アクティブマトリクス型有機発光表示装置
【課題】 有機発光ダイオードの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができ、有機発光ダイオードの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができるアクティブマトリクス型有機発光表示装置を提供する。
【解決手段】 アクティブマトリクス型有機発光表示装置は、複数色の何れか1色を発光可能な複数の画素PXR、PXG、PXBを備える。駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比が異なる。駆動トランジスタDRは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成される。駆動トランジスタDR内の有機発光ダイオードの陽極側のトランジスタのチャネル幅及びチャネル長は、全ての発光色の画素で等しい。
【解決手段】 アクティブマトリクス型有機発光表示装置は、複数色の何れか1色を発光可能な複数の画素PXR、PXG、PXBを備える。駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比が異なる。駆動トランジスタDRは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成される。駆動トランジスタDR内の有機発光ダイオードの陽極側のトランジスタのチャネル幅及びチャネル長は、全ての発光色の画素で等しい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アクティブマトリクス型有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクティブマトリクス型有機発光表示装置として、アクティブマトリクス型の有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が開発されている。アクティブマトリクス型の有機EL表示装置は、基板上に形成された複数の映像信号線及び複数の画素を備えている。各映像信号線には複数の画素が接続されている。
【0003】
有機EL表示装置の画素は、例えば、駆動トランジスタと、有機発光ダイオードとしての有機EL素子と、キャパシタと、スイッチングトランジスタとを含んでいる。駆動トランジスタと有機EL素子とは、高電位電源線と低電位電源線との間で、この順に直列に接続されている。キャパシタは、駆動トランジスタのゲートに接続されている。スイッチングトランジスタは、映像信号線並びにキャパシタ及び駆動トランジスタのゲート間に接続されている。
【0004】
映像信号の書き込み時は、スイッチングトランジスタをオンに切替え、映像信号を駆動トランジスタのゲート電極に与える。その後、スイッチングトランジスタをオフに切替え、画素(画素回路)を映像信号線と切り離す。駆動トランジスタのゲート電極の電位は、キャパシタによって保持され、映像信号に応じた電流が駆動トランジスタを介して有機EL素子に流れ所定の輝度レベルで発光する。
【0005】
有機EL素子としては、カラー表示のために、例えば赤、緑および青の三原色の有機EL素子を用いる。しかし、有機EL素子の発光効率や電圧-電流特性は、色毎に異なる。この違いを映像信号の電圧値で補正する場合には、外部回路での調整が必要になりコストアップを招いてしまう。このため、駆動トランジスタのW(チャネル幅)/L(チャネル長)サイズを色毎に調整することが一般的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−316513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように、駆動トランジスタのW/Lサイズを色毎に調整した場合、駆動トランジスタのチャネル容量に起因した輝度変化の遅れ、いわゆる応答速度に関する問題が生じる。
【0008】
ここで、黒状態であった画素が白状態に変化する場合を例に説明する。有機EL素子への印加電圧は黒で低く、白で高いため、黒から白への書き込み時には有機EL素子の陽極の電位は上昇する。この電位上昇の速度は有機EL素子の容量と、駆動トランジスタと有機EL素子との電流差分で決まり、書き込み期間が十分に長い場合は電位上昇が書き込み期間中に終了する。しかし走査線数が多い場合やリフレッシュレートが高い場合には書き込み期間終了後、つまり駆動トランジスタのゲート電極がフローティング状態になった以降も有機EL素子の陽極の電位は上昇する。
【0009】
この陽極の電位の上昇により、駆動トランジスタのゲート電極−ソース電極間の電圧Vgsは変化し、駆動トランジスタがpチャネル型の場合にはオフ方向への電位変化となる。この電圧Vgs変化により白の輝度は本来の輝度より低くなり、この状態が1フレーム期間継続し、いわゆるステップ応答の状態になる。また電圧Vgsの変化はキャパシタとチャネル容量との容量分割で決まり、チャネル容量が大きいほど電圧Vgsの変化は大きくなるため、駆動トランジスタのチャネル面積の大きい色ほどステップ応答が顕著になる。これは動画のボケのみならず、動画におけるパターンエッジの色づきの問題となる。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、有機発光ダイオードの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができ、有機発光ダイオードの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができるアクティブマトリクス型有機発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係るアクティブマトリクス型有機発光表示装置は、
それぞれ基板上に形成された、複数の映像信号線と、各映像信号線に接続されそれぞれ複数色の何れか1色を発光可能な複数の画素と、高電位電源線と、低電位電源線と、を備え、
各画素は、
前記低電位電源線に接続された陰極、前記陰極に対向配置された陽極、並びに前記陰極及び陽極間に挟持された有機物層を含んだ有機発光ダイオードと、
高電位電源配線に接続されたソース電極、前記有機発光ダイオードの陽極に接続されたドレイン電極、及びゲート電極を含み、発光色毎にチャネル幅とチャネル長との比が異なる駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続された第1電極及び前記第1電極に隙間を置いて対向配置された第2電極を含んだ保持容量と、を有し、
前記駆動トランジスタは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成され、
前記駆動トランジスタ内の前記有機発光ダイオードの陽極側のトランジスタの前記チャネル幅及びチャネル長は、全ての発光色の画素で等しい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、上記アクティブマトリクス型有機EL表示装置の駆動トランジスタ及び有機EL素子を示す断面図である。
【図3】図3は、上記アクティブマトリクス型有機EL表示装置における赤色、緑色及び青色の画素の等価回路を示す図である。
【図4】図4は、図3に示した画素の配線構造を示す概略平面図である。
【図5】図5は、上記駆動トランジスタの半導体層の位置に対する電位の変化量をグラフで示した図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置における赤色、緑色及び青色の画素の等価回路を示す図である。
【図7】図7は、図6に示した画素の配線構造を示す概略平面図である。
【図8】図8は、直列接続され、チャネル長Lが均等な4個のTFTで形成された駆動トランジスタの半導体層の位置に対する電位の変化量をグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、アクティブマトリクス型有機発光表示装置として、第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る表示装置を概略的に示す平面図である。図2は、図1の表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す部分断面図である。なお、図2では、表示装置を、その表示面,すなわち前面又は光出射面、が下方を向き、背面が上方を向くように描いている。図3は、図1の表示装置が含む画素の等価回路図である。図4は、上記画素を概略的に示す平面図である。
【0014】
図1乃至図4に示すように、この表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した下面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置は、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRとを含んでいる。映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは駆動部10を形成している。
【0015】
表示パネルDPは、例えば、ガラス基板などの絶縁性の基板SUBを含んでいる。基板SUB上には、アンダーコート層UCが形成されている。アンダーコート層UCは、例えば、基板SUB上にSiNX層とSiOX層とをこの順に積層してなる。
【0016】
アンダーコート層UC上では、半導体層SCが配列している。各半導体層SCは、例えば、p型領域とn型領域とを含んだポリシリコン層である。アンダーコート層UC上では、下部電極C2がさらに配列している。これら下部電極C2は、例えば、n+型ポリシリコン層である。
【0017】
半導体層SC及び下部電極C2は、ゲート絶縁膜GIで被覆されている。ゲート絶縁膜GIは、例えばTEOS(tetraethyl orthosilicate)などを用いて形成することができる。
【0018】
ゲート絶縁膜GI上には、走査信号線SL及び保持容量線CLが形成されている。走査信号線SL及び保持容量線CLは、各々が後述する画素PX(PXR、PXG、PXB)の行方向(X方向)に延びており、画素PXの列方向(Y方向)に配列している。走査信号線SL及び保持容量線CLは、例えばMoWなどからなる。
【0019】
ゲート絶縁膜GI上では、上部電極C1がさらに配列している。これら上部電極C1は、例えばMoWなどからなる。上部電極C1は、走査信号線SL及び保持容量線CLと同一の工程で形成することができる。
【0020】
上部電極C1の延出部であるゲート電極Gは半導体層SCと交差するように形成され、駆動トランジスタDRを構成している。走査信号線SLの延出部は半導体層と交差するように形成され、この延出部は画素スイッチSWを構成している。なお、この例では、駆動トランジスタDR及び画素スイッチSWは、トップゲート型のpチャネル薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0021】
上部電極C1は、下部電極C2に隙間を置いて重ねられている。第1電極としての上部電極C1と第2電極としての下部電極C2とそれらの間に介在しているゲート絶縁膜GIとは、保持容量Csを構成している。ここでは、保持容量Csはキャパシタである。
【0022】
ゲート絶縁膜GI、走査信号線SL、保持容量線CL、及び上部電極C1は、層間絶縁膜IIで被覆されている。層間絶縁膜IIは、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOXなどからなる。
【0023】
層間絶縁膜II上には、映像信号線VLと、高電位電源線としての電圧電源線PLと、低電位電源線としての基準電圧電源線RLとが形成されている。映像信号線VL、電圧電源線PL及び基準電圧電源線RLは、互いに絶縁されている。層間絶縁膜II上には、ソース電極SE及びドレイン電極DEがさらに形成されている。
【0024】
映像信号線VLは、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。映像信号線VLは、画素スイッチSWの半導体層のソース領域に接続されている。電圧電源線PLは、複数のストライプ部PLaを有している。ストライプ部PLaは、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。ストライプ部PLaは、駆動トランジスタDRのソース電極SEと一体に形成されている。
【0025】
ソース電極SE及びドレイン電極DEは、層間絶縁膜II及びゲート絶縁膜GIに設けられたコンタクトホールを介して半導体層SCのソース領域及びドレイン領域にそれぞれ接続されている。ソース電極SE及びドレイン電極DEは、画素PXが含む素子間の接続に利用されている。
【0026】
映像信号線VLと電圧電源線PLと基準電圧電源線RLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有している。これらは、同一工程で形成可能である。
【0027】
映像信号線VLと電圧電源線PLと基準電圧電源線RLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、パッシベーション膜PSで被覆されている。パッシベーション膜PSは、例えばSiNXなどからなる。
【0028】
パッシベーション膜PS上では、画素電極PEが配列している。各画素電極PEは、パッシベーション膜PSに設けたコンタクトホールを介して、駆動トランジスタDRのドレイン電極DEに接続されている。
【0029】
画素電極PEは、この例では光透過性の前面電極である。また、画素電極PEは、この例では陽極である。画素電極PEの材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明な導電材料を使用することができる。画素電極PE(陽極)は、後述する対向電極CE(陰極)に対向配置される。
【0030】
パッシベーション膜PS上には、さらに、隔壁絶縁層PIが形成されている。隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられているか、或いは、画素電極PEが形成する列又は行に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層PIは、画素電極PEに対応した位置に貫通孔を有している。隔壁絶縁層PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されている。
【0031】
画素電極PE上には、活性層として、発光層を含んだ有機物層ORGが形成されている。発光層は、複数色の何れか1色として、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。この有機物層ORGは、発光層に加え、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などもさらに含むことができる。
【0032】
隔壁絶縁層PI及び有機物層ORGは、対向電極CEで被覆されている。この例では、対向電極CEは、画素PX間で互いに接続された電極,すなわち共通電極,である。また、この例では、対向電極CEは、陰極であり且つ光反射性の背面電極である。対向電極CEは、例えば、パッシベーション膜PSと隔壁絶縁層PIとに設けられたコンタクトホールを介して、基準電圧電源線RLに電気的に接続されている。各々の有機EL素子OLEDは、画素電極PEと、有機物層ORGと、対向電極CEとを含んでいる。
【0033】
電圧電源線PL及び基準電圧電源線RL(対向電極CE)には、それぞれ定電圧が印加されている。電圧電源線PLの電位及び基準電圧電源線RLの電位を比べた場合、電圧電源線PLの電位は相対的にハイレベルであり、基準電圧電源線RLの電位は相対的にローレベルである。
【0034】
電圧電源線PL(ストライプ部PLa)は、ハイレベルの一定の電位に設定されるものである。基準電圧電源線RLは、対向電極CEをローレベルの一定の電位に設定するものである。
【0035】
各画素PXは、駆動トランジスタDRと、画素スイッチSWと、有機発光ダイオードとしての有機EL素子OLEDと、保持容量Csとを含んでいる。上記した通り、この例では、駆動トランジスタDR及び画素スイッチSWはpチャネル薄膜トランジスタである。
【0036】
駆動トランジスタDRと有機EL素子OLEDとは、ストライプ部PLaと基準電圧電源線RLとの間で、この順に直列に接続されている。具体的には、駆動トランジスタDRのソース電極はストライプ部PLaに接続されており、有機EL素子OLEDの対向電極CEは基準電圧電源線RLに接続されている。
【0037】
画素スイッチSWは、映像信号線VL並びに駆動トランジスタDRのゲート電極G及び上部電極C1間に接続されている。画素スイッチSWのゲート電極は走査信号線SLに接続されている。画素スイッチSWは、走査信号線SLから供給される制御信号SGに応答してオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)に切替えられる。画素スイッチSWは、映像信号線VLを介して伝送される映像信号電圧Vsigを出力させるかどうか切替えるものである。
【0038】
保持容量Csは、駆動トランジスタDRのゲート電極G及び画素スイッチSWのドレイン電極並びに保持容量線CL間に接続されている。より詳しくは、保持容量Csの上部電極C1が駆動トランジスタDRのゲート電極G及び画素スイッチSWのドレイン電極に接続されている。保持容量Csの下部電極C2が、上部電極C1に隙間を置いて対向配置され、保持容量線CLに接続されている。保持容量Csは、映像信号電圧Vsigを保持(記憶)するものである。
【0039】
映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、この例では、表示パネルDPにCOG(chip on glass)実装されている。映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、COG実装する代わりに、TCP(tape carrier package)実装してもよい。
【0040】
映像信号線ドライバXDRには、映像信号線VLが接続されている。映像信号線ドライバXDRは、映像信号線VLに映像信号として映像信号電圧Vsigを出力する。なお、映像信号線ドライバXDRに電圧電源線PL及び基準電圧電源線RLが接続されていても良く、この場合、映像信号線ドライバXDRは、電圧電源線PLにハイレベルの電源電圧を供給し、基準電圧電源線RLにローレベルの電源電圧を供給すれば良い。
【0041】
走査信号線ドライバYDRには、走査信号線SL及び保持容量線CLが接続されている。走査信号線ドライバYDRは、走査信号線SLに走査信号として電圧信号を出力する。加えて、走査信号線ドライバYDRは、保持容量線CLを一定の電位に設定するために保持容量線CLに定電圧を供給する。
アクティブマトリクス型有機EL表示装置は、上記のように形成されている。
【0042】
次に、上記画素、特に駆動トランジスタDRについて詳しく説明する。
画素PXは、それぞれ複数色の何れか1色を発光可能である。ここでは、画素PXは、赤色を発光可能な画素PXR、緑色を発光可能な画素PXG、及び青色を発光可能な画素PXBである。
【0043】
X方向に隣合って並んだ3つの画素PXR、PXG、PXBで1つの絵素を形成している。各絵素のX方向及びY方向のピッチは、231μmである。X方向の絵素数は1920(画素数は1920×3)、Y方向の絵素数は1080(画素数も1080)である。
【0044】
駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。駆動トランジスタDRは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成されている。ここでは、全ての発光色の画素PXの駆動トランジスタDRは、直列に接続された2つのトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の有機EL素子OLEDの画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい。
【0045】
また、画素PXR、PXG、PXBにおいて、画素PXRの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も小さく、画素PXBの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も大きい。ここでは、駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル長Lが異なる。
【0046】
この実施形態に係る各画素の駆動トランジスタDRの各トランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、次に示す通りである。
【0047】
・画素PXRの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=14μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=56μm
・画素PXGの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=14μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=42μm
・画素PXBの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=14μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=14μm
次に、有機EL素子OLEDに発光(画像を表示)させる場合の画素PXの動作について説明する。
上記のように構成されたアクティブマトリクス型有機EL表示装置において、まず、走査信号線ドライバYDRから、画素スイッチSWをオン状態とするレベル(オフ電位)、ここでは、ローレベルの制御信号SGが出力される。
【0048】
このため、画素スイッチSWがオンに切替えられる。これにより、駆動トランジスタDRのゲート電極Gの電位がオン電位に設定されるとともに保持容量Csの上部電極C1が、映像信号線ドライバXDRから、映像信号線VLを介して供給される映像信号電圧Vsigにより、映像信号電位 (Vsig)に設定される。
【0049】
これにより、画像の階調を得るための電位だけ駆動トランジスタDRのゲート電位を変位させることができる。言い換えると、駆動トランジスタDRのゲート電極の電位は、所望の発光電流を流すことができる状態に設定される。そして、駆動トランジスタDRから駆動信号を有機EL素子OLEDに出力させる。言い換えると、有機EL素子OLEDに、画像の階調に応じた駆動電流が与えられる。
【0050】
上記のように構成された第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置によれば、有機EL表示装置は、それぞれ基板SUB上に形成された、複数の映像信号線VLと、複数の画素PXR、PXG、PXBと、電圧電源線PLと、基準電圧電源線RLとを備えている。各画素は、有機EL素子OLEDと、駆動トランジスタDRと、保持容量Csとを有している。
【0051】
駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。このため、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができる。
【0052】
駆動トランジスタDRは、それぞれ2つのトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい(W=4.5μm、L=14μm)。このため、有機EL素子OLEDの電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができる。
【0053】
上記のことから、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができ、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができるアクティブマトリクス型有機発光表示装置を得ることができる。
【0054】
次に、上記の効果を具体的に説明する。
画素PXRの有機EL素子OLEDの発光効率が24cd/A、画素PXGの有機EL素子OLEDの発光効率が30cd/A、画素PXBの有機EL素子OLEDの発光効率が3cd/Aで、1000cd/m2の表面輝度の表示パネルDPを得る場合、RGB(赤、緑及び青)それぞれのドットには0.74μA、0.99μA及び2.03μAの発光電流が必要になる。
【0055】
駆動トランジスタDRが動作するゲート電極−ソース電極間の電圧Vgsの範囲を−4V乃至0V(映像信号Vsigの振り幅が4V)、駆動トランジスタDRの閾値電圧Vthを−2V、移動度を100cm2/Vsecとする。この場合、RGBのそれぞれのドットに必要な駆動トランジスタDRのW/Lサイズであるが、チャネル幅Wを4.5μmとすると、チャネル長Lは、画素PXRで70μm、画素PXGで56μm、画素PXBで28μmとなる。
【0056】
駆動トランジスタDRを単一のTFTで構成した場合のこれら駆動トランジスタDRのチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)は、それぞれ、画素PXRで75fF、画素PXGで60fF、画素PXBで30fF、程度であり、白黒間での有機EL素子OLEDへの印加電圧の差による陽極電位変化量として約4Vを考慮すると、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りは、画素PXRで0.19V、画素PXGで0.15V、画素PXBで0.08Vとなる(保持容量Csは1.5pFを付加)。
【0057】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、それぞれ、画素PXRで85%、画素PXGで88%及び画素PXBで94%として1フレーム目の輝度がとどまり、動画パターンのボケや色づきにつながる。
【0058】
これに対し、上記第1の実施形態では、駆動トランジスタDRを直列に接続された2つのTFTで形成し、陽極側のTFTのチャネル長Lを色によらず14μmとし、他方のTFTのチャネル長Lを、画素PXRで56μm、画素PXGで42μm、画素PXBで14μmとしている(チャネル幅Wは何れも4.5μm)。
【0059】
この場合、駆動トランジスタDRにおいて、陽極に接続されたTFT以外のソース電極及びドレイン電極の電位はほとんど変化しないため、陽極に接続されたTFTのチャネル容量だけが前述の駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りに影響することになる。
【0060】
図5は、直列接続されたTFTで形成された駆動トランジスタDRのドレイン電極−ソース電極間の電圧Vdsが飽和領域動作の範囲で4V変化する時の半導体層SC(ノードn1)の電位変化を計算した結果であり、全ての画素PXR、PXG、PXBに共通の結果である。
【0061】
図5に示すように、有機EL素子OLEDの陽極、つまり駆動トランジスタDRの最もドレイン領域寄りに接続されるTFT以外の電位(ノード電位)はほとんど変化しないことが判る。
【0062】
このため、駆動トランジスタDRの電圧Vgsの電位変化に影響するチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)は、RGBによらず15fF程度になり、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りは、RGB全てに共通で0.04Vに低減される。
【0063】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、全ての画素PXR、PXG、PXBで95%以上に1フレーム目の輝度が到達するため、動画パターンのボケや色づきが視認されることを防止することができる。
【0064】
以上述べたように、色毎に異なるチャネル長Lの駆動トランジスタDRをそれぞれ2つのTFTの直列接続で形成し、これらの内有機EL素子OLEDの陽極側のTFTのチャネル幅Wとチャネル長Lを色によらず同一にすることで、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRの電圧Vgs変化の色毎の相違を低減することができ、ステップ応答の色毎の相違による動画におけるパターンエッジの色づきを抑制することができる。
【0065】
次に、アクティブマトリクス型有機発光表示装置として、第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置について詳細に説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図6は、第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置が含む画素の等価回路図である。図7は、上記画素を概略的に示す平面図である。
【0066】
図6及び図7に示すように、 駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。駆動トランジスタDRは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成されている。ここでは、画素PXR及びPXGは、直列に接続された2つのトランジスタで形成され、画素PXBは単一のトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の有機EL素子OLEDの画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい。
【0067】
また、画素PXR、PXG、PXBにおいて、画素PXRの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も小さく、画素PXBの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も大きい。ここでは、駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル長Lが異なる。
【0068】
この実施形態に係る各画素の駆動トランジスタDRの各トランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、次に示す通りである。
【0069】
・画素PXRの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=10μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=20μm
・画素PXGの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=10μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=10μm
・画素PXBの駆動トランジスタDRのトランジスタ
単一 :W=4.5μm、L=10μm
上記のように構成された第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置によれば、有機EL表示装置は、それぞれ基板SUB上に形成された、複数の映像信号線VLと、複数の画素PXR、PXG、PXBと、電圧電源線PLと、基準電圧電源線RLとを備えている。各画素は、有機EL素子OLEDと、駆動トランジスタDRと、保持容量Csとを有している。
【0070】
駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。このため、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができる。
【0071】
駆動トランジスタDRは、1つのトランジスタ、又は2つのトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい(W=4.5μm、L=10μm)。このため、有機EL素子OLEDの電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができる。
【0072】
上記のことから、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができ、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができるアクティブマトリクス型有機発光表示装置を得ることができる。
【0073】
次に、有機EL素子OLED及びTFT素子の性能が上述した第1の実施形態と同じであることの下に上記の効果を具体的に説明する。ここでは、駆動トランジスタDRが動作するゲート電極−ソース電極間の電圧Vgsの範囲を−3V乃至0V(映像信号Vsigの振り幅が3V)とする。耐圧が低めのドライバICを用いる場合などに対応する例である。
【0074】
この場合、RGBのそれぞれのドットに必要な駆動トランジスタDRのW/Lサイズであるが、チャネル幅Wを4.5μmとすると、チャネル長Lは、画素PXRで30μm、画素PXGで20μm、画素PXBで10μmとなる。
【0075】
駆動トランジスタDRを単一のTFTで構成した場合のこれら駆動トランジスタDRのチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)は、それぞれ、画素PXRで31fF、画素PXGで21fF、画素PXBで11fF、程度であり、白黒間での有機EL素子OLEDへの印加電圧の差による陽極電位変化量として約4Vを考慮すると、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りは、画素PXRで0.08V、画素PXGで0.06V、画素PXBで0.03Vとなる(保持容量Csは1.5pFを付加)。
【0076】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、それぞれ、画素PXRで91%、画素PXGで93%及び画素PXBで96%として1フレーム目の輝度がとどまり、動画パターンのボケや色づきにつながる。
【0077】
これに対し、上記第2の実施形態では、画素PXBの駆動トランジスタDRをL=10μmの単一のTFTで形成し、画素PXR及び画素PXGの駆動トランジスタDRを直列に接続された2つのTFTで形成している。画素PXR及び画素PXGでは、陽極側のTFTのチャネル長Lを10μmとし、他方のTFTのチャネル長Lを、20μm(画素PXR)、10μm(画素PXG)としている(チャネル幅Wは何れも4.5μm)。
【0078】
この場合も、上述した第1の実施形態での説明と同様に、駆動トランジスタDRにおいて、陽極に接続されたTFTのチャネル容量だけが影響することになる。これにより電圧Vgsの電位変化に影響するチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)はRGBによらず11fF程度になり、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りはRGBとも0.03Vに低減される。
【0079】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、全ての画素PXR、PXG、PXBで95%以上に1フレーム目の輝度が到達するため、動画パターンのボケや色づきが視認されることを防止することができる。
【0080】
以上述べたように、色毎に異なるチャネル長Lの駆動トランジスタDRの内に単一のTFTで形成された駆動トランジスタが含まれる場合でも、2つのTFTの直列接続で形成される駆動トランジスタDRの有機EL素子OLEDの陽極側のTFTのチャネル幅W及びチャネル長Lを、単一TFTのチャネル幅W及びチャネル長Lと同一にすることで、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRの電圧Vgs変化の色毎の相違を低減することができ、ステップ応答の色毎の相違による動画におけるパターンエッジの色づきを抑制することができる。
【0081】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0082】
例えば、駆動トランジスタは、直列に接続された3つ以上のトランジスタで形成されていてもよい。上述した実施形態で例えると、チャネル長Lの長い側のTFTをさらに分割し、3個以上のTFTの直列接続した場合であっても上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
図8は、直列接続され、チャネル長Lが均等な4個のTFTで形成された駆動トランジスタDRのドレイン電極−ソース電極間の電圧Vdsが飽和領域動作の範囲で4V変化する時の半導体層SC(ノードn1)の電位変化を計算した結果である。
【0084】
図8から判るように、4個のTFTを直列接続した場合も、有機EL素子OLEDの陽極、つまり駆動トランジスタDRの最もドレイン領域寄りに接続されるTFT以外の電位(ノードn1、n2、n3の電位)はほとんど変化しないことが判る。したがって、直列接続するTFTの数によらず、有機EL素子OLEDの陽極に接続されるTFTのチャネル幅W及びチャネル長Lを色によらず同一にすることで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
駆動トランジスタDR及び画素スイッチSWは、pチャネル型のトランジスタに限らず、nチャネル型のトランジスタにより構成してもよい。
【0086】
この発明は、上述したアクティブマトリクス型有機発光表示装置(アクティブマトリクス型有機EL表示装置)に限定されるものではなく、各種のアクティブマトリクス型有機発光表示装置(アクティブマトリクス型有機EL表示装置)に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
SUB…基板、DP…表示パネル、PX(PXR,PXG,PXB)…画素、VL…映像信号線、PL…電圧電源線、PLa…ストライプ部、RL…基準電圧電源線、SL…走査信号線、DR…駆動トランジスタ、G…ゲート電極、SE…ソース電極、DE…ドレイン電極、SC…半導体層、OLED…有機EL素子、PE…画素電極、CE…対向電極、ORG…有機物層、SW…画素スイッチ、Cs…保持容量、L…チャネル長、W…チャネル幅。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アクティブマトリクス型有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクティブマトリクス型有機発光表示装置として、アクティブマトリクス型の有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が開発されている。アクティブマトリクス型の有機EL表示装置は、基板上に形成された複数の映像信号線及び複数の画素を備えている。各映像信号線には複数の画素が接続されている。
【0003】
有機EL表示装置の画素は、例えば、駆動トランジスタと、有機発光ダイオードとしての有機EL素子と、キャパシタと、スイッチングトランジスタとを含んでいる。駆動トランジスタと有機EL素子とは、高電位電源線と低電位電源線との間で、この順に直列に接続されている。キャパシタは、駆動トランジスタのゲートに接続されている。スイッチングトランジスタは、映像信号線並びにキャパシタ及び駆動トランジスタのゲート間に接続されている。
【0004】
映像信号の書き込み時は、スイッチングトランジスタをオンに切替え、映像信号を駆動トランジスタのゲート電極に与える。その後、スイッチングトランジスタをオフに切替え、画素(画素回路)を映像信号線と切り離す。駆動トランジスタのゲート電極の電位は、キャパシタによって保持され、映像信号に応じた電流が駆動トランジスタを介して有機EL素子に流れ所定の輝度レベルで発光する。
【0005】
有機EL素子としては、カラー表示のために、例えば赤、緑および青の三原色の有機EL素子を用いる。しかし、有機EL素子の発光効率や電圧-電流特性は、色毎に異なる。この違いを映像信号の電圧値で補正する場合には、外部回路での調整が必要になりコストアップを招いてしまう。このため、駆動トランジスタのW(チャネル幅)/L(チャネル長)サイズを色毎に調整することが一般的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−316513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のように、駆動トランジスタのW/Lサイズを色毎に調整した場合、駆動トランジスタのチャネル容量に起因した輝度変化の遅れ、いわゆる応答速度に関する問題が生じる。
【0008】
ここで、黒状態であった画素が白状態に変化する場合を例に説明する。有機EL素子への印加電圧は黒で低く、白で高いため、黒から白への書き込み時には有機EL素子の陽極の電位は上昇する。この電位上昇の速度は有機EL素子の容量と、駆動トランジスタと有機EL素子との電流差分で決まり、書き込み期間が十分に長い場合は電位上昇が書き込み期間中に終了する。しかし走査線数が多い場合やリフレッシュレートが高い場合には書き込み期間終了後、つまり駆動トランジスタのゲート電極がフローティング状態になった以降も有機EL素子の陽極の電位は上昇する。
【0009】
この陽極の電位の上昇により、駆動トランジスタのゲート電極−ソース電極間の電圧Vgsは変化し、駆動トランジスタがpチャネル型の場合にはオフ方向への電位変化となる。この電圧Vgs変化により白の輝度は本来の輝度より低くなり、この状態が1フレーム期間継続し、いわゆるステップ応答の状態になる。また電圧Vgsの変化はキャパシタとチャネル容量との容量分割で決まり、チャネル容量が大きいほど電圧Vgsの変化は大きくなるため、駆動トランジスタのチャネル面積の大きい色ほどステップ応答が顕著になる。これは動画のボケのみならず、動画におけるパターンエッジの色づきの問題となる。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、有機発光ダイオードの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができ、有機発光ダイオードの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができるアクティブマトリクス型有機発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態に係るアクティブマトリクス型有機発光表示装置は、
それぞれ基板上に形成された、複数の映像信号線と、各映像信号線に接続されそれぞれ複数色の何れか1色を発光可能な複数の画素と、高電位電源線と、低電位電源線と、を備え、
各画素は、
前記低電位電源線に接続された陰極、前記陰極に対向配置された陽極、並びに前記陰極及び陽極間に挟持された有機物層を含んだ有機発光ダイオードと、
高電位電源配線に接続されたソース電極、前記有機発光ダイオードの陽極に接続されたドレイン電極、及びゲート電極を含み、発光色毎にチャネル幅とチャネル長との比が異なる駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続された第1電極及び前記第1電極に隙間を置いて対向配置された第2電極を含んだ保持容量と、を有し、
前記駆動トランジスタは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成され、
前記駆動トランジスタ内の前記有機発光ダイオードの陽極側のトランジスタの前記チャネル幅及びチャネル長は、全ての発光色の画素で等しい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、上記アクティブマトリクス型有機EL表示装置の駆動トランジスタ及び有機EL素子を示す断面図である。
【図3】図3は、上記アクティブマトリクス型有機EL表示装置における赤色、緑色及び青色の画素の等価回路を示す図である。
【図4】図4は、図3に示した画素の配線構造を示す概略平面図である。
【図5】図5は、上記駆動トランジスタの半導体層の位置に対する電位の変化量をグラフで示した図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置における赤色、緑色及び青色の画素の等価回路を示す図である。
【図7】図7は、図6に示した画素の配線構造を示す概略平面図である。
【図8】図8は、直列接続され、チャネル長Lが均等な4個のTFTで形成された駆動トランジスタの半導体層の位置に対する電位の変化量をグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、アクティブマトリクス型有機発光表示装置として、第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る表示装置を概略的に示す平面図である。図2は、図1の表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す部分断面図である。なお、図2では、表示装置を、その表示面,すなわち前面又は光出射面、が下方を向き、背面が上方を向くように描いている。図3は、図1の表示装置が含む画素の等価回路図である。図4は、上記画素を概略的に示す平面図である。
【0014】
図1乃至図4に示すように、この表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した下面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置は、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRとを含んでいる。映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは駆動部10を形成している。
【0015】
表示パネルDPは、例えば、ガラス基板などの絶縁性の基板SUBを含んでいる。基板SUB上には、アンダーコート層UCが形成されている。アンダーコート層UCは、例えば、基板SUB上にSiNX層とSiOX層とをこの順に積層してなる。
【0016】
アンダーコート層UC上では、半導体層SCが配列している。各半導体層SCは、例えば、p型領域とn型領域とを含んだポリシリコン層である。アンダーコート層UC上では、下部電極C2がさらに配列している。これら下部電極C2は、例えば、n+型ポリシリコン層である。
【0017】
半導体層SC及び下部電極C2は、ゲート絶縁膜GIで被覆されている。ゲート絶縁膜GIは、例えばTEOS(tetraethyl orthosilicate)などを用いて形成することができる。
【0018】
ゲート絶縁膜GI上には、走査信号線SL及び保持容量線CLが形成されている。走査信号線SL及び保持容量線CLは、各々が後述する画素PX(PXR、PXG、PXB)の行方向(X方向)に延びており、画素PXの列方向(Y方向)に配列している。走査信号線SL及び保持容量線CLは、例えばMoWなどからなる。
【0019】
ゲート絶縁膜GI上では、上部電極C1がさらに配列している。これら上部電極C1は、例えばMoWなどからなる。上部電極C1は、走査信号線SL及び保持容量線CLと同一の工程で形成することができる。
【0020】
上部電極C1の延出部であるゲート電極Gは半導体層SCと交差するように形成され、駆動トランジスタDRを構成している。走査信号線SLの延出部は半導体層と交差するように形成され、この延出部は画素スイッチSWを構成している。なお、この例では、駆動トランジスタDR及び画素スイッチSWは、トップゲート型のpチャネル薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0021】
上部電極C1は、下部電極C2に隙間を置いて重ねられている。第1電極としての上部電極C1と第2電極としての下部電極C2とそれらの間に介在しているゲート絶縁膜GIとは、保持容量Csを構成している。ここでは、保持容量Csはキャパシタである。
【0022】
ゲート絶縁膜GI、走査信号線SL、保持容量線CL、及び上部電極C1は、層間絶縁膜IIで被覆されている。層間絶縁膜IIは、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOXなどからなる。
【0023】
層間絶縁膜II上には、映像信号線VLと、高電位電源線としての電圧電源線PLと、低電位電源線としての基準電圧電源線RLとが形成されている。映像信号線VL、電圧電源線PL及び基準電圧電源線RLは、互いに絶縁されている。層間絶縁膜II上には、ソース電極SE及びドレイン電極DEがさらに形成されている。
【0024】
映像信号線VLは、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。映像信号線VLは、画素スイッチSWの半導体層のソース領域に接続されている。電圧電源線PLは、複数のストライプ部PLaを有している。ストライプ部PLaは、各々がY方向に延びており、X方向に配列している。ストライプ部PLaは、駆動トランジスタDRのソース電極SEと一体に形成されている。
【0025】
ソース電極SE及びドレイン電極DEは、層間絶縁膜II及びゲート絶縁膜GIに設けられたコンタクトホールを介して半導体層SCのソース領域及びドレイン領域にそれぞれ接続されている。ソース電極SE及びドレイン電極DEは、画素PXが含む素子間の接続に利用されている。
【0026】
映像信号線VLと電圧電源線PLと基準電圧電源線RLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有している。これらは、同一工程で形成可能である。
【0027】
映像信号線VLと電圧電源線PLと基準電圧電源線RLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、パッシベーション膜PSで被覆されている。パッシベーション膜PSは、例えばSiNXなどからなる。
【0028】
パッシベーション膜PS上では、画素電極PEが配列している。各画素電極PEは、パッシベーション膜PSに設けたコンタクトホールを介して、駆動トランジスタDRのドレイン電極DEに接続されている。
【0029】
画素電極PEは、この例では光透過性の前面電極である。また、画素電極PEは、この例では陽極である。画素電極PEの材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明な導電材料を使用することができる。画素電極PE(陽極)は、後述する対向電極CE(陰極)に対向配置される。
【0030】
パッシベーション膜PS上には、さらに、隔壁絶縁層PIが形成されている。隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられているか、或いは、画素電極PEが形成する列又は行に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層PIは、画素電極PEに対応した位置に貫通孔を有している。隔壁絶縁層PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されている。
【0031】
画素電極PE上には、活性層として、発光層を含んだ有機物層ORGが形成されている。発光層は、複数色の何れか1色として、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。この有機物層ORGは、発光層に加え、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などもさらに含むことができる。
【0032】
隔壁絶縁層PI及び有機物層ORGは、対向電極CEで被覆されている。この例では、対向電極CEは、画素PX間で互いに接続された電極,すなわち共通電極,である。また、この例では、対向電極CEは、陰極であり且つ光反射性の背面電極である。対向電極CEは、例えば、パッシベーション膜PSと隔壁絶縁層PIとに設けられたコンタクトホールを介して、基準電圧電源線RLに電気的に接続されている。各々の有機EL素子OLEDは、画素電極PEと、有機物層ORGと、対向電極CEとを含んでいる。
【0033】
電圧電源線PL及び基準電圧電源線RL(対向電極CE)には、それぞれ定電圧が印加されている。電圧電源線PLの電位及び基準電圧電源線RLの電位を比べた場合、電圧電源線PLの電位は相対的にハイレベルであり、基準電圧電源線RLの電位は相対的にローレベルである。
【0034】
電圧電源線PL(ストライプ部PLa)は、ハイレベルの一定の電位に設定されるものである。基準電圧電源線RLは、対向電極CEをローレベルの一定の電位に設定するものである。
【0035】
各画素PXは、駆動トランジスタDRと、画素スイッチSWと、有機発光ダイオードとしての有機EL素子OLEDと、保持容量Csとを含んでいる。上記した通り、この例では、駆動トランジスタDR及び画素スイッチSWはpチャネル薄膜トランジスタである。
【0036】
駆動トランジスタDRと有機EL素子OLEDとは、ストライプ部PLaと基準電圧電源線RLとの間で、この順に直列に接続されている。具体的には、駆動トランジスタDRのソース電極はストライプ部PLaに接続されており、有機EL素子OLEDの対向電極CEは基準電圧電源線RLに接続されている。
【0037】
画素スイッチSWは、映像信号線VL並びに駆動トランジスタDRのゲート電極G及び上部電極C1間に接続されている。画素スイッチSWのゲート電極は走査信号線SLに接続されている。画素スイッチSWは、走査信号線SLから供給される制御信号SGに応答してオン(導通状態)又はオフ(非導通状態)に切替えられる。画素スイッチSWは、映像信号線VLを介して伝送される映像信号電圧Vsigを出力させるかどうか切替えるものである。
【0038】
保持容量Csは、駆動トランジスタDRのゲート電極G及び画素スイッチSWのドレイン電極並びに保持容量線CL間に接続されている。より詳しくは、保持容量Csの上部電極C1が駆動トランジスタDRのゲート電極G及び画素スイッチSWのドレイン電極に接続されている。保持容量Csの下部電極C2が、上部電極C1に隙間を置いて対向配置され、保持容量線CLに接続されている。保持容量Csは、映像信号電圧Vsigを保持(記憶)するものである。
【0039】
映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、この例では、表示パネルDPにCOG(chip on glass)実装されている。映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、COG実装する代わりに、TCP(tape carrier package)実装してもよい。
【0040】
映像信号線ドライバXDRには、映像信号線VLが接続されている。映像信号線ドライバXDRは、映像信号線VLに映像信号として映像信号電圧Vsigを出力する。なお、映像信号線ドライバXDRに電圧電源線PL及び基準電圧電源線RLが接続されていても良く、この場合、映像信号線ドライバXDRは、電圧電源線PLにハイレベルの電源電圧を供給し、基準電圧電源線RLにローレベルの電源電圧を供給すれば良い。
【0041】
走査信号線ドライバYDRには、走査信号線SL及び保持容量線CLが接続されている。走査信号線ドライバYDRは、走査信号線SLに走査信号として電圧信号を出力する。加えて、走査信号線ドライバYDRは、保持容量線CLを一定の電位に設定するために保持容量線CLに定電圧を供給する。
アクティブマトリクス型有機EL表示装置は、上記のように形成されている。
【0042】
次に、上記画素、特に駆動トランジスタDRについて詳しく説明する。
画素PXは、それぞれ複数色の何れか1色を発光可能である。ここでは、画素PXは、赤色を発光可能な画素PXR、緑色を発光可能な画素PXG、及び青色を発光可能な画素PXBである。
【0043】
X方向に隣合って並んだ3つの画素PXR、PXG、PXBで1つの絵素を形成している。各絵素のX方向及びY方向のピッチは、231μmである。X方向の絵素数は1920(画素数は1920×3)、Y方向の絵素数は1080(画素数も1080)である。
【0044】
駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。駆動トランジスタDRは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成されている。ここでは、全ての発光色の画素PXの駆動トランジスタDRは、直列に接続された2つのトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の有機EL素子OLEDの画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい。
【0045】
また、画素PXR、PXG、PXBにおいて、画素PXRの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も小さく、画素PXBの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も大きい。ここでは、駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル長Lが異なる。
【0046】
この実施形態に係る各画素の駆動トランジスタDRの各トランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、次に示す通りである。
【0047】
・画素PXRの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=14μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=56μm
・画素PXGの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=14μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=42μm
・画素PXBの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=14μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=14μm
次に、有機EL素子OLEDに発光(画像を表示)させる場合の画素PXの動作について説明する。
上記のように構成されたアクティブマトリクス型有機EL表示装置において、まず、走査信号線ドライバYDRから、画素スイッチSWをオン状態とするレベル(オフ電位)、ここでは、ローレベルの制御信号SGが出力される。
【0048】
このため、画素スイッチSWがオンに切替えられる。これにより、駆動トランジスタDRのゲート電極Gの電位がオン電位に設定されるとともに保持容量Csの上部電極C1が、映像信号線ドライバXDRから、映像信号線VLを介して供給される映像信号電圧Vsigにより、映像信号電位 (Vsig)に設定される。
【0049】
これにより、画像の階調を得るための電位だけ駆動トランジスタDRのゲート電位を変位させることができる。言い換えると、駆動トランジスタDRのゲート電極の電位は、所望の発光電流を流すことができる状態に設定される。そして、駆動トランジスタDRから駆動信号を有機EL素子OLEDに出力させる。言い換えると、有機EL素子OLEDに、画像の階調に応じた駆動電流が与えられる。
【0050】
上記のように構成された第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置によれば、有機EL表示装置は、それぞれ基板SUB上に形成された、複数の映像信号線VLと、複数の画素PXR、PXG、PXBと、電圧電源線PLと、基準電圧電源線RLとを備えている。各画素は、有機EL素子OLEDと、駆動トランジスタDRと、保持容量Csとを有している。
【0051】
駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。このため、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができる。
【0052】
駆動トランジスタDRは、それぞれ2つのトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい(W=4.5μm、L=14μm)。このため、有機EL素子OLEDの電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができる。
【0053】
上記のことから、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができ、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができるアクティブマトリクス型有機発光表示装置を得ることができる。
【0054】
次に、上記の効果を具体的に説明する。
画素PXRの有機EL素子OLEDの発光効率が24cd/A、画素PXGの有機EL素子OLEDの発光効率が30cd/A、画素PXBの有機EL素子OLEDの発光効率が3cd/Aで、1000cd/m2の表面輝度の表示パネルDPを得る場合、RGB(赤、緑及び青)それぞれのドットには0.74μA、0.99μA及び2.03μAの発光電流が必要になる。
【0055】
駆動トランジスタDRが動作するゲート電極−ソース電極間の電圧Vgsの範囲を−4V乃至0V(映像信号Vsigの振り幅が4V)、駆動トランジスタDRの閾値電圧Vthを−2V、移動度を100cm2/Vsecとする。この場合、RGBのそれぞれのドットに必要な駆動トランジスタDRのW/Lサイズであるが、チャネル幅Wを4.5μmとすると、チャネル長Lは、画素PXRで70μm、画素PXGで56μm、画素PXBで28μmとなる。
【0056】
駆動トランジスタDRを単一のTFTで構成した場合のこれら駆動トランジスタDRのチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)は、それぞれ、画素PXRで75fF、画素PXGで60fF、画素PXBで30fF、程度であり、白黒間での有機EL素子OLEDへの印加電圧の差による陽極電位変化量として約4Vを考慮すると、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りは、画素PXRで0.19V、画素PXGで0.15V、画素PXBで0.08Vとなる(保持容量Csは1.5pFを付加)。
【0057】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、それぞれ、画素PXRで85%、画素PXGで88%及び画素PXBで94%として1フレーム目の輝度がとどまり、動画パターンのボケや色づきにつながる。
【0058】
これに対し、上記第1の実施形態では、駆動トランジスタDRを直列に接続された2つのTFTで形成し、陽極側のTFTのチャネル長Lを色によらず14μmとし、他方のTFTのチャネル長Lを、画素PXRで56μm、画素PXGで42μm、画素PXBで14μmとしている(チャネル幅Wは何れも4.5μm)。
【0059】
この場合、駆動トランジスタDRにおいて、陽極に接続されたTFT以外のソース電極及びドレイン電極の電位はほとんど変化しないため、陽極に接続されたTFTのチャネル容量だけが前述の駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りに影響することになる。
【0060】
図5は、直列接続されたTFTで形成された駆動トランジスタDRのドレイン電極−ソース電極間の電圧Vdsが飽和領域動作の範囲で4V変化する時の半導体層SC(ノードn1)の電位変化を計算した結果であり、全ての画素PXR、PXG、PXBに共通の結果である。
【0061】
図5に示すように、有機EL素子OLEDの陽極、つまり駆動トランジスタDRの最もドレイン領域寄りに接続されるTFT以外の電位(ノード電位)はほとんど変化しないことが判る。
【0062】
このため、駆動トランジスタDRの電圧Vgsの電位変化に影響するチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)は、RGBによらず15fF程度になり、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りは、RGB全てに共通で0.04Vに低減される。
【0063】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、全ての画素PXR、PXG、PXBで95%以上に1フレーム目の輝度が到達するため、動画パターンのボケや色づきが視認されることを防止することができる。
【0064】
以上述べたように、色毎に異なるチャネル長Lの駆動トランジスタDRをそれぞれ2つのTFTの直列接続で形成し、これらの内有機EL素子OLEDの陽極側のTFTのチャネル幅Wとチャネル長Lを色によらず同一にすることで、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRの電圧Vgs変化の色毎の相違を低減することができ、ステップ応答の色毎の相違による動画におけるパターンエッジの色づきを抑制することができる。
【0065】
次に、アクティブマトリクス型有機発光表示装置として、第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置について詳細に説明する。この実施形態において、他の構成は上述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図6は、第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置が含む画素の等価回路図である。図7は、上記画素を概略的に示す平面図である。
【0066】
図6及び図7に示すように、 駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。駆動トランジスタDRは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成されている。ここでは、画素PXR及びPXGは、直列に接続された2つのトランジスタで形成され、画素PXBは単一のトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の有機EL素子OLEDの画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい。
【0067】
また、画素PXR、PXG、PXBにおいて、画素PXRの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も小さく、画素PXBの駆動トランジスタDRのチャネル幅Wに対するチャネル長Lの比W/Lが最も大きい。ここでは、駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル長Lが異なる。
【0068】
この実施形態に係る各画素の駆動トランジスタDRの各トランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、次に示す通りである。
【0069】
・画素PXRの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=10μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=20μm
・画素PXGの駆動トランジスタDRの各トランジスタ
画素電極PE側 :W=4.5μm、L=10μm
基準電圧電源線RL側:W=4.5μm、L=10μm
・画素PXBの駆動トランジスタDRのトランジスタ
単一 :W=4.5μm、L=10μm
上記のように構成された第2の実施形態に係るアクティブマトリクス型有機EL表示装置によれば、有機EL表示装置は、それぞれ基板SUB上に形成された、複数の映像信号線VLと、複数の画素PXR、PXG、PXBと、電圧電源線PLと、基準電圧電源線RLとを備えている。各画素は、有機EL素子OLEDと、駆動トランジスタDRと、保持容量Csとを有している。
【0070】
駆動トランジスタDRは、発光色毎にチャネル幅Wとチャネル長Lとの比W/Lが異なる。このため、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができる。
【0071】
駆動トランジスタDRは、1つのトランジスタ、又は2つのトランジスタで形成されている。駆動トランジスタDR内の画素電極PE(陽極)側のトランジスタのチャネル幅W及びチャネル長Lは、全ての発光色の画素PXで等しい(W=4.5μm、L=10μm)。このため、有機EL素子OLEDの電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができる。
【0072】
上記のことから、有機EL素子OLEDの色毎に異なる発光効率や電圧-電流特性を補正することができ、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRのゲート電極−ソース電極間の電圧の変化のばらつきを低減することができるアクティブマトリクス型有機発光表示装置を得ることができる。
【0073】
次に、有機EL素子OLED及びTFT素子の性能が上述した第1の実施形態と同じであることの下に上記の効果を具体的に説明する。ここでは、駆動トランジスタDRが動作するゲート電極−ソース電極間の電圧Vgsの範囲を−3V乃至0V(映像信号Vsigの振り幅が3V)とする。耐圧が低めのドライバICを用いる場合などに対応する例である。
【0074】
この場合、RGBのそれぞれのドットに必要な駆動トランジスタDRのW/Lサイズであるが、チャネル幅Wを4.5μmとすると、チャネル長Lは、画素PXRで30μm、画素PXGで20μm、画素PXBで10μmとなる。
【0075】
駆動トランジスタDRを単一のTFTで構成した場合のこれら駆動トランジスタDRのチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)は、それぞれ、画素PXRで31fF、画素PXGで21fF、画素PXBで11fF、程度であり、白黒間での有機EL素子OLEDへの印加電圧の差による陽極電位変化量として約4Vを考慮すると、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りは、画素PXRで0.08V、画素PXGで0.06V、画素PXBで0.03Vとなる(保持容量Csは1.5pFを付加)。
【0076】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、それぞれ、画素PXRで91%、画素PXGで93%及び画素PXBで96%として1フレーム目の輝度がとどまり、動画パターンのボケや色づきにつながる。
【0077】
これに対し、上記第2の実施形態では、画素PXBの駆動トランジスタDRをL=10μmの単一のTFTで形成し、画素PXR及び画素PXGの駆動トランジスタDRを直列に接続された2つのTFTで形成している。画素PXR及び画素PXGでは、陽極側のTFTのチャネル長Lを10μmとし、他方のTFTのチャネル長Lを、20μm(画素PXR)、10μm(画素PXG)としている(チャネル幅Wは何れも4.5μm)。
【0078】
この場合も、上述した第1の実施形態での説明と同様に、駆動トランジスタDRにおいて、陽極に接続されたTFTのチャネル容量だけが影響することになる。これにより電圧Vgsの電位変化に影響するチャネル容量(ドレイン電極−ゲート電極間の容量)はRGBによらず11fF程度になり、黒から白への書き換え1フレーム目での駆動トランジスタDRの電圧Vgsの目減りはRGBとも0.03Vに低減される。
【0079】
これにより、RGBの本来の白輝度に対して、全ての画素PXR、PXG、PXBで95%以上に1フレーム目の輝度が到達するため、動画パターンのボケや色づきが視認されることを防止することができる。
【0080】
以上述べたように、色毎に異なるチャネル長Lの駆動トランジスタDRの内に単一のTFTで形成された駆動トランジスタが含まれる場合でも、2つのTFTの直列接続で形成される駆動トランジスタDRの有機EL素子OLEDの陽極側のTFTのチャネル幅W及びチャネル長Lを、単一TFTのチャネル幅W及びチャネル長Lと同一にすることで、有機EL素子OLEDの陽極の電位変化に伴う駆動トランジスタDRの電圧Vgs変化の色毎の相違を低減することができ、ステップ応答の色毎の相違による動画におけるパターンエッジの色づきを抑制することができる。
【0081】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0082】
例えば、駆動トランジスタは、直列に接続された3つ以上のトランジスタで形成されていてもよい。上述した実施形態で例えると、チャネル長Lの長い側のTFTをさらに分割し、3個以上のTFTの直列接続した場合であっても上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
図8は、直列接続され、チャネル長Lが均等な4個のTFTで形成された駆動トランジスタDRのドレイン電極−ソース電極間の電圧Vdsが飽和領域動作の範囲で4V変化する時の半導体層SC(ノードn1)の電位変化を計算した結果である。
【0084】
図8から判るように、4個のTFTを直列接続した場合も、有機EL素子OLEDの陽極、つまり駆動トランジスタDRの最もドレイン領域寄りに接続されるTFT以外の電位(ノードn1、n2、n3の電位)はほとんど変化しないことが判る。したがって、直列接続するTFTの数によらず、有機EL素子OLEDの陽極に接続されるTFTのチャネル幅W及びチャネル長Lを色によらず同一にすることで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
駆動トランジスタDR及び画素スイッチSWは、pチャネル型のトランジスタに限らず、nチャネル型のトランジスタにより構成してもよい。
【0086】
この発明は、上述したアクティブマトリクス型有機発光表示装置(アクティブマトリクス型有機EL表示装置)に限定されるものではなく、各種のアクティブマトリクス型有機発光表示装置(アクティブマトリクス型有機EL表示装置)に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
SUB…基板、DP…表示パネル、PX(PXR,PXG,PXB)…画素、VL…映像信号線、PL…電圧電源線、PLa…ストライプ部、RL…基準電圧電源線、SL…走査信号線、DR…駆動トランジスタ、G…ゲート電極、SE…ソース電極、DE…ドレイン電極、SC…半導体層、OLED…有機EL素子、PE…画素電極、CE…対向電極、ORG…有機物層、SW…画素スイッチ、Cs…保持容量、L…チャネル長、W…チャネル幅。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ基板上に形成された、複数の映像信号線と、各映像信号線に接続されそれぞれ複数色の何れか1色を発光可能な複数の画素と、高電位電源線と、低電位電源線と、を備え、
各画素は、
前記低電位電源線に接続された陰極、前記陰極に対向配置された陽極、並びに前記陰極及び陽極間に挟持された有機物層を含んだ有機発光ダイオードと、
高電位電源配線に接続されたソース電極、前記有機発光ダイオードの陽極に接続されたドレイン電極、及びゲート電極を含み、発光色毎にチャネル幅とチャネル長との比が異なる駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続された第1電極及び前記第1電極に隙間を置いて対向配置された第2電極を含んだ保持容量と、を有し、
前記駆動トランジスタは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成され、
前記駆動トランジスタ内の前記有機発光ダイオードの陽極側のトランジスタの前記チャネル幅及びチャネル長は、全ての発光色の画素で等しい、アクティブマトリクス型有機発光表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素は、赤色、緑色及び青色の何れか1色を発光可能であり、
前記赤色を発光可能な画素の前記チャネル幅に対するチャネル長の比が最も小さく、
前記青色を発光可能な画素の前記チャネル幅に対するチャネル長の比が最も大きい、請求項1に記載のアクティブマトリクス型有機発光表示装置。
【請求項3】
前記駆動トランジスタは、発光色毎にチャネル長が異なる、請求項1又は2に記載のアクティブマトリクス型有機発光表示装置。
【請求項1】
それぞれ基板上に形成された、複数の映像信号線と、各映像信号線に接続されそれぞれ複数色の何れか1色を発光可能な複数の画素と、高電位電源線と、低電位電源線と、を備え、
各画素は、
前記低電位電源線に接続された陰極、前記陰極に対向配置された陽極、並びに前記陰極及び陽極間に挟持された有機物層を含んだ有機発光ダイオードと、
高電位電源配線に接続されたソース電極、前記有機発光ダイオードの陽極に接続されたドレイン電極、及びゲート電極を含み、発光色毎にチャネル幅とチャネル長との比が異なる駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲート電極に接続された第1電極及び前記第1電極に隙間を置いて対向配置された第2電極を含んだ保持容量と、を有し、
前記駆動トランジスタは、発光色毎にそれぞれ、1つのトランジスタ、又は直列に接続された2つ以上のトランジスタで形成され、
前記駆動トランジスタ内の前記有機発光ダイオードの陽極側のトランジスタの前記チャネル幅及びチャネル長は、全ての発光色の画素で等しい、アクティブマトリクス型有機発光表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素は、赤色、緑色及び青色の何れか1色を発光可能であり、
前記赤色を発光可能な画素の前記チャネル幅に対するチャネル長の比が最も小さく、
前記青色を発光可能な画素の前記チャネル幅に対するチャネル長の比が最も大きい、請求項1に記載のアクティブマトリクス型有機発光表示装置。
【請求項3】
前記駆動トランジスタは、発光色毎にチャネル長が異なる、請求項1又は2に記載のアクティブマトリクス型有機発光表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−237931(P2012−237931A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108199(P2011−108199)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】
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