説明

アクティブ・エージェントを動かし、アクティブ化させる装置および方法

磁性材料(62、72)およびアクティブ・エージェント(61、71)を有するターゲット要素(60、70)をオブジェクトを通じて動かし、前記ターゲット要素(60、70)を前記オブジェクト内の所定の位置に位置させ、前記アクティブ・エージェント(61、71)をアクティブ化させる装置であって:・低い磁場強度をもつ第一のサブゾーン(52)およびより高い磁場強度をもつ第二のサブゾーン(54)が視野(28)内に形成されるよう磁場強度の空間におけるパターンをもつ選択磁場(50)を生成するための、選択場信号発生器ユニット(110)および選択場要素(116)、特に選択場磁石もしくはコイルを有する選択手段と、・前記磁性材料(62、72)の磁化がローカルに変化するよう、磁気駆動場によって視野(28)内の前記二つのサブゾーン(52、54)の空間内の位置を変えるための、駆動場信号発生器ユニット(130)および駆動場コイル(136a、136b、136c)を有する駆動手段と、・前記ターゲット要素(60、70)を前記オブジェクトを通じて、移動コマンドによって指示される方向に動かし、前記ターゲット要素(60、70)を前記オブジェクト内の所望される位置に配置し、前記ターゲット要素(60、70)が前記所望される位置に達したときに前記アクティブ・エージェント(61、71)をアクティブ化するための適切な磁場を生成するために、駆動場コイル(136a、136b、136c)への制御電流を生成および提供するよう前記駆動場信号発生器ユニット(130)を制御する制御手段(150)とを有する装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料およびアクティブ・エージェントを有するターゲット要素をオブジェクトを通じて動かし、前記ターゲット要素をオブジェクト内の所定の位置に位置させ、アクティブ・エージェントをアクティブ化させる装置および方法に関する。さらに、本発明は、コンピュータ上で前記方法を実装するためおよびそのような装置を制御するためのコンピュータ・プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子撮像(MPI: Magnetic Particle Imaging)は台頭しつつある医療撮像モダリティである。MPIの最初の諸バージョンは、二次元画像を生成するという意味で二次元的であった。将来の諸バージョンは三次元的(3D)となるであろう。非静的なオブジェクトの時間依存の、すなわち4Dの画像が、3D画像の時間的なシーケンスを動画に組み合わせることによって生成できる。これは、単一の3D画像のためのデータ収集の間にオブジェクトが有意に変化しなければである。
【0003】
MPIは、計算機断層撮影(CT: Computed Tomography)または磁気共鳴撮像(MRI: Magnetic Resonance Imaging)のような再構成撮像方法である。したがって、オブジェクトの関心体積のMP画像は二段階で生成される。データ収集と称される第一段階はMPIスキャナを使って実行される。MPIスキャナは、スキャナの照射中心〔アイソセンター〕において単一の、場がない点(FFP: field free point)を有する、「選択場」と呼ばれる静的な傾斜磁場を生成する手段を有する。さらに、スキャナは、時間依存の、空間的にほぼ均一な磁場を生成する手段を有する。実際には、この磁場は、「駆動場(drive field)」と呼ばれる小さな振幅をもつ高速で変化する場と「フォーカス場(focus field)」と呼ばれる大きな振幅をもつゆっくり変化する場を重畳することによって得られる。静的な選択場に時間依存的な駆動場とフォーカス場を加えることによって、FFPは、照射中心を囲むスキャン体積を通じて、所定のFFP軌跡に沿って動かされることができる。スキャナはまた、一つまたは複数の、たとえば三つの受信コイルの配列を有し、これらのコイルに誘導される電圧があればそれを記録できる。データ収集については、撮像されるべきオブジェクトは、オブジェクトの関心体積が、スキャン体積のサブセットであるスキャナの視野によって囲まれるよう、スキャナ内に配置される。
【0004】
オブジェクトは磁性ナノ粒子を含む必要がある。オブジェクトが動物または患者である場合、スキャンに先立って、そのような粒子を含む造影剤が動物または患者に投与される。データ収集の間、MPIスキャナは、FFPを、スキャン体積を、または少なくとも視野をトレース・アウトする(trace out)入念に選ばれた軌跡に沿って操縦する。オブジェクト内の磁性ナノ粒子は変化する磁場を感じ、磁化を変えることによって応答する。ナノ粒子の変化する磁化は、各受信コイルにおける時間依存する電圧を誘導する。この電圧は、受信コイルに関連付けられた受信器においてサンプリングされる。受信器によって出力されるサンプルは記録され、収集されたデータをなす。データ収集の詳細を制御するパラメータがスキャン・プロトコルをなす。
【0005】
画像再構成と称される画像生成の第二段階では、第一段階で収集されたデータから画像が計算または再構成される。画像は、視野内の磁性ナノ粒子の位置依存の濃度のサンプリングされた近似を表す、データの離散的な3Dアレイである。再構成は一般に、好適なコンピュータ・プログラムを実行するコンピュータによって実行される。コンピュータおよびコンピュータ・プログラムが再構成アルゴリズムを実現する。再構成アルゴリズムは、データ収集の数学的モデルに基づく。あらゆる再構成撮像方法と同様、このモデルは、収集されたデータに対して作用する積分演算子である。再構成アルゴリズムは、可能な限り、モデルの作用を取り消そうとする。
【0006】
そのようなMPI装置および方法は、非破壊的な仕方で、いかなる損傷も引き起こすことなく、検査オブジェクトの表面近くと表面から遠方の両方での高空間解像度で、任意の検査オブジェクト――たとえば人体――を検査するために使用できるという利点がある。そのような装置および方法は一般に、特許文献1および非特許文献1から知られている。該刊行物において記載される磁性粒子撮像(MPI)のための装置および方法は、小さな磁性粒子の非線形な磁化曲線を活用する。
【0007】
上記で説明したMPI技法は、特に人間を対象とする医学または獣医学において種々の用途のために適用できる。一つの興味深い応用は、短距離放射線療法または他の局所的治療用途の分野にもある。こうした用途については、上述したMPI技法はこれまで使われてこなかった。
【0008】
短距離放射線療法(brachytherapy)は、前立腺癌または子宮頸癌の治療のために人間または動物の体内に放射性線源(しばしば「放射性シード」と称される)が配置される形の放射線療法である。この方法では、腫瘍組織を放射線照射するために、小さな放射性シードが腫瘍領域中に直接埋め込まれる。したがって、短距離放射線療法は、身体組織の内部照射のために使われ、その放射は腫瘍組織自身の領域のみに限定される。
【0009】
そのような短距離放射線療法の処置方法およびシステムは、たとえばWO2008/145377A1から知られている。この方法では、放射性シードは中空の処置チャネルを通じて体内に埋め込まれる。これは短距離放射線療法の現状技術における一般的な技法である。中空の処置チャネルの配置および放出されるべき放射線量は、手術前に、特別な治療計画において計画される。
【0010】
現状技術の短距離放射線療法は、放射性シードの埋め込みのための複雑な手術を必要とする侵襲的な方法である。これらの方法に関して発生する典型的な問題は、通例、シードの位置と、治療すべき腫瘍を取り巻く健全な組織に影響しないための放出される放射線量とを厳密に定義するための計画段階における困難である。さらに、当技術分野において既知の短距離放射線療法では、埋め込まれた放射性シードを再び除去するために、処置後に第二の手術が必要とされるという欠点がある。
【0011】
また、上述した短距離放射線療法と同様の、体内の非常に特定的な位置または限定された領域に薬物または薬が正確に位置される必要がある、他の医療アプリケーションが知られている。特に、卒中の治療処置では、この局所的に限定された薬物適用は、興味深くかつ困難なタスクである。現状技術によれば、これは通例、既知の短距離放射線療法と同様に、所望される位置に直接的に、非常に正確に薬物または薬を注入するまたは埋め込むことによってなされる。ここでもまた、この種のアプリケーションのための信頼できる非侵襲的な方法はこれまで知られておらず、上述した方法はしばしば複雑で、時間がかかり、危険でさえある処置対象オブジェクト内への外科的介入を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE10151778A1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Gleich, B. and Weizenecker, J. "Tomographic imaging using the nonlinear response of magnetic particles", Nature, vol.435, pp.1214-1217, 2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
オブジェクト内のローカルに限定された領域を非侵襲的かつ正確に処置するための、特に短距離放射線療法または卒中治療における応用のための、改善された装置および方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の側面では:
・低い磁場強度をもつ第一のサブゾーンおよびより高い磁場強度をもつ第二のサブゾーンが視野内に形成されるよう磁場強度の空間におけるパターンをもつ選択磁場を生成するための、選択場信号発生器ユニットおよび選択場要素、特に選択場磁石もしくはコイルを有する選択手段と、
・磁性物質の磁化がローカルに変化するよう、磁気駆動場によって視野内の前記二つのサブゾーンの空間内の位置を変えるための、駆動場信号発生器ユニットおよび駆動場コイルを有する駆動手段と、
・ターゲット要素をオブジェクトを通じて、移動コマンドによって指示される方向に動かし、ターゲット要素をオブジェクト内の所望される所定の位置に配置し、ターゲット要素が所望される位置に達したときにアクティブ・エージェントをアクティブ化するための適切な磁場を生成するために、それぞれの場コイルへの制御電流を生成および提供するよう前記諸信号発生器ユニットを制御する制御手段とを有する、
装置が提起される。
【0016】
本発明のあるさらなる側面では、対応する方法が提起される。
【0017】
本発明のあるさらなる側面では、上述した装置において使用するための対応するターゲット要素が提起される。前記ターゲット要素は、磁性材料およびアクティブ・エージェントを有し、前記アクティブ・エージェントは磁場によってアクティブ化させることができる。
【0018】
本発明のあるさらなる側面では、コンピュータ上で実行されたときに、該コンピュータに、本発明に基づく方法の段階を実行するよう本発明に基づく装置を制御させるプログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラムが提起される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項において定義される。請求項記載のターゲット要素、請求項記載の方法および請求項記載のコンピュータ・プログラムは、請求項記載の装置および従属請求項の記載と同様および/または同一の好ましい実施形態をもつ。
【0020】
発明者によって、既知の短距離放射線療法および卒中治療の主要な限界である、複雑で時間がかかる侵襲的な手術という点が、提起されるMPI技術によって克服できることが認識された。よって、本発明の発明者は、ターゲット要素を所望される位置に配置し、ターゲット要素が所望される(所定の)位置に達したときにアクティブ・エージェントをアクティブ化することができるために制御手段を追加することによって、既知のMPI装置および方法の諸部分を使うという解決策を見出した。具体的には、既知のMPI装置の場コイルの一部(または全部)が適切な磁場を生成するために使用され、新たに開発された制御手段が、ターゲット要素をオブジェクトを通じて動かし、ターゲット要素のアクティブ・エージェントをアクティブ化するために適切な磁場を生成するよう、それぞれの場コイルへの制御電流を生成および提供するよう、それぞれの信号発生器ユニットを制御するよう適応される。
【0021】
よって、本発明者は、たとえば放射性シードまたは薬のようなアクティブ・エージェントが正確にかつ非侵襲的にオブジェクト内に配置され、その後磁場によってアクティブ・エージェントをアクティブ化されることができるのに使われる装置および方法を見出した。本発明において定義される「アクティブ・エージェント(active agent)」の意味は、医学的、薬学的、物理的または放射性の任意のエージェントまたは物質を含む。
【0022】
この技法は、短距離放射線療法および卒中治療において使うために特に有利である。ここで、提起される装置の助けにより、必要な放射性シードまたは溶解薬物(lysis drug)が非常に正確に配置され、局所的にアクティブ化されることができる。MPIがターゲット要素のようなオブジェクトを追跡する能力により、動脈内注射を使ったターゲット要素の配置が実現可能になる。
【0023】
既知の短距離放射線療法または卒中治療とは対照的に、上で説明したように、提起されるMPI装置および方法は、いかなる望まれない周辺領域をも害したりこれに干渉したりすることなく、オブジェクト内での非常に厳密な、局所的に限定された処置を許容する。処置は非侵襲的であり、複雑な外科的介入が必要とされないので、人間または動物の患者の場合、患者にとってずっと快適である。さらに、磁場は非常に高速に修正でき、そのため磁性材料およびアクティブ・エージェントを含むターゲット要素が非常に短時間でオブジェクトを通じて動かされ、所望される位置に配置されることができるので、本発明に基づく装置を使った手順は、当技術分野で知られている諸方法よりずっと高速である。さらに、人間または動物の患者の場合、アクティブ・エージェントは、ターゲット要素と一緒に動脈および静脈を通じて輸送され、そのため患者の体内のあらゆる所望される点が簡単かつ正確に到達できる。これは、薬または放射性シードが複雑な外科的介入において埋め込まれる必要がある当技術分野において既知の方法と比べ、多大な利点である。計画手順も著しく容易にされ、配置の精度も上がる。
【0024】
ターゲット要素が誤った位置に配置される場合であっても、本発明に基づくMPI装置内では、磁場を使ってその位置が簡単に訂正できる。さらに、そのようなターゲット要素の適用は、安全性の理由に関して、非常に信頼でき、安全である。アクティブ・エージェントはターゲット要素がその所望される位置に達する前にはアクティブ化されないからである。よって、薬または放射性シードが誤った位置でその効果を発現させるという事例は起こりえない。
【0025】
このように、本発明は、特に短距離放射線療法および卒中治療の用途のために使われることができる装置および方法であって、非侵襲的であり、したがって患者にとって便利であり、高速であり、適用が簡単であるものを提案する。
【0026】
ある好ましい実施形態によれば、ターゲット要素のアクティブ・エージェントが局所的にアクティブ化されるよう、視野内のターゲット要素の磁性材料が加熱されるのに十分長い時間および/またはそのような周波数で、磁場によって視野内の前記二つのサブゾーンの空間的な位置を変えるための活性化(actuation)手段が設けられる。これは、磁気周波数場、好ましくは高周波(RF: radio frequency)場を印加することによって、ターゲット要素に含まれる磁性材料が振動するよう強制させられることを意味する。RF場のために第一のサブゾーンの空間的位置が変えられるとき、第一のサブゾーン内に位置されるまたは第一のサブゾーンから第二のサブゾーンへもしくは第二のサブゾーンから第一のサブゾーンへ移行するターゲット要素の磁性材料の磁化が変えられる。この磁化の変化のため、たとえば磁性材料内での既知のヒステリシス効果またはヒステリシス様効果のために、粒子動きの開始のために、あるいは他の摩擦効果のために、熱損失が発生し、それにより、ターゲット要素全体の温度が上昇する。磁化が一回だけ変えられるときに生成される熱量は比較的小さいので、アクティブ・エージェントをアクティブ化するためには、RF場の周波数は比較的高い必要がある。RF場の周波数とは別に、全加熱パワー(power)はRF場の振幅、ターゲット要素内の磁性材料およびターゲット要素のサイズまたは磁性材料のサイズもしくは量にも依存する。
【0027】
アクティブ・エージェントがたとえばコーティングによって保護されている場合、コーティングは加熱のために溶融するか液化してもよく、それによりアクティブ・エージェントがアクティブ化されたり、その保護コーティングから解放されて、所望される組織に侵入することができ、局所的治療を可能にする。MPIシステムの性質のため、アクティブ・エージェントのアクティブ化は、非常に選択的かつ正確に実行できる。アクティブ・エージェントをアクティブ化するために印加される磁気周波数場は必ずしも所望されるターゲット要素に精密に焦点を合わされる必要はない。FFP内に位置されるターゲット要素の磁性材料だけが振動するよう強制され、よって加熱されるからである。FFP外部のターゲット要素はより高い磁場強度の影響下にあり、それらの領域にある磁性材料は飽和状態にあり、よって印加されるRF場によって振動するよう強制されない。よって、アクティブ・エージェントは非常に選択的にアクティブ化されることができ、正しく配置されていないターゲット要素が処置を害したり、負の仕方で処置に影響したりすることはない。
【0028】
もう一つの好ましい実施形態によれば、視野内に回転磁場を生成し、回転力のためにアクティブ・エージェントがターゲット要素から分離されるようにする活性化手段が設けられる。回転磁場を印加することにより、ターゲット要素のまわりに10m/sを超える流体の流れが生成できる。このようにして、ターゲット要素は非常に高速に回転することを強制され、それによりアクティブ・エージェントは、発生する回転力のためにターゲット要素から分離される。これは、アクティブ・エージェントをアクティブ化するために、熱により磁性材料が液化される上記の説明とは異なる活性化技法を表す。アクティブ・エージェントをアクティブ化するさらなる可能性は、磁気駆動される動源〔モーター〕を加えることによる。これはたとえば、アクティブ・エージェントを能動的にターゲット要素の外に移動させるために、磁気歪み(magnetostriction)に依拠する。
【0029】
もう一つの好ましい実施形態によれば、フォーカス磁場によって視野の空間的位置を変えるための、フォーカス場信号発生器ユニットおよびフォーカス場コイルを有するフォーカス手段が設けられる。そのようなフォーカス場は、駆動場と同じまたは同様の空間分布をもつ。フォーカス場は基本的に、視野の位置を動かすために使われる。これは、視野が非常に限られたサイズをもつので特に必要である。そのため、ターゲット要素がオブジェクト内でより長い距離にわたって動かされる必要がある場合、ターゲット要素を所望される位置に達するまでその経路全体にわたって能動的に動かし追跡するために、フォーカス場が視野の空間内での位置を変える必要があるのである。換言すれば、フォーカス場はオブジェクトの能動的な機械的な動きの代わりとなる。つまり、人間の患者の場合、フォーカス場手段が設けられない場合、視野を動かすためには患者が物理的に動かされる必要があるのである。
【0030】
駆動磁場コイルと同じにまたは一層よく、フォーカス磁場コイルはオブジェクトを通じたターゲット要素の動きのために使用できる。これらのコイルは、十分高速に、ターゲット要素の動きのために必要とされる十分大きな場の強度をもって、さまざまな方向に十分均一な場を生成することができる。したがって、任意の方向に生成できるので、これらのフォーカス場コイルの使用は、高い柔軟性を提供する。
【0031】
すでに上述したように、フォーカス場は駆動場と同じまたは同様の空間的分布をもつ。駆動磁場を生成するのに使われるコイルと同じ磁気コイルを使うことも可能である。基本的な相違は、駆動場よりもフォーカス場については周波数がずっと低い(たとえば<1kHz、典型的には<100Hz)が、フォーカス場の振幅はずっと高い(たとえば駆動場の20mTに比べ200mT)ということである。
【0032】
本発明のもう一つの実施形態によれば、上述した活性化手段は、前記駆動手段または前記フォーカス手段によって実現される。上述したように、駆動手段またはフォーカス手段を生成する手段は非常に似通っているので、いずれの手段も、アクティブ・エージェントをアクティブ化するためにターゲット要素内の磁性材料を加熱するための上述した磁気周波数場を生成するために使用できる。
【0033】
あるさらなる実施形態によれば、前記装置はさらに:
・検出信号を収集するための、少なくとも一つの信号受信ユニットおよび少なくとも一つの受信コイルを有する受信手段であって、前記検出信号は視野内の磁化に依存し、前記磁化は前記第一および第二のサブゾーンの空間内での位置の変化によって影響される、受信手段と、
・処理された検出信号からオブジェクト内でのターゲット要素の位置を決定するために適切な磁場が印加されているときに収集された検出信号を処理するための処理手段とを有する。
受信手段およびMPIシステムの原理を使うことによって、ターゲット要素は、収集された検出信号の助けによって、位置特定され、視覚化されることができる。このように、ターゲット要素の移動と位置特定は、本発明に基づく装置では、カメラ・システムやX線システムなどの位置特定のための追加的なハードウェアといった追加的な設備なしに、交互に、ほぼ同時に行うことができる。位置特定のために、オブジェクト内の磁性粒子を撮像する既知のMPIの原理、たとえば上述した文献に記載される原理が適用される。すなわち、その場合、制御ユニットが、ターゲット要素を撮像するために適切な磁場を生成するようそれぞれの場コイルへの制御電流を生成および提供するよう信号発生器ユニットのための制御コマンドを生成する。
【0034】
これは、本発明に基づく装置および方法が、X線やCTのような別の撮像モダリティを使うことなく、オブジェクトを通じての動きの間、ターゲット要素の正しい動きおよび位置を簡単に検査することを可能にするので、特に有利である。X線やCTが必要とされないので、患者にとってのX線線量を低下させ、さらにこの機能のために追加的なハードウェアも必要とされない。
【0035】
前記受信手段によって信号が非常に正確に検出され、収集されるので、ターゲット要素は信頼できる形で位置決めされることができ、定義された位置が簡単に検査され、必要であれば訂正されることができる。
【0036】
上述したように、上記の装置および方法で使われるターゲット要素自身は、磁性材料およびアクティブ・エージェントを有し、前記アクティブ・エージェントは磁場によってアクティブ化できる。ここで、アクティブ・エージェントはたとえば溶解薬物または放射性シードである。他方、アクティブ・エージェントは他のいかなる物質でもよいことは注意しておく必要がある。さらに、アクティブ・エージェントは磁性材料の内側部分に、磁性材料を取り囲むコーティング内に、あるいは磁性材料と一緒になった基質〔マトリクス〕中に配置されることが好ましい。アクティブ・エージェントが磁性材料の内側部分にある場合、磁性材料はアクティブ・エージェントを外部から隔離する機能をもつ。よって、たとえば、放射性シードの場合、ターゲット要素は、該放射性シードがアクティブ化されるまでは、あるいは磁性コーティング材料が加熱によって液化されるまでは、放射線を照射しない。
【0037】
アクティブ・エージェントが磁性材料と一緒に基質中に配置される場合、基質はたとえば、加熱によって溶解する脂質でできていることができる。放射性材料の場合、前記材料はターゲット要素にわたってより均質に前記基質内に分散され、電離放射線が組織に侵入できる。71Geが放射性同位体についての最も有望な候補である。鉄(Kエッジ)によって効率的に遮蔽でき、組織の侵入深さが小さく、局所的治療のために好適となるからである。薬物の場合、化学物質は、磁性コーティング材料が液化または溶融されたのちにターゲット要素から拡散して出てくる。
【0038】
さらに、ターゲット要素の大きさが決定的な役割を演じることを注意しておく必要がある。一方では、ターゲット要素が大きいか、あるいはターゲット要素中により多くの磁性材料が含められるほど、ターゲット要素は速く動かすことができる。また、ターゲット要素が大きいほど、ターゲット要素を追跡することが簡単になる。他方、人間の患者の場合、ターゲット要素は静脈および動脈を通じて動かされ、ターゲット要素は1mmという特定のサイズを超えることはできない。70〜150μmの大きさが特に好適であることが示されている。
【0039】
一般に、ターゲット要素の種々の形状が可能である。本発明のあるさらなる好ましい実施形態によれば、ターゲット要素は球状、楕円体状、螺旋状〔ヘリカル〕、長方形状、棒状または立方体状の形をもつ。ターゲット要素を細い棒として実現することの利点は、その幾何学的な形のため、多量の磁性材料を含むことができ、それでいて血管の直径が棒の直径より大きい限り、検査される血管(vessel)の閉塞が避けられるということである。他方、ターゲット要素の螺旋形状も非常に好適である。その場合、ターゲット要素が上述したように回転磁場を使って動かすことができるからである。そのような場合、動きの方向は、磁場の回転面に垂直である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明のこれらおよびその他の側面は、以下に記載される実施形態を参照することから明白であり、明快にされるであろう。
【図1】MPI装置の第一の実施形態を示す図である。
【図2】図1に示される装置によって生成される選択場パターンの例を示す図である。
【図3】MPI装置の第二の実施形態を示す図である。
【図4】本発明に基づくMPI装置の第一の実施形態のブロック図である。
【図5】本発明に基づくMPI装置の第二の実施形態のブロック図である。
【図6】本発明に基づく方法の簡略化されたブロック図である。
【図7】aは、本発明に基づくターゲット要素の第一の実施形態を示す図である。bは、本発明に基づくターゲット要素の第二の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の詳細を説明する前に、磁性粒子撮像の基礎を、図1ないし図3を参照して詳しく説明しておく。特に、医療診断用のMPIスキャナの二つの実施形態について述べる。データ収集の略式の記述も与える。二つの実施形態の間の類似性および相違点を指摘する。
【0042】
図1ないし図3に示されているMPIスキャナの二つの実施形態が含む特徴には、本発明に基づく装置および方法において必ずしも必要とされるわけではないものがあることを注意しておく必要がある。これら三つの図面は、読者に基本的なMPI原理の理解を与えるために意図されている。たとえば、検出信号の収集およびその画像データの再構成のために使われる受信手段および処理手段は含められることができるが、本発明にとって必須ではない。にもかかわらず、以下ではデータ収集の略式の記述を与えておく。また、上述し、のちに説明するフォーカス手段も本発明にとって必須ではない。
【0043】
図1に示されるMPIスキャナの第一の実施形態10は、同軸の平行円形コイルの三つの顕著な対12、14、16をもつ。各対は図1に示すように配列される。これらのコイル対12、14、16は、選択場ならびに駆動場およびフォーカス場を生成するはたらきをする。三つのコイル対12、14、16の軸18、20、22は互いに直交であり、単一点で交わる。その単一点はMPIスキャナ10の照射中心24として表されている。さらに、これらの軸18、20、22は、照射中心24に取り付けられた3Dデカルトxyz座標系の軸のはたらきをする。垂直軸20はy軸と名付けられ、よってx軸とz軸は水平方向である。コイル対12、14、16もその軸にならって名付けられる。たとえば、yコイル対14はスキャナの上下にあるコイルによって形成される。さらに、正(負)のy座標をもつコイルはy+コイル(y-コイル)と呼ばれ、残りのコイルについても同様である。
【0044】
スキャナ10は、所定の時間依存の電流を、各コイル12、14、16に、いずれかの方向に流すよう設定されることができる。電流が、コイルの軸に沿って見たときにコイルのまわりを時計回りに流れる場合、電流は正とされ、逆の場合に負とされる。静的な選択場を生成するために、一定の正の電流ISがz+コイルを通じて流され、電流−ISがz-コイルを通じて流される。その際、zコイル対16は反平行な円形のコイル対として作用する。
【0045】
一般に傾斜磁場である選択磁場は、図2において場の線50によって表されている。これは、選択場を生成するzコイル対16の(たとえば水平方向の)z軸22の方向に実質的に一定の勾配をもち、軸22上の照射中心24において値0に達する。この場がない点(図2では個別的に示さず)から出発して、選択磁場50の場の強さは、場がない点からの距離が増すにつれて、三つの空間的方向のすべてにおいて増大する。照射中心24のまわりの破線で表される第一のサブゾーンまたは領域52では、場の強度は、該第一のサブゾーン52に存在する磁性材料または磁性粒子の磁化が飽和しないよう十分小さい。一方、第二のサブゾーン54(領域52の外部)に存在する粒子の磁化は飽和状態にある。スキャナの視野28の場のない点または第一のサブゾーン52は、好ましくは、空間的にコヒーレントな領域である;これはまた、点状領域、線または平坦な領域であってもよい。第二のサブゾーン54では(すなわち、スキャナの視野28のうち、第一のサブゾーン52の外部の残りの部分では)、選択場の磁場強度は、本発明によればターゲット要素60、70の一部である磁性材料を飽和状態に保持するのに十分強い。
【0046】
視野28内で二つのサブゾーン52、54の位置を変えることにより、視野28内の(全体的な)磁化が変化する。視野28内の磁化または該磁化によって影響される物理パラメータを測定することにより、視野28内の磁性材料の空間分布についての情報が、よって視野28内のターゲット要素60、70の空間分布についての情報が得られる。視野28内の二つのサブゾーン52、54の相対的な空間位置を変えるためには、さらなる磁場、すなわち駆動磁場および該当するならフォーカス磁場が、視野28内のまたは少なくとも視野28の一部の中の選択場50に重畳される。
【0047】
駆動場を生成するために、時間依存の電流ID1が両方のxコイル12を通じて流され、時間依存の電流ID2が両方のyコイル14を通じて流され、時間依存の電流ID3が両方のzコイル16を通じて流される。こうして、三つのコイル対のそれぞれは、平行な円形コイル対として作用する。同様に、フォーカス場を生成するために、時間依存の電流IF1が両方のxコイル12を通じて流され、電流IF2が両方のyコイル14を通じて流され、電流IF3が両方のzコイル16を通じて流される。
【0048】
zコイル対16が特別であることを注意しておくべきである:これは、駆動場およびフォーカス場の分担分を生成するのみならず、選択場をも生成する。z±コイルを流れる電流はID3+IF3+ISである。残りの二つのコイル対12、14を流れる電流はIDk+IFk、k=1,2である。幾何学的構成および対称性により、三つのコイル対12、14、16はよく分離される。これは望ましい。
【0049】
反平行な円形コイル対によって生成される選択場は、z軸のまわりに回転対称であり、そのz成分はzにおいてほぼ線形であり、照射中心24のまわりのかなりの体積において、xおよびyとは独立である。特に、選択場は照射中心において単一の場がない点(FFP)をもつ。対照的に、平行な円形コイル対によって生成される駆動場およびフォーカス場への寄与は、照射中心24のまわりのかなりの体積において空間的にほぼ均一であり、それぞれのコイル対の軸に平行である。三つすべての平行な円形コイル対によって統合して生成される駆動場およびフォーカス場は空間的にほぼ均一であり、任意の方向および何らかの最大強度までの任意の強さを与えられることができる。駆動場およびフォーカス場も時間依存である。フォーカス場と駆動場の間の違いは、フォーカス場は時間的にゆっくり変化し、大きな振幅をもつのに対し、駆動場は急速に変化し、小さな振幅をもつということである。これらの場を別個に扱う物理的および生物医学的な理由がある。大きな振幅をもつ急速に変化する場は生成するのが難しく、患者にとって危険である。
【0050】
MPIスキャナの実施形態10は、平行円形コイルの少なくとも一つのさらなる対、好ましくは三つのさらなる対を有する。それらはやはりx,y,z軸に沿って配向される。これらのコイル対は、図1には示されていないが、受信コイルとしてはたらく。これらの受信コイルが本発明において必要とされるのは、受信信号を収集する必要があり、収集したデータを画像化する必要がある場合にのみである。だがこれは必ずしもそうではない。ターゲット要素を動かし、配置し、アクティブ・エージェントをアクティブ化することが本発明の主要な目的だからである。
【0051】
しかしながら、受信コイルが設けられるならば、これらの受信コイル対の一つを通じて流れる一定の電流によって生成される磁場は、視野内で空間的にほぼ均一であり、それぞれのコイル対の軸に平行である。これらの受信コイルはよく分離されていると想定される。受信コイルにおいて誘起される時間依存の電圧は、このコイルに取り付けられた受信器によって増幅され、サンプリングされる。より精密には、この信号の膨大なダイナミックレンジに対処するために、受信器は、受信信号とある参照信号との間の差をサンプリングする。受信器の伝達関数は、DCから,期待される信号レベルがノイズ・レベルを下回る点まで、非0である。
【0052】
図1に示されるMPIスキャナの実施形態10は、z軸22に沿った、すなわち選択場の軸に沿った円筒形のボア26をもつ。すべてのコイルはこのボア26の外側に配置される。データ収集のためには、撮像(または治療)されるべき患者(またはオブジェクト)は、患者の関心体積――撮像(または治療)される必要のある患者(またはオブジェクト)の体積――がスキャナの視野28――スキャナが内容を撮像できる、該スキャナの体積――によって囲まれるよう、ボア26内に置かれる。患者(またはオブジェクト)はたとえば患者テーブル上に置かれる。視野28は幾何学的に単純であり、ボア26の内部において中心をもつ体積であり、立方体、球体または円柱などである。立方体の視野28が図1には示されている。
【0053】
サブゾーン52の大きさは、一方では選択磁場の勾配の強さに依存し、他方では飽和のために必要とされる磁場の強さに依存する。磁場強度80A/mおよび50×103A/m2に上る選択磁場の場の強さの(所与の空間方向での)勾配での磁性材料の十分な飽和のためには、粒子の磁化が飽和しない第一のサブゾーン52は(前記所与の空間方向において)約1mmの寸法をもつ。
【0054】
患者の関心体積は、本発明によれば、磁性材料62、72およびアクティブ・エージェント61、71を有するターゲット要素60、70を少なくとも一つ、好ましくは大量に含むと想定される。少量の薬物または放射線線量しか必要とされないのであれば、理論的には一つのターゲット要素で十分であるが、実際上の理由により、通例は、より多量のターゲット要素60、70が与えられる。一部のターゲット要素60、70は体内で失われることがありうるからである。しかしながら、一部のターゲット要素60、70の喪失は患者にとって危険ではない。これらの要素のアクティブ・エージェント61、71はRF磁場によってアクティブ化されないからである。
【0055】
ターゲット要素60、70は、特に、たとえば腫瘍の治療処置および/または診断処置に先立って、関心体積内に位置される。これは、たとえばターゲット要素60、70を含む液体が患者(オブジェクト)の体内に注入されるまたは他の仕方で、たとえば経口的に患者に投与されることによる。
【0056】
データ収集は時刻tsに始まって時刻teに終わる。データ収集の間、x,y,zコイル対12、14、16は位置および時間に依存する磁場、印加される場を生成する。これは、好適な電流をコイルに流すことによって達成される。実際、駆動場およびフォーカス場は、FFPがスキャン体積――視野のスーパーセット――をトレースし尽くすあらかじめ選択されたFFP軌跡に沿って動くよう、選択場を押しやる。印加される場は、患者内でターゲット要素60、70内の磁性材料62、72を配向させる。印加されるRF場が変わるにつれて、結果として得られる磁化も変化する。ただし、その応答は印加されるRF場に対して非線形である。変化する印加された場と変化する磁化の和が、xk軸に沿った受信コイル対の端子間の時間依存電圧Vkを誘起する。付随する受信器がこの電圧を信号Sk(t)に変換し、サンプリングし、出力する。
【0057】
第一のサブゾーン52内に位置されるターゲット要素60、70からの信号を、駆動磁場の変動の周波数帯域とは別の(より高い周波数にシフトされた)周波数帯域で受信または検出することが有利である。これが可能なのは、磁化特性の非線形性の結果として、スキャナの視野28内のターゲット要素60、70内の磁性材料62、72の磁化の変化に起因して、駆動磁場周波数の、より高い高調波の周波数成分が現れるからである。
【0058】
図1に示した第一の実施形態10のように、図3に示したMPIスキャナの第二の実施形態30も、三つの円形の、互いに直交なコイル対32、34、36をもつが、これらのコイル対32、34、36は選択場およびフォーカス場のみを生成する。やはり選択場を生成するzコイル36は強磁性材料37で充填される。この実施形態30のz軸42は垂直方向に配向され、一方、x軸およびy軸38、40は水平方向に配向される。スキャナのボア46はx軸38に平行であり、よって選択場の軸42に垂直である。駆動場はx軸38に沿ったソレノイド(図示せず)によって、および残りの二つの軸40、42に沿った鞍形コイル(図示せず)の対によって生成される。これらのコイルは、ボアをなす管のまわりに巻かれる。駆動場コイルは受信コイルのはたらきもする。受信コイルによってピックアップされた信号は、印加された場によって引き起こされる寄与を抑制する高域通過フィルタを通じて送られる。
【0059】
そのような実施形態の典型的なパラメータを若干挙げておくと、選択場のz勾配GがG/μ0=2.5T/mの強さをもつ。μ0は真空の透磁率である。生成される選択場は時間的に全く変動しないか、変動は比較的ゆっくりであり、好ましくは約1Hzから約100Hzの間である。駆動場の時間的周波数スペクトル(temporal frequency spectrum)は、25kHzのまわりの狭い帯域(約100kHzまで)に集中している。受信信号の有用な周波数スペクトルは50kHzから1MHzまでの間にある(最終的には約10MHzまで)。ボアは120mmの直径をもつ。ボア46にフィットする最大の立方体28は、120mm/√2≒84mmの辺長をもつ。
【0060】
上記の諸実施形態に示されるように、上記のさまざまな磁場は、同じコイル対のコイルによって、該コイルに適切に生成された電流を与えることによって、生成される。しかしながら、特により高い信号対雑音比をもつ信号解釈の目的のためには、時間的に一定な(または準一定な)選択場および時間的に可変の駆動場およびフォーカス場が別個のコイル対によって生成される場合が有利でありうる。一般に、ヘルムホルツ型のコイル対がこれらのコイルについて使用できる。これはたとえば、RFコイル対が関心領域の上下に位置され、前記RFコイル対が時間的に可変な磁場を生成できる、開放型磁石をもつ磁気共鳴装置(オープンMRI)の場から一般に知られている。したがって、そのようなコイルの構成はここでこれ以上詳述する必要はない。
【0061】
選択場の生成についてのある代替的な実施形態では、永久磁石(図示せず)が使用できる。そのような(向かい合う)永久磁石(図示せず)の二つの極の間の空間において、図2に示したのと同様の磁場が形成される。すなわち、これは向かい合う磁極が同じ極性の場合である。もう一つの代替的な実施形態では、選択場は、少なくとも一つの永久磁石と少なくとも一つのコイルの混合によって生成できる。
【0062】
図4および図5は、本発明の第一および第二の実施形態に基づくMPI装置10の一般的なブロック図である。上記で説明した磁性粒子撮像の一般原理は、有効であり、特に断りのない限り、この実施形態にも適用可能である。たとえば、上述したように本発明に基づく装置にとって義務的でない受信手段および処理手段は、本発明に基づく第一の実施形態(図4参照)には含められない。よって、本発明の第一の実施形態に基づく装置は、MPIデータ収集およびMPI撮像技法を利用しない。やはり本発明にとって義務的でない上述したフォーカス手も第一の実施形態には含められない。これと対照的に、本発明の第二の実施形態(図5に示す)は、上述したすべての手段、受信手段、処理手段およびフォーカス手段および処理手段を含む。
【0063】
図4に示した装置100の第一の実施形態は、所望される磁場を生成するためのさまざまなコイルのセットを有する。まず、それらのコイルおよびMPIモードにおけるその機能について説明する。
【0064】
上で説明した傾斜選択磁場を生成するために、選択場(SF: selection field)コイルのセット116を有する、好ましくは少なくとも一対のコイル要素を有する選択手段が設けられる。選択手段はさらに、選択場信号発生器ユニット110を有する。好ましくは、選択場コイルの前記セット116の各コイル要素について(またはコイル要素の各対について)別個の発生器サブユニットが設けられる。前記選択場信号発生器ユニット110は、制御可能な選択場電流源112(一般には増幅器を含む)と、フィルタ・ユニット114とを有する。フィルタ・ユニット114は、所望の方向の選択場の勾配の強さを個々に設定するよう、場のコイル要素のそれぞれのセクションに選択場電流を与える。好ましくは、DC電流が与えられる。選択場コイル要素116が対向コイルとして、たとえば視野の反対側に配置される場合、対向コイルの選択場電流は好ましくは反対向きである。選択場信号発生器ユニット110は、制御ユニット150によって制御される。制御ユニット150は、好ましくは、選択場のすべての空間部分の場の強さの和および勾配強さの和があらかじめ定義されたレベルに維持されるよう、選択場電流発生110を制御する。
【0065】
駆動磁場の生成のために、装置100はさらに駆動手段を有する。駆動手段は、駆動場(DF: drive field)コイルのサブセット、好ましくは向かい合って配列された駆動場コイル要素の三つの対136a、136b、136cを有する。これらの駆動場コイルは駆動場信号発生器ユニット130によって制御される。駆動場信号発生器ユニット130は好ましくは、駆動場コイルの前記セットの各コイル要素(または少なくともコイル要素の各対)136a、136b、136cについて、別個の駆動場信号発生サブユニットを有する。前記駆動場信号発生器ユニット130は、それぞれの駆動場コイル136a、136b、136cに駆動場電流を提供するために、駆動場電流源132(好ましくは電流増幅器を含む)およびフィルタ134ユニットを有する。駆動場電流源132は、AC電流を生成するよう適応され、やはり制御ユニット150によって制御される。
【0066】
制御ユニット150は、ターゲット要素60、70をオブジェクトを通じて、移動コマンドによって指示される方向に動かし、ターゲット要素60、70をオブジェクト内の所望される位置に配置し、ターゲット要素60、70が所望される位置に達したときにアクティブ・エージェント61、71をアクティブ化するための適切な磁場を生成するために、それぞれの場コイルへの制御電流を生成および提供するよう前記諸信号発生器ユニット110、130を制御するよう適応されている。図4に示される第一の実施形態では、制御ユニット150は特に、ターゲット要素60、70を動かし、所望される位置に配置し、ターゲット要素60、70が所望される位置に達したときにアクティブ・エージェント61、71をアクティブ化するために必要なRF場を生成するよう、駆動場コイル136a、136b、136cへの制御電流を生成および提供するよう駆動場信号発生器ユニット130を制御するよう適応される。したがって、前記RF場は、本発明の第一の実施形態において駆動場に重畳される。
【0067】
移動コマンドを入力するために、インターフェース162が設けられる。前記インターフェース162はさまざまな仕方で実装されることができる。たとえば、前記インターフェース162は、キーボード、コンソール、ジョイスティックまたはたとえば別個のコンピュータ(図示せず)にインストールされたナビゲーション・ツールを介するなどして、ユーザーが手動でユーザー・コマンドを入力するユーザー・インターフェースであることができる。別の実装では、前記インターフェース162は、MR(磁気共鳴)またはCT(計算機断層撮影)のような別の撮像モダリティによって前もって取得されたオブジェクトの画像データなどに基づいてターゲット要素60、70の移動が前もって計画されたときに使われた、ナビゲーション・ユニットのような移動制御のための外部装置への接続のためのインターフェースである。その場合、インターフェース162は、ターゲット要素60、70をオブジェクト内で位置させるための所望される動きおよび所望される位置についての情報を受信し、インターフェース162または制御ユニット150は前記コマンドを、それぞれの信号発生器ユニット(これは本発明の第一の実施形態によれば駆動場信号発生器ユニット130である)のための移動コマンドに「翻訳」できる。
【0068】
インターフェース162を介して、移動コマンドが外部動き制御ユニット170から受信される。外部動き制御ユニット170は、たとえばオブジェクトの自由収集された(free-acquired)画像データを表示するためのディスプレイ172と、ターゲット要素60、70の動きを計画するための制御コマンドを挿入するためのオペレーター・コントロール174とを有する。
【0069】
実際的な介入では、外科医は、動き制御ユニット170を使って介入を計画することになる。特にターゲット要素60、70を位置させるための移動制御コマンドおよび所望される位置を含むナビゲーション・プランが、前記インターフェース162を介してMPI装置100の制御ユニット150に与えられる。次いで、制御ユニット150はターゲット要素60、70のオブジェクト内での移動を制御する。
【0070】
よって、事実上、本発明の第一の実施形態に基づく装置は、オブジェクトを通じてターゲット要素60、70を動かすことができる。特に、移動コマンドがどんな形で、誰もしくは何によって与えられたかに関わりなく、移動コマンドに基づいてターゲット要素60、70の動きの方向を制御し、オブジェクト内の所望される位置にターゲット要素60、70の配置を制御することができる。
【0071】
図5を参照するに、本発明の第二の実施形態によれば、活性化手段190、フォーカス手段、受信手段および処理手段が追加的に装置100に含められる。アクティブ・エージェント61、71は本発明の第二の実施形態によれば、加熱を通じてアクティブ化される。これについては図7のaおよびbに基づいてのちにさらに説明する。
【0072】
上述したRF場の生成のために、ターゲット要素60、70が所望される位置に達したときにアクティブ・エージェント61、71をアクティブ化するために、活性化手段190が設けられる。このRF場によって、視野内のターゲット要素60、70の磁性材料62、72が加熱され、それによりアクティブ・エージェント61、71が局所的にアクティブ化される。この活性化手段190により、視野28内での前記二つのサブゾーン52、54の空間内での位置が、ターゲット要素60、70の磁性材料62、72が加熱されるくらいの長さの間、かつそのような周波数で、変えられる。RF場のために第一のサブゾーン52の空間内での位置が変えられると、第一のサブゾーン52内に位置するまたは第一のサブゾーン52から第二のサブゾーン54へもしくは第二のサブゾーン54から第一のサブゾーン52へ移動するターゲット要素60、70の磁性材料62、72の磁化が変えられる。この磁化の変化のため、磁性材料内での既知のヒステリシス効果またはヒステリシス様効果のために、あるいは粒子動きの開始のために、熱損失が発生し、それにより、ターゲット要素60、70全体の温度が上昇する。磁化が一回だけ変えられるときに生成される熱量は比較的小さいので、アクティブ・エージェント61、71をアクティブ化するためには、RF場の周波数は比較的高い必要がある。RF場の周波数とは別に、全加熱パワー(power)はRF場の振幅、ターゲット要素60、70内の磁性材料62、72およびターゲット要素60、70のサイズまたは磁性材料62、72のサイズもしくは量にも依存する。
【0073】
図5から見て取れるように、本発明の第二の実施形態によれば、受信手段148が装置100に含められる。これらの受信手段148を使うことにより、検出信号が収集でき、該検出信号は次いで、ターゲット要素60、70の位置および周囲の画像を再構成するために処理されることができる。このMPI撮像技法の助けにより、ターゲット要素60、70の動きが追跡でき、それにより、あらゆる時点において、ターゲット要素60、70の現在位置が視覚的に検査でき、あらゆる時点において、必要であればナビゲーション・プランにおいて定義された動きが訂正されることができる。これはさらに外科医の作業を簡略化し、オブジェクト内でのターゲット要素60、70の配置の精度を高める。したがって、実際的な介入では、ターゲット要素60、70の動きは、所望される間隔で止められることができる。それにより、受信手段148によって与えられる検出信号に基づいて現在位置を取得できる。したがって、以下で信号検出について詳細に説明する。
【0074】
信号検出は、受信手段148のほか、さらに、前記受信手段148によって検出された信号を受信する信号受信ユニット140によって支持される。前記信号受信ユニット140は、受信された検出信号をフィルタ処理するフィルタ・ユニット142を有する。このフィルタ処理のねらいは、測定された値を他の、干渉する信号から分離することである。この目的に向け、フィルタ・ユニット142は、たとえば、受信手段148が動作させられる時間的周波数より小さな、あるいはこれらの時間的周波数の二倍より小さい時間的周波数をもつ信号がフィルタ・ユニット142を通過しないよう設計されうる。これらの信号は次いで、増幅器ユニット144を介してアナログ/デジタル変換器146(ADC)に送信される。アナログ/デジタル変換器146によって生成されるデジタル化された信号は画像処理ユニット(再構成手段とも呼ばれる)に導かれ、画像処理ユニット152は、これらの信号と、それぞれの信号の受信の際に検査領域内の第一の磁場の第一のサブゾーン52が帯びていたそれぞれの位置とから、ターゲット要素60、70の空間分布を再構成する。画像処理ユニット152は前記位置を制御ユニット150から得る。ターゲット要素60、70の磁性材料62、72の再構成された空間分布は最終的に制御手段150を介してコンピュータ154に伝送され、コンピュータ154によってモニタ156に表示される。よって、オブジェクト内のターゲット要素60、70の位置を示す画像が表示されることができる。
【0075】
すでに上述したように、本発明の第二の実施形態に基づく装置100はさらにフォーカス手段を有する。フォーカス手段はフォーカス場(FF: focus field)コイルのセット、好ましくは向かい合って配置されたフォーカス場コイル要素の三つの対126a、126b、126cを有する。前記フォーカス磁場は一般に、視野28の、空間における位置を変えるために使用される。フォーカス場コイルはフォーカス場信号発生器ユニット120によって制御される。フォーカス場信号発生器ユニット120は好ましくは、フォーカス場コイルの前記セットの各コイル要素(または少なくともコイル要素の各対)について別個のフォーカス場信号生成サブユニットを有する。前記フォーカス場信号発生器ユニット120は、フォーカス磁場を生成するために使われるコイル126a、126b、126cの前記サブセットのそれぞれのコイルへのフォーカス場電流を提供するために、フォーカス場電流源122(好ましくは電流増幅器を有する)およびフィルタ・ユニット124を有する。フォーカス場電流ユニット120も、制御ユニット150によって制御される。
【0076】
まとめると、これは、追加的にフォーカス手段を使うことによって、視野28の空間内での位置が磁気的に変更できることを意味する。一方、前記第一の実施形態(フォーカス手段なし)によれば、オブジェクトに対する視野28の空間内での位置を変えるためには、オブジェクト(たとえば患者)が手動で動かされる必要がある。
【0077】
本発明に基づく装置100によって実行される手順全体をまとめると、本発明に基づく手順または方法は、図6に簡略化されたブロック図で再び視覚化されている。
【0078】
第一のステップ201では、アクティブ・エージェントについての配置プラン(disposition plan)が医師によって定義される。短距離放射線療法または卒中治療の場合、アクティブ・エージェント(放射性シードまたは溶解薬)の位置および投与量を正確に定義することが重要である。さらに、特にオブジェクトを通じてターゲット要素60、70を操縦する移動制御コマンドを含むナビゲーション・プランが定義されることができる。
【0079】
定義された移動制御コマンドに従って、ステップ202において、ターゲット要素60、70がオブジェクトを通じて能動的に動かされる。この動きのため、適切な磁場を生成するためにそれぞれの場コイルへの制御電流を生成および提供するために、制御ユニット150は信号発生器ユニット、好ましくは駆動場またはフォーカス場信号発生器ユニット130、120を制御する。このようにして、ターゲット要素60、70は、単に力学的な力によりオブジェクトを通じて操縦され、オブジェクトの物理的な介入は必要ない。
【0080】
ターゲット要素60、70を動かす間、その現在位置が常時追跡される。この追跡203のために、ターゲット要素60、70は所望される間隔で止められ、その現在位置が、好ましくはターゲット要素60、70が現在位置している可能性のあるエリアを通じた軌跡に沿ってFFPを動かすことによって、MPIシーケンスを適用することによって取得される。次いで検出信号はターゲット要素60、70の現在位置を取得するために処理される。さらに、検出信号は、MPI画像再構成技法を使って画像化されることができる。必要であれば、次いで、取得された追跡信号に基づいて移動方向が訂正されることができる。
【0081】
ステップ204では、ターゲット要素60、70は最終的にオブジェクト内の所望される位置に置かれる。したがって、ターゲット要素60、70は、再び駆動場またはフォーカス場手段を使って正確に位置決めされることができる。
【0082】
最後のステップ205では、ターゲット要素60、70に含められるアクティブ・エージェント61、71がアクティブ化される。これは好ましくは、ターゲット要素60、70の磁性材料62、72を振動させ、よって熱を生成するRF場を使って、なされる。この加熱のため、アクティブ・エージェント61、71の被覆が融解または液化し得、それによりアクティブ・エージェント61、71がターゲット要素60、70を出て、その効果をオブジェクト内で展開することができる。
【0083】
図7のaおよびbでは、本発明に基づくターゲット要素60、70の二つの異なる実施形態が見られる。図7のaに示される第一の実施形態では、ターゲット要素60はアクティブ・エージェント61を含むコアを有する。そのため、このコアは磁性材料62によって覆われる。磁性材料62としては、通例、鉄ニッケル合金、純鉄または磁性酸化鉄といった強磁性材料が使用される。鉄ニッケル合金と比べた純鉄および酸化鉄の利点は、その人体内での良好な分解可能性特性である。アクティブ・エージェント61は、用途に依存して、いかなる物質であることもできる。たとえば、短距離放射線療法治療のために使われる放射性シードまたは卒中治療のために使われる溶解薬である。アクティブ要素61のアクティブ化は必ずしも熱によって引き起こされる必要はなく、たとえば磁性材料62が血液中に溶解可能であり、それによりある時間後に磁性材料62が血液中に溶けるということも可能である。
【0084】
同じ原理は、本発明に基づくターゲット要素70の第二の実施形態についても適用できる。第一の実施形態とは対照的に、磁性材料72およびアクティブ・エージェント71はターゲット要素70内で異なる仕方では位置される。磁性材料およびアクティブ・エージェントはそれにより基質73に含められる。この基質73はたとえば、加熱により簡単に液化または融解できる、あるいはターゲット要素70が輸送される血液または液体中に溶解可能な脂質または他の物質からなっていてもよい。第一の実施形態に関してすでに上述した他のすべての物理的な原理は本発明に基づくターゲット要素70の第二の実施形態についても当てはまる。
【0085】
さらに、ターゲット要素が任意の幾何学的形状をもつことができ、必ずしも図7のaおよびbに示したような球形をもつ必要はないことも注意しておく必要がある。ターゲット要素はたとえば、球状、楕円体状、螺旋状〔ヘリカル〕、長方形状、棒状または立方体状の形をもつことができる。ターゲット要素を細い棒として実現することの利点は、その幾何学的な形のため、多量の磁性材料を含むことができ、それでいて管の直径が棒の直径より大きい限り、検査される管の閉塞が避けられるということである。
【0086】
まとめると、本発明は、アクティブ・エージェントを含むターゲット要素をオブジェクト内に非常に正確に配置し、非常に選択的にこれらのアクティブ・エージェントをアクティブ化することを可能にする新たな方法および該方法を実行するための装置を提供する。この技法は特に短距離放射線療法または卒中治療のような治療において適用されることができる。既知の技法とは対照的に、提起される技法は、非侵襲的であり、よって既知の技法より外科医にとって複雑でなく、よってより安価であり、一層高い精度を示すという主たる利点をもつ。放射性シードまたは薬物のようなアクティブ・エージェントは、外科的介入の必要なしにオブジェクト内に配置されることができる。既知のMPI技法のため、使われる磁場強度は、CT、MRまたはX線のような既知の医療撮像技法に比べてさらに低い。
【0087】
本発明は図面および以上の説明において詳細に図示し、記述してきたが、そのような図示および記述は、制約するものではなく、例解または例示するものと考えられるべきである。本発明は開示される実施形態に限定されるものではない。特許請求される発明を実施する当業者によって、図面、本開示および付属の請求項を吟味することから、開示される実施形態に対する他の変形が理解され、実施されることができる。
【0088】
請求項において、「有する」「含む」の語は他の要素やステップを排除するものではなく、単数形の表現は複数を排除するものではない。単一の要素または他のユニットが請求項に記載されるいくつかの項目の機能を充足してもよい。ある種の施策が互いに異なる従属請求項に記載されるというだけの事実がこれらの施策の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0089】
請求項に参照符号があったとしても、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料およびアクティブ・エージェントを有するターゲット要素をオブジェクトを通じて動かし、前記ターゲット要素を前記オブジェクト内の所定の位置に位置させ、前記アクティブ・エージェントをアクティブ化させる装置であって:
・低い磁場強度をもつ第一のサブゾーンおよびより高い磁場強度をもつ第二のサブゾーンが視野内に形成されるよう磁場強度の空間におけるパターンをもつ選択磁場を生成するための、選択場信号発生器ユニットおよび選択場要素、特に選択場磁石もしくはコイルを有する選択手段と、
・前記磁性材料の磁化がローカルに変化するよう、磁気駆動場によって視野内の前記二つのサブゾーンの空間内の位置を変えるための、駆動場信号発生器ユニットおよび駆動場コイルを有する駆動手段と、
・前記ターゲット要素を前記オブジェクトを通じて、移動コマンドによって指示される方向に動かし、前記ターゲット要素を前記オブジェクト内の所望される位置に配置し、前記ターゲット要素が前記所望される位置に達したときに前記アクティブ・エージェントをアクティブ化するための適切な磁場を生成するために、それぞれの場コイルへの制御電流を生成および提供するよう前記諸信号発生器ユニット(110、130)を制御する制御手段とを有する、
装置。
【請求項2】
前記アクティブ・エージェントが局所的にアクティブ化されるよう、視野内のターゲット要素の磁性材料が加熱されるのに十分長い時間および/またはそのような周波数で、磁場によって視野内の前記二つのサブゾーンの空間的な位置を変えるための活性化手段が設けられる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
視野内に回転磁場を生成し、回転力のために前記アクティブ・エージェントが前記ターゲット要素から分離されるようにする活性化手段が設けられる、請求項1記載の装置。
【請求項4】
フォーカス磁場によって視野の空間的位置を変えるための、フォーカス場信号発生器ユニットおよびフォーカス場コイルを有するフォーカス手段が設けられる、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記活性化手段が、前記駆動手段または前記フォーカス手段によって実現される、請求項1または4記載の装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置であって、さらに:
・検出信号を収集するための、少なくとも一つの信号受信ユニットおよび少なくとも一つの受信コイルを有する受信手段であって、前記検出信号は視野内の磁化に依存し、前記磁化は前記第一および第二のサブゾーンの空間内での位置の変化によって影響される、受信手段と、
・処理された検出信号からオブジェクト内でのターゲット要素の位置を決定するために適切な磁場が印加されているときに収集された検出信号を処理するための処理手段とを有する、
装置。
【請求項7】
請求項1記載の装置において使われるターゲット要素であって、前記ターゲット要素は磁性材料およびアクティブ・エージェントを有し、前記アクティブ・エージェントは磁場によってアクティブ化されることができる、ターゲット要素。
【請求項8】
前記アクティブ・エージェントが溶解薬物または放射性シードである、請求項7記載のターゲット要素。
【請求項9】
前記アクティブ・エージェントが前記磁性材料の内側部分に、前記磁性材料を取り囲むコーティング内に、あるいは前記磁性材料と一緒になった基質中に配置される、請求項7記載のターゲット要素。
【請求項10】
前記ターゲット要素が球状、楕円体状、螺旋状、長方形状、棒状または立方体状の形をもつ、請求項7記載のターゲット要素。
【請求項11】
磁性材料およびアクティブ・エージェントを有するターゲット要素をオブジェクトを通じて動かし、前記ターゲット要素を前記オブジェクト内の所望の位置に位置させ、前記アクティブ・エージェントをアクティブ化させる方法であって:
・低い磁場強度をもつ第一のサブゾーンおよびより高い磁場強度をもつ第二のサブゾーンが視野内に形成されるよう磁場強度の空間におけるパターンをもつ選択磁場を生成する段階と、
・前記磁性材料の磁化がローカルに変化するよう、視野内の前記二つのサブゾーンの空間内の位置を変える段階と、
・前記ターゲット要素を前記オブジェクトを通じて、移動コマンドによって指示される方向に動かし、前記ターゲット要素を前記オブジェクト内の所望される位置に配置し、前記ターゲット要素が前記所望される位置に達したときに前記アクティブ・エージェントをアクティブ化するための適切な磁場の生成を制御する段階とを含む、
方法。
【請求項12】
コンピュータ上で実行されたときに、該コンピュータに、請求項11記載の方法の段階を実行するよう請求項1記載の装置を制御させるプログラム・コード手段を有するコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2013−504558(P2013−504558A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528481(P2012−528481)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053990
【国際公開番号】WO2011/030271
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】