説明

アクチュエータ

【課題】液圧式であっても車両における乗り心地を向上することが可能なアクチュエータを提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段における鉄道車両の車体Bと台車Wとの間に介装されるシリンダCとシリンダCに液圧を供給する液圧源1とを備え、車体Bを台車Wに対して傾斜させるアクチュエータAにおいて、シリンダC内の二つの圧力室R1,R2を連通するリリーフ流路14を設け、当該リリーフ流路14の途中に比例電磁式リリーフ弁15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体と台車との間に介装されて車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が曲線区間を走行する場合、車体には曲線区間の曲率中心とは反対側に向く遠心力が作用する。この遠心力は、車両の走行速度が高くなればなるほど大きくなる。そこで、鉄道車両の軌道では、曲率中心側の内側レールと反対側の外側レールにカントと呼ばれる高低差を設けて、上記遠心力を緩和し、曲線走行時の鉄道車両の速度向上を図っている。
【0003】
しかしながら、カント量(各レールの高低差量)は一端設定されると変更することができず、走行速度が異なる鉄道車両が走行する線区では、高速走行する鉄道車両になればなるほど、カント量が不足して超過遠心力が鉄道車両に作用して、乗心地が悪化してしまうといった問題がある。
【0004】
そこで、近年では、振子式の車体傾斜装置や台車と車体との間に設けた気体バネを用いて車体を台車に対して傾斜させる車体傾斜装置を搭載するようにし、上記カント量不足による超過遠心力を緩和するため、鉄道車両が曲線区間を走行する際に、台車に対して車体を曲率中心側に傾けるようにして乗り心地の悪化を抑制することで、曲線区間での高速走行を実現している。
【0005】
このような車体傾斜装置にあっては、具体的にはたとえば、車体と台車との間に空気圧で駆動される直動型のアクチュエータを介装し、このアクチュエータを伸縮させることで車体を台車に対して傾斜させるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−154432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記アクチュエータは、その駆動を大きな圧縮性を持つ圧縮空気を利用して行うため、推力と応答性が不十分となって狙った車体傾斜角の確保が難しく、乗り心地を充分に向上することが難しいという問題があり、これを解消するには、アクチュエータには、空気圧ではなく、液圧で駆動するものを採用することが考えられる。
【0007】
ところが、アクチュエータの作動流体を液体とする場合、今度は、液体の圧縮性の小ささ故にアクチュエータの見掛け上の剛性が高くなって、この車体傾斜用に供されるアクチュエータを介して台車における車体進行方向に対する左右方向の振動が車体に伝達されてしまい、車両における乗り心地を悪化させてしまう虞がある。なお、アクチュエータの見掛け上の剛性とは、作動流体を含めたアクチュエータ全体の伸縮方向の剛性であり、作動流体の圧縮性が小さくなればなるほど上記の見掛け上の剛性は高くなる傾向を示すことになる。
【0008】
そこで、本発明は上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、液圧式であっても車両における乗り心地を向上することが可能なアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるアクチュエータは、鉄道車両の車体と台車との間に介装されるシリンダとシリンダに液圧を供給する液圧源とを備え、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータであって、シリンダ内の二つの圧力室を連通するリリーフ流路を設け、当該リリーフ流路の途中に比例電磁式リリーフ弁を設けた。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアクチュエータによれば、各圧力室を連通するリリーフ流路と比例電磁式リリーフ弁とを備えているので、比例電磁式リリーフ弁におけるリリーフ圧を適宜調節することが可能となり、台車側へ入力された振動が車体側へ伝播することを抑制することができ、液圧式のアクチュエータを車体傾斜に用いても車両における乗り心地を向上することができるのである。
【0011】
また、換言すれば、車両における乗り心地を向上することができるので、アクチュエータAの作動流体を作動油等の液体とすることができ、推進力不足を解消し、車体傾斜の応答性を向上させることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態におけるアクチュエータの液圧回路を示す図である。図2は、一実施の形態におけるアクチュエータを鉄道車両の車体と台車との間に介装した状態を示す図である。図3は、一実施の形態のアクチュエータにおける制御ブロック図である。図4は、変位信号における所定周波数帯の振動成分の振幅と、当該振幅に対して重み付けを行う係数との関係を示す図である。図5は、一実施の形態におけるアクチュエータの比例電磁式リリーフ弁を制御するフローチャートの一例を示す図である。図6は、一実施の形態の一変形例におけるアクチュエータの液圧回路を示す図である。
【0013】
一実施の形態におけるアクチュエータAは、図1および図2に示すように、鉄道車両の車体Bと台車Wとの間に介装されるシリンダCと、シリンダCに液圧を供給する液圧源たる油圧ポンプ1と、シリンダC内の二つの圧力室R1,R2を連通するリリーフ流路14と、当該リリーフ流路14の途中に設けた比例電磁式リリーフ弁15と、比例電磁式リリーフ弁15を制御する制御部20とを備えて構成されている。
【0014】
なお、このアクチュエータAにあっては、シリンダCに油圧ポンプ1から供給する液圧で駆動してアクチュエータとしての機能を発揮させるアクチュエータ回路5と、失陥時その他においてシリンダCをダンパとして機能させるダンパ回路13とを備えており、この場合、比例電磁式リリーフ弁11はダンパ回路13内に設けたリリーフ流路14の途中に設けられる。
【0015】
以下、各部について詳細に説明すると、シリンダCは、容器2と、容器2内に摺動自在に挿入されて容器2内に一方室R1および他方室R2の二つの圧力室を区画するピストン3と、ピストン3に連結されて容器2内に移動自在に挿入されるロッド4とを備えて構成され、一方室R1および他方室R2内には液体としての作動油が充填され、この実施の形態の場合、いわゆる両ロッド型の油圧シリンダとされている。なお、本実施の形態にあっては、シリンダCの作動には使用される液体は作動油とされているが、液体はアクチュエータAの作動に適するものであればよい。
【0016】
そして、油圧ポンプ1は、シリンダCをアクチュエータとして動作させるアクチュエータ回路5中に組み込まれ、アクチュエータ回路5は、ループ通路6と、ループ通路6中に設けた二つのソレノイド切換弁7,8と、ループ通路6から分岐する二つの分岐通路9,10と、分岐通路9,10のうち低圧側をアキュムレータ11に連通する低圧選択弁12とを備えて構成されている。
【0017】
詳細には、油圧ポンプ1は、シリンダCの一方室R1と他方室R2とを連通するループ通路6の途中に設けられ、この場合、モータMによって駆動される双方向吐出型のポンプとして構成されている。なお、油圧ポンプ1で生じる漏れ油圧はアキュムレータ11で回収されるようになっている。
【0018】
また、ループ通路6の途中であって、油圧ポンプ1と一方室R1との間には、ノーマルクローズのソレノイド切換弁7が介装され、さらに、油圧ポンプ1と他方室R2との間にも、ノーマルクローズのソレノイド切換弁8が介装されている。
【0019】
ソレノイド切換弁7は、油圧ポンプ1と一方室R1とを連通する連通ポジションと、油圧ポンプ1から一方室R1への流れのみを許容する遮断ポジションとを備えたバルブ7aと、遮断ポジションを採るようにバルブ7aを附勢するバネ7bと、通電時にバルブ7aをバネ7bに対向して連通ポジションに切換えるソレノイド7cとを備えて構成され、他方のソレノイド切換弁8は、油圧ポンプ1と他方室R2とを連通する連通ポジションと、油圧ポンプ1から他方室R2への流れのみを許容する遮断ポジションとを備えたバルブ8aと、遮断ポジションを採るようにバルブ8aを附勢するバネ8bと、通電時にバルブ8aをバネ8bに対向して連通ポジションに切換えるソレノイド8cとを備えて構成されている。
【0020】
さらに、分岐通路9は、ループ通路6の途中であってソレノイド切換弁7と油圧ポンプ1との間から分岐し、他方の分岐通路10は、ループ通路6の途中であってソレノイド切換弁8と油圧ポンプ1との間から分岐しており、これら分岐通路9,10のうち、低圧側が低圧選択弁12によってアキュムレータ11へ連通される。
【0021】
低圧選択弁12は、分岐流路9をアキュムレータ11に連通する一方側連通ポジションと、分岐流路10をアキュムレータ11に連通する他方側連通ポジションと、分岐流路9,10の双方をアキュムレータ11に連通する双方連通ポジションとを備えたバルブ12aと、バルブ12aを他方側連通ポジションに切換えるように分岐流路9の圧力を作用させるパイロット通路12bと、バルブ12aを一方側連通ポジションに切換えるように分岐流路10の圧力を作用させるパイロット通路12cとを備え、中立位置では双方連通ポジションを採るように構成されている。
【0022】
したがって、分岐流路9側の圧力が分岐流路10側の圧力を上回ると、低圧選択弁12は、他方側連通ポジションを採って分岐流路10をアキュムレータ11に連通し、反対に、分岐流路10側の圧力が分岐流路9側の圧力を上回ると、低圧選択弁12は、一方側連通ポジションを採って分岐流路9をアキュムレータ11に連通する。
【0023】
すなわち、ソレノイド切換弁7,8をそれぞれ連通ポジションとして、油圧ポンプ1を一方室R1へ油圧を供給するように駆動すると、一方室R1内に油圧が供給されてシリンダCにおけるロッド4が、図1および図2中、右方へ推進され、車体Bを反時計周りに傾斜させることができ、反対に、ソレノイド切換弁7,8をそれぞれ連通ポジションとして、油圧ポンプ1を他方室R2へ油圧を供給するように駆動すると、他方室R2内に油圧が供給されてシリンダCにおけるロッド4が、図1および図2中、左方へ推進され、車体Bを時計周りに傾斜させることができる。つまり、当該アクチュエータAを、車体を傾斜させるアクチュエータとして機能させることができる。
【0024】
そして、油圧ポンプ1を一方室R1へ油圧を供給するように駆動する場合、油圧ポンプ1は、低圧側となる他方室R2から、あるいは、低圧選択弁12によって選択される分岐流路10を介してアキュムレータ11から、あるいは、その両方から作動油を吸い込んで、一方室R1側へ作動油を吐出する。反対に、油圧ポンプ1を他方室R2へ油圧を供給するように駆動する場合、油圧ポンプ1は、低圧側となる一方室R1から、あるいは、低圧選択弁12によって選択される分岐流路9を介してアキュムレータ11から、あるいは、その両方から作動油を吸い込んで、他方室R2側へ作動油を吐出する。
【0025】
したがって、油圧ポンプ1は、作動油の圧縮等による体積減少が生じても、アキュムレータ11から作動油の供給を受け、問題なく一方室R1および他方室R2のうち希望する圧力室へ油圧を供給することができる。
【0026】
また、シリンダCの推力発生方向が逆転する折には、一方室R1の圧力と他方室R2の圧力の高低が逆転するので、低圧選択弁12は、一端中立位置の双方連通ポジションを経由して切換わり、分岐流路9,10を一度アキュムレータ11に連通する。
【0027】
なお、低圧選択弁12は、作動油の温度上昇による内圧増大の防止、作動油の温度低下による負圧の防止、およびシリンダCの製作加工誤差による一方室R1と他方室R2の容積差によるアキュムレータからの作動油の供給等のために設けられている。
【0028】
また、この実施の形態の場合、アクチュエータAの変位(シリンダCにおける容器2に対するロッド4の変位)をセンシングするストロークセンサ30を備えており、ストロークセンサ30で検知するアクチュエータAの変位に基づいて、後述の制御装置25によって、油圧ポンプ1が駆動制御されるようになっている。
【0029】
つづいて、ダンパ回路13について説明する。ダンパ回路13は、シリンダC内の二つの圧力室R1,R2を連通する流路16を備えており、この流路16は、減衰力発生要素17とソレノイド切換弁18とが設けられるメイン流路16aと、一方室R1からメイン流路16aに向かう流れのみを許容する一方側上流路16bと、他方室R2からメイン流路16aに向かう流れのみを許容する他方側上流路16cと、メイン流路16aから一方室R1へ向かう流れのみを許容する一方側下流路16dと、メイン流路16aから他方室R2へ向かう流れのみを許容する他方側下流路16eとを備えて構成されている。
【0030】
一方側上流路16bは、途中に一方室R1からメイン流路16aへ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁19aを備え、この逆止弁19aによって一方側上流路16bを一方室R1からメイン流路16aへ向かう一方通行の通路としている。他の他方側上流路16c、一方側下流路16d、他方側下流路16eの途中にも同様に、それぞれ逆止弁19b,19c,19dが設けられ、それぞれ上記した通りの一方通行の通路となるように設定されている。
【0031】
本実施の形態にあっては、このように流路16が構成されることで、作動油は、メイン流路16aを一方側上流路16bおよび他方側上流路16cに接続されている方を上流として、一方側下流路16dおよび他方側下流路16eに接続されている下流側へ流れることになり、メイン流路16aも一方通行とされている。
【0032】
また、メイン流路16aの下流は、接続通路16fを介して上述のアキュムレータ11に接続され、メイン流路16aの下流の圧力はアキュムレータ11と同圧となるように設定されている。
【0033】
そして、メイン流路16aの途中に設けられる減衰力発生要素17は、自身の上流側の圧力に応じて流路面積を調節する減衰バルブ17aと、当該減衰バルブ17aに並列配置される固定絞り17bとで構成され、メイン流路16aの上流側の圧力が低いときには、減衰バルブ17aが開かず、作動油に固定絞り17bを通過させ、流量が増加して固定絞り17bによる圧力損失が大きくなり上流側の圧力が減衰バルブ17aのクラッキング圧を上回るようになると、減衰バルブ17aが開いて作動油は減衰バルブ17aをも介してメイン流路16aの下流側へ流れるようになる。
【0034】
このように、減衰力発生要素17は、作動油がメイン流路16aを流れる際に、この流れに減衰バルブ17aと固定絞り17bとで抵抗を与えて、シリンダCの伸縮を抑制する減衰力を発揮させる発生源として機能する。
【0035】
さらに、ソレノイド切換弁18は、ノーマルオープンの切換弁とされ、メイン流路16aを開放する連通ポジションと、メイン流路16aを遮断する遮断ポジションとを備えたバルブ18aと、連通ポジションを採るようにバルブ18aを附勢するバネ18bと、通電時にバルブ18aをバネ18bに対向して遮断ポジションに切換えるソレノイド18cとを備えて構成されている。
【0036】
ここで、ソレノイド切換弁7,8が遮断ポジションであってアクチュエータ回路5側でシリンダCを駆動しない状態を考えると、ソレノイド切換弁18が遮断ポジションを採るとメイン流路16aが遮断状態に維持され、シリンダCの一方室R1と他方室R2との連通が断たれた状態となるので、シリンダCは伸縮不能なロック状態とされる。他方、いわゆる失陥時にあって、ソレノイド切換弁7,8が遮断ポジションが採るとともにソレノイド切換弁18が連通ポジションを採る場合には、メイン流路16aが開放状態に維持され、シリンダCが外力によって強制的に伸縮させられると、作動油は流路16を介して、一方室R1から他方室R2へ、あるいは、他方室R2から一方室R1へと移動可能となり、また、上記移動に際して必ずメイン流路16aの減衰力発生要素17を通過するので、シリンダCは外力による強制伸縮に対して伸縮を抑制する減衰力を発揮し、シリンダCをダンパとして機能させることができるようになる。
【0037】
また、このダンパ回路13では、一方室R1と他方室R2とを連通するリリーフ流路14と、リリーフ流路14の途中に設けた比例電磁式リリーフ弁15とを備えている。
【0038】
リリーフ流路14は、具体的には、減衰力発生要素17およびソレノイド切換弁18を迂回してメイン流路16aの上流と下流を連通することによって、一方室R1と他方室R2とを連通している。
【0039】
比例電磁式リリーフ弁15は、リリーフ流路14の途中に設けた弁体15aと、リリーフ流路14を遮断するように弁体15aを附勢するバネ15bと、通電時にバネ15bに対向する推力を発生する比例ソレノイド15cとを備えて構成され、比例ソレノイド15cに流れる電流量を調節することでリリーフ圧(開弁圧)を調節することができるようになっている。
【0040】
この比例電磁式リリーフ弁15は、弁体15aに作用させるリリーフ流路14の上流側の圧力がリリーフ圧を超えると、当リリーフ流路14を開放させる方向に弁体15aを推す上記圧力に起因する推力と比例ソレノイド15cによる推力との合力が、リリーフ流路14を遮断させる方向へ弁体15aを附勢するバネ15bの附勢力に打ち勝つようになって、弁体15aを後退させてリリーフ流路14を開放するようになっている。
【0041】
また、この比例電磁式リリーフ弁15にあっては、比例ソレノイド15cに供給する電流量を増大させると、比例ソレノイド15cが発生する推力を増大させることができるようになっており、比例ソレノイド15cに供給する電流量を最大とするとリリーフ圧が最小となり、反対に、比例ソレノイド15cに全く電流を供給しないとリリーフ圧が最大となる。
【0042】
そして、比例電磁式リリーフ弁15は、ソレノイド切換弁18がメイン流路16aを開放するか遮断するかに関わらず、シリンダCに伸縮方向の過大な入力があって、一方室R1あるいは他方室R2内の圧力がリリーフ圧を超える状態となると、リリーフ流路14を開放して減衰力発生要素17およびソレノイド切換弁18を迂回して一方室R1と他方室R2とを連通し、異常高圧となった一方室R1あるいは他方室R2の一方の圧力を低圧側の他方へ逃がして、アクチュエータAのシステム全体を保護するようになっている。
【0043】
また、作動油の体積が減少する場合には、ソレノイド切換弁7,8が連通ポジション、遮断ポジションを問わずに一方室R1および他方室R2とアキュムレータ11との連通を許容するのでアキュムレータ11から一方室R1および他方室R2に作動油が供給されることになる。このように、この実施の形態のアクチュエータAでは、上記回路構成を採用することで、温度変化による作動油の体積補償される。このように、ソレノイド切換弁7,8における遮断ポジションにおいて、ループ通路6を遮断していても温度低下に伴う体積補償を行うことを可能とするためアキュムレータ11から一方室R1および他方室R2へ向かう流れを許容するようにしているが、当該体積補償をアクチュエータ回路5において行わない場合には、遮断ポジションにおいてループ通路6における双方向の流れを遮断するようにしてもよい。
【0044】
さて、このように構成されたアクチュエータAでは、上述のように、一方室R1と他方室R2とを連通するリリーフ流路14に設けた比例電磁式リリーフ弁15におけるリリーフ圧を調節することができるが、比例電磁式リリーフ弁15におけるリリーフ圧を調節するということは、シリンダC内の一方室R1および他方室R2の圧力の最大圧力を調節することである。
【0045】
そして、モータMが十分なトルクを出力し油圧ポンプ1が外力によって回転され得ない状態に維持されている場合や、油圧ポンプ1がギヤポンプとされてプレッシャーローディングによって保持状態となっている場合、一方室R1および他方室R2の圧力が最大圧力となるまではシリンダCは外力によっては伸縮されない状態となってアクチュエータAの見掛け上の剛性は高い状態に維持され、反対に、一方室R1および他方室R2の圧力が最大圧力を超える状態となると比例電磁式リリーフ弁15が開くのでシリンダCが外力によって伸縮せしめられる状態となってアクチュエータAの見掛け上の剛性が低くなる。
【0046】
すなわち、この実施の形態におけるアクチュエータAでは、比例電磁式リリーフ弁15のリリーフ圧を調節することで、アクチュエータAの見掛け上の剛性を制御することができるのである。
【0047】
ここで、鉄道車両が走行中に、車体Bに伝達されると乗り心地を悪化させる周波数帯の振動が外乱によって台車Wに作用する場合、アクチュエータAの見掛け上の剛性が高いと、台車Wに作用した振動を車体Bへ伝達してしまうことになるため、本実施の形態では、そのような場合には、外乱によってアクチュエータAの伸縮を可能とするため、比例電磁式リリーフ弁15のリリーフ圧を小さくする。
【0048】
すると、アクチュエータAの見掛け上の剛性は低くなって、台車Wに入力された振動に対してアクチュエータAが伸縮して、車体B側への振動伝播を絶縁することができるようになる。
【0049】
したがって、本実施の形態のアクチュエータAでは、圧力室たる一方室R1と他方室R2とを連通するリリーフ流路14と比例電磁式リリーフ弁15とを備えているので、比例電磁式リリーフ弁15におけるリリーフ圧を適宜調節することが可能となり、台車W側へ入力された振動が車体B側へ伝播することを抑制することができ、液圧式のアクチュエータAを車体傾斜に用いても車両における乗り心地を向上することができるのである。
【0050】
また、換言すれば、車両における乗り心地を向上することができるので、アクチュエータAの作動流体を作動油等の液体とすることができ、推進力不足を解消し、車体傾斜の応答性を向上させることができるのである。
【0051】
基本的には、上述のように、比例電磁式リリーフ弁15におけるリリーフ圧を調節すればよいのであるが、本実施の形態では、具体的には、制御部20によって、リリーフ圧を制御するようにしている。
【0052】
この制御部20は、図3に示すように、ストロークセンサ30が出力する変位信号から乗り心地を悪化させる所定周波数帯における成分を抽出するバンドパスフィルタ21と、バンドパスフィルタ21で抽出した所定周波数帯成分における変位信号の振幅Lに基づいて比例電磁式リリーフ弁15の目標リリーフ圧Pを演算する目標リリーフ圧演算部22と、比例電磁式リリーフ弁15に供給する電流量を調節して比例電磁式リリーフ弁15におけるリリーフ圧を目標リリーフ圧演算部22で演算した目標リリーフ圧通りに調節するリリーフ弁駆動部23とを備えて構成されている。すなわち、この実施の形態の場合、アクチュエータAの変位を検知することで車体Bの台車Wに対する振動を検知しており、アクチュエータAの振動状況に応じて比例電磁式リリーフ弁15を制御するようになっている。
【0053】
また、アクチュエータAを駆動制御する制御装置25は、車体Bの走行状態から車体傾斜角度の目標値を決定する図外の上位装置から入力されるアクチュエータAの目標変位Xとストロークセンサ30が出力する実際の変位Xとの偏差εを演算する偏差演算部26と、偏差演算部26が演算した偏差εに基づいてアクチュエータAを制御する制御指令を生成する制御指令生成部27と、制御指令生成部27から入力される制御指令通りにアクチュエータAにおける油圧ポンプ1のモータMを駆動するモータ駆動部24とを備えて構成されている。すなわち、制御装置25は、アクチュエータAの変位XをフィードバックしてアクチュエータAの変位を制御するようになっている。
【0054】
また、変位フィードバック制御において実際の制御対象となるのは、モータMとなるので、制御指令生成部27は、具体的には、目標変位Xと実際の変位Xの偏差εをとった後、この偏差εに基づいて比例積分動作あるいは比例積分微分動作によって目標モータ回転数指令でなる制御指令を生成し、目標モータ回転数指令とモータMの実際の回転数との偏差である回転数偏差を演算し、この回転数偏差を速度ループに入力して目標速度指令でなる制御指令を生成し、目標速度指令を電流ループに入力して最終的にはモータMを駆動する目標電流指令でなる制御指令Eを生成し、この目標電流指令でなる制御指令Eをモータ駆動部24へ出力することになる。このような処理を制御指令生成部27に実行させることで、アクチュエータAの実際の変位Xを目標変位Xに精度よく追随させることができるが、目標変位Xと実際の変位Xの偏差から比例積分動作あるいは比例積分微分動作によって直接的に目標電流指令でなる制御指令を生成することも可能である。
【0055】
なお、アクチュエータAにあっては、モータMを制御する指令系統とは別に各ソレノイド切換弁7,8,18を駆動する図示しない指令系統が出力する制御指令に基づいて各ソレノイド切換弁7,8,18を駆動する図示しないソレノイドドライバを備えており、たとえば、シリンダCを伸縮させて車体Bを傾斜させることが必要な場合に、図外の上位装置から出力される目標変位Xと実際の変位XとからシリンダCの駆動が必要であることを判断して各ソレノイド切換弁7,8を連通ポジションに切換える。また、ソレノイド切換弁18は、アクチュエータAが正常動作している場合、原則的には、通電状態とされる。
【0056】
つづき、上述の制御部20における処理について詳細に説明すると、まず、バンドパスフィルタ21は、所定周波数帯成分、具体的にはたとえば、1Hz程度から10Hz程度となる周波数帯における振動成分のみをストロークセンサ30が出力する変位信号から抽出する。
【0057】
つづいて、目標リリーフ圧演算部22は、変位信号の所定周波数帯における振動成分の振幅を求め、当該振幅に対して漸減する重み付けを行って、比例電磁式リリーフ弁15の目標リリーフ圧Pを演算するようになっている。具体的には、振幅Lが大きさに応じて最大値から最小値にまで漸減する係数αを図4に示すマップを利用するなどして求め、当該係数αに比例電磁式リリーフ弁15における最大リリーフ圧Pmaxを積算して目標リリーフ圧Pを求める。なお、係数αは、最小リリーフ圧をPminとすると、Pmin/Pmax≦α≦1の範囲の係数となり、振幅Lの増大によって、最小値であるPmin/Pmaxに向けて漸減することになる。
【0058】
また、図4に示した例では、振幅LがL未満では、係数αは最大値である1を採るとともに、Lを超えると最小値Pmin/Pmaxとなり、振幅LがL以上L以下の範囲では、係数αが比例的に減少するようになっているが、漸減することには、振幅Lの増加に対して係数αが、比例的、反比例的、指数関数的、段階的、あるいはこれらの任意の組み合わせによって減少することも含まれる。
【0059】
さらに、上記したところでは、目標リリーフ圧Pを求めるのに、一端、係数αを求めて、当該係数αに最大リリーフ圧Pmaxを掛け合わせるようにしているが、振幅Lに対して重み付けした目標リリーフ圧Pをマップ化しておき、振幅Lから直接的に目標リリーフ圧Pを求めてもよい。また、当該係数αに最大リリーフ圧Pmaxを掛け合わせているが、これに限らず、係数αに最小リリーフ圧Pminや任意の値を掛け合わせて目標リリーフ圧Pを求めるようにしてもよい。係数αに最小リリーフ圧Pminを掛け合わせる場合には、係数αは1≦α≦Pmax/Pminの範囲で振幅Lの増加に対して漸減するように設定され、また、係数αに任意の値βを掛け合わせる場合には、係数αはPmin/β≦α≦Pmax/βの範囲で振幅Lの増加に対して漸減するように設定される。
【0060】
このように、制御部20では、外乱によって車体Bに伝達されると乗り心地を悪化させる周波数帯の振動が台車Wに作用する場合、これをバンドパスフィルタ21で当該周波数帯の振動成分を抽出し、目標リリーフ圧演算部22で目標リリーフ圧Pを求めて、アクチュエータAの見掛け上の剛性を低くし、車体Bへの振動伝播を絶縁することができるのである。また、振幅Lが大きくなると目標リリーフ圧Pが漸減するようになっているので、上記周波数帯の振動の振幅Lが大きく乗り心地の悪化が懸念される場合には、よりアクチュエータAの見掛け上の剛性を低くして振動絶縁性を高め、反対に、上記周波数帯の振動の振幅Lが小さい場合には、制御装置25による車体傾斜のためのアクチュエータAの制御を優先させて上位装置で演算される目標変位Xに対してアクチュエータAの実際の変位Xの追随性を満足させる程度のアクチュエータAの見掛け上の剛性を確保することができる。
【0061】
さらに、上述の目標リリーフ圧演算部22では、上記処理によって目標リリーフ圧Pを求めるのとは別に、制御装置25側で演算される目標変位Xと実際の変位Xの偏差εを取り込み、偏差εが所定の閾値以下である場合には、上記の如く求めた目標リリーフ圧Pを変更せず、アクチュエータドライバ23に比例電磁式リリーフ弁15のリリーフ圧を当該目標リリーフ圧Pとするよう電流量を調節させるべく、リリーフ圧指令をアクチュエータドライバ23に与える。
【0062】
他方、偏差εが所定の閾値を超える場合には、目標リリーフ圧Pを上記処理によって得られた値ではなく最大リリーフ圧Pmaxとして、アクチュエータドライバ23に比例電磁式リリーフ弁15のリリーフ圧を最大リリーフ圧Pmaxとするようリリーフ圧指令をアクチュエータドライバ23に与える。なお、この場合、目標リリーフ圧Pが最大リリーフ圧Pmaxとなるので、アクチュエータドライバ23は比例電磁式リリーフ弁15へ電流供給を全く行わない状態となる。
【0063】
なお、所定の閾値は、制御装置25による車体傾斜のためのアクチュエータAの制御を優先させるか否かの判断を行うための基準であり、この閾値は、比例電磁式リリーフ弁15のリリーフ圧の調節し台車Wから車体Bへの振動伝達を抑制する制御を実施することで、目標変位Xに対するアクチュエータAの実際の変位Xの追随性が犠牲になって却って乗り心地を悪化させる場合には、制御装置25による車体傾斜のためのアクチュエータAの制御を優先させることができるような値に設定される。
【0064】
このように、目標リリーフ圧演算部22は、この実施の形態の場合、目標リリーフ圧Pを求めることに加えて、目標変位Xと実際の変位Xの偏差εを取り込み、偏差εが上記閾値を超える場合には、制御装置25による車体傾斜のためのアクチュエータAの制御を優先させて上位装置で演算される目標変位Xに対してアクチュエータAの実際の変位Xの追随性を確保し、偏差εが上記閾値以下の場合には、台車Wから車体Bへの振動伝達の抑制する制御を優先するようになっているので、車体傾斜制御と車体Bへの振動絶縁とを高次元で両立してより一層乗り心地を向上することができるのである。
【0065】
なお、本実施の形態においては、ハードウェア資源としては、制御部20と制御装置25とが一体とされており、図示はしないが、ストロークセンサ30が出力するアナログの電圧でなる変位信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、変位信号と上位装置からの目標変位とを取り込み、上記各部の処理を実行するCPU(Central Prossesing Unit)と、上記CPUに記憶領域を提供するRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)と、上記各部の処理を行うためCPUが実行するアプリケーションやオペレーティングシステム等のプログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、アクチュエータドライバ23とを備えて構成されており、制御部20および制御装置25の各部における構成は、CPUが各部の処理を行うためアプリケーションプログラムを実行することで実現されている。つまり、この実施の形態の場合、アクチュエータAにおける比例電磁リリーフ弁15のリリーフ圧を制御する制御部20は、アクチュエータAを駆動制御する制御装置25とハードウェア資源を共有して一つのハードウェア資源でアクチュエータAの駆動制御と比例電磁リリーフ弁15のリリーフ圧を制御の両機能を発揮することができるようになっている。なお、バンドパスフィルタ21は、この場合、CPUによる処理で実現されるとしているが、ストロークセンサ30が出力するアナログ信号を処理するフィルタとしてもよい。
【0066】
つづいて、上述の制御部20における処理を図5に示した処理手順の一例に即して説明すると、ステップS1では、制御部20は、ストロークセンサ30が出力する変位信号から所定周波数帯の振動成分を抽出する。
【0067】
そして、ステップS2に移行して、制御部20は、所定周波数帯の振動成分の変位信号における振幅Lを得る。なお、振幅Lは、所定周波数帯の振動成分のパワースペクトルを演算することによって求めても良いし、所定周波数帯の振動成分の変位信号における任意周期内における最小値と最大値との差とることで求めてもよい。
【0068】
つづき、ステップS3では、ステップS2で求めた振幅Lから係数αを求め、この係数αから目標リリーフ圧Pを演算する。
【0069】
そして、ステップS4では、制御装置25側で演算する偏差εを読み込んで、偏差εが閾値以下である場合にはステップS5に移行してステップS3の演算結果をそのまま目標リリーフ圧Pとし、偏差εが閾値を超える場合にはステップS6に移行して目標リリーフ圧Pの値を最大リリーフ圧Pmaxとする。
【0070】
最後に、ステップS7へ移行して、リリーフ圧指令をアクチュエータドライバ23へ出力し、ステップS8は、リリーフ圧指令通りに比例電磁式リリーフ弁15へ供給する電流量を調節する。
【0071】
以上、一連の判断処理が終了すると、引き続き、繰り返して同じ処理が実行されることになり、このようにして、制御部20による比例電磁式リリーフ弁15の制御が継続して実施される。
【0072】
なお、上記したところでは、車体Bの台車Wに対する振動を得るのに、シリンダCに設けたストロークセンサ30で変位を検知するようにしていたが、変位を微分して算出したピストン速度を用いても良いし、シリンダCの一方室R1および他方室R2の圧力の変動にも車体Bの台車Wに対する振動成分が重畳されるので、圧力センサ31,32で一方室R1および他方室R2の圧力を検出して車体Bの台車Wに対する振動を得てもよいし、また、変位フィードバック制御を行っているため、制御装置25における制御指令生成部27中において生成される各制御指令、すなわち、目標モータ回転数指令、目標速度指令、目標電流指令にも車体Bの台車Wに対する振動が重畳されるので、これらの制御指令のうち、いずれかをモニタすることで車体Bの台車Wに対する振動を得てもよい。さらには、車体Bに加速度センサを取付けておき、直接的に車体Bの振動を検知するようにしてもよい。
【0073】
また、上記したところでは、比例電磁式リリーフ弁15と減衰力発生要素17とを別体としているが、図6に示すように、比例電磁式リリーフ弁40を減衰力発生要素としても機能させるようにしてもよい。
【0074】
この比例電磁式リリーフ弁40が設けられるダンパ回路では、メイン流路16aをリリーフ流路として利用し、このリリーフ流路となるメイン流路16aの途中に設けられている。
【0075】
詳しくは、この比例電磁式リリーフ弁40は、比例ソレノイド41と、リリーフ流路となるメイン流路16aの途中に設けた第一通路42と、第一通路42に並列される第二通路43と、第一通路42を開放するよう附勢されるとともに比例ソレノイド通電時に第一通路42を閉じるように設定され、第一通路開放時に流れに抵抗を与える切換弁体44と、第二通路43を閉じるよう附勢されるとともに比例ソレノイド通電時に通電量に応じてリリーフ圧が減少するリリーフ弁体45とを備えて構成されている。
【0076】
より詳しくは、切換弁体44にはリリーフ弁体45側へ向けて延びるプッシュロッド46が接続されており、比例ソレノイド41に通電すると、当該比例ソレノイド41によって切換弁体44が押圧されて遮断ポジションに切換わるとともに、このプッシュロッド46がリリーフ弁体45に当接して比例ソレノイド41の推力をリリーフ弁体45に作用させることができるようになっている。
【0077】
そして、比例ソレノイド41の推力がリリーフ弁体45を附勢するバネ47に対向する向きで当該リリーフ弁体45に作用するので、比例ソレノイド41への通電量を調節することでリリーフ弁体45のリリーフ圧を制御することができる。
【0078】
すなわち、比例ソレノイド41へ電流を供給しない場合、切換弁体44が第一通路42を開放して通過する作動油の流れに抵抗を与えるので、シリンダCはダンパとして機能するとともに、過大な入力に対しては、リリーフ圧が最大に設定されるリリーフ弁体45が第二通路43を開放してリリーフ機能を発揮する。
【0079】
対して、比例ソレノイド41へ電流を供給する場合、切換弁体44が第一通路42を遮断するので、シリンダCはアクチュエータ回路5による作動中において、過大な入力に対しては、リリーフ弁体45が比例ソレノイド41への通電量に応じて調節されるリリーフ圧にて第二通路43を開放してリリーフ機能を発揮する。そうすることで、アクチュエータAの見掛け上の剛性を低くすることができる。
【0080】
このような比例電磁式リリーフ弁40を用いても、アクチュエータAの見掛け上の剛性を制御することができるので、台車W側へ入力された振動が車体W側へ伝播することを抑制することができ、液圧式のアクチュエータAを車体傾斜に用いても車両における乗り心地を向上することができるのである。
【0081】
さらに、この比例電磁式リリーフ弁40にあっては、一つの比例ソレノイド41のみの使用で開閉弁としても、減衰力発生要素としても機能するので、ダンパ回路中のソレノイド切換弁を省略することができ、アクチュエータAのコストを低減することができる。
【0082】
なお、上記したところでは、車体傾斜の手法として、いわゆる振子式といわれる手法を採用する鉄道車両に、本実施の形態のアクチュエータAを適用しているが、車体Aと台車Wの間の左右のそれぞれに、二つのアクチュエータを縦置きに設置して、各アクチュエータを駆動して車体Bを傾斜させるような場合にも、本発明のアクチュエータAを適用することが可能であるのは当然である。
【0083】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】一実施の形態におけるアクチュエータの液圧回路を示す図である。
【図2】一実施の形態におけるアクチュエータを鉄道車両の車体と台車との間に介装した状態を示す図である。
【図3】一実施の形態のアクチュエータにおける制御ブロック図である。
【図4】変位信号における所定周波数帯の振動成分の振幅と、当該振幅に対して重み付けを行う係数との関係を示す図である。
【図5】一実施の形態におけるアクチュエータの比例電磁式リリーフ弁を制御するフローチャートの一例を示す図である。
【図6】一実施の形態の一変形例におけるアクチュエータの液圧回路を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1 液圧源たる油圧ポンプ
2 容器
3 ピストン
4 ロッド
5 アクチュエータ回路
6 ループ通路
7,8,18 ソレノイド切換弁
7a,8a,18a,15a バルブ
7b,8b,18b,15b バネ
7c,8c,18c ソレノイド
9,10 分岐通路
11 アキュムレータ
12 低圧選択弁
13 ダンパ回路
14 リリーフ流路
15,40 比例電磁式リリーフ弁
15c 比例ソレノイド
16 流路
16a メイン流路
16b 一方側上流路
16c 他方側上流路
16d 一方側下流路
16e 他方側下流路
16f 接続通路
17 減衰力発生要素
17a 減衰バルブ
17b 固定絞り
19a,19b,19c,19d 逆止弁
20 制御部
21 バンドパスフィルタ
22 目標リリーフ圧演算部
23 リリーフ弁駆動部
24 モータ駆動部
25 制御装置
26 偏差演算部
27 制御指令生成部
30 ストロークセンサ
31,32 圧力センサ
A アクチュエータ
B 車体
C シリンダ
R1 圧力室たる一方室
R2 圧力室たる他方室
W 台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体と台車との間に介装されるシリンダとシリンダに液圧を供給する液圧源とを備え、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータにおいて、シリンダ内の二つの圧力室を連通するリリーフ流路を設け、当該リリーフ流路の途中に比例電磁式リリーフ弁を設けたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
比例電磁式リリーフ弁は、比例ソレノイドと、リリーフ流路の途中に設けた第一通路と、第一通路に並列される第二通路と、第一通路を開放するよう附勢されるとともに比例ソレノイド通電時に第一通路を閉じるように設定され、第一通路開放時に流れに抵抗を与える切換弁体と、第二通路を閉じるよう附勢されるとともに比例ソレノイド通電時に通電量に応じてリリーフ圧が減少するリリーフ弁体とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
車体の振動あるいは車体の台車に対する振動のうち、所定周波数帯における振動の振幅に基づいて、比例電磁式リリーフ弁のリリーフ圧を調節する請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
車体の振動あるいは車体の台車に対する振動のうち、所定周波数帯における振動の振幅を得、振幅に対して漸減する重み付けを行って比例電磁式リリーフ弁の目標リリーフ圧を得、比例電磁式リリーフ弁のリリーフ圧を当該目標リリーフ圧に調節する請求項1から3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
アクチュエータの目標変位と、アクチュエータの実際の変位との偏差が閾値を越える場合、比例電磁式リリーフ弁のリリーフ圧を最大値に調節する請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項6】
車体に作用する加速度を検知することで車体の振動を得ることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
アクチュエータ内の圧力を検知することで車体の振動を得ることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項8】
アクチュエータの変位を検知することで車体の振動を得ることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項9】
アクチュエータを制御する制御装置で生成される制御指令から車体の振動を得ることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−137423(P2009−137423A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315568(P2007−315568)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】