説明

アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置

【課題】振動系を有する基体上に導体パターンを設けた構成において、光反射面の静的なたわみを低減することができるアクチュエーター、光スキャナー、および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】静的なたわみを低減することができるアクチュエーターは、揺動軸まわりに揺動可能な可動部、前記可動部から延出する連結部、および連結部を支持する支持部、を含む基体と、光反射面を有する光反射部、および前記光反射部から延出し前記可動部に固定される固定部、を含むミラー保持体と、前記可動部に設けられるコイルと、前記コイルに作用する磁界を発生する磁石とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によりシリコン基板を加工して形成された捩り振動子を有する構造体を用いたアクチュエーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなアクチュエーターは、例えば、プリンターやディスプレイ等において、光を走査する光スキャナーとして用いられる。
例えば、特許文献1に記載されたアクチュエーターは、平板状の可動部と、可動部を揺動可能に支持する1対のトーションバーとを有する。そして、かかるアクチュエーターは、可動部に設けられた平面コイルと、固定配置された永久磁石とを有し、平面コイルおよび永久磁石の相互の磁界の作用により可動部を回動させる。
【0003】
このようなアクチュエーターにおいては、平面コイルと可動部との間の電気的絶縁のため、平面コイルが絶縁層を介して可動部上に配置される。
また、可動部および1対のトーションバーを有する構造体は、シリコン基板をエッチングすることにより形成される。
かかる構造体には、光反射面が設けられる。これにより、平面コイルと光反射面は、同一の基板上に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−322227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、光反射面とコイルが同一の基板に形成されると、絶縁膜、及び、コイルに生じる応力により、基材に静的なたわみが発生し、同一基材上に形成された光反射面が同様にたわんでしまうという問題があった。
本発明の目的は、振動系を有する基体上に導体パターンを設けた構成において、光反射面の静的なたわみを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエーターは、揺動軸まわりに揺動可能な可動部、前記可動部から延出する連結部、および連結部を支持する支持部、を含む基体と、光反射面を有する光反射部、および前記光反射部から延出し前記可動部に固定される固定部、を含むミラー保持体と、前記可動部に設けられるコイルと、前記コイルに作用する磁界を発生する磁石と、を備えることを特徴とする。
このようなアクチュエーターによれば、光反射面を有する光反射部と可動部が別の基体から形成される。従って、光反射面の静的なたわみを低減することができるアクチュエーターを提供できる。
【0007】
上記記載のアクチュエーターにおいて、前記光反射部と前記固定部とは一体に形成されていることが好ましい。
これにより、前記光反射部と前記固定部の位置の合わせ精度を高くすることが出来るとともに、容易に作製することができる。
【0008】
本発明の光スキャナーは、揺動軸まわりに揺動可能な可動部、前記可動部から延出する連結部、および連結部を支持する支持部、を含む基体と、光反射面を有する光反射部、および前記光反射部から延出し前記可動部に固定される固定部、を含むミラー保持体と、前記可動部に設けられるコイルと、前記コイルに作用する磁界を発生する磁石とを備えることを特徴とする。
これにより、安価で、優れた振動特性を有する光スキャナーを提供することが出来る。
【0009】
本発明の画像形成装置は、光を出射する光源と、前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、前記光スキャナーは、揺動軸まわりに揺動可能な可動部、前記可動部から延出する連結部、および連結部を支持する支持部、を含む基体と、光反射面を有する光反射部、および前記光反射部から延出し前記可動部に固定される固定部、を含むミラー保持体と、前記可動部に設けられるコイルと、前記コイルに作用する磁界を発生する磁石と、を備えることを特徴とする。
これにより、安価で、信頼性に優れる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す光スキャナーに備えられた基体(可動部、支持部および1対の連結部を備える構造体)を示す平面図(下面図)である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)である。
【図5】図4中のA−A線断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)である。
【図7】本発明の画像形成装置の実施形態(プロジェクター)を示す概略図である。
【図8】本発明の画像形成装置の実施形態(ヘッドアップディスプレイ)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のアクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、本発明のアクチュエーターを光スキャナーに適用した場合を例に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の光スキャナーの第1実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図1に示す光スキャナーに備えられた基体(可動部、支持部および1対の弾性部を備える構造体)を示す平面図(下面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0013】
図1に示すように、光スキャナー1は、振動系を含む板状の基体2と、基体2を支持する支持体3と、光反射面を有するミラー保持体4と、基体2の振動系を振動させる駆動手段5とを有する。
また、基体2は、可動部(可動板)21と、可動部21に連結する1対の連結部23、24と、1対の連結部23、24とを支持する支持部22とを有している。支持部22は連結部23、24を介して可動部21を支持しているとも言え、1対の連結部23、24は可動部21と支持部22とを連結しているとも言える。
さらに、ミラー保持体4は、光反射面411が設けられた光反射部41と、光反射部から延び出し、可動部21に固定される固定部42とを有している。可動部21は、固定部42を介して光反射部41を支持しているとも言える。
このような光スキャナー1では、駆動手段5の駆動力により、各連結部23、24を捩り変形させながら、可動部21を連結部23、24に沿った所定の軸(いわゆる回動中心軸)まわりに回動させる。これにより、光反射部411で反射した光を所定の一方向に走査することができる。
【0014】
以下、光スキャナー1を構成する各部を順次詳細に説明する。
[基体]
基体2は、前述したように、可動部21と、可動部21を支持する支持部22と、可動部21と支持部22とを連結する1対の連結部23、24とを有する。
【0015】
このような基体2は、シリコンで構成されており、可動部21、支持部22および連結部23、24が一体的に形成されている。
【0016】
シリコンは軽量かつSUSなみの剛性を有するため、基体2がシリコンで構成されていることにより、優れた振動特性を有する基体2が得られる。また、シリコンは後述するようにエッチングにより高精度な寸法精度で加工が可能であるので、シリコン基板を用いて基体2を形成することにより、所望の形状(所望の振動特性)を有する基体2を得ることができる。シリコン基板としては、一般的に単結晶シリコン基板が用いられる。
【0017】
以下、基体2についてさらに詳述する。
支持部22は、図1に示すように、枠状をなしている。より具体的には、支持部22は、四角環状をなしている。なお、支持部22の形状としては、1対の連結部23、24を介して可動部21を支持することができれば、特に限定されず、例えば、各連結部23、24に対応して分割された形状をなしていてもよい。
【0018】
このような支持部22の内側には、可動部21が設けられている。
可動部21は、板状をなしている。また、本実施形態では、可動部21は、平面視にて、四角形(本実施形態では正方形)をなしている。なお、可動部21の平面視形状は、四角形に限定されず、例えば、十字形状、五角形、六角形等の他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。
【0019】
各連結部23、24は、後述の回動中心軸Xに沿って長い長手形状をなしており、弾性変形可能に構成されている。また、連結部23および連結部24は、可動部21を介して対向している。このような連結部23、24は、それぞれ、可動部21を支持部22に対して回動可能とするように、可動部21と支持部22とを連結している。1対の連結部23、24は、回動中心軸Xに沿って同軸的に設けられており、この回動中心軸Xを回動中心軸として、可動部21が支持部22に対して回動する。
【0020】
また、各連結部23、24は、その横断面形状が四角形をなしている。本実施形態では、各連結部23、24は、基体2の板面に沿って互いに平行な上面および下面と、この上面および下面に対して垂直でかつ互いに平行な1対の側面とを有する。なお、各連結部23、24の横断面形状は、これに限定されず、例えば、台形をなしていてもよいし、平行四辺形をなしていてもよい。また、各連結部23、24は、互いに平行な複数の梁部材で構成されていてもよい。
【0021】
また、基体2の上面(一方の板面)上には、絶縁層711が設けられ、一方、基体2の下面(他方の板面)上には、絶縁層712が設けられている。そして、絶縁層711の基体2とは反対側の面上には、コイル51、配線72、74および電極73、75で構成された導体パターン8が設けられている。なお、コイル51、配線72、74および電極73、75については、駆動手段5の説明において詳述する。また、図1、3、4、6では、説明の便宜上、絶縁層711、712の図示を省略している。
また、絶縁層711、712の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、例えば、10nm以上1500nm以下程度である。
【0022】
コイル51の形成される面は、絶縁層712の基体2とは反対側の面上に限定されず、絶縁層711の基体2とは反対側の面上であってもよい。
[ミラー保持体]
ミラー保持体4は、前述したように、光反射面411が設けられた光反射部41と、光反射部から延び出し、可動部21に固定される固定部42とを有する。
【0023】
このようなミラー保持体4は、基体2と同様に、シリコンで構成されており、光反射部41と固定部42が一体的に形成されている。
【0024】
シリコンは軽量かつSUSなみの剛性を有するため、ミラー保持体4がシリコンで構成されていることにより、優れた平坦性を有するミラー保持体4が得られる。また、シリコンは後述するようにエッチングにより高精度な寸法精度で加工が可能であるので、シリコン基板を用いてミラー保持体4を形成することにより、所望の形状を有するミラー保持体4を得ることができる。シリコン基板としては、一般的に単結晶シリコン基板が用いられる。
【0025】
以下、ミラー保持体4についてさらに詳述する。
光反射部41は、図1に示すように、板状をなしている。また、本実施形態では、光反射部41は、平面視にて、円形をなしている。なお、光反射部41の平面視形状は、円形に限定されず、例えば、四角形、十字形状、五角形、六角形等の他の多角形、楕円形等であってもよい。
【0026】
このような光反射部41の上面には、光反射面411が設けられている。光反射面411は、例えば面上に金、銀、アルミニウムなどの金属膜を蒸着法などによって成膜し、光反射性を備える面に形成されている。
【0027】
さらに、光反射部41の下面には、固定部42が設けられている。
固定部42は、板状を成している。また、本実施形態では、固定部42は、平面視にて、円形を成している。なお、固定部42の平面視形状は、円形に限定されず、例えば、四角形、十字形状、五角形、六角形等の他の多角形、楕円形等であってもよい。
【0028】
図2に示す通り、ミラー保持体4は、固定部42の光反射部41と接続された端部の他の一方の端部を、基体2の可動部21に固定されている。すなわち、光反射部41は、固定部42を介して可動部21に固定されている。
【0029】
前記、固定部42と可動部21の固定方法は、接着剤、金属薄膜による金属接合、半田接合、陽極接合、直接接合などを用いることが出来る。
【0030】
このように、光反射部41と可動部21が固定部42を介して固定されることにより、後述する可動部21に形成されるコイル51による静的なたわみは、光反射部41の平坦性を損なわないため、光反射面411の静的なたわみを低減することが出来る。
【0031】
[支持体]
支持体3は、前述した基体2を支持する機能を有する。また、支持体3は、後述する駆動手段5の永久磁石52、53を支持する機能をも有する。
この支持体3は、上方に開放する凹部31を有する箱状をなしている。言い換えると、支持体3は、板状をなす板状部32と、その板状部32の上面の外周部に沿って設けられた枠状をなす枠状部33とで構成されている。
このような支持体3の上面のうち凹部31の外側の部分、すなわち、枠状部33の上面には、前述した基体2の支持部22の下面が接合されている。これにより、基体2の可動部21および1対の連結部23、24と支持体3との間には、可動部21の回動を許容する空間が形成されている。
【0032】
このような支持体3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、テンパックスガラス等のガラス材料や、単結晶シリコン、ポリシリコン等のシリコン材料、LTCC(低温焼結セラミックス)等が挙げられる。
また、基体2と支持体3との接合方法としては、支持体3の構成材料、形状等に応じて適宜決められるものであり、特に限定されないが、接着剤を用いた方法、陽極接合法、直接接合法等が挙げられる。
【0033】
[駆動手段]
駆動手段5は、コイル51および1対の永久磁石52、53を有し、前述した基体2の可動部21を電磁駆動方式(より具体的にはムービングコイル方式)により回動駆動させるものである。電磁駆動方式は、大きな駆動力を発生させることができる。そのため、電磁駆動方式を採用する駆動手段5よれば、低駆動電圧化を図りつつ、光反射部41の振れ角を大きくすることができる。
【0034】
本実施形態では、コイル51は、図2に示すように、可動部21の下面に絶縁層712を介して設けられている。
本実施形態では、コイル51は、図3に示すように、可動部21の板面に沿って渦巻状に形成されている。このような渦巻状のコイル51は、単に環状に形成したコイルに比し大きな磁力を発生させることができ、また、可動部21の厚さ方向に積層して形成したコイルに比し構成が簡単で製造も容易である。すなわち、コイル51の構成を比較的簡単なものとするとともに、駆動電圧を抑えつつ、コイル51に生じる磁力を大きくすることができる。
ただし、コイル51は、可動部21の仮面に絶縁層712を介して設けられる構造に限定されず、可動部21の上面に絶縁層711を介して設けられていてもよい。
【0035】
また、コイル51を構成する素線の一端(渦巻きの外周側の端)は、配線72を介して電極73に電気的に接続されている。また、コイル51を構成する素線の他端(渦巻きの中心側の端)は、配線74を介して電極75に電気的に接続されている。これにより、電極73と電極75との間に電圧を印加することにより、コイル51に通電することができる。
【0036】
配線72は、連結部23の下面上に、連結部23の長手方向に沿って設けられ、配線74は、連結部24の下面上に、連結部24の長手方向に沿って設けられている。
また、電極73、74は、それぞれ、支持部22の下面上に設けられている。
また、配線74は、可動部21の中央部付近まで延びて形成されており、可動部21上でコイル51と交差している。従って、配線74とコイル51との間には、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜等で構成された絶縁層713が設けられ、電気的に短絡しないように構成されている。
なお、コイル51を構成する素線の他端(渦巻きの中心側の端)と配線74との接続は、ボンディングワイヤーを介して行ってもよい。
【0037】
このような導体パターン8を構成するコイル51、配線72、74および電極73、75の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するとともに、特に限定されないが、例えば、Cu、Ag、Al、Pt、Ir、Os、Re、W、Ta、Ru、Tc、Mo、Nb、Au、Cr、Ni、等が挙げられる。また、これらの構成材料を複数組み合わせて用いても良い。
【0038】
一方、1対の永久磁石52、53は、支持体3に接合・固定されている。
永久磁石52は、可動部21の回動中心軸Xに対して一方側(図1、2にて左側)に設けられ、また、永久磁石53は、可動部21の回動中心軸Xに対して他方側(図1、2にて右側)に設けられている。そして、1対の永久磁石52、53は、可動部21を介して対向している。
また、永久磁石52は、可動部21側をN極、その反対側をS極とするように設置され、永久磁石53は、可動部21側をS極、その反対側をN極とするように設置されている。したがって、1対の永久磁石52、53は、可動部21付近に、非回動時の可動部21の板面に平行で、かつ、可動部21の回動中心軸Xに直角な方向の磁界を発生させる。
【0039】
このような永久磁石52、53としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
なお、コイル51の磁界との相互作用により可動部21を回動し得るものであれば、永久磁石の数、配置や極性等は、図示のものに限定されないことは言うまでもない。
【0040】
以上のような構成を有する光スキャナー1は、次のようにして作動する。
電極73と電極75との間に周期的に変化する電圧(交番電圧、間欠的な直流等)を印加する。これにより、コイル51の上側がN極、下側がS極となる第1の磁界と、コイル51の上側がS極、下側がN極となる第2の磁界とが、交互にかつ周期的に発生する。
第1の電界では、コイル51の上側が永久磁石53側に引きつけられ、反対にコイル51の下側が永久磁石52側に引き付けられ、可動部21が回動中心軸Xを中心に図2にて時計回りに回動する(第1の状態)。反対に、第2の電界では、コイル51の上側が永久磁石52側に引きつけられ、反対にコイル51の下側が永久磁石53側に引き付けられ、可動部21が回動中心軸Xを中心に図2にて反時計回りに回動する(第2の状態)。このような第1の状態と第2の状態とが交互に繰り返され、可動部21が回動中心軸Xを中心に回動する。
このように、1対の永久磁石52、53の磁界中に配された可動部21は、各連結部23、24を捩れ変形させながら、支持部22に対し回動(振動)する。
以上説明したように構成された光スキャナー1によれば、後述する製造方法を用いて製造することができ、これにより、安価で、優れた振動特性を有する。
【0041】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)の平面図である。図5は、図4中のA−A線断面図である。
【0042】
以下、第2実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態の光スキャナーは、基体2とミラー保持体4の接続部分以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。
【0043】
図5に示す通り、可動部21の中心部には、凹部211が形成され、一方の端部が光反射部41に固定された固定部42の他の一方の端部を、凹部211の底面212に接着剤290により接着固定されている。すなわち、光反射部41は、固定部42を介して可動部21に固定されている。
これにより、可動部21と固定部42の位置合わせが容易となる。さらに、接着剤29の連結部23、24への付着を防止することが出来る。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る光スキャナー(アクチュエーター)を示す平面図(上面図)である。
【0044】
以下、第3実施形態の光スキャナーについて、前述した実施形態の光スキャナーとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3実施形態の光スキャナーは、2次元走査可能な振動系を有する光スキャナー(アクチュエーター)に本発明を適用した以外は、第1実施形態の光スキャナー1とほぼ同様である。
【0045】
本実施形態の光スキャナー1Bは、図6に示すように、互いに直交する軸線X1、Y1まわりに回動する2つの振動系を有する基体2Bと、基体2Bの各振動系を駆動する駆動手段5Bとを備える。また、図示しないが、光スキャナー1Bは、基体2Bを支持する支持体(図示せず)を備える。
基体2Bは、枠状の第1の可動部21Bと、第1の可動部21Bに連結する1対の第1の連結部23B、24Bと、1対の第1の連結部23B、24Bを支持する枠状の支持部22Bと、第1の可動部21Bの内側に設けられた板状の第2の可動部61と、第1の可動部21Bに支持されるとともに第2の可動部61に連結する1対の第2の連結部63、64とを有する。
ここで、第1の可動部21Bおよび1対の第1の連結部23B、24Bが軸線X1まわりに回動する第1の振動系を構成し、また、第2の可動部61および1対の第2の連結部63、64が軸線Y1まわりに回動する第2の振動系を構成する。
【0046】
第1の振動系において、第1の可動部21Bは、第1の可動部21Bの板厚方向からの平面視にて、四角環状をなしている。なお、第1の可動部21Bの平面視形状は、枠状をなしていれば、特に限定されず、例えば、円環状をなしていてもよい。
このような第1の可動部21Bの上面には、第1のコイル54が設けられている。この第1のコイル54は、第1の連結部23B、24B上に設けられた配線72B、74Bを介して、支持部22B上に設けられた電極73B、75Bに電気的に接続されている。
【0047】
第1の連結部23B、24Bは、それぞれ、軸線X1に沿って長い長手形状をなしており、弾性変形可能である。第1の連結部23B、24Bは、それぞれ、第1の可動部21Bを支持部22Bに対して回動可能とするように、第1の可動部21Bと支持部22Bとを連結している。このような、第1の連結部23B、24Bは、互いに同軸的に設けられており、軸線X1を中心として、第1の可動部21Bが支持部22Bに対して回動するように構成されている。
【0048】
第2の振動系において、第2の可動部61は、第2の可動部の板厚方向からの平面視にて、円形をなしている。なお、第2の可動部61の形状は、第1の可動部21Bの内側に配置することができれば、特に限定されず、例えば、平面視にて、円形状、十字形状、四角形以外の多角形状等をなしていてもよい。
このような第2の可動部61の上面には、光反射面411を有する光反射部41が、固定部42を介して固定されている。
また、第2の可動部61の下面には、第2のコイル55が設けられていてもよい。この第2のコイル55は、図示しないが、1対の配線を介して、支持部22B上に設けられた1対の電極に電気的に接続されている。
【0049】
第2の連結部63、64は、それぞれ、軸線Y1に沿って長い長手形状をなしており、弾性変形可能である。第2の連結部63、64は、それぞれ、第2の可動部61を第1の可動部21Bに対して回動可能とするように、第2の可動部61と第1の可動部21Bとを連結している。このような第2の連結部63、64は、互いに同軸的に設けられており、軸線Y1を中心として、第2の可動部61が第1の可動部21Bに対して回動するように構成されている。
ここで、第1の可動部21Bは、1対の連結部63、64を支持する支持部62を構成するとも言える。
【0050】
このような基体2Bの2つの振動系を駆動する駆動手段5Bは、前述した第1のコイル54と、第2のコイル55と、1対の永久磁石56、57と、第1のコイル54および第2のコイル55に通電する電源(図示せず)とを有する。
1対の永久磁石56、57は、平面視にて、基体2Bを介して対向して設けられている。この1対の永久磁石56、57は、平面視にて軸線X1、Y1の双方に傾斜する軸線aに沿って基体2Bを貫く磁界を発生させるように設けられている。
【0051】
ここで、平面視における軸線X1、Y1に対する軸線aの傾斜角度は、30〜60度であるのが好ましく、40〜50度であるのがより好ましく、ほぼ45度であるのがさらに好ましい。このように永久磁石56、57を設けることで、円滑に、第1の可動部21Bを軸線X1、Y1まわりにそれぞれ回動させることができる。本実施形態では、線分aは、軸線X1、Y1に対して約45度傾斜している。
【0052】
このような1対の永久磁石56、57による磁界のもと、図示しない電源は、第1のコイル54に、第1の周波数で電圧または電流が周期的に変化する第1の電圧が印加するとともに、第2のコイル55に、第2の周波数で電圧または電流が周期的に変化する第2の電圧を印加すると、第1の可動部21Bが軸線X1まわりに第1の周波数で回動するとともに、第2の可動部61が軸線Y1まわりに第2の周波数で回動する。
【0053】
これにより、光スキャナー1Bは、1つの光スキャナーで光を2次元的に走査することができる。そのため、2次元走査を必要とする機器の小型化を図ることができる。また、このような光スキャナー1Bを用いると、1次元走査の光スキャナーを2つ組み合わせて2次元走査を実現する場合のような2つの光スキャナー間のアライメントが不要であるため、2次元走査を必要とする機器の製造が容易となる。
【0054】
以上説明したような光スキャナーは、例えば、プロジェクター、レーザープリンター、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。その結果、優れた描画特性を有する画像形成装置を提供することができる。
このような画像形成装置よれば、前述したような光スキャナー1を有するので、安価で、信頼性に優れる。
【0055】
以上説明したような第3実施形態によっても、振動系を有する基体2B上に導体パターンを設けた構成において、光反射面の静たわみを低減することが出来る。
【0056】
(画像形成装置)
ここで、本発明の画像形成装置の実施形態を説明する。
(プロジェクター)
図7は、本発明の画像形成装置の実施形態(プロジェクター)を示す概略図である。なお、以下では、説明の便宜上、スクリーンSCの長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。
【0057】
図7に示すプロジェクター9は、レーザーなどの光を照出する光源装置91と、クロスダイクロイックプリズム92と、1対の本発明の光スキャナー93、94(例えば、光スキャナー1と同様の構成の光スキャナー)と、固定ミラー95とを有している。
光源装置91は、赤色光を照出する赤色光源装置911と、青色光を照出する青色光源装置912と、緑色光を照出する緑色光源装置913とを備えている。
クロスダイクロイックプリズム92は、4つの直角プリズムを貼り合わせて構成され、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから照出された光を合成する光学素子である。
【0058】
このようなプロジェクター9は、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから、図示しないホストコンピューターからの画像情報に基づいて照出された光をクロスダイクロイックプリズム92で合成し、この合成された光が、光スキャナー93、94によって走査され、さらに固定ミラー95によって反射され、スクリーンSC上でカラー画像を形成するように構成されている。
【0059】
ここで、光スキャナー93、94の光走査について具体的に説明する。
まず、クロスダイクロイックプリズム92で合成された光は、光スキャナー93によって横方向に走査される(主走査)。そして、この横方向に走査された光は、光スキャナー94によってさらに縦方向に走査される(副走査)。これにより、2次元カラー画像をスクリーンSC上に形成することができる。このような光スキャナー93、94として本発明の光スキャナーを用いることで、極めて優れた描画特性を発揮することができる。
【0060】
ただし、プロジェクター9としては、光スキャナーにより光を走査し、対象物に画像を形成するように構成されていれば、これに限定されず、例えば、固定ミラー95を省略してもよい。
このように構成されたプロジェクター9によれば、前述した光スキャナー1と同様の構成の光スキャナー93、94を備えるので、安価に、高品位な画像を得ることができる。
【0061】
(ヘッドアップディスプレイ)
図8は、本発明の画像形成装置の実施形態(ヘッドアップディスプレイ)を示す概略図である。なお、以下では、前述したプロジェクター9と同様の構成については、その説明を省略する。
図8に示すヘッドアップディスプレイ9Aは、自動車、飛行機等の移動体において、各種情報をフロントウインドウSC1に投影する装置である。
【0062】
このヘッドアップディスプレイ9Aは、赤色光源装置911、青色光源装置912および緑色光源装置913と、クロスダイクロイックプリズム92と、1対の本発明の光スキャナー93、94と、固定ミラー95Aとを有している。
ここで、固定ミラー95Aは、凹面ミラーであり、光スキャナー94からの光をフロントウインドウSC1に投影する。すると、移動体の操縦者は、フロントウインドウSC1に対して前方に位置する仮想面SC2に虚像として表示像を視認することができる。
【0063】
以上、本発明のアクチュエーターの製造方法、アクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のアクチュエーター、光スキャナーおよび画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、本発明のアクチュエーターの製造方法では、任意の工程を付加することもできる。
【0064】
また、前述した実施形態では、可動部が平面視において回動中心軸およびそれに垂直な線分の少なくとも一方に対して対称な形状をなす場合を説明したが、これに限定されず、可動部が平面視において回動中心軸およびそれに垂直な線分のいずれに対しても非対称な形状をなしていてもよい。
また、前述した実施形態では、可動部を支持部に対して回動可能に連結する連結部が1対設けられた場合を例に説明したが、可動部を支持部に対して回動可能に連結するものであれば、連結部の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0065】
また、前述した実施形態では、本発明のアクチュエーターを光スキャナーに適用した場合を例に説明したが、本発明のアクチュエーターは、これに限定されず、例えば、光スイッチ、光アッテネーター等の他の光学デバイスに適用することも可能である。
また、前述した実施形態では、可動部を回動させる駆動手段がムービングコイル型の電磁駆動方式を採用した構成を例に説明したが、かかる駆動手段は、ムービングマグネット型の電磁駆動方式であってもよいし、また、静電駆動方式、圧電駆動方式等の電磁駆動方式以外の駆動方式を採用するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、基体上に絶縁層を介して設けた導体パターンがコイルを有する場合を例に説明したが、かかる導体パターンは、電気的導通のためのものであれば、これに限定されず、例えば、各種駆動源への通電のための配線、各種センサーに接続された配線等を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B、2B…光スキャナー 2、2A、2B…基体 3…支持体 4…ミラー保持体 5、5B…駆動手段 8…導体パターン 9…プロジェクター 9A…ヘッドアップディスプレイ 21、21B…可動部 22、22A、22a、22B、22b…支持部 23、23B…連結部 24、24B…連結部 31…凹部 32…板状部 33…枠状部 41…光反射部 42…固定部 51…コイル 52…永久磁石 53…永久磁石 54、55…コイル 56、57…永久磁石 61…可動部 62…支持部 63、64…連結部 711、712、713…絶縁層 72、72B…配線 73、73B…電極 74、74B…配線 75、75B…電極 91…光源装置 92…クロスダイクロイックプリズム 93…光スキャナー 94…光スキャナー 95、95A…固定ミラー 102…シリコン基板 121…可動部 211…凹部 290…接着剤 411…光反射面 911…赤色光源装置 912…青色光源装置 913…緑色光源装置 SC…スクリーン SC1…フロントウインドウ SC2…仮想面 X…回動中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動軸まわりに揺動可能な可動部、前記可動部から延出する連結部、および連結部を支持する支持部、を含む基体と、
光反射面を有する光反射部、および前記光反射部から延出し前記可動部に固定される固定部、を含むミラー保持体と、
前記可動部に設けられるコイルと、
前記コイルに作用する磁界を発生する磁石と、を備えることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項2】
前記光反射部と前記固定部とは一体に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項3】
揺動軸まわりに揺動可能な可動部、前記可動部から延出する連結部、および連結部を支持する支持部、を含む基体と、
光反射面を有する光反射部、および前記光反射部から延出し前記可動部に固定される固定部、を含むミラー保持体と、
前記可動部に設けられるコイルと、
前記コイルに作用する磁界を発生する磁石と、を備えることを特徴とする光スキャナー。
【請求項4】
光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは、
揺動軸まわりに揺動可能な可動部、前記可動部から延出する連結部、および連結部を支持する支持部、を含む基体と、
光反射面を有する光反射部、および前記光反射部から延出し前記可動部に固定される固定部、を含むミラー保持体と、
前記可動部に設けられるコイルと、
前記コイルに作用する磁界を発生する磁石と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97026(P2013−97026A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236935(P2011−236935)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】