説明

アクリル系多段階重合体組成物、メタクリル系樹脂組成物及び成形品

【課題】取り扱い性及び耐ブロッキング性に優れたアクリル系多段階重合体、耐衝撃性及び光学特性に優れたメタクリル系樹脂組成物、並びにメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品を提供する。
【解決手段】乳化重合で得られたアクリル系多段階重合体のラテックスを回収して得られるアクリル系多段階重合体の粉体をペレット化したアクリル系多段階重合体のペレット100質量部及び疎水性二酸化珪素微粉末0.01〜0.2質量部(ペレット100質量部に対する)を含有するアクリル系多段階重合体組成物、アクリル系多段階重合体組成物及びメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂を有するメタクリル系樹脂組成物及びメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル系多段階重合体組成物、メタクリル系樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系多段階重合体はメタクリル系樹脂の耐衝撃改質剤として広く用いられている。また、アクリル系多段階重合体は乳化重合による多段重合法により好適に製造することができることから、固形のアクリル系多段階重合体を回収する方法として、乳化重合により製造されたアクリル系多段階重合体ラテックスを、酸及び電解質の少なくとも1種を凝固剤として用いて凝固、脱水、乾燥して、アクリル系多段階重合体の粉体を得る方法又はアクリル系多段階重合体ラテックスをスプレー乾燥機を用いてアクリル系多段階重合体の粉体を得る方法が挙げられる。
【0003】
しかしながら、上記方法により回収されたアクリル系多段階重合体の粉体は貯蔵中に圧密化され、ブロッキングが発生する場合がある。特に、耐衝撃性改質効果を大きくするためにアクリル系多段階重合体中のゴム含量を増加させた場合や最終段重合体(グラフト層)のガラス転移温度が低くなった場合には、得られるアクリル系多段階重合体の粉体はブロッキングが発生する傾向が高くなる。
【0004】
このようなブロッキングの発生を抑制するために、粉末状アクリル系多層粒子構造重合体に二酸化珪素等の無機物質微粉末を混合したアクリル系多層構造重合体粉体(特許文献1)が提案されている。
【0005】
しかしながら、耐衝撃性、光学特性等の特性に優れた成形品を提供することができるメタクリル系樹脂組成物に使用するアクリル系多層構造グラフト共重合体の粉体の耐ブロッキング性は充分なレベルとはいえない状況であった。
【0006】
また、アクリレート系重合体ブロック及びメタクリレート系重合体ブロックからなる(メタ)アクリル系ブロック共重合体ペレットに二酸化珪素等の滑剤を添加することによりペレットのブロッキングを防止する方法(特許文献2)が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記の滑剤をアクリル系多層構造重合体に添加した場合には、樹脂組成物の耐衝撃性や光学特性を損なう恐れがあった。
【特許文献1】特開2007−023242号公報
【特許文献2】特開2003−253005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、取り扱い性及び耐ブロッキング性に優れたアクリル系多段階重合体、成形品の耐衝撃性及び光学特性に優れたメタクリル系樹脂組成物、並びにメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、乳化重合で得られたアクリル系多段階重合体のラテックスを回収して得られるアクリル系多段階重合体の粉体をペレット化したアクリル系多段階重合体のペレット100質量部及び疎水性二酸化珪素微粉末0.01〜0.2質量部(ペレット100質量部に対する)を含有するアクリル系多段階重合体組成物を第1の発明とする。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、上記のアクリル系多段階重合体組成物及びメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂を含むメタクリル系樹脂組成物を第2の発明とする。
【0011】
更に、本発明の要旨とするところは、上記のメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品を第3の発明とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアクリル系多段階重合体組成物は取り扱い性に優れ、貯蔵中のブロッキングの発生が抑制され、これを使用したメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品は透明性及び耐衝撃性に優れることから、軟質フィルムや異素材との複合フィルム等の各種フィルムの他、自動車部材等の車両製造分野、カーペットパッキング材、壁紙等の室内装飾材分野、塗料等の塗装分野、家電部材等の家電製造分野、玩具や日用品雑貨製造分野における成形品等の各種用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
アクリル系多段階重合体
本発明で使用されるアクリル系多段階重合体は乳化重合によって得られたものである。
【0014】
乳化重合により得られるラテックス中のアクリル系多段階重合体の粒子径には特に制限はないが、50〜2,000nmが好ましい。
【0015】
アクリル系多段階重合体としては、例えば、単独で重合した場合に得られる重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」という)が25℃以下である単量体を構成単位として有する少なくとも一段重合により得られるゴム状弾性体(軟質重合体)を一段目重合体とし、この一段目重合体の存在下に、最終段重合体として、単独で重合した場合に得られる重合体のTgが50℃以上である単量体の単量体単位を構成単位として有する硬質重合体を重合させたものが挙げられる。
【0016】
更に、アクリル系多段階重合体としては、上記の一段目重合体と最終段重合体に、三段階以上の多段階の共重合体となるように一段目重合体の前後に少なくとも一種の重合体を設けることにより多段階重合体としてもよい。各段階の重合体は、乳化重合により得ることが好ましい。
【0017】
上記三段階以上の多段階重合体の具体例としては、一段目重合体として上記硬質重合体、二段目以降重合体(最終段重合体を除く)として上記の軟質重合体を重合させたもの及び最終段重合体として上記硬質重合体をグラフト重合させた三段階重合による重合体;一段目重合体としてTgが25℃より高く50℃未満になる半硬質重合体、二段目以降重合体(最終段重合体を除く)として前記の軟質重合体を重合させたもの及び最終段重合体として前記の硬質重合体をグラフト重合させた三段階重合による重合体;並びに一段目重合体として上記の軟質重合体、二段目として前記の硬質重合体を重合させたもの、三段目として前記の軟質重合体をグラフト重合させたもの及び最終段重合体として前記の硬質重合体をグラフト重合させた四段階重合による重合体を挙げることができる。
【0018】
アクリル系多段階重合体を形成する軟質重合体(ゴム状弾性体)を構成するための原料となる単量体組成としては、単独で重合した場合に得られる重合体のTgが25℃以下となる単量体又は単量体混合物が挙げられる。この単量体組成として、例えば、炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート40〜90質量%及びこれと共重合可能な1個のビニル基を有する単官能性単量体10〜60質量%を含有する単量体混合物100質量部に対して、グラフト交叉剤0.1〜10質量部及び架橋剤0.1〜10質量部を含有するものが挙げられる。
【0019】
上記の炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0020】
上記の共重合可能な1個のビニル基を有する単官能性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族不飽和単量体及びフェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル系単量体が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、得られる重合体の屈折率を調整する際にはスチレンが好適に使用される。
【0021】
上記のグラフト交叉剤は反応性の異なるラジカル重合性ビニル基を少なくとも2個有している化合物である。グラフト交叉剤の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のアリルエステルが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリル酸アリル及びメタクリル酸アリルが好ましい。
【0022】
上記の架橋剤は分子中に反応性が同じラジカル重合性ビニル基を少なくとも2個有している化合物である。架橋剤の具体例としては、1,3−ブタンジオールジメタクリレート及び1,4−ブタンジオールジアクリレートが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
アクリル系多段階重合体において、最終段重合体を形成する際の硬質重合体を構成するための原料となる単量体組成としては、単独で重合した場合に得られる重合体のTgが50℃以上となる単量体が挙げられる。この単量体組成として、例えば、炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート60〜100質量%及びこれらと共重合可能な他の不飽和単量体0〜40質量%を含有する単量体混合物が挙げられる。
【0024】
上記の炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びn−ブチルメタクリレートが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうちメチルメタクリレートが好ましい。
【0025】
上記の共重合可能な他の不飽和単量体としては、例えば、前述した炭素数8以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート、これと共重合可能な1個のビニル基を有する単官能性単量体及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明における乳化重合により得られるアクリル系多段階重合体のラテックスは以下に示すように公知の方法により得られる。
【0027】
まず、一段目重合体を構成するための単量体成分を乳化重合し、一段目重合体用の重合体ラテックスを得る。次いで、得られた一段目重合体用の重合体ラテックスの存在下に、目的とする各段階の重合体を形成させるための単量体を順次乳化重合することによってアクリル系多段階重合体のラテックスが得られる。
【0028】
上記の乳化重合に使用する重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物;過塩素酸化合物;過ホウ酸化合物及び過酸化物と還元性スルホキシ化合物との組み合わせからなるレドックス系開始剤が挙げられる。
【0029】
ラジカル重合開始剤の添加量は用いるラジカル重合開始剤や単量体によって異なるが、例えば、単量体100質量部に対して0.01〜10質量部程度とすることができる。
【0030】
上記の乳化重合において、反応容器への単量体組成物及び重合開始剤等の添加方法としては、一括添加法、分割添加法、連続添加法等の公知の方法を採用することができる。また、重合に際しては、反応をスムーズに進めるために反応容器内を窒素置換する方法、残量単量体を除去するために反応終了後反応液を昇温する方法、鉄等の触媒を添加する方法等を採用することができる。
【0031】
上記の乳化重合における重合温度としては、例えば、30〜120℃とすることができ、好ましくは50〜100℃である。また、乳化重合における単量体と水の質量比としては、例えば単量体1に対して水1〜5程度とすることができる。
【0032】
上記の乳化重合に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が挙げられるが、アニオン系の乳化剤が好ましい。
【0033】
アニオン系の乳化剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム等のカルボン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩が挙げられる。
【0034】
乳化剤の使用量は使用する乳化剤、単量体の種類や配合比、重合条件によって適宜選択することができるが、単量体100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、乳化剤の使用量は重合体への残存量を抑えるため、単量体成分100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0035】
上記の乳化重合に際しては、連鎖移動剤、紫外線吸収剤等、重合時に添加する添加剤を用いることができる。
【0036】
アクリル系多段階重合体のペレット
本発明におけるアクリル系多段階重合体のペレットは、前記の乳化重合で得られたアクリル系多段階重合体のラテックスに酸及び電解質から選ばれる少なくとも1種で回収することにより得られる粉体又は上記ラテックスをスプレー乾燥機を用いて乾燥して得られる粉体をペレット化したものである。
【0037】
アクリル系多段階重合体のラテックスは酸及び電解質から選ばれる少なくとも1種を用いて凝固され、含水状のアクリル系多段階重合体として回収することができる。
【0038】
酸及び電解質としては、例えば、硫酸、塩酸等の無機酸、並びに塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機塩及び蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム等の有機塩の電解質が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、凝固力が比較的大きいカルシウム塩を用いると、含水量が低いアクリル系多段階重合体を得ることができるため好ましく、カルシウム塩のうち酢酸カルシウム水溶液がより好ましい。酢酸カルシウム水溶液を使用する場合、酢酸カルシウム濃度としては0.1〜20質量%が好ましく、1.8〜5質量%がより好ましい。酢酸カルシウム濃度が0.1質量%以上で安定したアクリル系多段階重合体を回収することができ、20質量%以下で酢酸カルシウム水溶液の飽和状態による酢酸カルシウムの析出を抑制することができる。また、酢酸カルシウム水溶液の使用量としては、酢酸カルシウム水溶液の濃度により異なるが、重合体ラテックス100質量部に対して酢酸カルシウム水溶液10〜500質量部が適当であり、好ましくは50〜300質量部である。
【0039】
アクリル系多段階重合体のラテックスを凝固する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まず、容器に凝固剤水溶液を仕込み、撹拌しながら50〜90℃程度に昇温する。次いで、容器内にアクリル系多段階重合体のラテックスを連続的に添加し、30分間保持した後に室温まで冷却し、凝固を完了することができる。
【0040】
アクリル系多段階重合体のペレットを得る方法としては、例えば、上記の凝固後の含水状のアクリル系多段階重合体を遠心脱水機で一次脱水した後に、圧搾脱水押出機により脱水、乾燥、溶融、脱気し、ダイス部から出たストランド状のアクリル系多段階重合体をカッターで切断してペレット化する方法が挙げられる。使用される圧搾脱水押出機としては、例えば、東芝機械(株)製、TEM−35(商品名)のような二軸圧搾脱水押出機を使用することが好ましい。
【0041】
圧搾脱水押出機により脱水、乾燥、溶融、脱気されたアクリル系多段階重合体はダイスから押し出されてストランド状のアクリル系多段階重合体が得られる。
【0042】
アクリル系多段階重合体のラテックスをスプレー乾燥機を用いて乾燥して粉体として回収する場合のスプレー乾燥法としては公知の方法を使用することができる。また、得られた粉体を公知の押出機に投入することができる。
【0043】
押出機出口のダイス部としては、例えば、直径2〜6mm程度の単一又は複数の孔で構成されたものが挙げられる。
【0044】
押出されたストランド状のアクリル系多段階重合体はカッターにより切断されて球状又は円柱状のペレットが得られる。
【0045】
ストランド状のアクリル系多段階重合体を切断する方式としては、例えば、ダイス部表面を高速回転するホットカッターで切断するホットカット方式、アンダーウォーターカット方式及びダイス部から出たストランドをウォーターバスで冷却した後ペレタイザーで切断するストランドカット方式が挙げられる。
【0046】
ホットカット方式及びアンダーウォーターカット方式でのアクリル系多段階重合体のペレット化は、アクリル系多段階重合体が溶融状態で行われる為、通常樹脂温度は200〜300℃で行われる。樹脂温度が200℃以上で安定したペレットが得られる傾向にあり、300℃以下でアクリル系多段階重合体のペレットの熱劣化が少ない傾向にある。また、ストランドカット方式でのアクリル系多段階重合体のペレット化における樹脂温度等の制限は特に無い。
【0047】
アクリル系多段階重合体のペレットの形状や大きさはペレットとして使用しやすいことから球状又は円柱状が好ましい。アクリル系多段階重合体のペレットとしては円柱状の場合、成形時のペレット供給のし易さの観点から、直径1〜7mm及び長さ2〜10mmとすることが好ましく、直径2〜5mm及び長さ3〜7mmとすることがより好ましい。ペレットの形状及び大きさは、ダイス部に設けられた穴の大きさ、穴の数、押出速度と切断速度を調節することによって決められるので、必要に応じてそれらを調節することができる。
【0048】
疎水性二酸化珪素微粉末
本発明で使用される疎水性二酸化珪素微粉末としては、例えば、シリカ表面の水酸基をモノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等と反応させて得られるものが挙げられる。
【0049】
疎水性二酸化珪素微粉末の具体例としては、日本アエロジル(株)製アエロジルR−972(商品名)、(株)トクヤマ製レオロシールDM−10、DM−20等のDMグレード(いずれも商品名)が挙げられる。これらは表面改質効果に優れており、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
尚、親水性二酸化珪素微粉末では疎水性二酸化珪素に比べ表面改質効果が劣り、ブロッキング性を十分確保するためには添加量を多くする必要がある。その為、得られる成形品の耐衝撃性、光学特性等の物性低下が起こり、好ましくない。
【0051】
疎水性二酸化珪素微粉末の粒子径としては、数平均粒子径が1,000nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。疎水性二酸化珪素微粉末の数平均粒子径が1,000nm以下でアクリル系多段階重合体のペレットの表面改質が得られやすい傾向にある。また該微粉末の取扱い性の観点から、数平均粒子径が1nm以上が好ましい。
【0052】
アクリル系多段階重合体組成物
本発明のアクリル系多段階重合体組成物はアクリル系多段階重合体のペレットと疎水性二酸化珪素微粉末を含有する。
【0053】
アクリル系多段階重合体組成物中のアクリル系多段階重合体のペレットと疎水性二酸化珪素微粉末の含有量としては、アクリル系多段階重合体のペレット100質量部に対して疎水性二酸化珪素微粉末が0.01〜0.2質量部含有され、0.01〜0.15質量部が好ましく、0.01〜0.10質量部がより好ましい。疎水性二酸化珪素微粉末が0.01質量部以上で充分な表面改質効果が得られ、0.2質量部以下で成形品の耐衝撃性、光学特性等の特性を損なうことがない。
【0054】
アクリル系多段階重合体のペレットと疎水性二酸化珪素微粉末との配合方法としては、例えば、アクリル系多段階重合体組成物の貯蔵タンクの側面部から各種のパウダーフィーダー法により添加する方法並びに空輸工程でアクリル系多段階重合体のペレット及び疎水性二酸化珪素微粉末をそれぞれ吸引しながら配合する方法が挙げられる。パウダーフィーダー法としては、例えば、サークルフィーダー法が挙げられる。
【0055】
メタクリル系樹脂
本発明においては、上述したアクリル系多段階重合体組成物とメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂とを含むメタクリル系樹脂組成物を得る。
【0056】
本発明に用いられるメタクリル系樹脂としては、メチルメタクリレートを構成単位として有するものであり、構成単位としてメチルメタクリレート単位をメタクリル系樹脂中、50〜100質量%及びメチルメタクリレートと共重合可能なメチルメタクリレート以外のビニル又はビニリデン単量体単位0〜50質量%を主要構成単位とする重合体が好ましく、前記メチルメタクリレート単位を80〜99質量%含有する重合体がより好ましい。
【0057】
その他のビニル又はビニリデン単量体単位を構成するための原料であるその他のビニル又はビニリデン単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアクリレート及びスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0058】
メタクリル系樹脂組成物
本発明のメタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系樹脂と本発明のアクリル系多段階重合体のペレットとの配合割合は用途により任意に選ぶことができるが、メタクリル系樹脂とアクリル系多段階重合体のペレットとの質量比は90/10〜20/80が好ましく、80/20〜50/50がより好ましい。アクリル系多段階重合体のペレットの質量比を10以上とすることで、得られる成形品の耐衝撃性を良好とする傾向にある。また、アクリル系多段階重合体のペレットの質量比を80以下とすることで、成形品を得る際の射出成形等の成形が容易な流動性を確保でき、且つ、成形品の外観(透明性等)を良好とする傾向にある。
【0059】
本発明のメタクリル系樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、顔料、染料等を添加することができる。
【0060】
本発明のメタクリル系樹脂組成物はメタクリル系樹脂とアクリル系多段階重合体のペレットとを所定の配合比で混合し、加熱溶融することにより得ることが好ましい。加熱溶融温度はメタクリル系樹脂とアクリル系多段階重合体のペレットの溶融温度以上であればよく、例えば、200〜300℃とすることができる。
【0061】
成形品
本発明の成形品はメタクリル系樹脂組成物を成形して得られるものである。成形方法としては特に限定されないが、射出成形、押出成形等公知の方法が挙げられる。
【0062】
本発明の成形品は耐衝撃性及び光学特性に優れ、軟質フィルムや異素材との複合フィルム等の各種フィルム、自動車部材等の車両製造分野、カーペットパッキング材、壁紙等の室内装飾材分野、塗料等の塗装分野、家電部材等の家電製造分野、玩具や日用品等の雑貨製造分野に使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により説明する。尚、実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0064】
また、アクリル系多段階重合体のTg、アクリル系多段階重合体組成物のブロッキング性並びに成形品のアイゾット衝撃強度、全光線透過率、ヘイズ値及びYI値の評価は以下の方法により実施した。
【0065】
(1)Tg
アクリル系多段階重合体の各層を構成する重合体のTgは、原料単量体組成物中の単官能性単量体のみを重合した単独重合体のTgを用いて、以下のFOXの式により算出して求めた。
【0066】
FOXの式:1/Tg=Σ(w/Tg
式中、wは単量体iの質量割合、Tgは単量体iの単独重合体のTgを表す。
【0067】
尚、単官能性単量体の単独重合体のTgはPOLYMER HANDBOOK THIRD EDITIONのデータを引用した。
【0068】
(2)耐ブロッキング性
内径6.0cm及び高さ5.0cmの円筒の容器に4.5メッシュの篩で篩って通過したアクリル系多段階重合体のペレット20gを入れ、50℃で17.5kPaの圧力で6時間押圧し、ブロック状物を得た。次いで、得られたブロック状物を4.0メッシュの篩に載せ、ミクロ型電磁振動ふるい器(筒井理化化学機械(株)製、M−2型(商品名))で振動を与え、ブロック状物が60質量%破砕する時間(秒)を測定し、耐ブロッキング性の指標とした。この時間が短いほど耐ブロッキング性は良好であることを示す。
【0069】
(3)アイゾット衝撃強度
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で127×12.7×6.35mmの試片を作製し、それを63.5mmに切断したものを試験片とした。この試験片に自動ノッチングマシーン((株)東洋精機製作所製、ノッチングツール型番:A−3)でノッチを付け、ノッチ付き試験片を作製した。ノッチ付き試験片を使用してASTM−D−256に準拠して、デジタル衝撃試験機((株)東洋精機製作所製、ユニバーサル式、型番:DG−UB)にてハンマー秤量2.75Jでアイゾット衝撃強度(kJ/cm)を測定した。
【0070】
(4)全光線透過率
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、ASTM−D1003に準拠して、ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製、HR−100(商品名))を使用して全光線透過率(%)を測定した。
【0071】
(5)ヘイズ値
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、ASTM−D1003に準拠して、ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製、HR−100(商品名))を使用してヘイズ値(%)を測定した。
【0072】
(6)YI(イエローインデックス)値
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、PS60E9ASE(商品名))を用い、シリンダー温度250℃で100×50×2mmの試験片を作製し、JIS Z−8722に準拠して、分光式色差計(日本電色工業(株)製、SE−2000(商品名))を使用し、透過・C光源・2℃視野の条件でYI値(−)を測定した。
【0073】
(7)質量平均粒子径
ラテックスを蒸留水で希釈し、濃度約3%の希釈ラテックス0.1mlを試料とし、米国MATEC社製CHDF2000型粒度分布測定装置を用い、流速1.4ml/min、圧力約2.76MPa(約4000psi)、温度35℃の条件下で質量平均粒子径を測定した。なお測定では、粒子分離用キャピラリー式カートリッジおよびキャリア液を用い、液性はほぼ中性にした。また、測定前には、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンを標準粒子径物質とし、0.02μmから0.8μmの合計12点の粒子径を測定して、検量線を作成した。
【0074】
[実施例1]
<アクリル系多段階重合体(イ)のラテックスの作製>
撹拌機、還流冷却器、窒素吹き込み口、単量体追加口及び温度計を備えた5口フラスコに下記の組成の成分1を投入した。
【0075】
(成分1)
脱イオン水: 118部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS):
0.25部
硫酸第1鉄: 2.5×10−5
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム: 7.5×10−5
次に、このフラスコ内の溶液を混合撹拌下、窒素置換しながら80℃に昇温した。次いで、下記の組成の混合物(a−1)の2/10をフラスコ内に投入し、80℃に保ったまま15分保持した。この後、混合物(a−1)の残りを50分かけてフラスコ内に投入し、80℃に保ったまま1時間保持して、一段目重合体(A−1)の重合を完結させた。得られた一段目重合体(A−1)の重合率は99%以上であった。また、一段目重合体(A−1)のTgは18.4℃であった。尚、本発明において、重合率は未反応の単量体をガスクロマトグラフィーで測定して算出した。
【0076】
(混合物(a−1))
メチルメタクリレート(MMA): 7.0部
スチレン(ST): 0.5部
n−ブチルアクリレート(nBA): 5.0部
1,3−ブタンジオールジメタクリレート(1,3BD):
0.375部
アリルメタクリレート(ALMA): 0.047部
t−ブチルハイドロパーオキサイド(tBH):0.022部
乳化剤A(NA): 0.45部
(乳化剤Aとしては、東邦化学(株)製ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩:フォスファノールRS−610NA(商品名)を使用した。)
引き続き、フラスコ内の上記の一段目重合体(A−1)のラテックス中に、SFS0.17部を脱イオン水1.2部に溶解したものを加えて、15分間保持した後、下記の組成の混合物(b−1)を240分かけて滴下し、105分保持して二段目重合体(B−1)の重合を完結させた。得られた二段目重合体(B−1)の重合率は99%以上であった。また、二段目重合体(B−1)のTgは−38.9℃であった。二段目重合体(B−1)まで形成した重合体の質量平均粒子径は250nmであった。
【0077】
(混合物(b−1))
ST: 8.75部
nBA: 41.25部
1,3BD: 0.125部
ALMA 0.875部
クメンハイドロパーオキサイド(CHP): 0.14部
NA: 1.35部
引き続き、フラスコ内の上記の二段目重合体(B−1)まで形成した重合体のラテックス中に、SFS0.105部を脱イオン水1.2部に溶解したものを加えて、15分間保持した後、下記の組成の混合物(c−1)を100分かけて滴下し、60分間保持して三段目重合体(C−1)の重合を完結させた。得られた三段目重合体(C−1)の重合率は99%以上であった。また、三段目重合体(C−1)のTgは57℃であった。
【0078】
(混合物(c−1))
MMA: 23.70部
nBA: 6.25部
ST: 1.30部
tBH: 0.053部
n−オクチルメルカプタン(nOM): 0.031部
引き続き、フラスコ内の上記の三段目重合体(C−1)まで形成した重合体のラテックス中に、SFS0.02部を脱イオン水1.2部に溶解したものを加えて、15分間保持した後、下記の組成の混合物(c−2)を20分かけて滴下し、120分間保持して四段目重合体(C−2)の重合を完結させ、アクリル系多段階重合体(イ)のラテックスを得た。得られた四段目重合体(C−2)の重合率は99%以上であった。また、四段目重合体(C−2)のTgは99℃であった。
【0079】
(混合物(c−2))
MMA: 5.94部
メチルアクリレート(MA): 0.31部
tBH: 0.011部
nOM: 0.0187部
<アクリル系多段階重合体(イ)のペレットの作製>
撹拌機付きステンレス製容器に凝固剤として2.5質量%酢酸カルシウム水溶液を600部仕込み、撹拌しながら60℃に昇温した。次いで、このステンレス製容器中に上記で得られたアクリル系多段階重合体(イ)のラテックス300部を連続的に添加し、この後90℃に昇温して30分間保持した後、冷却し、更に遠心脱水機で脱水して含水状のアクリル系多段階重合体(イ)135部を得た。
【0080】
この含水状のアクリル系多段階重合体(イ)を圧搾脱水押出機(東芝機械(株)製二軸押出機、TEM−35B(商品名)、設定温度;脱水部130℃、乾燥部150℃、溶融部230℃、脱気部230℃、ダイス部230℃)に20kg/時間で供給し、脱水、乾燥、溶融及び脱気を行い、ダイス(ダイスの孔径:4.3mm、ダイス穴:6)から出てきたストランドを回転数1,400rpmに調整したホットカッター((株)東芝機械プラスチックエンジニアリング製、PPH−35MC(商品名)、4枚刃)でペレット化し、アクリル系多段階重合体(イ)のペレットを得た。
【0081】
得られたアクリル系多段階重合体(イ)のペレットは円柱状で、直径4mm及び長さ6mmであった。
【0082】
<アクリル系多段階重合体組成物(イ)の作製>
アクリル系多段階重合体(イ)のペレット100部、及び疎水性二酸化珪素微粉末としてアエロジルR−972(商品名(日本アエロジル(株)製、数平均粒子径16nm)0.2部を、ポリ袋を用いてハンドブレンドし、アクリル系多段階重合体組成物(イ)を得た。得られたアクリル系多段階重合体組成物(イ)のブロッキング性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【表1】

【0083】
<メタクリル系樹脂組成物(イ)及び成形品(イ)の作製>
アクリル系多段階重合体組成物(イ)200部及びメタクリル系樹脂として三菱レイヨン(株)製アクリペット(登録商標)VH(商品名)300部の混合物を、外形30mmφの2軸スクリュー型押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30(商品名)、L/D=25)を用い、シリンダー温度250℃で溶融混練してメタクリル系樹脂組成物(イ)を得、次いで射出成形機で成形して成形品(イ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【表2】

【0084】
アクリペットVH:三菱レイヨン(株)製メタクリル系樹脂
[実施例2]
<アクリル系多段階重合体(ロ)のラテックスの作製>
撹拌機、還流冷却器、窒素吹き込み口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、下記の組成の成分2を入れた。
【0085】
(成分2)
脱イオン水: 196部
SFS: 0.28部
硫酸第1鉄: 7.5×10-5
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム: 2.25×10-4
炭酸ナトリウム: 0.02部
次に、このフラスコ内の溶液を混合撹拌下、窒素置換しながら80℃に昇温した。次いで、下記の組成の混合物(d−1)を240分かけて滴下し、80℃に保ったまま120分保持して一段目重合体(D−1)の重合を完結させた。得られた一段目重合体(D−1)の重合率は99%以上であった。一段目重合体(D−1)のTgは−36.2℃であった。
【0086】
(混合物(d−1))
ST: 11.5625部
nBA: 50.9375部
ALMA: 0.56部
tBH: 0.19部
NA: 1.5部
引き続き、フラスコ内の上記のラテックス(D−1)中に、SFS0.08部を脱イオン水4.0部に溶解したものを加えて、15分間保持した。その後、下記の組成の混合物(e−1)を90分かけ滴下し、80℃に保ったまま60分保持して二段目重合体(E−1)の重合を完結させ、アクリル系多段階重合体(ロ)のラテックスを得た。得られた二段目重合体(E−1)の重合率は99%以上であった。また、二段目重合体(E−1)のTgは67℃であった。
【0087】
(混合物(e−1))
MMA: 30.75部
nBA: 5.625部
ST: 1.125部
tBH: 0.06部
nOM: 0.16部
NA: 0.25部
<アクリル系多段階重合体(ロ)のペレットの作製>
撹拌機付きステンレス製容器に凝固剤として2.5質量%酢酸カルシウム水溶液を600部仕込み、撹拌しながら50℃に昇温した。次いで、このステンレス容器中に上記で得られたアクリル系多段階重合体(ロ)のラテックス300部を連続的に添加し、この後90℃に昇温して30分間保持した後、冷却し、更に遠心脱水機で脱水して含水状のアクリル系多段階重合体(ロ)100部を得た。
【0088】
この含水状のアクリル系多段階重合体(ロ)を使用し、ホットカッターの回転数を1,600rpmとする以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体(ロ)のペレット得た。
【0089】
得られたアクリル系多段階重合体(ロ)のペレットは直径3mmの球状であった。
【0090】
<アクリル系多段階重合体組成物(ロ)の作製>
アクリル系多段階重合体(ロ)のペレットを使用する以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(ロ)を作製し、耐ブロッキング性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
<メタクリル系樹脂組成物(ロ)及び成形品(ロ)の作製>
アクリル系多段階重合体組成物(ロ)を使用する以外は実施例1と同様にしてメタクリル系樹脂組成物(ロ)及び成形品(ロ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0092】
[実施例3]
アエロジルR−972の添加量を0.01部に変更したことを除き実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(ハ)、メタクリル系樹脂組成物(ハ)及び成形品(ハ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。
【0093】
[実施例4]
アエロジルR−972の添加量を0.1部に変更したことを除き実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(ニ)、メタクリル系樹脂組成物(ニ)及び成形品(ニ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。
【0094】
[実施例5]
実施例1で得られた含水状のアクリル系多段階重合体(イ)を使用し、ホットカッターの回転数を1,000rpmに変更したことを除き実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(ホ)、メタクリル系樹脂組成物(ホ)及び成形品(ホ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。
【0095】
尚、アクリル系多段階重合体組成物(ホ)のペレットは直径7mm及び長さ10mmであった。
【0096】
[実施例6]
実施例1で得られた含水状のアクリル系多段階重合体(イ)を使用し、ホットカッターの回転数を1,800rpmに変更したことを除き実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(ヘ)、メタクリル系樹脂組成物(ヘ)及び成形品(ヘ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。
【0097】
尚、アクリル系多段階重合体組成物(ヘ)のペレットは直径1mm及び長さ2mmであった。
【0098】
[比較例1]
アエロジルR−972を添加しないことを除き実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(ト)、メタクリル系樹脂組成物(ト)及び成形品(ト)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。
【0099】
[比較例2]
アエロジルR−972の代わりに、親水性二酸化珪素微粉末として日本アエロジル(株)製アエロジル130(商品名、数平均粒子径16nm)を使用した。それ以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(チ)、メタクリル系樹脂組成物(チ)及び成形品(チ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。
【0100】
[比較例3]
アエロジルR−972の添加量を0.3部に変更したことを除き実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(リ)、メタクリル系樹脂組成物(リ)及び成形品(リ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。
【0101】
[比較例4]
アエロジルR−972の代わりに、白石工業株式会社製の炭酸カルシウム(白艶華CCR−B(商品名))を0.2部添加した。それ以外は実施例1と同様にしてアクリル系多段階重合体組成物(ヌ)、メタクリル系樹脂組成物(ヌ)及び成形品(ヌ)の試験片を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1及び2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化重合で得られたアクリル系多段階重合体のラテックスを回収して得られるアクリル系多段階重合体の粉体をペレット化したアクリル系多段階重合体のペレット100質量部及び疎水性二酸化珪素微粉末0.01〜0.2質量部(ペレット100質量部に対する)を含有するアクリル系多段階重合体組成物。
【請求項2】
アクリル系多段階重合体の粉体が、乳化重合で得られたアクリル系多段階重合体のラテックスを酸及び電解質から選ばれる少なくとも1種で回収することにより得られる粉体である請求項1に記載のアクリル系多段階重合体組成物。
【請求項3】
アクリル系多段階重合体のペレットが、回収された含水状のアクリル系多段階重合体を圧搾脱水押出機で脱水、乾燥、溶融、脱気及びペレット化されたものである請求項1又は2に記載のアクリル系多段階重合体組成物。
【請求項4】
アクリル系多段階重合体のペレットの形状が球状又は円柱状である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系多段階重合体組成物。
【請求項5】
アクリル系多段階重合体のペレットが円柱状であって、その直径が1〜7mm及び長さが2〜10mmである請求項4に記載のアクリル系多段階重合体組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル系多段階重合体組成物及びメチルメタクリレート単位を含有するメタクリル系樹脂を含むメタクリル系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のメタクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品。

【公開番号】特開2010−13533(P2010−13533A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173990(P2008−173990)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】