説明

アクチュエータ

【課題】液圧式であっても車両における乗り心地を向上することが可能なアクチュエータを提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段における鉄道車両の車体Bと台車Wとの間に介装されるシリンダCとシリンダCに液圧を供給する液圧ポンプとを備え、車体Bを台車Wに対して傾斜させるアクチュエータAにおいて、液圧ポンプをアキシャルピストンポンプ1としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車体と台車との間に介装されて車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両が曲線区間を走行する場合、車体には曲線区間の曲率中心とは反対側に向く遠心力が作用する。この遠心力は、車両の走行速度が高くなればなるほど大きくなる。そこで、鉄道車両の軌道では、曲率中心側の内側レールと反対側の外側レールにカントと呼ばれる高低差を設けて、上記遠心力を緩和し、曲線走行時の鉄道車両の速度向上を図っている。
【0003】
しかしながら、カント量(各レールの高低差量)は一端設定されると変更することができず、走行速度が異なる鉄道車両が走行する線区では、高速走行する鉄道車両になればなるほど、カント量が不足して超過遠心力が鉄道車両に作用して、乗心地が悪化してしまうといった問題がある。
【0004】
そこで、近年では、振子式の車体傾斜装置や台車と車体との間に設けた気体バネを用いて車体を台車に対して傾斜させる車体傾斜装置を搭載するようにし、上記カント量不足による超過遠心力を緩和するため、鉄道車両が曲線区間を走行する際に、台車に対して車体を曲率中心側に傾けるようにして乗り心地の悪化を抑制することで、曲線区間での高速走行を実現している。
【0005】
このような車体傾斜装置にあっては、具体的にはたとえば、車体と台車との間に油圧で駆動される直動型のアクチュエータを介装し、このアクチュエータを伸縮させることで車体を台車に対して傾斜させるようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−291897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記アクチュエータでは、鉄道車両が所持しているコンプレッサから供給される大きな圧縮性を持つ圧縮空気を利用すると推力と応答性が不十分となって狙った車体傾斜角の確保が難しいことから、作動流体を作動油として、鉄道車両で所持しない液圧ポンプを搭載するようにしている。
【0007】
また、車体傾斜用のアクチュエータは、重量物である車体を傾斜させるのに必要な推力を発揮し、高い制御応答性を発揮する必要があるため、アクチュエータに搭載される液圧ポンプは、高い容積効率が求められるとともに、経済的に安価であって高い信頼性が求められる。
【0008】
そこで、このような車体傾斜用のアクチュエータに搭載される液圧ポンプとしては、上記要求を満足するギヤポンプが採用されるのが一般的であり、特に高い容積効率を満足させるため、ギヤポンプの歯車の端面に摺接するとともに歯車の軸を回転自在に軸支するブッシュの背面にポンプ吐出側の高圧を作用させて油圧漏れを防止するプレッシャローディング方式を採用するものが使用される。
【0009】
このプレッシャローディング方式を採用したギヤポンプは、上述のように、ブッシュに高圧を作用させることによって、ブッシュを歯車側へ附勢するプレッシャローディング力を得ており、当該プレッシャローディング力で附勢されたブッシュで歯車を挟み込むことで加工誤差を吸収しつつ、高い容積効率を発揮させることができるため、高圧に向くとともに安価に製造できるという利点を備えている。
【0010】
しかし、プレッシャローディング方式のギヤポンプは、上記のように高容積効率および経済性を備える反面、ブッシュが高圧によって附勢されて歯車の端面に密着しており、歯車とブッシュとの間に摩擦力が生じるため高圧時の起動に大きなトルクを必要とし、作動油の圧縮性の小ささも手伝って高圧時の外力の入力に対し、アクチュエータが伸縮しづらい状態となり、アクチュエータの見掛け上の剛性は非常に高くなる。
【0011】
ここで、プレッシャローディング方式のギヤポンプにおける摩擦力を低減するためには、ブッシュを附勢するプレッシャローディング力を小さくすればよいのであるが、そうすると、今度は、ステップ的にギヤポンプを起動した際に歯車とブッシュとの間に圧力が回って歯車からブッシュが浮いて著しい容積効率の低下を招くとともに、当該容積効率の低下を回復するには一端ギヤポンプの停止が必要となる。したがって、プレッシャローディング方式のギヤポンプをアクチュエータの駆動に使用する場合には、プレッシャローディング力を小さくすることができず、ギヤポンプの駆動の際に生じる摩擦力を小さくするには限界があり、外力によりシリンダの作動油をギヤポンプに送ってギヤポンプを回転させようとしても上記摩擦力によってギヤポンプは回転することができない状態となるため、結果的に、外力入力時のアクチュエータの見掛け上の剛性を低くすることができないのである。
【0012】
そして、アクチュエータの見掛け上の剛性は一般にはある程度高い方が車体傾斜における制御応答性の向上が見込めてよいのであるが、ギヤポンプを搭載したアクチュエータにおける外力入力時の見掛け上の剛性は高くなりすぎて、アクチュエータが棒状となって台車と車体との間に介装されるバネによる振動吸収が損なわれ、アクチュエータを介して台車における振動が車体に伝達されてしまうことになり、却って車両における乗り心地を悪化させてしまう虞がある。
【0013】
なお、アクチュエータの外力入力時の見掛け上の剛性とは、作動流体を含めたアクチュエータ全体の伸縮方向の剛性であり、ギヤポンプにおける摩擦力が大きければ大きいほど、また、作動流体の圧縮性が小さくなればなるほど、当該見掛け上の剛性は高くなる傾向を示すことになる。
【0014】
そこで、本発明は上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、液圧式であっても車両における乗り心地を向上することが可能なアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるアクチュエータは、鉄道車両の車体と台車との間に介装されるシリンダとシリンダに液圧を供給する液圧ポンプとを備え、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータであって、液圧ポンプをアキシャルピストンポンプとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアクチュエータによれば、シリンダを駆動する液圧ポンプがアキシャルピストンポンプとされているので、アクチュエータの見掛け上の剛性を低めて、台車W側へ入力された振動が車体側へ伝播することを抑制することができ、液圧式のアクチュエータAを車体傾斜に用いても車両における乗り心地を向上することができるのである。
【0017】
また、換言すれば、車両における乗り心地を向上することができるので、アクチュエータの作動流体を作動油等の液体とすることができ、推進力不足を解消し、車体傾斜の応答性を向上させることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態におけるアクチュエータの液圧回路を示す図である。図2は、一実施の形態におけるアクチュエータを鉄道車両の車体と台車との間に介装した状態を示す図である。
【0019】
一実施の形態におけるアクチュエータAは、図1および図2に示すように、鉄道車両の車体Bと台車Wとの間に介装されるシリンダCと、シリンダCに液圧を供給するモータMで駆動されるアキシャルピストンポンプ1とを備えて構成されている。
【0020】
シリンダCをアキシャルピストンポンプ1から供給する液圧で駆動することができるようになっており、本実施の形態では、具体的には、液圧でシリンダCを駆動するためアクチュエータ回路5を備えている。
【0021】
以下、各部について詳細に説明すると、シリンダCは、容器2と、容器2内に摺動自在に挿入されて容器2内に一方室R1および他方室R2の二つの圧力室を区画するピストン3と、ピストン3に連結されて容器2内に移動自在に挿入されるロッド4とを備えて構成され、一方室R1および他方室R2内には液体としての作動油が充填され、この実施の形態の場合、いわゆる両ロッド型の油圧シリンダとされている。なお、本実施の形態にあっては、シリンダCの作動には使用される液体は作動油とされているが、液体はアクチュエータAの作動に適するものであればよい。
【0022】
そして、アキシャルピストンポンプ1は、シリンダCをアクチュエータとして動作させるアクチュエータ回路5中に組み込まれ、アクチュエータ回路5は、ループ通路6と、ループ通路6中に設けた二つのソレノイド切換弁7,8と、ループ通路6から分岐する二つの分岐通路9,10と、分岐通路9,10のうち低圧側をアキュムレータ11に連通する低圧選択弁12とを備えて構成されている。
【0023】
詳細には、アキシャルピストンポンプ1は、シリンダCの一方室R1と他方室R2とを連通するループ通路6の途中に設けられ、この場合、モータMによって駆動される双方向吐出型のアキシャルピストンポンプとして構成されている。なお、アキシャルピストンポンプ1で生じる漏れ油圧はアキュムレータ11で回収されるようになっている。
【0024】
アキシャルピストンポンプ1は、周知であるので詳しくは図示しないが、具体的にはたとえば、中空なハウジングと、ハウジング内に回転自在に収容されるとともにモータMによって回転駆動されるシリンダブロックと、シリンダブロックの同一円周上に等間隔を持って奇数個形成されるシリンダ孔内に摺動自在に挿入されるピストンと、ボールジョイントを介して各ピストンの一端を保持するピストンシューと、ピストンシューに摺接して当該ピストンシューをシリンダブロックの軸線に対して傾斜させる斜板と、シリンダブロックの端面に摺接して円弧状の一対の吸排ポートを備えたバルブプレートとを備えて構成されており、モータMを正転および逆転することによって双方向吐出が可能とされ、モータMの回転速度によって単位時間当たりの吐出流量を変更することが可能である。なお、アキシャルピストンポンプ1は、斜板の角度を変更できるものであってもよい。
【0025】
そして、このアキシャルピストンポンプ1は、駆動時に自己発生する圧力でハウジング内に収容されるピストンシューを斜板へ附勢するとともに、シリンダブロックをバルブプレートへ附勢するので、ピストンシュー−斜板間、およびシリンダブロック−バルブプレート間で、シリンダブロックの回転に抗する摩擦力が生じるが、当該摩擦力はプレッシャローディング方式のギヤポンプのように過大となることが無いので、アキシャルピストンポンプ1を外部入力で回転させる際には、ギヤポンプ程大きなトルクを必要としないという特徴を備えている。すなわち、アキシャルピストンポンプ1は、ギヤポンプより小さい外部入力で回転駆動することができるという特徴を備えている。
【0026】
つづいて、ループ通路6の途中であって、アキシャルピストンポンプ1と一方室R1との間には、ノーマルクローズのソレノイド切換弁7が介装され、さらに、アキシャルピストンポンプ1と他方室R2との間にも、ノーマルクローズのソレノイド切換弁8が介装されている。
【0027】
ソレノイド切換弁7は、アキシャルピストンポンプ1と一方室R1とを連通する連通ポジションと、アキシャルピストンポンプ1から一方室R1への流れのみを許容する遮断ポジションとを備えたバルブ7aと、遮断ポジションを採るようにバルブ7aを附勢するバネ7bと、通電時にバルブ7aをバネ7bに対向して連通ポジションに切換えるソレノイド7cとを備えて構成され、他方のソレノイド切換弁8は、アキシャルピストンポンプ1と他方室R2とを連通する連通ポジションと、アキシャルピストンポンプ1から他方室R2への流れのみを許容する遮断ポジションとを備えたバルブ8aと、遮断ポジションを採るようにバルブ8aを附勢するバネ8bと、通電時にバルブ8aをバネ8bに対向して連通ポジションに切換えるソレノイド8cとを備えて構成されている。
【0028】
さらに、分岐通路9は、ループ通路6の途中であってソレノイド切換弁7とアキシャルピストンポンプ1との間から分岐し、他方の分岐通路10は、ループ通路6の途中であってソレノイド切換弁8とアキシャルピストンポンプ1との間から分岐しており、これら分岐通路9,10のうち、低圧側が低圧選択弁12によってアキュムレータ11へ連通される。
【0029】
低圧選択弁12は、分岐流路9をアキュムレータ11に連通する一方側連通ポジションと、分岐流路10をアキュムレータ11に連通する他方側連通ポジションと、分岐流路9,10の双方をアキュムレータ11に連通する双方連通ポジションとを備えたバルブ12aと、バルブ12aを他方側連通ポジションに切換えるように分岐流路9の圧力を作用させるパイロット通路12bと、バルブ12aを一方側連通ポジションに切換えるように分岐流路10の圧力を作用させるパイロット通路12cとを備え、中立位置では双方連通ポジションを採るように構成されている。
【0030】
したがって、分岐流路9側の圧力が分岐流路10側の圧力を上回ると、低圧選択弁12は、他方側連通ポジションを採って分岐流路10をアキュムレータ11に連通し、反対に、分岐流路10側の圧力が分岐流路9側の圧力を上回ると、低圧選択弁12は、一方側連通ポジションを採って分岐流路9をアキュムレータ11に連通する。
【0031】
すなわち、ソレノイド切換弁7,8をそれぞれ連通ポジションとして、アキシャルピストンポンプ1を一方室R1へ油圧を供給するように駆動すると、一方室R1内に油圧が供給されてシリンダCにおけるロッド4が、図1および図2中、右方へ推進され、車体Bを反時計周りに傾斜させることができ、反対に、ソレノイド切換弁7,8をそれぞれ連通ポジションとして、アキシャルピストンポンプ1を他方室R2へ油圧を供給するように駆動すると、他方室R2内に油圧が供給されてシリンダCにおけるロッド4が、図1および図2中、左方へ推進され、車体Bを時計周りに傾斜させることができる。つまり、当該アクチュエータAを、車体を傾斜させるアクチュエータとして機能させることができる。
【0032】
そして、アキシャルピストンポンプ1を一方室R1へ油圧を供給するように駆動する場合、アキシャルピストンポンプ1は、低圧側となる他方室R2から、あるいは、低圧選択弁12によって選択される分岐流路10を介してアキュムレータ11から、あるいは、その両方から作動油を吸い込んで、一方室R1側へ作動油を吐出する。反対に、アキシャルピストンポンプ1を他方室R2へ油圧を供給するように駆動する場合、アキシャルピストンポンプ1は、低圧側となる一方室R1から、あるいは、低圧選択弁12によって選択される分岐流路9を介してアキュムレータ11から、あるいは、その両方から作動油を吸い込んで、他方室R2側へ作動油を吐出する。
【0033】
したがって、アキシャルピストンポンプ1は、作動油の圧縮等による体積減少が生じても、アキュムレータ11から作動油の供給を受け、問題なく一方室R1および他方室R2のうち希望する圧力室へ油圧を供給することができる。
【0034】
また、シリンダCの推力発生方向が逆転する折には、一方室R1の圧力と他方室R2の圧力の高低が逆転するので、低圧選択弁12は、一端中立位置の双方連通ポジションを経由して切換わり、分岐流路9,10を一度アキュムレータ11に連通する。
【0035】
なお、低圧選択弁12は、作動油の温度上昇による内圧増大の防止、作動油の温度低下による負圧の防止、およびシリンダCの製作加工誤差による一方室R1と他方室R2の容積差によるアキュムレータからの作動油の供給等のために設けられている。
【0036】
また、この実施の形態の場合、アクチュエータAの変位(シリンダCにおける容器2に対するロッド4の変位)をセンシングするストロークセンサ30を備えており、ストロークセンサ30で検知するアクチュエータAの変位に基づいて、図示しない制御装置によって、アキシャルピストンポンプ1が駆動制御されるようになっている。
【0037】
なお、このアクチュエータAにあっては、アクチュエータ回路5の他に、失陥時その他においてシリンダCをダンパとして機能させるダンパ回路13をも備えている。
【0038】
このダンパ回路13について説明すると、ダンパ回路13は、シリンダC内の二つの圧力室R1,R2を連通する流路14を備えており、この流路14は、減衰力発生要素15とソレノイド切換弁16とが設けられるメイン流路14aと、一方室R1からメイン流路14aに向かう流れのみを許容する一方側上流路14bと、他方室R2からメイン流路14aに向かう流れのみを許容する他方側上流路14cと、メイン流路14aから一方室R1へ向かう流れのみを許容する一方側下流路14dと、メイン流路14aから他方室R2へ向かう流れのみを許容する他方側下流路14eとを備えて構成されている。
【0039】
一方側上流路14bは、途中に一方室R1からメイン流路14aへ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁17aを備え、この逆止弁17aによって一方側上流路14bを一方室R1からメイン流路14aへ向かう一方通行の通路としている。他の他方側上流路14c、一方側下流路14d、他方側下流路14eの途中にも同様に、それぞれ逆止弁17b,17c,17dが設けられ、それぞれ上記した通りの一方通行の通路となるように設定されている。
【0040】
本実施の形態にあっては、このように流路14が構成されることで、作動油は、メイン流路14aを一方側上流路14bおよび他方側上流路14cに接続されている方を上流として、一方側下流路14dおよび他方側下流路14eに接続されている下流側へ流れることになり、メイン流路14aも一方通行とされている。
【0041】
また、メイン流路14aの下流は、接続通路14fを介して上述のアキュムレータ11に接続され、メイン流路14aの下流の圧力はアキュムレータ11と同圧となるように設定されている。
【0042】
そして、メイン流路14aの途中に設けられる減衰力発生要素15は、自身の上流側の圧力に応じて流路面積を調節する減衰バルブ15aと、当該減衰バルブ15aに並列配置される固定絞り15bとで構成され、メイン流路14aの上流側の圧力が低いときには、減衰バルブ15aが開かず、作動油に固定絞り15bを通過させ、流量が増加して固定絞り15bによる圧力損失が大きくなり上流側の圧力が減衰バルブ15aのクラッキング圧を上回るようになると、減衰バルブ15aが開いて作動油は減衰バルブ15aをも介してメイン流路14aの下流側へ流れるようになる。
【0043】
このように、減衰力発生要素15は、作動油がメイン流路14aを流れる際に、この流れに減衰バルブ15aと固定絞り15bとで抵抗を与えて、シリンダCの伸縮を抑制する減衰力を発揮させる発生源として機能する。
【0044】
さらに、ソレノイド切換弁16は、ノーマルオープンの切換弁とされ、メイン流路14aを開放する連通ポジションと、メイン流路14aを遮断する遮断ポジションとを備えたバルブ16aと、連通ポジションを採るようにバルブ16aを附勢するバネ16bと、通電時にバルブ16aをバネ16bに対向して遮断ポジションに切換えるソレノイド16cとを備えて構成されている。
【0045】
ここで、ソレノイド切換弁7,8が遮断ポジションであってアクチュエータ回路5側でシリンダCを駆動しない状態を考えると、ソレノイド切換弁16が遮断ポジションを採ると、メイン流路14aが遮断状態に維持され、シリンダCの一方室R1と他方室R2との連通が断たれた状態となるので、シリンダCは伸縮不能なロック状態とされる。他方、いわゆる失陥時にあって、ソレノイド切換弁7,8が遮断ポジションが採るとともにソレノイド切換弁16が連通ポジションを採る場合には、メイン流路14aが開放状態に維持され、シリンダCが外力によって強制的に伸縮させられると、作動油は流路14を介して、一方室R1から他方室R2へ、あるいは、他方室R2から一方室R1へと移動可能となり、また、上記移動に際して必ずメイン流路14aの減衰力発生要素15を通過するので、シリンダCは外力による強制伸縮に対して伸縮を抑制する減衰力を発揮し、シリンダCをダンパとして機能させることができるようになる。
【0046】
また、このダンパ回路13では、一方室R1と他方室R2とを連通するリリーフ流路18と、リリーフ流路18の途中に設けたリリーフ弁19とを備えている。
【0047】
リリーフ流路18は、具体的には、減衰力発生要素15およびソレノイド切換弁16を迂回してメイン流路14aの上流と下流を連通することによって、一方室R1と他方室R2とを連通している。
【0048】
そして、ソレノイド切換弁16の開閉に関わらず、シリンダCに伸縮方向の過大な入力があって、一方室R1あるいは他方室R2内の圧力が所定圧を超える異常高圧となると、リリーフ弁19が開放動作して、異常高圧となった一方室R1あるいは他方室R2の一方の圧力を低圧側の他方へ逃がして、アクチュエータAのシステム全体を保護するようになっている。また、作動油の体積が減少する場合には、ソレノイド切換弁7,8が連通ポジション、遮断ポジションを問わずに一方室R1および他方室R2とアキュムレータ11との連通を許容するのでアキュムレータ11から一方室R1および他方室R2に作動油が供給されることになる。このように、この実施の形態のアクチュエータAでは、上記回路構成を採用することで、温度変化による作動油の体積補償される。このように、ソレノイド切換弁7,8における遮断ポジションにおいて、ループ通路6を遮断していても温度低下に伴う体積補償を行うことを可能とするためアキュムレータ11から一方室R1および他方室R2へ向かう流れを許容するようにしているが、当該体積補償をアクチュエータ回路5において行わない場合には、遮断ポジションにおいてループ通路6における双方向の流れを遮断するようにしてもよい。
【0049】
さて、このように構成されたアクチュエータAでは、上述のように、シリンダCを駆動する液圧ポンプがアキシャルピストンポンプ1とされており、このアキシャルピストンポンプ1は、ギヤポンプに比較して回転駆動に対して抵抗となる摩擦力が小さく、小さいトルクで回転させることができるので、モータMの出力以上の外部入力によってシリンダCを伸縮させやすくなり、アクチュエータAの見掛け上の剛性は従来のアクチュエータに比較して低くなる。
【0050】
ここで、鉄道車両が走行中に、外乱によって車体Bに伝達されると乗り心地を悪化させる周波数帯の振動が台車Wに作用する場合、アクチュエータの見掛け上の剛性が高いと台車Wに作用した振動を車体Bへ伝達してしまうことになるが、アキシャルピストンポンプ1の駆動トルクが小さく、本発明のアクチュエータAの見掛け上の剛性は低いので、台車Wに入力された振動により一方室R1または他方室R2に発生した圧力でアキシャルピストンポンプ1が回転させられ、アクチュエータAにおけるシリンダCが伸縮して、台車Wから車体B側への振動伝播を絶縁することができるようになる。
【0051】
したがって、本発明のアクチュエータAでは、シリンダCを駆動する液圧ポンプがアキシャルピストンポンプ1とされているので、アクチュエータの見掛け上の剛性を低めて、台車W側へ入力された振動が車体B側へ伝播することを抑制することができ、液圧式のアクチュエータAを車体傾斜に用いても車両における乗り心地を向上することができるのである。
【0052】
また、換言すれば、車両における乗り心地を向上することができるので、アクチュエータAの作動流体を作動油等の液体とすることができ、推進力不足を解消し、車体傾斜の応答性を向上させることができるのである。
【0053】
さらに、起動トルクが小さくてすむので、シリンダCの動き出しを滑らかにすることができ、アクチュエータAによる車体傾斜を実施した際に、車両搭乗者に起動時の衝撃を知覚させず、この点においても車両における乗り心地を向上することができる。
【0054】
なお、上記したところでは、車体傾斜の手法として、いわゆる振子式といわれる手法を採用する鉄道車両に、本実施の形態のアクチュエータAを適用しているが、車体Aと台車Wの間の左右のそれぞれに、二つのアクチュエータを縦置きに設置して、各アクチュエータを駆動して車体Bを傾斜させるような場合にも、本発明のアクチュエータAを適用することが可能であるのは当然である。
【0055】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】一実施の形態におけるアクチュエータの液圧回路を示す図である。
【図2】一実施の形態におけるアクチュエータを鉄道車両の車体と台車との間に介装した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 液圧源たるアキシャルピストンポンプ
2 容器
3 ピストン
4 ロッド
5 アクチュエータ回路
6 ループ通路
7,8,16 ソレノイド切換弁
7a,8a,16a バルブ
7b,8b,16b バネ
7c,8c,16c ソレノイド
9,10 分岐通路
11 アキュムレータ
12 低圧選択弁
13 ダンパ回路
14 流路
14a メイン流路
14b 一方側上流路
14c 他方側上流路
14d 一方側下流路
14e 他方側下流路
14f 接続通路
15 減衰力発生要素
15a 減衰バルブ
15b 固定絞り
17a,17b,17c,17d 逆止弁
18 リリーフ流路
19 リリーフ弁
30 ストロークセンサ
A アクチュエータ
B 車体
C シリンダ
R1 圧力室たる一方室
R2 圧力室たる他方室
W 台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体と台車との間に介装されるシリンダとシリンダに液圧を供給する液圧ポンプとを備え、車体を台車に対して傾斜させるアクチュエータにおいて、液圧ポンプをアキシャルピストンポンプとしたことを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−137425(P2009−137425A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315570(P2007−315570)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】