説明

アクチュエータ

【課題】 掻き分けによるシール部材の拡開量を小さくし、それによって、構成の複雑化や装置の大型化を来すことなくシール性能の向上を図ることが可能なアクチュエータを提供すること。
【解決手段】 長手方向に延長・形成された開口部を備えたハウジングと、開口部に沿ってハウジングの長手方向に移動するスライダと、スライダをハウジングの長手方向に移動させる駆動手段と、ハウジングの開口部の対向する縁部にそれぞれ設けられその先端が係合することにより防塵・防滴機能を発揮する一対のシール部材と、スライダの進行方向両側に取り付けられ一対のシール部材を掻き分けるシール掻分部材とを具備し、シール掻分部材は、一対のシール部材を互いに離間する方向に掻分る掻分部と、掻分部による掻き分けによって生じる掻分開口部を覆う覆い部と、掻分部によりシール部材を掻き分ける際シール部材の拡開量を規制する拡開規制部と、から構成されているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防塵・防滴構造を有するアクチュエータに係り、特に、シール部材を掻き分けながらスライダを移動させる構成のものにおいて、掻き分けによるシール部材の拡開量を規制する拡開規制部を設けることにより、シール性能の向上を図ることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防塵・防滴構造を有するアクチュエータとしては、例えば、特許文献1に示すものがある。
これは、略U字型に形成され開口部を備えたハウジングと、上記ハウジング内に設けられた駆動手段と、上記ハウジングに対して移動可能に設けられ上記駆動手段によって駆動されるスライダと、上記ハウジングの開口部を上面及び左右側面方向から閉塞するように設置された駆動手段カバと、上記ハウジングと上記駆動手段カバとの間に設置された防塵・防滴シール手段とを具備したものである。そして、上記防塵・防滴シール手段は、上記ハウジングに設けられたサイドカバーと上記駆動手段カバに設けられたサイドカバーとを重合させてラビリンス構造とし、そこにシールを上下2段にわたって設けた構成をなしている。また、スライダ移動時には、シール掻分部材によって上記シールを掻き分けていくことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−344896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成では、次のような問題があった。
例えば、特許文献1に記載されたアクチュエータの場合には、スライダ移動時に、シール掻分部材によってシールを掻き分けていくことになるが、その際、掻き分けによってシールが大きく拡開してしまうことになり、それによって、シール性能が低下してしまうという問題があった。
因みに、従来の場合には、そのような問題点を解決するために、シールを上下二段に設けるようにしていたが、それでは、構成が複雑化してしまうとともに大型化してしまうことになる。
【0005】
本発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、掻き分けによるシール部材の拡開量を小さくし、それによって、構成の複雑化や装置の大型化を来すことなくシール性能の向上を図ることが可能なアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく請求項1に記載されたアクチュエータは、長手方向に延長・形成された開口部を備えたハウジングと、上記開口部に沿って上記ハウジングの長手方向に移動するスライダと、上記スライダを上記ハウジングの長手方向に移動させる駆動手段と、上記ハウジングの開口部の対向する縁部にそれぞれ設けられその先端が係合することにより防塵・防滴機能を発揮する一対のシール部材と、上記スライダの進行方向両側に取り付けられ上記一対のシール部材を掻き分けるシール掻分部材と、を具備し、上記シール掻分部材は、上記一対のシール部材を互いに離間する方向に掻き分ける掻分部と、上記掻分部による掻き分けによって生じる掻分開口部を覆う覆い部と、上記掻分部により上記一対のシール部材を掻き分ける際上記一対のシール部材の拡開量を規制する拡開規制部と、から構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載されたアクチュエータは、請求項1記載のアクチュエータにおいて、上記拡開規制部には向かい合う一対の拡開規制面が形成されており、該一対の拡開規制面は上記掻分部の先端側に向かうほど互いに近接していくように形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3記載のアクチュエータは、請求項2記載のアクチュエータにおいて、上記覆い部には、上記一対のシール部材をガイドする一対のシールガイドが設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項4記載のアクチュエータは、請求項3記載のアクチュエータにおいて、上記掻分部の先端が舳先形状をなしていることを特徴とするものである。
また、請求項5記載のアクチュエータは、請求項4記載のアクチュエータにおいて、上記ハウジングは作業空間側を閉じ設置面側を開口部としていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、請求項1記載のアクチュエータによると、スライダの進行方向両側に上記一対のシール部材を掻き分けるシール掻分部材が取り付けられており、上記シール掻分部材は、上記一対のシール部材を互いに離間する方向に掻分る掻分部と、上記掻分部による掻き分けによって生じる掻分開口部を覆う覆い部と、上記掻分部により上記一対のシール部材を掻き分ける際上記一対のシール部材の拡開量を規制する拡開規制部と、から構成されているため、上記拡開規制部により上記掻分開口部を最小限の大きさとすることができるとともに、上記掻分開口部を上記覆い部によって覆うことで、簡易な構成により所望の防塵・防滴構造を備えるアクチュエータを得ることができる。
また、請求項2記載のアクチュエータは、請求項1記載のアクチュエータにおいて、上記拡開規制部には向かい合う一対の拡開規制面が形成されており、該一対の拡開規制面は上記掻分部の先端側に向かうほど互いに近接していくように形成されているので、上記拡開規制部による上記一対のシール部材の拡開量の規制をより効果的に行うことができる。
また、請求項3記載のアクチュエータは、上記覆い部には、上記一対のシール部材をガイドする一対のシールガイドが設けられているため、上記掻分部によって掻き分けられた一対のシール部材が所定の距離以上に離間しないようにすることができ、これによりシール性能を高めることができる。
また、請求項4記載のアクチュエータは、上記掻分部の先端が舳先形状をなしているため、上記シール部材の上記ハウジング内部側において、上記掻分部が上記掻分開口部の閉塞することでシール性能を高めることができるとともに、上記舳先形状の掻分部によって前方側から徐々に上記シール部材を掻き分けていくことで上記スライダの移動をスムーズなものとすることができる。
また、請求項5記載のアクチュエータは、上記ハウジングが作業空間側を閉じ設置面側を開口部とする構成となっているため、簡易な手段によりシール性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータを示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータを示す底面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図2におけるIV−IV断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図5(a)は図2におけるV−V断面図であり、図5(b)は図5(a)におけるb部分の拡大図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータのシール掻分部材周辺を示す拡大斜視図であり、ハウジング、レール、及びシール部材の一部を除去して示したものである。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図7(a)は図5(b)のVII−VII断面図であり、図7(b)は図7(a)のb−b断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部材を示す正面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部材を示す背面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部材のシール掻分部材本体を示す斜視図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部材のシール掻分部材本体を示す平面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部材の覆い部を示す平面図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態を示す図で、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1乃至図13を参照して、本発明の第1の実施の形態によるアクチュエータの構成について説明する。
本実施の形態によるアクチュエータ1は、図1乃至図6に示すような構成を成している。まず、ハウジング3があり、このハウジング3は図4及び図5に示すように、略逆U字型の断面形状を成している。すなわち、上記ハウジング3は、上部フレーム5と、この上部フレーム5の左右両側部に設けられた一対の側部フレーム7、7とから構成されている。また、上記ハウジング3の図4中下側、すなわち、設置面8側が開口部9となっている。
なお、上記側部フレーム7、7は、図示しないボルトによって、上記上部フレーム5に固定されている。
【0010】
また、図3に示すように、上記ハウジング3の開口部9の幅方向中央部(図3中上下方向中央部)には蓋体11が設置されており、この蓋体11は上記ハウジング3の長手方向(図3中左右方向)に沿って延長・設置されている。また、図3及び図4に示すように、上記一対の側部フレーム7、7と上記蓋体11との間には、隙間13、13が、上記ハウジング3の長手方向に沿ってそれぞれ延長・形成されている。
なお、上記アクチュエータ1が設置された場合には、上記隙間13、13は、設置面8側(図4中下側)に指向し、上記ハウジング3のそれ以外の部分、すなわち、作業空間側(図4中上側)は全て閉じられる。
【0011】
また、図2及び図3に示すように、上記ハウジング3の長手方向後端側(図2中右端)には、モータカバ15が接続されている。このモータカバ15は、作業空間側(図2中上側)を覆う逆U字型の上部モータカバ15aと、その設置面8側(図2中下側)を閉塞する底部モータカバ15bとから構成されている。
【0012】
また、上記ハウジング3の長手方向前端(図3中左端)は端栓17aによって閉塞されており、上記モータカバ15の長手方向後端(図3中右端)は端栓17bによって閉塞されている。
【0013】
また、図1及び図2に示すように、上記ハウジング3の長手方向(図2中左右方向)両端側には、脚部19、19が設けられている。これら脚部19、19を設けることにより、上記ハウジング3の設置面8側(図2中下方向)に空間を確保し、それによって、後述するスライダの移動を保障している。
【0014】
また、図1及び図2に示すように、アクチュエータ1の後端側(図2中右側)には、制御ケーブル用コネクタ21と電源ケーブル用コネクタ25が設置されている。上記制御ケーブル用コネクタ21にはアクチュエータ1の制御に用いられる図示しない制御ケーブルが接続される。また、上記電源ケーブル用コネクタ25には、上記アクチュエータ1に電源を供給する電源ケーブル23が接続されることになる。
【0015】
また、上記モータカバ15内部には図示しないモータが設置されている。そして、図4乃至図6に示すように、上記ハウジング3内部には、このモータの回転軸にカップリング機構(図示せず)を介して連結されたボールネジ27が収容・配置されている。
【0016】
上記ボールネジ27にはボールナット29が螺合されている。このボールナット29にはスライダ31が固着されている。上記スライダ31は、図4に示すように、既に説明した隙間13、13を介して作業空間側に、上記ハウジング3の作業空間側の面を跨ぐように突出・配置されている。すなわち、上記スライダ31は、上記ボールナット29に固着され上記隙間13、13を介して上記ハウジング3外部の設置面8側(図4中下側)に突出・形成されたスライダ本体31aと、上記スライダ本体31aに固着され上記ハウジング3を跨ぐように略逆U字型に形成されたテーブル31bとから構成されている。
【0017】
上記スライダ31の作業空間側の面(図4中上側の面及び左右両側の面)には、上記アクチュエータ1の使用目的に応じて、図示しない様々な載置物が載置・固定される。
なお、図4中符号32は上記スライダ31に設けられたネジ穴であり、上記図示しない載置物をスライダ31に載置・固定する際に使用する。
【0018】
図4に示すように、上記ハウジング3の内部であって、上記スライダ本体31aの上側(図4中上側)の幅方向両端(図4中左右方向両端)には、その横断面形状が略半円形を成す溝が形成されたレール33、33′が設置されている。一方、上部フレーム5の内周面には、上記レール33、33′と対向するようにレール35、35′がそれぞれ対向・設置されている。上記レール35、35′にも略半円形状の横断面形状を成す溝が形成されている。上記レール33、33′は上記スライダ本体31aの全長にわたって設けられており、上記レール35、35′は上記ハウジング3の全長にわたって設けられている。
【0019】
上記レール33と上記レール35との間にはボール循環路36aが形成されている。同様に、上記レール33′と上記レール35′との間にもボール循環路36a′が形成されている。また、上記スライダ本体31aにも、ボール循環路36b、36b′がそれぞれ形成されている。
【0020】
また、図5(a)や図6に示すように、上記スライダ本体31aの進行方向両端面(図5(a)中紙面垂直方向両端面)のそれぞれには、エンドキャップ38、38´が取り付けられている。これらエンドキャップ38、38′には、上記ボール循環路36aとベール循環路36bを連通する図示しないリターン路、上記ボール循環路36a′とボール循環路36b′を連通する図示しないボールリターン路が形成されている。
【0021】
そして、複数個のボール37が、ボール循環路36a、ボール循環路36b、及び、両側のエンドキャップ38、38の図示しないボールリターン路を循環する。同様に、複数個のボール37′が、ボール循環路36a′、ボール循環路36b′、及び、両側のエンドキャップ38′、38′の図示しないボールリターン路を循環する。
上記レール33、33′、35、35′、及び、上記ボール37、37′は鋼製である。また、上記ボールネジ27、上記ボールナット29も鋼製である。また、上記レール33、33′、35、35′、上記ボール37、37′、上記ボールネジ27、上記ボールナット29以外の構造材はアルミニウム製である。
なお、各部材の材質はあくまで一例である。
以上が本実施の形態によるアクチュエータの概略の構成である。
【0022】
次に、既に説明した隙間13、13に設けられているシールのための構成を、図5乃至図13を参照して詳細に説明する。
上記隙間13、13の内一方の隙間13をみると、図5(b)に示すように、その幅方向(図5(b)中左右方向)の対向する縁部には、それぞれシール部材39、39′が設けられている。上記シール部材39は、上記ハウジング3の側部フレーム7の先端に取り付けられている。すなわち、上記側部フレーム7の先端部には所定形状の溝41が形成されていて、上記シール部材39の基端部43を上記溝41内に圧入することにより、上記シール部材39が上記側部フレーム7に固定されている。そして、上記シール部材39は、上記側部フレーム7側から内側(図5(b)中右側)であって斜め下方(図5(b)中下側)に指向した状態で延長されている。
【0023】
一方、上記シール部材39′は前記蓋体11に取り付けられている。すなわち、上記蓋体11の側端部には所定形状の溝41′が形成されていて、上記シール部材39′の基端部43′を上記溝41′内に圧入することにより、上記シール部材39′が上記蓋体11に固定されている。そして、上記シール部材39′は、上記蓋体11側から外側(図5(b)中左側)であって斜め下方(図5(b)中下側)に指向した状態で延長されている。
なお、シール39′側において上記シール39側と同じ構成要素については同じ番号に「′」を付して示す。
【0024】
なお、図5(a)に示すように、上記隙間13、13の内他方の隙間13側についても同様の構成になっていて、その幅方向(図5(a)中左右方向)に対向する縁部には、それぞれシール部材39、39′が設けられている。
なお、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明を省略する。
【0025】
そして、図5(b)に示すように、上記シール部材39、39′の先端部は互いに係合していてシール部45を構成している。このシール部45によって、上記ハウジング3内部への異物の侵入を防ぐとともに、内部で発生した粉塵等の外部ヘの流出を防止するようにしている。
【0026】
次に、上記シール部45の構成についてさらに詳細に説明する。図5(b)に示すように、上記シール部材39の先端側(図5(b)中中央側)であって上面側(図5(b)中上側)には、略三角形の横断面形状をなす上側係合凸部47が突出・形成されている。また、上記シール部材39の先端には先端部49が設けられている。さらに、上記シール部材39の先端側(図5(b)中中央側)の下面側(図5(b)中下側)には、下側凸部51が形成されている。この下側凸部51内には、上記シール部材39の長手方向(図5中紙面垂直方向)に沿って糸52が埋設されている。また、上記シール部材39は、例えば、ウレタン等の合成樹脂製であるが、その内部に上記糸52が埋設されているため、適切な弾性変形を行うことができるものとなっている。
【0027】
一方、上記シール部材39′であるが、これは、上記シール部材39と同じ構成をなしており、よって、図中同一部分には同一番号に「′」を付して示し、その説明は省略する。
【0028】
そして、常時は、上記シール部材39、39′の弾性力により、上記シール部材39の先端部49が上記シール部材39′の上側係合凸部47′に係合しており、それによって、所望のシール機能が得られる構成になっている。仮に、前述した上記シール部材39の先端部49と上記シール部材39′の上側係合凸部47′の係合が解除され、上記シール部材39が上記シール部材39′の上側係合凸部47′の上に乗り上げてしまったとしても、上記シール部材39の下側凸部51が上記シール部材39′の上側係合凸部47′と係合することにより、所望のシール機能が維持されるように構成されている。
【0029】
また、図3に示すように、スライダ31の設置面8側の進行方向両端(図3中左右方向両端)には、左右に一つずつのシール掻分部材53、53が設けられている。上記シール掻分部材53は、例えば、エンジニアプラスチック等の合成樹脂製、又は金属製であり、図8乃至図10に示すように、シール掻分部材本体55と覆い部材57とを組み付けることにより構成されている。上記シール掻分部材53は、図4乃至図7に示すように、上記シール部45のシール部材39、39′間に位置しており、スライダ31の動作時に上記シール部材39、39′の係合部分を掻き分ける機能を発揮するものである。
【0030】
上記シール掻分部材本体55は、図11及び図12に示すような構成になっている。まず、底部59があり、この底部59には、略V字形状の開口部61が形成されている。この開口部61は射出成型や切削等の製法上の都合により設けられているものである。この実施の形態の場合には、このような開口部61を塞ぐために、上記覆い部材57を組み付けるようにしている。
なお、上記のような開口部61を形成することなく上記シール掻分部材本体55を成形することができれば、覆い部材57は不要となる。
【0031】
また、上記底部59の幅方向(図12中上下方向)両端側には、長手方向(図12中左右方向)に延長・形成されたシールガイド63、63が立設されている。上記底部59の上記シールガイド63、63よりも外側(図12中上側又は下側)は係合凸部65、65となっている。また、上記シールガイド63、63の前端(図12中右端)から外側(図12中上側又は下側)に向けて、ストッパ67、67が突出・形成されている。また、上記底部59の下側(図11中下側)には係合凸部69が全長にわたって突出・形成されている。
【0032】
また、上記シールガイド63、63の間であってその前端側(図12中右側)には、拡開規制部71、71がそれぞれ形成されている。この拡開規制部71、71は、図12等に示すように、略三角形形状の横断面形状を有している。また、上記拡開規制部71、71には、上記シール掻分部材53の前方側(図12中右側)、すなわち、後述する舳先状掻分部75の先端側に向かうほど相互に近接していく拡開規制面73、73がそれぞれ形成されている。これによって、上記シール掻分部材53により掻き分けられるシール部材39、39′の拡開量を規制している。
【0033】
また、上記シール掻分部材本体55には舳先状掻分部75が設けられている。この舳先状掻分部75は、図7(b)において、上方に行くほど、図7(b)中右方向への出っ張り量が大きくなるように形成されている。
なお、上記舳先状掻分部75によって掻き分けられるシール部材39、39′は、既に説明したように、拡開規制部71、71によってその拡開量を規制されるとともに、上記シールガイド63、63によって互いに所定の距離以上は離間しないように規制されている。
【0034】
また、上記シール掻分部材本体55の上面(図11中上側の端面)には、取付部77が設けられている。この取付部77には貫通孔79が穿孔されており、この貫通孔79内にはカラー81が内装されている。また、上記取付部77の後端側(図11中左側)には、係合凸部82が突出・形成されている。そして、上記シール掻分部材本体55ひいては上記シール掻分部材53は、図6に示すように、上記カラー81を貫通しスライダ本体31aに螺合されるボルト83によって、上記スライダ31に固定されている。その際、図7(a)及び図7(b)に示すように、上記係合凸部82は上記スライダ本体31aに形成された係合凹部84に係合されている。
【0035】
また、上記覆い部材57は、図13に示すように、略U字型の断面形状を有する部材である。上記覆い部材57の内側の底部の中央には、長手方向(図13中左右方向)に延長・形成された係合溝85が形成されている。また、上記覆い部材57の内側の両側面の底部側には、長手方向(図13中左右方向)に延長・形成された係合溝87、87が設けられている。また、上記覆い部材57の前方側(図13中右側)端面の、上記係合溝87、87の上側(図13中上側)には、切欠き部89、89が形成されている。
【0036】
そして、上記覆い部材57と上記シール掻分部材本体55とを組み付けることにより、上記シール掻分部材53となる。その際、上記シール掻分部材本体55の係合凸部65、65が上記覆い部材57の係合溝87、87と係合し、上記シール掻分部材本体55の係合凸部69が上記覆い部材57の係合溝85と係合する。また、上記シール掻分部材本体55のストッパ67、67の後方側の面(図11中左側の面)が、上記覆い部材57の切欠き部89、89の前方側を向いた面(図13中右側を向いた面)と当接し、上記覆い部材57と上記シール掻分部材本体55とが所定の位置関係において一体となり、上記シール掻分部材53を構成するようになっている。
【0037】
また、前述のように、上記シール掻分部材53を構成した場合には、上記覆い部材57と上記シール掻分部材本体55の底部59とによって、覆い部91が構成されている。図7(b)に示すように、この覆い部91によって、上記舳先状掻分部75によって掻き分けられた上記シール部45の掻分開口部(図7中符号Cで示す。)を設置面8側(図7(b)中下側)から覆うようになっている。
なお、開口部61を形成することなく上記シール掻分部材本体55を成形することができれば、上記シール掻分部材本体55の底部59のみによって上記覆い部91を構成することができ、覆い部材57が不要となる。
【0038】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、アクチュエータとしての基本的な作用から説明する。
上記モータカバ15内の図示しないモータによってボールネジ27が回転され、これによって上記ボールネジ27に螺合されたボールナット29ひいてはスライダ31が図2中左右方向に移動される。
また、開口部9はハウジング3の設置面8側に設けられていて、アクチュエータ1の作業空間側は閉じられているので、上記作業空間側からの上記ハウジング3内部への異物の侵入や上記ハウジング3内部で発生した摩耗粉等の上記作業空間側への流出が防止されている。
【0039】
また、上記スライダ31の上記ハウジング3外部へと突出・配置された部分によって、上記掻分開口部からの上記ハウジング3内への上記異物の侵入や上記ハウジング3内部で発生した摩耗粉等の異物の外部への流出を防止している。
また、上記開口部9には蓋体11が設置されており、この蓋体11の両側の隙間13、13のそれぞれにシール部45、45が設けられている。このシール部45、45によって、前述した上記ハウジング3内部への異物の侵入や上記ハウジング3内部で発生した摩耗粉等の流出が確実に防止されている。
なお、上記スライダ31には図示しない載置物(例えば、各種機器等)が載置・固定されており、上記スライダ31が図2中左右方向に移動することにより、その載置物に任意の動作を行わせるものである。
【0040】
次に、シール部45及びシール掻分部材53の作用について、図2、及び、図5乃至図7を参照して詳細に説明する。
例えば、スライダ31が図2中右方向に移動していくと、図5、図7に示すように、進行方向(図2中右方向、図7(a)中下方向)前端に設けられた一対のシール掻分部材53、53の舳先状掻分部75、75によって、一対のシール部材39、39′が掻き分けられていく。この舳先状掻分部75、75の掻き分け作用によって、上記舳先状掻分部75の前方から舳先状掻分部75の先端部の左右両側にかけて掻分開口部(図7中符号Cで示す。)が発生する。
【0041】
本実施の形態の場合には、上記舳先状掻分部75の左右両側に拡開規制部71、71が設置されているので、上記掻き分けられた一対のシール部材39、39′のそれ以上の拡開は規制される。すなわち、上記拡開規制部71、71によって、上記掻分開口部Cの掻き分け方向に沿った大きさが、上記シール掻分部材53の覆い部91によって覆われるような大きさに規制されるものである。
ちなみに、上記拡開規制部71、71がない場合には、上記掻分開口部Cがシール掻分部材53の領域を超えて進行方向前方まで広がってしまうことになる。
【0042】
そして、図7(b)に示すように、上記掻分開口部Cは、その設置面8側(図7(b)中下側)を上記覆い部91によって閉塞されているので、ハウジング3内部への異物の侵入や上記ハウジング3内部で発生した摩耗粉等の異物の流出が防止されている。また、上記掻分開口部Cの図7(b)中上側には上記舳先状掻分部75の先端部分が位置しているので、それによっても、ハウジング3内部への異物の侵入や上記ハウジング3内部で発生した摩耗粉等の異物の流出が防止されている。
なお、図2、図7中の矢印Bで示す方向を上記スライダ31の進行方向として説明している。
【0043】
また、本実施の形態の場合には、上記シール掻分部材53の幅方向両側(図7(a)中左右両側)にはシールガイド63、63が設けられている。このシールガイド63、63によって、上記掻き分けられた一対のシール部材39、39′が、上記舳先状掻分部75の後方側(図7(a)中上側)において、所定の距離以上に離間しないように規制されている。これは進行方向後端に設けられているシール掻分部材53においても同様である。その結果、一対のシール部材39、39′が持つ弾性復帰力とあいまって、掻き分けられた一対のシール部材39、39′は、上記スライダ31の進行方向前端(図2中右側端)から進行方向後端(図2中左側端)までの部分において、上記スライダ本体31aに密着されることになる。このことによっても、隙間13、13を介したハウジング3内部への異物の侵入や上記ハウジング3内部で発生した摩耗粉等の流出を防止することができる。
【0044】
また、上記スライダ31の進行方向後端(図2中左側端)においては、スライダ31とシール掻き分け部材53が通過すると、一対のシール部材39、39′は自身の弾性復帰力によって相互に閉じる方向に弾性復帰し、上記シール部材39の先端部49が上記シール部材39′の上側係合凸部47′に係合して所望のシール機能が発揮される状態に戻る。よって、上記スライダ31の進行方向両側においては、上記一対のシール部材39、39′が確実に係合された状態となっている。
なお、上記スライダ31の進行方向後端側(図2中左側)においても、シール部材39、39′による掻分開口部の大きさが上記拡開規制部71、71によって規制されていることはいうまでもない。
【0045】
次に、本実施の形態によるアクチュエータ1の効果について説明する。
まず、シール部39、39′の先端部が互いに係合してシール部45を構成しているので、それによって、隙間13、13を介してのハウジング3内部への塵や水滴等の異物の侵入やハウジング3の内部で発生した摩耗粉などの外部への流出が効果的に防止される。
【0046】
また、図3に示すように、スライダ31の進行方向両端には、シール掻分部材53、53、53、53が設けられている。そして、図7(a)に示すように、上記シール掻分部材53には拡開規制部71、71が設けられており、それによって、掻き分けによって生じる掻分開口部Cの大きさを最小限とすることができる。このように掻分開口部Cの大きさを最小限とすることにより、ハウジング3内への塵や水滴等の異物の侵入を確実に防止することができると同時に、上記ハウジング3内からの摩耗粉等の流出を確実に防止することができる。
【0047】
また、上記シール掻分部材53の舳先状掻分部75は、図7(b)に示すように、舳先形状となっている。すなわち、図7(b)において、舳先状掻分部75の上方に行くほど、図7(b)中右方向への出っ張り量が大きくなるように形成されている。そのため、上記掻分開口部Cの上側(図7(b)中上側)に上記舳先状掻分部75が位置するため、仮に異物が上記掻分開口部Cに侵入したとしても、上記異物の上記ハウジング3内部への侵入を妨げることができるとともに、上記ハウジング3内部からの異物の流出を妨げることができる。
【0048】
また、上記舳先状掻分部75が舳先形状になっているので、上記シール部45を徐々に掻き分けていくことになり、上記シール部45をスムーズに掻き分けて上記スライダ31を移動させることができる。
【0049】
また、上記シール掻分部材53にはシールガイド63、63が形成されており、これによって、上記シール部材39、39′は、所定の距離以上互いに離間しないよう規制されているため、シール部材39、39′の弾性復帰力とあいまって上記スライダ31の進行方向前端(図2中右側端)から進行方向後端(図2中左側端)までの部分において、上記シール部材39、39′をスライダ本体31aに密着させることができ、上記ハウジング3内への塵や水滴等の異物の侵入や上記ハウジング3内からの摩耗粉等の異物の流出を確実に防止することができる。
【0050】
また、上記シール掻分部材53、53、53、53は覆い部91を備えているので、それによっても、上記掻分開口部Cを介した上記ハウジング3内への塵や水滴等の異物の侵入や上記ハウジング3内部からの異物の流出を確実に防止することができる。
【0051】
また、上記スライダ31の上記ハウジング3外部へと突出・配置された部分によっても、上記掻分開口部Cを介した上記ハウジング3内への上記異物の侵入や上記ハウジング3内部からの異物の流出を防止することができる。
【0052】
また、上記シール部材39と上記シール部材39′は、同様の構成の部材であるため、同じ部品を用いて上記シール45を構成することができる。
また、上記アクチュエータ1は簡易な構成で所望のシール効果を得ることができるため、小型化や低コスト化が容易である。
さらに、作業空間側については全て閉じられており、唯一開口している隙間13、13は設置面8側(図2中下側)に指向している。そのため、上記作業空間側からのハウジング3内部への塵や水滴等の異物の侵入や上記ハウジング3の内部で発生した摩耗粉などの上記作業空間側への流出を効果的に防止することができる。
【0053】
次に、図14を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態によるアクチュエータは、前述の第1の実施の形態によるアクチュエータ1と略同様の構成であるが、シール掻分部材の構成が一部異なっている。すなわち、図14に示すように、本実施の形態によるアクチュエータに用いられるシール掻分部93は、略円柱形状の拡開規制部95、95が形成されたものである。
なお、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0054】
本実施の形態によるアクチュエータも、前述した第1の実施の形態によるアクチュエータ1と同様の作用・効果を奏するものである。
【0055】
なお、本発明は前述した第1の実施の形態や第2の実施の形態に限定されない。
例えば、前記第1、第2の実施の形態の場合には、蓋体の左右両側に隙間を形成し、そこに一つずつのシール部45を設けた構成を例に挙げて示したが、それに限定されるものではなく、1個、3個以上の場合も考えられる。
なお、上記シール部の個数の変動に応じてシール掻分部材33の個数も変動する。
また、シール掻分部材33の形状等も第1の実施の形態や第2の実施の形態に限定されない。
また、各部材の材質・大きさなども第1の実施の形態や第2の実施の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、防塵・防滴構造を有するアクチュエータに係り、特に、シール部材を掻き分けながらスライダを移動させる構成のものにおいて、掻き分けによるシール部材の拡開量を規制する拡開規制部を設けることにより、シール性能の向上を図ることができるように工夫したものに係り、例えば、食品工場の装置に用いられるアクチュエータに好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 アクチュエータ
3 ハウジング
8 設置面
9 開口部
11 蓋体
13 隙間
27 ボールネジ(駆動手段の一部)
29 ボールナット(駆動手段の一部)
31 スライダ
39 シール部材
39′ シール部材
45 シール部
53 シール掻分部材
63 シールガイド
75 舳先状掻分部(掻分部)
91 覆い部
71 拡開規制部
73 拡開規制面
93 シール掻分部材
95 拡開規制部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延長・形成された開口部を備えたハウジングと、
上記開口部に沿って上記ハウジングの長手方向に移動するスライダと、
上記スライダを上記ハウジングの長手方向に移動させる駆動手段と、
上記ハウジングの開口部の対向する縁部にそれぞれ設けられその先端が係合することにより防塵・防滴機能を発揮する一対のシール部材と、
上記スライダの進行方向両側に取り付けられ上記一対のシール部材を掻き分けるシール掻分部材と、
を具備し、
上記シール掻分部材は、上記一対のシール部材を互いに離間する方向に掻き分ける掻分部と、上記掻分部による掻き分けによって生じる掻分開口部を覆う覆い部と、上記掻分部により上記一対のシール部材を掻き分ける際上記一対のシール部材の拡開量を規制する拡開規制部と、から構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のアクチュエータにおいて、
上記拡開規制部には向かい合う一対の拡開規制面が形成されており、該一対の拡開規制面は上記掻分部の先端側に向かうほど互いに近接していくように形成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2記載のアクチュエータにおいて、
上記覆い部には、上記一対のシール部材をガイドする一対のシールガイドが設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項3記載のアクチュエータにおいて、
上記掻分部の先端が舳先形状をなしていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4記載のアクチュエータにおいて、
上記ハウジングは作業空間側を閉じ設置面側を開口部としていることを特徴とするアクチュエータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−108582(P2013−108582A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255002(P2011−255002)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(391008515)株式会社アイエイアイ (107)
【Fターム(参考)】