説明

アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂及びその製造方法

【課題】耐衝撃性と成形品の外観に優れたアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】水性媒体中でスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤の存在下に下記第1重合工程及び下記第2重合工程をこの順で行うことによってアクリル系ゴム質重合体(a)を得た後、該アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含有するビニル系単量体を重合する。第1重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(m1)、及び、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物(m2)を含む単量体(I)を重合する工程。第2重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(n1)、及び、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物(n2)を含む単量体(II)を重合する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性と成形品の外観に優れたアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂、特にABS樹脂はその優れた剛性、耐衝撃性、耐熱変形性等を有するため、各種雑貨、自動車の内外装材、ジャー炊飯器、電子レンジ、掃除機等の家電製品のハウジング及び部品、電話機、ファクシミリ等のOA機器のハウジング及び部品などに広く使用されている。近年、ABS樹脂の欠点である耐候性を改良するために、ABS樹脂のゴム成分を光や熱に対し不安定な二重結合を有するブタジエンゴムから二重結合をほとんど有しないアクリル系ゴムに変えたAAS樹脂が開発されている。このアクリル系ゴムは、光や熱に対し安定であるが、ブタジエンゴムの様なグラフト活性点をほとんど有していないため十分なグラフト構造をとりにくい。そのため、顔料で着色した場合、特に成形品のゲート部、ウェルド部等の樹脂流動時のせん断速度の高い部位や樹脂流動方向が異なる部位では発色性が正常部位と著しく異なり、色むらが生ずるという欠点があった。そこで、発色性を改良するために、例えば特殊な架橋剤を共重合する方法、染料を使用する方法、あるいはブタジエンゴムとアクリル系ゴムを併用する方法(特許文献1、2)が提案されていたが、これらの方法では耐衝撃性が低下する、成形時に金型が汚染される、耐候性が低下する等の問題があった。
【0003】
一方、AAS樹脂に耐衝撃性を付与する方法としては、アクリル系ゴム粒子の大きさを大きくする方法が提案されているが、工業的に大粒子径のゴム粒子を安定して得ることは難しく、例えば、小粒子径のゴム粒子を酸基含有ラテックスで結合する方法やpH調整と剪断力により肥大化させる方法が提案されている(特許文献3、4)。また、上記肥大化を行わずに小粒子径と大粒子径のバイモーダルなゴム粒子径分布を持つアクリル系ゴムを得る方法(特許文献5)も知られているが、いずれの方法も重合時に多くの乳化剤を必要とするため、アクリル系ゴム強化樹脂を含む樹脂組成物を成形した際に、成形品の色むらや漆黒性が低下し、成形品の外観が損なわれる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−54729号公報
【特許文献2】特開平3−7753号公報
【特許文献3】特開平6−1814号公報
【特許文献4】特開平11−116767号公報
【特許文献5】特開2003−335827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐衝撃性と成形品の外観に優れたアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含有するビニル系単量体を重合して得られるアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂において、該アクリル系ゴム質重合体(a)として、水性媒体中でスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)の存在下に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物及び特定の極性基含有不飽和化合物を含有する単量体(I)を重合する第1重合工程と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物及び分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物(以下、「多官能性不飽和化合物」ともいう)を含有する単量体(II)を重合する第2重合工程とを、この順で行うことによって得られたものを用いることで、耐衝撃性と成形品の外観に優れたアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含有するビニル系単量体を重合して得られるアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂であって、該アクリル系ゴム質重合体(a)が、水性媒体中で、下記単量体(I)と下記単量体(II)の合計100質量部に対し0.01〜4質量部のスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)の存在下に下記第1重合工程及び下記第2重合工程をこの順で行うことによって得られたものであるアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂を提供する。
【0008】
第1重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(m1)50〜99.99質量%と、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物(m2)0.01〜20質量%と、上記成分(m1)及び上記成分(m2)と共重合可能な他の化合物(m3)0〜49.99質量%〔但し、上記成分(m1)、上記成分(m2)及び上記成分(m3)の合計は100質量%である。〕とからなる単量体(I)を重合する工程。
第2重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(n1)50〜99.99質量%と、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物(n2)0.01〜5質量%と、上記成分(n1)及び上記成分(n2)と共重合可能な他の化合物(n3)0〜49.99質量%〔但し、上記成分(n1)、上記成分(n2)及び上記成分(n3)の合計は100質量%である。〕とからなる単量体(II)を重合する工程。
ただし、上記単量体(I)の使用量は、上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計100質量部に対し、1〜50質量部である。
【0009】
また、本発明は、他の局面によれば、水性媒体中で上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計100質量部に対し0.01〜4質量部のスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)の存在下に上記第1重合工程及び上記第2重合工程をこの順で行うことによってアクリル系ゴム質重合体(a)を得た後、該アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含有するビニル系単量体を重合することを特徴とする、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水性媒体中でスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)の存在下に上記第1重合工程及び上記第2重合工程をこの順で行うことによって得られたアクリル系ゴム質重合体(a)を、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂のゴム成分として使用することとしたので、耐衝撃性と成形品の外観に優れたアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び/又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0012】
第1重合工程
本発明においてアクリル系ゴム質重合体(a)を製造するための上記第1重合工程は、乳化剤としてスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)の存在下に、水性媒体中で、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(m1)と、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物(m2)と、所望により上記成分(m1)及び上記成分(m2)と共重合可能な他の化合物(m3)とからなる単量体(I)を乳化重合する工程である。重合に際しては、必要に応じて、重合開始剤、分子量調節剤、電解質等を使用することができる。尚、乳化重合の具体的方法は、公知の方法に準拠することができる。
【0013】
上記第1重合工程における(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(m1)には、アクリル酸アルキルエステル化合物とメタクリル酸アルキルエステル化合物が含まれ、代表的には、アルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。また、メタクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらの化合物のうち、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。また、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(m1)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記第1重合工程における極性基含有不飽和化合物(m2)とは、分子中に1個の炭素−炭素二重結合を持ち、さらに極性基を含有する化合物をいう。該極性基含有不飽和化合物(m2)としては、不飽和酸、不飽和酸無水物、マレイミド系化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸アミド、アミノ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、及びオキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。尚、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
上記不飽和酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。また、上記マレイミド系化合物としては、アルキル基の炭素数が1〜4のN−アルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0016】
上記エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。上記不飽和カルボン酸アミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。また、上記アミノ基含有不飽和化合物としては、アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等が挙げられる。
【0017】
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。また、上記オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。
【0018】
これらの化合物のうち、不飽和酸及び/又はヒドロキシル基含有不飽和化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及び2−ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。尚、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記第1重合工程における上記成分(m1)及び上記成分(m2)と共重合可能な他の化合物(m3)としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物等が挙げられる。尚、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族モノビニル化合物が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記シアン化ビニル化合物の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記化合物以外にも、上記成分(m3)としては、例えば、アクリルアマイド、メタクリルアマイド、塩化ビニリデン、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキルビニルエーテル等が挙げられる。これらの単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ただし、上記成分(m3)は、後述する分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物(n2)を除く。
【0022】
上記第1重合工程における各成分の使用量は、成分(m1)/成分(m2)/成分(m3)=50〜99.99質量%/0.01〜20質量%/0〜49.99質量%であり、好ましくは成分(m1)/成分(m2)/成分(m3)=80〜99.9質量%/0.1〜10質量%/0〜19.9質量%、より好ましくは成分(m1)/成分(m2)/成分(m3)=90〜99.9質量%/0.1〜5質量%/0〜9.9質量%〔但し、上記成分(m1)、上記成分(m2)及び上記成分(m3)の合計は100質量%である。〕である。
【0023】
上記成分(m1)、(m2)及び(m3)の使用量を上記範囲とすることで、凝固様態、成形品の衝撃強度及び外観が十分となる。
【0024】
上記スルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)は、第1重合工程において乳化剤として用いられる成分(以下「成分(b)」ともいう)である。
第1重合工程の乳化剤として上記スルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)以外を用いた場合、アクリル系ゴム質重合体(a)の重合様態が劣る。
上記スルホン酸系界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。また、硫酸エステル系界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。これらのうち、アルカンスルホン酸塩及びアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
上記成分(b)の使用量は、上記アクリル系ゴム質重合体(a)の重合に使用する上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計を100質量部として、0.01〜4質量部、好ましくは0.02〜3質量部、さらに好ましくは0.04〜2.5質量部である。上記成分(b)の使用量が0.01質量部未満では、アクリル系ゴム質重合体(a)の重合様態が不十分となる。一方、成分(b)の使用量が4質量部を超えると、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の凝固性、得られる成形品の衝撃強度及び外観が不十分になる。
【0026】
また、上記成分(b)の添加方法としては、例えば、全量一括仕込み、または一部を添加した後、その残りを連続的若しくは断続的に添加する方法を使用することができる。
【0027】
上記重合開始剤としては、従来からこの種のゴムを製造する際に使用されている過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性重合開始剤、これらと含糖ピロリン酸処方もしくはスルホキシレート処方等の還元剤を組み合わせたレドックス系の開始剤を、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。上記重合開始剤のうち、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが好ましい。
【0028】
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計を100質量部とした場合、通常、0.01〜3質量部、好ましくは0.03〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.5質量部、特に好ましくは0.05〜0.3質量部である。上記重合開始剤の使用量が0.01質量部未満では、ゴムの重合状態が不十分になる可能性がある。一方、重合開始剤の使用量が3質量部を超えると、成形品の外観及び衝撃強度が不十分になる可能性がある。
【0029】
また、上記重合開始剤の添加方法としては、例えば、全量一括仕込み、または一部を添加した後、その残りを連続的、若しくは断続的に添加する方法、重合の初めから連続的に添加する方法を採用することができる。
【0030】
上記分子量調節剤としては、例えば、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等、従来から使用されているものを使用することができる。上記分子量調節剤のうち、t−ドデシルメルカプタンが好ましい。
上記分子量調節剤の使用量は、上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計を100質量部とした場合、通常、0〜3質量部、好ましくは0〜1質量部である。上記分子量調節剤の使用量が3質量部を超えると、成形品の衝撃強度が不十分になる可能性がある。
また、上記分子量調節剤の添加方法としては、例えば、全量一括仕込み、または一部を添加した後、その残りを連続的若しくは断続的に添加する方法、重合の初めから連続的に添加する方法を採用することができる。
【0031】
上記電解質は、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等、従来から使用されているものを使用することができ、これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。上記電解質のうち、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウムが好ましい。
上記電解質の使用量は、上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計を100質量部とした場合、通常、0.01〜1.25質量部、好ましくは0.03〜1.0質量部、より好ましくは0.05〜0.75質量部である。上記電解質の使用量が0.01質量部未満の場合、ゴムの重合状態が不十分になる可能性がある。一方、電解質の使用量が1.25質量部を超えると、ゴムの重合状態が不十分になる可能性がある。
また、上記電解質の添加方法としては、例えば、全量一括仕込み、または一部を添加した後、その残りを連続的若しくは断続的に添加する方法、重合の初めから連続的に添加する方法を採用することができる。
【0032】
乳化重合の際に用いられる水は、上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計を100質量部に対し、好ましくは100〜300質量部、より好ましくは120〜200質量部である。水が少なすぎると、アクリル系ゴム質重合体ラテックスの粘度が上昇し、一方、多すぎると、経済的に不利で好ましくない。水の添加方法としては、全量を一括仕込み、または一部を添加した後、その残りを連続的若しくは断続的に添加する方法等を採用することができる。
【0033】
上記第1重合工程の重合温度は、通常65〜98℃、好ましくは、70〜95℃である。また重合時間は、通常0.1〜2時間である。
【0034】
上記第1重合工程における重合溶液のpHは、特に規定はないが、通常2〜12である。重合溶液のpHが上記範囲内にあると、ゴムの重合状態の点から好ましい。
【0035】
上記第1重合工程は、通常重合転化率が85%以上となった時点で終了し、90%以上となった時点で終了することが好ましく、95%以上となった時点で終了することがより好ましい。上記重合転化率が85%未満になると、得られるゴムの粒子径が小さすぎる可能性がある。上記第1重合工程終了時のアクリル系ゴム質重合体ラテックスの体積平均粒子径は、40〜120nmが好ましい。
【0036】
第2重合工程
次に、上記第2重合工程において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(n1)と、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物(n2)と、所望により上記成分(n1)及び上記成分(n2)と共重合可能な他の化合物(n3)とからなる単量体(II)を重合する。
この第2重合工程は、上記第1重合工程で得られたアクリル系ゴム質重合体ラテックスの存在下に、上記単量体(II)を重合させることにより行うことができる。
【0037】
上記第2重合工程における(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(n1)としては、上記第1重合工程における上記成分(m1)と同様のものを用いることができる。
【0038】
上記第2重合工程における不飽和化合物(n2)は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物をいう。該成分(n2)の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の2官能性芳香族ビニル化合物;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アクリル酸アリル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジメタクリレート、メタクリル酸アリル等の2官能性(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の3官能性(メタ)アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の4官能性(メタ)アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート等の5官能性(メタ)アクリル酸エステル;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の6官能性(メタ)アクリル酸エステル;(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル等が挙げられる。これらの化合物のうち、メタクリル酸アリル及びトリアリルシアヌレートが好ましい。また、これら不飽和化合物(n2)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記第2重合工程における、上記成分(n1)及び上記成分(n2)と共重合可能な他の化合物(n3)は、上記第1重合工程における成分(m3)と同様のものを用いることができる。
ただし、上記成分(n3)は、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物(m2)を除く。
【0040】
上記第2重合工程における各成分の使用量は、成分(n1)/成分(n2)/成分(n3)=50〜99.99質量%/0.01〜5質量%/0〜49.99質量%であり、好ましくは成分(n1)/成分(n2)/成分(n3)=80〜99.9質量%/0.1〜3質量%/0〜19.9質量%、より好ましくは成分(n1)/成分(n2)/成分(n3)=90〜99.9質量%/0.1〜2質量%/0〜9.9質量%〔但し、上記成分(n1)、上記成分(n2)及び上記成分(n3)の合計は100質量%である。〕である。
【0041】
上記成分(n1)、(n2)及び(n3)の使用量を上記範囲とすることで、凝固様態、成形品の衝撃強度及び外観が十分となる。
【0042】
上記第2重合工程の重合方法は、好ましくは、上記第1重合工程におけるそれと同様にして進められる。その場合、通常、同じ反応系において進めることができるが、別途、新たな反応系を構築して重合を進めることもできる。
【0043】
上記第2重合工程においては、上記第1重合工程で得られたアクリル系ゴム質重合体ラテックスの存在下に、上記単量体(II)の全量を一括添加して重合してもよいし、上記単量体(II)を分割して又は連続的に添加しながら重合を行ってもよい。重合開始剤及び連鎖移動剤の使用方法については、上記第1重合工程における方法と同様とすることができる。
上記第2重合工程を第1重合工程と同じ反応系において進める場合は、第1重合工程で得られた重合反応液に上記単量体(II)を上記の要領で添加して重合を行えばよく、水性媒体、スルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤等を新たに添加する必要はない。
上記第2重合工程を、別途、新たな反応系を構築して進める場合は、上記第1重合工程で得られたアクリル系ゴム質重合体ラテックスを水性媒体に懸濁させ、スルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)を添加して反応系を構築した後、上記単量体(II)を上記の要領で添加して重合を行えばよい。この場合、水や成分(b)の添加量は、上記第1重合工程における場合と同様であり、また、必要に応じて、重合開始剤、分子量調節剤、電解質等を上記第1重合工程における場合と同様に添加することができる。
【0044】
上記第2重合工程の重合温度は、通常65〜98℃、好ましくは、70〜95℃である。また重合時間は、通常0.5〜4時間である。
【0045】
上記第2重合工程における重合溶液のpHは、特に規定はないが、通常2〜12である。重合溶液のpHが上記範囲内にあると、ゴムの重合状態の点から好ましい。
【0046】
上記第2重合工程は、通常重合転化率が85%以上となった時点で終了し、90%以上となった時点で終了することが好ましく、95%以上となった時点で終了することがより好ましい。上記重合転化率が85%未満になると、得られるゴムの粒子径が小さすぎる可能性がある。上記第2重合工程終了時のアクリル系ゴム質重合体ラテックスの体積平均粒子径は、通常50〜300nm、好ましくは60〜300nm、より好ましくは70〜300nm、特に好ましくは80〜300nmである。
【0047】
第1重合工程及び第2重合工程における単量体(I)及び単量体(II)の使用量は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、1〜50質量%及び50〜99質量%、好ましくは3〜40質量%及び60〜97質量%、さらに好ましくは5〜35質量%及び65〜95質量%である。各単量体単位の使用量を上記範囲とすることで、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の凝固性、得られる成形品の外観及び衝撃強度が良好となる。
【0048】
上記第1重合工程と第2重合工程を経ることにより、本発明のアクリル系ゴム質重合体(a)が得られる。
【0049】
上記アクリル系ゴム質重合体(a)のゲル含量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは70〜99質量%、更に好ましくは80〜97質量%である。ゲル含量が70質量%未満では、成形品の衝撃強度及び/又は外観が不十分となる可能性がある。
尚、上記ゲル含量は、以下の方法により求めることができる。まず、アクリル系ゴム質重合体(a)の1グラムをトルエン20mlに投入し、攪拌機を用い、1,000rpmで2時間攪拌する。その後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で1時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分を秤量(質量をWグラムとする。)し、下記式により算出する。
ゲル含量(質量%)=〔W(g)/1(g)〕×100
尚、ゲル含量は、ゴム質重合体の製造時に、使用する単量体成分の種類及び量、分子量調節剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜選択することにより調整される。
【0050】
上記アクリル系ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径は、通常50〜300nm、好ましくは60〜300nm、より好ましくは70〜300nm、特に好ましくは80〜300nmである。体積平均粒子径が上記範囲外になると、得られる成形品の衝撃強度、外観が不十分になる場合がある。
【0051】
上記アクリル系ゴム質重合体粒子の体積平均粒子径および粒子径分布は、HONEYWELL社製の「マイクロトラックUPA150」により、室温で測定した。
【0052】
グラフト重合工程
かくして得られたアクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含有するビニル系単量体をグラフト重合することにより、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂を製造することができる。
芳香族ビニル化合物を用いることで、本発明のゴム強化熱可塑性樹脂の加工性を向上させることができ、シアン化ビニル単量体を用いることで耐薬品性、耐衝撃性及び極性を有する重合体との相溶性等を向上させることができる。芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物としては、アクリル系ゴム質重合体(a)の製造で用いた上記成分(m3)として例示したものと同じものを使用することができる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンが、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリルが好ましい。
上記ビニル系単量体は、所望により、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系単量体を含むこともできる。かかる他のビニル系単量体としては、特に限定されず、例えば、アクリル系ゴム質重合体(a)の原料として例示した(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物に加え、不飽和酸、不飽和酸無水物、マレイミド系化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸アミド、アミノ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、及びオキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。
尚、これらのビニル系単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
上記芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物と共重合可能な他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物及びマレイミド系化合物が好ましく用いられる。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を用いると、耐傷付性、外観を向上させることができる。また、マレイミド系化合物を用いることで耐熱変形性を向上させることができる。尚、マレイミド系化合物単位を含有するゴム強化熱可塑性樹脂を製造する方法としては、上記マレイミド系化合物を用いる以外に、例えば、無水マレイン酸を共重合させ、後イミド化によりマレイミド系化合物単位を導入することができる。
【0054】
上記ビニル系単量体の各成分の使用量は、配合される単量体の合計を100質量%としたとき、好ましくは芳香族ビニル化合物15〜95質量%、シアン化ビニル化合物5〜40質量%、共重合可能な他のビニル系単量体0〜45質量%、より好ましくは芳香族ビニル化合物35〜90質量%、シアン化ビニル化合物10〜35質量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜30質量%である。
【0055】
上記ゴム強化熱可塑性樹脂に用いられる上記アクリル系ゴム質重合体(a)及び上記ビニル系単量体の使用量の好ましい組み合わせは、これらの合計を100質量%とした場合、上記アクリル系ゴム質重合体(a)が5〜80質量%及び上記ビニル系単量体が20〜95質量%、より好ましくは上記アクリル系ゴム質重合体(a)が5〜70質量%及び上記ビニル系単量体が30〜95質量%、更に好ましくは上記アクリル系ゴム質重合体(a)が10〜60質量%及びビニル系単量体が40〜90質量%である。上記アクリル系ゴム質重合体(a)の使用量が少なすぎるかあるいは上記ビニル系単量体の使用量が多すぎると、成形品の衝撃強度が不十分となる可能性がある。一方、上記アクリル系ゴム質重合体(a)の使用量が多すぎるかあるいは上記ビニル系単量体使用量が少なすぎると、成形品の表面外観及び硬度が不十分となる可能性がある。
【0056】
上記グラフト重合工程は、上記アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、上記ビニル単量体の全量を投入してグラフト重合を行ってもよいし、上記ビニル系単量体を分割して又は連続的に添加しながらグラフト重合を行ってもよい。
【0057】
上記グラフト重合工程の重合温度は、通常40〜80℃、好ましくは、50〜75℃である。また重合時間は、通常4〜8時間である。
【0058】
上記グラフト重合工程における重合溶液のpHは、特に規定はないが、通常8〜12、好ましくは、9〜11である。重合溶液のpHが上記範囲内にあると、グラフト重合の安定性の観点から好ましい。
【0059】
上記グラフト工程は、通常重合転化率が85%以上となった時点で終了し、好ましくは90%以上となった時点で終了する。上記重合転化率が85%未満の場合は、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の凝固性、得られる成形品の外観及び衝撃強度が不十分となる可能性がある。
【0060】
アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体を乳化重合することにより得られたラテックスからアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂を取り出すには、通常、凝固剤を添加することにより行われる。その後、凝固したアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂は、水洗、乾燥することによって、均一な粉体となる。尚、上記凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩、硫酸、塩酸、酢酸等の酸等が挙げられる。
【0061】
上記アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂のグラフト率、即ち、アクリル系ゴム質重合体(a)にグラフトしたビニル系単量体の割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10〜200質量%、更に好ましくは10〜150質量%である。グラフト率が小さすぎると、成形品の表面外観性が不十分に、一方、大きすぎると耐衝撃性が不十分になる可能性がある。上記グラフト率は、上記アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂を重合するときに使用する重合開始剤、乳化剤、分子量調節剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を適宜調節することにより容易に制御することができる。
【0062】
上記グラフト率の測定は、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の一定量(x)を、アセトニトリルに投入し、振とう機で2時間振とうし、遊離の(共)重合体を溶解させ、遠心分離器を用いてこの溶液を23,000rpmで1時間遠心分離して得た不溶分を、真空乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、不溶分(y)を得て、下記式(1)よりグラフト率を算出した。

グラフト率(質量%)=[(y−x中のゴム量)÷x中のゴム量]×100…(1)
尚、x中のゴム量は、重合処方及び重合転化率から計算により求めることもできるし、xをIR分析することにより求めることもできる。
【0063】
上記アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂のアセトニトリル可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、通常0.1〜2.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/g、さらに好ましくは0.3〜0.8dl/gである。該固有粘度がこの範囲内であることは、成形加工性、衝撃強度及び外観の観点から好ましい。該固有粘度[η]は、上記アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂を重合するときに使用する重合開始剤、乳化剤、分子量調節剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を適宜調節することにより容易に制御することができる。
【0064】
上記アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂のアセトニトリル可溶分の固有粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂のアセトニトリル可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、固有粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
【0065】
本発明のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を配合して使用することができる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、MAS樹脂、共重合成分にα−メチルスチレン、フェニルマレイミド等を用いた耐熱性AS樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、共重合成分にα−メチルスチレン、フェニルマレイミド等を用いた耐熱性ABS樹脂、MABS樹脂、AES樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド類、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
上記他の熱可塑性樹脂の配合量は、上記アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜100質量部である。上記他の熱可塑性樹脂の配合量が少なすぎると、その含有効果が十分発揮されない可能性がある。
【0067】
本発明のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂は更に、無機充填剤、金属充填剤、補強剤、可塑剤、相溶化剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、滑剤、難燃剤等の各種樹脂添加剤を、適宜含有することができる。
【0068】
本発明のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂に他の熱可塑性樹脂または各種樹脂添加剤を混合する場合、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、及びロール等の混練機等によって樹脂を溶融混練することにより行われる。このとき、混練は、各成分を一括練りしても、多段添加式で混練してもよい。
【0069】
本発明のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂またはこれを含む組成物は、射出成形法、シート押出成形法、真空成形法、異形押出成形法、圧縮成形法、中空成形法、差圧成形法、ブロー成形法、発泡成形法、ガス注入成形法等、公知の各種成形法によって所定形状の成形品とされ、得られた成形品は、優れた耐衝撃性、耐候性、良好な表面外観の要求されるOA・家電製品、電気・電子分野、雑貨分野、サニタリー分野、車輌用途等の各種パーツ、シャーシ、ハウジング材等に使用することができる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、下記実施例のみに限定されるものではない。尚、以下の例において、部及び%は特に断らない限り、質量基準である。
【0071】
1.評価方法
本実施例において用いられる各種評価方法は、以下の通りである。
(1)重合様態
重合時のラテックスの様態については以下の基準にて表示した。
○:ラテックス中に凝集物がほとんど存在しない。
△:ラテックス中に凝集物が見られるが、その後の工程は実施可能である。
×:ラテックス中の凝集物が多量であり、その後の工程は実施不可能である。
【0072】
(2)アクリル系ゴム質重合体粒子の粒子径の測定
アクリル系ゴム質重合体ラテックス中のアクリル系ゴム質重合体粒子の体積平均粒子径は、HONEYWELL社製の「マイクロトラックUPA150」を用い、室温で測定した。単位はnmである。
【0073】
(3)ゴム強化熱可塑性樹脂ラテックスの凝固様態
凝固時のスラリー(水、樹脂粉体の混合物)の様態については以下の基準にて表示した。
○:粗大粒子の形成や、凝固不十分によるスラリーの濁りがみられない。
△:粗大粒子の形成や、凝固不十分によるスラリーの濁りが多少みられる。
×:粗大粒子の形成や、凝固不十分によるスラリーの濁りが顕著にみられる。
【0074】
(4)グラフト率
ゴム強化樹脂の一定量(x)を、アセトニトリルに投入し、振とう機で2時間振とうし、遊離の(共)重合体を溶解させ、遠心分離器を用いてこの溶液を23,000rpmで1時間遠心分離して得た不溶分を、真空乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、不溶分(y)を得て、下記よりグラフト率を算出した。x中のゴム量は、いずれも、重合転化率が98%以上と高かったため、重合転化率を100%とみなし、重合処方から計算により求めた。
グラフト率(%)=[(y−x中のゴム量)÷x中のゴム量]×100
【0075】
(5)固有粘度
上記グラフト率測定において分離したアセトニトリル可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、固有粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
【0076】
(6)シャルピー衝撃強度
ISO 179に準拠して測定した。荷重は2J、単位はkJ/mである。
【0077】
(7)黄色度
日精樹脂工業(株)製の電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(商品名)を用い、80mm×55mm×2.4mmの平板状の成形品を射出成形により得た。成形品は、55mmの一方の辺の中央に4mm×1mmのサイドゲートを備え、成形時の樹脂温度は220℃、金型温度は50℃であった。得られた成形品の黄色度(YI)を、Gardner社製の分光測色計「TCS−II」にて測定した。この数値が小さいほど、表面の色相が良好である。
【0078】
(8)表面外観(漆黒性、フローマーク、色分かれ)
黄色度と同じ射出成形法により、顔料(カーボンブラック)を用いて黒色に着色した試験片を製造し、この試験片の表面外観を目視で観察した。結果判定はそれぞれ次のように表示した。
◎:漆黒性が非常に良好。フローマークが認められない。色分かれが見られない。
○:漆黒性が良好。フローマークが認められない。色分かれがほとんどない。
△:漆黒性が多少劣る。フローマークが多少認められる。色分かれが多少認められる。
×:漆黒性が劣る。フローマークが認められる。色分かれが認められる。
【0079】
2.アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の製造
2−1.アクリル系ゴム質重合体ラテックスの製造
(製造例a−1)
アクリル酸n−ブチル(以下、BAと略記する。)7.8部、メタクリル酸0.2部(以下、MAAと略記する。)を混合して、単量体混合物(I)を調製した。また、BA91.7部、メタクリル酸アリル(以下、AMAと略記する。)0.3部を混合して、単量体混合物(II)を調製した。また、水99部、過硫酸カリウム(以下、KPSと略記する)1部を混合して、OXI溶液(I)を調製した。攪拌装置、原料及び助剤添加装置、温度計、加熱装置等を備えた、容量5Lのガラス製反応器に水150部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、DBSと略記する)を1.0部、電解質として炭酸カリウム(以下、PCと略記する)0.3部、単量体混合物(I)を全量仕込み、攪拌しつつ、窒素気流下で、内温を65℃まで昇温した。65℃に達した時点で、亜ジチオン酸ナトリウム0.03部を反応器に仕込み、更に内温を75℃まで昇温した。75℃に達した時点で、OXI溶液(I)7部を反応器に仕込み、同温度で重合を開始した。重合開始から30分後、重合転化率及び生成したラテックスの体積平均粒子径を測定するとともに、単量体混合物(II)を3分の1と、OXI溶液(I) 7部を反応器に仕込んで同温度で重合した。重合開始1時間後、次いで単量体混合物(II)の3分の1と、OXI溶液(I) 7部を反応器に仕込んで同温度で重合した。さらに重合開始から1.5時間後、残り3分の1量の単量体混合部(II)と、OXI溶液(I) 7部を反応器に仕込んで、同温度でさらに1時間重合させて、重合反応を終了し、アクリル系ゴム質重合体ラテックス(a−1)を得た。得られたラテックスの体積平均粒子径は103nmであった。また、重合転化率を求めた。結果を表1に示す。
【0080】
(製造例a−2〜9、b−1〜12)
表1および表2に示した配合とした以外、アクリル系ゴム質重合体ラテックス(a−1)と同様にして、アクリル系ゴム質重合体ラテックス(a−2〜9、b−1〜12)を得た。b−3の製造で用いた脂肪酸石けんは、カルボン酸系のラウリン酸ナトリウムである。
【0081】
なお、略号の意味は下記のとおりである。
TDM :t−ドデシルメルカプタン
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AA :アクリル酸
【0082】
なお、アクリル系ゴム質重合体ラテックス(b−9)は、単量体混合物(I)としてBA 99.5部、MAA 0.2部、AMA 0.3部を混合して調整し、その全量を一括で仕込んで2時間反応(一段重合)して得た。
【0083】
2−2.アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の製造
(実施例1)
スチレン(以下、STと略記する。)73部、及びアクリロニトリル(以下、ANと略記する。)27部、TDM0.3部を混合して単量体混合物(VII)を調製した。製造例a−1で使用したのと同様の反応器に、上記ゴム質重合体ラテックス(a−1)を固形分換算で100部と水酸化カリウム0.2部を仕込み、攪拌しつつ、窒素気流下、60℃に昇温した。60℃に達した時点で、20部の水に、ブドウ糖0.3部とピロリン酸ナトリウム1.2部、硫酸第一鉄0.01部を溶解した水溶液(以下、RED水溶液と略記する。)のうち、85%分、及び、30部の水にt−ブチルハイドロパーオキサイド(以下、BHPと略記する。)0.4部を溶解した水溶液(以下、CAT水溶液と略記する。)のうち、30%分を反応器に仕込み、その直後に単量体混合物(VII)/CAT水溶液(残り70%)を、それぞれ4時間/4時間30分にわたって連続添加し、重合を開始した。重合開始から70℃まで昇温し、その後、反応系の温度を70℃で保持した。重合を開始して4時間後にRED水溶液の残15%分を反応器に仕込み、60分間、同温度で保持した後に重合を終了した。重合終了時の重合転化率は98%以上であった。この共重合ラテックスを凝固、水洗、乾燥し、粉末状のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂を得た。凝固様態、グラフト率、固有粘度[η]の結果を表3に示す。
【0084】
(実施例2〜9、比較例2〜12)
表3及び表4に示した配合とした以外、実施例1と同様にして、共重合ラテックスを得た。これらのグラフト共重合体ラテックスを凝固、水洗、乾燥し、粉末状のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂を得た。重合終了時の重合転化率は、いずれも98%以上であった。凝固様態、グラフト率、固有粘度[η]の結果を表3及び表4に示す。
【0085】
さらに、得られたアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂とAS樹脂とを、表3及び表4に記載の配合割合でヘンシェルミキサーに投入し、混合した。その後、二軸押出機(型名「TEM−50A」、東芝機械社製)を用いて、温度200〜250℃で溶融混練し、ペレット(ゴム強化熱可塑性樹脂1,2)を得た。このペレットを用いて、表3及び表4に記載した各項目について評価を行った。結果を表3及び表4に示す。なお、表3及び表4のAS樹脂、酸化防止剤、着色剤の略号は下記を意味する。
【0086】
(A2)AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン共重合体)
A2−1:テクノポリマー社製AS樹脂「サンレックス SAN−L」(商品名)
A2−2:テクノポリマー社製AS樹脂「サンレックス SAN−C」(商品名)
A2−3:テクノポリマー社製AS樹脂「サンレックス SAN−H」(商品名)
【0087】
(B)酸化防止剤(安定剤)
B−1:チバ・ジャパン社製酸化防止剤 オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート 「イルガノックス1076」(商品名)
B−2:チバ・ジャパン社製耐光安定剤 2−〔2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−(1,1−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール 「チヌビン234」(商品名)
B−3:チバ・ジャパン社製光安定剤 N,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物 「キマソーブ 119FL」(商品名)
【0088】
(C)着色剤
C−1:堺化学社製ステアリン酸カルシウム 「SC−100」(商品名)
C−2:三菱化学製カーボンブラック 「RCF−#45」(商品名)
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
3.実施例の効果
表3から、本発明のアクリル系ゴム質重合体を用いた実施例1〜9のゴム強化熱可塑性樹脂は耐衝撃性と成形品の外観に優れていることがわかった。
これに対し、表4から以下のことがわかる。
比較例1は、アクリル系ゴム質重合体の重合に乳化剤を使用しなかった例であり、ゴムの重合様態が悪く、ゴム粒子径も大きく、その後の評価に供し得なかった。
比較例2は、アクリル系ゴム質重合体の重合に使用した乳化剤の量が多すぎる例であり、ゴム粒子径が小さく、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例3は、本発明とは異なる乳化剤を使用した例であり、ゴムの重合様態が悪く、ゴム粒子径も大きく、その後の評価に供し得なかった。
比較例4は、第1重合工程で、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物を用いる代わりに、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物を用いた例であり、ゴム粒子径が小さく、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例5は、第1重合工程で、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物を用いなかった例であり、ゴムの重合様態が悪く、その後の評価に供し得なかった。
比較例6は、第1重合工程で、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物の添加量が多すぎる例であり、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例7は、第2重合工程で、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物の配合量が多すぎる例であり、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例8は、第2重合工程で、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物を用いなかった例であり、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例9は、1段重合で製造したアクリル系ゴム質重合体を用いた例であり、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例10は、第2重合工程で用いる単量体(II)の量に対する第1重合工程で用いる単量体(I)の量の比が高すぎる例であり、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例11は、第2重合工程で用いる単量体(II)の量に対する第1重合工程で用いる単量体(I)の量の比が低すぎる例であり、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
比較例12は、第2重合工程で、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物を用いた例であり、ゴム強化熱可塑性樹脂の成形品の黄色度が高く、衝撃強度、表面外観も悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂は、耐衝撃性と成形品の外観に優れているので、成形材料として使用することができ、例えば、各種雑貨、自動車の内外装材、家電製品のハウジング及び部品、OA機器のハウジング及び部品などを成形するのに使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含有するビニル系単量体を重合して得られるアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂であって、該アクリル系ゴム質重合体(a)が、水性媒体中で、下記単量体(I)と下記単量体(II)の合計100質量部に対し0.01〜4質量部のスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)の存在下に下記第1重合工程及び下記第2重合工程をこの順で行うことによって得られたものであるアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂。
第1重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(m1)50〜99.99質量%と、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物(m2)0.01〜20質量%と、上記成分(m1)及び上記成分(m2)と共重合可能な他の化合物(m3)0〜49.99質量%〔但し、上記成分(m1)、上記成分(m2)及び上記成分(m3)の合計は100質量%である。〕とからなる単量体(I)を重合する工程。
第2重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(n1)50〜99.99質量%と、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物(n2)0.01〜5質量%と、上記成分(n1)及び上記成分(n2)と共重合可能な他の化合物(n3)0〜49.99質量%〔但し、上記成分(n1)、上記成分(n2)及び上記成分(n3)の合計は100質量%である。〕とからなる単量体(II)を重合する工程。
ただし、上記単量体(I)の使用量は、上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計100質量部に対し、1〜50質量部である。
【請求項2】
上記スルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである請求項1に記載のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂。
【請求項3】
水性媒体中で、下記単量体(I)と下記単量体(II)の合計100質量部に対し0.01〜4質量部のスルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)の存在下に下記第1重合工程及び下記第2重合工程をこの順で行うことによってアクリル系ゴム質重合体(a)を得た後、該アクリル系ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含有するビニル系単量体を重合することを特徴とする、アクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の製造方法。
第1重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(m1)50〜99.99質量%と、分子内に炭素−炭素二重結合を1個有する極性基含有不飽和化合物(m2)0.01〜20質量%と、上記成分(m1)及び上記成分(m2)と共重合可能な他の化合物(m3)0〜49.99質量%〔但し、上記成分(m1)、上記成分(m2)及び上記成分(m3)の合計は100質量%である。〕とからなる単量体(I)を重合する工程。
第2重合工程:(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物(n1)50〜99.99質量%と、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する不飽和化合物(n2)0.01〜5質量%と、上記成分(n1)及び上記成分(n2)と共重合可能な他の化合物(n3)0〜49.99質量%〔但し、上記成分(n1)、上記成分(n2)及び上記成分(n3)の合計は100質量%である。〕とからなる単量体(II)を重合する工程。
ただし、上記単量体(I)の使用量は、上記単量体(I)と上記単量体(II)の合計100質量部に対し、1〜50質量部である。
【請求項4】
上記スルホン酸系界面活性剤及び/又は硫酸エステル系界面活性剤(b)が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである請求項3に記載のアクリル系ゴム強化熱可塑性樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−94107(P2011−94107A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197538(P2010−197538)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】