説明

アクチュエータ駆動スパナ

【課題】 大トルクの締緩作業を確実に行うことができるアクチュエータ駆動スパナを目的とするものである。
【解決手段】プランジャチップCとプランジャロッドRの二面幅に係合される第1スパナ3と第2スパナ5とをアクチュエータ2で挟動自在にリンクするプランジャチップ締緩用のアクチュエータ駆動スパナであって、前記第2スパナ3がスパナ部7と連繋アーム6とを備えたもので、前記スパナ部7の中間に支点ピン7bを設けるとともに該支点ピン7bを中心とする円弧状面に多数の係合溝7aを形成し、該係合溝7aと係脱自在なロックピン6bを連繋アーム6の中間部に設け、また、該連繋アーム6の下部に支点ピン7bをガイドする遊動溝6cを形成してスパナ部7と連繋アーム6とを揺動固定自在とするである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にダイカスト成形機のプランジャロッドに螺着されているプランジャチップの交換等、大トルクの締緩作業を行うアクチュエータ駆動スパナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動シリンダを利用してねじの締緩を行うものとして、駆動シリンダを可動スパナとストッパスパナとに連繋させて行う圧力駆動レンチがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1のものは、可動スパナとストッパスパナとを連繋する駆動シリンダはロッド部側を一方のスパナに枢着し、駆動シリンダの本体部側と可動スパナ側のブラケットとをロックボルトとロックナットにより螺着固定しているだけのため、駆動時に大きなトルクが加わるとロックナットの締め付け量に抗してブラケットとロックボルトとの間で滑りが生じ、規定トルクによる締め付けができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−94971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大トルクの締緩作業を確実に行うことができるアクチュエータ駆動スパナを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プランジャチップとプランジャロッドの二面幅に係合される第1スパナと第2スパナとをアクチュエータで挟動自在にリンクするプランジャチップ締緩用のアクチュエータ駆動スパナであって、前記第2スパナがスパナ部と連繋アームとを備えたもので、前記スパナ部の中間に支点ピンを設けるとともに該支点ピンを中心とする円弧状面に多数の係合溝を形成し、該係合溝と係脱自在なロックピンを連繋アームの中間部に設け、また、該連繋アームの下部に支点ピンをガイドする遊動溝を形成してスパナ部と連繋アームとを揺動固定自在とすることを特徴とするアクチュエータ駆動スパナである。
【0007】
また、第1スパナと第2スパナとをリンクするアクチュエータに長さ調整部材を設けるとより好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、第2スパナがスパナ部と連繋アームとを備えたもので、前記スパナ部の中間に支点ピンを設けるとともに該支点ピンを中心とする円弧状面に多数の係合溝を形成し、該係合溝と係脱自在なロックピンを連繋アームの中間部に設け、また、該連繋アームの下部に支点ピンをガイドする遊動溝を形成してスパナ部と連繋アームとを揺動固定自在としたから、プランジャチップとプランジャロッドの二面幅に対して第1スパナと第2スパナとの係止角度が最大となるよう係合溝に対するロックピン位置を調整できるので、一回の操作で最大の締緩量をプランジャチップに加えることができ、プランジャチップの着脱に要する時間を短縮することができる。また、係合溝にロックピンは確実に係止されるので、大トルクが加わってもスリップすることなく駆動力をプランジャチップに伝達することができる。さらに、連繋アームとスパナ部は支点ピンと遊動溝により揺動固定自在とされているので、第1スパナと第2スパナとを別々に係止することができるので、係止作業は容易となる。
【0009】
また、請求項2にように、第1スパナと第2スパナとをリンクするアクチュエータに長さ調整部材を設けたことにより、第1スパナと第2スパナがプランジャチップとプランジャロッドに噛み込んでも長さ調整部材を緩めることにより、第1、第2スパナを取り外すことができる。また、プランジャチップとプランジャロッドに係止された第1スパナと第2スパナ間に生じるガタを長さ調整部材によってなくすことにより、円滑な締緩作業が可能となり係合溝の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施形態を図1〜3に基づいて詳細に説明する。
1はプランジャチップCをプランジャロッドRに締緩するアクチュエータ駆動スパナであって、該アクチュエータ駆動スパナ1は第1スパナ3と第2スパナ5とをアクチュエータ2で挟動自在にリンクする。前記第1スパナ3の基端はアクチュエータ2の基端と枢着され、第2スパナ5の基端は長さ調整機構4を介してアクチュエータ2の先端と枢着される。
【0012】
第1スパナ3は先端にプランジャチップCまたはプランジャロッドRの二面幅に係合できる二面幅のスパナ口3aが形成され、基端にはアクチュエータ2の基端を枢着する枢支ピン3bが設けられている。
【0013】
前記第2スパナ5は長さ調整部材4に枢着される連繋アーム6と、該連繋アーム6に対して揺動固定自在とされるスパナ部7とからなり、該スパナ部7は連繋アーム6を挟持する二枚の対をなす板材により形成され、その先端にはスパナ口5aが形成されている。
【0014】
前記連繋アーム6は長さ調整部材4の先端フック部4aを掛止できる枢支ピン6aが先端部に取付けられるとともに中間部にスパナ部7の係合溝7aに係止されるロックピン6bが取り付けられている。
【0015】
また、連繋アーム6の下端部にはスパナ部7の支点ピン7bを揺動固定自在に係合させる略T字状の遊動溝6cが形成されている。前記支点ピン7bは遊動溝6cの弧状の横溝内で揺動自在とされ、縦溝内でスライド自在とされるが、縦溝の底部に支点ピン7bが達すると同時に係合溝7aに係止されるロックピン6bとの働きにより連繋アーム6とスパナ部7とは一体化されて固定状態となる。
【0016】
前記長さ調整機構4は連繋アーム6の枢支ピン6aに掛止される先端フック部4aと、アクチュエータ2のシリンダロッド2aと螺着される長ナット部4bと、前記先端フック部4aの雌ねじ部と長ナット部4bの雌ねじ部に螺挿される雄ねじ杆4cとからなり、4dは雄ねじ杆4cを保持するためのナットである。
【0017】
また、スパナ部7は上端に支点ピン7bを中心とする円弧状面を形成し、該円弧状面にロックピン6bを係止される多数の係合溝7aを形成するとともに、スパナ部7の略中間位置には前記遊動溝6c内にガイドされる支点ピン7bを設けたもので、図2に一点鎖線で示されるように、連繋アーム6を引き上げて、ロックピン6bを係合溝7aより抜き出すとともに、スパナ部7の支点ピン7bを遊動溝6cの弧状の横溝内に移行させてスパナ部7を連繋アーム6に対して揺動自在な状態としたり、図2に実線及び鎖線で示されるように、連繋アーム6を押し下げてロックピン6bを係合溝7aに係止させるとともに、スパナ部7の支点ピン7bを遊動溝6cの縦溝底部に移行させてスパナ部7を連繋アーム6と一体化した固定状態としたりできる。
【0018】
このように構成されたものは、図1に示されるように、アクチュエータ2とリンクされる第1スパナ3のスパナ口3aをプランジャロッドRの二面幅が形成された角形部に係止させたうえ、第2スパナ5のスパナ口5aをプランジャチップCの角形部に係止させる。次いで、長さ調整部材4の先端フック部4aを第2スパナ5としての連繋アーム6の枢支ピン6aに係止させる。
【0019】
このとき第1スパナ3と第2スパナ5との係止角度が最大(使用可能な角度範囲内において)となるようにプランジャロッドRとプランジャチップCとに係止させる。次に、連繋アーム6を押し下げてロックピン6bをスパナ部7の係合溝7aに係合するとともに、支点ピン7bを遊動溝6cの縦溝底部に位置させて連繋アーム6とスパナ部7とをロック固定する。
【0020】
連繋アーム6とスパナ部7とをロック固定時、プランジャロッドRとプランジャチップCの二面幅位置によっては、ロックピン6bがスパナ部7の係合溝7aに的確に係止できなかったり、ガタがあった場合は、長さ調整部材4の雄ねじ杆4cを正逆いずれかに回動させて長ナット部4bや先端フック部4aに雄ねじ杆4cをねじ込んだり緩めたりして長さの微調整を行ない、ロックピン6bが係合溝7aに円滑に嵌合し、ガタが生じないように位置合わせを行なう。
【0021】
このようにして第1スパナ3と第2スパナ5がプランジャロッドRとプランジャチップCに的確に係止された状態において、アクチュエータ2を油圧駆動し、シリンダロッド2aを進出させて、図2に示されるように、第2スパナ3を反時計回り方向に枢動させれば、プランジャロッドRにプランジャチップCは大トルクで螺挿されることとなる。
【0022】
このようにしてアクチュエータ2の伸張操作が終わったら、アクチュエータ2の油圧を解いたうえ、連繋アーム6を引き上げてロックピン6bを係合溝7aから抜き出すとともに、支点ピン7bを連繋アーム6の遊動溝6cの上部の横溝内に移行させる。このようにして第1スパナ3と第2スパナ5とをプランジャロッドRとプランジャチップCから外した後、再び、前記と同様にして、第1スパナ3と第2スパナ5との係止角度が最大となるようにプランジャロッドRとプランジャチップCとに係止させる。
【0023】
そして、前記と同様に連繋アーム6を押し下げてロックピン6bを係合溝7aに係合させるとともに、支点ピン7bを遊動溝6cの縦溝底部に配置させて連繋アーム6とスパナ部7とをロック一体化したうえ、前記と同様アクチュエータ2を油圧駆動するという操作を繰り返してプランジャロッドRにプランジャチップCを取り付ければよい。
なお、プランジャロッドRからプランジャチップCを外す場合は、第1スパナ3と第2スパナ5との係止角度が最小となるようにプランジャロッドRとプランジャチップCとに係止させ、アクチュエータ2のシリンダロッド2aを後退させる操作を繰り返せばよいものである。
【符号の説明】
【0024】
1 アクチュエータ駆動スパナ
2 アクチュエータ
2a シリンダロッド
3 第1スパナ
3a スパナ口
3b 枢支ピン
4 長さ調整部材
4a 先端フック部
4b 長ナット部
4c 雄ねじ杆
4d ナット
5 第2スパナ
6 連繋アーム
6a 枢支ピン
6b ロックピン
6c 遊動溝
7 スパナ部
7a 係合溝
7b 支点ピン
C プランジャチップ
R プランジャロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャチップとプランジャロッドの二面幅に係合される第1スパナと第2スパナとをアクチュエータで挟動自在にリンクするプランジャチップ締緩用のアクチュエータ駆動スパナであって、前記第2スパナがスパナ部と連繋アームとを備えたもので、前記スパナ部の中間に支点ピンを設けるとともに該支点ピンを中心とする円弧状面に多数の係合溝を形成し、該係合溝と係脱自在なロックピンを連繋アームの中間部に設け、また、該連繋アームの下部に支点ピンをガイドする遊動溝を形成してスパナ部と連繋アームとを揺動固定自在とすることを特徴とするアクチュエータ駆動スパナ。
【請求項2】
第1スパナと第2スパナとをリンクするアクチュエータに長さ調整部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ駆動スパナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−79107(P2011−79107A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234726(P2009−234726)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)