説明

アクリルゴム連続気泡体及びその製造方法

【課題】厚みのある、耐油性、耐熱性、耐候性に優れたアクリルゴム連続気泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】アクリルゴム100重量部に可塑剤2〜30重量部、架橋剤及び発泡剤、発泡助剤、カーボンブラック、充填剤を添加混練し、密閉金型中に充填して加圧下に加熱後除圧して発泡体を取り出した後、常圧下に加熱して発泡体を得、得られた発泡体を150〜170℃で後架橋させ、次いで機械的に押圧して気泡を連通化させてなるアクリルゴム連続気泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム連続気泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴム発泡体は、耐油性、耐熱性、耐候性等に優れており、家電製品や自動車、建築等のパッキン、シール材の用途に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−082134号公報
【特許文献2】特開昭50−023468号公報
【特許文献3】特開平2−208328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献記載の発泡体はシート状の独立気泡発泡体であり、厚みのある連続気泡体は得られていない。
【0005】
本発明者らは、アクリルゴムに可塑剤、発泡剤、架橋剤等を添加して、2段発泡法により、厚みがあり脱泡性に優れたアクリルゴム連続気泡体を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアクリルゴム連続気泡体は、アクリルゴムに可塑剤、架橋剤及び発泡剤、発泡助剤、カーボンブラック、充填剤を添加混練して加熱、発泡させて発泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化して得られるものである。
【0007】
上記本発明に係る発泡体において、可塑剤の添加量は2〜30重量部であることが好ましい。可塑剤が2重量部未満の場合は、気泡膜が厚いままで脱泡性が悪く、30重量部を超える場合は、発泡体表面のブリードが大きく製品として使用できない。
【0008】
本発明に係るアクリルゴム連続気泡体の製造方法は、アクリルゴム100重量部に可塑剤2〜30重量部、架橋剤及び発泡剤、発泡助剤、カーボンブラック、充填剤を添加混練し、密閉金型中に充填して加圧下に加熱後除圧して発泡体を取り出した後、常圧下に加熱して発泡体を得、得られた発泡体を150〜170℃で後架橋させ、次いで機械的に押圧して気泡を連通化させるものである。
【0009】
上記本発明に係る製造方法において、可塑剤の添加量は2〜30重量部であることが好ましい。可塑剤が2重量部未満の場合は、気泡膜が厚いままで脱泡性が悪く、30重量部を超える場合は、発泡体表面のブリードが大きく製品として使用できない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、厚みがあり脱泡性に優れた、気泡状態が連続気泡であるアクリルゴム連続気泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明でいうアクリルゴムとは、構造が下記式で表されるものである。
−CH2−CH−R2−
│ R1:アルキル基
COOR1 R2:共重合成分

アクリルゴムとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシアクリレート等のアルコキシアルキルアクリレートなどを挙げることができる。
【0012】
本発明でいう可塑剤とは、エーテルエステル系、フタル酸エステル系、マレイン酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系等の可塑剤である。
【0013】
本発明でいう架橋剤とは、ジチオカルバミン酸塩のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄等、ポリアミン系化合物、ポリカルボン酸又はその酸無水物、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、高級脂肪酸金属塩、シアヌール酸類、尿素類、グアニジン類、イミダゾール類、硫黄又は硫黄供与性化合物等である。
【0014】
本発明でいう発泡剤とは、アゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等である。
【0015】
本発明でいう充填剤とは、クレー、タルク、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、その他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0016】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0017】
本発明のアクリルゴム連続気泡体の製造方法は、用いた架橋剤や発泡剤などによる架橋温度や発泡温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で行うことができる。特に好ましい方法及び条件を下記に記述する。
【0018】
アクリルゴム100重量部に可塑剤2〜30重量部、架橋剤及び発泡剤、発泡助剤、カーボンブラック、充填剤を添加し、これをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡組成物をプレス中の金型に充填し、一定時間加圧下に好ましくは100〜120℃で加熱し、発泡剤を部分的に分解し、中間発泡体を生成させる。
【0019】
次いで、該中間発泡体を常圧下にて密閉系でない直方体型などの所望の形状の型内に入れ、窒素気流中で、又は直方体型がその外壁に加熱用熱媒体導管(熱媒:スチーム等)が設けられてなるものでその中で、あるいは伸張可能な鉄板等により覆われた状態で、所定時間加熱した後、取り出して発泡体を得る。加熱温度は好ましくは110〜160℃、特に好ましくは120〜150℃である。
【0020】
得られた発泡体をオーブンなどの加熱槽に入れ、150〜170℃で後架橋させる。
【0021】
以上のようにして得られた発泡体(いわゆる独立気泡体)は、次いで例えば等速二本ロール等により圧縮変形を加えることによって気泡膜は破壊され、気泡が連通化されて連続気泡体が得られる。等速二本ロールの表面に無数の小さい針を設けるか。又は等速二本ロールの前及び/又は後ろに無数の小さい針を設けたロールを配置して、該発泡体の表面に無数の小孔を開けることによって、気泡の連通化を促進させることができる。
【0022】
この方法によって得られる連続気泡体は、ASTM−D2856に準拠した空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を用いて測定した連続気泡率100%又は100%に近いものである。
【実施例1】
【0023】
アクリルゴム(商品名:トアアクロンAR−601、株式会社トウペ製)100重量部、エーテルエステル系可塑剤(商品名:RS−735、株式会社ADEKA製)5重量部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(商品名:ノクセラーEZ、大内新興化学工業株式会社製)2.0重量部、アゾジカルボンアミド(商品名:ビニホールAC#3K7、永和化成工業株式会社製)13重量部、カーボンブラック(商品名:シーストS、東海カーボン株式会社製)20重量部、炭酸カルシウム45重量部、タルク25重量部、酸化亜鉛5重量部、尿素1.0重量部からなる組成物を105℃に加熱されたプレス内の金型(30×150×150mm)に充填し、ゲージ表示圧100kg/cmの圧力で60分加熱して中間発泡体(45×170×170mm)を生成した。
【0024】
次いで、中間発泡体を加熱水蒸気の流路を周囲に設けた気密でない開閉式金属金型(100×370×370mm)の略中央に載置し、132℃で90分加熱して取り出し、発泡体(120×390×390mm)を得た。
得られた発泡体を150℃のオーブン中に24時間入れて、後架橋を行った。
【0025】
後架橋を行った発泡体をロール間隔10mmに設定した等速二本ロールの間を10回通過させて気泡膜を破壊し、気泡の連通化を行った。連通化直後の発泡体はつぶれた状態であるが、23℃の室内に1時間放置すると元の大きさまで復元した。得られた連続気泡体は、見掛け密度75kg/m、連続気泡率100%でクッション性に優れていた。
【実施例2】
【0026】
エーテルエステル系可塑剤を15重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0027】
得られた発泡体を実施例1と同じロール間隔で7回通過させて気泡膜を破壊し、23℃の室内に1時間放置すると元の大きさまで復元した。得られた連続気泡体は、見掛け密度72kg/m、連続気泡率100%でクッション性に優れていた。
【実施例3】
【0028】
エーテルエステル系可塑剤を30重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0029】
得られた発泡体を実施例1と同じロール間隔で7回通過させて気泡膜を破壊し、23℃の室内に1時間放置すると元の大きさまで復元した。得られた連続気泡体は、見掛け密度71kg/m、連続気泡率100%でクッション性に優れていた。
比較例1
【0030】
エーテルエステル系可塑剤を0重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0031】
得られた発泡体を実施例1と同じロール間隔で10回通過させたが、気泡膜を完全に破壊できず、23℃の室内に8時間放置しても元の大きさまで復元しなかった。
比較例2
【0032】
エーテルエステル系可塑剤を35重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0033】
得られた発泡体を実施例1と同じロール間隔で7回通過させて気泡膜を破壊し、23℃の室内に1時間放置すると元の大きさまで復元した。得られた連続気泡体は、見掛け密度71kg/m、連続気泡率100%でクッション性に優れていたが、時間と共に可塑剤が表面にブリードしてきて製品として使用できなかった。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明の方法によれば、クッション性に優れた、厚みのあるアクリルゴム連続気泡体を製造できる。本発明の方法によって製造されたアクリルゴム連続気泡体は、家電製品や自動車、建築等のパッキン、シール材等に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルゴム100重量部に可塑剤2〜30重量部、架橋剤及び発泡剤、発泡助剤、カーボンブラック、充填剤を添加混練して加熱、発泡させて発泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させてなるアクリルゴム連続気泡体。
【請求項2】
アクリルゴム100重量部に可塑剤2〜30重量部、架橋剤及び発泡剤、発泡助剤、カーボンブラック、充填剤を添加混練し、密閉金型中に充填して加圧下に加熱後除圧して発泡体を取り出した後、常圧下に加熱して発泡体を得、得られた発泡体を150〜170℃で後架橋させ、次いで機械的に押圧して気泡を連通化させてなるアクリルゴム連続気泡体の製造方法。


【公開番号】特開2011−157499(P2011−157499A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21112(P2010−21112)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】