説明

アクリル系樹脂発泡体の製造方法

【課題】アクリル系樹脂発泡体を効率よく製造可能なアクリル系樹脂発泡体の製造方法を提供すること。
【解決手段】アクリル系モノマー、尿素、窒素含有化合物からなる還元剤、及び、レドックス系重合開始剤を含有する重合性溶液を作製し、前記アクリル系モノマーを重合させた後、得られた重合体を加熱することによって前記尿素を分解させてアクリル系樹脂発泡体を形成させるアクリル系樹脂発泡体の製造方法であって、前記重合性溶液には、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオンと塩化物イオンとを含有させることを特徴とするアクリル系樹脂発泡体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル系樹脂発泡体は、強度に優れるとともに軽量性、断熱性に優れていることから、表面に繊維強化プラスチックス(FRP)を貼り付けて、貨物車両の保冷室の壁材や、小型ボートの船体を構成するための部材として利用されている。
このようなアクリル系樹脂発泡体は、通常、下記特許文献1に示されているように、アクリル系モノマーに発泡剤となる尿素と重合開始剤とを混合した重合性溶液を作製し、該重合性溶液を型枠に流し入れ、該型枠ごと加熱して前記アクリル系モノマーを重合させた後、得られた重合体をさらに高温に加熱することによって尿素を分解させてガス発泡させるような方法で作製されている。
【0003】
しかし、従来のアクリル系樹脂発泡体の製造方法においては、アクリル系モノマーを重合開始させてから発泡体を得るまでに長時間の反応時間を要しており、例えば、特許文献1の実施例1では、10時間の反応を実施した後に、温度をさらに上げて3時間の追加反応を実施させており、合計13時間もの時間をかけてアクリル系モノマーの重合を行ってアクリル系樹脂発泡体を完成させている。
【0004】
このような問題に対して、従来、アクリル系モノマーの反応を促進させるための有効な方法が見出されてはおらず、アクリル系樹脂発泡体の製造効率を向上させるのが困難な状況となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−045256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アクリル系樹脂発泡体を効率よく製造可能なアクリル系樹脂発泡体の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、アクリル系モノマーを重合させるのに際して所定のイオンを存在させることで重合反応が促進され、アクリル系樹脂発泡体の製造効率を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
即ち、上記課題を解決するための本発明に係るアクリル系樹脂発泡体の製造方法は、アクリル系モノマー、尿素、窒素含有化合物からなる還元剤、及び、レドックス系重合開始剤を含有する重合性溶液を作製し、前記アクリル系モノマーを重合させた後、得られた重合体を加熱することによって前記尿素を分解させてアクリル系樹脂発泡体を形成させるアクリル系樹脂発泡体の製造方法であって、前記重合性溶液には、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオンと塩化物イオンとを含有させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオンと塩化物イオンとが前記重合性溶液に含有されることからアクリル系モノマーの重合反応を促進させることができ、該重合性溶液を用いることでアクリル系樹脂発泡体を従来の方法に比べて短時間で作製し得る。
従って、本発明によればアクリル系樹脂発泡体の製造効率を向上させ得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
まず、アクリル系樹脂発泡体の製造に利用する原材料について説明する。
【0011】
本実施形態のアクリル系樹脂発泡体の製造方法においては、アクリル系モノマー、尿素、窒素含有化合物からなる還元剤、レドックス系重合開始剤、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオン、及び、塩化物イオンを含有する重合性溶液を用いる。
【0012】
(アクリル系モノマー)
前記アクリル系モノマーとしては、発泡剤として用いられる前記尿素に対する優れた溶解性を示すことから水溶性のアクリル系モノマーを含有させることが好ましく、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
なお、本明細書における“(メタ)アクリル”との用語は、“メタクリル”と“アクリル” の何れか一方又は両方を意味している。
また、(メタ)アクリル酸以外のアクリル系モノマーとしては、該アクリル系モノマーの重合体を発泡させるのに際して優れた発泡性を発揮させ得る点においてメタクリル酸メチルを用いることが好ましい。
(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチル以外のアクリル系モノマーとしては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどを採用することができる。
【0013】
(アクリル系モノマー以外のモノマー)
なお、上記アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーをアクリル系樹脂発泡体の改質などを目的として重合性溶液に少量含有させることも可能である。
特に、発泡性の向上に有効となるスチレンモノマーを重合性溶液に含有させることが好ましい。
ただし、スチレンモノマーを過剰に含有させると、アクリル系樹脂発泡体の特徴である硬質さを損なうおそれを有することからアクリル系モノマーとスチレンモノマーとの合計に占めるスチレンモノマーの含有量は20質量%以下とすることが好ましい。
【0014】
より具体的には、本実施形態における重合性溶液は、含有されるモノマーの内の50〜70質量%がメタクリル酸メチルで、14〜30質量%が(メタ)アクリル酸で、10〜20質量%がスチレンであることが好ましい。
なお、14〜30質量%の割合で含有される(メタ)アクリル酸の内、全てをメタクリル酸としても、全てをアクリル酸としても良く、メタクリル酸とアクリル酸との両方を併せて14〜30質量%となるように重合性溶液に含有させてもよい。
ただし、尿素に対する溶解性の観点からは、メタクリル酸を多く含有させることが好ましい。
このような配合を採用することで、発泡性に優れ、硬質で強度に優れたアクリル系樹脂発泡体を得ることができる。
【0015】
(尿素)
前記尿素は、発泡剤として重合性溶液に含有されるもので、該尿素からなる発泡剤の含有量が少ないと、得られるアクリル系樹脂発泡体の発泡度が低下して軽量性を損なうおそれを有し、逆に過剰であると、重合性溶液中に尿素を均一に溶解させることが困難となったり、得られるアクリル系樹脂発泡体中に発泡剤を残存させ易くなったり、破泡を生じさせたりするおそれを有する。
このようなことから、尿素は、モノマーの合計量を100質量部とした場合に1〜15質量部となる割合で重合性溶液に含有させることが好ましい。
【0016】
(還元剤、重合開始剤)
前記還元剤及び前記重合開始剤としては、N,N−ジメチルアニリンなどの窒素含有化合物を還元剤として用いるとともにt−ブチルハイドロパーオキサイドなどのようなレドックス系重合開始剤を用いることが重要である。
上記N,N−ジメチルアニリン以外の窒素含有化合物で還元剤として利用可能な具体的な物質としては、トリエチルアミンなどのアミン化合物が挙げられる。
また、上記t−ブチルハイドロパーオキサイド以外のレドックス系重合開始剤として利用可能な具体的な物質としては、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0017】
前記重合開始剤は、通常、モノマーの合計量を100質量部とした場合に、0.1〜5質量部となる割合で重合性溶液に含有され、前記還元剤は、通常、前記重合開始剤の含有量に対して0.5〜5倍の割合で重合性溶液に含有される。
【0018】
(金属イオン、塩化物イオン)
本実施形態においては、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオン、及び、塩化物イオンを重合性溶液に含有させており、これらは、当該重合性溶液中のアクリル系モノマーを重合させるのに際してその反応を促進させるために重要な成分である。
これらの金属イオンは、いずれも酸化還元電位が正の値のものである。
これらは重合性溶液中で、電子を授与するもの、すなわち酸化剤として、また電子を供与するもの、すなわち還元剤としての機能を発揮し、前記モノマーの重合反応の促進に寄与するものである。
一方で前記塩化物イオンは、前記の金属イオンと結合や脱離することにより、前記モノマーの重合反応の促進に寄与するものである。
【0019】
上記の金属イオン及び塩化物イオンは、塩化銅、塩化第二鉄、塩化銀、塩化金といった形で同じ物質で両方を一度に重合性溶液に含有させるようにしてもよく別々の物質によって重合性溶液に含有させるようにしてもよい。
上記のような塩化物以外であれば、例えば、臭化銅、ヨウ化銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、臭化銀などの物質によって重合性溶液に上記のような金属イオンを含有させることができる。
なお、銅、銀、金については、上記のような塩ではなく、金属そのもの、或いは、合金によってそのイオンを重合性溶液に含有させることができる。
例えば、銅、銅合金(コンスタンタン:銅/ニッケル合金、真鍮:銅/亜鉛合金)、銀、金からなる微粒子、線、メッシュなどを重合性溶液中に混入させることによってこれらのイオンを重合性溶液に含有させることができる。
【0020】
なお、塩化物イオンを重合性溶液に含有させるための具体的な物質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩酸などの他に、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−1−ヒドロキシエチル−2−牛脂アルキル−イミダゾニウムクロライドなどのイミダゾリウム塩型の界面活性剤、ヘキサトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩型の界面活性剤などが挙げられる。
【0021】
なお、塩化物イオンを重合性溶液に含有させるための具体的な物質としては、塩化ナトリウム、塩酸、及び、ヘキサトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライドのいずれかであることが好ましく、特に、ヘキサトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライドを採用することが好ましい。
このヘキサトリメチルアンモニウムクロライドを重合性溶液に含有させる場合には、通常、重合性溶液中のモノマーの合計量を100質量部とした場合に0.005〜5質量部となる割合で含有させることができる。
【0022】
また、前記金属イオンを重合性溶液に含有させるための具体的な物質としては、塩化銀、塩化銅、ステアリン酸銅、ナフテン酸銅、塩化第二鉄、又は、銅(銅粒子や銅線)が好ましい。
これらを重合性溶液に含有させる場合には、通常、重合性溶液中のモノマーの合計量を100質量部とした場合に1×10-6〜1×10-2質量部となる割合で含有させることができる。
【0023】
なお、重合性溶液には、脱水剤や重合抑制剤をさらに含有させることができる。
該脱水剤としては、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウム等の硫酸塩、ゼオライト(モレキュラーシーブ)などを挙げることができ、このような脱水剤の重合性溶液における含有量は、例えば、重合性溶液中のモノマーの合計量を100質量部とした場合に0.01〜1質量部となる割合で含有させることができる。このような脱水剤は重合性溶液の調整時に混合攪拌して溶液中の水分を脱水した後、ろ過除去されることが望ましい。
また、前記重合抑制剤としては、アルカリ土類金属塩即ちベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの塩であって、例えば、ギ酸カルシウムなどを挙げることができ、このような重合抑制剤の重合性溶液における含有量は、例えば、重合性溶液中のモノマーの合計量を100質量部とした場合に0.002〜0.2質量部とすることができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、重合性溶液に気泡調整剤などをさらに含有させてもよく、該気泡調整剤としては、例えば、アルカリ土類金属塩、金属酸化物、珪藻土などの粉末状無機物、無水硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0025】
このような重合性溶液は、モノマーの重合、及び、発泡を行ってアクリル系樹脂発泡体を作製するのに際して、従来と同様の方法を採用することで、従来に比べて短時間でアクリル系樹脂発泡体を作製することができる。
【0026】
即ち、本実施形態においては、重合性溶液中に重合開始剤と還元剤とを同時に存在させ、必要に応じて加熱することによってモノマーを重合させて重合体を製造し、この重合体を発泡剤が分解する温度以上に加熱して発泡させてアクリル系樹脂発泡体を製造することができ、前記金属イオン、及び、前記塩化物イオンの作用によって前記重合体を得るまでの時間を従来に比べて大きく短縮させることができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を示してアクリル系樹脂発泡体の製造方法を具体的に説明するが、本発明のアクリル系樹脂発泡体の製造方法は以下に例示の方法に限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
メタクリル酸メチル61質量%、メタクリル酸24質量%、及び、スチレン15質量%からなるモノマー混合液100質量部に、発泡剤としての尿素を5質量部混合し、且つ、均一に溶解させてモノマー溶液を作製した。
さらに、重合開始剤としてt−ブチルヒドロパーオキサイド(日油社製「パーブチルH−69」)を0.48質量部、還元剤としてN,N−ジメチルアニリンを0.48質量部、塩化物イオン添加用物質としてヘキサトリメチルアンモニウムクロライド(日油社製「ニッサンカチオンPB−40R」)を0.04質量部、金属イオン(Cu2+)添加用物質としてステアリン酸銅(三津和化学薬品社製)を6.4×10-4質量部、前記モノマー溶液に加えて重合性溶液を作製した。
【0029】
この重合性溶液を直径18mm、長さ180mmのガラス製試験管に約10g入れ、該試験管を50℃の恒温槽に入れて重合性溶液中のモノマーを重合させた。
この重合性溶液は、恒温槽中で4時間加熱しただけで流動性が見られない状態になっており、触っても液状の付着物が見られず十分に硬化されている状態になっていた。
そして、その後、170℃に温度設定された熱風循環炉に入れて30分間加熱し、発泡剤(尿素)を分解、発泡させたところ、見かけ密度0.09g/cm3の白色のアクリル系樹脂発泡体を得ることができた。
【0030】
(実施例2)
メタクリル酸メチル61質量%、メタクリル酸24質量%、及び、スチレン15質量%からなるモノマー混合液100質量部に、発泡剤としての尿素を5質量部混合し、且つ、均一に溶解させてモノマー溶液を作製した。
さらに、重合開始剤としてクメンヒドロペルオキシド(日油社製「パークミルH−80」)を0.67質量部、還元剤としてN,N−ジメチルアニリン(ナカライテスク社製)を0.48質量部、塩化物イオン添加用物質としてジアルキルジメチルアンモニウムクロライド(ライオン社製「アーカード2HPフレーク」)を0.026質量部、金属イオン(Cu2+)添加用物質としてステアリン酸銅(三津和化学薬品社製)を6.4×10-4質量部、前記モノマー溶液に加えて重合性溶液を作製した。
【0031】
この重合性溶液を直径18mm、長さ180mmのガラス製試験管に約10g入れ、該試験管を50℃の恒温槽に入れて重合性溶液中のモノマーを重合させた。
この重合性溶液は、恒温槽中で5時間加熱しただけで流動性が見られない状態になっており、触っても液状の付着物が見られず十分に硬化されている状態になっていた。
そして、その後、170℃に温度設定された熱風循環炉に入れて30分間加熱し、発泡剤(尿素)を分解、発泡させたところ、見かけ密度0.088g/cm3の白色のアクリル系樹脂発泡体を得ることができた。
【0032】
(比較例1)
メタクリル酸メチル61質量%、メタクリル酸24質量%、及び、スチレン15質量%からなるモノマー混合液100質量部に、発泡剤としての尿素を5質量部混合し、且つ、均一に溶解させてモノマー溶液を作製した。
さらに、重合開始剤として、t−ブチルヒドロパーオキサイド(日油社製 パーブチル「H−69」)を0.48質量部、還元剤としてN,N−ジメチルアニリン0.48質量部、塩化物イオン添加用物質としてヘキサトリメチルアンモニウムクロライド(日油社製「ニッサンカチオンPB−40R」)を0.04質量部、塩化亜鉛を0.04質量部、前記モノマー溶液に加えて重合性溶液を作製した。
【0033】
この重合性溶液を直径18mm、長さ180mmのガラス製試験管に約10g入れ、該試験管を50℃の恒温槽に入れて重合性溶液中のモノマーを重合させた。
この重合性溶液は、恒温槽中で10時間加熱しても十分に硬化された状態にはならなかった。
【0034】
(比較例2)
メタクリル酸メチル61質量%、メタクリル酸24質量%、及び、スチレン15質量%からなるモノマー混合液100質量部に、発泡剤としての尿素を5質量部混合し、且つ、均一に溶解させてモノマー溶液を作製した。
さらに、重合開始剤としてt−ブチルヒドロパーオキサイド(日油社製「パーブチルH−69」)を0.48質量部、還元剤としてN,N−ジメチルアニリン0.48質量部、塩化物イオン添加用物質としてヘキサトリメチルアンモニウムクロライド(日油社製「ニッサンカチオンPB−40R」)を0.04質量部、四塩化チタンを0.04質量部、前記モノマー溶液に加えて重合性溶液を作製した。
【0035】
この重合性溶液を直径18mm、長さ180mmのガラス製試験管に約10g入れ、該試験管を50℃の恒温槽に入れて重合性溶液中のモノマーを重合させた。
この重合性溶液は、恒温槽中で10時間加熱しても十分に硬化された状態にはならなかった。
【0036】
なお、塩化亜鉛によって重合性溶液に含有されるZn2+、及び、四塩化チタンによって重合性溶液に含有されるTi4+は、酸化還元電位が負の値を示すことから実施例1、2におけるCu2+のような機能を発揮しなかったものと考えられる。
以上のことからも、本発明によれば、アクリル系樹脂発泡体を効率よく製造可能なアクリル系樹脂発泡体の製造方法が提供され得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系モノマー、尿素、窒素含有化合物からなる還元剤、及び、レドックス系重合開始剤を含有する重合性溶液を作製し、前記アクリル系モノマーを重合させた後、得られた重合体を加熱することによって前記尿素を分解させてアクリル系樹脂発泡体を形成させるアクリル系樹脂発泡体の製造方法であって、
前記重合性溶液には、Cu+、Cu2+、Fe3+、Ag+、Pt2+、及び、Au3+からなる群より選ばれる1種以上の金属イオンと塩化物イオンとを含有させることを特徴とするアクリル系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記重合性溶液には、スチレンをさらに含有させる請求項1記載のアクリル系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記重合性溶液は、含有されるモノマーの内の50〜70質量%がメタクリル酸メチルで、14〜30質量%が(メタ)アクリル酸で、10〜20質量%がスチレンであり、且つ、前記還元剤としてN−Nジメチルアニリンが含有されている請求項2記載のアクリル系樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−201704(P2012−201704A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64637(P2011−64637)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】