミノ酸の欠失を有しうる。このようなコンストラクトの配列は、以下に示される(Fc部分は下線)(配列番号12):
【0150】
【化9】
(参照による組み込み)
本明細書に記載の全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるものと特に示されたのと同様に、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0151】
主題の特定の実施形態を記述したが、上記の明細書は例示的であり限定的ではない。本明細書および下記の請求項を検討すれば、多くの変化形が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、等価物の完全な範囲とあわせた請求項と、そのような変化形とあわせた明細書を参照することにより、判断されなければならない。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2005年11月23日に出願された米国仮特許出願第60/739,462号、2006年3月17日に出願された米国仮特許出願第60/783,322号、および2006年9月15日に出願された米国仮特許出願第60/844,855号の利益を主張し、これらの出願は、本明細書の全体にわたって参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨粗鬆症から骨折までの様々な骨疾患は、有効な医薬品がほとんどない一連の病的状態である。かわりに処置では、固定、運動、および食生活の改善を含めた、物理療法および行動療法に重点がおかれる。様々な骨疾患を処置する目的において骨成長を促進し、骨密度を高める治療薬があれば有益である。
【0003】
骨成長および石灰化は、破骨細胞と造骨細胞という二つの細胞型の活動に依存するが、軟骨細胞および血管の細胞も、これらのプロセスの重要な側面に関わる。発生的には、骨形成は、軟骨内骨化と膜内骨化という二つのメカニズムにより生じ、前者は長径方向の骨形成を担い、後者は、頭蓋の骨など、位相的に扁平な骨の形成を担う。軟骨内骨化は、造骨細胞、破骨細胞の形成、血管系、および後の石灰化の鋳型の役割をする成長板の軟骨構造の、順次的な形成および分解を要する。膜内骨化の間には、結合組織内に骨が直接形成される。いずれのプロセスも、造骨細胞の浸入およびその後のマトリクス堆積を要する。
【0004】
骨折や他の構造的な骨破壊は、軟骨組織の形成およびその後の石灰化を含む、一連の骨形成の発生事象に少なくとも表面的に類似するプロセスにより、治癒される。骨折治癒のプロセスは、二つの態様で生じうる。直接的または一次的な骨治癒は、仮骨形成を伴わずに生じる。間接的または二次的な骨治癒は、仮骨前駆段階を伴って生じる。骨折の一次的治癒は、密着された破壊部全体の、物理的連続性の再形成を伴う。適切な条件下で、破壊部を囲む骨吸収細胞が、トンネル吸収反応を示し、血管の浸透およびその後の治癒の経路を確立する。骨の二次的治癒は、炎症、軟らかい仮骨形成、仮骨石灰化、および仮骨再形成のプロセスを経る。炎症段階では、損傷部位の骨膜および骨内膜の血管の破壊により、血腫および出血の形成が生じる。炎症細胞が領域に侵入する。軟らかいカルス形成の段階では、細胞が新しい血管、繊維芽細胞、細胞内物質、および支持細胞を生み出し、骨折破片の間のスペースに肉芽組織が形成される。繊維または軟骨組織(軟らかい仮骨)により、破壊部全体の臨床的癒着が確立される。造骨細胞が形成され、軟らかい仮骨の石灰化を媒介し、その後これが層板骨に置き換えられ、正常な再形成プロセスにしたがう。
【0005】
骨構造の骨折をはじめとする物理的破壊に加えて、骨塩量および骨量の減少が、様々な状態により生じ、重大な医学的問題をもたらしうる。骨量の変化は、個体の一生にわたり、比較的予測可能な態様で生じる。30歳頃までは、男性も女性も、軟骨成長板の縦の成長、および半径方向の成長により、骨が最大質量まで成長する。(骨梁、例えば椎骨および骨盤等の扁平骨では)30歳頃および(皮質骨、例えば四肢に見られる長骨では)40歳頃を過ぎると、男性も女性もゆっくりと骨量減少が生じる。女性の場合は、おそらくは閉経期後のエストロゲン欠乏を原因とする、最終段階の実質的骨量減少も生じる。この段階において女性の骨量は、皮質骨からさらに10%、骨梁のコンパートメントから25%失われうる。進行する骨量減少により、骨粗鬆症などの病的状態が生じるかは、個体の最初の骨量と、増悪条件の有無によるところが大きい。
【0006】
骨量減少は、正常な骨再形成プロセスの不均衡として特徴づけられる場合がある。健康な骨は、常に再形成が行われている。再形成は、破骨細胞による骨吸収により開始する。吸収された骨は、造骨細胞によるコラーゲン形成、およびその後の石灰化を特徴とする、新しい骨組織に置き換えられる。健康な個体においては、吸収と形成の割合のバランスが保たれている。骨粗鬆症は、吸収への偏りを特徴とし、骨量および骨石灰化の全体的減少をもたらす、慢性的な進行性の状態である。ヒトの骨粗鬆症は、臨床的オステオペニア(若年成人の平均値を1標準偏差以上2.5標準偏差未満下回る骨塩密度)に続いておこる。世界中で、約7500万人が骨粗鬆症のリスクを抱えている。
【0007】
したがって、破骨細胞と造骨細胞の間の活動のバランスを制御するための方法は、骨折やその他の骨損傷の治癒を促進するためだけではなく、骨量および骨石灰化の減少を伴う骨粗鬆症などの病気の処置に有用となりうる。
【0008】
骨粗鬆症に関しては、エストロゲン、カルシトニン、ビタミンKとオステオカルシン、または高用量の食事性カルシウムが、いずれも治療的介入として用いられる。骨粗鬆症に対する他の治療的アプローチには、ビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、カルシミメティクス、スタチン、アナボリックステロイド、ランタンおよびストロンチウム塩およびフッ化ナトリウムが含まれる。しかし、このような治療法は、有害な副作用を伴うことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、骨成長および石灰化を促進する組成物および方法を提供することが、本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本開示は一部においては、アクチビンアンタゴニスト活性またはActRIIaアンタゴニスト活性を有する分子(「アクチビンアンタゴニスト」および「ActRIIaアンタゴニスト」)を用いて、骨密度を高め、骨成長を促進し、および/または骨強度を高めることができることを示す。特に本開示は、可溶形態のActRIIaが、インビボにおいてアクチビン−ActRIIaシグナル伝達の阻害物質としての役割を果たし、骨密度、骨成長および骨強度の増加を促進することを示す。骨成長を促進し、または骨量減少を阻害するほとんどの医薬品は、抗異化剤(一般に「異化剤」とも呼ばれる)(例えばビスホスホネート)または同化剤(例えば、適切に投与される副甲状腺ホルモン、PTH)として作用するが、可溶性ActRIIaタンパク質は異化作用および同化作用の両方を有し、二重の活性をもつ。したがって、本開示は、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達経路のアンタゴニストを用いて、骨密度を高め、骨成長を促進できることを証明する。可溶性ActRIIaは、アクチビン拮抗作用以外の機序により骨に作用しうるが、本開示はなお、アクチビン−ActRIIaアンタゴニスト活性にもとづき望ましい治療薬を選択できることを示す。したがって、一定の実施形態においては、本開示は、骨粗鬆症等の低骨密度または低骨強度を伴う病気を処置するため、または骨折した患者など、骨成長が必要な患者の骨成長を促進するために、アクチビン結合ActRIIaポリペプチド、抗アクチビン抗体、抗ActRIIa抗体、アクチビンまたはActRIIaを標的とする小分子およびアプタマー、および、アクチビンおよびActRIIaの発現を抑える核酸などを含む、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用する方法を提供する。さらに、可溶性ActRIIaポリペプチドは、筋肉量の一貫して測定可能な増加を生じさせることなく、骨成長を促進する。
一定の態様においては、本開示は、アクチビンと結合する可溶性のアクチビン結合ActRIIaポリペプチドを含むポリペプチドを提供する。ActRIIaポリペプチドは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドと薬学的に受容可能な担体とを含む薬学的調製物として調製されうる。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1ミクロモル未満または100、10または1ナノモル未満のKDで、アクチビンと結合するのが好ましい。あるいは、アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、GDF11および/またはGDF8よりアクチビンに選択的に結合し、好ましくは、GDF11および/またはGDF8に対する場合よりもアクチビンに対して少なくとも10倍、20倍、または50倍低いKDで結合する。特定の作用機序に拘束されるものではないが、GDF11/GDF8阻害を上回るアクチビン阻害のこのような選択性の程度により、筋肉に対する一貫した測定可能な効果を伴わない、骨に対する選択的効果が説明されることが予想される。多くの実施形態において、ActRIIaポリペプチドは、骨に対する望ましい効果を達成する用量において、15%未満、10%未満、または5%未満の筋肉増加を生させることから選択される。組成物は、サイズ排除クロマトグラフィでの評価により、他のポリペプチド成分に関して少なくとも95%純粋であるのが好ましく、組成物が、少なくとも98%純粋であるのがさらに好ましい。そのような調合に使用されるアクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、本明細書に開示される任意のものでよく、たとえば、配列番号2、3、7または12より選択されるアミノ酸配列、または、配列番号2、3、7、12または13より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドでよい。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドには、C末端の10〜15アミノ酸(「テール」)が欠けた、配列番号1〜3より選択される配列または配列番号2の配列の少なくとも10、20、または30アミノ酸を含むものなど、天然のActRIIaポリペプチドの機能的断片が含まれうる。
【0011】
可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドには、天然のActRIIaポリペプチドに対する、アミノ酸配列における一つ以上の改変(例えば、リガンド結合ドメインにおける)が含まれうる。改変されたActRIIaポリペプチドの例は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2006/012627号,pp.59−60に提供される。アミノ酸配列の改変により、天然のActRIIaポリペプチドと比較して、例えば、哺乳類、昆虫または他の真核細胞において産出されるポリペプチドのグリコシル化が変更され、または、ポリペプチドのタンパク質分解的切断が変更される。
【0012】
アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、一つのドメインとしてのActRIIaポリペプチド(例えばActRIIaのリガンド結合部分)と、薬物動態の改善、精製し易い、特定の組織を標的とする、などの望ましい性質を提供する一つ以上の他のドメインとを有する融合タンパク質でありうる。例えば、融合タンパク質のドメインは、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質の多量体化、および/または精製の一つ以上を改善しうる。アクチビン結合ActRIIa融合タンパク質には、免疫グロブリンFcドメイン(野生型または突然変異型)または血清アルブミン、または、薬物動態の改善、溶解性の改善、または安定性の改善などの望ましい特性を提供する他のポリペプチド部分が含まれうる。好ましい実施形態では、ActRIIa−Fc融合には、FcドメインとActRIIaの細胞外ドメインとの間にある、比較的不定形なリンカーが含まれる。この不定形なリンカーは、ActRIIaの細胞外ドメインのC末端にある、ほぼ15アミノ酸の不定形領域(「テール」)に相当し、または二次構造を比較的含まない1、2、3、4または5アミノ酸からなる、または5から15、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸からなる人工的な配列であり得、または、両者の混合であり得る。リンカーは、グリシンおよびプロリン残基を多く含み、たとえば、トレオニン/セリンおよびグリシンの単一配列、または、トレオニン/セリンおよびグリシンの繰り返し配列を含みうる(例えばTG4またはSG4の単一配列または繰り返し配列)。融合タンパク質には、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、およびGST融合などの精製用のサブ配列が含まれうる。選択的に、可溶性ActRIIaポリペプチドには、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸より選択される、一つ以上の修飾アミノ酸残基が含まれる。薬学的調製物には、骨の病気を処置するために使用される化合物など、一つ以上の追加的な化合物も含まれうる。薬学的調製物は、実質的に発熱性物質を含まないのが好ましい。一般的には、患者に不適切な免疫応答が生じる可能性を減ずるように、ActRIIaタンパク質が、ActRIIaタンパク質の自然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株に発現されるのが好ましい。ヒトおよびCHO細胞株が良好に使用されており、他の一般的な哺乳類の発現システムも有用であることが予想される。
【0013】
本明細書に記載されるとおり、ActRIIa−Fcで表わされるActRIIaタンパク質(ActRIIa部分とFc部分の間に必要最低限のリンカーを有する形態)は、動物モデルにおける、GDF8および/またはGDF11と比べたアクチビンへの選択的結合、高親和性リガンド結合、および二週間より長い血中半減期などを含む望ましい特性を有する。一定の実施形態では、本発明は、ActRIIa−Fcポリペプチド、および、このようなポリペプチドと薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的調製物を提供する。
【0014】
一定の態様においては、本開示は、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドをコードする核酸を提供する。単離されたポリヌクレオチドには、上述のような、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドのコード配列が含まれうる。例えば、単離された核酸には、ActRIIaの細胞外ドメイン(例えばリガンド結合ドメイン)をコードする配列、ならびに、膜貫通ドメインまたは細胞質ドメイン内、または細胞外ドメインと膜貫通ドメインまたは細胞質ドメインの間にある停止コドンを除く、ActRIIaの膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインの一部または全体をコードする配列が含まれうる。例えば、単離されたポリヌクレオチドには、配列番号4または5のような全長ActRIIaポリヌクレオチド配列、または一部切断された形が含まれ、当該単離されたポリヌクレオチドには、3´末端の少なくとも600ヌクレオチド手前に、あるいはポリヌクレオチドの翻訳により、全長ActRIIaから一部切断された部分に選択的に融合した細胞外ドメインが生じるように配置された転写終結コドンがさらに含まれる。好ましい核酸配列は、配列番号14である。本明細書に開示される核酸は、発現のためにプロモータに作動可能に結合でき、本開示は、そのような組換えポリヌクレオチドにより形質転換される細胞を提供する。細胞は、CHO細胞等の哺乳動物細胞であるのが好ましい。
【0015】
一定の態様においては、本開示は、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを作製するための方法を提供する。このような方法には、本明細書に開示される任意の核酸(例えば配列番号4、5または14)を、Chineseハムスター卵巣(CHO)細胞などの適切な細胞に発現させる工程が含まれうる。このような方法には、a)可溶性ActRIIaポリペプチドの発現に適切な条件下で細胞を培養する工程であり、当該細胞が、可溶性ActRIIaコンストラクトにより形質転換される工程と、b)こうして発現された可溶性ActRIIaポリペプチドを回収する工程が含まれうる。可溶性ActRIIaポリペプチドは、粗製、一部精製、または高度に精製されたフラクションとして回収されうる。精製は一連の精製工程により達成でき、これには例えば、以下のうちの一つ、二つ、または三つまたはそれ以上が、任意の順序で含まれる:プロテインAクロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ(例えばQセファロース)、疎水性相互作用クロマトグラフィ(例えばフェニルセファロース)、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィ。
【0016】
一定の態様では、被験体の骨成長を促進し、または骨密度を高める方法において、本明細書に開示される可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドなどの、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用しうる。一定の実施形態では、本開示は、必要な患者において低骨密度を伴う病気を処置し、または骨成長を促進するための方法を提供する。方法には、それを必要とする被験体に、有効量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストを投与する工程が含まれうる。一定の態様では、本開示は、本明細書に記載される病気または状態を処置するための医薬を作るための、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストの使用を提供する。
【0017】
一定の態様においては、本開示は、骨の成長または石灰化の増加を促進する薬剤を同定するための方法を提供する。方法には、a)アクチビンまたはActRIIaポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験薬剤を同定する工程と、b)骨の成長または石灰化に対する薬剤の効果を評価する工程が含まれる。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号7のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有する、アクチビン結合ActRIIaポリペプチド。
(項目2)
前記ポリペプチドが、サイズ排除クロマトグラフィによる測定により、タンパク質汚染物について少なくとも95%純粋である、項目1に記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチド。
(項目3)
前記ポリペプチドが、GDF−11に対するよりもアクチビンに対して、解離定数で少なくとも10倍の選択性を有する、項目1または2に記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチド。
(項目4)
項目1〜3のいずれかに記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチドと、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、薬学的調製物。
(項目5)
前記調製物が、実質的に発熱性物質を含まない、項目4に記載の薬学的調製物。
(項目6)
項目1〜3のいずれかに記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチドのコード配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
(項目7)
前記単離されたポリヌクレオチドが、配列番号14の配列を含む、項目6に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(項目8)
項目6または7に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータ配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
(項目9)
項目6〜8のいずれかに記載の組換えポリヌクレオチドにより形質転換された、細胞。
(項目10)
前記細胞が、哺乳動物細胞である、項目9に記載の細胞。
(項目11)
前記細胞が、CHO細胞またはヒト細胞である、項目10に記載の細胞。
(項目12)
アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを作製する方法であって、
a)該可溶性ActRIIaポリペプチドの発現に適切な条件下で、細胞を培養する工程であって、該細胞が、項目6〜8のいずれかに記載の組換えポリヌクレオチドにより形質転換される工程;と、
b)そのようにして発現された該アクチビン結合ActRIIaポリペプチドを回収する工程;と
を含む、方法。
(項目13)
骨成長を促進するか、骨密度を高めるか、または骨強度を高めるための方法であって、該方法が、
a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;
からなる群より選択される有効な量のポリペプチドを、被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目14)
前記ポリペプチドが、以下:
i)少なくとも10−7MのKDで、ActRIIaリガンドに結合する特性;および
ii)細胞内のActRIIaシグナル伝達を阻害する特性;
のうちの一つ以上を有する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記ポリペプチドが、ActRIIaポリペプチドドメインに加えて、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、および/あるいは精製の一つ以上を向上させる一つ以上のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、項目13または14に記載の方法。
(項目16)
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記ポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸より選択される一つ以上の修飾アミノ酸残基を含む、項目13〜16のいずれかに記載の方法。
(項目18)
骨関連障害を処置するための方法であって、該方法が、これを必要とする被験体に、有効な量のアクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストを投与する工程を含む、方法。
(項目19)
前記アクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストが、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、
a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;
からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、以下:
i)少なくとも10−7MのKDで、ActRIIaリガンドに結合する特性;および
ii)細胞内のActRIIaシグナル伝達を阻害する特性;
のうちの一つ以上を有する、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、ActRIIaポリペプチドドメインに加えて、インビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化または分布、タンパク質複合体の形成、および/あるいは精製の一つ以上を向上させる一つ以上のポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、項目19〜21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンFcドメインおよび血清アルブミンからなる群より選択されるポリペプチド部分を含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドが、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合体化されたアミノ酸、および有機誘導体化剤に結合体化されたアミノ酸より選択される一つ以上の修飾アミノ酸残基を含む、項目19〜23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記骨関連障害が、原発性骨粗鬆症および続発性骨粗鬆症からなる群より選択される、項目18〜24のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記骨関連障害が、閉経後骨粗鬆症、性腺機能低下性の骨量減少、腫瘍により誘発される骨量減少、癌療法により誘発される骨量減少、骨転移、多発性骨髄腫、およびパジェット病からなる群より選択される、項目18〜24のいずれかに記載の方法。
(項目27)
第二の骨活性剤を投与する工程をさらに含む、項目18〜26のいずれかに記載の方法。
(項目28)
前記骨活性剤が、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、カルシウム補助剤およびビタミンD補助剤からなる群より選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
(a)アクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニスト;および
(b)第二の骨活性剤;
を含む、薬学的調製物。
(項目30)
骨成長を促進するか、または骨密度を高める薬剤を同定する方法であって、該方法は、
(a)アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドと競合して、ActRIIaポリペプチドのリガンド結合ドメインに結合する試験薬剤を同定する工程;と、
(b)組織成長に対する該薬剤の効果を評価する工程;と
を含む、方法。
(項目31)
骨関連障害を処置するための医薬を作製するための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドの、使用。
(項目32)
骨関連障害を予防するための方法であって、該方法が、これを必要とする被験体に、有効な量のアクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストを投与する工程を含む、方法。
(項目33)
前記被験体が、骨転移を伴う癌を有する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記被験体は、骨密度の低下、骨吸収、または骨転移の指標について陽性である、項目32〜33に記載の方法。
(項目35)
前記被験体が、骨減少を伴う癌治療レジメンのレシピエントである、項目32〜34のいずれかに記載の方法。
(項目36)
前記被験体は、骨減少を伴う癌を有する、項目32〜34のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記ポリペプチドがグリコシル化されている、項目1〜3のいずれかに記載のアクチビン結合ActRIIaポリペプチド、項目4〜5または29のいずれかに記載の薬学的調製物、あるいは、項目13〜28のいずれかに記載の方法。
(項目38)
患者の骨成長を促進するためおよび骨吸収を阻害するための方法であって、該方法が、有効な量のActRIIa−Fc融合タンパク質を該患者に投与する工程を含み、該ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目39)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号3のアミノ酸配列を含む、項目38または39に記載の方法。
(項目41)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、項目38〜40のいずれかに記載の方法。
(項目42)
前記方法による前記患者の骨格筋質量の増加が、10%未満である、項目38〜41のいずれかに記載の方法。
(項目43)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、前記患者において少なくとも0.2μg/kgの血清濃度に達するように投与される、項目38〜41のいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、配列番号7のアミノ酸配列を有する、項目38〜43のいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質の血中半減期が、15日と30日との間である、項目38〜44のいずれかに記載の方法。
(項目46)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、週一回以下の頻度で前記患者に投与される、項目38〜45のいずれかに記載の方法。
(項目47)
前記ActRIIa−Fc融合タンパク質が、月一回以下の頻度で前記患者に投与される、項目38〜46のいずれかに記載の方法。
(項目48)
骨成長を促進するか、骨密度を高めるか、または骨強度を高めるための医薬の調製のための、(a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;からなる群より選択されるポリペプチドの、使用。
(項目49)
骨関連障害を予防するための医薬の調製のための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチドの、使用。
(項目50)
骨成長を促進するためおよび骨吸収を阻害するための医薬の調製のための、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むActRIIa−Fc融合タンパク質の、使用。
(項目51)
骨成長を促進すること、骨密度を高めること、または骨強度を高めることに使用するための、(a)配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(b)配列番号3と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(c)配列番号2から選択される少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むポリペプチド;からなる群より選択される、ポリペプチド。
(項目52)
骨関連障害の処置に使用するための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチド。
(項目53)
骨関連障害の予防に使用するための、アクチビンアンタゴニストポリペプチドまたはActRIIaアンタゴニストポリペプチド。
(項目54)
骨成長を促進することおよび骨吸収を阻害することに使用するための、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、ActRIIa−Fc融合タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、CHO細胞に発現されたActRIIa−hFcの精製を示す。タンパク質は、単一の明確なピークとして精製する。
【図2】図2は、BiaCore(商標)アッセイで測定した、アクチビンおよびGDF−11に対するActRIIa−hFcの結合を示す。
【図3】図3は、A−204レポータージーンアッセイの概略図を示す。図は、レポーターベクターpGL3(CAGA)12(Dennler等,1998年,EMBO 17:3091−3100に記載)を示す。CAGA12モティーフはTGF−ベータ応答遺伝子(PAI−1遺伝子)に存在するため、このベクターはSmad2および3を経由するシグナル伝達因子で一般的に利用できる。
【図4】図4は、A−204レポータージーンアッセイにおける、GDF−8シグナル伝達に対するActRIIa−hFc(ダイヤモンド)およびActRIIa−mFc(四角)の効果を示す。両方のタンパク質は、ピコモルのオーダーの濃度でGDF−8を介したシグナル伝達を実質的に阻害した。
【図5】図5は、A−204レポータージーンアッセイにおける、GDF−11シグナル伝達に対するActRIIa−hFcの三つの異なる調製物の効果を示す。
【図6】図6は、コントロールおよびActRIIa−mFcで処置したBALB/cマウスの、12週間の処置期間の前(上パネル)および後(下パネル)のDEXA画像の例を示す。陰影が薄いほど、骨密度が増加していることを示す。
【図7】図7は、12週間の期間にわたる、BALB/cマウスの骨塩密度に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(ダイヤモンド)、ActRIIa−mFcの2mg/kgの投薬(四角)、ActRIIa−mFcの6mg/kgの投薬(三角)、およびActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(丸)であった。
【図8】図8は、12週間の期間にわたる、BALB/cマウスの骨塩量に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(ダイヤモンド)、ActRIIa−mFcの2mg/kgの投薬(四角)、ActRIIa−mFcの6mg/kgの投薬(三角)、およびActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(丸)であった。
【図9】図9は、6週間の期間後の、卵巣切除(OVX)、または偽手術(SHAM)を施したC57BL6マウスにおける、骨梁の骨塩密度に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(PBS)、またはActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(ActRIIa)であった。
【図10】図10は、12週間の期間にわたる、卵巣切除を施した(OVX)C57BL6マウスにおける、骨梁に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(ActRIIa;濃い色の棒)であった。
【図11】図11は、6週間または12週間の処置期間後の、偽手術を施したC57BL6マウスにおける、骨梁に対するActRIIa−mFcの効果の数量化を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFcの10mg/kgの投薬(ActRIIa;濃い色の棒)であった。
【図12】図12は、12週間の処置にわたる、卵巣切除マウスにおける骨密度のpQCT分析の結果を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFc(濃い色の棒)であった。y軸:mg/ccm。
【図13】図13は、12週間の処置にわたる、偽手術マウスにおける骨密度のpQCT分析の結果を示す。処置は、コントロール(PBS;薄い色の棒)、またはActRIIa−mFc(濃い色の棒)であった。y軸;mg/ccm。
【図14】図14Aおよび14Bは、12週間の処置後の、全身のDEXA分析(A)および大腿骨のエキソビボ分析(B)を示す。明るい領域は、高骨密度の領域を示す。
【図15】図15は、12週間の処置後の、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析を示す。処置は、溶媒コントロール(PBS、濃い色の棒)、およびActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の四本の棒は総骨密度を示し、右側の四本の棒は皮質骨密度を示す。各四本の棒の組のうち最初の対は、卵巣切除マウスからのデータであり、第二の棒の対は、偽手術マウスからのデータである。
【図16】図16は、12週間の処置後の、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析および骨幹の骨量を示す。処置は、溶媒コントロール(PBS、濃い色の棒)、またはActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の四本の棒が総骨量を示し、右側の四本の棒が皮質骨量を示す。各四本の棒の組のうち最初の対は、卵巣切除マウスからのデータであり、第二の棒の対は、偽手術マウスからのデータである。
【図17】図17は、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析および大腿骨の皮質厚を示す。処置は、コントロール(PBS、濃い色の棒)、およびActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の四本の棒は、骨内膜周径を示し、右側の四本の棒は骨膜周径を示す。各四本の棒の組のうち最初の対は、卵巣切除マウスからのデータであり、第二の棒の対は、偽手術マウスからのデータである。
【図18】図18は、12週間の処置後の、大腿骨の機械的テストの結果を示す。処置は、コントロール(PBS、濃い色の棒)、およびActRIIa−mFc(薄い色の棒)であった。左側の二本の棒は、卵巣切除マウスからのデータであり、右側の二本の棒は、偽手術マウスからのデータである。
【図19】図19は、骨梁の体積に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図20】図20は、遠位大腿骨の骨梁構造に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図21】図21は、皮質骨に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図22】図22は、骨の機械的強度に対するActrIIa−mFcの効果を示す。
【図23】図23は、三つの異なる投与量における、骨の特性に対する異なる用量のActRIIa−mFcの効果を示す。
【図24】図24は、ActRIIa−mFcが二重の同化および抗吸収作用を有することを示す、骨組織形態計測である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
1.概要
トランスフォーミング成長因子β(TGFベータ)スーパーファミリーには、共通の配列要素および構造モティーフを共有する、様々な成長因子が含まれる。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の両方において、多種多様な細胞型に生体影響を及ぼすことが知られている。スーパーファミリーのメンバーは、胚発生過程におけるパターン形成および組織特定化に重要な機能を果たし、脂肪生成、筋形成、軟骨形成、心臓発生、造血、神経形成、および上皮細胞分化を含む様々な分化プロセスに影響しうる。ファミリーは、二つの一般的なブランチに分けられる:BMP/GDFおよびTGFベータ/アクチビン/BMP10ブランチであり、そのメンバーは、多様かつ多くの場合に相補的な効果を有する。TGFβファミリーのメンバーの活性を操作することで、生物に大きな生理的変化を生じうる場合が多い。例えば、Piedmontese種およびBelgian Blue種の牛は、筋肉量の際立った増加をもたらす、GDF8(別名マイオスタチン)遺伝子の機能喪失突然変異をもっている。Grobet等,Nat Genet.1997年,17(l):71−4。さらに、人間では、GDF8の不活性の対立遺伝子が、筋肉量の増加および並外れた力を伴うことが報告されている。Schuelke等,N Engl J Med 2004年,350:2682−8。
【0020】
アクチビンは、TGFベータスーパーファミリーに属する二量体ポリペプチド成長因子である。二つの密接に関連するβサブユニットのホモ/ヘテロ二量体である(βAβA、βBβBおよびβAβB)、三つの原則的なアクチビンの形態(A、BおよびAB)がある。ヒトゲノムもアクチビンCおよびアクチビンEをコードし、これらは主に肝臓に発現される。TGFベータスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣細胞および胎盤細胞におけるホルモン生産を促進し、ニューロン細胞の生存を支え、細胞型に応じて細胞周期の進行にプラスまたはマイナスの影響を与え、少なくとも両生類の胚における中胚葉分化を誘発することができる、固有かつ多機能の因子である(DePaolo等,199
1年,Proc Soc Ep Biol Med.198:500−512;Dyson等,1997年,Curr Biol.7:81−84;Woodruff,1998
年,Biochem Pharmacol.55:953−963)。さらに、刺激されたヒト単核球性白血病細胞から単離された赤芽球分化誘導因子(EDF)が、アクチビンAと同一であることが発見された(Murata等,1988年,PNAS,85:24
34)。アクチビンAが、骨髄の赤血球生成の天然の正の調節因子としての役割を果たすことが示唆されている。いくつかの組織においては、アクチビンのシグナル伝達を、関連するヘテロ二量体であるインヒビンが拮抗する。例えば、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が放出される間には、アクチビンがFSH分泌および合成を促進する一方で、インヒビンはFSH分泌および合成を妨げる。アクチビンの生理活性を調節し、および/またはアクチビンに結合しうる他のタンパク質には、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、α2−マクログロブリン、Cerberus、およびendoglinが含まれる。
【0021】
TGF−βシグナルは、リガンド刺激に応じて下流のSmadタンパク質をリン酸化および活性化する、I型およびII型セリン/トレオニンキナーゼレセプターのヘテロ複合体により媒介される(Massague,2000年,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1:169−178)。これらのI型およびII型レセプターは、システインリッチ部分を伴う細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびセリン/トレオニン特異性をもつと推測される細胞質ドメインからなる、膜貫通タンパク質である。I型レセプターはシグナル伝達に必須であり、II型レセプターは、リガンド結合およびタイプIレセプターの発現に必要である。I型およびII型のアクチビンレセプターは、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型レセプターによるI型レセプターのリン酸化を生じる。
【0022】
二つの関連するII型レセプターであるActRIIaおよびActRIIbが、アクチビンのII型レセプターとして同定されている(MathewsおよびVale,1991年,Cell 65:973−982;Attisano等,1992年,Cell
68:97−108)。ActRIIaおよびActRIIbは、アクチビンの他、BMP7、Nodal、GDF8およびGDF11を含む、他のいくつかのTGF−βファミリータンパク質と生化学的に相互作用しうる(Yamashita等,1995年,J
.Cell Biol.130:217−226;LeeおよびMcPherron,2001年,Proc.Natl.Acad.Sci.98:9306−9311;YeoおよびWhitman,2001年,Mol.Cell 7:949−957;Oh等,2002年,Genes Dev.16:2749−54)。ALK4が、アクチビン、特にアクチビンAの主なI型レセプターであり、ALK−7も、アクチビン、特にアクチビンBのレセプターとしての役割を果たしうる。
【0023】
本明細書に示されるとおり、GDF8またはGDF11等の他のTGFベータファミリーのメンバーではなくアクチビンAに結合する実質的選択性を示す可溶性ActRIIaポリペプチド(sActRIIa)は、インビボで骨成長を促進し、骨密度を高める上で有効である。特定の機序にとらわれるものではないが、これらの研究において使用された特定のsActRIIaコンストラクトにより示された極めて強力なアクチビン結合(ピコモルの解離定数)を前提とすると、sActRIIaの効果は、主にアクチビンアンタゴニスト効果により生じると考えられる。機序に関わらず、ActRIIa−アクチビンアンタゴニストにより、正常なマウスおよび骨粗鬆症のマウスモデルにおける骨密度が増加することが、本明細書に提示されるデータから明白である。骨は、骨を生産し石灰化を促す因子(主に造骨細胞)と、骨を破壊し脱灰する因子(主に破骨細胞)のバランスに応じて成長または収縮し、密度が増減する動的組織であることに留意する必要がある。生産因子を増加させるか、破壊因子を減少させることにより、または両者により、骨成長および石灰化を増加させることができる。「骨成長を促進する」および「骨石灰化を増加させる」という用語は、骨の観察可能な物理的変化をさし、骨の変化が生じる機序に関しては中立の意味である。
【0024】
本明細書に記載の研究で使用される骨粗鬆症のマウスモデルおよび骨成長/密度からは、ヒトへの効果が高度に予測されると考えられるため、本開示は、ActRIIaポリペプチドおよび他のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストを使用して、ヒトにおいて骨成長を促進し、骨密度を高める方法を提供する。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストには、たとえば、アクチビン結合可溶性ActRIIaポリペプチド、アクチビン(特にβAまたはβBとも呼ばれるアクチビンAまたはBサブユニット)と結合してActRIIaの結合を妨げる抗体、ActRIIaと結合してアクチビンの結合を妨げる抗体、アクチビンまたはActRIIa結合により選択される非抗体タンパク質(このようなタンパク質の例、ならびにその設計および選択については、国際公開第2002/088171号、国際公開第2006/055689号、国際公開第2002/032925号、国際公開第2005/037989号、米国特許出願公開第2003/0133939号、および米国特許出願公開第2005/0238646号などを参照)、アクチビンまたはActRIIa結合により選択される、多くの場合にFcドメインに結合したランダムペプチドが含まれる。アクチビンまたはActRIIa結合活性を有する二つの異なるタンパク質(または他の部分)、特にI型(たとえば、可溶性I型アクチビンレセプター)およびII型(たとえば、可溶性II型アクチビンレセプター)結合部位をそれぞれブロックするアクチビン結合タンパク質どうしを連結して、二機能性結合分子をつくることができる。アクチビン−ActRIIaシグナル伝達軸を阻害する核酸アプタマー、小分子および他の薬剤。様々なタンパク質が、アクチビン−ActRIIaアンタゴニスト活性を有し、インヒビン(すなわち、インヒビンαサブユニット)(ただし全ての組織で普遍的にアクチビンに拮抗するわけではない)や、フォリスタチン(例えばフォリスタチン−288およびフォリスタチン−315)、Cerberus、FSRP、endoglin、アクチビンC、α(2)−マクログロブリン、およびM108A(108番目のメチオニンをアラニンに置換)突然変異型アクチビンAが含まれる。一般に、代替的形態のアクチビン、特にI型レセプター結合ドメインが改変されたものは、II型レセプターに結合できるが、活性化した三重複合体を形成できないためアンタゴニストとして作用する。さらに、アクチビンA、B、CまたはE、または、特にActRIIaの発現を阻害するアンチセンス分子、siRNAsまたはリボザイムなどの核酸を、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストとして使用できる。使用されるアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、他のTGFβファミリーのメンバーに対して、特にGDF8およびGDF11に対して、アクチビンを介したシグナル伝達を阻害する選択性を有することが好ましい。可溶性ActRIIbタンパク質はアクチビンに結合するが、野生型タンパク質はGDF8/11に対してアクチビンと結合する有意な選択性をもたず、このタンパク質により骨に対する所望の効果は得られないだけでなく、筋肉の実質的成長も生じることが予備実験により示唆される。しかし、異なる結合特性を有する改変された形態のActRIIbが同定されており(たとえば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2006/012627号,pp.55−59を参照)、これらのタンパク質は、骨に対する所望の効果を達成しうる。天然または改変ActRIIbは、第二のアクチビン選択的結合剤と結びつけることにより、アクチビンに対するさらなる特異性を与えうる。
【0025】
本明細書において使用する用語は、一般に、本発明の文脈および各用語が使用される特定の文脈において、従来技術における通常の意味を有する。一定の用語は、本発明の組成物および方法、ならびにそれらを製作し使用する方法を記載する上で、実務家にさらなる指針を提供するために、本明細書の以下または他所に説明される。用語の一切の使用の範囲または意義は、用語が使用される特定の文脈から明らかとなる。
【0026】
「約」および「ほぼ」は、一般に、測定の性質または精度を前提として、測定された量の許容できる程度の誤差を意味する。典型的には、代表的な誤差の程度は、特定の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。
【0027】
あるいは、特に生物系においては、「約」および「ほぼ」という用語は、好ましくは特定の値の5倍以内、より好ましくは2倍以内である概略値を意味しうる。本明細書に与えられた数量は、特に明記しない限り概算であり、すなわち、「約」および「ほぼ」という用語は特に明示がなければ推量されうる。
【0028】
本発明の方法には、野生型配列と一つ以上の突然変異型(配列変異体)の比較を含めて、配列を互いに比較する工程が含まれうる。このような比較には、通常はポリマー配列のアラインメントが含まれ、たとえば、公知技術の配列アラインメント・プログラムおよび/またはアルゴリズムが使用される(例えば、BLAST、FASTAおよびMEGALIGNを例として含む)。熟練技術者には当然のことながら、かかるアラインメントでは、突然変異に残基の挿入または欠失が含まれる場合には、配列アラインメントに、挿入または欠失した残基を含まないポリマー配列の「ギャップ」(通常はダッシュまたは「A」で表わされる)が導入される。
【0029】
「相同」とは、全ての文法形態およびつづり方において、同じ生物種のスーパーファミリーのタンパク質、ならびに、異なる生物種の相同タンパク質を含む、「共通の進化上の起源」を有する二つのタンパク質の関係をさす。そのようなタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は配列相同性を有し、それは配列間の同一性の割合、あるいは特定の残基やモティーフの存在およびそれらの保存された位置などにもとづく配列類似度に反映される。
【0030】
「配列類似度」という用語は、全ての文法形態において、共通の進化上の起源を共有し得るまたは共有し得ない核酸またはアミノ酸配列間の、同一性または対応の程度をさす。
【0031】
しかしながら、一般的な使用法および本出願においては、「相同」という用語は、「高度に」などの副詞で修飾される場合には、配列類似度をさすことができ、共通の進化上の起源に関する場合も関しない場合もある。
【0032】
2.ActRIIaポリペプチド
一定の態様においては、本発明はActRIIaポリペプチドに関する。本明細書で使用されるところの「ActRIIa」という用語は、任意の種のアクチビンIIa型レセプター(ActRIIa)タンパク質のファミリー、および突然変異誘発またはその他の修飾によりそのようなActRIIaタンパク質から得られた変異体をさす。本明細書におけるActRIIaへの言及は、現在同定されている形態のいずれか一つへの言及であるものとする。ActRIIaファミリーのメンバーは一般に、システインリッチ部分を伴う細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびセリン/トレオニン活性をもつと推測される細胞質ドメインからなる、膜貫通タンパク質である。
【0033】
「ActRIIaポリペプチド」という用語には、ActRIIaファミリーメンバーに属する任意の天然のポリペプチド、ならびにその任意の変異体(突然変異型、断片、融合、およびペプチドミメティクスの形態を含む)で有用な活性を維持するものを含むポリペプチドが含まれる。例えば、ActRIIaポリペプチドには、ActRIIaポリペプチドの配列と少なくとも約80%同一であり、好ましくは同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、99%またはそれ以上である配列を有する、任意の公知のActRIIaの配列から得られたポリペプチドが含まれる。例えば、本発明のActRIIaポリペプチドは、ActRIIaタンパク質および/またはアクチビンに結合し、機能を阻害しうる。ActRIIaポリペプチドは、骨成長および骨石灰化を促進するのが好ましい。ActRIIaポリペプチドの例には、ヒトActRIIa前駆体ポリペプチド(配列番号1)および可溶性ヒトActRIIaポリペプチド(例えば、配列番号2,3,7および12)が含まれる。
【0034】
ヒトActRIIa前駆体タンパク質の配列は、以下の通りである:
【0035】
【化1】
シグナルペプチドには一重下線が引かれており、細胞外ドメインは太字であり、N結合グリコシル化の可能性がある部位は二重下線が引かれている。
【0036】
加工されたヒトActRIIaの可溶性(細胞外)ポリペプチド配列は、以下の通りである:
【0037】
【化2−1】
細胞外ドメインのC末端「テール」は下線が引かれている。「テール」が欠失した配列(Δ15配列)は以下の通りである:
【0038】
【化2−2】
ヒトActRIIa前駆体タンパク質コードする核酸配列は、以下の通りである(GenbankエントリNM_01616の164−1705のヌクレオチド):
【0039】
【化3】
ヒトActRIIa可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は、以下の通りである:
【0040】
【化4】
特定の実施形態においては、本発明は、可溶性ActRIIaポリペプチドに関する。本明細書に記載されるところの、「可溶性ActRIIaポリペプチド」という用語は、一般に、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書で用いられるところの「可溶性ActRIIaポリペプチド」という用語には、ActRIIaタンパク質の天然に生じる全ての細胞外ドメインならびにその任意の変異体(突然変異型、断片、融合、およびペプチドミメティクスの形態を含む)が含まれる。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、アクチビン、特にアクチビンAA、ABまたはBBに結合する能力を維持するものである。アクチビン結合ActRIIaポリペプチドは、1nM以下の解離定数でアクチビンAAと結合するのが好ましい。ヒトActRIIa前駆体タンパク質のアミノ酸配列が下記に提供される。ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインは、アクチビンと結合し、一般に可溶性であるため、可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドと称することができる。可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドの例には、配列番号2、3、7、12および13で表わされる可溶性ポリペプチドが含まれる。配列番号7は、ActRIIa−hFcと称され、実施例にさらに記載される。可溶性アクチビン結合ActRIIaポリペプチドの他の例には、ActRIIaタンパク質の細胞外ドメインに加えて、例えば、ミツバチメリチンリーダー配列(配列番号8)、組織プラミノーゲン(plaminogen)活性化因子(TPA)リーダー(配列番号9)、または天然ActRIIaリーダー(配列番号10)などのシグナル配列が含まれる。配列番号13で表わされるActRIIa−hFcポリペプチドは、TPAリーダーを使用する。
【0041】
ActRIIaポリペプチドの機能的に活性の断片は、ActRIIaポリペプチドをコードする核酸の対応する断片から組換えにより生産されたポリペプチドをスクリーニングすることにより得られる。さらに、断片は、従来のメリフィールド固相f−Mocまたはt−Boc化学反応などの公知技術を使用して、化学合成できる。断片を(組換えまたは化学合成により)生産し、テストして、ActRIIaタンパク質またはアクチビンにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害物質)として機能できるペプチジル断片を同定できる。
【0042】
ActRIIaポリペプチドの機能的に活性の変異体は、ActRIIaポリペプチドをコードする対応する突然変異核酸から組換えにより生産された修飾ポリペプチドのライブラリをスクリーニングすることにより得られる。断片を(組換えまたは化学合成により)生産し、テストして、ActRIIaタンパク質またはアクチビンにより媒介されるシグナル伝達のアンタゴニスト(阻害物質)として機能できるものを同定できる。一定の実施形態では、ActRIIaポリペプチドの機能的変異体には、配列番号2または3より選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一であるアミノ酸配列が含まれる。一定の場合には、機能的変異体は、配列番号2または3より選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一のアミノ酸配列を有する。
【0043】
機能的変異体は、治療効果または安定性(エキソビボにおける貯蔵寿命およびインビボにおけるタンパク質分解に対する抵抗など)を高める等の目的で、ActRIIaポリペプチドの構造を修飾することにより作り出すことができる。このような修飾ActRIIaポリペプチドは、アクチビンの結合を維持するために選択される場合には、天然のActRIIaポリペプチドの機能的等価物とみなされる。修飾ActRIIaポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失または付加などにより生産することもできる。例えば、イソロイシンまたはバリンでのロイシンの、グルタミン酸でのアスパラギン酸の、セリンでのトレオニンの単離置換、または構造的に関連したアミノ酸でのアミノ酸の類似の置換(たとえば保存的変異)は、得られる分子の生物活性に大きく影響しないことが合理的に予期される。保存的置換は、側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの中で行われる置換である。ActRIIaポリペプチドのアミノ酸配列の変更により機能的ホモログが得られるかどうかは、細胞内で野生型ActRIIaポリペプチドと類似の態様で反応する変異ActRIIaポリペプチドの能力を評価することにより、直ちに判定できる。
【0044】
一定の実施形態では、本発明は、ポリペプチドのグリコシル化を改変するための、ActRIIaポリペプチドの特異的突然変異を予定する。このような突然変異は、O結合またはN結合グリコシル化部位などの一つ以上のグリコシル化部位を導入または除去するために選択されうる。アスパラギン結合グリコシル化認識部位には、一般に、適当な細胞のグリコシル化酵素により特異的に認識されるトリペプチド配列、アスパラギン−X−トレオニン(またはアスパラギン−X−セリン)(「X」は任意のアミノ酸)が含まれる。野生型ActRIIaポリペプチドの配列に対する、(O結合グリコシル化部位における)一つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加または置換によっても改変がなされうる。グリコシル化認識部位の第一または第三アミノ酸位の一方又は両方における、様々なアミノ酸置換または欠失(および/または第二位におけるアミノ酸欠失)は、修飾トリペプチド配列における非グリコシル化をもたらす。ActRIIaポリペプチドの炭化水素部分の数を増大する別の方法は、ActRIIaポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的結合による。使用される結合方法に応じて、糖(類)を(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインのもの等の遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、またはヒドロキシプロリンのもの等の遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのもの等の芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基と結合しうる。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれる、1987年9月11日に公開された国際公開第87/05330号、および、AplinおよびWriston(1981年)CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306に記載されている。ActRIIaポリペプチドに存在する一つ以上の炭化水素部分の除去は、化学的または酵素的に達成されうる。化学的脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価の化合物への、ActRIIaポリペプチドの曝露を伴いうる。この処理は、アミノ酸配列を完全に残しながら、結合糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除く大部分または全ての糖を切断する。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin等(1987年)Arch.Biochem.Biophys.259:52、およびEdge等(1981年)Anal.Biochem.118:131により、さらに説明される。ActRIIaポリペプチドの炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等(1987年)Meth.Enzymol.138:350により記載されるように、様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成できる。哺乳類、イースト、昆虫および植物細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列の影響を受けうる異なるグリコシル化パターンを導入しうるため、ActRIIaポリペプチドの配列を、使用される発現系のタイプに応じて適切に調節しうる。一般に、ヒトに用いられるActRIIaタンパク質は、適切なグリコシル化を提供するHEK293またはCHO細胞株などの哺乳動物細胞株に発現されるが、他の哺乳類由来の発現細胞株や、人工グリコシル化酵素を有するイースト細胞株、および昆虫細胞も、同様に有用であることが期待される。
【0045】
本開示は、突然変異体、特にActRIIaポリペプチドの一連のコンビナトリアル突然変異体、ならびにトランケーション突然変異体を作り出す方法をさらに予定する。コンビナトリアル突然変異体のプールは、機能的変異体配列を同定する上で特に有用である。このようなコンビナトリアルライブラリをスクリーニングする目的は、たとえばアゴニストまたはアンタゴニストとして作用しうる、あるいは、新規の活性を全てもつActRIIaポリペプチド変異体を作り出すためでありうる。様々なスクリーニングアッセイが下記に提供され、このようなアッセイを用いて変異体を評価できる。例えば、ActRIIaリガンドと結合して、ActRIIaリガンドのActRIIaポリペプチドに対する結合を妨げ、または、ActRIIaリガンドによるシグナル伝達を妨げる能力について、ActRIIaポリペプチド変異体をスクリーニングできる。
【0046】
ActRIIaポリペプチドまたはその変異体の活性は、細胞ベースまたはインビボのアッセイでテストすることもできる。例えば、骨生産または骨破壊に関わる遺伝子の発現に対する、ActRIIaポリペプチド変異体の効果を評価しうる。これは、必要に応じて、一つ以上の組換えActRIIaリガンドタンパク質(例えばアクチビン)の存在下で行うことができ、ActRIIaポリペプチドおよび/またはその変異体、および選択的にActRIIaリガンドを産出するために、細胞をトランスフェクションしうる。同様に、ActRIIaポリペプチドを、マウスまたは他の動物に投与し、密度または体積等、一つ以上の骨特性を評価できる。骨折の治癒率も、評価できる。二重エネルギーX線吸光光度定量法(DEXA)は、動物の骨密度を評価するための、非侵襲性の定量的技術として定着している。ヒトにおいては、躯幹骨DEXAシステムを用いて、脊椎および骨盤の骨密度を評価できる。これらは、全体の骨密度の最善の予測手段である。末梢骨DEXAシステムは、手、手首、足関節および足の骨など、末梢骨の骨密度を評価するために用いることができる。CATスキャンを含む従来のX線造影システムを用いて、骨成長および骨折治癒を評価できる。骨の機械的強度も、評価できる。
【0047】
天然のActRIIaポリペプチドと比較して選択的または全般的に高められた能力を有する、コンビナトリアル的に得られる変異体を作製できる。同様に、突然変異誘発により、対応する野生型ActRIIaポリペプチドとは細胞内半減期が全く異なる変異体を生み出すことができる。例えば、改変されたタンパク質は、天然ActRIIaポリペプチドの破壊あるいは不活性化につながる、タンパク質分解または他の細胞過程に対する安定性を高め、または低めることができる。このような変異体およびそれらをコードする遺伝子を利用して、ActRIIaポリペプチドの半減期を調整することによりActRIIaポリペプチドのレベルを変更できる。例えば、半減期を短くすれば生体影響がより過渡的になり、患者の体内の組換えActRIIaポリペプチドレベルを、より厳密に制御することが可能になる。Fc融合タンパク質においては、タンパク質の半減期を変更するために、変異をリンカー(あれば)および/またはFc部分に入れることができる。
【0048】
コンビナトリアルライブラリは、各々が潜在的ActRIIaポリペプチド配列の少なくとも一部を含むポリペプチドのライブラリをコードする遺伝子の縮重ライブラリとして作製できる。例えば、潜在的ActRIIaポリペプチドのヌクレオチド配列の縮重組が、個々のポリペプチドとして、あるいは、より大きな融合タンパク質(例えば、ファージ)組として発現できるように、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートしうる。
【0049】
多くの方法により、縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的ホモログのライブラリを作り出せる。自動化DNA合成装置において、縮重遺伝子配列の化学合成を行うことができ、その後、合成遺伝子を適切な発現ベクターにライゲートできる。縮重オリゴヌクレオチドの合成は公知技術である(たとえば、Narang,SA(1983年)Tetrahedron 39:3;Itakura等,(1981年)Recombinant D
NA,Proc.3rd Cleveland Sympos.Macromolecules,ed.AG Walton,Amsterdam:Elsevier pp273−289;Itakura等,(1984年)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura等,(1984年)Science 198:1056;Ike等,(1983年)Nucleic Acid Res.11:477を参照。)。このような技術は、他のタンパク質の定向進化において使用されている(たとえば、Scott等,(1990年)Science 249:386−390;Roberts等,(1992年)PNAS USA 89:2429−2433;Devlin等,(1990年)Science 249:404−406;Cwirla等,(1990年)PNAS USA 87:6378−6382;ならびに米国特許第5,223,409号,第5,198,346号,および第5,096,815号を参照)。
【0050】
あるいは、コンビナトリアルライブラリを作り出すために、他の形態の突然変異誘発を利用できる。例えば、アラニンスキャンニング突然変異誘発などを用いたスクリーニング(Ruf等,(1994年)Biochemistry 33:1565−1572;Wang等,(1994年)J.Biol.Chem.269:3095−3099;Balint等,(1993年)Gene 137:109−118;Grodberg等,(1993年)Eur.J.Biochem.218:597−601;Nagashima等,(1993年)J.Biol.Chem.268:2888−2892;Lowman等,(1991年)Biochemistry 30:10832−10838;およびCunningham等,(1989年)Science 244:1081−1085)、リンカースキャニング突変異誘発、(Gustin等,(1993年)Virology 193:653−660;Brown等,(1992年)Mol.Cell
Biol.12:2644−2652;McKnight等,(1982年)Science 232:316);飽和突然変異誘発(Meyers等,(1986年)Science 232:613)、PCR突然変異誘発(Leung等,(1989年)Method Cell Mol Biol 1:11−19)、または化学的突然変異誘発
などを含むランダム突然変異誘発(Miller等,(1992年)A Short Course in Bacterial Genetics,CSHL Press,Cold Spring Harbor,NY;およびGreener等,(1994年)Strategies in Mol Biol 7:32−34)により、ActRIIaポリペプチド変異体を作り出し、ライブラリから単離できる。リンカースキャニング突然変異誘発は、特にコンビナトリアルの場合において、トランケート(生物活性)型のActRIIaポリペプチドを同定する魅力的な方法である。
【0051】
点突然変異およびトランケーションによりつくられるコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物をスクリーニングするため、および、一定の性質を有する遺伝子産物につきcDNAライブラリをスクリーニングするための、多様な技術が従来技術において周知である。このような技術は、ActRIIaポリペプチドのコンビナトリアル突然変異誘発により作出された遺伝子ライブラリの迅速なスクリーニングに、一般に使用できる。大きな遺伝子ライブラリをスクリーニングするために最も広く使われている技術には、典型的には、遺伝子ライブラリを複製可能な発現ベクターにクローニングする工程と、得られたベクターのライブラリで適切な細胞を形質転換する工程と、所望の活性の検出によって、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的簡単な単離が容易になる条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させる工程が含まれる。好ましいアッセイには、アクチビン結合アッセイおよびアクチビンを介した細胞シグナルアッセイが含まれる。
【0052】
一定の実施形態においては、本発明のActRIIaポリペプチドには、ActRIIaポリペプチドに自然に存在するものに加えて、翻訳後修飾がさらに含まれうる。このような修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が含まれるが、これに限られない。その結果、修飾ActRIIaポリペプチドには、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸塩等の、非アミノ酸成分が含まれうる。ActRIIaポリペプチドの機能に対するこのような非アミノ酸成分の効果は、他のActRIIaポリペプチド変異体につき本明細書に記載されているようにテストできる。新生ActRIIaポリペプチドを切断することにより細胞内でActRIIaポリペプチドが生産される場合には、翻訳後プロセシングは、タンパク質の適切な折りたたみおよび/または機能にも重要でありうる。異なる細胞(CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293など)は、かかる翻訳後活性のための特異的な細胞機構および特徴的機序を有し、ActRIIaポリペプチドの適切な修飾およびプロセシングが確保されるように選択できる。
【0053】
一定の態様においては、ActRIIaポリペプチドの機能的変異体または修飾形態には、少なくともActRIIaポリペプチドの一部および一つ以上の融合ドメインを有する融合タンパク質が含まれる。このような融合ドメインの周知の例には、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが含まれるが、これに限られない。所望の性質を与えるために、融合ドメインを選択できる。例えば、一部の融合ドメインは、アフィニティークロマトグラフィによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティー精製の目的においては、グルタチオン、アミラーゼ、およびニッケルまたはコバルトを含む樹脂など、アフィニティークロマトグラフィのための関連のマトリクスが使用される。このようなマトリクスの多くは、ファルマシアGST精製システムおよび(HIS6)融合パートナーとともに有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)ような、「キット」の形で入手できる。別の例として、融合ドメインは、ActRIIaポリペプチドの検出が容易になるように選択できる。このような検出ドメインの例には、様々な蛍光タンパク質(例えばGFP)、ならびに、一般に特定の抗体が入手可能な短いペプチド配列である「エピトープタグ」が含まれる。特異的モノクローナル抗体が直ちに入手可能である周知のエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルスヘムアグルチニン(HA)、およびc−mycタグが含まれる。いくつかの場合においては、融合ドメインはFactor XaまたはThrombinなどのプロテアーゼ切断部位を有し、これによって、関連するプロテアーゼが融合タンパク質を一部消化して、組換えタンパク質を遊離させることができる。そして、遊離したタンパク質を、その後のクロマトグラフ分離により、融合ドメインから単離できる。一定の好ましい実施形態では、ActRIIaポリペプチドは、インビボでActRIIaポリペプチドを安定化するドメイン(「スタビライザ」ドメイン)と融合される。「安定化する」とは、血中半減期を増加させる一切のものを意味し、これが、破壊の減少、腎臓による除去の減少、あるいは他の薬物動態学的効果によるものであるかは問わない。免疫グロブリンのFc部分との融合は、多様なタンパク質に望ましい薬物動態学的特性を与えることが知られている。同様に、ヒト血清アルブミンに対する融合も、望ましい特性を与えうる。選択できる他のタイプの融合ドメインには、多量体化(たとえば二量体化、四量体化)ドメインおよび(所望の骨成長または筋成長をさらに刺激するなど、さらなる生物学的機能を与える)機能的ドメインが含まれる。
【0054】
特定の例として、本発明は、Fcドメインに融合したActRIIaの可溶性細胞外ドメインを含む融合タンパク質を提供する(例えば配列番号6)。
【0055】
【化5】
選択的に、Fcドメインは、Asp−265、リシン322、およびAsn−434等の残基において、一つ以上の突然変異を有する。一定の場合には、これらの突然変異の一つ以上を有する突然変異Fcドメイン(例えばAsp−265突然変異)は、野生型Fcドメインと比較して、Fcγレセプターと結合する能力が低い。他の場合には、これらの突然変異の一つ以上を有する突然変異Fcドメイン(例えばAsn−434突然変異)は、野生型Fcドメインと比較して、MHCクラスI関連Fcレセプター(FcRN)と結合する能力が高い。
【0056】
当然のことながら、融合タンパク質の様々な要素は、所望の機能に整合すれば、どうように配置することもできる。例えば、ActRIIaポリペプチドを、異種ドメインのC末端側に、あるいは、異種ドメインを、ActRIIaポリペプチドのC末端側に配置しうる。ActRIIaポリペプチドドメインと異種ドメインは、融合タンパク質において隣接する必要はなく、いずれかのドメインのC末端またはN末端側またはドメイン間に、さらなるドメインまたはアミノ酸配列が含まれうる。
【0057】
一定の実施形態では、本発明のActRIIaポリペプチドには、ActRIIaポリペプチドを安定化できる、一つ以上の修飾が含まれる。例えば、このような修飾により、ActRIIaポリペプチドのインビトロ半減期が延長され、ActRIIaポリペプチドの血中半減期が延長され、ActRIIaポリペプチドのタンパク質分解が減少する。このような安定化修飾には、融合タンパク質(例えば、ActRIIaポリペプチドおよび安定化ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の修飾(例えば、ActRIIaポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を含む)、および炭化水素部分の修飾(例えば、ActRIIaポリペプチドからの炭化水素部分の除去を含む)が含まれるが、これに限られない。融合タンパク質の場合には、ActRIIaポリペプチドが、IgG分子(例えばFcドメイン)などの安定化ドメインに融合される。本明細書で使用されるところの、「安定化ドメイン」という用語は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えばFc)を指すだけでなく、炭化水素部分などの非タンパク質系の修飾や、ポリエチレングリコールなどの非タンパク質系のポリマーも含む。
【0058】
一定の実施形態において、本発明により、他のタンパク質から単離され、あるいは他のタンパク質を実質的に含まない、単離および/または精製された形のActRIIaポリペプチドが入手可能になる。ActRIIaポリペプチドは一般に、組換え核酸からの発現により産出される。
【0059】
3.ActRIIaポリペプチドをコードする核酸
一定の態様においては、本発明は、本明細書に開示される断片、機能的変異体および融合タンパク質を含む任意のActRIIaポリペプチド(例えば可溶性ActRIIaポリペプチド)をコードする、単離および/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号4は、天然のヒトActRIIa前駆体ポリペプチドをコードし、他方で配列番号5は、加工されたActRIIaの細胞外ドメインをコードする。対象の核酸は、一本鎖でも二本鎖でもよい。このような核酸は、DNAまたはRNA分子でありうる。例えば、ActRIIaポリペプチドを作製する方法において、または(遺伝子治療アプローチなどにおける)直接的な治療薬として、これらの核酸を使用できる。
【0060】
一定の態様においては、目的のActRIIaポリペプチドをコードする核酸は、さらに、配列番号4または5の変異体である核酸を含む。変異体ヌクレオチド配列には、対立遺伝子変異体など、一つ以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失により異なる配列を含む。
【0061】
一定の実施形態では、本発明は、配列番号4または5と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一である、単離または組換え核酸配列を提供する。当業者には当然のことながら、配列番号4または5と相補的な核酸配列、および配列番号4または5の変異体も、本発明の範囲内である。さらなる実施形態においては、本発明の核酸配列は、異種ヌクレオチド配列と、またはDNAライブラリで、単離、組み換え、および/または融合されうる。
【0062】
他の実施形態においては、本発明の核酸には、配列番号4または5で表わされるヌクレオチド配列、配列番号4または5の相補配列、またはその断片に、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列も含まれる。上述のように、当業者には当然のことながら、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は様々でありうる。当業者には当然のことながら、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件は様々でありうる。例えば、約45℃で6.0x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でハイブリダイゼーションを行ったあと、50℃で2.0xSSCの洗浄を行いうる。例えば、洗浄工程の塩濃度は、50℃での約2.0xSSCの低ストリンジェンシーから50℃での約0.2xSSCの高ストリンジェンシーまでから選択できる。さらに、洗浄工程の温度は、室温、約22℃の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで高められる。温度および塩は、ともに様々であり、あるいは、他の変数を変える一方で温度または塩濃度を一定に保ってもよい。一実施形態においては、本発明は、室温における6xSSCの低ストリンジェンシー条件でハイブリダイズした後に、室温における2xSSCでの洗浄が行われる核酸を提供する。
【0063】
遺伝コードの縮退により、配列番号4または5に記載の核酸と異なる単離された核酸も、本発明の範囲内である。例えば、多数のアミノ酸が、複数トリプレットによりコードされる。同一のアミノ酸を指定するコドン、すなわち同義語コドン(例えばCAUおよびCACはヒスチジンの同義語)は、ポリペプチドのアミノ酸配列に影響しない「静かな」突然変異をもたらし得る。しかし、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の変化を引き起こすDNA配列多型が哺乳類間に存在することが予想される。当業者には当然のことながら、特定のタンパク質をコードする核酸の一つ以上のヌクレオチド(ヌクレオチド中の約3〜5%以下)のこれらの変異が、天然の対立遺伝子変異により、所定の種の個体中に存在し得る。このようなヌクレオチド変異および結果としてのアミノ酸多型は、いずれも全て本発明の範囲内である。
【0064】
一定の実施形態では、本発明の組換え核酸は、発現コンストラクトにおいて一つ以上の制御ヌクレオチド配列に作動可能に連結されうる。制御ヌクレオチド配列は、一般に発現に使用される宿主細胞に適切である。様々な宿主細胞のための、多数の種類の適切な発現ベクターおよび適切な制御配列が、従来技術で周知である。典型的には、当該一つ以上の制御ヌクレオチド配列には、プロモータ配列、リーダーまたはシグナル配列、リボゾーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサまたはアクチベーター配列が含まれるが、これに限られない。周知の構成的プロモータまたは誘導性プロモータが、本発明に予定される。プロモータは、天然のプロモータまたは複数のプロモータ要素を組み合わせるハイブリッドプロモーターのいずれかでありうる。発現コンストラクトは、細胞内においてプラスミドなどのエピソームとして存在してもよいし、発現コンストラクトは、染色体に挿入されてもよい。好ましい実施形態では、発現ベクターには、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするための、選択可能なマーカー遺伝子が含まれる。選択可能なマーカー遺伝子は公知技術であり、使用する宿主細胞により異なる。
【0065】
本発明の一定の態様においては、目的の核酸は、ActRIIaポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供され、少なくとも一つの制御配列に作動可能に連結される。制御配列は、当分野で認められており、ActRIIaポリペプチドの発現を導くように選択される。したがって、制御配列という用語には、プロモータ、エンハンサおよび他の発現制御エレメントが含まれる。例示的な制御配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990年)に記載される。例えば、DNA配列に作動可能に連結された場合にその発現を制御する様々な発現制御配列の任意のものを、これらのベクターにおいて使用して、ActRIIaポリペプチドをコードするDNA配列を発現させうる。このような有用な発現制御配列には、たとえばSV40の初期および後期プロモータ、tetプロモータ、アデノウイルスまたはサイトメガロウィルス最初期プロモータ、RSVプロモータ、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼにより発現が導かれるT7プロモータ、λファージの主要なオペレータおよびプロモータ領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモータ、Pho5などの酸性ホスファターゼのプロモータ、酵母α接合系のプロモータ、バキュロウイルスシステムの多角体プロモータ、および、原核または真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、ならびにそれらの種々の組み合わせが含まれる。当然のことながら、発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、および/または発現させたいタンパク質のタイプなどの要素に依存しうる。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、および、抗生物質マーカーなど、ベクターによりコードされる任意の他のタンパク質の発現も、考慮されなければならない。
【0066】
本発明の組換え核酸は、クローン化遺伝子またはその部分を、原核細胞、真核細胞(イースト、鳥、昆虫または哺乳類)、または両方における発現に適するベクターに、ライゲーションすることにより産出できる。組換えActRIIaポリペプチドを産出するための発現媒体には、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、以下のタイプのプラスミドが含まれる:大腸菌(E.coli)など、原核生物細胞における発現用のpBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミド、およびpUC由来のプラスミド。
【0067】
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を促進するための原核細胞の配列を有し、真核細胞で発現する一つ以上の真核生物の転写ユニットも有する。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo、およびpHygに由来するベクターが、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターの一部は、原核細胞および真核細胞の両方における複製と薬剤耐性選択を促進するために、pBR322などの細菌プラスミドの配列により修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)、またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来、およびp205)などのウイルスの誘導体を、真核細胞におけるタンパク質の一時的発現に使用できる。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、以下の遺伝子治療送達システムの記載の中に見ることができる。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換に使用される種々の方法が、公知技術である。原核細胞および真核細胞の両方に適切な他の発現系、ならびに一般的な組換え方法については、Molecular Cloning A Laboratory Manual,第3版,Sambrook,Fritsch,およびManiatis編集(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001年)を参照。一定の場合には、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現することが望ましい。このようなバキュロウイルス発現系の例には、pVL−由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393、およびpVL941)、pAcUW−由来のベクター(例えば、pAcUW1)、およびpBlueBac−由来のベクター(たとえば、β−gal含有性pBlueBac III)が含まれる。
【0068】
好ましい実施形態では、ベクターは、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,カリフォルニア州ラホヤ)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)、およびpCIネオ・ベクター(Promega,ウィスコンシン州マディソン)など、CHO細胞における目的のActRIIaポリペプチドの産出のためにデザインされる。明らかながら、目的の遺伝子コンストラクトを用いて、培養で繁殖させた細胞に目的のActRIIaポリペプチドを発現させることにより、例えば融合タンパク質または変異体タンパク質を含めたタンパク質を産出し、精製しうる。
【0069】
本開示は、目的のActRIIaポリペプチドの一つ以上のコード配列(例えば配列番号4または5)を含む組換え遺伝子によりトランスフェクションされる宿主細胞にも関連する。宿主細胞は、任意の原核生物または真核生物細胞でありうる。例えば、本発明のActRIIaポリペプチドを、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用)、イースト、または哺乳動物細胞に発現させうる。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0070】
したがって本発明は、目的のActRIIaポリペプチドを産出する方法にさらに関連する。例えば、ActRIIaポリペプチドをコードする発現ベクターによりトランスフェクションされた宿主細胞を、適切な条件下で培養して、ActRIIaポリペプチドを発現させることができる。ActRIIaポリペプチドが、細胞とActRIIaポリペプチドを含む培地の混合物から分泌され、単離されうる。あるいは、ActRIIaポリペプチドは、細胞質または膜分画に維持され、細胞が採取され、溶解され、タンパク質が単離されればよい。細胞培養には、宿主細胞、培地および他の副産物が含まれる。細胞培養の適切な培地は、公知技術である。目的のActRIIaポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、限外濾過、電気泳動、ActRIIaポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体によるイムノアフィニティー精製、およびActRIIaポリペプチドに融合されたドメインと結合する薬剤によるアフィニティー精製(例えば、プロテインAカラムを使用してActRIIa−Fc融合を精製しうる)を含む、タンパク質を精製する公知技術を用いて、細胞培養培地、宿主細胞、または両者から単離されうる。好ましい実施形態においては、ActRIIaポリペプチドは、その精製を促進するドメインを含む融合タンパク質である。好ましい実施形態においては、精製は、一連のカラムクロマトグラフィの工程により行われる。これには例えば、任意の順序で以下のうちの三つ以上が含まれる:プロテインAクロマトグラフィ、Qセファロースクロマトグラフィ、フェニルセファロースクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィ。精製は、ウイルス濾過およびバッファー交換で完了しうる。本明細書に示されるとおり、ActRIIa−hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィによる測定により>98%の純度、SDS PAGEによる測定により>95%の純度に精製された。このレベルの純度は、マウスの骨に対する望ましい効果、ならびにマウス、ラット、およびヒト以外の霊長類における許容できる安全性プロフィルを達成するために十分だった。
【0071】
別の実施形態では、組換えActRIIaポリペプチドの所望の部分のN末端のポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列などの、精製リーダー配列をコードする融合タンパク質によって、Ni2+金属樹脂を用いたアフィニティークロマトグラフィによる、発現融合タンパク質の精製が可能になりうる。その後エンテロキナーゼによる処理により精製リーダー配列を除去し、精製ActRIIaポリペプチドを提供し得る(たとえばHochuli等,(1987年)J.Chromatography 411:177;およびJanknecht等,PNAS USA 88:8972を参照)。
【0072】
融合遺伝子を作製する技術は、周知である。基本的には、従来技術により、ライゲーションのための平滑末端または粘着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、粘着末端の適切な充填、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーションを用いて、異なるポリペプチド配列をコードする様々なDNA断片の連結を行いうる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動化されたDNA合成装置を含む従来技術により合成できる。あるいは、二つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うことができ、その後二つの連続した遺伝子フラグメントをアニーリングし、キメラ遺伝子配列を生成することができる(たとえばCurrent Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel等,John Wiley & Sons:1992年を参照)。
【0073】
4.代替アクチビンおよびActRIIaアンタゴニスト
本明細書に提示されるデータは、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達のアンタゴニストを用いて、骨成長および骨石灰化を促進できることを示す。可溶性ActRIIaポリペプチド、および特にActrlla−Fcが好ましいアンタゴニストであり、このようなアンタゴニストはアクチビン拮抗作用以外の機序により骨に影響しうるが(たとえばアクチビンの阻害は、薬剤が、TGFベータスーパーファミリーに属する他のメンバーをおそらく含む分子のスペクトルの活性を阻害する傾向の指標となり得、そのような集団的な阻害が、骨に対する所望の効果をもたらしうる)、抗アクチビン(例えばA、B、CまたはE)抗体、抗ActRIIa抗体、アンチセンス、ActRIIaの産出を阻害するRNAiまたはリボザイムの核酸および、特にアクチビン−ActRIIaの結合を阻害する、アクチビンまたはActRIIaのその他の阻害物質を含む、他のタイプのアクチビン−ActRIIaアンタゴニストも有用であると予想される。
【0074】
ActRIIaポリペプチド(例えば可溶性ActRIIaポリペプチド)に特異的に反応し、ActRIIaポリペプチドと競合してリガンドに結合するか、ActRIIaを介したシグナル伝達を阻害する抗体を、ActRIIaポリペプチド活性のアンタゴニストとして使用しうる。同様に、アクチビンAポリペプチドに特異的に反応し、ActRIIaの結合を阻害する抗体を、アンタゴニストとして使用しうる。
【0075】
ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチドから得た免疫原を用いて、標準プロトコルにより抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体を作製できる(たとえばHarlowおよびLane編集、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press:1988年)を参照)。マウス、ハムスター、またはウサギなどの哺乳類を、免疫原の形のActRIIaポリペプチド、抗体反応を誘発できる抗原のフラグメント、または融合タンパク質で免疫化しうる。タンパク質またはペプチドに免疫原性を与える技術には、担体への接合または他の公知技術が含まれる。ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドの免疫原の部分を、補助剤の存在下で投与できる。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体価の検出によりモニタできる。免疫原を抗体のレベルを評価する抗原として用いた、標準ELISAまたは他のイムノアッセイを利用できる。
【0076】
ActRIIaポリペプチドの抗原調製物により動物を免疫化した後、抗血清を得、必要に応じてポリクローナル抗体を血清から単離できる。モノクローナル抗体をつくるためには、免疫化した動物から抗体産生細胞(リンパ球)を採取し、標準の体細胞融合法により骨髄腫細胞等の不死化細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を産生しうる。このような技術は公知技術であり、例えば、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilsteinが最初に開発、(1975年)Nature,256:495−497)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbar等,(1983年)Immunology Today,4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Cole等,(1985年)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.pp.77−96)が含まれる。ActRIIaポリペプチドに特異的に反応する抗体の産出につき
ハイブリドーマ細胞を免疫化学的にスクリーニングし、このようなハイブリドーマ細胞を含む培養から、モノクローナル抗体を単離できる。
【0077】
本明細書で用いられるところの「抗体」という用語には、やはり当該ポリペプチドに特異的に反応するフラグメントも含まれる。抗体は従来技術を使用してフラグメント化でき、完全な抗体につき上述したのと同様に、フラグメントの有用性をスクリーニングしうる。例えば、抗体をペプシンで処置することにより、F(ab)2フラグメントを生成できる。得られたF(ab)2フラグメントに、ジスルフィド架橋を減らす処置を行い、Fabフラグメントを産出できる。本発明の抗体にはさらに、抗体の少なくとも一つのCDR領域によって与えられるActRIIaまたはアクチビンポリペプチドに対する親和性を有する二重特異性、一本鎖、キメラ、ヒト化および完全ヒト分子も含まれる。抗体にはさらに標識が取り付けられ、検出されうる(たとえば標識は、ラジオアイソトープ、蛍光化合物、酵素または酵素補因子でありうる)。
【0078】
一定の実施形態においては、抗体は組換え抗体であり、この用語には、CDR移植またはキメラ抗体、ライブラリから選択された抗体ドメインからなるヒトまたは他の抗体、一本鎖抗体および単一ドメイン抗体(例えばヒトVHタンパク質またはラクダ科VHHタンパク質)を含め、一部分子生物学の技術により生み出される任意の抗体が含まれる。一定の実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体であり、一定の実施形態では、本発明により、新規の抗体をつくる方法が得られる。たとえば、ActRIIaポリペプチドまたはアクチビンポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を生み出す方法には、検出可能な免疫応答を刺激するのに有効な量の抗原ポリペプチドを含む免疫原組成物をマウスに投与する工程と、マウスから抗体産生細胞(例えば脾臓の細胞)を得て抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させ、抗体産生ハイブリドーマを得る工程と、抗体産生ハイブリドーマをテストして、抗原に特異的に結合するモノコローナル(monocolonal)抗体を産出するハイブリドーマを特定する工程が含まれうる。得られたハイブリドーマは、細胞培養において、選択的に、ハイブリドーマ由来の細胞が抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を産出する培養条件で、繁殖させうる。細胞培養からモノクローナル抗体を精製しうる。
【0079】
抗体について用いられる「特異的に反応する」という形容詞は、従来技術において一般に理解されているように、抗体が、目的の抗原(例えばActRIIaポリペプチド)と目的以外の他の抗原との間で十分に選択的であるために、抗体が、少なくとも特定のタイプの生体試料中の目的の抗原の存在を検出するのに役立つことを意味する。治療的応用など、抗体を用いた一定の方法では、より高い結合の特異性が望ましい。モノクローナル抗体は一般に、所望の抗原と交差反応ポリペプチドを有効に識別する傾向(ポリクローナル抗体と比較して)が強い。抗体:抗原相互作用の特異性に影響を与える一つの特性は、抗体の抗原に対する親和性である。所望の特異性は、様々な親和性の範囲で達されうるが、一般に好ましい抗体は、約10−6、10−7、10−8、10−9またはそれ以下の親和性(解離定数)を有する。アクチビンとActRIIaの間の非常に強力な結合を前提とすると、中和抗アクチビンまたは抗ActRIIa抗体は一般に、10−10またはそれ以下の解離定数を有すると予想される。
【0080】
さらに、望ましい抗体を同定するための抗体のスクリーニングに用いられる技術が、得られる抗体の特性に影響を与えうる。例えば、溶液中の抗原を結合するために抗体が使用される場合には、溶液の結合をテストすることが望ましいであろう。抗体と抗原の間の相互作用をテストして特に望ましい抗体を同定するために、様々な異なる技術を利用できる。このような技術には、ELISAs、表面プラスモン共鳴結合アッセイ(例えばBiacore(商標)結合アッセイ、Biacore AB,ウプサラ,スウェーデン)、サンドイッチアッセイ(たとえばIGEN International,Inc.,メリーランド州ゲイザーズバーグの常磁性ビーズシステム)、ウェスタンブロット、免疫沈降アッセイ、および免疫組織化学が含まれる。
【0081】
アクチビンアンタゴニストまたはActRIIaアンタゴニストである核酸化合物のカテゴリの例には、アンチセンス核酸、RNAiコンストラクトおよび触媒核酸コンストラクトが含まれる。核酸化合物は、一本鎖または二本鎖でありうる。二本鎖化合物には、鎖のいずれか一方が一本鎖である、オーバーハングまたは非相補的領域も含まれうる。一本鎖化合物は、自己相補的な領域を含みうる。すなわち化合物は、二重螺旋構造の領域をもつ、いわゆる「ヘアピン」または「ステム−ループ」構造を形成する。核酸化合物には、全長ActRIIa核酸配列またはアクチビンβAまたはアクチビンβB核酸配列の1000以下、500以下、250以下、100以下または50、35、30、25、22、20または18以下のヌクレオチドからなる領域と相補的なヌクレオチド配列が含まれうる。相補的領域は少なくとも8ヌクレオチドであることが好ましく、選択的に少なくとも10または少なくとも15ヌクレオチド、および選択的に15〜25ヌクレオチドの間である。相補的領域は、コード配列部分など、標的転写産物のイントロン、コード配列、または非コード配列のどこにでも含まれうる。一般に、核酸酸化合物は約8〜約500ヌクレオチドの長さ、または塩基対の長さを有し、選択的に、約14〜約50ヌクレオチドの長さとなる。核酸は、DNA(特にアンチセンスとしての用途)、RNA、またはRNA:DNAハイブリッドでありうる。任意の一本鎖には、DNAおよびRNAの混合物、ならびにDNAともRNAとも直ちに分類できない修飾形態が含まれうる。同様に、二本鎖化合物はDNA:DNA、DNA:RNA、またはRNA:RNAであり得、任意の一本鎖にはDNAおよびRNAの混合物、ならびにDNAともRNAとも直ちに分類できない修飾形態が含まれうる。核酸化合物には、バックボーン(ヌクレオチド間の連結を含む、天然核酸の糖−リン酸塩部分)または塩基部分(天然核酸のプリンまたはピリミジン部分)への一つまたは修飾を含む、様々な修飾の任意のものが含まれうる。アンチセンス核酸化合物は、好ましくは約15〜約30ヌクレオチドの長さを有し、細胞内、または経口的送達化合物の場合には胃や、吸入化合物の場合には肺などといった化合物が送達される可能性のある場所において、血清における安定性などの特性を改善する一つ以上の修飾を含むことが多い。RNAiコンストラクト場合には、標的転写産物に相補的な鎖は一般に、RNAまたはその修飾である。他の鎖は、RNA、DNAまたは他のバリエーションでありうる。二本鎖または一本鎖「ヘアピン」RNAiコンストラクトの二重部分は、Dicerの基質として利用できる限り、18〜40ヌクレオチドの長さを有するのが好ましく、選択的に約21〜23ヌクレオチドの長さとなる。触媒または酵素として働く核酸は、リボザイムまたはDNA酵素であればよく、修飾形態も含みうる。核酸化合物は、生理学的条件下およびナンセンスまたはセンスコントロールが効果をほとんど有しない濃度で細胞と接触させると、標的の発現を約50%、75%、90%またはそれ以上阻害できる。核酸化合物の効果をテストするのに好ましい濃度は、1、5および10ミクロモルである。核酸化合物は、例えば骨成長および石灰化に対する効果をテストすることもできる。
【0082】
5.スクリーニングアッセイ
一定の態様においては、本発明は、アクチビン−ActRIIaシグナル伝達経路のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(薬剤)を同定するための、ActRIIaポリペプチド(例えば可溶性ActRIIaポリペプチド)およびアクチビンポリペプチドの利用に関する。このスクリーニングで同定される化合物をテストして、インビトロで骨成長または石灰化を調整する能力を評価できる。選択的に、これらの化合物をさらに動物モデルでテストして、インビボで組織成長を調整する能力を評価できる。
【0083】
アクチビンおよびActRIIaポリペプチドを標的とすることにより組織成長を調整する治療薬をスクリーニングするには、多数のアプローチがある。一定の実施形態では、アクチビンまたはActRIIaを介した骨への効果を乱す薬剤を同定するために、化合物のハイ−スループットスクリーニングを行いうる。一定の実施形態では、ActRIIaポリペプチドのアクチビンに対する結合を特異的に阻害または減じる化合物をスクリーニングし、同定するために、アッセイが行われる。あるいは、ActRIIaポリペプチドのアクチビンに対する結合を増強する化合物を同定するために、アッセイを利用できる。さらなる実施形態では、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドと相互作用する能力により、化合物を同定できる。
【0084】
十分なアッセイフォーマットが様々あり、当業者が本開示を考慮すれば、本明細書に特に記載されていないものも包含される。本明細書に記載されるように、本発明のテスト化合物(薬剤)は、任意のコンビナトリアル化学法によりつくられうる。あるいは、当該化合物は、インビボまたはインビトロで合成される天然の生体分子でもよい。組織成長のモジュレーターとしての役割を果たす能力をテストされる化合物(薬剤)は、たとえば細菌、イースト、植物または他の生物(例えば天然物)などにより生産され、化学的に生産され(例えばペプチドミメティクスを含む小分子)、または組み換えにより生産されうる。本発明に予定されるテスト化合物には、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティクス、糖類、ホルモン類、および核酸分子が含まれる。特定の実施形態においては、試験薬剤は、約2,000ダルトンを下回る分子量を有する小有機分子である。
【0085】
本発明のテスト化合物は、単一の不連続的な存在として提供されることも、あるいは、例えばコンビナトリアル化学により作られる複雑度の高いライブラリにおいて提供されることもできる。これらのライブラリには、例えばアルコール類、ハロゲン化アルキル類、アミン類、アミド類、エステル類、アルデヒド類、エーテル類および他の種類の有機化合物が含まれうる。テストシステムへのテスト化合物の提示は、特に最初のスクリーニング工程では、単離された形でも、化合物の混合物としてでもよい。選択的に、化合物は他の化合物により選択的に誘導体化されればよく、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有する。誘導体化基の非限定的な例には、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位元素、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化可能な架橋剤またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0086】
化合物および天然抽出物のライブラリをテストする多くの薬物スクリーニング計画においては、所定の時間で調査される化合物の量を最大にするために、ハイスループットアッセイが望ましい。精製タンパク質または半精製タンパク質などを用いた無細胞系において実施されるアッセイは、テスト化合物により媒介される分子標的の迅速な開発および改変の比較的簡単な検出ができるように作製できるという点から、多くの場合「一次」スクリーニングとして好まれる。さらにインビトロ系では、テスト化合物の細胞毒性の効果および/またはその生物学的利用能を一般に無視でき、その代わりにアッセイは、ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の結合親和性の改変から明らかになる、分子標的への薬剤の効果に主に集中される。
【0087】
単なる例示として、本発明の代表的なスクリーニングアッセイにおいては、目的の化合物が、アクチビンに通常結合できる、単離および精製されたActRIIaポリペプチドと接触させられる。その後、化合物およびActRIIaポリペプチドの混合物に、ActRIIaリガンドを含む組成物が加えられる。ActRIIa/アクチビン複合体の検出および数量化は、ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の複合体形成を阻害する(または強化する)化合物の効力を判定する手段を提供する。テスト化合物の様々な濃度を使用して得られたデータから用量応答曲線を作製することにより、化合物の効力を評価できる。さらに、比較のベースラインを提供するために、コントロールアッセイも行われうる。例えば、コントロールアッセイでは、単離および精製されたアクチビンがActRIIaポリペプチドを含む組成物に加えられ、テスト化合物の非存在下でActRIIa/アクチビン複合体の形成が数量化される。当然のことながら、一般に、反応物が混合される順序は変えられ、同時に混合されてもよい。さらに、精製タンパク質の代わりに、細胞抽出物および溶解物用いて、適切な無細胞アッセイシステムを提供してもよい。
【0088】
ActRIIaポリペプチドとアクチビンの間の複合体形成は、様々な技術により検出できる。例えば、放射標識(例えば32P、35S、14Cまたは3H)、蛍光標識(例えばFITC)、または酵素標識されたActRIIaポリペプチドまたはアクチビンなど、検出可能に標識されたタンパク質を用いて、イムノアッセイにより、またはクロマトグラフィ検出により、複合体形成の変化を数量化できる。
【0089】
一定の実施形態では、本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質の間の相互作用の程度の直接または間接的な測定において、蛍光偏光法アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイの利用を予定する。さらに、光導波路に基づくもの(国際公開第96/26432号および米国特許第5,677,196号)、表面プラスモン共鳴(SPR)、表面電荷センサ、および表面力センサなど、他の検出の様式も本発明の多くの実施形態に適合する。
【0090】
さらに本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を阻害または強化する薬剤を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても知られる相互作用トラップアッセイの利用を予定する。たとえば、米国特許第5,283,317号;Zervos等(1993年)Cell 72:223−232;Madura等(1993年)J Biol Chem 268:12046−12054;Bartel等(1993年)Biotechniques 14:920−924;Iwabuchi等(1993年)Oncogene 8:1693−1696)を参照。特定の実施形態においては、本発明は、ActRIIaポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を分離する化合物(例えば小分子またはペプチド)を同定するための、リバース・ツーハイブリッド系の利用を予定する。例えば、VidalおよびLegrain,(1999年)Nucleic Acids Res 27:919−29;VidalおよびLegrain,(1999年)Trends Biotechnol 17:374−81;および米国特許第5,525,490号;第5,955,280号;および第5,965,368号を参照。
【0091】
一定の実施形態では、目的の化合物は、本発明のActRIIaまたはアクチビンポリペプチドと相互作用する能力により同定される。化合物とActRIIaまたはアクチビンポリペプチドの間の相互作用は、共有結合的でも非共有結合的でもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射標識リガンド結合、およびアフィニティークロマトグラフィを含む、インビトロの生化学的方法を使用してタンパク質レベルで同定できる(Jakoby WB等,1974年,Methods in Enzymology 46:1)。一定の場合には、化合物は、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドに結合する化合物を検出するアッセイなど、機序ベースのアッセイでスクリーニングできる。これには、固相または液相結合事象が含まれうる。あるいは、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドをコードする遺伝子を、リポーターシステム(例えばβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)により細胞にトランスフェクションし、好ましくはハイスループット・スクリーニングにより、または、ライブラリの個々のメンバーにつき、ライブラリに対してスクリーニングしうる。たとえば自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイなど、他の機序ベースの結合アッセイを利用してもよい。結合アッセイは、標的をウェル、ビーズまたはチップに固定し、または固定された抗体に捕捉し、またはキャピラリー電気泳動法により分解して、行うことができる。結合した化合物は、比色または蛍光または表面プラスモン共鳴を通常使用して検出できる。
【0092】
一定の態様においては、本発明は、骨形成を調整(刺激または阻害)し、骨量を増加するための方法および薬剤を提供する。したがって、同定された任意の化合物を、細胞全体または組織においてインビトロまたはインビボでテストして、骨成長または石灰化を調整する能力を確認しうる。公知技術の様々な方法を、この目的に利用できる。
【0093】
例えば、細胞ベースのアッセイにおいて、Msx2の誘導または骨前駆細胞の造骨細胞への分化を測定することにより、骨または軟骨成長に対するActRIIaもしくはアクチビンポリペプチドまたはテスト化合物の効果を判定できる(たとえば、Daluiski等,Nat Genet.2001年,27(1):84−8;Hino等,Front Biosci.2004年,9:1520−9を参照)。細胞ベースのアッセイの別の例には、間葉系前駆細胞および骨芽細胞における、目的のActRIIaまたはアクチビンポリペプチドおよびテスト化合物の骨形成活性の分析が含まれる。例示として、アクチビンまたはActRIIaポリペプチドを発現する組換えアデノウイルスを構築し、多分化能の間葉系前駆C3H10T1/2細胞、前骨芽C2C12細胞、および骨芽TE−85細胞にインフェクションしうる。その後、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、およびマトリクス石灰化の誘導を測定することにより、骨形成活性が判定される(たとえばCheng等,J bone Joint Surg Am.2003年,85−A(8):1544−52を参照)。
【0094】
本発明は、骨または軟骨成長を測定するための、インビボアッセイも予定する。たとえば、Namkung−Matthai等,Bone,28:80−86(2001年)は、ラットの骨粗鬆症モデルを開示し、骨折後初期の期間中の骨修復を研究している。Kubo等,Steroid Biochemistry & Molecular Biology,68:197−202(1999年)も、ラットの骨粗鬆症モデルを開示し、骨折後後期の期間中の骨修復を研究している。Andersson等,J.Endocrinol.170:529−537は、マウスの卵巣切除がなされ、そのためにマウスの骨塩量および骨塩密度が大幅に減少し、骨梁では骨塩密度がほぼ50%減少する、マウスの骨粗鬆症モデルを記載する。副甲状腺ホルモン等の因子の投与により、卵巣切除マウスの骨密度を高められる。一定の態様においては、本発明は、従来技術において周知の骨折治癒アッセイを利用する。これらのアッセイには、骨折技術、組織分析、および生体力学的分析が含まれ、これらはたとえば、骨折を生じさせ、骨折の程度を測定するための実験プロトコルおよび修復プロセスの開示が参照により全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,521,750号に記載されている。
【0095】
6.治療上の利用例
一定の実施形態においては、本発明のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト(例えばActRIIaポリペプチド)は、例えば、骨折、減少または脱灰を問わない骨損傷を伴う病気または状態を処置または予防するために使用できる。一定の実施形態においては、本発明は、治療的に有効な量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、特にActRIIaポリペプチドを個体に投与することにより、骨損傷を処置または予防するための方法を、それを必要とする個体に提供する。一定の実施形態においては、本発明は、治療的に有効な量のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、特にActRIIaポリペプチドを個体に投与することにより、骨成長または石灰化を、それを必要とする個体において促進するための方法を提供する。これらの方法は、動物、より好ましくはヒトの、治療的および予防的処置を目的とする。一定の実施形態では、本開示は、低骨密度または骨強度の低下を伴う病気の処置のための、アクチビン−ActRIIaアンタゴニスト(特に可溶性ActRIIaポリペプチド、およびアクチビンまたはActRIIaを標的とする中和抗体)の利用を提供する。
【0096】
本明細書で使用されるところの、病気または状態を「予防する」治療とは、統計サンプルにおいて、未処置のコントロール試料と比較して、処置されたサンプルにおいて病気または状態の発生を減らすか、または、未処置のコントロール試料と比較して、病気または状態の一つ以上の症状の発症を遅らせ、または重症度を抑える化合物を指す。本明細書で用いられるところの「処置する」という用語には、特定の状態の予防、または、状態がいったん確定した後の改善または除去が含まれる。いずれの場合にも、予防または処置は、医師の提供する診断と治療薬の投与目的により識別されうる。
【0097】
本開示は、骨および/または軟骨形成を誘発し、骨量減少を予防し、骨石灰化を増加させ、または骨脱灰を予防するための方法を提供する。例えば、目的のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、ヒトおよび他の動物における骨粗鬆症の処置、ならびに骨折および軟骨欠損の治癒において適用される。ActRIIaまたはアクチビンポリペプチドは、骨粗鬆症の進行に対する予防手段として、準臨床的な低骨密度と診断された患者に役立ちうる。
【0098】
一つの特定の実施形態においては、本発明の方法および組成物は、ヒトおよび他の動物における骨折および軟骨欠損の回復に医学的有用性を見出だすことができる。当該方法および組成物は、骨折の観血的整復ならびに非観血的整復、さらに人工関節の固定の改善において予防的に利用できる。骨形成剤により誘導される新たな骨形成は、先天性、外傷または腫瘍切除により誘発される頭蓋顔面の欠損の修復に貢献し、さらに美容整形外科手術においても有用である。一定の場合においては、目的のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、骨形成細胞を引きつけ、骨形成細胞の成長を刺激し、または骨形成細胞の前駆体の分化を誘発する環境を提供できる。本発明のアクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、骨粗鬆症の処置にも役立ちうる。
【0099】
本発明の方法および組成物は、骨粗鬆症(続発性骨粗鬆症を含む)、副甲状腺機能亢進症、クッシング病、パジェット病、甲状腺亢進症、慢性的な下痢状態または吸収不良、尿細管性アシドーシス、または神経性食欲不振など、骨量減少を特徴とするか、骨量減少を生じる状態に適用できる。
【0100】
骨粗鬆症は、様々な要因が原因となり、または関連する。女性、特に閉経期後の女性であること、低体重であること、坐位の生活様式は、すべて骨粗鬆症の危険因子である(骨折の危険につながる骨塩密度の減少)。以下のプロフィルのいずれかを有する人は、ActRIIaアンタゴニストによる処置の候補となりうる:閉経女性であり、エストロゲンまたは他のホルモン補充療法を受けていない女性;自分または母親に股関節部骨折または喫煙の経験がある人;背が高く(5フィート7インチ以上)または痩せている(125ポンド未満)閉経女性;骨量減少を伴う臨床状態をもつ男性;Prednisone(商標)などのコルチコステロイド、Dilantin(商標)および一定のバルビツレートなどの様々な抗発作薬、または高用量の甲状腺補充薬物を含む、骨量減少を生じることが知られている薬を使用している人;一型糖尿病、肝疾患、じん臓病、または家族に骨粗鬆症の人がいる人;骨代謝回転が高い人(例えば尿サンプル中のコラーゲンが過剰);甲状腺機能亢進症など、甲状腺機能異常の状態である人;軽い外傷だけで骨折が生じた人;X線から脊椎骨折または他の骨粗鬆症の兆候が判明した人。
【0101】
上述のとおり、骨粗鬆症は、別の病気に伴う状態として、または、一定の薬の使用から生じることもある。薬物または別の医学的状態から生じる骨粗鬆症は、続発性骨粗鬆症として知られている。クッシング病として知られる状態においては、体により産出される過剰なコルチゾールが、骨粗鬆症および骨折につながる。続発性骨粗鬆症に関連する最も一般的な薬は、コルチコステロイドであり、これは、副腎により自然に産出されるホルモンであるコルチゾールのように作用する薬物の種類である。骨格の発達には適切なレベルの甲状腺ホルモン(甲状腺により産出される)が必要であるが、過剰な甲状腺ホルモンは、しだいに骨量を減少させうる。アルミニウムを含む制酸剤は、腎障害の人、特に透析を受けている人が高用量で服用すると、骨量減少につながりうる。続発性骨粗鬆症を生じうる他の薬には、発作を予防するために使用されるフェニトイン(ディランチン)およびバルビツレート;一定の種類の関節炎、癌、および免疫不全のための薬物であるメトトレキセート(Rheumatrex、Immunex、Folex PFS);自己免疫疾患を処置し、臓器移植患者の免疫系を抑制するために使用される薬物である、サイクロスポリン(Sandimmune、Neoral);前立腺癌および子宮内膜症を処置するために使用される、黄体形成ホルモン放出ホルモンのアゴニスト(Lupron、Zoladex);抗凝固薬ヘパリン(Calciparine、Liquaemin);および高コレステロールを処置するために使用されるコレスチラミン(Questran)およびコレスチポール(Colestid)が含まれる。癌治療によって生じる骨量減少は、癌治療起因性骨量減少(CTIBL)と呼ばれて広く認識されている。骨転移により骨に空洞が生じうるが、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストによる処置によりこれを修正できる。
【0102】
好ましい実施形態においては、本明細書に開示されるアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト、特に可溶性ActRIIaを、癌患者に使用できる。一定の腫瘍(例えば前立腺、乳腺、多発性骨髄腫、または副甲状腺機能亢進症を生じる任意の腫瘍)を患う患者は、腫瘍起因性骨量減少ならびに骨転移および治療薬による骨量減少のリスクが高い。このような患者は、骨量減少または骨転移の徴候がない場合であっても、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストで処置しうる。患者の骨量減少または骨転移の徴候をモニタして、指標がリスクの増加を示した場合に、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストで処置することもできる。一般に、骨密度の変化を評価するためにDEXAスキャンが用いられ、骨再形成の指標を用いて骨転移の可能性を評価できる。血清マーカーが、モニタされうる。骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)は、造骨細胞に存在する酵素である。骨転移およびその他の骨再形成の増加を生じる状態の患者においては、BSAPの血中濃度が増加する。オステオカルシンおよびプロコラーゲンペプチドも、骨形成および骨転移に関連する。前立腺癌による骨転移の患者、およびより、低い程度では乳癌からの骨転移の患者に、BSAPの増加が検出されている。骨形成タンパク質−7(BMP−7)のレベルは、骨に転移した前立腺癌では高いが、膀胱、皮膚、肝臓、または肺癌による骨転移では低い。I型カルボキシ末端テロペプチド(ICTP)は、骨吸収の間に形成されるコラーゲンに見られる架橋である。骨は常に破壊され、再形成されているため、ICTPは体中に見られる。しかし、骨転移の部位では、正常骨の領域よりもレベルが大幅に高くなる。前立腺、肺、および乳癌による骨転移においては、ICTPが高レベルで見られている。別のコラーゲン架橋であるI型N末端テロペプチド(NTx)は、骨代謝回転の間にICTPとともに産出される。肺、前立腺、および乳癌を含む多様なタイプの癌から生じる骨転移において、NTxの量が増加する。また、骨転移の進行とともにNTxのレベルが高まる。したがって、このマーカーは、転移の検出および病気の程度の測定の両方に用いることができる。他の吸収のマーカーには、ピリジノリンおよびデオキシピリジノリンが含まれる。吸収マーカーまたは骨転移マーカーの一切の増加は、患者にアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト治療が必要であることを示す。
【0103】
アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、他の医薬品と一緒に投与できる。共同投与は、単一の複合処方物の投与により、同時投与により、または、別々の時間での投与により行われうる。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストは、他の骨活性剤(bone−active agent)とともに投与されると、特に有益でありうる。アクチビン−ActRIIaアンタゴニストとともに、カルシウム補助剤、ビタミンD、適切な運動および/または、場合によっては他の薬を併用することが、患者に利益となりうる。他の薬の例には、ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネートおよびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲン、副甲状腺ホルモンおよびラロキシフェンが含まれる。ビスホスホネート(アレンドロネート、イバンドロネートおよびリセドロネート)、カルシトニン、エストロゲンおよびラロキシフェンは、骨再形成サイクルに影響を及ぼし、抗吸収薬として分類される。骨再形成は、骨吸収および骨形成という二つの異なる段階からなる。抗吸収薬は、骨再形成サイクルの骨吸収の部分を減速または停止させるが、サイクルの骨形成の部分は減速させない。その結果、新たな形成が骨吸収より高い率で続き、骨密度がしだいに増加しうる。副甲状腺ホルモンの一種であるテリパラタイドは、骨再形成サイクルにおける骨形成の率を高める。アレンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の予防(一日5mgまたは週一回35mg)および処置(一日10mgまたは週一回70mg)の両方に承認されている。アレンドロネートは、骨量減少を抑え、骨密度を高め、脊椎、手首および股関節部骨折のリスクを減らす。アレンドロネートは、これらの薬(すなわち、プレドニソンおよびコーチゾン)の長期的利用の結果である男性および女性における糖質コルチコイド起因性骨粗鬆症の処置、および男性における骨粗鬆症の処置にも承認されている。アレンドロネートとビタミンDは、閉経女性の骨粗鬆症の処置(週一回70mgとビタミンD)、および骨粗鬆症の男性の骨量を改善するための処置に承認されている。イバンドロネートは、閉経後骨粗鬆症の予防および処置のために承認されている。月一回のピル(150mg)として服用されるイバンドロネートは、毎月同じ日に服用されなければならない。イバンドロネートは、骨量減少を抑え、骨密度を高め、脊椎骨折のリスクを減らす。リセドロネートは、閉経後骨粗鬆症の予防および処置のために承認されている。毎日(5mg用量)または毎週(35mg用量、または、35mg用量とカルシウム)服用されるリセドロネートは、骨量減少を抑え、骨密度を高め、脊椎および非脊椎骨折のリスクを減らす。リセドロネートは、これらの薬(すなわち、プレドニソンまたはコーチゾン)の長期的利用から生じる糖質コルチコイド起因性骨粗鬆症を予防および/または処置するための、男性および女性による使用にも承認されている。カルシトニンは、カルシウム調節および骨代謝に関わる天然のホルモンである。閉経から5年以上経った女性においては、カルシトニンは骨量減少を抑え、脊椎の骨密度を高め、骨折に伴う痛みを和らげることができる。カルシトニンは、脊椎骨折のリスクを減らす。カルシトニンは、注射(毎日50−100IU)または点鼻薬(毎日200IU)として入手可能である。エストロゲン療法(ET)/ホルモン療法(HT)は、骨粗鬆症の予防に承認されている。ETは、閉経女性の骨量減少を抑え、脊椎および股関節部の両方の骨密度を高め、股関節部および脊椎の骨折リスクを減らすことが分かっている。ETは、最も一般的には、毎日約0.3mgの低用量、または毎日約0.625mgの標準用量を送達する、ピルまたは皮膚パッチの形で投与され、70歳を過ぎてから開始しても有効である。エストロゲンを単独で服用すると、女性が子宮内層の癌(子宮内膜癌)を発症するリスクが高まりうる。このリスクを除去するために、医療提供者は、完全な子宮を有する女性には、エストロゲン(ホルモン補充療法またはHT)とともにホルモンのプロゲスチンを処方する。ET/HTは、更年期症状を和らげ、骨の健康状態に有益な効果があることが分かっている。副作用には、膣出血、乳房圧痛、気分障害および胆嚢疾患が含まれうる。1日60mgのラロキシフェンは、閉経後骨粗鬆症の予防および処置に承認されている。これは、潜在的不都合を伴わずにエストロゲンの有益な効果を提供するために開発された、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERMs)と呼ばれる薬物の種類に属する。ラロキシフェンは、骨量を増加させ、脊椎骨折のリスクを減らす。ラロキシフェンが股関節および他の非脊椎骨折のリスクを減じうることを示すデータは、まだ入手不可能である。副甲状腺ホルモンの一種であるテリパラタイドは、骨折のリスクが高い閉経女性および男性の骨粗鬆症の処置に承認されている。この薬は、新規の骨形成を刺激し、骨塩密度を大幅に増加させる。閉経女性においては、脊椎、股関節部、足、肋骨および手首の骨折の減少が認められた。男性においては、脊椎の骨折減少が見られたが、他の部位での骨折減少を評価するためのデータは不足であった。テリパラタイドは、毎日注射により最高24ヶ月間自己投与される。
【0104】
7.医薬組成物
一定の実施形態では、本発明のアクチビン−ActRIIaアンタゴニスト(例えばActRIIaポリペプチド)は、薬学的に受容可能な担体とともに調製される。例えば、ActRIIaポリペプチドは、単独で投与されてもよいし、医薬処方物(治療組成物)の成分として投与されてもよい。目的の化合物は、人間または動物用医薬品に用いられる、任意の便利な方法による投与のために調製されうる。
【0105】
一定の実施形態では、本発明の治療法には、インプラントまたはデバイスとして、全身的または局所的に組成物を投与する工程が含まれる。投与される本発明に使用される治療組成物は、当然ながら発熱性物質を含まず、生理的に許容できる形態である。上述のとおり、組成物に選択的に含まれうるActRIIaアンタゴニスト以外の治療上役立つ薬剤も、本発明の方法において、当該化合物(例えばActRIIaポリペプチド)とともに、同時または順に投与されうる。
【0106】
典型的には、ActRIIaアンタゴニストは、非経口的に投与される。非経口投与に適切な医薬組成物には、一つ以上の薬学的に受容可能な無菌等張性の水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、または使用直前に無菌の注射可能な溶液または分散液に戻せる無菌粉末であり、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、処方物を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤または増粘剤を含みうるものと組み合わせた、一つ以上のActRIIaポリペプチドが含まれうる。本発明の医薬組成物に使用できる適切な水性および非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル類が含まれる。適当な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング材の使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持できる。
【0107】
さらに組成物は、標的組織部位(例えば骨)に送達するための形にカプセル化または注入されればよい。一定の実施形態では、本発明の組成物には、一つ以上の治療化合物(例えばActRIIaポリペプチド)を標的組織部位(例えば骨)に送達し、発達する組織のための構造を提供し、最適には体内に吸収されることが可能なマトリクスが含まれうる。例えば、マトリクスは、ActRIIaポリペプチドの徐放を提供しうる。このようなマトリクスは、他の移植用医療品に現在使用される物質から形成できる。
【0108】
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、力学的性質、審美的な外観およびインターフェイス特性に基づく。当該組成物の特定の用途により、どのような処方物が適切かが決まる。組成物の潜在的マトリクスは、生分解性であり、化学的に定義された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、およびポリアンヒドリドでありうる。他の潜在的マトリクスは、生分解性であり、生物学的に明確に定義された、例えば骨又は真皮コラーゲンである。さらなるマトリクスは純粋タンパク質又は細胞外マトリクス成分からなる。他の潜在的マトリクスは、非生分解性であり、化学的に定義された、例えば焼結ヒドロキシアパタイト、生体ガラス、アルミナート、または他のセラミクスである。マトリクスは上述の任意の種類の材料、例えばポリ乳酸およびヒドロキシアパタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムの組合せからなってもよい。バイオセラミクスは、カルシウム−アルミナート−ホスファートなど、組成を変更でき、孔径、粒子径、粒子形および生分解性を変更するためのプロセスが施されていてもよい。
【0109】
一定の実施形態においては、本発明の方法は、たとえば、予め決められた量の薬剤を主成分としてそれぞれ含む、カプセル、カシェ剤、ピル、錠剤、トローチ剤(風味をつけた基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカンタを使用)、粉剤、顆粒剤の形で、または、水性もしくは非水性の溶液もしくは懸濁液として、または、水中油もしくは油中水の乳濁液として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性の基剤を使用)として、および/または口内洗剤などとして、経口的に行われうる。薬剤は、ボーラス、し剤またはペーストとして投与されることもできる。
【0110】
経口投与のための固体投与形態(カプセル、錠剤、ピル、糖衣丸、粉剤、顆粒剤など)においては、本発明の一つ以上の治療化合物を、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなどの一つ以上の薬学的に受容可能な担体および/または以下の任意のものと混合できる:(1)デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸等の充填材または増量剤;(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアカシア等の結合剤;(3)グリセロール等の保湿剤:(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、一定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム等の崩壊剤;(5)パラフィン等の溶液緩染剤;(6)第四アンモニウム化合物等の吸収促進剤;(7)たとえばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール等の湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物等の潤滑剤;および(10)着色剤。カプセル剤、錠剤およびピルの場合には、医薬組成物には緩衝剤も含まれうる。ラクトースまたは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟および硬ゼラチンカプセルの充填剤として、同様のタイプの固形組成物を使用してもよい。
【0111】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に受容可能な乳濁液、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形には、活性成分に加えて、水や他の溶媒のような当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、溶解剤および乳化剤、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に綿実、ラッカセイ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステルなど、およびそれらの混合物を含みうる。経口組成物には、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および保存剤などの補助剤も含みうる。
【0112】
懸濁液には、活性化合物に加えて、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁剤が含まれうる。
【0113】
本発明の組成物には、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤も含まれうる。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など、様々な抗菌剤および抗真菌剤を含むことにより確保され得る。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含むことが望ましい場合もある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤を含むことにより、注射可能型薬剤形態の吸収を遅延させることができる。
【0114】
当然のことながら、用法用量は、本発明の目的の化合物(例えばActRIIaポリペプチド)の作用を変更する様々な要因を考えて、主治医により判断される。様々な要因には、限定はされないが、形成されるのが好ましい骨重量、骨密度の減少の程度、骨損傷の部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別、および食生活、骨量減少に寄与している可能性のある任意の病気の重症度、投与の時間、および他の臨床的要因が挙げられる。選択的に、投与量は、再構築に使用されるマトリクスのタイプおよび組成物中の化合物のタイプにより異なりうる。最終的組成物に他の公知の成長因子を加えることも、投与量に影響しうる。例えばX線(DEXAを含む)、組織形態学的調査、およびテトラサイクリン標識による、骨成長および/または修復の周期的評価により、進行をモニタできる。
【0115】
マウスによる実験で、血清濃度が0.2μg/kg以上となるのに十分な間隔および量で化合物が投薬される場合に、骨に対するActRIIa−Fcの効果が検出可能であることが示されており、骨密度および骨強度に対する有意な効果を達成する上では、1μg/kgまたは2μg/kg以上の血中濃度が望ましい。より高用量のActRIIa−Fcは副作用のために不適当であるという徴候はないが、投与レジメンは、血清濃度が0.2〜15μg/kgの間、および選択的に1〜5μg/kgの間になるように設計されうる。ヒトにおいては、0.1mg/kg以上の一回量により0.2μg/kgの血清濃度を達成でき、0.3mg/kg以上の一回量により1μg/kgの血清濃度を達成できる。観察された分子の血中半減期は、約20日と30日との間であり、大抵のFc融合タンパク質より大幅に長く、したがって、例えば0.2〜0.4mg/kgを毎週または隔週の頻度で投薬することにより、有効な血清濃度を持続でき、あるいは投薬の間隔をもっとあけて、さらに高用量が用いられてもよい。例えば、1〜3mg/kgの用量が、毎月または隔月の頻度で使用されてもよく、骨に対する効果は十分に持続しうるため、投薬は3、4、5、6、9、12ヶ月またはそれ以上に一度で足りる。
【0116】
一定の実施形態では、本発明は、ActRIIaポリペプチドのインビボ産出のための遺伝子治療も提供する。このような療法は、上に列挙されたような病気を有する細胞または組織にActRIIaポリヌクレオチド配列を導入することにより、治療効果を達成する。ActRIIaポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスまたはコロイド分散系などの組換え発現ベクターを使用して達成できる。ActRIIaポリヌクレオチド配列の治療的送達に好ましいのは、標的リポソームの利用である。
【0117】
本明細書に教示される遺伝子治療に利用できる様々なウィルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、好ましくは、レトロウイルスなどのRNAウイルスが含まれる。好ましくは、レトロウイルスベクターは、ネズミ科または鳥類のレトロウイルスの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、およびニワトリ肉腫ウイルス(RSV)などが含まれる。多くの他のレトロウイルスベクターが、複数の遺伝子を組み込みうる。これらベクターの全てが、形質導入細胞を同定および作製できるように、選択マーカーの遺伝子を移入または組み込むことができる。例えば、糖、グリコリピド、またはタンパク質を付着させることにより、レトロウイルスベクターを標的特異的にできる。抗体を用いることにより標的化を行うことが好ましい。特異的ポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノム中に挿入し、またはウイルス・エンベロープに付着して、ActRIIaポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターを標的特異的に送達できることは当業者に公知である。好ましい実施形態では、ベクターは、骨または軟骨を標的とする。
【0118】
あるいは、レトロウイルスの構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドにより、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションによって、培養細胞を直接トランスフェクションできる。これらの細胞はその後、目的の遺伝子を含むベクタープラスミドによりトランスフェクションされる。得られた細胞が、培地にレトロウイルスベクターを放出する。
【0119】
ActRIIaポリヌクレオチドの別の標的送達システムは、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズ、および、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。本発明の好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボにおける送逹媒体として有用な人工膜小胞である。RNA、DNAおよび完全なビリオンを、水性の内部に被包し、生物学的に活性な形態で細胞に送達することができる(たとえばFraley,等,Trends Biochem.Sci.,6:77,1981年を参照)。リポソーム媒体を用いた効率的な遺伝子導入の方法は、公知技術であり、たとえばMannino,等,Biotechniques,6:682,1988年を参照。リポソームの組成は、通常は、リン脂質の組み合わせであり、ステロイド、特にコレステロールと組み合わせられるのが通常である。他のリン脂質または他の脂質が用いられてもよい。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および二価カチオンの存在に依存する。
【0120】
リポソーム生成に有用な脂質には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴリピド、セレブロシド、およびガングリオシドなどのホスファチジル化合物が含まれる。代表的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。リポソームの標的化は、例えば、臓器特異性、細胞特異性、および小器官特異性に基づくこともでき、当該分野において公知である。
【実施例】
【0121】
本発明を一般的に記載したが、以下の実施例を参照することで理解がさらに容易になる。以下の実施例は、一定の実施形態および本発明の実施形態を説明する目的で含まれるにすぎず、本発明を制限することを意図したものではない。
【0122】
(実施例1:ActRIIa−Fc融合タンパク質)
出願人は、必要最低限のリンカーにより、ヒトまたはマウスのFcドメインに融合されたヒトActRIIaの細胞外ドメインを有する、可溶性ActRIIa融合タンパク質を構築した。コンストラクトはそれぞれ、ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcと呼ばれる。
【0123】
CHO細胞株から精製されたActRIIa−hFcは、以下に示される(配列番号7):
【0124】
【化6】
ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcタンパク質は、CHO細胞株に発現された。三つの異なるリーダー配列が考えられた:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号8)
(ii)組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号9)
(iii)天然:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号10)。
【0125】
選択された形は、TPAリーダーを用い、以下の加工されていないアミノ酸配列を有する:
【0126】
【化7】
このポリペプチドは、以下の核酸配列によりコードされる:
【0127】
【化8】
ActRIIa−hFcもActRIIa−mFcも、組換え発現に非常に適した。図1に示されるように、タンパク質は、タンパク質の単一の明確なピークとして精製された。N末端シーケンシングにより、ILGRSETQEの単一配列が明らかになった(配列番号11)。精製は、例えば、以下の三つ以上を任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィ工程により行いうる:プロテインAクロマトグラフィ、Qセファロースクロマトグラフィ、フェニルセファロースクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、および陽イオン交換クロマトグラフィ。精製は、ウイルス濾過およびバッファー交換で完了しうる。ActRIIa−hFcタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィによる測定により>98%の純度、およびSDS PAGEによる測定により>95%の純度に精製された。
【0128】
ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcは、リガンド、特にアクチビンAに対する高親和性を示した。GDF−11またはアクチビンA(「ActA」)は、標準のアミンカップリング法を用いてBiacore CM5チップに固定された。ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcタンパク質がシステムにロードされ、結合が測定された。ActRIIa−hFcは5x10−12の解離定数(KD)でアクチビンに結合し、タンパク質は9.96x10−9のKDでGDF11に結合した。図2を参照。ActRIIa−mFcも、同様に作用した。
【0129】
A−204レポータージーンアッセイを用いて、GDF−11およびアクチビンAによるシグナル伝達に対するActRIIa−hFcタンパク質の効果を評価した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉から得たもの)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennler等,1998年,EMBO 17:3091−3100に記載。)図3を参照。CAGA12モティーフはTGF−ベータ応答遺伝子(PAI−1遺伝子)に存在するため、このベクターはSmad2および3を経由するシグナル伝達因子で一般的に利用される。
【0130】
1日目:A−204細胞を48ウェルプレートに分割する。
【0131】
2日目:A−204細胞が、10μgのpGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10μg)+pRLCMV(1μg)およびFugeneでトランスフェクションされる。
【0132】
3日目:因子を加える(培地+0.1%BSAに希釈)。阻害剤は、細胞に加える前に、因子とともに1時間プレインキュベートすることが必要である。6時間後に、細胞をPBSで洗浄し、細胞を溶解する。
【0133】
次にルシフェラーゼアッセイが行われる。このアッセイでは典型的に、阻害剤の非存在下で、アクチビンAはリポーター遺伝子発現に関して約10倍の促進を示し、ED50は〜2ng/mlである。GDF−11:16倍の促進、ED50:〜1.5ng/ml。GDF−8は、GDF−11と類似の効果を示す。
【0134】
図4に示されるように、ActRIIa−hFcおよびActRIIa−mFcは、ピコモルのオーダーの濃度でGDF−8を介したシグナル伝達を阻害する。図5に示されるように、ActRIIa−hFcの三つの異なる調製物は、約200pMのIC50でGDF−11のシグナル伝達を阻害した。
【0135】
ActRIIa−hFcは、薬物動態学的研究において極めて安定していた。1mg/kg、3mg/kgまたは10mg/kgのActRIIa−hFcタンパク質がラットに投薬され、24、48、72、144および168時間でのタンパク質の血漿中濃度が測定された。別の研究においては、1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgがラットに投薬された。ラットにおいて、ActRIIa−hFcは11〜14日の血中半減期を有し、2週後における薬物の循環レベルは非常に高かった(最初の投与1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgに対してそれぞれ、11μg/ml、110μg/mlまたは304μg/ml。)カニクイザルにおいては、血漿中半減期は14日よりずっと長く、薬物の循環レベルは、最初の投与1mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgに対してそれぞれ、25μg/ml、304μg/mlまたは1440μg/mlであった。ヒトにおける予備段階の結果からは、血中半減期が約20日と30日との間であることが示唆される。
【0136】
(実施例2:ActRIIa−mFcはインビボで骨成長を促進する)
正常な雌のマウス(BALB/c)に、ActRIIa−mFcを、1mg/kg/用量、3mg/kg/用量または10mg/kg/用量のレベルで、週に二回投薬した。骨塩密度および骨塩量がDEXAで判定された、図6を参照。
【0137】
BALB/c雌のマウスにおいては、DEXAスキャンにより、ActRIIa−mFcによる処置の結果として、骨塩密度および量に実質的増加(>20%)が見られた。図7および8を参照。
【0138】
したがって、ActRIIaの拮抗作用により、正常な雌のマウスにおいて、骨密度および量の増加が生じた。次の工程として、骨粗鬆症のマウスモデルの骨に対する、ActRIIa−mFcの効果がテストされた。
【0139】
Andersson等(2001年)は、卵巣を切除されたマウスの骨量が大幅に減少(手術から6週間後に骨梁が大体50%減少)すること、およびこれらのマウスの骨量減少が、副甲状腺ホルモンなどの候補治療薬により修正されうることを証明した。
【0140】
出願人は卵巣切除(OVX)、または偽手術を施した、生後4−5週間のC57BL6雌のマウスを使用した。手術後8週で、ActRIIa−mFc(10mg/kg、毎週二回)またはコントロール(PBS)による処置が開始された。骨密度が、CTスキャナで測定された。
【0141】
図9に示されるように、6週後において、未処置の卵巣切除マウスには、虚手術のコントロールと比較して骨梁密度の大幅な減少が見られた。ActRIIa−mFcによる処置により、骨密度は虚手術マウスのレベルまで回復した。処置から6および12週目には、ActRIIa−mFcにより、OVXマウスの骨梁が大幅に増加した。図10を参照。処置から6週間後には、骨密度は、PBSコントロールと比較して24%増加した。12週後には、増加は27%であった。
【0142】
虚手術マウスにおいても、ActRIIa−mFcは、骨梁の実質的増加をもたらした。図11を参照。6および12週後には、処置により、コントロールと比較して35%の増加が生じた。
【0143】
さらなる一連の実験においては、上述のように卵巣切除(OVX)または虚手術を施したマウスが、12週にわたりActRIIa−mFc(10mg/kg、毎週二回)またはコントロール(PBS)で処置された。ActRIIa−mFcにつき上述した結果と同様に、ActRIIa−mFcを受けているOVXマウスは、骨梁密度が早くも四週後に15%増加し、処置から12週後には25%増加した(図12)。ActRIIa−mFcを受けている虚手術マウスも、同様に、骨梁密度が早くも四週後に22%増加し、処置から12週後には32%増加した(図13)。
【0144】
ActRIIa−mFcによる処置から12週後には、全身およびエキソビボ大腿骨DEXA分析から、処置により、卵巣切除および虚手術を施したマウスの両方において骨密度の増加が誘発されることが示された(それぞれ図14Aおよび14B)。これらの結果は、ActRIIa−mFcによる処置から12週後における、総骨密度および皮質骨密度の実質的増加を示した、大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析によっても支持される。溶媒で処置されたコントロールの卵巣切除マウスは、溶媒で処置された偽手術マウスと同等の骨密度を示した(図15)。ActRIIa−mFCの処置後には、骨密度に加えて、骨量が増加した。大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析により、ActRIIa−mFcによる処置から12週後における、総骨量および皮質骨量の実質的増加が示され、卵巣切除および偽手術を受けた溶媒で処置されたコントロールマウスは、同等の骨量を示した(図16)。大腿骨骨幹中部のエキソビボpQCT分析により、ActRIIa−mFcで処置されたマウスにおいて、骨膜周径が変化しないことも示された;しかしActRIIa−mFcの処置により、骨内膜周径が減少し、このことは、大腿骨の内部表面の成長による皮質厚の増加を示している(図17)。
【0145】
大腿骨の機械的テストからは、ActRIIa−mFcにより骨の外的特性(最大負荷、剛さおよび破壊強度)を高めることができ、これが骨の内的特性(極限強度)の実質的増加に寄与したことが測定された。ActRIIa−mFcで処置された卵巣切除マウスは、偽手術の、溶媒処置されたコントロールを上回るレベルまで骨強度が増加し、骨粗鬆症の表現型とは完全に逆になった(図18)。
【0146】
これらのデータは、アクチビン−ActRIIaアンタゴニストにより正常な雌のマウスにおける骨密度を高められ、さらに、骨粗鬆症のマウスモデルにおいて、骨密度、骨量、および究極的には骨強度の異常を修正しうることを示す。
【0147】
さらなる一連の実験においては、マウスは4週目に卵巣切除または偽手術を施され、12週目から開始してさらに12週間にわたり、プラセボまたはActRIIa−mFc(2回/週、10mg/kg)を受けた(図19−24でRAP−11とも称される)。様々な骨パラメータが評価された。図19に示されるように、ActRIIa−mFcにより、OVXおよびSHAM手術マウスの両方において、全体積に対する脊椎の骨梁体積の比率(BV/TV)が増加した。ActRIIa−mFcにより、骨梁構造も改善し(図20)、皮質厚も増加し(図21)、骨強度も改善した(図22)。図23に示されるように、ActRIIa−mFcは、1mg/kgから10mg/kgの用量の範囲で、望ましい効果を生み出した。
【0148】
偽手術マウスにおいて、2週目時点で、骨組織形態計測が行われた。図24に示されるこれらのデータからは、ActRIIa−mFcが、骨吸収を阻害するとともに骨成長を促進する、二重の効果を有することを示す。したがって、ActRIIa−mFcは、骨成長を刺激し(同化作用)、骨吸収を阻害する(抗異化作用)。
【0149】
(実施例4:代替ActRIIa−Fcタンパク質)
代替コンストラクトは、C末端テール(ActRIIaの細胞外ドメインの最後の15アミノ酸の欠失を有しうる。このようなコンストラクトの配列は、以下に示される(Fc部分は下線)(配列番号12):
【0150】
【化9】
(参照による組み込み)
本明細書に記載の全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるものと特に示されたのと同様に、参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0151】
主題の特定の実施形態を記述したが、上記の明細書は例示的であり限定的ではない。本明細書および下記の請求項を検討すれば、多くの変化形が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、等価物の完全な範囲とあわせた請求項と、そのような変化形とあわせた明細書を参照することにより、判断されなければならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−125259(P2012−125259A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−80382(P2012−80382)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−542460(P2008−542460)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−80382(P2012−80382)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2008−542460(P2008−542460)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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