説明

アクチビンIIB受容体ポリペプチドの変異体及びその使用

本発明は、安定化アクチビンIIB受容体ポリペプチド及び、アクチビンA、ミオスタチン、又はGDF−11と結合し、その活性を阻害することが可能なタンパク質を提供する。本発明は、安定化ポリペプチド及びタンパク質を生産することができる、ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞をもまた提供する。筋消耗疾患及び代謝性障害を治療するための組成物及び方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への参照)
本出願は、2008年11月26日に出願された米国仮特許出願第61/200,250号及び2009年11月6日に出願された米国仮特許出願第61/259,060号の優先権を主張し、その全開示は確認され、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明の技術分野は、トランスフォーミング成長因子−β(TGF β)ファミリーメンバー、及び改善された性質を有する可溶性TGF−β受容体、並びに様々の疾患を治療するためにTGF−βファミリーメンバーの活性を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)ファミリータンパク質には、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、アクチビン、骨形成タンパク質(BMP)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、及び増殖分化因子(GDF)が含まれる。これらファミリーのメンバーは、細胞増殖、分化、及びその他の機能などの幅広い範囲の生物学的過程の制御に関与する。
【0004】
ミオスタチンとも言われる増殖分化因子8(GDF−8)は、その大部分が、発生過程にある細胞及び成人の骨格筋組織で発現するTGF−βファミリーメンバーである。ミオスタチンは、骨格筋成長の負の制御において必須の役割を果たしていると考えられている(McPherron et al.,Nature(London)387,83−90(1997),Zimmers et al.,Science 296:1486−1488(2002))。動物において、ミオスタチンを拮抗することが除脂肪体重を増加させることが示されている。
【0005】
その他のTGF−βファミリータンパク質のメンバーには、関連した増殖分化因子である、増殖分化因子11(GDF−11)がある。GDF−11はミオスタチンのアミノ酸配列と約90%の配列同一性を有する。GDF−11は発育中の動物における軸パターン形成において機能し(Oh et al.,Genes Dev 11:1812−26(1997))、かつ、骨格筋の分化及び成長においても役割を果たすと考えられている。
【0006】
アクチビンA、B及びABはそれぞれ、2つのポリペプチド鎖であるβA及びβBのホモ二量体及びヘテロ二量体である(Vale et al.,Nature 321,776−779(1986),Ling et al.,Nature 321,779−782(1986))。アクチビンは卵胞刺激ホルモン合成の制御に関わる性腺ペプチドとして最初発見され、現在では数多くの生物活性の制御に関わると考えられている。アクチビンAは、アクチビンの主な形態である。
【0007】
アクチビン、ミオスタチン、GDF−11及びその他のTGF−βスーパーファミリーメンバーは、その両方が膜貫通セリン/トレオニンキナーゼであるアクチビンII型及びアクチビンIIB型受容体と結合し、それらとの組み合わせを介して刺激を伝達する(Harrison et al.,J.Biol.Chem.279,28036−28044(2004))。架橋研究によって、ミオスタチンがアクチビンII型受容体であるActRIIA及びActRIIBとインビトロで結合可能であることが確認された(Lee et al.,PNAS USA 98:9306−11(2001))。また、GDF−11がActRIIA及びActRIIBの両方と結合するという証拠もある(Oh et al.,Genes Dev 16:2749−54(2002))。
【0008】
TGF−βタンパク質の発現が、様々な疾患及び障害と関連することが知られている。さらに、複数のTGF−βタンパク質を同時に拮抗することができる治療用分子がこれら疾患及び障害に特に効果的な可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】McPherron et al.,Nature(London)387,83−90(1997)
【非特許文献2】Zimmers et al.,Science 296:1486−1488(2002)
【非特許文献3】Oh et al.,Genes Dev 11:1812−26(1997)
【非特許文献4】Vale et al.,Nature 321,776−779(1986)
【非特許文献5】Ling et al.,Nature 321,779−782(1986)
【非特許文献6】Harrison et al.,J.Biol.Chem.279,28036−28044(2004)
【非特許文献7】Lee et al.,PNAS USA 98:9306−11(2001
【非特許文献8】Oh et al.,Genes Dev 16:2749−54(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
商業規模での治療用タンパク質の生産には、十分に発現させることが可能で、かつ、タンパク質の完全性を破壊することなく精製することができるタンパク質が必要である。製造性は、費用効率の良いタンパク質の生産を可能にするために十分効果的な方法においてタンパク質を発現させ、精製する能力として記載することができる。商業的環境においての製造性は、可能な治療用タンパク質それぞれについて決定されるべきである。タンパク質の発現及び精製過程はそれぞれのタンパク質に対して最適化され得るが、製造性はタンパク質の固有の特性の関数でもあり得る。本発明は、TGF−βタンパク質を効果的に拮抗する、改善された製造性特性を有する生物学的に活性な治療用タンパクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、アクチビン、GDF−11及びミオスタチンと結合してその活性を阻害することができ、かつ、改善された製造性特性によって特徴付けられる安定化ヒトアクチビン受容体IIB(svActRIIBと表される)を含む、単離されたタンパク質を提供する。安定化ActRIIBポリペプチドは、配列番号2の28番目及び44番目の両方の位置にアミノ酸置換を有することによって特徴付けられる。
【0012】
1つの実施形態においては、単離されたタンパク質は、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2に示された配列を有するポリペプチドを含む。別の実施形態においては、ポリペプチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸19から134に示される配列を有する。別の実施形態においては、ポリペプチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸23から134に示される配列を有する。別の実施形態においては、ポリペプチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸25から134に示される配列を有する。別の実施形態においては、ポリペプチドは、上述のポリペプチドのいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の同一性をもつアミノ酸配列を有し、このポリペプチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換を、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換を有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。1つの実施形態においては、上述のポリペプチドの28番目の置換はWであり、かつ、44番目の置換はTであり、並びにこのポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。
【0013】
別の実施形態においては、単離されたタンパク質は配列番号4、6、12及び14からなる群において示された配列を有する、安定化アクチビンIIB受容体ポリペプチドを含む。別の実施形態においては、タンパク質は配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。別の実施形態においては、タンパク質は配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。別の実施形態においてタンパク質は、配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。1つの実施形態においては、28番目の置換はWであり、かつ、44番目の置換はTであり、このポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。
【0014】
さらなる実施形態においては、svActRIIBタンパク質は異種タンパク質をさらに含む。1つの実施形態においては、異種タンパク質はFcドメインである。さらなる実施形態においては、FcドメインはヒトIgGFcドメインである。さらなる実施形態においては、異種タンパク質はリンカー又はヒンジリンカーペプチドによって連結されている。1つの実施形態においては、リンカー又はヒンジリンカーは、配列番号25、27、38、40、42、44、45、46、48、49及び50からなる群に示されるアミノ酸配列からなる群より選択される。さらなる実施形態においては、配列番号27、38、40、42、44、45、又は46に示されるヒンジリンカーは、ヒトIgG2Fc(配列番号22)をsvActRIIBポリペプチドに連結する。別の実施形態においては、配列番号48、49、又は50に示されるヒンジリンカーはヒトIgG1Fc(配列番号23)又は改変されたIgG1Fc(配列番号47)をsvActRIIBポリペプチドに連結する。
【0015】
さらなる実施形態においては、タンパク質は配列番号8、10、16及び18からなる群に示される配列を有するポリペプチドを含む。別の実施形態においては、タンパク質は配列番号8、10、16又は18に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。別の実施形態においては、タンパク質はタンパク質は配列番号8、10、16又は18に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。別の実施形態においては、タンパク質はタンパク質は配列番号8、10、16又は18に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。さらなる実施形態においては、上述のポリペプチドの28番目の置換はWであり、44番目の置換はTであり、このポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。
【0016】
さらなる実施形態においては、タンパク質は、64番目の位置のアミノ酸残基がアラニンである、上記で引用されたポリペプチドを含む。
【0017】
別の態様においては、本発明は、安定化ActRIIBポリペプチドコードするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を提供する。1つの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、配列番号2で示されたポリペプチド配列において28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換があるポリペプチド配列をコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸19から134に示される配列において28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換と、44番目の位置がTである1アミノ酸置換とを有するポリペプチドをコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸23から134に示される配列において28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換と、44番目の位置がTである1アミノ酸置換とを有するポリペプチドをコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸25から134に示される配列において28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換と、44番目の位置がTである1アミノ酸置換とを有するポリペプチドをコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換と44番目の位置がTになる1アミノ酸置換とを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11と結合することが可能であり、上記ポリペプチドのいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。1つの実施形態においては、上記ポリヌクレオチドは、28番目の位置がWである置換と44番目の位置がTである置換とを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11と結合することが可能であるポリペプチドをコードする。
【0018】
1つの実施形態においては、核酸分子は、配列番号4、6、12及び14からなる群に示される配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸分子は、28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸分子は、28番目の位置がW又はYであり、かつ、44番目の位置がTであり、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸分子は、28番目の位置がW又はYであり、かつ、44番目の位置がTであり、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。1つの実施形態においては、上記ポリヌクレオチドは、28番目の位置がWである置換と44番目の位置がTである置換とを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11と結合することが可能であるポリペプチドをコードする。
【0019】
別の実施形態においては、核酸分子は、配列番号3、5、11及び13、又はその相補鎖からなる群より選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0020】
別の実施形態においては、単離された核酸分子は上記で示されたポリヌクレオチドを含み、さらに少なくとも1つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。1つの実施形態においては、核酸分子は配列番号8、10、16及び18からなる群に示される配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸分子は、28番目の位置にW又はY、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、配列番号8、10、16又は18に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸分子は、28番目の位置にW又はY、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、配列番号8、10、16又は18に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸分子は、28番目の位置にW又はY、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、配列番号8、10、16又は18に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。1つの実施形態においては、上記ポリヌクレオチドは28番目がWである置換とS44がTになる置換とを有し、ミオスタチン、アクチビンA又はGDF−11と結合することが可能であるポリペプチドをコードする。さらなる実施形態において核酸分子は、配列番号7、9、15及び17、又はその相補鎖からなる群から選択される配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0021】
別の実施形態においては、核酸分子は配列番号25、27、38、40、42、44、45、46、48、49及び50からなる群に示されるリンカー及びヒンジリンカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0022】
さらなる実施形態において核酸分子は、転写又は翻訳調節配列をさらに含む。別の態様においては、安定化ActRIIBタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、組み換えベクター又はポリペプチドが提供される。別の態様においては、組み換えベクターを含む宿主細胞が提供され、及び、タンパク質又はポリペプチドの発現を促進する条件下で宿主細胞を培養することによる、安定化ActRIIBタンパク質及びポリペプチの生産方法も提供される。
【0023】
本発明は、少なくとも1つの本発明の安定化ActRIIBポリペプチド又はタンパク質を含む組成物をさらに提供する。1つの実施形態においてその組成物は、安定化ActRIIBポリペプチド又はタンパク質と、薬学的に許容可能な担体との混合物を含有する医薬組成物である。
【0024】
別の態様においては、本発明は、治療を必要とする対象に、svActRIIBタンパク質及びポリペプチド、並びにこれらを含有する医薬組成物を投与することによって、ミオスタチン、アクチビンA又はGDF−11活性を低減する、又は阻害する方法を提供する。
【0025】
別の態様においては、本発明は、svActRIIBタンパク質又はポリペプチドを含有する効果量の組成物又は医薬組成物を対象に投与することにより、かかる治療を必要とする対象において除脂肪体重を増加させる、又は除脂肪体重の脂肪量に対する率を増加させる方法を提供する。
【0026】
別の態様においては、本発明は、svActRIIBポリペプチド又はタンパク質を含有する医薬組成物を対象に投与することにより、筋消耗などの障害にかかった対象において筋消耗を治療する、又は予防する方法を提供する。筋消耗は、癌性悪液質、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、鬱血性閉塞肺疾患、慢性心不全、化学性悪液質、HIV/AIDSによる悪液質、腎不全、尿毒素、関節リウマチ、加齢によるサルコペニア、加齢に伴う衰弱、器官萎縮、手根管症候群、アンドロゲン欠亡、及び長期臥床、脊髄損傷、発作、骨折、火傷、加齢による筋消耗、インスリン抵抗性、並びにその他の障害を含むが、これらには限定されない。筋消耗は宇宙飛行による無重力から生じる場合もある。
【0027】
別の態様においては、本発明は、svActRIIBタンパク質又はポリペプチドを含有する効果量の医薬組成物を対象に投与することにより、治療を必要とする対象において、アクチビンが過剰発現した状態を治療する方法を提供する。1つの実施形態においては、その疾患は癌である。別の態様においては、本発明は、svActRIIBタンパク質又はポリペプチドを含有する医薬組成物をそれらの治療が必要な対象に投与する工程を含む、代謝性障害を治療する方法を提供し、ここで代謝性障害は、骨量減少、糖尿病、肥満、グルコース不耐性、高血糖、及びメタボリック症候群から選択される。別の態様においては、本発明は、対象においてsvActRIIBタンパク質又はポリペプチドを発現することができる、本発明のsvActRIIBポリペプチド又はタンパク質をコードするベクターをそれらを必要とする対象に投与する工程を含む、筋消耗若しくは代謝性又はアクチビンに関係した疾患の遺伝子治療の方法を提供する。
【0028】
別の態様において本発明は、任意の数のアッセイにおいてsvActRIIBタンパク質又はポリペプチドのいずれかを補足剤又は結合剤として使用することにより、ミオスタチン、アクチビン、又はGDF−11を検出する、及び定量する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】SECカラムでのActRIIB−Fc(E28W)とsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)との間の比較を示す。svActRIIB−Fc(E28W、S44T)は単一のピークを示すのに対して、ActRIIB−Fc(E28W)は3つのピークを示す。
【図2】14日間の期間にわたって10mg/kgのsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)の単回投与を受けた10のC57Bl/6マウスにおける体重の増加を10mg/kgのPBSの投与を受けた10のマウスと比較した。
【図3】0.3mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kgのsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)の単回投与を受けたC57Bl/6における、時間経過に伴う除脂肪体重の用量関連変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な記述)
本発明は、安定化ヒトアクチビンIIB受容体(svActRIIB)ポリペプチドを含む、単離されたタンパク質を提供する。本発明のタンパク質及びポリペプチドは、3つのTGF−βタンパク質、ミオスタチン(GDF−8)、アクチビンA、又はGDF−11の少なくとも1つと結合し、これらタンパク質の少なくとも1つの活性を阻害する能力、及びその他のActRIIB可溶性受容体と比較して、改善された製造性特性を有することによって特徴づけられる。安定化ヒトアクチビンIIB受容体ポリペプチドは、配列番号2において示されるActRIIBの細胞外ドメインに対する、E28及びS44の両方の位置のアミノ酸置換によって特徴づけられる。1つの実施形態においては、安定化ヒトアクチビンIIB受容体ポリペプチドは、配列番号2の64番目の位置にアラニンの置換をさらに有していてもよい。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「TGF−βファミリーメンバー」又は「TGF−βタンパク質」という用語は、アクチビンを含む、トランスフォーミング成長因子ファミリーに構造的に関係した成長因子、及び増殖分化因子(GDF)タンパク質を意味する(Kingsley et al. Genes Dev.8:133−146(1994),McPherron et al., Growth factors and cytokines in health and disease,Vol.1B,D.LeRoith and C.Bondy.ed.,JAI Press Inc.,Greenwich,Conn,USA:pp 357−393)。
【0032】
ミオスタチンとも言われるGDF−8は、骨格筋組織の負の制御因子である(McPherron et al. PNAS USA 94:12457−12461 (1997))。ミオスタチンは、約375アミノ酸の長さで、ヒトのGenBankアクセッション番号:AAB86694(配列番号35)を有する不活性タンパク質として合成される。N−末端不活性型プロドメイン及び約109アミノ酸のC−末端タンパク質を生産する四塩基性のプロセシング部位でのタンパク分解によって、前駆体タンパク質は切断されて活性化され、このC−末端タンパク質は約25kDaのホモ二量体を形成するように二量体化する。このホモ二量体は成熟しており、生物学的に活性なタンパク質である(Zimmers et al.,Science 296,1486(2002))。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「プロドメイン」又は「プロペプチド」という用語は、活性型C−末端タンパク質を分離するために切断された、不活性N−末端タンパク質を意味する。本明細書で使用されるとき、「ミオスタチン」又は「成熟ミオスタチン」という用語は、単量体、二量体又はその他の形態の、成熟した、生物学的に活性なC−末端ポリペプチド、並びに対立変異体、スプライシングによる変異体、及び融合ペプチド及びポリペプチドを含む、生物学的に活性な断片又は関係したポリペプチドを意味する。成熟ミオスタチンは、ヒト、マウス、ニワトリ、ブタ、シチメンチョウ、及びラットを含む多くの種間で100%の配列相同性を有することが報告されている(Lee et al.,PNAS 98,9306(2001))。
【0034】
本明細書で使用されるとき、GDF−11は、Swissprotアクセッション番号O95390(配列番号36)を有するBMP(骨形態形成タンパク質)、及びそのタンパク質の変異体、並びに種のホモログを意味する。GDF−11は軸骨格の前/後パターニングの制御に関係するが(McPherron et al,Nature Genet.22(93):260−264(1999);Gamer et al,Dev.Biol.208(1),222−232(1999))、出生後の機能については分かっていない。
【0035】
アクチビンAはポリペプチド鎖βAのホモ二量体である。本明細書で使用されるとき、「アクチビンA」という用語は、GenBankアクセッション番号:NM_002192(配列番号34)を有するアクチビンタンパク質を意味する。アクチビンA、B、及びABはそれぞれ、2つのポリペプチド鎖βAとβBのホモ二量体又はヘテロ二量体である。本明細書で使用されるとき、「アクチビン」は、アクチビンA、B、及びAB並びにそのタンパク質の変異体及び種のホモログを意味する。
【0036】
受容体ポリペプチド
本明細書で使用されるとき、アクチビンII型B受容体(ActRIIB)という用語は、アクセッション番号NP_001097を有するヒトアクチビン受容体又はその変異体を意味し、それらは例えば64番目の位置のアルギニンがアラニンに置換されている。可溶性ActRIIB(野生型)という用語は、ActRIIBの細胞外ドメイン、配列番号2の1から134のアミノ酸(シグナル配列を含む)、又は19から134のアミノ酸(シグナル配列を含まない)を意味する。
【0037】
安定化受容体ポリペプチド
本発明は、安定化ActIIB受容体ポリペプチド(本明細書では「svActRIIBポリペプチド」と示される)を含む、単離されたタンパク質を提供する。本明細書で使用されるとき、「svActRIIBタンパク質」という用語は、安定化ActRIIBポリペプチドを含むタンパク質を意味する。本明細書で使用されるとき、「単離された」という用語は、内因性材料からある程度精製されたタンパク質又はポリペプチド分子を意味する。これらのポリペプチド及びタンパク質は、アクチビンA、ミオスタチン、又はGDF−11のいずれか1つに結合し、かつ、活性を阻害する能力によって、加えて改善された製造性製造性特性によって特徴づけられる。
【0038】
安定化ActRIIBポリペプチドは、配列番号2の28番目と44番目の位置の両方にアミノ酸置換を有することによって特徴づけられる。一貫性を保つために、安定化ActRIIBポリペプチド及びタンパク質のアミノ酸の位置は常に、ポリペプチドが成熟したり又は切断型であっても、配列番号2における位置として示される。本明細書で使用されるとき、「成熟」という用語は、そのシグナル配列を含まないポリペプチド又はペプチドを意味する。本明細書で使用されるとき、「切断型」という用語は、N末端アミノ酸又はC末端アミノ酸が除去されたポリペプチドを意味する。
【0039】
1つの実施形態においては、単離された安定化アクチビンIIB受容体ポリペプチド(svActRIIB)は、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2で示された配列からなるポリペプチドを有する。別の実施形態においては、ポリペプチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある配列番号2のアミノ酸19から134に示される配列を有する。別の実施形態においては、ポリペプチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸23から134に示される配列を有する。別の実施形態においては、ポリペプチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸25から134に示される配列を有する。別の実施形態においては、ポリペプチドは、上記ポリペプチドのいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一性を有し、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換を、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換を有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11と結合することが可能である。1つの実施形態においては、上記ポリペプチドの28番目の置換はWであり、44番目の置換がTであり、このポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。
【0040】
1つの実施形態においては、svActRIIBポリペプチドは例えば配列番号4、8、12、及び16のシグナル配列を含む。しかしながら、本出願のポリペプチドの調製には様々はシグナルペプチドが使用できる。シグナルペプチドは、例えば配列番号4の1から19のアミノ酸に示される配列、又は配列番号31及び32に示されるシグナル配列を有する場合がある。svActRIIBポリペプチドの発現のために有効なその他の任意のシグナルペプチドを使用してもよい。他の実施形態においては、成熟ペプチドを残してシグナル配列は除去される。シグナル配列を欠いたsvActRIIBポリペプチドの例としては、例えば、配列番号6、10、14及び18が挙げられる。
【0041】
1つの実施形態においては、タンパク質は配列番号4、6、12及び14からなる群において示された配列を有するポリペプチドからなる群より選択されたポリペプチドである、安定化アクチビンIIB受容体ポリペプチドを含む。これらポリペプチドは配列番号2の25から134のアミノ酸を表し、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換を、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換を有し、並びに配列番号2に示される配列とは異なるシグナル配列を含み、及び含まずに、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11と結合することが可能である。別の実施形態においては、タンパク質は配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。1つの実施形態においては、28番目の位置の置換はW、かつ、44番目の置換はTであり、このポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA又はGDF−11に結合することが可能である。
【0042】
さらなる実施形態においては、svActRIIBタンパク質は異種タンパク質をさらに含む。1つの実施形態においては、異種タンパク質はFcドメインである。さらなる実施形態においては、FcドメインはヒトIgGFcドメインである。1つの実施形態においては、タンパク質は配列番号8、10、16及び18からなる群において示された配列を有するポリペプチドを含む。別の実施形態においては、タンパク質は配列番号8、10、16又は18、に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、このポリペプチドは28番目の位置にW又はYを、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。1つの実施形態においては、28番目の位置の置換はW、かつ、44番目の置換はTであり、このポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA又はGDF−11に結合することが可能である。
【0043】
さらなる実施形態においては、タンパク質は64番目のアミノ酸残基がアラニンである、上述されたポリペプチドのいずれか1つを含む。
【0044】
別の実施形態においては、svActRIIBポリペプチド及びタンパク質という用語は、N及びC末端切断型を含めた、配列番号2、4、6、12及び14の断片を含むタンパク質を包含し、ここでこのポリペプチドは28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能である。
【0045】
本明細書で使用されるとき、svActRIIBポリペプチドの「誘導体」という用語は、少なくとも1つの付加的な化学部分又は、グリコシル基、脂質、アセチル基、又はC−末端若しくはN−末端融合ポリペプチド、PEG分子への結合、及び下記により完全に記載されるその他の改変などの、共有又は凝集結合を形成する少なくとも1つの付加的なポリペプチドを意味する。安定化ActRIIB受容体ポリペプチドはまた、哺乳類細胞、大腸菌、酵母及びその他の組み換え宿主細胞などの様々な細胞型における発現による、プロセシングによって生じるC及びN末端への修飾を含む、付加的な改変及び誘導体をも含む。
【0046】
本発明のsvActRIIBタンパク質は、融合タンパク質を形成するために、直接あるいはリンカー配列を介してsvActRIIBポリペプチドに連結した異種ポリペプチドをさらに含む。本明細書で使用されるとき、「融合タンパク質」という用語は、組み換えDNA技術を介して連結した異種ポリペプチドを有するタンパク質を意味する。異種ポリペプチドは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO00/29581において記載されたような、安定化ActRIIBポリペプチドのオリゴマー形成とさらなる安定化を促進するFcポリペプチド、hisタグ、及びロイシンジッパードメインなどを含むが、これらには限定されない。1つの実施形態においては、異種ポリペプチドはFcポリペプチド又はドメインである。1つの実施形態においては、FcドメインはヒトIgG1Fc(配列番号23)、改変されたIgG1Fc(配列番号47)、IgG2Fc(配列番号22)、及びIgG4Fc(配列番号24)ドメインから選択される。svActRIIBタンパク質はIgG1(配列番号29)、IgG2(配列番号28)、又はIgG4(配列番号30)のヒンジ配列の全体又は部分をさらに含んでいてもよい。svActRIIBポリペプチドの例は、配列番号8、10、16及び18に示される配列からなるポリペプチド、並びに28番目と44番目の置換が保持されている、これらの配列と実質的な相同性を有するポリペプチドから選択される。本明細書で使用されるとき、「実質的な相同性」は、28番目のW又はY及び44番目のTが保持されており、配列番号8、10、16、及び18、のいずれかに対して少なくとも80%同一、85%同一、90%同一、95%同一、96%同一、97%同一、98%同一、99%同一なポリペプチドであって、ミオスタチン、アクチビンA又はGDF−11に結合することが可能なポリペプチドを意味する。1つの実施形態においては、28番目の置換がW、及び44番目の置換がTであり、このポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA又はGDF−11に結合することが可能である。
【0047】
svActRIIBポリペプチドは任意に、「リンカー」配列をさらに含んでいてもよい。リンカーは主に、ポリペプチドと2番目の異種ポリペプチド若しくはその他の型の融合との間の、又は2つ以上の安定化ActRIIBポリペプチド間のスペーサーとして機能する。1つの実施形態においては、リンカーはペプチド結合によって結合しているアミノ酸、好ましくはペプチド結合によって結合している、天然に生じる20のアミノ酸から選択される1から20のアミノ酸から作られる。1以上のこれらアミノ酸は、当業者によって理解されるようにグリコシル化されていてもよい。1つの実施形態においては、1から20のアミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、及びリジンから選択され得る。1つの実施形態においては、リンカーはグリシンやアラニンなどの立体障害のないアミノ酸から主に作られる。リンカーの例としては、ポリグリシン(特に(Gly)、(Gly))、ポリ(Gly−Ala)、及びポリアラニンが挙げられる。下記の実施例において示される1つの好適なリンカーの例は、(Gly)4Ser(配列番号25)である。さらなる実施形態においてsvActRIIBは、配列番号27に例示されたような、ヒンジ領域に隣接して提供されるリンカー配列、又はIgGの部分的なヒンジ領域である、「ヒンジリンカー」を含んでいてもよい。ヒンジ配列は、IgG2Fc(配列番号28)、IgG1Fc(配列番号29)、及びIgG4Fc(配列番号30)を含む。
【0048】
ヒンジリンカー配列はまた、製造性及びsvActRIIB−Fcタンパク質の安定性を改善するために設計される場合がある。1つの実施形態においては、配列番号27、38、40、42、44、45、及び46のヒンジリンカーは、svActRIIBポリペプチドに結合した場合に製造性を改善するように、IgG2Fc(配列番号22)を用いて設計された。1つの実施形態において、例えば配列番号48、配列番号49及び配列番号50を有するヒンジリンカー配列は、svActRIIBポリペプチドがヒトIgG1Fc(配列番号23)又は改変されたヒトIgG1Fc(配列番号47)に結合する場合に製造性を改善するように設計された。これらポリペプチドの改善された製造性は下記実施例4において記載される。
【0049】
リンカーはまた、非ペプチドリンカーであってもよい。例えば、−NH−(CH)s−C(O)−、式中s=2−20、などのアルキルリンカーも用いられ得る。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル(例えばC−C)低級アシル、ハロゲン(例えばCl、Br)、CN、NH、フェニルなどの非−立体障害のない基によってさらに置換され得る。
【0050】
本明細書で開示されるsvActRIIBポリペプチドは、分解を減少させる、及び/又は半減期を上昇させる、毒性を低減させる、免疫原性を低下させる、及び/又はsvActRIIBポリペプチドの生物学的活性を上昇させる、などの所望の特性を付与する目的で、非ポリペプチド分子に結合される場合もある。分子の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリリジン、デキストランなどの線状ポリマー;脂質;コレステロール基(ステロイドなど);炭水化物、又はオリゴ糖分子などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0051】
svActRIIBタンパク質及びポリペプチドは、その他のActRIIB可溶性ポリペプチドと比較して、改善された製造性特性を有する。本明細書で使用されるとき、「製造性」という用語は、特定のタンパク質の、そのタンパク質の組み換え発現及び精製過程における安定性を意味する。製造性は、発現及び精製の条件下における分子固有の特性に起因すると考えられている。改善された製造性の特徴の例は下記実施例において示され、タンパク質の均一なグリコシル化(実施例2)、細胞力価の上昇、タンパク質の組み換え生産過程における成長及びタンパク質発現(実施例1)、改善された精製特性(実施例2)、及び低いpHでの改善された安定性(実施例2)が含まれる。本発明のsvActRIIBタンパク質及びポリペプチドは、その他の可溶性ActRIIBポリペプチドと比較して、インビトロ及びインビボでの活性の保持を伴った、改善された製造性を示す(実施例2及び3)。さらに下記実施例4に示したように、付加的なヒンジリンカー配列はさらなる製造性の有効性を付与する。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「svActRIIBポリペプチド活性」又は「可溶性ActRIIBポリペプチドの生物学的活性」という用語は、インビトロ又はインビボにおけるsvActRIIBポリペプチドの1以上の活性を意味し、この活性には下記実施例において示した活性が含まれるが、これらには限定されない。svActRIIBポリペプチドの活性には、ミオスタチン又はアクチビンA又はGDF−11に結合する能力、及びミオスタチン又はアクチビンA又はGDF−11の活性を阻害又は中和する能力が含まれるが、これらには限定されない。本明細書で使用されるとき、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に「結合することが可能である」という用語は、下記実施例において示される、Kin ExA(商標)法などの当該技術分野において周知の方法によって測定される結合を意味する。ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11のインビトロでの阻害は、例えば、下記実施例で記載された細胞を用いたpMARE C2C12アッセイによって測定することができる。下記実施例3において示されたインビボ活性は、マウスモデルにおける除脂肪体重の増加によって示された。svActRIIBポリペプチド及びタンパク質のインビボ活性は、体重の増加、除脂肪体重の増加、及び除脂肪体重の脂肪量に対する率の増加を含むが、これらには限定されない。治療上の活性はさらに、特定の型の腫瘍によって起こる悪液質の低減又は予防、特定の型の腫瘍の成長の予防、及び特定の動物モデルの生存率の上昇を含む。svActRIIBタンパク質及びポリペプチド活性についてのさらなる議論は下記に提供される。
【0053】
別の態様においては、本発明は、本発明のsvActRIIBポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子を提供する。本明細書で使用されるとき、「単離された」という用語は、内因性の材料からある程度精製された核酸分子を意味する。
【0054】
1つの実施形態においては、ポリヌクレオチドは配列番号2で示される配列において、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある配列を有するポリペプチドをコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは配列番号2の19から134に示されるアミノ酸において、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある配列を有するポリペプチドをコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは配列番号2の23から134に示されるアミノ酸において、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある配列を有するポリペプチドをコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは配列番号2の25から134に示されるアミノ酸において、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある配列を有するポリペプチドをコードする。別の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、28番目の位置にW又はYから選択される1アミノ酸置換を、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換を有し、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能なポリペプチドであって、上記ポリペプチドのいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。1つの実施形態においては、上記実施形態のポリヌクレオチドは28番目の置換がWであり、かつ、44番目の置換がTであるポリペプチドをコードする。
【0055】
1つの実施形態においては、本発明の単離された核酸分子は、配列番号4、6、12及び14からなる群において示された配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸は、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、配列番号4、6、12又は14に対して少なくとも、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。1つの実施形態においては、上記実施形態のポリヌクレオチドは、28番目の置換がW、かつ、44番目の置換がTであり、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能なポリペプチドをコードする。
【0056】
別の実施形態においては、単離された核酸分子は少なくとも1つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。1つの実施形態においては、異種タンパク質はFcドメインであり、さらなる実施形態においては、FcドメインはヒトIgGFcドメインである。別の実施形態においては、核酸分子は、配列番号25、27、38、40、42、44、45、46、48、49又は50に示されるリンカー及びヒンジリンカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。さらなる実施形態においては、それらポリヌクレオチドは配列番号26、37、39、41、及び43からなる群から選択される配列を有する。
【0057】
1つの実施形態においては、核酸分子は、配列番号8、10、16及び18からなる群において示された配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、核酸はミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、配列番号8、10、16及び18からなる群に対して少なくとも、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。1つの実施形態においては、上記実施形態のポリヌクレオチドは、28番目の置換がW、かつ、44番目の置換がTであり、並びにミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能なポリペプチドをコードする。
【0058】
1つの実施形態においては、単離された核酸分子は配列番号3、5、11及び13又はその相補鎖からなる群より選択された配列を有するポリヌクレオチドを含む。別の実施形態においては、単離された核酸分子は配列番号7、9、15及び17又はその相補鎖からなる群より選択された配列を有するポリヌクレオチドを含む。さらなる実施形態においては、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、配列番号4、6、8、10、12、14、16、又は18と実質的に相同なポリペプチドをコードする、配列番号3、5、7、9、11、13、15又は17と単離された核酸分子とは、ストリンジェント又はモデレートな条件でハイブリダイズする。
【0059】
本発明の核酸分子は一本鎖及び二本鎖両方のDNA、並びにそのRNA相補鎖を含む。DNAは、例えば、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、PCRによって増幅されたDNA、およびその組み合わせなどを含む。ゲノムDNAは、配列番号3、5、11若しくは13のDNA、又は好適なその断片をプローブとして使用することにより、標準的な技術で単離され得る。ActRIIBポリペプチドをコードするゲノムDNAは、数多くの種に使用可能なゲノムライブラリーから得られる。合成DNAは、重複したオリゴヌクレオチド断片を化学的に合成し、次いでコード領域及びフランキング配列の部分又は全てを再構築するために、断片を並べることによって入手可能である。RNAは、T7プロモーター及びRNAポリメラーゼを用いたベクターなどの高レベルのmRNA合成を誘導する原核生物発現ベクターから得ることができる。cDNAは、ActRIIBを発現する様々は組織から単離されたmRNAを用いて調製されたライブラリーから得られる。本発明のDNA分子は、完全長遺伝子、並びにポリヌクレオチド及びその断片を含む。完全長遺伝子はまた、N−末端シグナル配列をコードする配列を含んでいてもよい。
【0060】
本発明はさらに、ポリヌクレオチドが転写又は翻訳調節配列に機能的に連結された、上述の核酸分子を提供する。
【0061】
ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列の例。
シグナル配列を含むsvActRIIB(E28W、S44T)
atggagtttgggctgagctgggttttcctcgttgctcttttaagaggtgtccagtgtgagacacggtggtgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccacc(配列番号3)
【0062】
シグナル配列を含むsvActRIIB(E28W、S44T)
mefglswvflvallrgvqcetrwciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptapt(配列番号4)
【0063】
シグナル配列を含まないsvActRIIB(E28W、S44T)
gagacacggtggtgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccacc(配列番号5)
【0064】
シグナル配列を含まないsvActRIIB(E28W、S44T)
etrwciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptapt(配列番号6)
【0065】
シグナル配列を含むsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリヌクレオチド配列
atggagtttgggctgagctgggttttcctcgttgctcttttaagaggtgtccagtgtgagacacggtggtgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccaccggagggggaggatctgtcgagtgcccaccgtgcccagcaccacctgtggcaggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccacgggaggagcagttcaacagcacgttccgtgtggtcagcgtcctcaccgttgtgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaaaccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacacctcccatgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaa(配列番号7)
【0066】
シグナル配列を含むsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリペプチド配列
mefglswvflvallrgvqcetrwciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptaptggggsvecppcpappvagpsvflfppkpkdtlmisrtpevtcvvvdvshedpevqfnwyvdgvevhnaktkpreeqfnstfrvvsvltvvhqdwlngkeykckvsnkglpapiektisktkgqprepqvytlppsreemtknqvsltclvkgfypsdiavewesngqpennykttppmldsdgsfflyskltvdksrwqqgnvfscsvmhealhnhytqkslslspgk(配列番号8)
【0067】
シグナル配列を含まないsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリヌクレオチド配列
gagacacggtggtgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccaccggagggggaggatctgtcgagtgcccaccgtgcccagcaccacctgtggcaggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccacgggaggagcagttcaacagcacgttccgtgtggtcagcgtcctcaccgttgtgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaaaccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacacctcccatgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaa(配列番号9)
【0068】
シグナル配列を含まないsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリペプチド配列
etrwciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptaptggggsvecppcpappvagpsvflfppkpkdtlmisrtpevtcvvvdvshedpevqfnwyvdgvevhnaktkpreeqfnstfrvvsvltvvhqdwlngkeykckvsnkglpapiektisktkgqprepqvytlppsreemtknqvsltclvkgfypsdiavewesngqpennykttppmldsdgsfflyskltvdksrwqqgnvfscsvmhealhnhytqkslslspgk(配列番号10)
【0069】
シグナル配列を含むsvActRIIB(E28Y、S44T)
atggagtttgggctgagctgggttttcctcgttgctcttttaagaggtgtccagtgtgagacacggtactgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccacc(配列番号11)
【0070】
シグナル配列を含むsvActRIIB(E28Y、S44T)
mefglswvflvallrgvqcetryciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptapt(配列番号12)
【0071】
シグナル配列を含まないsvActRIIB(E28Y、S44T)
gagacacggtactgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccacc(配列番号13)
【0072】
シグナル配列を含まないsvActRIIB(E28Y、S44T)
etryciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptapt(配列番号14)
【0073】
シグナル配列を含むsvActRIIB−Fc(E28Y、S44T)ポリヌクレオチド配列
atggagtttgggctgagctgggttttcctcgttgctcttttaagaggtgtccagtgtgagacacggtactgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccaccggagggggaggatctgtcgagtgcccaccgtgcccagcaccacctgtggcaggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccacgggaggagcagttcaacagcacgttccgtgtggtcagcgtcctcaccgttgtgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaaaccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacacctcccatgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaa(配列番号15)
【0074】
シグナル配列を含むsvActRIIB−Fc(E28Y、S44T)ポリペプチド配列
mefglswvflvallrgvqcetryciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptaptggggsvecppcpappvagpsvflfppkpkdtlmisrtpevtcvvvdvshedpevqfnwyvdgvevhnaktkpreeqfnstfrvvsvltvvhqdwlngkeykckvsnkglpapiektisktkgqprepqvytlppsreemtknqvsltclvkgfypsdiavewesngqpennykttppmldsdgsfflyskltvdksrwqqgnvfscsvmhealhnhytqkslslspgk(配列番号16)
【0075】
シグナル配列を含まないsvActRIIB−Fc(E28Y、S44T)ポリヌクレオチド配列
gagacacggtactgcatctactacaacgccaactgggagctggagcgcaccaaccagaccggcctggagcgctgcgaaggcgagcaggacaagcggctgcactgctacgcctcctggcgcaacagctctggcaccatcgagctcgtgaagaagggctgctggctagatgacttcaactgctacgataggcaggagtgtgtggccactgaggagaacccccaggtgtacttctgctgctgtgagggcaacttctgcaacgagcgcttcactcatttgccagaggctgggggcccggaagtcacgtacgagccacccccgacagcccccaccggagggggaggatctgtcgagtgcccaccgtgcccagcaccacctgtggcaggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccacgggaggagcagttcaacagcacgttccgtgtggtcagcgtcctcaccgttgtgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaaaccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacacctcccatgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggtaaa(配列番号17)
【0076】
シグナル配列を含まないsvActRIIB−Fc(E28Y、S44T)ポリペプチド配列
etryciyynanwelertnqtglercegeqdkrlhcyaswrnssgtielvkkgcwlddfncydrqecvateenpqvyfcccegnfcnerfthlpeaggpevtyeppptaptggggsvecppcpappvagpsvflfppkpkdtlmisrtpevtcvvvdvshedpevqfnwyvdgvevhnaktkpreeqfnstfrvvsvltvvhqdwlngkeykckvsnkglpapiektisktkgqprepqvytlppsreemtknqvsltclvkgfypsdiavewesngqpennykttppmldsdgsfflyskltvdksrwqqgnvfscsvmhealhnhytqkslslspgk(配列番号18)
【0077】
本発明の別の態様においては、本発明の核酸分子及びポリヌクレオチドを含有する発現ベクターもまた提供され、それらのベクターを用いて形質転換された宿主細胞及びsvActRIIBポリペプチドを生産する方法もまた提供される。「発現ベクター」という用語は、ポリヌクレオチド配列由来のポリペプチドを発現されるための、プラスミド、ファージ、ウイルス又はベクターを意味する。svActRIIBポリペプチドを発現させるためのベクターは、ベクターの増殖及びクローニングした挿入物を発現させるために必要な最低限の配列を含有する。発現ベクターは、(1)例えばプロモーターやエンハンサーなどの、遺伝子発現の制御において機能する遺伝的エレメント、(2)mRNAに転写され、タンパク質へと翻訳されるsvActRIIBポリペプチド及びタンパク質をコードする配列、並びに(3)適した転写開始及び終止配列、の集合を含む転写単位を構成する。これらの配列はさらに選択マーカーを含んでいてもよい。宿主細胞での発現に好適なベクターは容易に入手でき、標準的な組み換えDNA技術を用いて核酸分子はベクターに挿入される。これらベクターは、特定の組織において昨日するプロモーター及び標的ヒト又は動物細胞においてsvActRIIBポリペプチドを発現させるためのウイルスベクターを含む場合もある。svActRIIBを発現させるための好適な発現ベクターはpDSRa(国際公開第90/14363号に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)及びsvActRIIBポリヌクレオチドを含有するその誘導体であり、並びにいずれのさらなる好適なベクターは当該技術分野において周知であり、下記に記載される。
【0078】
本発明はさらに、svActRIIBポリペプチドの作成方法を提供する。その他の様々な発現/宿主系を用いてもよい。これらの系は、組み換えバクテリオファージ、プラスミド又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターを用いて形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を用いて感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を用いて感染した、又は細菌性発現ベクター(例えば、Ti又はpBR322プラスミド)を用いて形質転換した植物細胞系;又は動物細胞系を含むが、これらには限定されない。組み換えタンパク質生産において有用な哺乳類細胞には、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、若しくはVeggieCHO及び血清を含まない培地で成長する関連した細胞株(Rasmussen et al.,1998,Cytotechnology 28:31を参照)又はDHFRが欠損したCHOのDX−B11株(Urlaub et al.,1980, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−20を参照)などのそれら誘導体、サル腎臓細胞のCOS−7株(ATCCCRL1651)(Gluzman et al.,1981,Cell 23:175参照)などのCOS細胞、W138、BHK、HepG2、3T3(ATCCCCL163)、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、L細胞、C127細胞、BHK(ATCCCRL10)細胞株、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1(ATCCCCL70)(McMahan et al.,1991,EMBO J.10:2821参照)由来のCV1/EBNA細胞株、293、293EBNA又はMSR293などのヒト胚性腎臓細胞、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、その他の形質転換された霊長類細胞株、正常二倍体細胞、一次組織のインビトロ培養由来の細胞株、初代外片、HL−60、U937、HaK又はジャーカット細胞が含まれるが、これらには限定されない。哺乳類での発現は、培地から回収することができる分泌性又は可溶性ポリペプチドの生産を可能にする。
【0079】
適した宿主‐ベクター系を用いて、本発明の核酸分子を含有する発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、ポリペプチドの生産を可能にする条件下で培養することによりsvActRIIBポリペプチドは組み換え的に生産される。形質転換細胞は長期間の高収率なポリペプチド生産に用いることができる。選択マーカー及び所望の発現カセットを含有するベクターを用いて一度形質転換された細胞は、例えば、それらの細胞を選択培地に移す前に富栄養培地で生育させることができる。選択マーカーは、挿入された配列をうまく発現させる細胞の成長及び回収を可能にするために設計される。抵抗性を有する安定的に形質転換された細胞の集団を、使用された細胞株に適した組織培養技術を用いて増殖させることができる。組み換えタンパク質発現の概観は、Methods of Enzymology,v.185,Goeddell,D.V.,ed.,Academic Press(1990)に見られる。
【0080】
原核生物の系を用いて発現させたいくつかの例においては、本発明の発現したポリペプチドには、生物学的に活性になるために生成される正確な3次元構造及びジスルフィド結合を形成する、「リフォールディング」及び酸化が必要とされる可能性がある。リフォールディングは当該技術分野において周知の数多くの工程を用いて達成することができる。それらの方法は、例えば、可溶化したポリペプチドをカオトロピック剤の存在下で、一般的には7より高いpHに曝すことを含む。カオトロープの選択は、封入体の可溶化に用いられた選択と同様であるが、カオトロープは典型的にはより低い濃度で用いられる。カオトロピック剤の例には、グアニジン及び尿素が挙げられる。多くの場合、リフォールディング/酸化溶液は、システインの架橋形成を生じるジスルフィドシャッフリングを可能にする、典型的な酸化還元電位を生成する特定の率において、還元剤とその酸化型をも含んでいてもよい。いくつかの一般的に用いられるレドックス対には、システイン/シスタミン、グルタチオン/ジチオビスGSH、塩化銅、ジチオトレイトールDTT/ジチアンDTT、及び2−メルカプロエタノール(bME)/ジチオ−bMEが含まれる。多くの場合、リフォールディング効率を高めるために、共溶媒が用いられ得る。一般的に用いられる共溶媒はグリセロール、様々な分子量のポリエチレングリコール、及びアルギニンを含む。
【0081】
加えて、ポリペプチドは標準的な技術に従って、溶液中又は固形担体中で合成することができる。様々な自動合成器が市販され、それらを既知の方法に従って使用することができる。例えば、Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2d.Ed.,Pierce Chemical Co.(1984);Tam et al., J Am Chem Soc,105:6442,(1983);Merrifield,Science 232:341−347(1986);Barany and Merrifield,The Peptides,Gross and Meienhofer,eds,Academic Press,New York,1−284;Barany et al., Int J Pep Protein Res,30:705−739(1987)を参照。
【0082】
本発明のポリペプチド及びタンパク質は、当業者に周知のタンパク質精製技術に従って精製することができる。1つのレベルにおいては、これらの技術はタンパク質及び非タンパク質画分の粗分画を含む。ペプチド又はポリペプチドは他のタンパク質から分離され、目的のペプチド又はポリペプチドを部分的又は完全に精製する(又は均一になるまで精製する)ためにクロマトグラフィー及び電気泳動技術を用いてさらに精製することができる。本明細書で使用されるとき、「単離されたポリペプチド」又は「精製されたポリペプチド」という用語は、ポリペプチドが天然に得られる状態と比較してある程度精製されている、他の構成成分から単離できる組成物を意味する。精製されたポリペプチドはまたそのため、天然に生じる環境に含まれないポリペプチドを意味する。通常「精製された」という用語は、様々な他の構成要素除去するために分画されたポリペプチド組成物を意味し、かつ、その組成物は実質的にその発現される生物学的活性を保持する。「実質的に精製された」という用語が用いられている場合には、この語は、ペプチド又はポリペプチドがその組成物中の主要な構成要素を形成する、例えば約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、又は約90%以上のタンパク質を構成する、ペプチド又はポリペプチド組成物を意味する。
【0083】
精製に使用できる様々な好適な技術は当業者に周知である。これらは例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体(免疫沈降)、などとの沈殿、又は熱変性とその後の遠心;アフィニティクロマトグラフィー(タンパク質−Aカラム)などのクロマトグラフィー、イオン交換、ゲルろ過、逆相、ヒドロキシアパタイト、疎水性相互作用クロマトグラフィー、等電点電気泳動、ゲル電気泳動、及びこれら技術の組み合わせを含む。当該技術分野において一般に知られるように、様々な精製過程を実施する順序は変更でき、又は特定の過程を省略することができるが、それでもなおそれらの方法は、実質的に精製されたポリペプチドを調製するための好適な方法である。精製過程の例は下記実施例において提供される。
【0084】
ポリペプチドの精製度合いを本開示の態様において定量する様々な方法は当業者に周知である。これらは例えば、活性画分の特異的な結合活性を決定すること、又はSDS/PAGE解析によって画分中のペプチド又はポリペプチドの量を評価することを含む。ポリペプチド画分の純度を評価する好ましい方法は、画分の結合活性を最初の抽出物の結合活性と比較して算出することであり、このように算出する精製度合いを本明細書では「−倍精製番号」と評価する。結合活性の量を示す実際の単位は、当然のことながら、精製を行うために選択された特定のアッセイ技術、及びポリペプチド又はペプチドが検出可能な結合活性を示すか否かに依存する。
【0085】
安定化アクチビンIIB型ポリペプチドは、筋肉分解カスケードを活性化するリガンドに結合する。svActRIIBポリペプチドは、リガンドであるアクチビンA、ミオスタチン、及び/又はGDF−11に結合してその活性を阻害することができ、筋萎縮、特定の癌及びその他の疾患を治療する能力を有する。
【0086】
下記の実施例は、インビトロアッセイにおいてミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合して中和する能力、並びにインビボ活性を保持しながら、本明細書に記載したアミノ酸置換を有するsvActRIIBポリペプチド及びタンパク質での改善された特性を示す。これらの特性は、その他の可溶性受容体と比較して改善された製造性を有するタンパク質及びポリペプチドを生じる。
【0087】
抗体
本発明は、本発明のsvActRIIBポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む、安定化ActRIIBポリペプチドに結合する抗体をさらに含む。本明細書で使用されるとき、「特異的に結合する」という用語は、svActRIIBポリペプチドに対する結合親和性(K)が10−1以上の抗体を意味する。本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体(例えば、抗体:Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds),Cold Spring Harbor Press,(1988)を参照)、及びモノクローナル抗体(例えば、米国特許RE32,011、4、902,614、4,543,439、及び4,411,993、並びにMonoclonal Antibodies:A New Dimension in Biological Analysis,Plenum Press,Kennett,McKearn and Bechtol(eds.)(1980)を参照)を含む、完全な抗体を意味する。本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語は、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、Fc、並びに、組み換えDNA技術又は完全な抗体の酵素的若しくは化学的開裂によって生産される一本鎖抗体などの抗体断片もまた意味する。「抗体」という用語は、2つの異なる重/軽鎖対及び2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である、二重特異性又は二価抗体もまた意味する。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合、又はFab’断片の結合を含む様々な方法によって生産することができる(Songsivilai et al,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990),Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照)。
【0088】
本明細書で使用されるとき、「抗体」という用語はまた、ヒト定常抗体免疫グロブリンドメインが1以上の非ヒト可変抗体免疫グロブリンドメインと結合した抗体、又はその断片である、キメラ抗体をも意味する(例えば、米国特許第5,595,898号及び米国特許第5,693,493号を参照)。抗体はまた、「ヒト化」抗体(例えば米国特許第4,816,567号及びWO94/10332)、ミニボディ(WO94/09817)、マキシボディ、及びヒト抗体を生産する遺伝子をある割合で含有するが、ヒト抗体を生産することができる内因性の抗体の生産が欠損している形質転換動物によって生産された抗体も意味する(例えば、Mendez et al.,Nature Genetics 15:146−156(1997)、及び.米国特許第6,300,129号を参照)。「抗体」という用語はまた、多量体抗体、又はヘテロ二量体抗体などの高次元のタンパク質複合体、及び抗イディオタイプ抗体も含む。「抗体」はまた、抗イディオタイプ抗体も含む。ActRIIBポリペプチドに対する抗体を、例えばインビトロ及びインビボでsvActRIIBの同定及び定量に用いることができる。
【0089】
また、本明細書で開示したsvActRIIBポリペプチドに特異的に結合する、任意の哺乳類、例えばマウス、及びラット抗体、並びにウサギ抗体からのポリクローナル抗体を含む。
【0090】
それらの抗体は、本明細書で開示したポリペプチドの検出及びアッセイのために定量的アッセイにおける研究ツールとして使用できる。それらの抗体は上述の方法及び当該技術分野において知られている方法を用いて作成される。
【0091】
医薬組成物
本発明のタンパク質及びポリペプチドを含有する医薬組成物もまた提供される。それらの組成物は、治療上又は予防上効果量のポリペプチド又はタンパク質を薬学的に許容可能な材料及び生理的に許容できる処方材料との混合物として含む。医薬組成物は、例えば、pH、容量オスモル濃度、粘性、透明度、色、等張性、臭気、不妊性、安定性、溶解又は放出速度、組成物の吸収又は透過性を改変、維持、又は保存するための処方材料を含有してもよい。好適な処方材料は、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなど);抗菌剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸、重炭酸、トリス−HCl、クエン酸、リン酸、その他の有機酸など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンなど);充填剤;単糖;二糖及びその他の炭水化物(グルコース、マンノース、又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなど);着色剤;香料及び賦形剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩を形成する対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤又は湿潤剤(プルロニック類、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパール(tyloxapal)など);安定性増進剤(ショ糖又はソルビトール);等張性増進剤(ハロゲン化アルカリ金属など(好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトール・ソルビトール);送達媒体;希釈剤;賦形剤及び/又は医療用佐剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990)を含むが、これらには限定されない。
【0092】
最適な医薬組成物は、例えば意図される投与経路、送達形態、及び所望の容量により、当業者によって決定されるだろう。例えば、上記Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照。それらの組成物は、ポリペプチドの物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、インビボでのクリアランス速度に影響を及ぼす可能性がある。例えば、好適な組成物は注射用水や非経口投与用の生理食塩水であってもよい。
【0093】
医薬組成物中の主な媒体又は担体は、水性又は非水性いずれの性質であってもよい。例えば、好適な媒体又は担体は、注射用水、生理的食塩水、又は、人工的な脳脊髄液であってもよく、非経口投与用の組成物において一般的なその他の材料が添加されていてもよい。さらなる媒体の例としては、中性の緩衝食塩水又は血清アルブミンを含む食塩水がある。医薬組成物のその他の例としてはトリス緩衝液、又は酢酸緩衝液があり、これらはさらにソルビトール又はその好適な代用品を含む。本発明の1つの実施形態においては、保存用の組成物は、所望される度合いの純度を有する選択された組成物と、最適な処方剤を混合することによって(上記Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照)、凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形態で調製できる。さらに治療用組成物を、適した賦形剤、例えばショ糖などを用いて凍結乾燥物として処方してもよい。
【0094】
製剤は例えば吸入治療、経口、又は注射などの様々な方法によって送達することができる。非経口投与が予定される場合には、本発明の使用における治療用組成物はピロゲンを含まない、薬学的に許容可能な媒体中に所望のポリペプチドを含んだ非経口用に許容できる水溶液の場合がある。非経口注射において、特に好適な媒体は滅菌蒸留水であり、ポリペプチドは滅菌蒸留水中に無菌的に、等張液として、適切に保存されて処方される。さらに別の調製は、その後、蓄積注射を介して送達される可能性がある制御された又は徐放性の産物を提供する、注射可能なミクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー性化合物(ポリ酢酸、ポリグリコール酸)、ビーズ、又はリポソームなどの薬剤を含む所望の分子の製剤を含む場合がある。循環血液中での持続期間を促進する効果を有する可能性があるヒアルロン酸もまた使用してもよい。所望の分子を導入するためのその他の好適な手段は移植可能な薬剤送達装置を含む。
【0095】
別の態様においては、注射投与のために好適な医薬製剤は、水溶液中に、好ましくはハンクス液、リンガー液又は生理緩衝食塩水などの生理的に適合できる緩衝液中に処方される可能性がある。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘性を高める基質を含有してもよい。加えて活性化合物の懸濁液は、適した油性の注射懸濁液として調製してもよい。好適な脂溶性溶媒又は媒体には、ごま油などの脂肪油、又はオレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリド、又はリポソームが含まれる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーもまた送達に使用してもよい。懸濁液は任意に、高度に濃縮した溶液を調製することを可能にする安定化剤、又は化合物の溶解度を上昇させる薬剤もまた含有してもよい。別の実施形態においては、医薬組成物は吸入用に処方され得る。吸入用溶液は、エアロゾル送達用の噴射剤とともに処方されてもよい。さらに別の実施形態においては、溶液はネブライザー用であってもよい。経肺投与については、化学的に修飾されたタンパク質の経肺送達について記載した、PCT出願番号PCT/US94/001875にさらに記載される。
【0096】
特定の製剤が経口で投与されることもまた予定される。本発明の1つの実施形態においては、錠剤及びカプセルなどの固形容量形態の配合において習慣的に使用される担体を含んで、又は含まずに、この方法で投与される分子を処方することができる。例えばカプセルは、バイオアベイラビリティが最大で、かつ、プレシステミックな分解が最少の場合に胃腸管に入った時点で製剤の活性部分が放出されるように設計され得る。治療用分子の吸収を促進するために、さらなる薬剤が含まれる場合もある。希釈剤、香料、低融点のワックス、植物油、滑沢剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、及び結合剤をもまた使用してもよい。経口投与のための医薬組成物はまた、経口投与に好適な容量の当該技術分野において周知の薬学的に許容可能な担体と共に処方することができる。それらの担体は、患者による経口摂取用の錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、溶液、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして医薬組成物を処方することを可能にする。
【0097】
経口用の医薬調製物は、活性化合物と固形の賦形剤とを組み合わること、及び生じた顆粒混合物を(任意に粉砕した後に)錠剤又は糖衣錠の核を得るために加工することによって得ることができる。望まれる場合には、好適な助剤を加えることもできる。好適な賦形剤には、ラクトース、ショ糖、マンニトール、及びソルビトールを含む糖などの炭水化物又はタンパク質充填剤;トウモロコシ、ムギ、コメ、ジャガイモ又はその他の植物由来の澱粉;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、又はカルボキシメチル・セルロース・ナトリウムなどのセルロース;アラビアゴム及びトラガカントゴムを含むゴム;並びにゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質が含まれる。望まれる場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天及びアルギン酸又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤又は安定化剤を加えてもよい。
【0098】
糖衣錠の核は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに好適な有機溶媒又は溶媒混合物をもまた含有してもよい、濃縮糖溶液などの好適なコーティングと併せて使用され得る。染料又は色素を、産物の識別又は活性化合物の量、すなわち容量を特徴付けるために錠剤や糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0099】
経口で用いられ得る医薬調製物は、ゼラチンから作られる押し込み型カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティングから作られた、軟らかい、密閉されたカプセルをもまた含む。押し込み型カプセルは、充填剤、又は、ラクトース若しくは澱粉などの結合剤、タルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意に安定化剤と混合した、活性成分を含有してもよい。軟カプセル中では、安定化剤を含む、若しくは含まない脂肪油、液体、又は液状ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に活性化合物を溶解又は懸濁し得る。
【0100】
徐放性又は制御された送達用の製剤中にポリペプチドを含有した製剤を含む、さらなる医薬組成物が当業者にとって明らかだろう。リポソーム担体、生体内分解性の微小粒子又は多孔性ビーズ及び蓄積注射などの様々なその他の徐放性又は制御された送達手段を処方する技術もまた、当業者に知られている。例えば、医薬組成物の送達のための多孔性ポリマー微小粒子の制御放出について記載したPCT/US93/00829を参照。徐放性調製物のさらなる例としては、例えば、フィルム又はマイクロカプセルなどの形態に造形された半透過性ポリマーマトリックスを含む。徐放性マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(US3,773,919、EP58,481)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタミン酸塩との共重合体(Sidman et al.,Biopolymers,22:547−556(1983)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langer et al.,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277,(1981);Langer et al.,Chem.Tech.,12:98−105(1982))、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,上記)又はポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)を含んでいてもよい。徐放性組成物は、当該技術分野において知られる複数の方法のいずれかによって調製することができるリポソームをもまた含む。例えば、Eppstein et al.,PNAS (USA),82:3688(1985);EP36,676;EP88,046;EP143,949を参照。
【0101】
インビボ投与に用いられる医薬組成物は、典型的には無菌的でなくてはならない。これは無菌的なろ過膜を通すことによって達成され得る。組成物が凍結乾燥されている場合には、この方法は凍結乾燥及び再構成の前又はその後のいずれに行われてもよい。非経口投与用の組成物を、凍結乾燥の形態又は溶液中で保存してもよい。加えて、非経口組成物は通常無菌的なアクセスポートを有する容器、例えば点滴用輸液バッグ又は皮下注射針によって貫通させることのできる栓を有するバイアル中に入れられる。
【0102】
一度処方された医薬組成物は、溶液、懸濁液、ゲル、乳化剤、固体又は脱水された又は凍結乾燥された粉末として、無菌的なバイアル中に保存され得る。これらの製剤は、すぐに使用できる形態又は投与の前に再構成を必要とする形態(例えば凍結乾燥された形態)のいずれにおいて保存してもよい。
【0103】
特定の実施形態においては、本発明は、単回投与単位を生産するためのキットに向けられている。それぞれのキットは、乾燥したタンパク質を有する第一の容器と水性製剤を有する第二の容器の両方を含む可能性がある。本発明の範囲には、単一のチャンバー及び複数のチャンバーがある予め充填されたシリンジ(例えば、液体シリンジ及びリオシリンジ(lyosyringe))を含むキットもまた含まれる。
【0104】
治療上用いられる医薬組成物の効果量は、例えば、治療の状況及び目的に依存するだろう。治療のための適した用量レベルはこのため、部分的には、送達される分子、どのポリペプチドを使用するかについての指示、投与経路、並びに患者のサイズ(体重、体表面又は器官サイズ)及び状態(年齢及び全体的な健康)によって多様になるだろうことを当業者は理解するだろう。従って、最適な治療効果を得るために臨床医は用量を滴定してもよく、及び投与経路を変更してもよい。典型的な用量の範囲は、上述の要因に依存して約0.1mg/kgから最高約100mg/kg以上になる可能性がある。ポリペプチド組成物は好ましくは静脈的に注射又は投与されてもよい。持続性の医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって、3日から4日毎、毎週、又は隔週で投与される可能性がある。投与頻度は使用される製剤中のポリペプチドの薬剤動態パラメーターに依存するだろう。典型的には、所望される効果を達成する用量に達するまで、組成物は投与される。組成物はそのため、経時的に単回投与、若しくは(同じ又は異なる濃度/用量で)複数回投与として、又は持続注射として投与されてもよい。慣習的に適した用量のさらなる改良がなされる。適した用量は適した用量反応データの使用を介して確認されてもよい。
【0105】
医薬組成物の投与経路は、例えば、経口的、静脈からの注射を介した、腹膜内、大脳内(実質組織内)、脳室内、筋肉内、眼球内、動脈内、門脈内、病巣内経路、髄内、鞘内、心室内、経皮的、皮下的、若しくは腹腔内;又は経鼻的、腸内、局所的、舌下、尿道的、経膣、又は直腸的手段、徐放性システム又は植え込みデバイスによる、既知の方法に従う。所望される場合には、組成物はボーラス注射若しくは継続的な点滴、又は植え込みデバイスによって投与されてもよい。別に又は加えて、所望される分子が吸収された又は封入された膜、スポンジ、又は別の適した材料の植え込みを介して局所的に組成物を投与してもよい。植え込みデバイスが使用される場合には、デバイスは好適な組織又は器官に植え込んでよく、所望の分子の送達は、拡散、持続放出型ボーラス、又は連続的な投与を介し得る。
【0106】
いくつかの例においては、ポリペプチドを発現して分泌するために本明細書に記載されたような方法を用いて遺伝子組み換えされた特定の細胞を移植することによって、本発明のsvActRIIBポリペプチドを送達することができる。それらの細胞は、動物又はヒト細胞であってもよく、及び自己、異種、又は非相同であってもよい。細胞は任意に不死化されてもよい。免疫反応の機会を減少させるため、細胞は周辺組織の浸潤を避けるように封入されてもよい。封入材料は、典型的には生体適合性の、半透性ポリマー封入剤又は、ポリペプチド産物を放出することができるが患者の免疫系又はその他の周辺組織由来の有害因子による細胞の破壊を防ぐことができる膜である。
【0107】
svActRIIBをコードする核酸分子、又はsvActRIIBの誘導体を対象に直接導入する、インビボでのsvActRIIB遺伝子治療もまた想定される。例えば、アデノ関連ウイルスベクターなどの適した送達ベクターを含む又は含まない核酸コンストラクトの局所的な注射を介して、svActRIIBをコードする核酸配列は標的細胞に導入される。別のウイルス性ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペス、ウイルス、及びパピローマウイルスベクターが挙げられるが、これらには限定されない。ウイルスベクターの物理的な転移は、所望の核酸コンストラクト又は所望の核酸配列を含有するその他の適した送達ベクターの局所的な注射、リポソームを介した転移、直接的な注射(ネイキッドDNA)、又は微小粒子のボンバードメント(遺伝子銃)によってインビボにおいて達成される可能性がある。
【0108】
本開示の組成物は、単独で又は、それらの治療効果を高めるための若しくは可能性のある副作用を減少させるための、その他の治療用薬剤との併用において使用してもよい。
【0109】
svActRIIB組成物の使用
本発明は、インビボ及びインビトロにおいて、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11の量又は活性を、減少させる又は中和するための方法及び医薬組成物を提供する。svActRIIBポリペプチドはミオスタチン、アクチビンA及びGDF−11に対する高い結合親和性を有し、かつ、ミオスタチン、アクチビンA及びGDF−11の少なくとも1つの生物学的活性を低下させ、かつ、阻害することができる。
【0110】
1つの態様においては、本発明は、治療を必要とする対象において、対象に効果量のsvActRIIB組成物を投与することによる、ミオスタチンに関係した及び/又はアクチビンAに関係した障害を治療するための方法及び試薬を提供する。本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、ヒトを含む哺乳類など、いずれの動物をも意味する。
【0111】
本発明の組成物は、対象において除脂肪体重を増加させるために有用である。組成物はまた、除脂肪体重の脂肪量に対する割合を増加させ、このため、対象の体重におけるパーセンテージとしての脂肪量を減少させるために有用である可能性もある。実施例3は、本発明のsvActRIIBポリペプチド及びタンパク質が総物において除脂肪体重を増加させることができることを示す。
【0112】
svActRIIB組成物によって治療できる疾患には、様々な形態の筋肉の消耗、並びに糖尿病などの代謝性障害と関係した疾患、及び骨粗鬆症などの骨変性障害などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0113】
筋肉の消耗疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、進行性筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、ランドゥジー・デジュリン筋ジストロフィー、エルブ筋ジストロフィー、及び乳児神経軸索性筋ジストロフィーなどのジストロフィーもまた含む。さらなる筋肉の消耗疾患は、筋萎縮性側索硬化症、鬱血性閉塞性肺障害、癌、エイズ、腎不全、器官萎縮、アンドロゲン欠亡、及び関節リウマチなどの慢性障害又は疾患から生じる。
【0114】
ミオスタチン及び/又はアクチビンの過剰発現は、重篤な筋消耗症候群である悪液質の一因となる可能性がある。悪液質は癌から生じ、及び関節リウマチ、闘病病性ネフロパシー、腎不全、化学療法、火傷による負傷、並びにその他の原因によってもまた生じる。別の実施例においては、エイズに関係した筋消耗を発現しているヒトにおいては、血清及びミオスタチン−免疫反応性タンパク質の筋肉内濃度が上昇し、これが除脂肪量と反比例していることが見いだされた(Gonzalez−Cadavid et al.,PNAS USA 95:14938−14943(1998))。ミオスタチンレベルもまた火傷に反応して上昇し、異化筋肉効果を生じることが示されている(Lang et al,FASEB J 15,1807−1809(2001))。筋消耗を生じるさらなる状態は、車椅子での制限、発作による長期臥床、病気、脊髄損傷、骨折又はトラウマ、及び微小重力環境(宇宙飛行)での筋消耗など、身体障害による不活性から生じる可能性もある。例えば、血漿ミオスタチン免疫反応性タンパク質が長期臥床の後で上昇することが見いだされた(Zachwieja et al.J Gravit Physiol.6(2):11(1999)。スペースシャトルでの飛行中に微小重力環境に暴露されたラットの筋肉では、微小重力環境に暴露されていないラットの筋肉と比較して、ミオスタチンの発現量が増加したこともまた見いだされた(Lalani et al.,J.Endocrin 167(3):417−28(2000))。
【0115】
加えて、年齢に関係した脂肪の筋肉に対する率の増加、及び年齢に関係した筋消耗がミオスタチンと関係していると考えられる。例えば、血清ミオスタチン免疫反応性タンパク質の平均は、若年(19〜35歳)、中高年(36〜75歳)、及び老年(76〜92歳)の男性及び女性の群で年齢に伴って上昇し、これらの群における筋肉量と除脂肪体重の平均は年齢に伴って減少する(Yarasheski et al. J Nutr Aging 6(5):343−8(2002))。加えて現在では、ミオスタチンが心筋において低レベルで発現し、この発現が梗塞後の心筋細胞においてアップレギュレートされることが見いだされている(Sharma et al.,J Cell Physiol.180(1):1−9(1999))。このため、心筋においてミオスタチンレベルを減少させることが梗塞後の心筋の回復を改善する可能性がある。
【0116】
ミオスタチンはまた、2型糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、高血糖、及び肥満を含む代謝性障害にも影響を及ぼすと考えられる。例えば、2匹のマウスモデルにおいて、ミオスタチンの欠損が肥満及び糖尿病の表現型を改善することが示されている(Yen et al. FASEB J.8:479(1994))。本開示のsvActRIIBポリペプチドは、それら代謝性障害の治療に適している。そのため、本発明の組成物を投与することは、好適な対象において糖尿病、肥満、及び高血糖の状態を改善するだろう。加えて、svActRIIBポリペプチドを含有する組成物は、肥満の人における食料摂取を減少させる可能性がある。
【0117】
本発明の安定化ActRIIBポリペプチドの投与は、骨強度を改善して、骨粗しょう症及びその他の変性骨障害を減少させる可能性がある。例えば、ミオスタチン欠損マウスにおいては、ミネラル含量とマウス上腕骨密度の上昇、及び筋肉が結合している領域での骨小柱と皮質の両方におけるミネラル含量の増加、並びに筋肉量の増加が見られる(Hamrick et al.Calcif Tissue Int 71(1):63−8(2002))。加えて、本発明のsvActRIIB組成物は、例えば前立腺癌の治療のためにアンドロゲン除去治療が用いられたような例において、アンドロゲン除去の効果を治療するために使用することができる。
【0118】
本発明はまた、動物に効果量のsvActRIIBタンパク質を投与することにより、食用動物において筋肉量を増加させるための方法及び組成物を提供する。成熟C−末端ミオスタチンポリペプチドが、試験された全ての種において相同又は同一であることから、ウシ、ニワトリ、七面鳥、及びブタを含む、いずれの農業上重要な種においても、svActRIIBポリペプチドが除脂肪体重の増加及び脂肪の減少に効果的であると予測される。
【0119】
本発明のsvActRIIBポリペプチド及び組成物はまた、下記のインビトロアッセイにおいて示されるように、アクチビンAの活性を拮抗する。アクチビンAは特定の型の癌、典型的には、卵巣癌などの性腺腫瘍において発現し、重篤な悪液質を起こすことが知られている(Ciprano et al.Endocrinol 141(7):2319−27(2000),Shou et al.,Endocrinol 138(11):5000−5(1997);Coerver et al,Mol Endocrinol 10(5):534−43(1996);Ito et al.British J Cancer 82(8):1415−20(2000),Lambert−Messerlian, et al,Gynecologic Oncology 74:93−7(1999)。このため、本開示の組成物は、特定の癌に由来する悪液質などのアクチビンAの過剰発現及びミオスタチン発現に関係した状態の治療、並びに特定の性腺型腫瘍の治療に用いられる可能性がある。
【0120】
加えて、本発明のsvActRIIBポリペプチドは、いずれの数のアッセイにおいても、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11の検出及び定量に有用である。通常、本発明の安定化ActRIIBポリペプチドは、例えば、Asai,ed.,Methods in Cell Biology,37,Antibodies in Cell Biology,Academic Press,Inc.,New York(1993)に記載されているアッセイと同様の様々なアッセイにおいて、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合して固定する、補足剤として有用である。いくつかの方法においてはポリペプチドを標識してもよく、又は、ミオスタチンを検出して定量することを可能にするために標識された抗体などの、第三の分子と反応させてもよい。例えば、ポリペプチド又は第三の分子を、酵素標識されたストレプトアビジンなどの第四の分子とその後結合することができるビオチンなどの、検出可能な部分、又はその他のタンパク質で修飾することもできる(Akerstrom,J Immunol 135:2589(1985);Chaubert,Mod Pathol 10:585(1997))。
【0121】
下記の実施例は、記載されてきた本発明を説明する目的で提供され、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0122】
実施例1
svActRIIBポリペプチドの発現及び精製
安定化ActRIIBポリペプチドの発現及び精製には下記の方法を用いた。
【0123】
ヒトアクチビンIIB型受容体のcDNAをヒト精巣由来のcDNAライブラリー(クロンテック)から単離し、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/590,962号及び米国特許出願公開第2007/0117130号に記載されているようにクローニングした。
【0124】
svActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリペプチド(配列番号10)、及びActRIIB−Fc(E28W)(配列番号21)を生産するために以下の方法を用いた。svActRIIB(E28W、S44T)(配列番号5)をコードするポリヌクレオチド又はActRIIB(E28W)(配列番号19)をコードするポリヌクレオチドを、28番目のEをWに、かつ、44番目のSをTにするアミノ酸置換を生じる変異を含有するプライマーを用いたPCRオーバーラップ伸長を用い、ヒンジリンカー配列(配列番号26)をコードするポリヌクレオチドを介してヒトIgG2Fc(配列番号22)をコードするポリヌクレオチドに融合させた。svActRIIB−IgGFc(E28W、S44T)の完全長ポリヌクレオチド配列は配列番号9であり、ActRIIB−ActRIIB−IgGFc(E28W)の完全長配列は配列番号20である。二本鎖DNA断片をpTT5ベクター(Biotechnology Research Institute,National Research Council Canada(NRCC),6100 Avenue Royalmount,Montreal(Quebec)Canada H4P 2R2)、国際公開第9014363号に記載されるpDSRα)及び/又はpDSRαの誘導体中にサブクローニングした。
【0125】
安定化ActRIIB−Fcポリペプチドの一過性発現は以下の通りに行った。
【0126】
svActRIIB−IgGFc(E28W、S44T)(配列番号10)、及びActRIIB−IgGFc(E28W)(配列番号21)ポリペプチドを、250μg/mLジェネティシン(インビトロジェン)及び0.1%プルロニックF68(インビトロジェン)を添加したFreeStyle(商標)培地(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア)中に維持した293−6E細胞(National Research Council of Canada、オタワ、カナダ)に適合した血清を含まない懸濁液中一過的に発現させた。トランスフェクションを1L培地で行った。簡単には、4Lのフェルンバッハ振とうフラスコ中で(コーニング)細胞接種材料を1.1×10細胞/mLになるまで成長させた。振とうフラスコ培養は、37℃及び5%CO2に維持され、加湿された培養器中に設置した、Innova 2150 shaker platform(News Brunswick Scientific、エディソン、ニュージャージー)上で65RPMに維持された。トランスフェクションに際しては、293−6E細胞を1.0×10細胞/mLに希釈した。
【0127】
トランスフェクション複合体を100mLのFreeStyl(商標)293培地(インビトロジェン)中で形成させた。1mgのプラスミドDNAを最初に培地に加え、その後3mLのFuGene HD トランスフェクション試薬(ロシュ・アプライド・サイネンス、インディアナポリス、インディアナ)を加えた。トランスフェクション複合体を室温で約15分間温置し、その後振とうフラスコ中の細胞に加えた。トランスフェクションの20時間後、20%(w/v)のペプトンTN1(Organo Technie S.A.、TeknieScience、QC、カナダ)を最終濃度が0.5%(w/v)に達するように加えた。トランスフェクション/発現を4〜7日間行い、その後、4℃で60分間、4000RPMで遠心分離することによって、馴化培地を回収した。
【0128】
安定なトランスフェクション及び発現を以下の通りに行った。標準的なエレクトロポレーション方法を用い、安定なCHO宿主細胞を、svActRIIB−IgGFc(E28W、S44T)(配列番号9)又はActRIIB−IgGFc(E28W)(配列番号20)をコードするポリヌクレオチド含有する発現プラスミドと共にトランスフェクションすることによって、svActRIIB−IgG−Fc細胞株を作った。宿主細胞株と発現プラスミドをトランスフェクションした後、プラスミドの選択と細胞の回収ができるように、細胞をGHTを加えない、血清を含まない選択培地中で2〜3週間生育させた。生存率が85%を超えるまで細胞を選択する。このトランスフェクションした細胞プールをその後、150nMのメトトレキサートを含有する培地中で培養した。
【0129】
6日間の発現アッセイにおいては、svActRIIB−Fc(E28W、S44T)を発現している細胞のプールはActRIIB−Fc(E28W)を発現している細胞のプールと比較して、より高い細胞力価、生育成績、及び生産されたタンパク質の改善された特異的な生産性(ピコグラム/細胞/日)を示した。選択したプールは、例えば、0.9g/LのActRIIB−Fc(E28W)と比較して、約1.2g/LのsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)を生産した。
【0130】
svActRIIB−Fc(E28WS44T)及びActRIIB−Fc(E28W)をそれぞれ発現している細胞株を、典型的なフェドバッチ法を用いて増やした。細胞をWave bioreactor(Wave Biotech LLC)中に播種した。ボーラス栄養を用い、培養に3回栄養を加えた。10日目に10Lを回収し、残りを11日目に回収した。回収した両方を深層ろ過し、その後滅菌ろ過した。馴化培地を10インチの0.45/0.2マイクロメートルプレフィルターを通してろ過し、その後6インチの0.2マイクロメートルフィルターを通してろ過した。
【0131】
タンパク質の精製
220mLのMabSelect(商標)カラムプロテインAカラム(GEヘルスケア)に、約5Lの馴化培地を直接ロードした。カラムをPBS(リン酸緩衝生理食塩水:2.67mM塩化カリウム、138mM塩化ナトリウム、1.47mMリン酸二水素カリウム、8.1mMリン酸水素二ナトリウム、pH7.4)中で前平衡化した。カラムをOD280での測定値がおよそゼロになるまで平衡化緩衝液で洗い、その後タンパク質を0.1M酢酸を用いて溶出した。
【0132】
Mabselect(商標)プールを、300mLSP−HPカラム(GEヘルスケア)(5x15cm)にアプライした。カラムを10mMのNaOAC、pH5を用いて前平衡化した。カラムをその後、OD280での測定値がおよそ0になるまで平衡化緩衝液で洗った。カラムをカラムの20倍量の、10mM NaOAC中の0〜150mM NaCl、pH5の勾配緩衝液で溶出した。SP−HPプールを濃縮し、0.2μMの酢酸セルロース(コーニング)フィルターを用いてろ過した。
【0133】
使用されたタンパク質の配列を下記の表に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
実施例2
ポリペプチドの解析
上述のように、MabSelect(商標)工程を通して精製したsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)(配列番号10)ポリペプチド、及びSP−HPカラム工程を通して精製したActRIIB−Fc(E28W)(配列番号21)ポリペプチドの試料をPBS、pH7.4を用いて0.2mg/mLに希釈した。その後、ポリペプチドのグリコシル化プロファイルをSECを用いて以下のように決定した。
【0136】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。実験は、Agilent 1100 HPLC システム上で2本のカラム(TOSOHAAS G3000swxl、7.8x300mm)を縦一列に用いて行った。2xPBSを移動相として、0.5mL/分で用いた。
【0137】
図1は、上述のプロトコルを用いたSECカラムにおけるActRIIB−Fc(E28W)とsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)との間の比較を示す。3つのピークを示すActRIIB−Fc(E28W)と比較して、svActRIIB−Fc(E28W、S44T)は単一のピークを示す。これらのことは、両方のタンパク質のFc二量体のN42の位置におけるN結合型グリコシル化の度合いと対応する。svActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリペプチドの単一のピークは、二量体のN42の位置における完全にグリコシル化されたN結合型アスパラギンに対応する。ActRIIB−Fc(E28W)の3つのピークは、(左から右に)N42における完全にグリコシル化されたアスパラギン、N42における部分的にグリコシル化されたアスパラギン、及びN42における非グリコシル化アスパラギンに対応する。さらに、このことは、このグリコシル化部位においては異種なActRIIB−Fc(E28W)と比較して、svActRIIB−Fc(E28W、S44T)分子は完全にグリコシル化され、そのため精製することが難しいことを示している。加えて予備的な研究が、svActRIIB−Fc(E28W、S44T)分子が以下に示すような改善された製造性特性の付加を有することを示している。さらなる研究がまた、ActRIIB−Fc(E28W)の最小のグリコシル化ピークが、部分的及び完全にグリコシル化された分子よりも低い物理的及び熱への安定性を有することを示した。
【0138】
受容体ポリペプチドのアクチビンA、ミオスタチン、及びGDF−11に対するK及びIC50値の決定は、以下に記載されるように得られた。
【0139】
KinExA(商標)平衡アッセイ
リガンドのActRIIB−Fcポリペプチドへの結合解離平衡(KD)を決定するために、KinExA(商標)(Sapidyne Instruments,Inc.)技術を用いた、液体ベースの平衡結合アッセイを使用した。UltraLink Biosupport ビーズ(Pierce)を、それぞれ約100μg/mLのミオスタチン、GDF−11、及びアクチビンAで一晩プレコーティングし、その後BSAでブロッキングした。リガンドでコーティングしたビーズ中を通す前に、1pM及び3pMのActRIIB−Fc(E28W)(配列番号21)及びsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)(配列番号10)試料を、様々な濃度(0.7fMから160pM)のミオスタチン、アクチビンA及びGDF−11それぞれと共に、サンプル緩衝液中、室温で8時間、温置した。ビーズに結合した可溶性受容体の量を、superblock中に1mg/mLの、蛍光(Cy5)標識したヤギ抗−ヒト‐Fc抗体によって定量した。結合シグナルは、示したミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11濃度での平衡において、遊離した可溶性受容体の濃度に比例した。Kは、KinExA(商標)ソフトウェア(Sapidyne Instruments,Inc.)中で提供された、双対曲線一部位異種結合モデルを用いた競合曲線の非線形回帰から得られた。それぞれについて得られたK値を下記の表に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
C2C12細胞を使用した活性アッセイ
ActRIIB−Fc(E28W)(配列番号21)及びsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)(配列番号10)の、アクチビンA、GDF−11、又はミオスタチンの野生型アクチビンIIB受容体−Fcへの結合を阻害する能力を、以下に記載したように細胞を使用した活性アッセイを用いて試験した。
【0142】
ミオスタチン/アクチビン/GDF−11反応性レポーター細胞株を、C2C12筋芽細胞(ATCCNo:CRL−1772)をpMARE−lucコンストラクトと共にトランスフェクションすることによって生成した。pMARE−lucコンストラクトは、ミオスタチン/アクチビン応答エレメントであるCAGA配列(Dennler et al. EMBO17:3091−3100(1998))の12回の繰り返しを、pLuc−MCSレポーターベクター(ストラタジーン、カタログ番号219087)のTATAボックスの上流にクローニングすることによって作られる。C2C12細胞は天然に、その細胞表面上にアクチビン受容体IIBを発現する。ミオスタチン/アクチビンA/GDF−11が細胞受容体に結合すると、Smad経路が活性化され、リン酸化されたSmadが応答エレメントに結合し(Macias−Silva et al. Cell 87:1215(1996))、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を起こす。ルシフェラーゼ活性をその後、市販されているルシフェラーゼレポーターアッセイキット(カタログ番号E4550、プロメガ、マディソン、ウィスコンシン)を用い、製造業者のプロトコルに従って測定した。下記の方法に従って活性を測定するためには、pMARE−luc(C2C12/pMARE)を用いてトランスフェクションした安定なC2C12細胞株を使用した。レポーター細胞を96穴培養中にプレーティングした。濃度を4nMに固定したアクチビンA、ミオスタチン、及びGDF−11を用い、上述の通りに作成したActRIIB−IgG2Fc融合コンストラクトを使用したスクリーニングを行った。これらのリガンドをそれぞれ、いくつかの濃度の受容体とともに前保温した。処理した培養におけるルシフェラーゼ活性を決定することによって活性を測定した。IC50値をそれぞれのポリペプチドに対して決定した。これらを以下の表に示す。これらの値を以下の表に示す。
【0143】
【表3】

【0144】
ActRIIB−Fc(E28W)とsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)における細胞を使用した活性は、おおよそ同じであった。
【0145】
低いpHにおける安定性
商業上の生産過程においてウイルスを不活化させる工程が、典型的には低いpH、例えば、約3.0から4.0の間で行われることから、低いpHにおけるタンパク質の安定性は、タンパク質の製造性を考える上で有用な指標である。
【0146】
商業上のタンパク質精製におけるウイルス不活化工程中に経験される低いpHでの、短時間のタンパク質安定性効果を評価するために、以下の試験を行った。それぞれのタンパク質を100mM酢酸ナトリウム、pH3.5で10mg/mLに希釈した。これを25℃に保存し、SEC解析を用いて0時間、2時間、24時間の時点で解析した。SEC解析は上述した通りに行い、の凝集のパーセンテージを決定した。
【0147】
【表4】

【0148】
このように、4時間目においてpH3.5で生産される高分子量凝集のパーセンテージは、ActRIIB−Fc(E28W)よりもsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)において実質的に低い。
【0149】
さらなる研究において、svActRIIB−Fc(E28W、S44T)がpH3.0、3.5及び5.0への暴露からのActRIIB−Fc(E28W)よりも良い可逆性を示すこと、及び全てのpHにおいてsvActRIIB−Fc(E28、S44T)がActRIIB−Fc(E28W)よりも均一であることが示された。
【0150】
このように、svActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリペプチドがアクチビンA、ミオスタチン、及びGDF−11活性を阻害する能力を保持しながらも、改善された製造性製造性特性、特に低いpHでの安定性、及びActRIIB−Fc(E28W)と比較して全てのpHでのより高い安定性を有することが示される。
【0151】
実施例3
インビボでの効果の決定
11週齢のメスのC57Bl/6マウスをCharles River Laboratoriesから購入した。マウス(1群につき10匹)にsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)(配列番号10)又は媒体(PBS)を単回投与(10mg/kg)した。それぞれの群の10匹の動物において、用量投与後3、4、10及び14日の時点での除脂肪体重を、NMR(PIXImus、GE LUNAR Corporation)によって決定した。それぞれの群のマウスにおける結果を図2に示した。svActRIIB−Fc(E28W、S44T)の単回投与が、動物において除脂肪体重を有意に増加させることがわかる。(P<0.001、反復測定ANOVAに基づく。n=10動物/群)。
【0152】
用量反応効果を決定するための研究を以下の通りに行った。漸増単回投与で、PBS中に0、0.3、3、10、及び30mg/kgのsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)(配列番号10)を、10〜12週齢のメスのC57Bl/6マウス(Charles River Laboratories)に皮下的に投与した。試験開始時には、PBS対象群を含めて、それぞれの用量群に6匹の動物が割り当てられた。42日の試験期間中、2日から4日毎に、除脂肪体重をNMR(PIXImus、GE LUNAR Corporation)によって決定した。それぞれの週の終わりには、さらなるデータを得るために、それぞれの群から1匹の動物を処分し(それぞれの週につき、全6群から合計6匹)、その後の週については、残りの動物における除脂肪体重を決定した。結果を図3に示す。svActRIIB−Fc(E28W、S44T)ポリペプチドが用量依存的に、全ての用量において、動物の筋肉量を有意に増加させたことがわかる。
【0153】
さらなる研究においては、対照群(PBSを投与した)と比較して、10mg/kgのそれぞれの可溶性受容体の単回投与後の除脂肪体重の増加及び体重の変化を測定するために、メスのC57Bl/6マウス(Charles River Laboratories、1群あたり10匹)においてActRIIB−Fc(E28W)(配列番号21)とsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)(配列番号10)との間の直接の比較を行った。除脂肪体重はNMR(PIXImus、GE LUNAR Corporation)によって決定し、体重の変化は37日間、定期的に動物の体重を測定することによって決定した。この比較研究の終わりにおける結果は、除脂肪体重が5%上昇し、体重が9%増加した対照群と比較して、ActRIIB−Fc(E28W)(配列番号21)は24%の除脂肪体重の増加と25%の体重の増加を、及びsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)(配列番号10)は25%の除脂肪体重の増加と20%の体重の増加を示したというものであった。
【0154】
さらに、svActRIIB−Fc(E28W、S44T)は、改善された製造性製造性特性を有しながらも、ActRIIB−Fc(E28W)と比較して、同等のインビボ効果を保持することがわかる。
【0155】
実施例4
改変されたヒンジリンカーを含む改善された製造性
安定化ActRIIB(E28W、S44T)ポリペプチドのタンパク質発現及び製造性のさらなる改善を試験するために、さらにリンカー及び改変されたヒンジ領域のコンストラクトを作成した。ヒンジリンカー#1の変更に基づく改変されたリンカー/ヒンジ配列を、Mikaelian et al.,Methods in Molecular Biology,57,193−202(1996)及びよく知られた方法論に従って、オーバーラップ伸長PRC突然変異生成法を用いて生成した。
【0156】
IgG2Fc融合体と共により良く機能するように設計された、改変されたヒンジリンカーは、以下に示すヒンジリンカー#2〜7である(ヒンジリンカー#1配列と比較して)。
【0157】
ヒンジリンカー#1ポリヌクレオチド
ggagggggaggatctgtcgagtgcccaccgtgccca(配列番号26)
【0158】
ヒンジリンカー#1ポリペプチド
GGGGSVECPPCP(配列番号27)
【0159】
ヒンジリンカー#2ポリヌクレオチド
ggagggggaggatctgagcgcaaatgttgtgtcgagtgcccaccgtgc(配列番号37)
【0160】
ヒンジリンカー#2ペプチド
GGGGSERKCCVECPPC(配列番号38)
【0161】
ヒンジリンカー#3ポリヌクレオチド
ggagggggaggatctggtggaggtggttcaggtccaccgtgc(配列番号39)
【0162】
ヒンジリンカー#3ペプチド
GGGGSGGGGSGPPC(配列番号40)
【0163】
ヒンジリンカー#4ポリヌクレオチド
ggagggggaggatctggtggaggtggttcaggtccaccggga(配列番号41)。
【0164】
ヒンジリンカー#4ペプチド
GGGGSGGGGSGPPG(配列番号42)
【0165】
ヒンジリンカー#5ポリヌクレオチド
ggagggggaggatctgagcgcaaatgtccaccttgtgtcgagtgcccaccgtgc(配列番号43)
【0166】
ヒンジリンカー#5ペプチド
GGGGSERKCPPCVECPPC(配列番号44)
【0167】
ヒンジリンカー#6ペプチド
GPASGGPASGPPCP(配列番号45)
【0168】
ヒンジリンカー#7ペプチド
GPASGGPASGCPPCVECPPCP(配列番号46)
【0169】
以下のヒンジリンカー#8から#10は、IgG1Fc(配列番号23)又は下記に示す改変されたIgG1Fc(配列番号47)と共により良く機能するように設計された。
【0170】
改変されたIgG1Fc
APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号47)
【0171】
ヒンジリンカー#8ペプチド
GGGGSVDKTHTCPPCP(配列番号48)
【0172】
ヒンジリンカー#9ペプチド
GGGGSVDKTHTGPPCP(配列番号49)
【0173】
ヒンジリンカー#10ペプチド
GGGGSGGGGSVDKTHTGPPCP(配列番号50)
【0174】
改変されたヒンジリンカー配列とsvActRIIB−Fc(28W、S44T)との試験を以下の通りに行った。上記に示したsvActRIIB(E28W、S44T)(配列番号5)をコードするポリヌクレオチド、改変されたヒンジリンカーをコードするポリヌクレオチド、及びIgG2Fc(配列番号22)をコードするポリヌクレオチド、又はIgG1Fc(配列番号23)をコードするポリヌクレオチド又は改変されたIgG1Fc(配列番号47)を実施例1に記載したようにベクター中にサブクローニングし、Durocher et al.,Nucleic Acids Research 30,No.3,e9(2002)に記載されたようなFreestyle 293培地の代わりに、1.1mg/mLプルロニック、6mML−グルタミン及び25μg/mLジェネティシン(インビトロジェン)を添加したF17培地(インビトロジェン)を用いるという変更を加えて、実施例1に記載したように一過性293−6E発現系を用いて発現させた。トランスフェクション後、培養を37℃で7日間生育させた。細胞を除去するために一部を遠心分離し、上清をローディングバッファーと混合し、その後熱処理し、ウエスタンブロットによる解析用に4〜20%トリス−グリシンゲルにロードした。ニトロセルロース膜にタンパク質を転写した後、試料を、1:1000に希釈したペルオキシダーゼ結合抗−ヒトFc抗体(Pierce#31423)と結合させた。
【0175】
タンパク質の精製は以下の方法を用いて行った。svActRIIB−Fc変異体を含有する約0.25Lの馴化培地を、5ft2 10K膜の接線流ろ過フィルターを用いて濃縮した。濃縮した材料を、PBS(塩化マグネシウム及び塩化カルシウムを含まないダルベッコ)で平衡化した5mLのProtein A High Performance Column(商標)(GEヘルスケア)にアプライした。カラムを平衡化緩衝液で、280nm(OD280)での吸収が0.1未満になるまで洗った後、結合したタンパク質を0.1Mグリシン−HCl、pH2.7で溶出し、直ちに1Mトリス−HCl、pH8.5で中和した。
【0176】
凝集の割合のパーセンテージ及び半分子の割合のパーセンテージを以下の方法によって決定した。それぞれの試料の50μl部分を2本のサイズ排除カラム(TOSOHAAS G3000swxl)を縦一列に有したHPLCシステムに注入することにより、変性サイズ排除クロマトグラフィーの実験を行った。移動相はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の5M GuHClを含有する。全ての試料を7M GuHClを含むPBS中に1mg/mLに希釈した。凝集の割合のパーセンテージを、主要なピークの前に溶出されたピーク面積の合計から決定し、半分子の割合のパーセンテージを主要なピークの後に溶出されたピーク面積の合計から決定した。半分子は不活性半分子を示すと考えられる。
【0177】
様々なヒンジリンカーを含むsvActRIIB−Fc(E28W、S44T)の凝集及び半分子分布を以下の表に示す。
【0178】
【表5】

【0179】
不活性半分子生産のパーセンテージを減少させることによる、これらの予備的な試験から、このように特定のリンカーが安定化ActRIIB−Fc(E28W、S44T)の製造性を改善する可能性がある。
【0180】
【表6】


【0181】
本発明は、本発明の個別の態様の1つの説明を意図する、本明細書で記載された特定の実施形態によってその範囲を限定されず、かつ、機能的に同等の方法及び構成要素は本発明の範囲に含まれる。実際、前述の明細書及び添付の図表から、当業者は、本明細書で示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な変更を理解するだろう。それらの変更は添付の請求項の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化アクチビンIIB受容体ポリペプチドを含む、単離されたタンパク質であって、前記ポリペプチドは
(a)配列番号4、6、12及び14からなる群において示された配列からなるポリペプチド;
(b)(a)に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドであって、28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能なポリペプチド;及び
(c)(a)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドであって、28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能なポリペプチド;
からなる群より選択される、単離されたタンパク質。
【請求項2】
ポリペプチドが少なくとも1つの異種タンパク質に結合している、請求項1のタンパク質。
【請求項3】
異種ポリペプチドがIgGFcドメインである、請求項2のタンパク質。
【請求項4】
異種ポリペプチドがリンカー配列によってポリペプチドに結合している、請求項2のタンパク質。
【請求項5】
リンカーが、配列番号25、配列番号27、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号48、配列番号49及び配列番号50からなる群より選択される、請求項4のタンパク質。
【請求項6】
(a)配列番号8、10、16及び18からなる群において示された配列からなるポリペプチド;
(b)(a)に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドであって、28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能な前記ポリペプチド;及び
(c)(a)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドであって、28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能な前記ポリペプチド;
からなる群より選択されるポリペプチドを含む、請求項3のタンパク質。
【請求項7】
64番目の位置のアミノ酸残基がアラニンである、請求項1のタンパク質。
【請求項8】
安定化アクチビンIIB受容体ポリペプチド(svActRIIB)を含む、単離されたタンパク質であって、前記ポリペプチドは
(a)28番目の位置にW及びYからなる群から選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2で示された配列からなるポリペプチド;
(b)28番目の位置にW及びYからなる群から選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸19から134に示される配列からなるポリペプチド;
(c)28番目の位置にW及びYからなる群から選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸23から134に示される配列からなるポリペプチド;
(d)28番目の位置にW及びYからなる群から選択される1アミノ酸置換があり、かつ、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換がある、配列番号2のアミノ酸25から134に示される配列からなるポリペプチド;及び
(e)(a)から(d)のいずれか1つと少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドであって、28番目の位置にW及びYからなる群から選択される1アミノ酸置換、及び、44番目の位置がTになる1アミノ酸置換があり、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11と結合することが可能な前記ポリペプチド;
からなる群より選択される、単離されたタンパク質。
【請求項9】
請求項8のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
【請求項10】
(a)配列番号4、6、12及び14からなる群において示された配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、(a)に対して少なくとも90%の配列同一性を有する前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、(a)に対して少なくとも95%の配列同一性を有する前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
【請求項11】
ポリヌクレオチドが配列番号3、5、11及び13又はその相補鎖からなる群より選択された配列を有する、請求項10の核酸分子。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが少なくとも1つの異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項10の核酸分子。
【請求項13】
(a)配列番号8、10、16及び18からなる群において示された配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、(a)に対して少なくとも90%の配列同一性を有する前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(c)28番目の位置にW又はY、かつ、44番目の位置にTを有し、ミオスタチン、アクチビンA、又はGDF−11に結合することが可能であり、(a)に対して少なくとも95%の配列同一性を有する前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む、請求項12の核酸分子。
【請求項14】
ポリヌクレオチドが配列番号7、9、15及び17又はその相補鎖からなる群より選択された配列を有する、請求項13の核酸分子。
【請求項15】
ポリヌクレオチドが転写又は翻訳調節配列に機能的に連結された、請求項10の核酸分子。
【請求項16】
請求項10の核酸分子を含む組み換えベクター。
【請求項17】
請求項16の組み換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
宿主細胞が哺乳動物の細胞である、請求項17の宿主細胞。
【請求項19】
svActRIIBタンパク質の発現を促進する条件下で請求項17の宿主細胞を培養する工程、及びタンパク質を回収する工程を含む、svActRIIBタンパク質の生産方法。
【請求項20】
効果量の請求項1のタンパク質と薬学的に許容可能な担体との混合物を含む医薬組成物。
【請求項21】
治療上効果量の請求項20の組成物を対象に投与する工程を含む、治療を必要とする対象においてミオスタチン活性又はアクチビン活性を阻害する方法。
【請求項22】
治療上効果量の請求項20の組成物を対象に投与する工程を含む、治療を必要とする対象において除脂肪体重を増加させる、又は除脂肪体重の脂肪量に対する率を増加させる方法。
【請求項23】
治療上効果量の請求項20の組成物を対象に投与する工程を含む、治療を必要とする対象において筋消耗疾患又は代謝性障害を治療する方法。
【請求項24】
筋消耗疾患が、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、鬱血性閉塞肺疾患、慢性心不全、癌性悪液質、エイズ、腎不全、尿毒症、関節リウマチ、加齢によるサルコペニア、器官萎縮、手根管症候群、アンドロゲン欠亡、火傷、糖尿病、長期臥床、脊髄損傷、発作、骨折、加齢、又は微少重力への暴露による筋消耗から選択される、請求項23の方法。
【請求項25】
代謝性障害が糖尿病、肥満、高血糖及び骨量の減少から選択される、請求項23の方法。
【請求項26】
治療上効果量の請求項20の組成物を対象に投与する工程を含む、治療を必要とする対象において、アクチビンが過剰発現している疾患を治療する方法。
【請求項27】
疾患が癌である、請求項26の方法。
【請求項28】
請求項16のベクターを投与する工程を含み、前記ベクターが対象においてsvActRIIBポリペプチドの発現を誘導させることが可能である、治療を必要とする対象において、筋消耗若しくは代謝性又はアクチビンに関係した障害を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509687(P2012−509687A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538599(P2011−538599)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/006252
【国際公開番号】WO2010/062383
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】