説明

アクリル系重合体微粒子、その製法及びプラスチゾル組成物

【課題】生産性が良好で、貯蔵安定性及び基材への接着性が良好なプラスチゾル組成物に有用なアクリル系重合体微粒子及びその製造方法、並びにそれを用いたプラスチゾル組成物を提供する。
【解決手段】全体の酸価が3mgKOH/g以下のアクリル系重合体微粒子であって、濃度が20質量%になるように重合体微粒子を水中に分散させて調製した分散液を、フェノールフタレインを指示薬として0.01NのKOH水溶液の滴定により測定して得られる酸価が0.1mgKOH/g以上であるプラスチゾル用のアクリル系重合体微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチゾル用のアクリル系重合体微粒子及びそれを使用したプラスチゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体微粒子を可塑剤に分散したプラスチゾル組成物は一般にペーストレジンと称され、現在工業的に広く用いられている。具体的には、例えば、自動車、床材、壁紙、鋼板等の用途に使用する被覆材、又はスラッシュ成形、ディップ成形、ローテーション成形等の成形用材料として用いられている。特に、重合体微粒子として塩化ビニル系重合体微粒子を用いた塩化ビニル系プラスチゾル組成物が広く使用されている。
しかしながら、塩化ビニル系樹脂は、例えば、低温で焼却すると猛毒物質であるダイオキシンが発生する問題を有している。そこで、このような問題のないプラスチゾル組成物としてアクリル系重合体微粒子を用いたアクリル系プラスチゾル組成物が提案されている。
近年、アクリル系プラスチゾル組成物が広範に使用されるようになり、要求される性能は高くなっている。特に、プラスチゾル組成物の貯蔵安定性や、プラスチゾル組成物の硬化物の鋼板、電着塗装鋼板等の各種基材への接着性の向上が望まれている。
【0003】
プラスチゾル組成物の貯蔵安定性を向上する方法として、特許文献1及び2には重合体微粒子の表層部に酸基を導入することが提案されている。
特許文献1の重合体微粒子は貯蔵安定性及び可塑剤保持性に優れたプラスチゾル組成物を得ることを目的としている。また、特許文献2の重合体微粒子は貯蔵安定性及びゲル化性能に優れたプラスチゾル組成物を得ることを目的としている。
しかしながら、プラスチゾル組成物の貯蔵安定性を向上させるために重合体微粒子表層部の酸基の密度を上げるとプラスチゾル組成物全体の酸価が上がるために、プラスチゾル組成物の硬化物の基材への接着性が低下する。
以上のように、特許文献1及び特許文献2では貯蔵安定性及び接着性に優れたプラスチゾル組成物は得られていない。
【特許文献1】WO00/01748号公報
【特許文献2】特開平6−322225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は生産性が良好で、貯蔵安定性及び鋼板、電着塗装鋼板等の各種基材への接着性が良好なプラスチゾル組成物に有用なアクリル系重合体微粒子及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の目的はそれを用いたプラスチゾル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための第1の発明は、全体の酸価が3mgKOH/g以下であって、濃度が20質量%になるように重合体微粒子を水中に分散させて調製した分散液を、フェノールフタレインを指示薬として0.01NのKOH水溶液の滴定により測定して得られる酸価が0.1mgKOH/g以上であるプラスチゾル用のアクリル系重合体微粒子である。
また、第2の発明は、酸基含有単量体の含有量が0.5質量%以下の単量体を1段以上で乳化重合して重合体(A)を形成し、次いでこのエマルション状態の重合体(A)の存在下で、酸基含有単量体の含有量が30質量%以上の単量体を滴下重合して重合体(B)を形成し、得られたアクリル系重合体のエマルションを乾燥処理する、前記のプラスチゾル用のアクリル系重合体微粒子の製造方法である。
更に、第3の発明は、前記アクリル系重合体微粒子及び可塑剤を含むプラスチゾル組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、生産性が良好で、貯蔵安定性及び鋼板、電着塗装鋼板等の各種基材への接着性が良好なプラスチゾル組成物に有用なアクリル系重合体微粒子が得られる。また、プラスチゾル組成物は自動車、床材、壁紙、鋼板等の用途に使用する各種被覆材やスラッシュ成形、ディップ成形、ローテーション成形等の各種成形用材料として広範に使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のアクリル系重合体微粒子は全体の酸価が3mgKOH/g以下であり、且つ、濃度が20質量%になるように重合体微粒子を水中に分散させて調製した分散液を、フェノールフタレインを指示薬として0.01NのKOH水溶液の滴定により測定して得られるの酸価(以下、単にアクリル重合体微粒子水分散液の酸価という)が0.1mgKOH/g以上である。アクリル系重合体微粒子を用いて得られるプラスチゾル組成物の基材への接着性の点からアクリル系重合体微粒子の全体の酸価は2mgKOH/g以下が好ましい。また、アクリル系重合体微粒子水分散液の酸価は0.2〜1mgKOH/gが好ましい。
【0008】
本発明において、アクリル系重合体微粒子の全体の酸価は、アクリル系重合体微粒子をトルエンに溶解して調製した溶液をフェノールフタレインを指示薬として0.1NのKOHエタノール溶液の滴定により測定して得られる酸価をいう。
本発明において、アクリル系重合体微粒子水分散液の酸価は、アクリル系重合体微粒子を濃度が20質量%になるように水に分散させて調製した分散液をフェノールフタレインを指示薬として0.01NのKOH水溶液の滴定により測定して得られる酸価をいう。
【0009】
アクリル系重合体微粒子の質量平均分子量の下限は8万以上が好ましく、10万以上がより好ましい。また、その上限は150万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。
【0010】
アクリル系重合体微粒子は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を50質量%以上含有し、且つ酸基含有単量体単位を含有する共重合体が好ましい。また、アクリル系重合体微粒子中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有率は70質量%以上がより好ましい。
【0011】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の原料である(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。これらは1種で又は2種以上を併用して用いられる。中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルは容易に入手することができ、工業生産の点で好ましい。
【0012】
酸基含有単量体単位の原料である酸基含有単量体としては(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸2−サクシノロイルオキシエチル、メタクリル酸2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル等のカルボキシル基含有単量体、アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体等が挙げられる。
【0013】
本発明のアクリル系重合体微粒子の製造方法としては、例えば、酸基含有単量体の含有量が0.5質量%以下の単量体を1段以上で乳化重合して重合体(A)を形成し、次いでこのエマルション状態の重合体(A)の存在下で、酸基含有単量体の含有量が30質量%以上の単量体を滴下重合して重合体(B)を形成し、得られたアクリル系重合体のエマルションを乾燥処理する方法が挙げられる。
エマルション中に分散するアクリル系重合体の一次粒子の体積平均粒子径(体積平均一次粒子径)は、可塑剤中での分散性の点で300nm以上が好ましい。プラスチゾル組成物の粘度及び貯蔵安定性の点で体積平均一次粒子径は350nm以上がより好ましく、400nm以上が特に好ましい。また、一次粒子が沈殿せずに安定に分散する点から体積平均一次粒子径は3μm以下が好ましい。
【0014】
重合体(A)の原料となる単量体としては酸基含有単量体の含有量が0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。酸基含有単量体の含有量を0.5質量%以下とすることにより、プラスチゾル組成物の硬化物は基材への接着性が良好となる傾向にある。
【0015】
重合体(A)は単量体を1段以上で乳化重合して得られるが、エマルション中の1次粒子の粒子径を好ましい値にする上でシード重合による多段重合が好ましい。また、シード粒子の重合はソープフリー乳化重合法が好ましい。
【0016】
重合開始剤としては水分散媒に可溶な重合開始剤が挙げられる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられ、一次粒子の凝集を抑制する点で過硫酸カリウムを使用することが好ましい。
重合開始剤の使用量は任意に設定することができる。例えば、アクリル系重合体の分子量を高くすることでアクリル系重合体微粒子を用いて得られる被覆層を有する物品又は成形品の強度が向上することから、重合開始剤の使用量は単量体100質量部に対して3質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0017】
乳化重合で使用される乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系等の各種乳化剤が挙げられるが、酸基含有単量体を用いた場合の重合安定性の点から、アニオン系乳化剤又はアニオン系乳化剤とノニオン系乳化剤との併用が好ましい。また、単量体との反応性を有する反応性乳化剤を用いることも出来る。
【0018】
重合体(B)の原料となる単量体としては酸基含有単量体の含有量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。酸基含有単量体の含有量を30質量%以上とすることにより、プラスチゾル組成物の貯蔵安定性は良好となる。
【0019】
重合体(B)は、重合体(A)のエマルションに重合体(B)の原料となる単量体を滴下しながら重合するのが好ましい。滴下重合を行うことにより、重合体(A)の粒子の表面を重合体(B)で被覆した粒子を得ることが容易である。
【0020】
得られたアクリル系重合体のエマルションを乾燥する方法としては、噴霧乾燥法、凝固後に濾過乾燥する方法等、公知の方法が挙げられるが、噴霧乾燥法が生産性の点から好ましい。
【0021】
アクリル系重合体微粒子を可塑剤に分散することによりプラスチゾル組成物が得られる。
本発明に用いる可塑剤としては、ジアルキルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル系可塑剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等、公知のものが挙げられる。これらは1種で又は2種以上を併用して使用できる。
可塑剤の配合量はアクリル系重合体微粒子100質量部に対して50〜300質量部が好ましい。
【0022】
本発明のプラスチゾル組成物には基材に合わせて適宜選択した接着剤を配合できる。特に、基材が電着板や鋼板の場合、エポキシ樹脂、ブロックウレタン樹脂、ポリアミン等の接着剤を用いることができる。これらは1種で又は2種以上を併用して使用できる。
接着剤の配合量はアクリル系重合体微粒子100質量部に対して0.1〜100質量部が好ましく、0.5〜50質量部がより好ましい。
【0023】
また、必要に応じて硬化剤を併用しても良い。硬化剤としては、エポキシ樹脂系接着剤を使用する場合には酸無水物、イミダゾール化合物等が挙げられ、ブロックウレタン樹脂系接着剤を使用する場合にはジヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0024】
本発明のプラスチゾル組成物には用途に応じて各種の添加剤を配合できる。添加剤の具体例としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、バライタ、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪砂、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、酸化アルミニウム等の無機フィラー類、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の希釈剤、減粘剤、消泡剤、防黴剤、防臭剤、抗菌剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、香料、発泡剤、レベリング剤等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。実施例中、「部」は「質量部」を意味する。また、各評価は以下の方法により実施した。
【0026】
(1)アクリル系重合体粒子の全体の酸価
アクリル系重合体微粒子をトルエンに溶解して調製した溶液をフェノールフタレインを指示薬として0.1NのKOHエタノール溶液の滴定することにより測定した。
(2)アクリル系重合体水分散液の酸価
アクリル系重合体微粒子を濃度が20質量%になるように水に分散させて調製した分散液をフェノールフタレインを指示薬として0.01NのKOH水溶液を滴定することにより測定した。
(3)貯蔵安定性
アクリル系重合体微粒子100部及び可塑剤としてジイソノニルフタレート100部からなる貯蔵安定性評価用のプラスチゾル組成物を調製した。尚、このプラスチゾル組成物は自転・公転方式スーパーミキサー((株)シンキー製、ARV−200)を用いて2000rpmで2分間混練して得た。得られたプラスチゾル組成物の初期の粘度を測定した。次いで、このプラスチゾル組成物を40℃の恒温室中に保温し、5日後に取り出して貯蔵後の粘度を測定した。
尚、粘度はBH型粘度計((株)東京計器製)を使用し、25℃、ローターNo.7で10rpmの条件で測定した。
また、プラスチゾル組成物の増粘率(%)を以下の式により算出し、貯蔵安定性を以下の基準で評価した。
増粘率(%)={(貯蔵後の粘度/初期の粘度)−1}×100
◎:100未満。
○:100以上、300未満。
×:300以上。
【0027】
(4)接着性
下記成分をミキサーで混練し、接着性評価用のプラスチゾル組成物を調製した。
<接着性評価用のプラスチゾル組成物の成分>
(a)アクリル系重合体微粒子100部
(b)可塑剤:ジイソノニルフタレート180部及びアルキルスルホン酸フェニルエステル系可塑剤(バイエル社製、商品名「メザモール」)20部
(c)接着剤:ブロックウレタン樹脂(三井武田ケミカル(株)製、B−7040)40部
(d)硬化剤:アジピン酸ジヒドラジド(大塚化学(株)製、商品名「アジピン酸ジヒドラジド」)1.76部
(e)無機フィラー:表面処理炭酸カルシウム(白石工業(株)製、商品名「CCR」)250部
得られたプラスチゾル組成物を幅25mm×長さ150mm×厚み0.8mmの電着板(日本ルートサービス(株)製、PN−310)の端部に長さ25mm×幅25mmで塗布した。この塗布部に、同サイズの別の電着板の端部分を、端部分のみが重なる状態でプラスチゾル組成物の厚さが3mmになるように圧接した。次いで、これを140℃で30分間加熱し、試験片を得た。これを室温で24時間放置した後、試験片の両端をチャックにて挟み、25℃環境下で引張剪断試験を行い、せん断接着強度を測定した。測定には(株)エー・アンド・デイ製の引張測定装置(商品名「RTA―250」)を用い、試験速度を50mm/分とした。得られたせん断接着強度について以下の基準で接着性を評価した。
<接着性>
◎:せん断接着強度1.5MPa以上。
○:せん断接着強度1.0MPa以上、1.5MPa未満。
×:せん断接着強度1.0MPa未満。
【0028】
[実施例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗及び冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに純水380gを入れ、30分間充分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を除去した。窒素ガスの通気を停止した後、メタクリル酸メチル15g及びメタクリル酸n−ブチル15gを入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10gの純水に溶解した過硫酸カリウム0.25gを一度に添加し重合を開始した。そのまま80℃で60分攪拌して重合を完了し、シード粒子のエマルションを得た。
次いで、メタクリル酸メチル125g、メタクリル酸n−ブチル125g、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩(花王(株)製、商品名「ペレックスO−TP」)5g及び純水125gを混合攪拌して2段目の単量体の混合物の乳化液を用意した。
前記シード粒子のエマルションに2段目の単量体の混合物の乳化液を2時間かけて滴下して重合した。引き続き80℃で1時間攪拌して重合を完了し、アクリル系重合体のエマルション(1)を得た。
次いで、メタクリル酸メチル170g、メタクリル酸i−ブチル75g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5g、ペレックスO−TP5g及び純水125gを混合攪拌して3段目の単量体の混合物の乳化液を用意した。
前記アクリル系重合体のエマルション(1)に3段目の単量体の混合物の乳化液を2時間かけて滴下しながら重合した。引き続き80℃で1時間攪拌して重合を完了し、重合体(A)のエマルションを得た。
この重合体(A)のエマルションに、重合体(B)用単量体の混合物としてメタクリル酸1g及び純水50gの混合物を5分間かけて滴下しながら重合した。引き続き80℃で1時間攪拌して重合を完了し、アクリル系重合体のエマルションを得た。
このアクリル系重合体のエマルションを室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmで噴霧乾燥し、アクリル系重合体微粒子(P1)を得た。
アクリル系重合体微粒子(P1)の全体の酸価は1.3mgKOH/gであり、アクリル重合体微粒子水分散液の酸価は0.54mgKOH/gであった。また、アクリル系重合体微粒子(P1)を用いて得られたプラスチゾル組成物の貯蔵安定性は増粘率43%、接着強度は1.1MPaで、共に良好であった。
【0029】
[実施例2及び3]
重合体(A)及び(B)用の単量体の混合物として表1に示すものに変更する以外は実施例1と同様にしてアクリル系重合体微粒子(P2)及び(P3)を得た。評価結果を表2に示す。
【0030】
[比較例1]
実施例1と同様にしてシード粒子のエマルションを調製し、次いで実施例1と同様にして2段目の単量体の混合物を重合して重合体(A)のエマルションを得た。
次いで、メタクリル酸メチル170g、メタクリル酸i−ブチル75g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5g、ペレックスO−TP5g及び純水125gを混合攪拌して重合体(C)用の単量体の混合物の乳化液を用意した。
前記重合体(A)のエマルションに、重合体(C)用の単量体の混合物の乳化液を2時間かけて滴下しながら重合した。引き続き80℃で1時間攪拌して重合を完了し、アクリル系重合体のエマルションを得た。
このアクリル系重合体のエマルションを室温まで冷却した後、実施例1と同様にして噴霧乾燥し、アクリル系重合体微粒子(P4)を得た。評価結果を表2に示す。
【0031】
[比較例2及び3]
重合体に供する単量体の混合物として表1に示すものに変更し、それ以外の条件は比較例1と同様にしてアクリル系重合体微粒子(P5)及び(P6)を得た。評価結果を表2に示す。
【0032】
【表1】

表中の略号を以下に示す。
MMA:メタクリル酸メチル
nBMA:メタクリル酸n−ブチル
iBMA:メタクリル酸i−ブチル
2HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
MAA:メタクリル酸
【0033】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体の酸価が3mgKOH/g以下であって、濃度が20質量%になるように重合体微粒子を水中に分散させて調製した分散液を、フェノールフタレインを指示薬として0.01NのKOH水溶液の滴定により測定して得られる酸価が0.1mgKOH/g以上であるプラスチゾル用のアクリル系重合体微粒子。
【請求項2】
酸基含有単量体の含有量が0.5質量%以下の単量体を1段以上で乳化重合して重合体(A)を形成し、次いでこのエマルション状態の重合体(A)の存在下で、酸基含有単量体の含有量が30質量%以上の単量体を滴下重合して重合体(B)を形成し、得られたアクリル系重合体のエマルションを乾燥処理する、請求項1に記載のプラスチゾル用のアクリル系重合体微粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のアクリル系重合体微粒子及び可塑剤を含むプラスチゾル組成物。

【公開番号】特開2008−63369(P2008−63369A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239936(P2006−239936)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】