説明

アクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法

【課題】 照射エネルギー密度が小さくても精度の高いコンクリート剥離を検知することができるアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法を提供する。
【解決手段】 アクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法において、コンクリート構造物1に対向して赤外線カメラ4を固定し、前記コンクリート構造物1を加熱装置2によって特定の場所を加熱し、この加熱場所を順次移動することで対象範囲全体を均一に加熱した後に、この加熱を止め、照射スポットの照射開始から所定短時間間隔で前記赤外線カメラ4により前記コンクリート構造物1の赤外線画像を多数枚撮影し、前記赤外線画像における個々の画素に記録された温度を独立して所定枚数分だけ足し合わせた積算温度を算出し、この分布を色の濃淡で表現した合成画像を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設後年数を経たコンクリート構造物の増加に伴い、それらを健全な状態で供用することが社会的関心事となっている。特に高架橋等の地上構造物については、鉄筋腐食等に起因したコンクリートの剥落の防止が重要な問題となっている。このため、剥落に至る以前にかぶりコンクリートの一部が浮いた状態(剥離)を捉えることを目的として、コンクリート表面をハンマーで叩いて発生する音により剥離部を判別するいわゆる打音調査の他に、赤外線サーモグラフィー法(赤外線法)が活用されている。打音調査は、著しい劣化部を調査と同時に叩き落とすことも可能で有用な方法であるが、構造物に至近距離まで接近して作業する必要があり、また定量的に評価できないという問題もある。一方の赤外線法は、日照などによりコンクリートが加熱された場合に、剥離部分と健全な部分との間に生じる表面温度の差を赤外線カメラにより検出する手法であり、構造物に接近する必要がない点と、比較的客観性のあるデータが得られる点に利点がある。このため、赤外線法を活用する試みが幾つかなされている。
【0003】
赤外線法による剥離検知方法については、加熱源として日照を主体とした気象現象による方法(パッシブ赤外線法)と、人工的に強制加熱を行う方法(アクティブ赤外線法)の2つの方法がある。前者の場合、調査が簡易に実施できる点は有利であるが、日照が不足するなど、条件によっては適切な調査が実施できないことがある。
【0004】
一方のアクティブ赤外線法の場合、加熱装置が必要なことから必然的に調査は大がかりなものとなるが、前述の気象現象による場合に比べて制約条件が緩和できることが期待できる。これに関する既往の研究では、対象とする構造物によって加熱方法がそれぞれ工夫されている。下記非特許文献1は、トンネル覆工コンクリートに内在する空洞を対象としており、均一な諸元の対象部材を連続して調査するために、車載型のハロゲンランプを対象部材に接近させ、この状態を保って走行しながら調査ができるよう工夫されている。下記非特許文献2は、道路構造物特有の、舗装改修工事の際に得られる舗装熱を活用した研究である。下記非特許文献3では、マイクロ波を用いた比較的新しい加熱方法が試みられており、今後に期待できるものの現段階では室内検証試験段階に留まる。下記特許文献1,非特許文献4,非特許文献5によるキセノンアークランプ(XAL)を用いた手法は、対象部材に接近せずに、比較的多様な構造物に汎用的に使用できる。
【特許文献1】特開2003−149188号公報
【非特許文献1】宮田信裕:トンネル検査車の開発,JREA,Vol.42,No.7,pp.36−39,1999.
【非特許文献2】金光寿一,柳内睦人,三星智典:舗装熱を利用したサーモグラフィー法によるRC床版内部の欠陥検出に関する研究,土木学会論文集,No.732/V−59,pp.95−108,2003.
【非特許文献3】竹野裕正,西川徳光,田林準史,中本聡,八坂保能,辻正哲,卜部啓,並木宏徳:赤外線サーモグラフィ法へのマイクロ波加熱の適用に関する基礎研究,土木学会第59回年次学術講演会,5−103,pp.203−204、2004.
【非特許文献4】田中寿志,鳥取誠一,仁平達也:アクティブ赤外線法によるコンクリートのはく離検知、鉄道総研報告,Vol.19,No.12,pp.5〜10, 2005.
【非特許文献5】田中寿志,仁平達也,鳥取誠一,栗田耕一:アクティブ赤外線法における照射光源の影響に関する基礎的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,pp.1753−1758,2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したアクティブ赤外線法による各手法は、いずれも加熱装置が大がかりとなる点に課題がある。
【0006】
図7に、XALを用いた手法を例にとり、加熱装置(照射装置)の配置状況を示す。
【0007】
この図において、201はXAL装置、202はスキャナ、203は制御装置、204は発電機である。
【0008】
図8はコンクリート構造物の剥離検知装置のXALの断面図である。
【0009】
この図において、100はXAL、101はXAL100の発光部、102はXAL100の反射鏡である。
【0010】
このXAL100の発光部101は、ほぼ点光源となっていることに特徴がある。このためXALは集光性に優れ、反射鏡の曲率を調整することで、離れた位置でも十分な照射エネルギー密度(Ed )が確保できる。実測によると、ランプから10(m)離れた位置における照射範囲(照射スポット)は、直径約280(mm) の円内に集中している。またその効果は、熱電対型パワーメータによる測定結果(上記非特許文献4参照)によると、Ed =15 (kW/m2 ) となっており、また、供試体試験および実構造物による検証試験において効果も確認されている。
【0011】
この装置は一式が普通トラック1台の荷台に収まる程度の大きさであるが、調査現地の状況によっては交通の妨げとなる場合もあり、装置全体をより小型化することが求められている。
【0012】
照射装置を小型化する場合、加熱能力が低下することが予想されるため、小さい熱源でも剥離検知が可能であるか確認しておく必要がある。
【0013】
ここでは、実際のコンクリート構造物を使い、XALを用いた手法を例にとり、Ed を大小2段階に変動させて、Ed が小さい場合の適用性の検討を行った。
【0014】
以下、試験の概要について説明する。
【0015】
調査対象は、過去に実施した上記非特許文献4に示した鉄道鉄筋コンクリートラーメン高架橋の中間スラブとした。
【0016】
調査方法は、上記非特許文献4に示した方法と同一とした。図9に示したように、照射装置を調査対象高架橋の近くに設置し、照射スポットを約1(m/s)の速度で移動させながら、対象範囲を塗りつぶすように一様に照射した。照射状況を図10に示す。図10において、302は照射装置、301はコンクリート構造物上の照射スポットである。
【0017】
1調査面あたりの照射時間は、Ed =15(kW/m2 )のケースでは過去の例と同じ300 (s) とし、Ed =5 (kW/m2 ) のケースでは、照射エネルギー総量(Ed と照射時間の積)がEd =15 (kW/m2 ) のケースと同じになるよう900 (s) とした。
【0018】
測定に用いた赤外線カメラは、過去の調査である上記非特許文献4に使用したものと同一である。その仕様を表1に示す。
【0019】
【表1】

調査時期は10月上旬であり、初日午後、2日目終日ならびに3日目午前にかけて、延べ3日間にわたり実施した。天候は、調査前半は概ね晴れの無風に近い状況であったが、2日目の午後以降は曇り基調で時折小雨の降る、変わりやすい天気であった。
【0020】
赤外線画像の撮影は、図11に示すように、あらかじめ照射20秒前に初期状態の赤外線画像を撮影し、赤外線カメラを固定した上で照射開始以降10秒間隔で逐次撮影して、照射終了2分後まで繰返し撮影を継続した。なお、撮影間隔を10秒としたのは、使用した赤外線カメラにおいて、デジタルデータが保存可能となる最小時間間隔の仕様による。
【0021】
以下、試験結果について説明する。
【0022】
(1)Ed =15 (kW/m2 ) の場合
図12は、雨天において測定した例である。ここで、図12(a)は照射前を、図12(b)は照射後をそれぞれ示している。照射以前の画像図12(a)には、剥離部と健全部の間に十分な温度差が確認できず、この画像を剥離検知に用いるのは適当でない。一方、照射後の画像図12 (b) によると、剥離部と健全部の間に十分な温度差が確認できる。このことから、Ed =15 (kW/m2 )とした場合、XALにより剥離検知が可能となることが分かる。
【0023】
なお、図12 (b) の画像中央部に、破線で囲ったように横方向に筋状の高温部が確認できるが、これは照射スポットの走査が偏ったなどの理由で生じた「照射ムラ」であり、照射ムラは、剥離検知の支障となる。
(2)Ed =5 (kW/m2 )の場合
d =5 (kW/m2 ) とした測定結果の例を、図13に示す(雨天における測定)。
【0024】
図13によると、照射後の画像図13(b)は剥離部の温度差が照射前図13 (a) に比べて若干鮮明になる程度に留まっており、Ed が小さい場合はその効果が小さい場合があることが確認できる。同一の調査対象で、剥離が明確に検知できた例〔晴、Ed =15 (kW/m2 ) 、ただし撮影方向は異なる〕を参考のため図14に示す。破線で囲った剥離部は、図13(b)では殆ど確認できない。
【0025】
以上のことから、特に曇天や雨天の場合やEd が小さい場合に、剥離検知ができない可能性が高くなり、また照射ムラのために剥離検知に支障する。
【0026】
本発明は、上記状況に鑑みて、より精度の高い赤外線画像の解析方法を用いたアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕アクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法において、コンクリート構造物に対向して赤外線カメラを固定し、加熱装置によって前記コンクリート構造物の特定の場所を加熱し、この加熱場所を順次移動することで対象範囲全体を均一に加熱した後に該加熱を止め、この加熱の開始から加熱場所の移動と同時期に所定短時間間隔で前記赤外線カメラにより前記コンクリート構造物の赤外線画像を多数枚撮影することを特徴とする。
【0028】
〔2〕上記〔1〕記載のアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法において、前記各赤外線画像における個々の画素に記録された温度をそれぞれ独立して所定枚数分だけ足し合わせた積算温度を算出し、この分布を色の濃淡又は連続した色調の変化等で表現した合成画像を作成することを特徴とする。
【0029】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載のアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法において、前記特定の場所の加熱は太陽からの照射光を利用しビーム生成装置により生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、温度分布の非定常性に着目した画像解析法(MS法)を採用することで、鮮明な赤外線画像が得られる。
【0031】
これにより、Ed を従来より低減した場合でも確実な剥離検知が可能となる。
【0032】
また、従来のアクティブ赤外線法で問題になった照射ムラを軽減することができる。
【0033】
さらに、従来の測定法では全体が温度上昇するまで照射を繰り返すため、長い照射時間を要したが、MS法では照射しながら対象表面を測定するので、全体の温度上昇を待つ必要がなく、調査速度の向上にも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明のアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法は、コンクリート構造物に対向して赤外線カメラを固定し、加熱装置によって前記コンクリート構造物の特定の場所を加熱し、この加熱場所を順次移動することで対象範囲全体を均一に加熱した後に該加熱を止め、この加熱の開始から加熱場所の移動と同時期に所定短時間間隔で前記赤外線カメラにより前記コンクリート構造物の赤外線画像を多数枚撮影する。しかる後に、前記各赤外線画像における個々の画素に記録された温度をそれぞれ独立して所定枚数分だけ足し合わせた積算温度を算出し、この分布を色の濃淡又は連続した色調の変化等で表現した合成画像を作成する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
図1は本発明の実施例を示すアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知システムの模式図、図2は本発明の実施例を示すアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法を示す模式図である。
【0037】
本発明の一形態の例として加熱装置にXALを用いた場合、XALの照射スポットはたかだか直径280(mm)の円形範囲にとどまるため、照射スポットを移動させて全体がむらなく温度上昇するまで繰返し照射している。
【0038】
図1及び図2において、1はコンクリート構造物、2は照射スポットを照射する加熱装置(照射装置)、3はXAL装置2を走査するスキャナ、4は赤外線カメラ、5はシャッターを制御する制御装置、6は赤外線カメラ4からのデータを処理するデータ処理装置、7,11は照射スポット、8,13は照射スポット7,11の移動方向である。
【0039】
図1及び図2に示すように、照射スポット7,11の範囲内は加熱され、表面反射による影響も含めて当然温度上昇が観測される。広い範囲を加熱するためにスキャナ3を走査し照射スポット7,11を移動させると、一旦加熱された通過箇所は直ちに放熱を開始し、幾分残る余熱箇所12を除いて元の温度に復帰してゆく〔図2(a)のA参照〕。
【0040】
一方、図2(a)において、移動経路上に剥離箇所14があり、照射スポット11がここを通過した場合、健全な部分は直ちにもとの温度に復帰するが〔図2 (b) のB参照)、剥離箇所14ではしばらくの間高温の状態を保つ〔図2 (b) のC参照〕。この状態は長くは続かず、図2(c)のように、剥離箇所の温度はいずれ元の温度に復帰する〔図2(c)のD参照〕が、図2(b)の状態を赤外線画像として収録しておけば、そのデータを剥離検知に活用することができる。図3は、本発明による実構造物の調査における照射中の赤外線画像の例を示す図であり、照射スポットと余熱21、剥離箇所22(高温状態が持続)を示している。つまり図2(b) の状態を示している。
【0041】
赤外線画像における個々の画素について、記録された温度を撮影枚数分だけ独立して足しあわせた「積算温度」を算出し、この分布を色の濃淡で表現した合成画像を作成する。なお、この目的で多数の赤外線画像を撮影することをマルチショット(MS) と称し、これにより合成画像を得る手法をMS法と称する。
【0042】
なお、図2における照射スポット11と余熱箇所12も赤外線画像上で高温箇所として記録されるが、これらは直ちに移動して同じ場所に留まらないため、測定結果への影響は相対的に低下する。
【0043】
MS法と従来法の違いを、測定部の特定の箇所における温度の時系列変化の概念を示した図4により説明する。図4において、太線は健全箇所の温度履歴、細線は剥離箇所の温度履歴、破線は撮影時点を示している。
【0044】
一旦受熱した部分も照射スポットが移動すると放熱してしまうため、対象表面は一般に受熱・放熱を繰返しながら徐々に温度上昇する〔図4 (a) 〕。従来の測定法〔図4 (a) 〕では、剥離部は健全部よりも速く温度上昇するため、繰返し照射されるうちに剥離部と健全部の温度差が大きくなることを利用し、照射終了時に1枚の赤外線画像を撮影して剥離箇所の判別を行う。ところが、Ed が小さい等により加熱不良となる場合、受熱が放熱を上回ることができず、照射を繰返しても十分な温度上昇が得られない場合がある〔図4 (b) 〕。ただし、この場合でも、照射直後の状態では剥離箇所は健全箇所よりも幾分高温となっているので、MS法によりこの状態を赤外線画像として取得しておくことで、積算温度データに反映させることができる。このようにMS法は、温度上昇後の最終的な結果ではなく、むしろ温度分布の遷移即ち非定常性に着目して、変状を捉えようとするものである。
【0045】
以下、MS法による解析結果について説明する。
【0046】
本発明のコンクリート構造物の剥離検知方法による解析結果の例を図5に示す。図中の単位は積算温度で「℃・(shot)」とし、色別は50階調としている。
【0047】
図5 (b) はEd =5 (kW/m2 )とした前述の図13(b)をMS法で解析しなおしたものである。破線で囲った箇所のように、従来法の図13 (b) では判別が困難であった剥離箇所が、MS法により判別可能になることが確認できる。
【0048】
図5 (a) はEd =15 (kW/m2 )とした前述の図12(b)をMS法で解析しなおしたものである。剥離箇所が検知できたことは図12 (b) 、図5 (a) とも同様であるが、MS法による図5(a)では従来による図12 (b) で見られた照射ムラが軽減されていることが分かる。この理由については、照射ムラは撮影直前の照射の影響を強く受けるが、MS法では多数の赤外線画像を合成するので、直前の照射の影響が軽減されるためであると考えられる。
【0049】
本発明は、アクティブ赤外線法において加熱が十分でない場合一般に用いることが可能である。発明が解決しようとする課題ならびに実施例で示したXALを用いた照射装置は本発明を実現するための照射装置の一例であり、他の加熱装置(照射装置)を用いても同様の画像解析が可能である。
【0050】
図6は本発明の他の実施例を示す照射スポットを太陽光から得るようにした光照射装置の模式図である。
【0051】
この図において、31は太陽、32は太陽光、33は太陽光32の反射鏡、34は照射ビーム生成装置であり、この照射ビーム生成装置34はケース35内に集光レンズ36と、焦点レンズ37と、照射ビーム39を走査し、照射スポット40を移動させることができる変向装置38から構成されている。
【0052】
太陽光32を利用できる晴天時には、焦点レンズ37からの照射スポット40をコンクリート構造物41に照射して、コンクリート構造物の剥離を検知することができる。したがって、照射ビームを得るためにXAL装置を用いる場合に比して、電力の消費を節約することができる。
【0053】
なお、図6の装置は、照射ビーム生成装置34から焦点レンズ37の制御装置38に至る装置を介することなく、直接反射鏡により照射光を得ることも可能である。
【0054】
この装置は、日影の構造物に対して特に有効である。
【0055】
このように、温度分布の非定常性に着目した画像解析法(MS法)を採用することで、よりきめ細かい赤外線画像が得られる。
【0056】
これにより、Ed を従来より低減した場合あるいは太陽光により加熱する場合でも確実な剥離検知が可能となる。
【0057】
また、照射ムラを軽減することができる。
【0058】
さらに、従来の測定法では全体が温度上昇するまで照射を繰り返すため、長い照射時間を要したが、MS法では照射しながら対象表面を測定するので、全体の温度上昇を待つ必要がなく、調査速度の向上にも役立つことが期待できる。
【0059】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のコンクリート構造物のアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法は、高架橋などのコンクリート構造物の剥離検知、建築物の外装タイルの浮き、堤体コンクリートの漏水などの検知に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施例を示すアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知システムの模式図である。
【図2】本発明の実施例を示すアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例を示す実構造物の調査における照射中の赤外線画像の例を示す図である。
【図4】従来の測定方法と本発明の測定方法の比較を示すである。
【図5】本発明のコンクリート剥離検知方法による解析結果を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す照射スポットを太陽光から得るようにした光照射装置の模式図である。
【図7】コンクリート剥離検知装置のキセノンアークランプの断面図である。
【図8】現地試験における照射装置の配置状況を示す図である。
【図9】調査対象高架橋の概要を示す図である。
【図10】コンクリート剥離検知装置による照射状況を示す図である。
【図11】調査事例における照射装置による照射および撮影のタイムスケジュールを示す図である。
【図12】雨天時Ed =15(kW/m2 )の測定例を示す図である。
【図13】雨天時Ed =5(kW/m2 )の測定例を示す図である。
【図14】図13と同一部位における晴天時のEd =15(kW/m2 )の測定例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1,41 コンクリート構造物
2 加熱装置
3 スキャナ
4 赤外線カメラ
5 シャッターを制御する制御装置
6 データ処理装置
7 照射スポット
8 照射スポットの移動方向
11 照射スポット
12 余熱箇所
A,B,D 復帰箇所
13 照射スポットの移動方向
14 剥離箇所
C しばらくの間高温の状態を保つ箇所
21 照射スポットと余熱
22 剥離箇所(高温状態が持続)
31 太陽
32 太陽光
33 反射鏡
34 照射ビーム生成装置
35 ケース
36 集光レンズ
37 焦点レンズ
38 変向装置
39 照射ビーム
40 照射スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に対向して赤外線カメラを固定し、加熱装置によって前記コンクリート構造物の特定の場所を加熱し、該加熱場所を順次移動することで対象範囲全体を均一に加熱した後に該加熱を止め、該加熱の開始から加熱場所の移動と同時期に所定短時間間隔で前記赤外線カメラにより前記コンクリート構造物の赤外線画像を多数枚撮影することを特徴とするアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法。
【請求項2】
請求項1記載のアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法において、前記各赤外線画像における個々の画素に記録された温度をそれぞれ独立して所定枚数分だけ足し合わせた積算温度を算出し、この分布を色の濃淡又は連続した色調の変化等で表現した合成画像を作成することを特徴とするアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法において、前記特定の場所の加熱は太陽からの照射光を利用しビーム生成装置により生成することを特徴とするアクティブ赤外線法によるコンクリート構造物の剥離検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−232897(P2008−232897A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74444(P2007−74444)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】