説明

アクリル樹脂系脆質フィルム

【課題】本発明は、従来より溶液コーティング法で製造されてきたアクリル樹脂系脆質フィルムの欠点を解消するため、カレンダー法で製造するものである。
【解決手段】アクリル系樹脂100重量部に対し、平均粒子径が0.5〜20μmの範囲にある炭酸カルシウム50〜90重量部を含有する樹脂組成物からカレンダー法によって連続的に製膜されたアクリル樹脂系脆質フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂系脆質フィルム、詳しくは、連続的に製膜が可能であり、脆くて裂けやすく、耐候性に優れるアクリル樹脂系脆質フィルムに関するものである。より詳しくは、粘着剤を積層することで耐候性が必要な用途にも採用することが可能な、例えば証紙類、封印ラベルなどのラベルやステッカー類、危険予防標識、商品用マーク類などの各種表示用ステッカー類、コーションラベルに代表される各種改ざん防止用途製品の基材に用いられるアクリル樹脂系脆質フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、脆質フィルムについては数多くの提案がなされている。これらの脆質フィルムは粘着剤を積層しラベル類に加工して用いた際、その脆くて裂けやすいという特性を利用して、各種改ざん防止用途製品の基材として用いられている。
【0003】
例えば、越智らによる特開昭64−079237号公報(特許文献1)には、樹脂100重量部に対し、樹脂と相溶しない平均粒子径10μ以下及び屈折率1.7以下の物質を80−250重量部含有する組成物から製膜された、全光線透過率が30%以上で実質的に透明であるフィルムからなることを特徴とする透明脆質フィルム、が開示されている。これらの公報には、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、樹脂と相溶しない組成物として、架橋によりフィルムベース樹脂との相溶性をなくしたアクリル樹脂の如き有機物質や、炭酸カルシウム、二酸化アルミニウム、二酸化けい素、およびそれら混合物の如き無機物質が挙げられ、製造方法としてキャスティング法、押し出し法、カレンダー法等で製膜することが記載されているが、実施例には塩化ビニル系樹脂に長石を用いてゾルコーティング法で製膜することが開示されているのみで、塩化ビニル系以外の樹脂や、ゾルコーティング法以外での製膜について具体的な記述がない。塩化ビニル系樹脂を用いた際に添加される可塑剤の粘着剤の移行や耐候性に問題があった。
【0004】
松井らによる特開平9−194664号公報(特許文献2)には、(A)塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、(B)アクリル系樹脂20〜200重量部、(C)(イ)平均粒径が5〜20μmの範囲にあり、かつ0.5〜100μmの粒径を有する粒子の集合体から成る溶融シリカ、(ロ)平均粒径が1〜20μmの範囲にあり、かつ0.2〜50μmの粒径を有する粒子の集合体から成る水酸化アルミニウム及び(ハ)平均粒径が1〜20μmの範囲にあり、かつ0.2〜50μmの粒径を有する粒子の集合体から成る硫酸バリウムの中から選ばれた少なくとも1種の充填剤20〜250重量部、(D)可塑剤0〜40重量部及び(E)安定剤0.5〜10重量部を含有する樹脂組成物を製膜して成る透明脆質フィルム、が開示されている。特許文献1と同様に塩化ビニル系樹脂を用いているため、添加される可塑剤の粘着剤の移行や耐候性に問題があった。
【0005】
松井らによる特開平10−182917号公報(特許文献3)には、(A)破断時伸び率が10〜180%のアクリル系樹脂100重量部に対し、(B)(イ)平均粒径が5〜20μmの範囲にあり、かつ0.5〜100μmの粒径を有する粒子の集合体から成る溶融シリカ、(ロ)平均粒径が1〜20μmの範囲にあり、かつ0.2〜50μmの粒径を有する粒子の集合体から成る水酸化アルミニウム、(ハ)平均粒径が1〜20μmの範囲にあり、かつ0.2〜50μmの粒径を有する粒子の集合体から成る硫酸バリウム及び(ニ)平均粒径が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ0.1〜50μmの粒径を有する粒子の集合体から成る炭酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも1種の充填剤10〜70重量部、及び(C)可塑剤0〜30重量部を含有する樹脂組成物を製膜して成るアクリル樹脂系脆質フィルム、が開示されている。また、製法について、キャスティング法、押し出し法、カレンダー法、溶液コーティング法など、いずれの方法を用いても製膜することが開示され、これらの中で、特に生産性及びフィルムの品質などの点から、溶液コーティング法が好適であると記載し、実施例でも溶液コーティング法を採用している。しかしながら、溶液コーティング法は重合体溶液を平板状にキャストして溶剤を蒸発させるか、あるいは単量体を平板状で重合させてフィルムにする方法なので、製造費用が高く、また溶剤蒸発による環境汚染の恐れがあることに加え、生産速度が遅いという問題がある。さらに、無機充填剤が溶剤不溶のため、製膜時の均一性、製造安定性に問題がある。
【0006】
石水らによる特開2008−50530号公報(特許文献4)には、(A)(a−1)アクリルウレタン樹脂30〜70質量%、及び(a−2)極性基含有アルケニル芳香族樹脂及び/又はアクリル樹脂70〜30質量%からなる樹脂成分と、その100質量部当たり、(B)充填剤10〜100質量部を含むことを特徴とする脆質フィルム用樹脂組成物が開示されている。また、製法について、製膜方法に特に限定はなく、例えばキャスティング法、押し出し法、カレンダー法、溶液コーティング法など、いずれの方法を用いても製膜することができ、これらの中で、特に生産性及びフィルムの品質などの点から、溶液コーティング法が好適であると記載し実施例でも溶液コーティング法を採用している。しかしながら、ウレタン系樹脂を用いるため、耐候性及び耐湿性に問題があった。
【0007】
平井らによる特開2008−280441号公報(特許文献5)には、 アクリル系重合体(A)100質量部、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)をアクリル系重合体(A)100質量部に対して20〜90質量部、並びにアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)をアクリル系重合体(A)100質量部に対して0.01〜5質量部を含有するアクリル系樹脂組成物が開示されている。これらの公報には、環境に対する負荷が少なく、柔軟性、成形加工性及び制電性に優れ、得られた成形品を自動車部品、電気・電子部品等の各種用途に広く使用することが記載されている。また、アクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク等の充填材、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、消泡剤、防黴剤、防臭剤、抗菌剤、安定剤、加工助剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、香料、発泡剤、レベリング剤、接着剤、艶消し剤等の各種添加剤を配合することができることが記載されている。さらに成形方法として、カレンダー成形法、射出成形法、Tダイ押出成形法、異型押出成形法、ブロー成形法、真空成形法及びインフレーション成形法を挙げており、これらの中でカレンダー成形法が好ましいことが記載されている。しかしながら、アクリル樹脂系フィルムに炭酸カルシウムを添加することで脆質性を持たせ、各種改ざん防止用途製品の基材に用いられる具体例の記載はない。
【0008】
福田らによる特開2007−21818号公報(特許文献6)には、レーザー光照射により除かれ得る着色樹脂層、該着色樹脂層に積層され、着色樹脂層と視認可能な色差を有する着色破壊層、該着色破壊層に積層された接着剤層からなるレーザー印字可能な積層体であって、着色破壊層がグリコール化合物を含む架橋アクリル系樹脂であり、被着体に接着後剥離すると着色破壊層が破壊する脆質レーザー印字用積層体が開示されている。また、脆性を調節する成分を添加してもよいとされ、脆性を調節する成分としては、ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子; アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ等の有機粒子;等が使用可能と記載されており、含有率は、樹脂に対して10 〜 280体積% 、好ましくは10 〜 200 体積% 、特に好ましくは30 〜 100 体積% 含有する必要があることが記載され、実施例には製膜法としてキャスト法が記載されている。しかしながら、実施例には脆性を調整するために炭酸カルシウムの添加が提示されておらず、キャスト法以外の製法で作られた各種改ざん防止用途製品の基材に用いられる具体例の記載はない。
【0009】
【特許文献1】特開昭64−079237号公報
【特許文献2】特開平9−194664号公報
【特許文献3】特開平10−182917号公報
【特許文献4】特開2008−50530号公報
【特許文献5】特開2008−280441号公報
【特許文献6】特開2007−21818号公報
【発明の開示】
【0010】
本発明は、連続的に製膜が可能で、簡便かつ安価な方法で、脆くて裂けやすいアクリル樹脂系脆質フィルムを、品質、とくに耐候性を有するように製法、処方を制御することで作成することである。
【0011】
本発明者らは、脆質フィルムの問題点を改善するため、アクリル系樹脂100重量部に対し、平均粒子径の範囲が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ0.1〜50μmの粒径を有する粒子の集合体から成る炭酸カルシウム50〜90重量部を含有する樹脂組成物から連続的に製膜されたアクリル樹脂系脆質フィルムにおいて、該アクリル樹脂系脆質フィルムは2〜6本のロールを用いるカレンダー法で製膜され、該ロールの温度がそれぞれ150〜220℃で連続的に製膜されたアクリル樹脂系フィルムを作成することで、耐候性がよく脆質性が適切に制御されたアクリル樹脂系フィルムを提供するものである。さらに、本発明のアクリル樹脂系フィルムを用いることで各種改ざん防止用途製品の各種ラベル類、ステッカー類を提供するものである。
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明は、従来より溶液コーティング法(以下、キャスト法ともいう)で製造されてきたアクリル樹脂系脆質フィルムをカレンダー法で製造するものである。
【0014】
カレンダー法は、キャスト法に比べ、溶剤を使わないので環境に悪影響をおよぼさず、固形分が100%であることから、ロスが少ないという利点もある。また、生産速度を早くすることが可能かつ、厚みを大きくすることも容易である。またエンボスロールを使用することで製膜製品に任意の立体意匠を設置することが容易である。
【0015】
このようなカレンダー法において脆質フィルムを製造するためには、製膜性の点でアクリル樹脂に炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
【0016】
本発明において好適に用いることのできるアクリル樹脂としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が、好ましくは1〜15程度のアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体、これらの単量体2種以上を組み合わせて得られた共重合体、あるいはこれらの単量体1種以上と、共重合可能な他の単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、さらにはブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの共役ジエン系化合物、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物の中から選ばれた1種以上の単量体との共重合体などが挙げられる。
【0017】
本発明において好適に用いることのできる炭酸カルシウムとしては、平均粒子径の範囲が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ0.1〜50μmの粒子径であるものが好ましい。炭酸カルシウムの粒径が上記範囲内であれば、アクリル樹脂に含有させたときの分散性が良好であり、アクリルフィルムの製膜性も良好であり好ましい。
【0018】
本発明において好適に用いることのできる炭酸カルシウムの量は、アクリル樹脂100重量部に対し、50〜90重量部が好ましい。50重量部以上であれば、十分な脆性が得られるので好ましく、90重量部以下であれば、良好な製膜性が得られるので好ましい。脆性と製膜性の点で、70〜90重量部であることが更に好ましく、70〜80重量部であることが最も好ましい。
【0019】
本発明において用いられるカレンダー法は、2〜6本のロールを用い、そのロールの温度が150〜220℃に設定されていることが良好に製膜することができるので好ましい。
【0020】
本発明においては、炭素数が6〜28の高級アルコールをアクリル樹脂に対して、アクリル樹脂に3〜30重量部含有させるのが好ましい。3重量部以上であれば、カレンダーロールからの良好な剥離性が得られるので好ましく、30重量部以下であれば、高級アルコールのブリード等がなく、良好な印刷性が得られるので好ましい。
剥離性と印刷性の点で、5〜15重量部であることが更に好ましく、7.5〜12.5重量部であることが最も好ましい。
【0021】
本発明において好適に用いることのできる高級アルコールとしては、オクチルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、イコシルアルコール、ヘンイコシルアルコール、ドコシルアルコール、トリコシルアルコール、テトラコシルアルコール、ペンタコシルアルコール、ヘキサコシルアルコール、ヘプタノシルアルコール、オクタコシルアルコール等がある。
【0022】
本発明において好適に用いられる炭酸カルシウムは、樹脂への分散性が良く、ピンホール等の外観欠点が少ない脆質フィルムが得られるという点で、脂肪酸、樹脂酸、アミン類をはじめ各種界面活性剤、リグニン、脂肪酸エステル、シランカップリング剤などの有機物で表面処理されていることが好ましい。
【0023】
本発明において好適に用いることのできる炭酸カルシウムの吸油量は、15〜35ml/100gであることが好ましい。吸油量が上記範囲内であれば、適度な脆性と製膜性が得られ、炭酸カルシウムの充填量が多すぎることも無いので好ましい。
【0024】
本発明においては、脆性と製膜性と充填量の点で、炭酸カルシウムの吸油量は15〜25ml/100gであることが更に好ましく、18.5〜22ml/100gであることが最も好ましい。
【0025】
本発明において用いることのできる炭酸カルシウムの比表面積は5000〜25000cm/gであることが好ましい。比表面積が上記範囲内であれば、適度な脆性と製膜性が得られ、炭酸カルシウムの充填量が多すぎることも無いので好ましい。
【0026】
本発明においては、脆性と製膜性と充填量の点で、炭酸カルシウムの比表面積は10000〜20000cm/gであることが更に好ましく、12000〜17000cm/gであることが最も好ましい。
【0027】
本発明においては、加工性を良くするために、アクリル系加工助剤を用いることができる。
【0028】
本発明において好適に用いることのできるアクリル系加工助剤としては、ジエン系またはアクリル酸エステル系のゴム状重合体にビニル基含有化合物をグラフト重合させて得られたグラフト共重合体とメタクリル酸メチルを主成分とした硬質非弾性共重合体及びガラス転移温度が10度以下の軟質共重合体からなるコアシェル共重合体とをエマルジョン状態で混合した後に凝固または噴霧乾燥によって得られる共重合体混合物を挙げることができる。
【0029】
本発明に用いることのできるアクリル系加工助剤としては、メタブレンP−570A、P−501A、P−550A、P−551A、P−530A、P−531、P−700、P−710(三菱レイヨン株式会社製)、カネエースPA−10、PA−20、PA−30、PA−40、PA−50、PA−60(株式会社カネカ製)等を挙げることができ、分子量、ゴム弾性の点から、特にP−550A、P−551A、PA−20が好ましい。
【0030】
本発明においては、脆質フィルムの引き裂き強度が40〜200gfであることが好ましい。40gf以上であれば、使用前に破壊される等の意図しない破壊が起きないので好ましく、200gf以下であれば十分な改ざん防止性が得られるので好ましい。
【0031】
本発明においては、前記引き裂き強度の上限を150gf以下とすることで、例えば、接着力が弱い粘着剤を用いた場合でも十分な改ざん防止性が得られるので好ましい。
【0032】
本発明においては、得られるフィルムの光線透過率を300〜800nmの波長において20%以下とすることが、印刷した際に印刷情報が見やすいので好ましい。
【0033】
本発明においては、得られるフィルムの厚みを30〜80μmとするのが、
製膜性と脆性の点で好ましい。
【0034】
本発明のアクリル樹脂系脆質フィルムには粘着剤を積層してアクリル樹脂系脆質ラベルとすることができる。
【0035】
本発明において好適に用いることのできる粘着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、フェノール系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ゴム系接着剤等を挙げることができ、特にアクリル系粘着剤が使用環境に対し適合できる範囲の広さの観点から好ましい。
【0036】
本発明に用いる炭酸カルシウムの平均粒径は、例えば日機装株式会社製粒度分布測定装置MT3000シリーズを用いてレーザー回折散乱法にて計測することができる。
【0037】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。
【0038】
実施例1 75Lヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製 FM−75)を用いて、アクリルエラストマー含有アクリル樹脂(株式会社カネカ製、商品名 カネエース MC−732)100重量部、充填剤として表面処理軽質炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製、商品名WS−810)73重量部、酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、商品名 イルガノックス1010)0.4重量部、内滑剤としてステアリルアルコール(花王株式会社、商品名 カルコール8688)8重量部、顔料として酸化チタン系顔料(石原産業株式会社、商品名 タイペークCR−90)30重量部、外滑剤としてアクリル系滑剤(三菱レイヨン株式会社、商品名 メタブレンL−1000)2.0重量部及びマグネシウムステアレート(勝田化工株式会社、商品名 EM−100)0.2重量部を混合しアクリル樹脂組成物を得た。
【0039】
上記アクリル樹脂組成物を、逆L型4本カレンダーロール(ロールサイズ直径203.2mm×幅400mm)を用い、ロール回転速度は7〜15rpm、ロール間隙は製膜後のフィルム厚みが50μmになるように設定し、アクリル樹脂組成物を2本ロールにて10分間溶融混練後、製膜し、アクリル樹脂フィルムとした。カレンダーロールの設定温度は、No1ロール温度181℃、
No2ロール温度179℃、No3ロール温度175℃
No4ロール温度170℃であり、製膜中は放射温度計をもちいて樹脂およびロールが設定温度と5℃以上のずれがないことを確認した。製膜は連続かつ安定して行うことができ、得られたフィルムを目視確認したところ、フィルム表面が滑らかであり、フローマークのような外観異常は見られなかった。
【0040】
アクリル系粘着剤(日本カーバイド工業株式会社製、商品名 KP−1839)100重量部と架橋剤(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名 スミジュールN−75)0.032重量部との混合物に、アクリル系粘着剤(日本カーバイド工業株式会社製、商品名 PE−123)100重量部、架橋剤(日本ポリウレタン株式会社製、商品名 コロネートL−45E)3.37重量部、粘着付与剤(荒川化学工業株式会社製、タマノル803L)20.4重量部を混合、撹拌したものを、剥離紙(リンテック株式会社製、商品名E−KB)にドライ厚み25μmになるようにコーティング、乾燥し、この粘着剤面を実施例1で得られたアクリル樹脂フィルムの片面に貼り合わせ、脆質性評価試験片とした。
【0041】
比較例1
炭酸カルシウムの添加量を95.0重量部とした以外は実施例と同様にしてアクリル樹脂組成物を得た。得られたアクリル樹脂組成物を、逆L型4本カレンダーロールを用いてカレンダー製膜を試みたが、カレンダーロールで樹脂組成物が混練されないため、製膜が連続的にできず、フィルムを得ることができなかった。
【0042】
(製品評価)
得られたフィルムを以下の項目に従って評価した。
【0043】
(1) 引き裂き強度
得られたフィルムをJIS K7128−3に定める方法に準拠し引き裂き強度を評価した。直角形引裂試験片は5個で行い、平均値を測定値とした。実施例1で得られたフィルムを評価したところ、JIS K7128−3に定めるところの縦の引き裂き強度は80gf、横の引き裂き強度は49gfであった。
【0044】
(2)光線透過率
得られたフィルムを株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U−4100を用いて波長300〜800nmの光線透過率を測定した。実施例1で得られたフィルムを評価したところ、波長300nmで0%、波長800nmで15.9%であった。
【0045】
(3)脆質性評価
得られたフィルムにアクリル系粘着剤を貼着し、脆質性評価試験片とした。試験片として1.5cm×5.0cmに切り出し、白色塗装板にローラーを用いて貼付後、23℃雰囲気に72時間放置した。その後カッターナイフを用いて試験片を白色塗装板からの剥離を試みた。上記試験をN=10で行った。実施例1で得られたフィルムの粘着剤積層品を評価したところ、10個の試験片全てで、剥離時に試験片の破壊が起き、試験片の再貼付、再利用ができなかった。
【0046】
(4)印刷性、インク密着性評価
得られたフィルムに、300メッシュのスクリーンを用い、黒インク(日本カーバイド工業株式会社製商品名ハイエスSPインキ SP−4911)を全面印刷し、通風しながら3時間乾燥させた。印刷した試験片の外観を確認した。さらに、試験片にカッターナイフを用い碁盤目状にスリットして100個のマスを作り、粘着テープを貼付後、テープを剥がしインクの密着性を評価した。実施例1で得られたフィルムの粘着剤積層品を評価したところ、印刷後の外観はスポット状のはじきが確認されず良好であった。またインク密着性はテープに貼着した部位は5個以下であり良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂100重量部に対し、平均粒子径が0.5〜20μmの範囲にある炭酸カルシウム50〜90重量部を含有する樹脂組成物からカレンダー法によって連続的に製膜されたアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項2】
該アクリル樹脂系脆質フィルムは2〜6本のロールを用いるカレンダー法で製膜され、該ロールの温度がそれぞれ150〜220℃で連続的に製膜されたことを特徴とする請求項1記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項3】
該炭酸カルシウム70〜80重量部を含有する樹脂組成物から連続的に製膜されることを特徴とする請求項1または2記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項4】
炭素数が6〜28の高級アルコールをアクリル系樹脂の3〜30重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項5】
該炭酸カルシウムの吸油量が15〜35ml/100gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項6】
該炭酸カルシウムの比表面積が5000〜25000cm/gであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項7】
JIS K7128−3に定める引き裂き強度が40〜200gfであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項8】
波長3 0 0 〜 8 0 0 nmの各波長での光線透過率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項9】
厚みが30〜80μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のアクリル樹脂系脆質フィルム。

【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のアクリル樹脂系脆質フィルムに粘着剤が積層されたラベル。


【公開番号】特開2011−32297(P2011−32297A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176702(P2009−176702)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】