説明

アクチュエータおよびその製造方法

【課題】 変形応答特性が高く、発生力の大きな屈曲駆動型のアクチュエータを提供する。
【解決手段】 一対の電極と、該一対の電極間に配置された電解質層と、を有し、該一対の電極間に電圧が印加されることにより変形するアクチュエータであって、前記電解質層が、電解質と、該電解質を空隙内に担持する、高分子材料からなるマトリクスと、該マトリクスを補強するためのマトリクス補強材と、を有し、前記マトリクス補強材の少なくとも一部が前記マトリクスに埋め込まれていることを特徴とするアクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータおよびその製造方法に関する。特に、高分子材料を用いたソフトアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟性があり軽量の高分子アクチュエータ(ソフトアクチュエータとも呼ぶ)は、ロボット工学から医療機器、マイクロマシン、センサーおよび同種のものなど多岐にわたる分野で幅広い用途が期待でき、その開発に注目が高まっている。電気活性高分子アクチュエータの技術は、この分野で特に有望な選択肢の1つになっている。電気活性高分子アクチュエータは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換することで膨張および収縮を示すものである。具体的には、ゲルアクチュエータ、イオン交換樹脂膜−金属錯体(IPMC:ion−exchange resin film−metal complex)アクチュエータ、高分子CNT(Carbon nanotube)組成物アクチュエータなどが知られている。
【0003】
特許文献1には、カーボンナノチューブを有する高分子ゲルの電極と、該ゲル電極間に配置した高分子ゲル電解質とからなるゲル型アクチュエータが記載されており、これは一対の電極の間に電圧を印加するとアクチュエータが屈曲する。かかるアクチュエータは、空気中でも、または真空中でも低電圧で動作し得るが、高分子ゲル電解質で作成した中間層はイオンの移動が生じにくく、変位量を大きくすることが難しかった。
【0004】
また特許文献2には、中間層として高分子を用いて構成された膜状の成形体を用い、成形体をイオン液体で膨潤したアクチュエータが記載されている。また、成形体には破断強度や弾性率を調製する目的で高分子材料や、無機材料を添加してもよい、との記載がある。しかし、変位量を維持しつつ、破断強度を強化するための具体的な添加方法は何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−176428号公報
【特許文献2】特開2009−278787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中間層に多孔質構造体を用いることで、イオンの移動性が向上し、変位応答性の高いアクチュエータとなりうるが、多孔質構造であるが故、バルク体に対して変形時の強度に課題が生じる。
【0007】
そしてさらに、破断強度を強化する目的で単に補強材を成形体に混入させただけでは、破断強度の強化に効率の低い穴空間内に大量の補強材が配置されてしまう上に、これがイオン移動の妨げとなる。すなわち、補強効果が低い上に、さらに変位量が低下してしまう、という課題があった。
【0008】
すなわち、本発明は、上記の課題を解決し、変形応答特性が高く、且つ変位量の大きな屈曲駆動型のアクチュエータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、一対の電極と、該一対の電極間に配置された電解質層と、を有し、該一対の電極間に電圧が印加されることにより変形するアクチュエータであって、前記電解質層が、電解質と、該電解質を空隙に有する高分子材料のマトリクスと、該マトリクス中に分散された、該マトリクスを補強するためのマトリクス補強材と、を有し、
該電解質層中の90重量%以上の該マトリクス補強材において、それぞれの少なくとも一部分が前記マトリクスに埋め込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各々のマトリクス補強材の少なくとも一部分がマトリクスに埋め込まれていることで、マトリクスが直接的に補強される。マトリクス中に埋め込まれたマトリクス補強材が、電解質層中に存在する全量の90重量%以上を占めることで、上記の補強効果を確実に生ぜしめ、且つ空隙に配した電解質のイオン移動を妨げる確率を低下させることができる。これにより、補強材をマトリクス中に均一に配置した場合に比べても骨格構造の補強に大きく貢献し、且つイオン移動を遮蔽することがないので、変形応答特性が高く、且つ変位量の大きな屈曲駆動型のアクチュエータを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るアクチュエータの構造を図示する模式図であり、(a)は外観の模式図、(b)は高分子繊維マトリクスを有する電解質層2を拡大した模式図、(c)は多孔性高分子材料のマトリクスを有する電解質層2を拡大した模式図である。
【図2】アクチュエータの動作を図示する模式図であり、(a)は電圧を印加する前(オフ状態)、(b)は電圧を印加した後(オン状態)の図である。
【図3】(a)は、高分子繊維中に高アスペクト比のマトリクス補強材を含む電解質層、(b)は、多孔性高分子材料のマトリクス中に高アスペクト比のマトリクス補強材を含む電解質層を図示する。
【図4】本発明に係るアクチュエータを示す図であり、(a)は高アスペクト比のマトリクス補強材を含む高分子繊維電解質層、(b)は高アスペクト比のマトリクス材料を包み込む高分子繊維の一部を拡大した模式図である。
【図5】(a)は実施例1と比較例1のアクチュエータとにより得られる変位の比較を示す。(b)は実施例1と比較例1のアクチュエータとにより得られる歪みの比較を示す。
【図6】マトリクス中にマトリクス補強材が埋め込まれている様子を模式的に示す図である。
【図7】実施例1および比較例1から3のアクチュエータにより得られる歪みの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照しながら、以下に本発明を実施するための最良の形態を記載する。
【0013】
(アクチュエータの全体構成)
図1(a)のアクチュエータ1は本発明に係る電気活性高分子アクチュエータの外観を図示したものである。このアクチュエータ1は互いに向かい合う一対の電極3および13を有し、その間に電解質層2がある。
【0014】
図1(b)に示すように、電解質層2は、電解質を空隙に有する高分子材料からなるマトリクス9と、マトリクス9を補強するためのマトリクス補強材10と、を有している。電解質層中に存在する全量の90重量%以上のマトリクス補強材において、それぞれの少なくとも一部分が高分子材料のマトリクス9に埋め込まれている。
【0015】
すなわち本発明において、電解質層中に存在する全量の90重量%以上のマトリクス補強材10は、図6に示すような、少なくとも一部がマトリクスに埋め込まれた状態で存在している。これは図6のようにマトリクスからマトリクス補強材が一部露出している状態であっても良いが、マトリクス内に完全に埋めこまれて露出部分が存在しない状態でも良い。個々のマトリクス補強材においては、その全体積のうち50%以上がマトリクスに埋め込まれていることで、マトリクスへの補強効果が高まり、好ましい。50%未満、特に埋め込み部分が小さくなるほど変形時にマトリクスから剥がれ易くなり、これがイオン移動の妨げになり、好ましくない。
【0016】
また、マトリクス補強材として、炭素材料などの導電性材料を使用した場合、補強材の割合が多く、且つマトリクスからの露出が大きくなり過ぎると、導電性が顕著に高くなり、電極間でショートしてしまうことがある。このため、電極間の電気抵抗性を維持したまま、補強を達成できる程度の量のマトリクス補強材を添加するべきである。
【0017】
上記の一対の電極3、13の一端は、それぞれに接続する端子4により固定される。端子4は、配線5により外部電源6に接続されている。
【0018】
上記の一対の電極間に電位差を印加すると、電解質のイオンが電極間の連続的な通路を移動し、各電極の体積に変化が起こる。その結果、アクチュエータの電極が膨張したり、あるいは収縮したりする。
【0019】
本発明の電解質層2は、電極間にイオン拡散のための連続的な通路が存在するように、電解質、およびマトリクス補強材、および高分子材料のマトリクスを有している。
【0020】
本発明において、高分子材料のマトリクスは、電解質を空隙に配置できるように構成されている。所謂多孔質構造や高分子繊維の繊維同士が一部融着した構造などの、高分子材料が存在しない部分に空隙や空孔を有するものである。
【0021】
マトリクスの空隙は、電解質が配置され、また該空隙を利用してイオンが移動するように構成されている。すなわち、電極間のイオンの移動を容易にするために、電極間の方向に空隙の経路が複数存在するマトリクスであることが好ましく、所謂連続泡多孔質膜であったり、一部のみを融着した高分子繊維のマトリクスであったりすると良い。
【0022】
本発明のマトリクスは、その空隙に電解質を十分に保持できるように、電解質の配置前には比較的高い空隙率を有する多孔質構造であることが好ましい。
【0023】
図1(b)および(c)は、高分子材料のマトリクスがそれぞれ高分子繊維マトリクスおよび多孔性高分子材料のマトリクスである場合の、かかる電解質層を拡大した模式図を示す。
【0024】
図1(b)は、高分子繊維マトリクスを有する電解質層を拡大した模式図であり、図1(c)は、マトリクス補強材を含む多孔性高分子材料のマトリクスを有する電解質層を拡大した模式図を示す。見やすいように、模式図に電解質は示していないが、電解質層に存在することが理解される。
【0025】
図2は、本発明のイオン移動型高分子アクチュエータの動作を示す模式図であり、図2(a)は電圧を印加する前(オフ状態)、図2(b)は電圧を印加した後(オン状態)である。図には、一端が端子4により固定されるアクチュエータ1の膜厚方向の断面図、および電源6が示されている。
【0026】
一対の電極3および13間に電圧を印加すると、電極中では、電解質層2から電極へのイオン(カチオン7およびアニオン8)の移動および静電反発力などに起因する体積の変化が起こり、図2(b)に示すような屈曲運動が生じる。
【0027】
図2のアクチュエータの各層は柔軟性があり、形状は矩形である。アクチュエータは、端子4により短い方の縁端部の一方に沿って固定され、配線5の両側に電圧を印加するとアクチュエータが図2(b)に示すようにアノード側の方へ屈曲する。
【0028】
また、アクチュエータ1の電解質層および電極の配置設計を適切に選ぶことで、屈曲に加えて膨張または収縮、さらにねじれ運動も実現可能である。かかる高分子アクチュエータは、円形、卵形、三角形、四角形、円筒形、らせん形など任意の形状としてもよい。
【0029】
アクチュエータの柔軟性を得るには、イオン移動型アクチュエータの中でも高分子ゲル型高分子アクチュエータを使用すると望ましく、CNTを含むイオン液体ゲルからなるCNTゲル型アクチュエータを使用するとさらに望ましい。これを用いれば、空気中での動作が安定し、CNTのヤング率により内部応力が大きいうえ、さらに不揮発性イオン液体を使用するという利点が得られる可能性がある。
【0030】
図1(a)の高分子アクチュエータの場合、電解質層2は一対の電極3、13の間に配置され、上記の一対の電極の一端は、端子4により固定される。端子4は、配線5により電源6に接続される。
【0031】
電解質層2は、一方の電極から他方の電極への連続的な通路が存在するように、マトリクス補強材を含む高分子材料のマトリクスを含む。
【0032】
マトリクス補強材は、高分子材料のマトリクスの少なくとも一部において部分的に配向していても、または完全に配向していてもよい。
【0033】
図1(b)および図1(c)はそれぞれ、電解質層の高分子材料のマトリクスが高分子繊維マトリクスである場合、多孔性高分子材料のマトリクスである場合を図示する。
【0034】
電解質層として、電解質と、マトリクス補強材を含む高分子材料のマトリクスとを含み、高分子材料のマトリクスの多孔質構造により電極間に連続的な通路が存在するアクチュエータを提供する。すなわち、マトリクス補強材を含む骨格構造は高い機械的強度を有し、したがって外部からの衝撃、引張、押圧等の負荷に対する耐久性が高い。このため、製造中、または動作中の外部負荷による電解質層の構造の損傷が大きく抑えられる。故に、アクチュエータ構造の耐久性を向上させることができる。さらに、多孔質構造であるが故に、歪みおよび速度の面で性能が高い。
【0035】
以下に電解質層の構成について、実施形態を用いて詳細に説明する。
【0036】
(実施形態1:高分子繊維マトリクス)
図1(b)は、アクチュエータ1の電解質層2を構成する、マトリクス補強材を含む高分子材料のマトリクスを拡大した模式図である。この図において、電解質層2bは、高分子繊維マトリクス9、マトリクス補強材10および繊維間の空隙11を有していることが示されている。
【0037】
高分子繊維マトリクス9は、高分子繊維の集合体であり、融着などにより部分的に繊維同士が結合しているものである。繊維の外側は空隙となり、これがイオンの移動経路になるため、アクチュエータ内のイオン移動の効率性は高い。空隙11には、イオンの元となる電解質が配置されている。
【0038】
高分子繊維の長さは長く、直径については0.005μmから50μmまでの幅があってもよい。単位体積当たりの充填率を調整することで高分子繊維の柔軟性を制御することが可能であり、したがって比較的小さい直径が望ましく、0.01μm〜1μmの間の直径が好ましい。
【0039】
さらに、高分子繊維マトリクス9内には少なくとも部分的にマトリクス補強材10が存在する。マトリクス補強材は、好ましくは高分子繊維を構成する高分子材料より10倍高い機械的強度を持つ。本実施形態においては、電解質層に存在するマトリクス補強材のうち、少なくとも一部分がマトリクスに埋め込まれた状態で存在するマトリクス補強材は、90重量%以上、具体的には90%〜99.9%である。マトリクス補強材は、粒子または後述する高アスペクト比の炭素材料が好ましい。高アスペクト比の炭素材料としては、長軸と短軸が5:1以上のアスペクト比のものがよく、好ましくは10:1以上のものである。
【0040】
高アスペクト比の炭素材料の場合、炭素繊維ベースの材料が高い機械的強度を持つことが知られているためより好ましい。加えて、高分子繊維の伸長方向と炭素材料の長手方向が配向するように埋め込むと、高分子繊維としての特性がより向上する。マトリクス補強材は、好ましくはそれ自体の機械的強度が高い材料である。
【0041】
電解質層2に外部の力または圧力が印加されると、マトリクス補強材と高分子材料のマトリクスとの間の相互作用により、その負荷がマトリクス補強材に移動される。このため、電解質層の機械的強度が向上する。
【0042】
かかる電解質層は、アクチュエータの製造工程中、たとえばホットプレス工程(電極間に電解質層を挟むことにより高温で一定の圧力を印加する)において、あるいは製造後の動作中において外部負荷(力または圧力)に対して高い耐久性を持つ。
【0043】
ホットプレスにより作成した一部融着している高分子繊維マトリクスは、その繊維構造は強固であり、アクチュエータの製造または動作中に崩れることはない。したがって、高分子繊維の空隙率または空隙11の低下の程度がかなり小さくなる。
【0044】
電解質層2はマトリクスの空隙に電解質を含む。電極間に電圧を印加すると、対電極間での電解質の移動(アニオンまたはカチオン)のための連続的な通路が存在するため、電解質のカチオンおよびアニオンが電極3、13に向かって容易に拡散できる。
【0045】
イオンが電極間で拡散しやすいことから、歪みおよび速度の点でアクチュエータの特徴を改善することができる。
【0046】
さらに、移動効率性が低下しないように膜厚は1μm超とし、かつ500μm未満に制御すると良い。電解質層の厚さが厚くなると高強度になる一方で、薄くなると歪みおよび速度が高くなる可能性がある。
【0047】
しかしながら、こうした厚さが減少するにつれて機械的強度が低下するため、アクチュエータの製造または動作中に外部圧力による電解質層の損傷または破壊の可能性が高まることが知られている。これは、電極間が短絡する可能性を増大させる。
【0048】
本形態の電解質層は高い機械的強度を持ち、したがって耐久性が高くて薄い膜とすることができ、さらにその繊維構造によりイオン移動のための連続的な通路を得ることができる。このため、アクチュエータの大きな歪みおよび速度を実現することができる。
【0049】
本形態の高分子繊維マトリクスは、表面または内側にマトリクス補強材9を有する。さらに高分子繊維は、アクチュエータの一定の寸法に沿ってランダムでも、配向していても、あるいは部分的に配向していてもよい。機械的強度は、高分子繊維内のマトリクス補強材の配向方向を変更して調整してもよい。
【0050】
このため、配向方向により屈曲する機械的強度を自由に調整できるため、状況に応じて、アクチュエータの変位量または出力を向上させることができる。
【0051】
マトリクス補強材として、高アスペクト比の炭素材料を用いる場合、高分子繊維の長さに沿って部分的にまたは完全に配向するとよい。
【0052】
マトリクス補強材の長さが、高分子繊維の長さ寸法に沿って配向すると、高分子繊維材料の機械的強度の増大は非常に大きくなる。このような場合に、電解質層およびアクチュエータの構造耐久性は高くなる。
【0053】
電解質層はさらに、電気抵抗率が高い。好ましくは、電解質は抵抗率が10Ω・m〜1018Ω・mの間である。より好ましくは、電解質層の存在により、アクチュエータの電極間の抵抗が1kΩよりも大きな値となることである。マトリクス補強材として絶縁材料、半導体材料または導電性材料を含めて、それぞれの量を、上述の電気的特性を持つ電解質層が得られるように制御できる。
【0054】
さらに、高分子繊維は内部にイオン液体を保持していてもよく、さらに高分子繊維と高分子繊維との間の空隙にイオン液体を保持していても構わない。
【0055】
さらに、高分子繊維の断面も特に限定させるものではなく、円、卵形、四角形、多角形、半円でもよく、さらに正確な形状である必要もなく、形状は任意の部分が異なっていても構わない。
【0056】
(実施形態2:多孔性高分子のマトリクス)
図1(c)は、図1(a)のアクチュエータ1の電解質層2を拡大した模式図を示す。電解質層2aは、多孔性高分子材料のマトリクスを有する。図1(c)では、電解質層2aの空隙(細孔)、マトリクス補強材および高分子材料のマトリクスをそれぞれ11、10および12で表す。かかる高分子材料のマトリクスには多数の空隙があり、したがって電解質(アニオンおよびカチオン)が拡散しやすい。
【0057】
本実施形態の電解質層は、多くの細孔を持つ構造のマトリクスを有し、その骨格構造(マトリクス)内にマトリクス補強材を含む。本実施形態においても、電解質層に存在するマトリクス補強材のうち、少なくとも一部分がマトリクスに埋め込まれた状態で存在するマトリクス補強材は、90重量%以上、具体的には90%〜99.9%である。
【0058】
かかるマトリクス補強材は、粒子でも、または後述する高アスペクト比の炭素材料でもよい。一般に、こうした高アスペクト比の炭素材料は、機械的強度が強い。そのため、多孔性の構造体の強度は、それを骨格構造内に含ませることにより増大する。その結果、アクチュエータを繰り返し駆動しても、アクチュエータは安定して変形する。
【0059】
さらに、電解質層2の構造は製造/加工中、または加工後に崩れずに、高い耐久性を与える。アクチュエータの製造中および製造後の外部負荷による細孔および空隙の損傷は大きく抑制される。このように、高い多孔特性を有する電解質構造により得られる連続的な通路があるため、電極に電圧を印加すると、電極間のイオン拡散が良好となる。
【0060】
また、マトリクスの空隙は細胞型の閉鎖細孔であってもよいが、良好なイオン拡散のためには空隙が連結されている方が好ましい。
【0061】
電解質層の空隙率は20体積%超で90体積%未満であることが好ましい。空隙率が20体積%未満である場合、電極間の連続的な通路の体積がわずかであり、アクチュエータの変位量が大きくならない場合がある。一方、空隙率が90体積%よりも大きい場合、電解質層の強度が不十分であり、アクチュエータの製造時、または変形中に電解質層に亀裂が入ることがあり、これが電極間の短絡につながる恐れがある。この場合、空隙率は、水銀圧入法、ガス吸着法、アルキメデス法により測定可能である。
【0062】
空隙のサイズは、3mm以下で0.5nm超であることが好ましい。好ましくは、空隙のサイズは500μm以下で1nm超である。
【0063】
また、マトリクス補強材はマトリクス(高分子骨組み)の表面または内部にある。空隙サイズが500μmより大きい場合、電解質層の強度は不十分であり、変形時に電解質層に亀裂が入ることがある一方で、良好なイオン拡散のためには空隙サイズが1nm以上であるとより望ましい。または、空隙のサイズは、水銀圧入法、ガス吸着法、走査型電子顕微鏡による直接観察により測定可能である。
【0064】
さらに、電解質層は電気抵抗率が高い。好ましくは、電解質層は抵抗率が10Ω・m〜1018Ω・mである。より好ましくは、電解質層の存在により、アクチュエータの電極間の抵抗が1kΩよりも大きな値となることである。マトリクス補強材として絶縁材料、半導体材料または導電性材料を含めて、それぞれの量を、上述の電気的特性を持つ電解質層が得られるように制御してもよい。
【0065】
(マトリクス補強材)
図1(b)および図1(c)に示されるように、本発明の電解質層は、マトリクス中にマトリクス補強材が分散して配置されている。電解質層に存在するマトリクス補強材のうち、少なくとも一部分がマトリクスに埋め込まれた状態で存在するマトリクス補強材は、90重量%以上、具体的には90%〜99.99%である。残りの10重量%より少ないマトリクス補強材は、上述のマトリクスに埋め込まれなくてもよい。この場合は、マトリクスの空隙に電解質とともに配置されていてもよい。
【0066】
図6に示すように、高分子材料のマトリクスに埋め込まれている。マトリクス補強材は、図6のように高分子材料のマトリクスに部分的に包み込まれていても、または完全に包み込まれていてもよい。残りの埋め込まれていないマトリクス補強材は、マトリクスの空隙に、電解質とともにマトリクスから離れて配置されているが、これはイオンの移動に悪影響を与えるため、より少ないことが望まれる。すなわち、マトリクスに埋め込まれているマトリクス補強材の重量をAとし、マトリクスに埋め込まれずにその空隙に配置されている重量をBとすると、マトリクス中に存在する全量は、A+Bとなり、マトリクスに埋め込まれているマトリクス補強材の重量%(X)は、以下の数式のようになる。
X=A/(A+B)×100(%) ・・・(1)
すなわち本発明においては、Xが90%以上である。また電解質層中のマトリクスに埋め込まれているマトリクス補強材の重量%は100%を超えることはなく、好ましくは99.99%以下の値である。
【0067】
マトリクス補強材10は、粒子でも高アスペクト比の炭素材料でも構わない。
【0068】
マトリクス補強材が粒子である場合、どのような形状であってもよいが、粒子と高分子と間の接触領域および接着率が大きくなる形状を持つことが好ましい。さらに、マトリクス補強材が粒子である場合、粒子状材料でも、または低アスペクト比材料でもよい。粒度は、ナノスケールからマイクロスケールまでの幅があってもよい。ナノ粒子は表面積が大きく、したがって粒子と高分子との間の接触領域が大きくなり、高分子とマトリクス補強材との間の負荷移行が高まるため、粒子はナノ粒子であることが好ましい。
【0069】
また、マトリクス補強材が高アスペクト比の炭素材料である場合、アスペクト比が10より大きいと好ましい。マトリクス補強材は、高分子材料のマトリクスの方向に沿って配向していて(aligned)も、またはランダムに分散していても、あるいは高分子材料のマトリクスの方向に沿って部分的に配向していて(aligned)もよい。マトリクス補強材を含む高分子材料のマトリクスを用いれば、高い機械的強度の電解質層を得ることが可能である。マトリクス補強材の機械的強度は高分子の機械的強度よりも高いと好ましい。さらに、マトリクス補強材の機械的強度は高分子の強度の10倍以上であることが望ましい。マトリクス補強材の機械的強度は高分子材料のマトリクスの100倍以上であることが好ましい。
【0070】
また、電解質層全体としては電気抵抗率が高い必要がある。好ましくは、電解質層は抵抗率が10Ω・m〜1018Ω・mの間である。より好ましくは、電解質層の存在により、アクチュエータの電極間の抵抗が1kΩよりも大きな値となるように構成する。マトリクス補強材として絶縁材料、半導体材料または導電性材料を含めて、それぞれの量を、上記の電気的特性を持つ電解質層が得られるように制御するとよい。
【0071】
マトリクス補強材が絶縁材料または半導体材料である場合、電解質層の総重量の0.1重量%〜80重量%の間の量の材料を含めると、電解質層2を得ることができる。0.1重量%未満の値であると、高分子材料のマトリクスの機械的強度の増大に寄与しない場合があり、80重量%を超える値であると、アクチュエータの変形の際に電解質層の柔軟性に寄与しない場合がある。マトリクス補強材が導電性である場合、電解質層の0.1重量%〜30重量%を構成することが好ましい。0.1重量%未満の値であると、高分子材料のマトリクスの機械的強度の増大に寄与しない場合があり、30重量%を超える値であると、電解質層の高い電気抵抗率の維持に好ましくない。しかしながら、マトリクス補強材が絶縁材料で被覆された導電性材料である場合、電解質層に0.1重量%〜80重量%の間の値で含めてもよい。マトリクス補強材の量は0.1重量%〜20重量%であるとより好ましい。言い換えれば、マトリクス補強材の量および工程の選択により、アクチュエータの電極間の抵抗が1kΩを超えるように電解質層を設計することが好ましい。
【0072】
マトリクス補強材として使用できる材料として、SWNT(Single−Walled Carbon Nanotube)、MWNT(Multi−Walled Carbon Nanotube)、VGCF(Vapor Grown Carbon Fiber)、黒鉛ナノプレートレット、黒鉛ナノスクロールのような炭素繊維、カーボンブラック、グラフェンのような炭素材料、ナノクレイのような層状ケイ酸塩材料、シリカ材料のようなセラミック材料、ガラスビーズがあるが、これに限定されるものではない。
【0073】
以下に限定されるものではないが、その幾何形状、高い機械的強度、およびゲルへの作りかえやすさから、SWNT、MWNTおよびVGCFなどの高アスペクト比の炭素繊維の少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0074】
(電解質層)
図1のアクチュエータ1の電解質層2は、高分子材料以外にもアクチュエータの一対の電極間に電位差を印加できるものであれば、どのような材料を含ませても良い。
【0075】
柔軟性があり、高分子材料のマトリクスからなる材料が電解質層であり(換言すればこの材料は溶融状態でイオンを発生する)、積層構造を形成できると好ましい。
【0076】
高分子材料のマトリクスの電気抵抗は10Ω・m〜1018Ω・mであることが望ましい。2枚の電極間の電解質層の電気抵抗は1kΩ以上であることが好ましい。
【0077】
上記の電解質層の高分子材料のマトリクス材料を構成する材料として、イオン導電性高分子またはイオン性材料を含む非イオン導電性高分子を挙げることができる。電界の存在下で電荷がこうした材料中を移動すると、電流が流れ、イオンが電荷の運び手になる。イオン分子を受け取る部分は、局所的に膨張する。異なる極性を持つイオンが反対方向に移動するため、アクチュエータはアニオンおよびカチオンのサイズの相違により屈曲する。
【0078】
本発明では、電極および電解質層は高分子材料を含み、該高分子として、加水分解しにくく、大気中での安定性が優れているものが好ましい。
【0079】
高分子としては、たとえば、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ポリビニルイジンなどポリフッ化物系の高分子;ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのオレフィン系高分子;ポリブタジエン系化合物;エラストマーおよびゲルなどのポリウレタン系化合物、ウレタン系のもの;シリコーン系化合物;熱可塑性ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタラートを挙げることができる。上記の高分子を1種または複数使用してもよく、上述以外の高分子を使用しても構わない。
【0080】
(電解質)
アクチュエータを空気中で駆動する際に、イオン性材料は比較的長い寿命でイオン液体として存在することが好ましい。本明細書では、周囲雰囲気で塩の溶融または融解状態をイオン液体といい、たとえば、室温を含め0℃〜40℃の範囲の広範な温度で溶融状態にある塩を含む。
【0081】
さらに、高イオン伝導性のためには、イオン伝導の高いイオン液体が好ましい。所望の温度範囲で液体として安定である塩はより好ましいものであるが、よく知られた様々な塩をイオン液体として使用してもよい。好適なイオン液体として、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩およびホスホニウム塩、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0082】
また、フッ化リチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸銅、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどのイオン性材料を含んでもよい。
【0083】
(電極の構成)
2枚の電極の材料組成は、異なっても、または同じでもよい。
【0084】
電極3、13は、電気伝導性を有する高分子材料で形成されるとよい。電気伝導性を有する高分子材料は、導電性高分子および導電体を含む複合高分子を含む。
【0085】
アクチュエータの性能に悪影響を及ばさない限り、電極材料としてどのような材料を含めてもよい。柔軟電極を得るための材料としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、およびケッチェンブラック、カーボンウィスカー、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブおよびカーボンマイクロコイルなどの様々な炭素材料、金属(白金、パラジウム、ルテニウムおよび銀、鉄、コバルト、ニッケル、銅、インジウム、イリジウム、チタンおよびアルミニウムなど)粉末(微粒子)、金属化合物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化第二スズおよびITOなど)、金属繊維、導電性セラミックス材料および導電性高分子材料などが挙げられる。電極は、その種の化合物の1つとしてこれらの導電性材料を含む。
【0086】
本発明の導電体としては、電気伝導性および比表面積の観点からナノ構造を持つ炭素材料がより望ましく、最も好ましくはカーボンナノチューブ(CNT)材料である。また、カーボンナノチューブおよびイオン液体を含むCNTゲルは、イオン液体を含むCNTが自己組織化したゲルであり、イオン液体は、CNTの分散効果を助ける。したがって、CNTイオン液体ゲルは、電極材料の候補として非常に好ましい。
【0087】
この場合に限定されるものではないが、加水分解しにくい材料を含めると望ましく、電極3、13に含めるそうした高分子は、周囲雰囲気で安定であり、アクチュエータの安定動作を可能にする。
【0088】
かかる高分子として、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン系高分子;ポリスチレン;ポリイミド;ポリパラフェニレンオキシド、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)およびポリパラフェニレンスルフィドなどのポリアニリン(芳香族系が結合した高分子);あるいはポリテトラフルオロエチレンおよびフッ化ポリビニリデンなどのフッ素系物質を含む高分子にスルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基、スルホニウムラジカル、アンモニウムラジカルおよびピリジニウムラジカルなどの官能基を導入したもの;フッ素系ポリブタジエン系化合物を含む高分子の骨組みにスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホニウムラジカル、アンモニウムラジカルおよびピリジニウムラジカルなどを導入するパーフルロスルホン酸高分子、パーフルロカルボン酸高分子およびパーフルオロリン酸高分子など;エラストマーおよびゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタラート;ナイロンがあり;ポリアリレートなどを含めてもよい。
【0089】
さらに、導電性である高分子を使用してもよく、たとえば、この種の高分子にポリアニリン、ポリピロール(polypyrole)、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびポリフェニレンなどを含めてもよいが、これらに限定されるものではない。上記の高分子、コポリマーおよび機能性高分子の1種または複数種の使用が可能であるが、これらの高分子に限定されるものではなく、他の高分子を使用してもよい。
【0090】
さらに、上記の2種以上の導体および/または上記の2種以上の高分子を組み合わせることも可能である。
【0091】
また、上記の導電性高分子材料および導体を組み合わせて、それを使用することも可能である。
【0092】
さらに、こうした電極材料を形成する際に、後で記載される電解質を含めてもよい。
【0093】
また電極は、メッキ、蒸着およびスパッタリングなどにより薄い金属膜として作製することができる。かかる電極を電解質層に接して直接形成する場合、電極は、電気導電性材料のみで形成されると考えられる。
【0094】
フッ化ポリビニルイジンのコポリマーとイオン液体との混合物を含むカーボンナノチューブをゲルとして含む材料をアクチュエータの電極として使用することが特に好ましい。また、電解質層の両側の2枚のアクチュエータ電極は、同じ材料から作製されても、または異なる材料から作製されてもよい。
【0095】
また、アクチュエータの電極の接着を良好にするため、アクチュエータの電極に使用される高分子材料を電解質層2のマトリクス材料として使用することも望ましい。
【0096】
(アクチュエータの製造方法)
以下に、本発明のアクチュエータの製造方法を説明する。
【0097】
(高分子繊維マトリクスの製造方法)
まず、高分子繊維の製造方法について説明する。
【0098】
本製造方法では、マトリクス補強材11を含む高分子繊維体9が一方向に沿って完全に配向する部分を少なくとも有するものが製造される。
【0099】
高分子繊維の製造方法として、エレクトロスピニング法、ポリマーブレンド紡糸、メルトブロー紡糸およびフラッシュ紡糸を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0100】
エレクトロスピニング法は、様々な高分子の繊維形状、配向および直径の制御、ならびにナノサイズ直径繊維の作製に使用することができるので望ましい。
【0101】
エレクトロスピニング法による高分子繊維の製造工程は、高圧電源、高分子溶液/貯蔵タンク、紡糸口金およびアースされたコレクターを使用する。高分子溶液は、タンクから紡糸口金まで一定の流速で供給される。紡糸口金には1〜50kVの電圧が印加されているため、液滴が荷電される。静電反発力が表面張力に対抗し、高分子の液滴が引っ張られ、高分子溶液のジェットがコレクターに向けて噴射される。ジェットの溶媒は揮発し、その後コレクターに到着する際には、ジェットのサイズはナノレベルまで減少し、コレクターに高分子繊維の集合体が形成される。また、高分子溶液の代わりに、融点より高い温度で加熱した溶融高分子を使用してもよい。
【0102】
紡糸口金に供給される高分子溶液の溶液形態にマトリクス補強材を含めると良いが、高分子溶液のジェットが回収されている間にコレクターに噴霧しても、マトリクス補強材を高分子繊維に埋め込むことができる。マトリクス中に90%以上のマトリクス補強材を埋め込むには、後述するホットプレス処理を行うとより好適に実施できる。高分子溶液中の分散性を改善するため、マトリクス補強材は、エレクトロスピニング(electrospining)用の高分子溶液に加える前に、乳棒・乳鉢を用いて粉々に砕いてもよいし、または超音波処理のような湿式法またはボールミルまたはローラーミルを用いて溶液としてもよい。
【0103】
また、配向した繊維膜は、回転ドラムをコレクターとして使用することにより得ることができる。さらに、配向の制御については、公知のエレクトロスピニングの技法を用いることができる。前述のように、アクチュエータの屈曲能力および出力は、アクチュエータ内の高分子繊維の配向方向によって制御できる。
【0104】
(多孔性高分子材料のマトリクスの製造方法)
本発明の、多孔性高分子材料のマトリクスの製造方法は、従来の高分子抽出法、溶媒抽出法、照射エッチング法、発泡法、拡張法を用いることができ、またこれに限定されるものではない。
【0105】
高分子抽出法を使用する場合、少なくとも2種類の高分子をブレンドし、ミクロ分離構造の高分子膜を得る。換言すれば、最初に2種類の高分子をブレンドし、スピンコーティング法またはキャスト法により高分子膜を形成する。その後、溶媒中の高分子の熱分解または溶解度の違いを用いて不連続相の高分子成分を除去し、ミクロ分離構造を形成する。
【0106】
得られる最終構造は、細孔特性を有する構造を持つ。高分子抽出法による、細孔特性を有する構造の作製に使用できる高分子として、ポリアミド、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、ポリカルボナート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどがあるが、これに限定されるものではない。また、3種類以上の高分子を混合して使用してもよい。
【0107】
また、マトリクス補強材が埋め込まれた多孔質高分子マトリクスの膜を得る方法には、高分子抽出法または溶媒抽出法の使用中にマトリクス補強材を高分子溶液中に分散する方法があるが、これに限定されるものではない。マトリクス補強材はある高分子中に最初に分散させ、次にこの高分子とマトリクス補強材との溶液を別の高分子とブレンドし、続いて高分子抽出法を用いて上記のマトリクスを得てもよい。
【0108】
溶媒抽出法を用いて相溶性溶媒を含む高分子膜を得てから、これを非相溶性溶媒に浸漬してもよい。使用する2つの溶媒については相互に相溶性がある。高分子膜を浸漬すると、高分子と相溶性がある溶媒に抽出され、高分子膜を浸漬する溶媒に置換される。その結果、多くの細孔を持つ高分子膜が作製される。相互に相溶性のある溶媒、および高分子と相溶性および非相溶性の溶媒の組み合わせは、特に高分子に限定されるものではない。
【0109】
マトリクス補強材を含み、多くの細孔を持つ高分子膜を得るには、相溶性溶媒に高分子とマトリクス補強材とが分散した膜を作成し、高分子およびマトリクス補強材のいずれとも非相溶性の溶媒に浸漬してもよい。その結果、マトリクス補強材を含み、多くの細孔構造を持つ高分子膜が得られる。
【0110】
照射エッチング法では、発泡剤を含む高分子膜に、膜を貫通し細孔を形成する高エネルギーイオンビームまたは中性子ビームまたはレーザーを照射する。発泡剤を含む高分子が加熱されることで細孔を形成する。
【0111】
拡張法は、高分子膜に剪断ストロークを与えることで微小繊維構造を持つ細孔を形成する方法である。
【0112】
上記した方法の1つまたは複数を用いて、多くの細孔を持つ高分子膜を形成すると良い。
【0113】
(電極の製造方法)
特に制限がない場合、電極は、たとえば導電材料およびイオン液体および高分子からなる。高分子は融点を超えると融解し、次いで導電材料、イオン液体および高分子は1つの溶液に混合される。かかる溶液は、流し込みおよび成形というよく知られた様々な技法により注入して成形してから、加熱して溶媒を蒸発させる。
【0114】
好適な溶媒に高分子を溶解させた後に、溶媒を除去する方法では、イオン液体および溶媒に、テトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran)、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド(DMAc:dimethyl acetamide)を使用することができる。
【0115】
さらに、電極は、電解質層2と同様の高分子繊維からなってもよい。高分子繊維からなる電極の製造方法では、上述した電解質層2の高分子繊維の製造工程において導電材料を加え、類似の手法を用いて導電性の高分子繊維電極を得るべきである。
【0116】
(電解質層および電極の接合方法)
得られた電解質層および電極は任意の形状およびサイズに切断し積層配置する。高分子アクチュエータ1を形成する方法として、電解質層2の両側に電極3、13を積層配置する好適な方法は熱圧着(ホットプレス)方法であるが、かかる方法に限定されるものではない。
【0117】
アクチュエータを構成する高分子、高分子バインダー、イオン種の温度、プレス圧力および加熱プレス時間を適切に選択し、それぞれの成分の解離温度未満で行われるようにすればよい。
【0118】
2つの電極間に電解質層を挟み、両電極間を熱圧着する。たとえば、熱圧着時の温度は30℃〜150℃の間で設定されると良い。より好ましくは、温度は110℃±5℃の範囲に設定されることが望ましい。さらに、プレス圧力は1kg/cm〜100kg/cmであると望ましく、10kg/cm〜50kg/cmであるとより望ましい。
【0119】
また、薄い金属層を形成する方法は、電解質層2の表面への電気メッキ、蒸着およびスパッタリングなどであってもよい。
【0120】
上記のように積層配置したアクチュエータ1を、水、イオン導電材料、イオン液体またはこれらの混合物に含浸させても良い。この場合、含浸させる溶液の密度、含浸させる時間は、よく知られた方法を用いて決定してよく、特に限定されない。
【0121】
また、配向した高分子繊維の電極および/または電解質層を使用する場合、連結したときのそれぞれの高分子繊維の配向方向を考慮して設計し、高分子アクチュエータの変位量または発生力が向上させることができる。
【0122】
(アクチュエータの駆動について)
駆動電源6は、電気活性高分子アクチュエータ1の電極間に電圧または電流を印加し、電位差を印加する。入力極性、波パターンは、図1に示していない制御ユニットによる値、時間によって制御され、その電気信号は電気活性アクチュエータの撓み運動を制御することができる。
【0123】
上記の一対の電極間に電位差を印加すると、電解質のイオンが電極間の連続的な通路を移動し、各電極の体積に変化が起こる。その結果、アクチュエータの膨張または収縮運動が起こる。たとえば、イオン液体中のアニオンおよびカチオンはそれぞれ、プラス極およびマイナス極に引き付けられる。イオン液体に含まれるアニオンおよびカチオンのサイズについては通常、異なる電極間の体積差を引き起こす原因となる。
【0124】
かかる電極の形状/体積に変化が起こると、電気活性アクチュエータが屈曲したり、あるいは撓んだりする。
【0125】
さらに、印加される電圧および電流の値を制御することにより電気活性アクチュエータの撓み運動の変位量および速度を制御できる。さらに、極性の方向を変えることで撓み運動の方向も制御することができる。
【0126】
駆動電源6は、DC電圧(電流)またはVAC(交流電流)を電気活性アクチュエータ1に印加する。線形掃引、方形波および正弦波、パルス波など任意の波形パターンおよび電圧(あるいは電流)の振幅を制御することができる。また、波形パターンのデューティサイクルも任意に設定できる。
【0127】
イオン液体を使用する場合、印加電圧は、イオン液体の電位窓を超えず、電気分解により起こる劣化を抑えられる範囲とする。一般的なイオン液体を使用する場合、印加電圧は4V以下であるとより好ましい。
【0128】
(第3の実施形態:高アスペクト比のマトリクス補強材)
図3は、本実施形態のアクチュエータ1の電解質層の模式図を示す。高分子繊維マトリクス2cおよび多孔性高分子材料のマトリクス2dは、その中に高アスペクト比のマトリクス補強材13を含む。見やすいように、電解質は示していないが、図3の電解質層に存在することが理解される。
【0129】
高アスペクト比の炭素材料は、ランダムでも、ある方向に沿って部分的に配向していても、あるいは完全に配向していてもよい。
【0130】
高アスペクト比の炭素材料が高分子材料のマトリクスにランダムに分散している場合を図3に示す。また、高アスペクト比の炭素材料は、高分子材料のマトリクスに部分的に包み込まれていても、または完全に包み込まれていてもよい。高アスペクト比のマトリクス補強材を含む高分子繊維および多孔性高分子材料のマトリクスをそれぞれ図3(a)および図3(b)に図示する。高アスペクト比の炭素材料は、短尺に対して十分に長い長尺を有しており、円柱状の場合、直径に対して十分に長い長さを持つ。
【0131】
直径は0.1nmより長くて50μmより小さく、長尺方向の長さは、直径の10倍以上である。
【0132】
高アスペクト比の炭素材料として、VGCF、MWNTおよびSWNTのような炭素繊維材料があるが、これに限定されるものではない。一般にこうした繊維形状の炭素材料は機械的強度が強く、密度が低い。こうした材料の幾何形状は、高分子材料のマトリクスとマトリクス補強材との間の効率的な負荷移行に役立つ。こうした材料の機械的強度は非常に高い。たとえばSWNTの引張強さはGPaオーダーである。このため、高分子材料のマトリクス中のかかる材料は少ない重量%で電解質層の機械的強度を高めることができる。
【0133】
炭素繊維材料の電気的特性は構造に依存することが知られている。たとえばカーボンナノチューブ(CNT)材料の場合、電気的特性は、チューブのキラリティーによって半導体材料から金属材料までの幅がある。
【0134】
高アスペクト比の炭素材料が絶縁体または半導体または絶縁材で被覆された導電性体である場合、電解質層のマトリクス補強材として80重量%未満の量を使用してもよい。高アスペクト比の炭素材料が導電性である場合、高分子材料のマトリクスには30重量%未満の量のマトリクス補強材を含めてもよい。より好ましくは、電解質層には20重量%未満の量のマトリクス補強材を含めてもよい。換言すれば、マトリクス補強材の量は上記の範囲から選択すればよく、適切な工程を選択して高抵抗の電解質層を得る。かかる電解質層は、ホットプレスのようなアクチュエータの製造工程における(たとえば高温で圧力を印加して電極を電解質層と連結するとき)またはアクチュエータ動作中における外部の力または圧力に対する耐久性が高い。電解質層の構造は、加工/製造中または加工後に崩れない。したがって、アクチュエータの製造およびアクチュエータの動作中の外部負荷による高分子繊維の空隙率、すなわち繊維と繊維の間の空隙11(図3(a)の2c)または多孔性高分子構造の空隙11(図3(b)の2d)の損傷リスクは大きく低下する。
【0135】
また、こうした高アスペクト比の炭素材料を含むゲルは形成しやすい。電解質層2は電解質を含む。一対の電極間に電圧を印加すると、電極間の電解質の移動(アニオンまたはカチオン)のための連続的な通路が存在するため、電解質のカチオンおよびアニオンは電極の方に容易に拡散できる。電極間でイオンが拡散しやすいため、歪みおよび速度の面でアクチュエータの特徴を向上させることが可能になる。
【0136】
図4(a)のアクチュエータ1は、高アスペクト比のマトリクス補強材を含む高分子繊維電解質層を有する、第3の実施形態による電気活性高分子アクチュエータを図示する。
【0137】
電解質層の高アスペクト比の炭素材料はさらに、高分子材料のマトリクスに包み込まれている。図4(b)は、高アスペクト比の炭素材料を包み込む高分子繊維を含む電解質層2の一部を拡大した模式図である。高分子と高アスペクト比の炭素材料との間の接触領域は、高分子材料のマトリクス内にマトリクス補強材が完全に包み込まれているため大きくなる。
【0138】
このため、マトリクス補強材と高分子繊維体との、または多孔性高分子材料のマトリクスの場合、マトリクス補強材と高分子骨組みとの間の接着に利用できる表面積が比較的大きく、高分子とマトリクス補強材との間の負荷移行がより効率的である。このため、外部負荷に対して高い耐久性を持つ電解質層が得られる。かかる高分子繊維または多孔性高分子構造の電解質層は耐久性が高いうえ、さらにアクチュエータを駆動すると、イオン移動のための連続的な通路となる空隙および細孔が多いという特徴がある。
【0139】
また、高アスペクト比の炭素材料が高分子繊維の長さに沿って配向する場合、得られる構造は、機械的強度が極めて高い。かかる電解質層構造は耐久性が非常に高い。
【0140】
この点で好ましいマトリクス補強材として、導電性SWNT、MWNTおよびVGCFのような炭素繊維ベースの材料があるが、これに限定されるものではない。こうした材料は、GPaオーダーの高い引張強さを持つことが知られている。こうした材料を少量加えると、高分子材料のマトリクスの機械的強度が向上する。
【実施例】
【0141】
以下に本発明の実施例について説明する。
【0142】
また、本発明のアクチュエータの性能を、従来の高分子ゲル電解質を用いたアクチュエータと比較した。
【0143】
(実施例1)
本実施例では、VGCFをマトリクス補強材として含む高分子繊維(高分子−VGCF繊維)を電解質層のマトリクスとして使用した。
【0144】
高分子−VGCF繊維は、実施形態1に記載したエレクトロスピニング工程により合成した。具体的には、3重量%VGCF NMP溶液2c.cを800mgのPVDF−HFP(高分子材料)および2mgのBMIBF(イオン液体)溶液と混合し、0.1cc/時間の速度で紡糸口金に送り、22kVの電圧を印加してコレクターに高分子−VGCF繊維を得た。
【0145】
また、上記溶媒中で上記高分子材料、上記イオン液体と共にCNTを混合し、ボールミルを行った後、型に流し込み、約110℃で加熱して溶媒を蒸発させることによりCNTゲル電極の膜を作成した。得られたCNTゲル電極は、真空下で24時間維持した。
【0146】
一対のCNTゲル電極間に上記で作成した電解質層を挟んで、圧力0.5KN、110℃で1分間のホットプレス工程によりアクチュエータを作製した。
【0147】
(比較例1)
比較例1として、先行技術文献1を参照して高分子ゲル電解質層を作製した。実施例1と同様に、ホットプレス条件で同じ一対の電極の間に高分子ゲル電解質層を挟んでアクチュエータを作製した。電解質層を除いて、アクチュエータも成分および寸法はすべて同じものとした。
【0148】
(比較例2)
比較例2として、電解質層を比較例1と同様の高分子ゲル電解質層を作成する際に、VGCFを実施例1と同じ量添加した電解質層を作成した。観察された断面のSEM画像では、イオンの移動経路となる空隙はほとんど観測できなかった。
【0149】
(比較例3)
マトリクス補強材の効果を確認するために、実施例1の電解質層に使用した高分子繊維の代わりに、VGCFを含まない高分子繊維を作成し、実施例1と同様にアクチュエータを作成した。観察された断面のSEM画像では、電極との界面で繊維が潰れ薄い膜が形成されていた。
【0150】
(評価)
歪み(発生した変位)および速度からアクチュエータの性能を比較した。
【0151】
図5(a)および5(b)は、実施例1のアクチュエータにより発生した変位および歪みと、比較例1のアクチュエータにより発生した変位および歪みとを比較したものを示す。
【0152】
これらのアクチュエータは同一条件下で調製し、同じ電極を有する。
【0153】
アクチュエータの寸法は幅1mm、長さ12mm、アクチュエータの厚さは150〜200μmであった。1枚の電極の厚さは、60〜70μmであった。電解質層の厚さは25〜50μmであった。
【0154】
また、2つのアクチュエータ間に生じた歪みの差を、以下の式(2)を用いて比較した。
ε=2dδ/(L+δ) ・・・式(2)
式中、εはアクチュエータに生じた歪、Lは自由長、dはアクチュエータの厚さ、δはアクチュエータに発生した屈曲による変位である。
【0155】
歪みεはアクチュエータの動作特性を示すパラメータであり、歪みεが大きいほどアクチュエータの動作特性は高いと判断することができる。
【0156】
大きさ1Vの周期電圧を周波数0.01Hz、0.1Hz、1Hzおよび10Hzで印加し、レーザー変位計を用いて各アクチュエータにより発生した変位を記録した。
【0157】
次いで式(2)を用いて変位を歪みに変換した。
【0158】
実施例1のアクチュエータにより発生した変位および歪みは、比較例1より大きいことが見て取れる。
【0159】
また、比較例1のアクチュエータと実施例1のアクチュエータとにより発生した変位の差は、印加電圧の周波数の増加と共に大きくなる。
【0160】
図5(b)では、0.01Hzの低周波数での歪みがほぼ同じである。その理由は、CNTゲル電極に充放電できる時間が長くイオンの拡散の影響が小さいことに起因する。
【0161】
一方、周波数が増加すると、アクチュエータの性能は、イオンの拡散効率により大きく影響される。この点で、本発明の電解質層は、従来のゲル電解質層よりもイオン拡散特性に優れていることがわかる。
【0162】
多くの空隙および細孔を有する繊維構造は、イオンの拡散のための連続的な通路となる。こうした結果から、本発明に係るアクチュエータは、歪みおよび速度の能力が増大していることが示唆される。
【0163】
図7に、実施例1、比較例1から3のアクチュエータの式(2)から求めた歪量(ε)の比較の結果を示す。図7の結果から、本実施例のアクチュエータは、マトリクス補強材の存在によって歪量が向上することが確認された。
【0164】
また、これらのアクチュエータの断面の画像を、走査型電子顕微鏡(SEM)により得た(不図示)。
【0165】
実施例1の電解質層の断面画像は、多くの空隙を含む繊維状構造が潰れることなく維持されており、繊維の平均直径は200〜500nmであった。また、ほぼ全ての(99%)VGCFが繊維状構造内に埋め込まれていた。
【0166】
また、後述する比較例3のような電極と電解質層の界面での繊維状構造の潰れも少なかった。
【0167】
一方、比較例1の構造は空隙のないバルク構造であった。
【0168】
また比較例2の構造は、比較例1と同様空隙のないバルク構造であった。
【0169】
また、比較例3の構造は、電解質層は比較的空隙を含む繊維状構造を有していたが、電極と電解質層の界面付近において顕著な繊維の潰れが生じており、電極と電解質層の界面に比較例1および2と同様なバルク構造の薄膜が形成されていた。
【0170】
また、比較例3において、電解質層の繊維状構造が電極との界面で潰れないよう、ホットプレス時の圧力を小さくした場合は、電極と電解質層の接着性が十分ではなく、数回の駆動で剥がれてしまった。このため、安定動作するアクチュエータを形成するためには、十分なホットプレス時の加圧が必要であり、繊維状構造の潰れを抑制することは困難であった。
【0171】
これから、本実施例のアクチュエータは、マトリクス補強材の存在ゆえに、ホットプレス等の製造工程において、電解質層の多孔構造を維持することが可能であった。該多孔構造が一対の電極間を連通するイオンの通路として機能することから、イオンの拡散性を高め、アクチュエータの特性の向上、特に高周波数側での特性の向上が可能であった。また、電解質層中の90%以上のVGCFがマトリクスに埋め込まれていることにより、変形応答特性が高く、且つ変位量の大きな屈曲駆動型のアクチュエータを提供することができる。
【符号の説明】
【0172】
1 電気活性高分子アクチュエータ
2 電解質層
3、13 電極
4 端子
5 配線
6 電源
7 カチオン
8 アニオン
9 高分子繊維
10 マトリクス補強材
11 繊維間の空隙
12 多孔性高分子材料のマトリクス
13 高アスペクト比の炭素材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、該一対の電極間に配置された電解質層と、を有し、該一対の電極間に電圧が印加されることにより変形するアクチュエータであって、前記電解質層が、電解質と、該電解質を空隙に有する高分子材料のマトリクスと、該マトリクス中に分散された、該マトリクスを補強するためのマトリクス補強材と、を有し、該電解質層中の90重量%以上の該マトリクス補強材において、それぞれの少なくとも一部分が前記マトリクスに埋め込まれているアクチュエータ。
【請求項2】
前記マトリクスが、高分子繊維の繊維同士の一部が融着した構造を有している請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記マトリクス補強材は、マトリクス内にその全体積の50%以上が埋め込まれている請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記マトリクス補強材が、高アスペクト比の炭素材料である請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記高アスペクト比の炭素材料は、VGCF、SWNTおよびMWNTから選択される少なくとも一種である請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記電極の少なくとも一方は、CNTゲルを含む請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
一対の電極と、該一対の電極間に配置された電解質層と、を有し、該一対の電極間に電圧が印加されることにより変形するアクチュエータの製造方法であって、
マトリクスの材料となる高分子材料と、該マトリクスを補強するためのマトリクス補強材と、を有する電解質層を作成する工程、
2つの電極間に該電解質層を挟み、両電極間を熱圧着する工程、
を有することを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項8】
前記マトリクスが、前記マトリクス補強材となる炭素材料が埋め込まれた高分子繊維である請求項7に記載のアクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38956(P2013−38956A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173940(P2011−173940)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】