説明

アクネ用皮膚外用剤

【課題】 これまで健康食品などの効果しか見出されていなかったマンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物を効果的に利用すること。
【解決手段】 マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物はリパーゼ抑制効果があり、アクネ等を改善することが見いだされた。さらにこの抽出物と保湿剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、抗酸化剤、美白剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、抗プラスミン剤、活性酸素抑制剤、コラゲナーゼ活性阻害剤、抗ヒスタミン剤、エラスターゼ活性阻害剤の特定の薬剤のいずれか1種または2種以上を配合することにより、より有効な皮膚外用剤が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、特定の属の植物から抽出された抽出物が皮膚常在菌のリパーゼ産生を優位に阻害することで、ニキビの形成を抑え、これと保湿剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗プラスミン剤、活性酸素抑制剤、抗ヒスタミン剤の特定した薬剤を組み合わせ配合することにより、さらに肌荒れの改善および予防効果が得られる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マンゴー(Mangifera indica L.)とは、ウルシ科(Anacardiaceae)、マンゴー属(Mangifera)の植物、マンゴー(Mangifera indica L.)の果実であり、北インドからミャンマー、マレーシア原産の植物で、その生果は日本で生産される果実でもっともおいしい最高級品の果実とも言われている。マンゴー抽出物には化粧料、浴用剤、洗剤組成物への利用法が知られている(特許文献1〜2参照)。また、マンゴー種子抽出物には、口紅用組成物(特許文献3参照)、損傷毛の修復効果を有する頭髪・頭皮化粧料(特許文献4参照)、抗酸化性組成物(特許文献5参照)、静菌及び抗菌剤(特許文献6参照)への利用法が知られているが、それ以外での用途についてはこれまで知られていない。
【0003】
アクネは、顔面や背部などの脂腺が多く存在する部分に出来る毛包腺系の炎症性疾患である。アクネ病態に深く関与しているP.acnesは健常人の皮膚にも存在する皮膚常在菌であり、細菌性リパーゼを産生する。産生されたリパーゼは皮脂中のトリグリセライドを分解して遊離脂肪酸が産生され、これによって角化が行進しコメドを形成するだけでなく、アクネ炎症の原因ともなる。アクネによって起こる炎症は肌を荒らし、さらにはニキビ痕として残り、健やかな肌を維持するのを妨げる。
【特許文献1】特開2001−31552号公報
【特許文献2】特開2001−39823号公報
【特許文献3】特開平7−223924号公報
【特許文献4】特開平9−208435号公報
【特許文献5】特開平9−216836号公報
【特許文献6】特開平10−324610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有効性の高いマンゴー(Mangifera indica L.) の抽出物に関して有効に活用するために種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物がリパーゼ活性を阻害することを見出し、アクネ用皮膚外用剤として有効なことがわかった。
さらにマンゴーに特定の薬剤(保湿剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗プラスミン剤、活性酸素抑制剤、抗ヒスタミン剤など)を配合することによってより有効性の高い皮膚外用剤を見出した。
【0006】
マンゴーの抽出物の形態はなんら限定されるものではないが、好ましくはマンゴー果実を陰乾し、粉砕後、抽出溶媒(例えばエタノール等のアルコール、水またはこれら混合)とともに、3日間浸漬または1時間100度にて加温、冷却、ろ過した液を使用する。
【0007】
試験;リパーゼ抑制試験
基質であるPentanoic acid 4-nitrophenyl eaterが酵素リパーゼにより加水分解され、生成される4-nitrophenyl esterの吸収を測定するリパーゼ抑制試験により、マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物についてリパーゼ活性阻害作用を調べた。0.04%オレフィンスルホン酸−50mM Tris緩衝液(pH7.7)で調製した試験品500μlに同緩衝液3ml、2mg/mlリパーゼ〔SIGMA〕酵素-50mM Tris緩衝液(pH7.7)500μlを添加、攪拌後、40℃で5分間インキュベートした。さらに基質として1mM PNP-valerate1mlを添加、攪拌し、40℃で15分間インキュベートした後、Abs.425nmにて吸光度(A)を測定した。同様に、酵素液の代替として緩衝液を用いた場合の吸光度(B)、試験品の代替として緩衝液を用いた場合の吸光度(C)、酵素液の代替として緩衝液をかつ試験品の代替として緩衝液を用いた場合の吸光度(D)を測定し、下記の数式よりリパーゼ活性阻害率(%)を算出した。
<数式>リパーゼ活性阻害率(%)=[1−(A−B)/(C−D)]×100
○試験品は以下に示す。
マンゴーE:マンゴー(果実乾燥物)(20g)のエタノール(100ml)エキス(凍結乾燥物)
マンゴーEW:マンゴー(果実乾燥物)(20g)の50%エタノール−水(100ml)エキス(凍結乾燥物)
【0008】
上記の試験のリパーゼ活性阻害率の結果はマンゴーE71.2%、マンゴーEWが50.3%であった。
【0009】
マンゴー(Mangifera indica L.) の抽出物は高いリパーゼ抑制効果を示した。マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物は0.0001〜10重量%で配合すれば阻害効果等を十分発揮することから、この濃度で配合することが望ましい。
【0010】
また、マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物に特定の薬剤(保湿剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、抗酸化剤、美白剤、抗プラスミン剤、活性酸素抑制剤、抗ヒスタミン剤など)を配合すると、アクネ、炎症、肌荒れなど種々の肌悩みを改善あるいは予防することがわかった。
【0011】
さらに水酸基を2つ以上含む多価アルコール、低級アルコール、界面活性剤、低分子ベタインのいずれか1種または2種以上を配合するとより効果が得られることもわかった。
【0012】
利用できる多価アルコールに特に限定はないが例示すれば、グリセリン、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール、トレハロース、マルトース等が挙げられる。これらを0.1〜80重量%、好ましくは1〜30重量%を配合するが、多価アルコールの種類によって配合量は変化し、また、複数の多価アルコールを利用できることはいうまでもない。
【0013】
低級アルコールを配合することによって吸収性が向上する。低級アルコールの種類は種々あるが通常エタノールを用いる。配合量は特に限定はないが、2〜70重量%が好ましい。
マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物を含む多価アルコールの組み合わせに界面活性剤を併せて配合することも有効であり、さらに前記の低級アルコールをも合わせて配合することも有効である。
界面活性剤には特に限定はなく、用途や剤形によって種類や量を選択すればよい。
界面活性剤は、油剤等の乳化や可溶化等のために用いられ、アニオン性(アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩)、非イオン性(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)及び両性(カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤)その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤)の活性剤を適宜用いることができる。
【0014】
低分子ベタインも選択されるべき原料の1つであり、これを配合することによってさらに効果は向上し、且つ塗布感もよくなり、皮膚外用剤として有効性は増す。
利用できる低分子ベタインは、分子量200以下の、第四アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基等の分子内塩で両性イオンを形成するものを包含し得る。例示すれば、トリメチルグリシン、N,N,N−トリメチルアラニン、N,N,N−トリメチルグルタミン酸、トリエチルグリシンなどがあるが、トリメチルグリシンが好適である。
なお、分子量200以上のものは界面活性能を有し、低分子ベタインの効果とは異なるもので、上述したように界面活性剤を用いることは本発明の効果を高めるが低分子ベタインとは効果が異なる。
【0015】
本発明の皮膚外用剤は、常法に従い、通常の皮膚外用剤として知られる種々の形態の基材に配合して調製することができる。
【0016】
外用剤の形態としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、水溶液、パック等の任意の剤形を選択することができる。
【0017】
本発明の皮膚外用剤には、上記した必須成分の他に通常の外用剤に配合される成分、例えば、油剤、粉体、精製水、高分子化合物、ゲル化剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、酸化防止剤、色素、防腐剤、香料、美容成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0018】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制約されるものではない。また、使用した薬剤の抽出液についての抽出方法は何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例の処方を表1から表2に示す。作成方法は常法により行った。なお、表1はローション、表2は美容液の処方であり、配合量は重量部で示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
上記の比較例および実施例に用いた原料についての詳細を以下に記す。
(注1)マンゴー抽出液はマンゴー(果実乾燥物)10gにエタノール200mlを加えて5日攪拌した後、ろ過した抽出液を用いた。
(注2)マンゴー抽出液はマンゴー(果実乾燥物)10gにエタノール100mlと精製水100mlを加えて5日攪拌した後、ろ過した抽出液を用いた。
(注3)加水分解コンキオリン液はコンキオリンを硫酸分解し、分子量1000以下のものを用いた。
(注4)菱の実抽出液は[栃本天海堂(株)製]を用いた。
(注5)ホオノキ抽出液はファルコレックスホオノキE[一丸ファルコス(株)製]を用いた。
(注6)グァバ抽出液はグァバの葉10gにエタノール300mlを加えて5日間放置後、ろ過した抽出液を用いた。
(注7)西河柳抽出液は西河柳エキス[日本精化(株)製]を用いた。
(注8)海藻抽出液はマリンパージ[一丸ファルコス(株)製]を用いた。
【0022】
表1〜表2記載の実施例1〜8及び比較例1〜2につき、アクネ改善試験を実施した。試験方法は25〜55才の女性20名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間にわたって洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。結果を表3に示す。
【0023】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物を配合することを特徴とするアクネ用皮膚外用剤。
【請求項2】
マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物を配合することを特徴とするリパーゼ阻害剤
【請求項3】
マンゴー(Mangifera indica L.)の抽出物と保湿剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗プラスミン剤、活性酸素抑制剤、抗ヒスタミン剤のいずれか1種または2種以上を含む皮膚外用剤

【公開番号】特開2006−298814(P2006−298814A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121893(P2005−121893)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【出願人】(598092270)有限会社 坂本薬草園 (11)
【Fターム(参考)】