説明

アクティブ駆動型有機EL発光装置およびその製造方法

【課題】開口率を大きくすることができるとともに、上部電極側から発光を取り出した場合であっても上部電極の面抵抗を低下させることができ、高輝度、均質輝度の画像表示が可能な有機アクティブEL発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】上部電極および下部電極の間に有機発光媒体を含んでなる有機EL素子と、基板上にあるこの有機EL素子を駆動するための薄膜トランジスターと、を備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置において、前記有機EL素子が発光した光を、前記上部電極側より取り出すとともに、前記上部電極が、透明導電材料からなる主電極から構成され、前記主電極が前記基板と反対側に配置され、前記主電極に対して電気接続している低抵抗材料からなる補助電極が、平面視した場合に前記有機発光媒体を含む画素と画素との間に配置されることを特徴とするアクティブ駆動型有機EL発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ(TFTと称する場合がある。)を備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置(以下、単に有機EL装置と称する場合がある。)に関する。さらに詳しくは、民生用、工業用の表示機器、カラーディスプレイ等に好適に用いられる有機EL装置に関する。
なお、本明細書の特許請求の範囲や、詳細な説明において、“EL”と記載しているのは、“エレクトロルミネッセンス”のことである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL発光装置(ディスプレイ)においては、XYマトリックス電極により単純駆動させて画像表示を行う方式のいわゆる単純駆動型有機EL発光装置が知られている(特許文献1、特許文献2など)。
しかしながら、このような単純駆動型有機EL発光装置では、いわゆる線順次駆動を行うので、走査線数が数百本ある場合には、要求される瞬間輝度が、観察輝度の数百倍となり、結果として、以下のような問題が生じていた。
(1)駆動電圧が、直流定常電圧の場合の2〜3倍以上と高くなるため、発光効率が低下したり、消費電力が大きくなる。
(2)瞬間的に流れる電流量が数百倍となるため、有機発光層が劣化しやすい。
(3)(2)と同様に、電流量が非常に大きいため、電極配線における電圧降下が大きくなる。
【0003】
そのため、単純駆動型有機EL発光装置の有する問題点を解決するため、TFT(thin film transistor)により有機EL素子を駆動させる各種のアクティブ駆動型有機EL発光装置が提案されている(特許文献3〜13など)。
このようなアクティブ駆動型有機EL発光装置の構造例を図18や図19に示すが、かかるアクティブ駆動型有機EL発光装置によれば、単純駆動型有機EL発光装置と比較して、駆動電圧が大幅に低電圧化し、発光効率が向上し、しかも、消費電力が低減できること等の効果を得ることができる。
【0004】
しかしながら、このような効果を有するアクティブ駆動型有機EL発光装置であっても、以下に示す(1)〜(3)の問題が生じていた。
(1)画素の開口率が小さくなる。
アクティブ駆動型有機EL発光装置においては、透光性の基板上に、TFTが画素一つに対して少なくとも一つ設けられ、さらにTFTを選択して駆動するために走査電極線や信号電極線が基板上に多数設けられていた。したがって、透光性基板側より光を取り出す場合、これらTFTや各種電極線が光を遮るため、画素の開口率(実際に発光する部分が画素中に占める割合)が小さくなるという問題が生じた。例えば、最近開発されたアクティブ駆動型有機EL発光装置にあっては、有機EL素子を定電流で駆動化するためのTFTが前記二つのTFTに加えて複数設けられているため、開口率がますます小さくなっている(約30%以下)。その結果、開口率に応じて、有機発光媒体を流れる電流密度が大きくなり、有機EL素子の寿命が短くなるという問題が生じていた。
【0005】
この点、図10、図11および図18を参照してより詳細に説明する。図10は、図18に示すアクティブ駆動型有機EL発光装置100をスイッチ駆動させるための回路図を示しているが、基板上にゲートライン(走査電極線)50(図18では108)と、ソースライン(信号電極線)51とがそれぞれ形成してあり、XYマトリックス状をなしていることを表している。また、ソースライン(信号電極線)51と平行に、共通電極線52が設けてある。そして、これらのゲートライン50およびソースライン51には、一画素あたり、第1のTFT55および第2のTFT56とが設けてある。また、第2のTFT56のゲート側と共通電極線52との間には、当該ゲート電圧を一定にホールドするためのコンデンサー57が連結してある。
したがって、図10に示す回路図に示される第2のTFT56のゲートにコンデンサー57により維持された電圧を印加し、スイッチングすることにより、結果として、有機EL素子26を効果的に駆動することができる。
なお、図11に示す平面図は、図10に示す回路図に準拠したスイッチ部等の平面方向の透視図である。
よって、図18に示すアクティブ駆動型有機EL発光装置100においては、下部電極(ITO、インジウムチンオキサイド)102側、すなわち基板104側からEL発光を取り出す場合には、TFT106、ゲートライン108、ソースライン(図示せず。)等がEL発光を遮るため、画素における開口率が小さくなるという問題があった。
なお、図19に示すような、TFT200と、有機EL素子202とを、同一平面上に配置したアクティブ駆動型有機EL発光装置204にあっては、TFT200等がEL発光を遮ることはないが、図18に示すアクティブ駆動型有機EL発光装置100と比較して、さらに画素における開口率が低下することになる。
【0006】
(2)上部電極の面抵抗が大きい。
一方、基板の反対側、すなわち上部電極側から光を取り出す場合には、TFT等により遮蔽されずに、開口率が大きいまま、高輝度の画像が得られる可能性がある。しかしながら、上部電極側からEL発光を取り出す場合、効率的に外部にEL発光を取り出すために、上部電極を透明導電材料で形成する必要があった。そのため、上部電極の面抵抗が例えば20Ω/□を超える値となり、結果として、大面積表示をする際に大きな問題が生じることとなった。
例えば、対角サイズが20インチ(縦横比3:4)のEL発光装置を全面、輝度300nitで発光しようとすると、有機発光媒体に、10cd/A(単位電流あたりの光量を示す。)の高い発光効率を有する有機発光材料を用いたとしても3600mAの大電流を上部電極に流す必要が生じた。
【0007】
より具体的には、上部電極の抵抗による電圧降下の値は、Σnirで表され、下式に基づいて計算される。
Σnir=1/2×N(N+1)ir
N:横方向の全画素数×1/2
r:一画素における上部電極の抵抗値(Ω)
i:一画素に流れる定電流値(A)
したがって、例えば、発光効率を10cd/A、発光輝度を300nit、画素形状を200×600μm角、上電極の面抵抗を20Ω/□とすると、画素電流値は3.6×10−6Aとなり、しかも横方向の全画素数を2000とすると、横方向の電圧降下は12V(1/2×1000×1000×3.6×10−6×20×1/3)となり、定電流駆動を行う際の駆動回路の電圧許容範囲(10V)を超えることになる。よって、実質的に、上記条件で発光させることは困難であった。
すなわち、上部電極の面抵抗が大きいと、それに対応して特に画面中央部の電圧降下が大きくなり、結果として、発光輝度が著しく低下するという問題が顕在化した。なお、画素ごとに定電流(一定輝度)となるように回路を用いて補正することも試みられているが、それでは不十分であった。
【0008】
(3)製造上、上部電極における抵抗値の制御が困難である。
対角サイズが数インチ〜10インチ級のアクティブ駆動型有機EL発光装置の上部電極において、ITOや、ZnOの一般的材料を用いて比抵抗を低抵抗値、例えば、1×10−3Ω・cm以下の値とするには、加熱温度を200℃以上の値とする必要があることが知られている。しかるに、有機発光媒体の耐熱性は、通常200℃以下であるため、加熱温度をそれ以下の低温とする必要がある。したがって、上部電極の比抵抗の値を制御できずに、1×10−3Ω・cmを超える場合があり、結果として、面抵抗が20Ω/□を超える高い値になるという問題が見られた。また、有機発光媒体上にITOやIZO等の酸化物を用いて上部電極を形成する際に、スパッタリングにプラズマを用いた場合には、有機発光媒体がプラズマで損傷を受けるという問題も見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−37385号号公報
【特許文献2】特開平3−233891号公報
【特許文献3】特開平7−122360号公報
【特許文献4】特開平7−122361号公報
【特許文献5】特開平7−153576号公報
【特許文献6】特開平8−54836号公報
【特許文献7】特開平7−111341号公報
【特許文献8】特開平7−312290号公報
【特許文献9】特開平8−109370号公報
【特許文献10】特開平8−129359号公報
【特許文献11】特開平8−241047号公報
【特許文献12】特開平8−227276号公報
【特許文献13】特開平11−339968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、有機EL素子を駆動するためのTFTを設けた場合であっても、各画素における開口率を大きくすることができ、かつ、上部電極側から発光を取り出した場合であっても上部電極の面抵抗を低下させることができる有機アクティブEL発光装置であって、高輝度、均質輝度の画像表示が可能な有機アクティブEL発光装置、およびそのような有機アクティブEL発光装置を効率的に製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上部電極と下部電極との間に有機発光媒体を含んでなる有機EL素子と、この有機EL素子を駆動するためのTFTと、を備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置において、有機EL素子が発光した光(EL発光)を、上部電極側より取り出すとともに、上部電極が、透明導電材料(透明半導体材料を含む。)からなる主電極と、低抵抗材料からなる補助電極とから構成してあることを特徴としている。
このように構成すると、TFTを設けた場合であっても開口率を大きくすることができるとともに、上部電極側から発光を取り出した場合であっても上部電極の面抵抗を低下させることができる。
また、輝度向上を図ることができ、さらには、有機発光媒体に流れる電流密度が低減できるため、有機発光媒体の寿命を著しく伸ばすことができる。
【0012】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、薄膜トランジスターおよび画素の選択手段用トランジスターから構成された電気スイッチと、当該電気スイッチを駆動するための走査電極線および信号電極線と、を有することが好ましい。
すなわち、例えばXYマトリックス状に配設された走査電極線および信号電極線並びに、これらの電極線に電気接続されたTFTと、画素の選択手段用トランジスターとから構成された電気スイッチを有することが好ましい。
このように構成すると、任意の画素を選択するとともに、走査電極線および信号電極線を介して、走査信号パルスおよび信号パルスを印加し、TFTを含む電気スイッチのスイッチ動作を行うことにより、有機EL素子を効率的に駆動させることができる。
【0013】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、透明導電材料が、導電性酸化物、光透過性金属膜、非縮退の半導体、有機導電体、および半導性炭素化合物からなる群から選択された少なくとも一つの材料であることが好ましい。
すなわち、上部電極の面抵抗を低減できるので、主電極においては、従来用いられてきた透明導電材料のみならず、それ以外の透明導電材料についても使用できるようになり、上記透明導電材料についても使用することが可能になった。
例えば、非縮退の半導体等であって、好ましくは200℃以下で、さらに好ましくは100℃以下の低温で成膜が可能な材料を使用することができるため、成膜時の有機層の熱損傷を小さくすることができる。また、有機導電体、および半導性炭素化合物等を使用することにより、低温での蒸着または湿式コーティングが可能となる。
【0014】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極が、平面内において周期的に配置されていることが好ましい。
例えば、補助電極をマトリックス状や、ストライプ状等に配置することにより、上部電極を均一に、しかも効果的に低抵抗化することができる。
【0015】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極の断面形状が、オーバーハング状であることが好ましい。
このように構成すると、補助電極上に絶縁性の有機層が積層されていたとしても、オーバーハング(逆テーパ等も含む。)した上方部の下方に位置する部位を利用して、上部電極に対して確実に電気接続することができる。
【0016】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極が、下部補助電極と上部補助電極とからなることが好ましい。
このように補助電極を構成することにより、下部補助電極または上部補助電極を利用して、主電極に対して容易に電気接続することができる。また、このように下部補助電極と、上部補助電極とに分離してあるため、オーバーハング形状を容易に形成することができる。
【0017】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極における下部補助電極および上部補助電極が、エッチング速度が異なる構成材料から構成してあることが好ましい。
このように構成することにより、エッチング法により、オーバーハング形状を容易に形成することができる。
【0018】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極における下部補助電極および上部補助電極あるいはいずれか一方を、主電極に対して電気接続してあることが好ましい。
このように構成することにより、主電極に対してより容易かつ確実に電気接続することでき、結果として上部電極の低抵抗化を図ることができる。
【0019】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極が、有機EL素子を形成するための層間絶縁膜上、下部電極を電気絶縁するための電気絶縁膜上、あるいはTFTを電気絶縁するための電気絶縁膜上にそれぞれ形成してあることが好ましい。
このように構成することにより、画素における開口率をより広くすることができる。
【0020】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、TFTの活性層が、ポリシリコンから形成してあることが好ましい。
ポリシリコンからなる活性層は、通電量に対して、好ましい耐性を有するため、このように構成することにより、耐久性の高いTFTを有するアクティブ駆動型有機EL発光装置とすることができる。
【0021】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、TFT上に、層間絶縁膜が形成してあるとともに、当該層間絶縁膜上に有機EL素子の下部電極が設けられており、かつ、TFTと下部電極とが層間絶縁膜に設けたビアホールを介して電気接続してあることが好ましい。
このように構成することにより、TFTと、有機EL素子との間で、優れた電気絶縁性を得ることができる。
【0022】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、主電極に対して、補助電極から電荷を注入し、基板の主表面に対して平行に輸送した後、有機発光媒体に対して注入することが好ましい。
このように構成することにより、主電極に対し非金属の化合物を採用することができ、主電極の透明性を向上させることができる。なお、ここで非金属の化合物とは、例えば、後述の非縮退の半導体、有機導伝体または半導体の炭素化合物を意味する。
【0023】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、主電極の面抵抗を1K〜10MΩ/□の範囲内の値とすることが好ましい。また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極の面抵抗を0.01〜10Ω/□の範囲内の値とすることが好ましい。
このような構成をそれぞれの電極がとることにより、高い発光輝度を与える電流を通電できるとともに、上部電極の面抵抗を確実に低下させることができる。
【0024】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、上部電極側に、取り出された発光を色変換するためのカラーフィルターおよび蛍光膜あるいはいずれか一方の部材が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、上部電極から取り出された発光をカラーフィルター又は蛍光膜で色変換して、フルカラー表示を行うことができる。
【0025】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、カラーフィルターまたは蛍光膜の一部にブラックマトリックスが形成してあり、当該ブラックマトリックスと、補助電極とが垂直方向において重なることが好ましい。
このように構成することにより、ブラックマトリックスにより補助電極の外光反射を効率的に抑えることができるとともに、開口率を広くすることができる。
【0026】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極が、主電極上に形成してあるとともに、補助電極の面積を主電極の面積よりも小さくしてあることが好ましい。
このように構成することにより、主電極を形成した後に、補助電極を形成することができるため、補助電極の形成がより容易となる。
【0027】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極が、周囲を覆う封止部材に埋設して設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、補助電極の厚さにより有機EL発光装置の厚さが余分に厚くなることがない。また、補助電極を予め封止部材に形成することができるので、封止部材による封止と、補助電極と、主電極との電気接続を同時に実施することができる。
【0028】
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、補助電極が、周囲を覆う封止部材と、主電極との間に、密着配置してあることが好ましい。
このように構成することにより、封止部材による封止と、補助電極と、主電極との電気接続を同時に実施することができる。
【0029】
また、本発明の別の態様は、アクティブ駆動型有機EL発光装置を構成するにあたり、上部電極と下部電極との間に有機発光媒体を含んでなる有機EL素子と、この有機EL素子を駆動するためのTFTとを基板上に備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置の製造方法であり、有機EL素子を形成する工程と、TFTを形成する工程とを含むとともに、当該有機EL素子を形成する工程内で、下部電極および有機発光媒体を形成した後、透明導電材料(透明半導体材料を含む。)から主電極を形成し、さらに低抵抗材料から補助電極を形成して上部電極とすることを特徴としている。
このように実施すると、TFTを設けた場合であっても開口率が大きく、かつ、上部電極側から発光を取り出した場合であっても上部電極の面抵抗が低いアクティブ駆動型有機EL発光装置を効果的に提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置によれば、TFTを備えた場合であっても画素における開口率を大きくすることができ、かつ、上部電極側から発光を取り出した場合であっても、上部電極の面抵抗を低下させることができ、高輝度、均質輝度の画像表示が可能になった。
また、本発明のアクティブ駆動型有機EL発光装置の製造方法によれば、開口率が大きく、上部電極の面抵抗が低く、上部電極側から発光を取り出すことが可能な、高輝度、均質輝度の画像表示が可能なアクティブ駆動型有機EL発光装置を効率的に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL発光装置の断面図である。
【図2】第1の実施形態における層間絶縁膜を取り除いたアクティブ駆動型有機EL発光装置例の断面図である。
【図3】第1の実施形態における補助電極の配置を変形した例の断面図である(その1)。
【図4】第1の実施形態における補助電極を周期的に配置した例の模式図である。
【図5】第2の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL発光装置の断面図である。
【図6】第1の実施形態における補助電極の配置を変形した例の断面図である(その2)。
【図7】第3の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL発光装置の断面図である(その1)。
【図8】第3の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL発光装置の断面図である(その2)。
【図9】TFTの説明に供する図である。
【図10】アクティブ駆動型有機EL発光装置の一例における回路図である。
【図11】図10に示す回路図に準拠したアクティブ駆動型有機EL発光装置の平面方向の透視図である。
【図12】TFTの形成工程の一部を示す図である。
【図13】補助電極の断面図である(その1)。
【図14】補助電極の断面図である(その2)。
【図15】補助電極の断面図である(その3)。
【図16】補助電極の断面図である(その4)。
【図17】第1の実施形態におけるアクティブ駆動型有機EL発光装置の変形例の断面図である。
【図18】従来のアクティブ駆動型有機EL発光装置の断面図である(その1)。
【図19】従来のアクティブ駆動型有機EL発光装置の断面図である。補助電極の断面図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、参照する図面は、この発明が理解できる程度に各構成成分の大きさ、形状および配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。したがって、この発明は図示例にのみ限定されるものではない。また、図面では、断面を表すハッチングを省略する場合がある。
【0033】
[第1の実施形態]
第1の実施形態のアクティブ駆動型有機EL発光装置は、図1に示すように、基板10上に、電気絶縁膜12に埋設されたTFT14と、このTFT14の上方に設けられた層間絶縁膜(平坦化膜)13と、上部電極20および下部電極22の間に有機発光媒体24を含んで構成した有機EL素子26と、TFT14および有機EL素子26を電気接続するための電気接続部28と、を備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置61である。
そして、第1の実施形態では、有機EL素子26の発光(EL発光)を、上部電極20の側から取り出すとともに、上部電極20を低抵抗化するために、当該上部電極20を透明導電材料からなる主電極16と、低抵抗材料からなる補助電極18とから構成してあることを特徴としている。
以下、第1の実施形態において、図2を適宜参照しながら、その構成要素等について説明する。
なお、図2には、図1に示す層間絶縁膜(平坦化膜)13を除いた構成のアクティブ駆動型有機EL発光装置62を示すが、図2においては、TFT14を埋設するための電気絶縁膜12が層間絶縁膜の役割を果たしている。
【0034】
1.基板
有機EL表示装置における基板(支持基板と称する場合がある。)は、有機EL素子や、TFT等を支持するための部材であり、そのため機械的強度や、寸法安定性に優れていることが好ましい。
このような基板としては、具体的には、ガラス板、金属板、セラミックス板、あるいはプラスチック板(ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等)等を挙げることができる。
また、これらの材料からなる基板は、有機EL表示装置内への水分の侵入を避けるために、さらに無機膜を形成したり、フッ素樹脂を塗布したりして、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。
特に、有機発光媒体への水分の侵入を避けるために、基板における含水率およびガス透過係数を小さくすることが好ましい。具体的に、支持基板の含水率を0.0001重量%以下の値およびガス透過係数を1×10−13cc・cm/cm・sec.cmHg以下の値とすることがそれぞれ好ましい。
なお、本発明では、基板と反対側、すなわち、上部電極側からEL発光を取り出すため、基板は必ずしも透明性を有する必要はない。
【0035】
2.有機EL素子
(1)有機発光媒体
有機発光媒体は、電子と正孔とが再結合して、EL発光が可能な有機発光層を含む媒体と定義することができる。かかる有機発光媒体は、例えば、陽極上に、以下の各層を積層して構成することができる。
(a)有機発光層
(b)正孔注入層/有機発光層
(c)有機発光層/電子注入層
(d)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(e)有機半導体層/有機発光層
(f)有機半導体層/電子障壁層/有機発光層
(g)正孔注入層/有機発光層/付着改善層
これらの中で、(d)の構成が、より高い発光輝度が得られ、耐久性にも優れていることから通常好ましく用いられる。
【0036】
(a)構成材料
有機発光媒体における発光材料としては、例えば、p−クオーターフェニル誘導体、p−クィンクフェニル誘導体、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、金属キレート化オキシノイド化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、ブタジエン系化合物、ナフタルイミド化合物、ペリレン誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体、ポリフェニル系化合物等の1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0037】
また、これらの有機発光材料のうち、芳香族ジメチリディン系化合物としての、4,4’−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル(DTBPBBiと略記する。)や、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBiと略記する。)およびこれらの誘導体がより好ましい。
さらに、ジスチリルアリーレン骨格等を有する有機発光材料をホスト材料とし、当該ホスト材料に、ドーパントとしての青色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系材料、あるいはホストと同様の蛍光色素をドープした材料を併用することも好適である。より具体的には、ホスト材料として、上述したDPVBi等を用い、ドーパントとして、N,N−ジフェニルアミノベンゼン(DPAVBと略記する。)等を用いることが好ましい。
【0038】
また、有機発光媒体における正孔注入層には、1×10〜1×10V/cmの範囲の電圧を印加した場合に測定される正孔移動度が、1×10−6cm/V・秒以上であって、イオン化エネルギーが5.5eV以下である化合物を使用することが好ましい。このような正孔注入層を設けることにより、有機発光層への正孔注入が良好となり、高い発光輝度が得られたり、あるいは、低電圧駆動が可能となる。
このような正孔注入層の構成材料としては、具体的に、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、縮合芳香族環化合物、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPDと略記する。)や、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATAと略記する。)等の有機化合物が挙げられる。
また、正孔注入層の構成材料として、p型−Siやp型−SiC等の無機化合物を使用することも好ましい。
なお、上述した正孔注入層と、陽極層との間、あるいは、上述した正孔注入層と、有機発光層との間に、導電率が1×10−10S/cm以上の有機半導体層を設けることも好ましい。このような有機半導体層を設けることにより、さらに有機発光層への正孔注入がより良好となる。
【0039】
また、有機発光媒体における電子注入層には、1×10〜1×10V/cmの範囲の電圧を印加した場合に測定される電子移動度が、1×10−6cm/V・秒以上であって、イオン化エネルギーが5.5eVを超える化合物を使用することが好ましい。このような電子注入層を設けることにより、有機発光層への電子注入が良好となり、高い発光輝度が得られたり、あるいは、低電圧駆動が可能となる。
このような電子注入層の構成材料としては、具体的に、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体(Alキレート:Alq)、またはその誘導体、あるいは、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
【0040】
また、有機発光媒体における付着改善層は、かかる電子注入層の一形態とみなすことができ、すなわち、電子注入層のうち、特に陰極との接着性が良好な材料からなる層であり、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体またはその誘導体等から構成することが好ましい。
なお、上述した電子注入層に接して、導電率が1×10−10S/cm以上の有
機半導体層を設けることも好ましい。このような有機半導体層を設けることにより、さらに有機発光層への電子注入性が良好となる。
【0041】
(b)厚さ
また、有機発光媒体の厚さについては特に制限はないが、例えば、厚さを5nm〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、有機発光媒体の厚さが5nm未満となると、発光輝度や耐久性が低下する場合があり、一方、有機発光媒体の厚さが5μmを超えると、印加電圧の値が高くなる場合があるためである。
したがって、有機発光媒体の厚さを10nm〜3μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20nm〜1μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
(2)上部電極
(a)構成1
第1の実施形態において、図1に示すように、上部電極20を、透明導電材料からなる主電極16と、低抵抗材料からなる補助電極18とから構成してあることを特徴としている。
このように主電極16のみならず、低抵抗材料からなる補助電極18を設けることにより、上部電極20の面抵抗を著しく低減することができる。したがって、有機EL素子26を、低電圧で駆動することができ、消費電力を低減することができる。
また、図1に示す主電極16は、透明導電材料、例えば透過率が10%以上の材料であって、好ましくは透過率が60%以上の材料から構成してあるため、当該主電極16を通してEL発光を外部に効果的に取り出すことができる。したがって、TFT14等を設けた場合であっても、画素31における開口率を大きくすることができる。
【0043】
(b)構成2
また、図13〜図15に示すように、上部電極20における補助電極18の構成として、当該補助電極18を、上部補助電極17と、下部補助電極19とから構成してあることが好ましい。
このように構成することにより、上部補助電極17が電気絶縁されていたとしても、下部補助電極19において、主電極16と電気接続することができ、逆に下部補助電極19が電気絶縁されていたとしても、上部補助電極17において、主電極16と電気接続することができる。
また、このように構成することにより、異なる構成材料を用いてそれぞれ形成することができるため、補助電極18と主電極16との電気接続がより確実になる。例えば、透明酸化物導電材料からなる主電極16と、金属材料からなる補助電極18とを直接電気接続するよりも、金属に対しても、透明酸化物導電材料に対しても比較的電気接続性が良好な半導体材料、例えば、非結晶性無機酸化物であるインジウム亜鉛酸化物(IZO)からなる下部補助電極19を介して、金属材料からなる上部補助電極17と電気接続したほうが、主電極16との電気接続がより確実になるためである。
さらに、このように構成することにより、エッチング特性が異なる構成材料を用いてそれぞれ形成することができるため、後述するように補助電極18の断面形状を容易にオーバーハング状とすることができる。
【0044】
(c)構成3
また、図13〜図16に示すように、上部電極20における補助電極18の構成として、当該補助電極18の断面形状をオーバーハング状とすることが好ましい。
この理由は、補助電極18上に絶縁膜が積層されていたとしても、オーバーハングした下部において、主電極16に対して電気接続することができるためである。
すなわち、補助電極18を形成した後に、絶縁膜や有機発光媒体を蒸着法等により形成し、さらに主電極16を形成すると、補助電極18上に絶縁膜が被覆してしまい、補助電極18と主電極16とを電気接続するのが困難となる場合がある。
それに対して、補助電極18の断面形状がオーバーハング状であれば、絶縁膜を蒸着等した場合であっても、補助電極18の側面には絶縁膜が付着しにくいので、この露出した補助電極18の側面を利用して、主電極16に対して確実に電気接続することが可能となる。
例えば、図14において、上部補助電極17が、有機発光媒体24等により電気絶縁されているものの、下部補助電極19において、主電極16と電気接続してあるのは、補助電極18のこの構成に由来した接続容易性を示している。
【0045】
なお、補助電極18の断面形状をオーバーハング状とするには、上述したように、補助電極18を下部補助電極19と上部補助電極17とから構成し、下部補助電極19および上部補助電極17に、それぞれエッチング速度が異なる構成材料から形成することにより、容易に形成することができる。具体的に、下部補助電極17をAlやAl合金等の金属材料から形成し、上部補助電極17をシリカ、アルミナ、窒化Si、窒化Cr、窒化Ta、窒化W等の非金属材料から形成することが好ましい。
したがって、例えば、下部補助電極19をAl、上部補助電極17をCrからそれぞれ形成し、次いでフォトリソグラフィー法によりCrを硝酸セリウムアンモニウム溶液でエッチングした後、さらにAlを燐酸、硝酸、酢酸の混合溶液でエッチングすることにより、下部補助電極19のAlのみがオーバーエッチングされるため、オーバーハングを容易に得ることができる。
このようなオーバーハングの例を図13〜図16に示す。各種形状が可能であり、下部補助電極19と上部補助電極17とからなる2層構成のオーバーハング状の補助電極18のほか、図16(e)に示すように3層構成のオーバーハング状の補助電極18も可能である。
なお、図13〜図16中の矢印は、オーバーハングの突出方向を示している。
【0046】
(d)構成4
また、図4に示すように、上部電極20における補助電極18の構成として、
当該補助電極18を平面視した場合に、平面内において周期的に配置してあることが好ましい。
これにより大幅かつ均一に上部電極の低抵抗化が実現できるし、また、補助電極18を周期的に配置することにより、形成することも容易となる。
【0047】
(e)構成5
また、図1および図2に示すように、上部電極20における補助電極18の構成として、当該補助電極18を、平面視した場合に、隣接する下部電極22の間に配置してあることが好ましい。例えば、図2において、点線で示す隣接する画素31と画素31との間に補助電極18が設けてあるのは、このことを示している。
すなわち、このように補助電極18を配置すると、画素31における開口率を狭めることがなく、より高い発光輝度を得ることができる。
なお、補助電極18の他の配置例として、図5に示すカラーフィルタまたは蛍光膜60とともに、下部電極22間に相当する垂直方向位置に、ブラックマトリックス(遮光部)が設けてある場合には、当該ブラックマトリックスの遮光部と、補助電極とが垂直方向において重なるように、補助電極18を配置することが好ましい。
このように構成すると、ブラックマトリックスを配置した場合であっても、画素における開口率を狭めることがなく、また、補助電極における反射光を有効に防止することができる。
【0048】
(f)構成6
また、図1および図2に示すように、上部電極20における補助電極18の構成として、TFT14を電気絶縁するための電気絶縁膜12および層間絶縁膜(平坦化膜)13、あるいはいずれか一方の絶縁膜12、13上に、補助電極18を設けることが好ましい。
このように構成すると、補助電極とTFTに関係する配線との間で形成される電気容量を低減できるため、有機EL素子のスイッチング動作を早めることができる。
また、図3に示すように、補助電極18の別な配置構成として、隣接する下部電極22の間に、層間絶縁膜13とは異なる電気絶縁膜25を配置し、その絶縁膜25上に補助電極18を設けることが好ましい。
このように構成すると、下部電極22の段差で生じる上部電極20との短絡やリークが減少し、画素欠陥を減らすことができる。
さらに、図6に示すように、補助電極18の配置構成として、補助電極18が、主電極16上に形成してあるとともに、補助電極18の面積を主電極16の面積よりも小さくしてあることが好ましい。
このように構成すると、画素における開口率を狭めることがなく、補助電極の形成や、補助電極の面抵抗の調整がより容易となる。
なお、言うまでもなく、上述した層間絶縁膜等に対する配置に関する構成6は、補助電極18が、隣接する下部電極22の間に配置してあることから、構成5の配置構成も満足するものである。
【0049】
(g)構成材料1
図1等における上部電極20(主電極16および補助電極18)は、有機EL素子の構成に応じて陽極層あるいは陰極層に該当するが、陽極層の場合には、正孔の注入が容易なために仕事関数の大きい構成材料、例えば、4.0eV以上の構成材料を使用することが好ましく、陰極層の場合には、電子の注入が容易なために仕事関数の小さい構成材料、例えば、4.0eV未満の構成材料を使用することが好ましい。
一方、第1の実施形態において、外部に発光を取り出すために、上部電極20のうち、主電極16の構成材料は、所定の透明性を有していなければならない。 したがって、上部電極20が、陽極層に該当する場合、具体的に、主電極16の構成材料として、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウム銅(CuIn)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb、Sb、Sb)、酸化アルミニウム(Al)等の一種単独、あるいは2種以上組み合わせが挙げられる。
なお、主電極16の透明性を損なわない範囲で低抵抗化を図るために、Pt、Au、Ni、Mo、W、Cr、Ta、Al等の金属を一種単独、あるいは2種以上組み合わせて添加することも好ましい。
【0050】
また、第1の実施形態では、上述した透明性材料ばかりでなく、補助電極18により上部電極20の面抵抗を低減できるので、主電極16については、光透過性金属膜、非縮退の半導体、有機導電体、半導性炭素化合物等からなる群から選択される少なくとも一つの構成材料から選択することができる。
例えば、有機導電体としては、導電性共役ポリマー、酸化剤添加ポリマー、還元剤添加ポリマー、酸化剤添加低分子または還元剤添加低分子であることが好ましい。
なお、有機導電体に添加する酸化剤としては、ルイス酸、例えば塩化鉄、塩化アンチモン、塩化アルミなどが挙げられる。また、同様に、有機導電体に添加する還元剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ化合物、アルカリ土類化合物、または希土類化合物などが挙げられる。さらに、導電性共役ポリマーとしては、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ルイス酸添加アミン化合物層等などが挙げられる。
また、非縮退の半導体としては、具体的に、酸化物、窒化物、またはカルコゲナイド化合物であることが好ましい。
また、炭素化合物としては、具体的に、非晶質C、グラファイト、またはダイヤモンドライクCであることが好ましい。
さらに、無機半導体としては、具体的に、ZnS、ZnSe、ZnSSe、MgS、MgSSe、CdS、CdSe、CdTe、CdSSe等であることが好ましい。
【0051】
(h)構成材料2
図1等に示す補助電極18は、低抵抗材料から構成する必要があるが、例えば、比抵抗が1×10−5〜1×10−3Ω・cmの範囲内の値である低抵抗材料を使用することが好ましい。
この理由は、かかる比抵抗が1×10−5Ω・cm未満となる材料は、実現が困難であるためであり、一方、比抵抗が1×10−3Ω・cmを超えると、上部電極の低抵抗化が困難となる場合があるためである。
したがって、補助電極を構成する低抵抗材料の比抵抗を2×10−5〜5×10−4Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、2×10−5〜1×10−4Ω・cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、補助電極18の面抵抗(シート抵抗)を0.01〜10Ω/□の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる面抵抗が0.01Ω/□未満となると、厚膜化する必要があったり、使用材料が過度に制限される場合があるためであり、一方、面抵抗が10Ω/□を超えると、上部電極の低抵抗化が困難となったり、過度に薄くなり形成が困難となる場合があるためである。したがって、補助電極の面抵抗を0.01〜10Ω/□の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜5Ω/□の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0052】
また、補助電極18を構成する好ましい低抵抗材料としては、配線電極に用いられる各種金属が好適に用いられる。具体的に、Al、Alと遷移金属(Sc、Nb、Zr、Hf、Nd、Ta、Cu、Si、Cr、Mo、Mn、Ni、Pd、PtおよびW等)との合金、Tiまたは窒化チタン(TiN)等の1種単独または2種以上を組み合わせて含有するのが好ましい。
また、かかる低抵抗材料としては、Al、あるいはAlと遷移金属との合金がより好ましいが、Alと遷移金属との合金を使用する場合には、遷移金属の含有量を10原子%(at.%またはatm%と称する場合がある。)以下の値、より好ましくは5原子%以下の値、さらに好ましくは2原子%以下の値とするとよい。この理由は、遷移金属の含有量が少ないほど、補助電極の面抵抗を低下させることができるためである。
また、上述した金属を主成分として用いる場合、Alであれば90〜100原子%、Tiであれば90〜100原子%、TiNであれば90〜100原子%の範囲内となるようにそれぞれ使用することが好ましい。
また、これらの金属を2種以上用いる場合の混合比は任意であるが、例えば、AlとTiとを混合使用する場合には、Tiの含有量を10原子%以下の値とすることが好ましい。
さらに、これらの金属からなる含有層を複数積層して、補助電極18としてもよい。
【0053】
(i)厚さ
また、図1等に示す主電極16や補助電極18の厚さは、面抵抗等を考慮して定めることが好ましいが、具体的に、主電極16や補助電極18の厚さを、それぞれ50nm以上の値とするのが好ましく、100nm以上の値とするのがより好ましく、100〜5,000nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、主電極16や補助電極18の厚さをこのような範囲内の値とすることにより、均一な厚さ分布や、発光(EL発光)において60%以上の透過率が得られる一方、主電極16や補助電極18からなる上部電極20の面抵抗を15Ω/□以下の値、より好ましくは、10Ω/□以下の値とすることができるためである。
【0054】
(3)下部電極
(a)構成材料
図1等に示す下部電極22についても、有機EL表示装置の構成に応じて陽極層または陰極層に該当するが、例えば陰極層に該当する場合、仕事関数の小さい(例えば、4.0eV未満)金属、合金、電気電導性化合物またはこれらの混合物あるいは含有物を使用することが好ましい。
具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、セシウム、マグネシウム、リチウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、インジウム、希土類金属、これらの金属と有機発光媒体材料との混合物、およびこれらの金属と電子注入層材料との混合物等からなる電極材料を単独で使用するか、あるいはこれらの電極材料を2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
なお、本発明では、上部電極20の側から発光を取り出すので、下部電極22の構成材料については、必ずしも透明性を有する必要はない。むしろ1つの好ましい形態としては、光吸収性の導伝材料から形成することである。このように構成するとと有機EL表示装置のコントラストをより向上させることができる。また、この場合の好ましい光吸収性の導伝材料としては、半導性の炭素材料、有色性の有機化合物、または前述した還元剤および酸化剤の組み合せの他、有色性の導電性酸化物(VO,MoO,WO等の遷移金属酸化物)が好適に挙げられる。
【0055】
(b)厚さ
また、下部電極22の厚さについても、上部電極20と同様に、特に制限されるものではないが、具体的に10〜1、000nmの範囲内の値とするのが好ましく、10〜200nmの範囲内の値とするのがより好ましい。
【0056】
(4)層間絶縁膜
図1に示す有機EL表示装置に61おける層間絶縁膜(電気絶縁膜)13は、有機EL素子26の近傍または周辺に存在し、有機EL表示装置61全体としての高精細化、有機EL素子26の下部電極22と上部電極20との短絡防止、またはTFT14にて有機EL素子26を駆動する場合において、TFT14を保護したり、有機EL素子26の下部電極22を平坦に成膜するための下地等に用いられる。
したがって、層間絶縁膜13は、必要に応じて、隔壁、スぺーサー、平坦化膜等の名称で呼ぶ場合があり、本発明では、それらを包含するものである。
【0057】
(a)構成材料
図1に示す層間絶縁膜13に用いられる構成材料としては、通常、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、環状ポリオレフィン、ノボラック樹脂、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
また、層間絶縁膜を無機酸化物から構成する場合、好ましい無機酸化物として、酸化ケイ素(SiOまたはSiO)、酸化アルミニウム(AlまたはAlO)酸化チタン(TiOまたはTiO)、酸化イットリウム(Y
またはYO)、酸化ゲルマニウム(GeOまたはGeO)、酸化亜鉛
(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、ほう酸(B)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)、酸化鉛(PbO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)等を挙げることができる。なお、無機化合物中のxは1≦x≦3の範囲内の値である。
特に、耐熱性が要求される場合には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド、環状ポリオレフィン、エポキシ樹脂、無機酸化物を使用することが好ましい。
なお、これらの層間絶縁膜は、有機質の場合、感光性基を導入してフォトリソグラフィー法で所望のパターンに加工するか、印刷手法にて所望のパターンに形成することができる。
【0058】
(b)層間絶縁膜の厚さ等
また、層間絶縁膜の厚さは、表示の精細度、有機EL素子と組み合わせられる蛍光媒体またはカラーフィルタの凹凸にもよるが、好ましくは10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、TFT等の凹凸を十分に平坦化できるためである。
したがって、層間絶縁膜の厚さを100nm〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、100nm〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0059】
(c)形成方法
また、層間絶縁膜の形成方法についても特に制限されるものではないが、例えば、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法等の方法を用いて成膜するか、あるいは、スパッタリング法、蒸着法、化学蒸着法(CVD法)、イオンプレーティング法等の方法で成膜することが好ましい。
【0060】
3.薄膜トランジスター(TFT)
(1)構成
本発明の有機アクティブEL発光装置68の一例は、図9に示すように、基板10上に、TFT14と、このTFT14によって駆動される有機EL素子26とを有している。
また、このTFT14と、有機EL素子26の下部電極22との間に、表面(上面)が平坦化された層間絶縁膜13が配設してあり、かつTFT14のドレイン47と、有機EL素子26の下部電極22とが、この層間絶縁膜13に設けられたコンタクトホール54を介して電気的に接続されている。
また、図10に示すように、TFT14には、XYマトリックス状に配設さた複数の走査電極線(Yj〜Yj+n)50および信号電極線(Xi〜Xi+n)51が電気接続されており、さらに、TFT14に対して共通電極線(Ci〜Ci+n)52が平行に電気接続してある。
そして、これらの電極線50、51、52がTFT14に電気接続されて、コンデンサ−57とともに、有機EL素子26を駆動させるための電気スイッチを構成していることが好ましい。すなわち、かかる電気スイッチは、走査電極線および信号電極線等に電気接続されているとともに、例えば、1個以上の第1のトランジスター(以下、Tr1と称する場合がある。)55と、第二のトランジスター(以下、Tr2と称する場合がある。)56と、コンデンサー57とから構成してあることが好ましい。
そして、第1のトランジスター55は、発光画素を選択する機能を有し、第二のトランジスター56は、有機EL素子を駆動する機能を有していることが好ましい。
【0061】
また、図9に示すように、第1のトランジスター(Tr1)55および第2のトランジスター(Tr2)56の活性層44は、それぞれn+/i/n+と示された部分であり、両側のn+は、n型にドーピングされた半導体領域45、47、および、その間のiは、ドーピングされていない半導体領域46から構成されていることが好ましい。
そして、n型にドーピングされた半導体領域が、それぞれソース45およびドレイン47となり、ドーピングされていない半導体領域の上方にゲート酸化膜を介して設けられたゲート46とともに、第1および第2のトランジスター55,56を構成することになる。
【0062】
なお、活性層44において、n型にドーピングされた半導体領域45、47を、n型の代わりにp型にドーピングして、p+/i/p+とした構成であっても良い。
また、第1のトランジスター(Tr1)55および第2のトランジスター(Tr2)56の活性層44は、ポリシリコン等の無機半導体や、チオフェンオリゴマー、ポリ(P−フェニレンビニレン)等の有機半導体から構成してあることが好ましい。特に、ポリシリコンは、アモルファスSi(α−Si)に比べて、通電に対し充分な安定性を示すことから、好ましい材料である。
【0063】
その他、図1や図9に示す例では、基板10表面に形成されたTFT14上に、層間絶縁膜(平坦化膜)13を介して有機EL素子26が設けてあるが、図17に示すように、基板の裏面にTFTを形成し、基板の表面に有機EL素子を形成して、基板10および層間絶縁膜(平坦化膜)13に設けたビアホール28を介して、TFT14と、有機EL素子26の下部電極とを電気接続することも好ましい。
このように構成すると、TFT14と有機EL素子26との間において、より優れた電気絶縁性を確保することができる。また、この例では、基板10上に、層間絶縁膜(平坦化膜)13を設けているが、基板10は両面とも平坦性に優れているため、層間絶縁膜(平坦化膜)13を省くことも可能である。
【0064】
(2)駆動方法
次ぎに、TFT14による有機EL素子の駆動方法につき説明する。TFT14は、図10に示すように、第1のトランジスター(Tr1)55および第2のトランジスター(Tr2)56を含んでいるととともに、コンデンサ−57とともに、電気スイッチの一部を構成している。
したがって、この電気スイッチに対し、XYマトリックスを介して走査パルスおよび信号パルスを入力し、スイッチ動作を行わせることにより、この電気スイッチに結合された有機EL素子26を駆動させることができる。よって、TFT14およびコンデンサ−57を含む電気スイッチにより、有機EL素子26を発光させたり、あるいは発光を停止させることにより、画像表示を行うことが可能である。
すなわち、走査電極線(ゲート線と称する場合がある。)(Yj〜Yj+n)50を介して伝達される走査パルスと、信号電極線(Xi〜Xi+n)51を介して伝達される信号パルスによって、所望の第1のトランジスター(Tr1)55が選択され、共通電極線(Ci〜Ci+n)52と第1のトランジスター(Tr1)55のソース45との間に形成してあるコンデンサー57に所定の電荷が充電されることになる。
これにより、第2のトランジスター(Tr2)56のゲート電圧が一定値となり、第2のトランジスター(Tr2)56はON状態となる。このON状態において、次にゲートパルスが伝達されるまでゲート電圧が所定値にホールドされるため、第2のトランジスター(Tr2)56のドレイン47に接続されている下部電極22に対して電流を供給しつづけることになる。
そして、有機EL素子26では、下部電極22を介して供給された電流により、効率的に直流駆動されることになる。よって、直流で駆動する効果により、有機EL素子26の駆動電圧が大幅に低下するとともに、発光効率が向上し、しかも、消費電力を低減することができるようになる。
【0065】
[第2の実施形態]
第2の実施形態のアクティブ駆動型有機EL発光装置は、図5に示すように、基板10上に、電気絶縁膜12に埋設されたTFT14と、上部電極20および下部電極22の間に有機発光媒体24を含んでなる有機EL素子26と、これらのTFT14と有機EL素子26とを電気接続するための電気接続部(ビアホール)28と、を備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置64である。
そして、第2の実施形態では、上部電極20を、主電極16および補助電極18から構成するとともに、当該上部電極20の側から取り出されたEL発光(図5上、矢印で発光の取り出し方向示す。)を、色変換するためのカラーフィルタまたは蛍光膜60を、上部電極20の上方に設けたことを特徴としている。
以下、第2の実施形態において、図5を適宜参照しながら、その特徴部分等について説明する。
【0066】
(1)カラーフィルタ
(a)構成
カラーフィルタは、光を分解またはカットして色調整またはコントラストを向上するために設けられ、色素のみからなる色素層、または色素をバインダー樹脂中に溶解または分散させて構成した層状物として構成される。なお、ここでいう色素には顔料も含まれる。
また、カラーフィルタの構成として、青色、緑色、赤色の色素を含むことが好適である。このようなカラーフィルタと、白色発光の有機EL素子とを組み合わせることにより、青色、緑色、赤色の光の三原色が得られ、フルカラー表示が可能であるためである。
なお、カラーフィルタは、蛍光媒体と同様に、印刷法や、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることが好ましい。
【0067】
(b)厚さ
また、カラーフィルタの厚さは、有機EL素子の発光を十分に受光(吸収)するとともに、色変換機能を妨げるものでなければ、特に制限されるものではないが、例えば、10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5μm〜1mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0068】
(2)蛍光媒体
(a)構成
有機EL表示装置における蛍光媒体は、有機EL素子の発光を吸収して、より長波長の蛍光を発光する機能を有しており、平面的に分離配置された層状物として構成されている。各蛍光媒体は、有機EL素子の発光領域、例えば下部電極と上部電極との交差部分の位置に対応して配置してあることが好ましい。このように構成することにより、下部電極と上部電極との交差部分における有機発光層が発光した場合に、その光を各蛍光媒体が受光して、異なる色(波長)の発光を外部に取り出すことが可能になる。特に、有機EL素子が青色発光するとともに、蛍光媒体によって、緑色、赤色発光に変換可能な構成とすると、一つの有機EL素子であっても、青色、緑色、赤色の光の三原色が得られ、フルカラー表示が可能であることから好適である。
また、各蛍光媒体間に、有機EL素子の発光及び各蛍光媒体からの光を遮断して、コントラストを向上させ、視野角依存性を低減するための遮光層(ブラックマトリックス)を配置することも好ましい。
なお、蛍光媒体は、外光によるコントラストの低下を防止するため、上述したカラーフィルタと組み合せて構成してもよい。
【0069】
(b)形成方法
蛍光媒体が、主に蛍光色素からなる場合は、所望の蛍光媒体のパターンが得られるマスクを介して真空蒸着またはスパッタリング法で成膜することが好ましい。
一方、蛍光媒体が、蛍光色素と樹脂からなる場合は、蛍光色素と樹脂と適当な溶剤とを混合、分散または可溶化させて液状物とし、当該液状物を、スピンコート、ロールコート、キャスト法等の方法で成膜し、その後、フォトリソグラフィー法で所望の蛍光媒体のパターンにパターニングしたり、スクリーン印刷等の方法で所望のパターンにパターニングして、蛍光媒体を形成するのが好ましい。
【0070】
(c)厚さ
蛍光媒体の厚さは、有機EL素子の発光を十分に受光(吸収)するとともに、蛍光の発生機能を妨げるものでなければ、特に制限されるものではないが、例えば、10nm〜1mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5μm〜1mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1μm〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0071】
[第3の実施形態]
第3の実施形態のアクティブ駆動型有機EL発光装置は、図7および図8に示すように、基板10上に、電気絶縁膜12に埋設されたTFT14と、上部電極20および下部電極22の間に有機発光媒体24を含んでなる有機EL素子26と、これらのTFT14と有機EL素子26とを電気接続するための電気接続部28と、封止部材58と、を備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置66、67である。
そして、第3の実施形態では、上部電極20を、主電極16および補助電極18から構成するとともに、当該上部電極20における補助電極18を、図7に示すように封止部材58に埋設して封止部材58を貫通させた状態で設けるか、または図8に示すように密着配置したことを特徴としている。
以下、第3の実施形態において、図7および図8を適宜参照しながら、封止部材等について説明する。
【0072】
(1)封止用部材
図7および図8に示す封止用部材58は、それぞれ内部への水分侵入を防止するために当該有機EL表示装置66、67の周囲に設けるか、さらには、このように設けた封止用部材58と、有機EL表示装置66、67との間に、封止媒体21、例えば、乾燥剤、ドライガス、フッ化炭化水素等の不活性液体を封入することが好ましい。
また、かかる封止用部材58は、蛍光媒体や、カラーフィルターを上部電極の外部に設ける場合の、支持基板としても使用することができる。
このような封止用部材としては、支持基板と同種の材料、例えば、ガラス板やプラスチック板を用いることが可能である。また、防湿性に優れた材料であれば無機酸化物層や無機窒化物層も使用が可能であり、例えば、シリカ、アルミナ、AlON、SiAlON、SiN(1≦x≦2)等が挙げられる。さらに、封止用部材の形態についても、特に制限されるものでなく、例えば、板状やキャップ状とすることが好ましい。そして、例えば、板状とした場合、その厚さを、0.01〜5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、封止用部材は、有機EL表示装置の一部に溝等設けておき、それに圧入して固定することも好ましいし、あるいは、光硬化型の接着剤等を用いて、有機EL表示装置の一部に固定することも好ましい。
【0073】
(2)封止用部材と補助電極との関係
また、封止用部材と補助電極との関係について言えば、図7および図8に示すように、補助電極18を、封止部材58に埋設して設けるか、または密着配置することが好ましいが、種々の変形が可能である。
具体的に、封止用部材58と、有機EL素子26との間に形成された内部空間に補助配線18を配置した部位を設けても良いし、封止用部材58内に完全に埋設しておき、主電極16との電気接続は、ビアホール(スルーホールと称する場合がある。)を形成して行うことも可能である。
【0074】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、図1に示す第1の実施形態のアクティブ駆動型有機EL発光装置61の製造方法であって、具体的に、基板10上に、電気絶縁膜12に埋設されたTFT14と、層間絶縁膜13と、下部電極22と、有機発光媒体24と、主電極16および補助電極18からなる上部電極20と、TFT14と有機EL素子26とを電気接続するための電気接続部28とをそれぞれ形成することを特徴としたアクティブ駆動型有機EL発光装置61の製造方法である。
すなわち、第4の実施形態では、有機EL素子26を形成する工程と、電気絶縁膜12に埋設されたTFT14を形成する工程と、層間絶縁膜13を形成する工程と、下部電極22を形成する工程と、有機発光媒体24を形成する工程と、主電極16および補助電極18からなる上部電極20を形成する工程と、TFT14と有機EL素子26とを電気接続するための電気接続部28を形成する工程とを含むことを特徴としている。
以下、第4実施形態において、図12を適宜参照しながら、その特徴部分等について説明する。
【0075】
(1)薄膜トランジスター(TFT)の形成工程
TFT14の形成工程(アクティブマトリックス基板の作製工程)について、図12(a)〜(i)を参照しながら、説明する。
【0076】
(a)活性層の形成
まず、図12(a)は、基板10上に、減圧CVD(LPCVD:Low pressure Chemical Vapor Deposition)等の手法により、α−シリコン(α−Si)層70を積層する工程を示している。
この時、α−Si層70の厚さを、40〜200nmの範囲内の値とすることが好ましい。また、用いられる基板10は、水晶のような結晶材料も好ましいが、より好ましくは、低温度ガラスである。なお、低温度ガラス基板を用いる場合には、製造工程全体において、溶融したり、歪みが発生するのを回避し、さらには、能動領域内にドーパントの外側拡散(out−diffusion)を回避するために、低温プロセス温度、例えば、1000℃以下、より好ましくは600℃以下の温度で実施するのが好ましい。
【0077】
次いで、図12(b)は、KrF(248nm)レーザーなどのエキシマーレーザーをα−Si層70に対して照射し、アニール結晶化を行って、α−Siをポリシリコンとする工程を示している(SID’96、Digest of technical papers p17〜28参照)。
ここで、エキシマレーザーを用いたアニーリング条件としては、基板温度を100〜300℃の範囲内の値、およびエキシマレーザー光のエネルギー量を100〜300mJ/cmの範囲内の値とするのが好ましい。
【0078】
次いで、図12(c)は、アニール処理して結晶化されたポリシリコンを、フォトリソグラフィによりアイランド状にパターン化する工程を示している。なお、エッチングガスとしては、優れた解像度が得られることからCFガスを用いることが好ましい。
次いで、図12(d)は、得られたアイランド化ポリシリコン71および基板10の表面に、絶縁ゲート材料72を化学蒸着(CVD)等により積層して、ゲート酸化物絶縁層72とする工程を示している。
このゲート酸化物絶縁層72は、好ましくはプラズマ増強CVD(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)、または減圧CVD(LPCVD)のような化学蒸着(CVD)が適用可能なように二酸化シリコンから構成することが好ましい。
また、ゲート酸化物絶縁層72の厚さを、100〜200nmの範囲内の値とするのが好ましい。
さらに、基板温度としては250〜400℃が好ましく、さらに高品質の絶縁ゲート材料を得るためには、アニールを300〜600℃で、1〜3hr程度施すのが好ましい。
【0079】
次いで、図12(e)は、ゲート電極73を、蒸着またはスパッタリングで成膜して形成する工程を示している。なお、ゲート電極73の好ましい構成材料としては、Al、AlN、TaN等が挙げられ、また、その厚さを、200〜500nmの範囲内の値とするのが好ましい。
次いで、図12(f)〜(h)は、ゲート電極73をパターニングするとともに、陽極酸化を行う工程を示している。また、Alゲートを使用するときは、図12(f)〜(h)に示すように、絶縁するために陽極酸化を2回にわたり行うのが好ましい。なお、陽極酸化の詳細に関しては、特公平8−15120号公報に詳細に開示されている。
次いで、図12(i)は、イオンドーピング(イオン注入)により、n+またはp+のドーピング領域を形成し、活性層を形成して、ソースおよびドレインとする工程を示している。また、イオンドーピングを有効に行うことができるように、イオンドーピング中に、窒素ガスの導入、および300℃、3時間程度の条件での加熱処理をすることが好ましい。
【0080】
一方、ゲート電極73として、α−Siから形成されたポリシリコンを用いることも好ましい。すなわち、ポリシリコンゲート電極73を、ゲート絶縁層上に形成した後、砒素等のn型ドーパントをイオンインプラントし、さらにその後に、ソース領域とドレイン領域を、それぞれポリシリコン領域内に形成可能なように、ポリシリコンアイランド上にフォトリソグラフィすることによりパターン化して形成することができる。
なお、ポリシリコンからなるゲート電極73は、コンデンサーの底部電極として供することができる。
【0081】
(b)信号電極線および走査電極線の形成
次に、図示はしないが、得られた活性層上に電気絶縁層、例えばSiO(1≦x≦2)層をECRCVD法(Electron Cyclotron Resonance Chemical Vapor Deposition法)により設けた後、信号電極線および走査電極線(配線電極と称する場合もある。)を形成し、電気接続をする。具体的には、フォトリソグラフィ法等により、信号電極線および走査電極線を形成するとともに、およびコンデンサーの上部電極を形成して、第2のトランジスター(Tr2)56のソースと走査電極線との連結、第1のトランジスター(Tr1)55のソースと信号電極線との連結等を行う。
その際、Al合金、Al、Cr、W、Moなどの金属線を、フォトリソグラフィにより形成するとともに、第1のトランジスター(Tr1)55および第二のトランジスター(Tr2)56のドレイン、ソースなどのコンタクトは、これらの表面側から全面的に設けた電気絶縁層の開口部を介して行うことが好ましい。
なお、配線電極の厚さを、50nm以上、さらには100nm以上、100〜500nmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0082】
(c)層間絶縁膜の形成
次の段階では、二酸化シリコン(SiO)、チッ化シリコン、ポリイミドなどで構成される層間絶縁膜を、活性層およびその上の電気絶縁層全体にわたり適用する。
なお、二酸化シリコンからなる絶縁膜は、PECVDにより、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを供給して、基板温度250〜400℃の条件で得ることができる。また、ECRCVDにより、基板温度を100〜300℃としても得ることができる。しかしながら、これらの無機絶縁膜では平坦化することが困難なので、有機層間絶縁膜を用いることが好ましい。
【0083】
(2)有機EL素子の形成工程
上述したように、TFT構造や、層間絶縁膜を形成した後、その上に、陽極(下部電極)、有機発光層、正孔注入層、電子注入層等を順次に形成し、さらに陰極(上部電極)を形成することにより、有機EL素子を作製することができる。
例えば、下部電極については、真空蒸着法や、スパッタリング法等の乾燥状態での成膜が可能な方法を用いて形成することが好ましい。また、有機発光媒体については、真空蒸着法、スピンコート法、ラングミュアーブロジェット法(LB法、Langumuir−Blodgett法)、インクジェット法、ミセル電解法等の一般的に公知の方法を採ることができる。
また、補助電極や、主電極についても、真空蒸着法や、スパッタリング法等を用いて形成することが好ましい。具体的に、真空蒸着法等を用いて、透明導電材料から主電極を形成するとともに、低抵抗材料から補助電極を順次に形成して上部電極を構成することが好ましい。
なお、補助電極を形成すると同時に、TFTの接続端子と電気接続することが好ましい。その際、補助電極と、TFTの接続端子との間に、接続材料として、非晶質酸化物であるインジウム亜鉛酸化物(IZO)等を介することも好ましい。
また、陰極(下部電極)から、陽極側へ、逆の順序であっても有機EL素子を作製することができる。
さらに、有機EL素子の成膜は、蒸着装置等を用いて、一回の真空引きで一貫して作製することが好ましい。
【0084】
(3)封止工程等
さらに、封止工程については、有機EL素子を形成し、TFTと電気接続後、封止部材で、これらの周囲を覆うようにして固定することが好ましい。
なお、有機EL素子に直流電圧を印加する場合、透明電極を+、電極を−の極性にして、5〜40Vの電圧を印加すると、発光が観測できるので、封止工程前に駆動させて、有機EL素子の成膜の良し悪しを判断することも好ましい。
【符号の説明】
【0085】
10 基板
12 電気絶縁膜
13 層間絶縁膜(平坦化膜)
14 薄膜トランジスタ(TFT)
16 主電極
17 上部補助電極
18 補助電極
19 下部補助電極
20 上部電極
22 下部電極
23 コンデンサー
24 有機発光媒体
26 有機EL素子
28 電気接続部
61〜68 アクティブ駆動型有機EL発光装置
44 活性層
45 ソース
46 ゲート
47 ドレイン
50 ゲートライン(走査電極線)
51 ソースライン(信号電極線)
52 共通電極線
54 コンタクトホール
55 第1のトランジスター
56 第2のトランジスター
57 コンデンサー
58 封止部材
59 第2のトランジスターのドレイン
60 カラーフィルタまたは蛍光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極および下部電極の間に有機発光媒体を含んでなる有機EL素子と、基板上にあるこの有機EL素子を駆動するための薄膜トランジスターと、を備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置において、
前記有機EL素子が発光した光を、前記上部電極側より取り出すとともに、
前記上部電極が、透明導電材料からなる主電極から構成され、
前記主電極が前記基板と反対側に配置され、
前記主電極に対して電気接続している低抵抗材料からなる補助電極が、平面視した場合に前記有機発光媒体を含む画素と画素との間に配置されることを特徴とするアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項2】
前記薄膜トランジスターおよび画素の選択手段用トランジスターから構成された電気スイッチと、
当該電気スイッチを駆動するための走査電極線および信号電極線と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項3】
前記透明導電材料が、導電性酸化物、光透過性金属膜、非縮退の半導体、有機導電体、および半導性炭素化合物からなる群から選択された少なくとも一つの材料であることを特徴とする請求項1または2に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項4】
前記有機導電体が、導電性共役ポリマー、酸化剤添加ポリマー、還元剤添加ポリマー、酸化剤添加低分子および還元剤添加低分子からなる群から選択された少なくとも一つの材料であることを特徴とする請求項3に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項5】
前記非縮退の半導体が、酸化物、窒化物、およびカルコゲナイド化合物からなる群から選択された少なくとも一つの材料であることを特徴とする請求項3に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項6】
前記炭素化合物が、非晶質カーボン、グラファイト、およびダイヤモンドライクカーボンからなる群から選択された少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項3に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項7】
前記補助電極が、平面内において周期的に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項8】
前記補助電極の断面形状が、オーバーハング状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項9】
前記補助電極が、下部補助電極と上部補助電極とから構成してあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項10】
前記下部補助電極および前記上部補助電極が、エッチング速度が異なる構成材料から構成してあることを特徴とする請求項9に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項11】
前記補助電極の下部補助電極および上部補助電極あるいはいずれか一方を、前記主電極に対して電気接続してあることを特徴とする請求項9または10に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項12】
前記補助電極が、有機EL素子を形成するための層間絶縁膜上に形成してあることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項13】
前記補助電極が、前記下部電極を電気絶縁するための電気絶縁膜上に形成してあることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項14】
前記補助電極が、前記薄膜トランジスターを電気絶縁するための電気絶縁膜上に形成してあることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項15】
前記薄膜トランジスターの活性層が、ポリシリコンから形成してあることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項16】
前記薄膜トランジスター上に、層間絶縁膜が形成してあるとともに、当該層間絶縁膜上に有機EL素子の下部電極が設けられており、かつ、薄膜トランジスターと下部電極とが、層間絶縁膜に設けたビアホールを介して電気接続してあることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項17】
前記主電極に対して、前記補助電極から電荷を注入し、基板の主表面に対して平行に輸送した後、前記有機発光媒体に対して注入することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項18】
前記主電極の面抵抗を1K〜10MΩ/□の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項19】
前記補助電極の面抵抗を0.01〜10Ω/□の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項20】
前記上部電極側に、取り出された発光を色変換するためのカラーフィルターおよび蛍光膜あるいはいずれか一方の部材が設けてあることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項21】
前記カラーフィルターまたは蛍光膜の一部にブラックマトリックスが形成してあり、当該ブラックマトリックスと、前記補助電極とが垂直方向において重なることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項22】
前記補助電極が、前記主電極上に形成してあるとともに、前記補助電極の面積を前記主電極の面積よりも小さくしてあることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項23】
前記補助電極が、周囲を覆う封止部材に埋設して設けてあることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項24】
前記補助電極が、周囲を覆う封止部材と、主電極との間に、密着配置してあることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載のアクティブ駆動型有機EL発光装置。
【請求項25】
上部電極および下部電極の間に有機発光媒体を含んでなる有機EL素子と、この有機EL素子を駆動するための薄膜トランジスターとを備えたアクティブ駆動型有機EL発光装置の製造方法において、
前記有機EL素子を形成する工程と、前記薄膜トランジスターを形成する工程とを含むとともに、
当該有機EL素子を形成する工程内で、下部電極および有機発光媒体を形成した後、透明導電材料から主電極を形成するとともに、低抵抗材料から補助電極を形成して上部電極を構成することを特徴とするアクティブ駆動型有機EL発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−142301(P2012−142301A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63146(P2012−63146)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2009−257982(P2009−257982)の分割
【原出願日】平成12年2月16日(2000.2.16)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】