説明

アクリル酸の生成方法

【課題】操業コストを低減できるアクリル酸の生成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの(メタ)アクリル酸の前駆体の気相酸化から得られた、(メタ)アクリル酸を含むガス混合物を蒸留する工程は、連結された蒸留カラムの使用を通して改良される。第1カラムでは、ガス状混合物が脱水され、一方、第2カラムでは、脱水されたガス状混合物が蒸留されて生成物、すなわち頂部流れおよび底部流れになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第119(e)条により、2006年9月15日に出願された米国仮出願60/844876号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸およびアクリル酸エステル(メチル、エチル、ブチルおよび2−エチルヘキシル)商品は、高分子の機能特性を制御するためのもっとも用途の広いモノマー系列のひとつを含む。これらのモノマーは、全てα,β不飽和カルボキシ構造を有し、これらのモノマーには、表面被覆、接着剤およびプラスチックにおいて、広範囲にわたる用途がある。さらに、ポリアクリル酸のナトリウム塩は、乳児用オムツで見かける高吸水性樹脂として広く使用されている。世界の原料アクリル酸の生産能力は、年間ほぼ80億ポンドである。
【0003】
アクリル酸の最初の合成が報告されたのは1843年である。この合成は、アクロレインの空気酸化によって達成された。成熟した化学製品の商品であるアクリル酸は、文献でよく検討されており、1927年以来、商業的に入手可能になっている。アクリル酸は、いくつかの異なる技法および原材料を使用して商業的規模で製造されてきており、これらの技法および原材料には、以下のものが含まれる。
1)エチレンシアノヒドリンプロセス
このプロセスのオリジナルバージョンでは、エチレンクロロヒドリンをシアン化ナトリウムと反応させてエチレンシアノヒドリンを作製する。最近の改良したものでは、エチレン酸化物をシアン化水素と反応させた。どちらの場合も、エチレンシアノヒドリンを85%硫酸で処理すると、アクリル酸および副産物である硫化水素アンモニウムが生じる。
2)アセチレン(レッペ)プロセス
このプロセスのオリジナルバージョンまたは化学量論的バージョンでは、アセチレンをニッケルカルボニルおよび塩化水素酸と反応させ、アクリル酸、水素ガスおよび塩化ニッケルを生じさせる。そのプロセスの後者のバージョンでは、臭化ニッケル/臭化銅(II)触媒を使用して、アセチレンを一酸化炭素および水と反応させ、アクリル酸を生じさせる。
3)βプロピオル酸プロセス
塩化アルミニウム触媒の存在の下、ケテンをホルムアルデヒドと反応させて、βプロピオル酸を得た。そして、βプロピオル酸を水溶性硫酸またはリン酸を使用して処理を行い、アクリル酸が生ずる。
4)アクリロニトリル加水分解
アクリロニトリルは、85%硫酸で容易に加水分解され、アクリル酸および副産物である硫化水素アンモニウムが生じる。
【0004】
これらの技法の全ては、商業的実施では、今日用いられているプロピレンプロセスの高温、気相、2工程空気酸化に置き換えられてきた。高活性および選択性に優れた不均一触媒の開発が、その技法にとって重要な要素であった。第1工程では、プロピレンは空気酸化され、アクロレインになり、そして、直ちに第2工程に直接供給され、そこで、アクロレインはさらに空気酸化され、アクリル酸になる。この2つの工程で使用された触媒は、それぞれの化学反応に対して最適化された混合金属酸化物である。第1工程の触媒は、他のいくつかの金属とともに、主に酸化モリブデンおよび酸化ビスマスを含む。第2工程の触媒もまた金属酸化物触媒を混合した合成物であり、そこで使用された酸化物は主にモリブデンおよびバナジウムの酸化物である。他のいくつかの成分は、活性および選択性を最適化するために触媒に混合される。プロピレンから作られたアクリル酸の80〜90%の収率は、これらの商業的触媒システムで実現された。
【0005】
アクリル酸反応体へ供給される供給ガスは、一般的には6〜9vol%プロピレンおよび12〜15%の(空気由来の)酸素であり、再生利用ガスまたは低圧蒸気のどちらかで構成される。その蒸気(または再生利用ガス)は、プロピレンおよび酸素の可燃性混合ガスが作られるのを防止するために希釈ガスとして添加される。一般的に混合ガスは、可燃性範囲の燃料リッチ側に維持される。化学量論的に酸素を過剰にすると、触媒の還元を防ぐための反応体が普通作製される。酸素のプロピレンに対する分子比は、一般的に1.6と2.0との間に維持され、これにより、流出ガスに酸素が含まれるようになる。
【0006】
米国特許出願公開第2001/0021788号明細書は、触媒ガス相酸化の反応、吸収剤によるアクリル酸の吸収およびアクリル酸含有水溶液の脱水の工程によるアクリル酸の生成方法を教示しており、その方法は、共沸溶媒の添加、結果として生じた混合物の蒸留、およびカラムの頂部におけるアクリル酸の濃度の0.06〜0.80重量パーセントの範囲での調整の工程によって特徴づけられる。この技法は、共沸脱水カラムの底部に共沸溶媒および水が実質的に含まれるのを防ぐ。
米国特許出願公開第2004/0249199号明細書もまた、共沸蒸留なしで高濃度のアクリル酸含有溶液を使用するアクリル酸の生成方法を教示している。アクリル酸を精製するその方法には、触媒ガス相酸化反応によって得られたアクリル酸含有ガスを吸収カラムに導入すること、およびアクリル酸含有溶液を晶析工程へ供給することが含まれる。これにより、その水溶液はアクリル酸および残留母液に分離される。残留母液の少なくとも一部は、それから蒸留され、そして、その蒸留液は吸収カラムを循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0021788号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0249199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
米国特許出願公開第2004/0249201号明細書もまた、共沸蒸留を行わない、高濃度のアクリル酸含有溶液からのアクリル酸の生成方法を教示している。その方法には、アクリル酸含有ガスを吸収する工程、および共沸溶媒を使用しないアクリル酸含有溶液の蒸留が含まれる。粗アクリル酸は、カラム底部流れおよび/またはカラム側部流れとして得られ、そして、精製されたアクリル酸を得るために、粗アクリル酸は、晶析工程へ供給される。
米国特許出願公開第2004/0220427号明細書は、(メタ)アクリル酸の生成工程で副産物として生じたマイケル付加反応生成物を熱分解して(メタ)アクリル酸を高い収率で回収することが可能になるプロセスを教示する。このプロセスには、出発化合物を酸化すること、粗(メタ)アクリル酸を得るために軽物質が液体反応混合物から分離される蒸留工程、副産物を熱分解して(メタ)アクリル酸を回収する工程、回収された(メタ)アクリル酸を蒸留段階に供給する工程を含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、メタクリル酸と同様にアクリル酸に適用可能な回収システムであり、その回収システムには、無溶媒蒸留システムが含まれ、その無溶媒蒸留システムで必要な、工業グレードのアクリル酸を精製するための塔は、2つ以下である。
【0010】
1つの態様では、本発明は、
A.少なくとも1つの(メタ)アクリル酸の前駆体の気相酸化から得られた、(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物を冷却する工程と、
B.前記冷却されたガス状反応混合物を脱水カラム内で脱水して、頂部流れおよび底部流れを生成する工程と、
C.前記頂部流れを少なくとも部分的に凝縮して凝縮液を作り、前記凝縮液の少なくとも一部を還流として前記脱水カラムに戻す工程と
を含む方法である。
【0011】
別の態様では、本発明は、
A.少なくとも1つの(メタ)アクリル酸の前駆体の気相酸化から得られた、(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物を冷却する工程と、
B.前記冷却されたガス状反応混合物を脱水カラム内で脱水して、脱水カラム頂部流れおよび脱水カラム底部流れを生成する工程と、
C.前記脱水カラム頂部流れを少なくとも部分的に凝縮して凝縮液を作り、該凝縮液の少なくとも一部を還流として前記脱水カラムに戻す工程と、
D.前記脱水カラム底部流れを少なくとも第1脱水カラム底部流れおよび第2脱水カラム底部流れに分離し、該第1脱水カラム底部流れおよび該第2脱水カラム底部流れのうちの一方の少なくとも一部を脱水カラム加熱器/リボイラーに通し、他方の脱水カラム底部流れの少なくとも一部を第2カラムの上半部に送る工程と、
E.前記第2カラムを通った前記底部流れの前記一部を前記第2カラム中で蒸留し、少なくとも第2カラム頂部流れおよび重成分を含む第2カラム底部流れを生成する工程と、
F.前記第2カラム頂部流れを少なくとも部分的に凝縮して第2頂部凝縮液を作り、該第2頂部凝縮液の少なくとも一部を前記脱水カラム加熱器/リボイラーに送る工程と、
G.前記第2カラム底部流れを前記第2カラム加熱器/リボイラーに送る工程と
を含む方法である。
【0012】
1つの態様では、側部引抜生成物流れが第2カラムから液体または蒸気として回収される。液体側部流れの場合、生成物は、トレイ(たとえば、ハットトレイ)から液体引抜として取り出される。この液体は、高沸点不純物、たとえば、重成分を含み、この高沸点不純物は、トレイの上に存在する。気体側部流れの場合、生成物は、トレイから蒸気を取り去り、それを凝縮することによって得られる。この凝縮された液体には、液体側部流れ生成物において見られるレベルよりはるかに小さなレベルの高沸点不純物しか存在しないであろう。
【0013】
1つの態様では、ガス状反応混合物は、全てではないにしても、主に脱水カラムの中で冷却され、一方、別の態様では、ガス状反応混合物は、脱水カラムに入る前に、分離直接接触装置、たとえば、噴霧冷却機または混合装置によって少なくとも主に冷却される。最も単純な形態では、この直接接触装置は、高温ガス状反応混合物を脱水カラムに運ぶ配管部分とすることが可能である。さらに、別の態様では、脱水カラムからの底部流れは、第2カラムに入る前に、少なくとも1つの冷却器およびサージタンクを最初に通過する。さらに別の態様では、汚れの減少を促進させるために脱水カラムの少なくとも一部が銅含有金属で構成されている。
【0014】
本発明は、また、メタクリル酸またはアクリル酸を含むガス混合物を蒸留するプロセス、(メタ)アクリル酸の前駆体の気相酸化から得られるガス混合物、連結された蒸留カラムの使用を含む改良を含む。
【0015】
驚くべきことに、本発明のプロセスにより、2つ以下の蒸留カラムを使用して工業グレードのアクリル酸を生産することが可能になる。たった2つのカラムしか必要ないという事実によって、資本支出を下げたり、操業コストを低減したりすることができる。有利なことに、本発明のプロセスでは、溶媒を必要としない。これにより、操業コストをさらに下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、脱水カラムの中で最初に反応混合物を冷却する場合の構成を示す概略工程フローシートである。
【図2】図2は、脱水カラムの前に、別個の容器の中で最初に反応混合物を冷却する場合の構成を示す概略工程フローシートである。
【図3】図3は、図2で示されたプロセスの変形を示す概略工程フローシートである。
【図4】図4は、図2で示されたプロセスの変形を示す概略工程フローシートである。
【図5】図5は、脱水塔からの底部流れの少なくとも一部が、仕上げ塔に入る前にサージタンクを通過する場合の構成を示す概略工程フローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この開示の中の数値範囲には、低い値と高い値とが少なくとも2単位離れている場合、1単位ずつ増加して、低い値および高い値を含めて低い値から高い値までの全ての値が含まれる。一例として、たとえば、分子量、粘度、メルトインデックス等のような、組成的、物理的または他の特性が100から1000までの場合、100、101、102等のような個々の値および100〜144、155〜170、197〜200等のような小範囲が明確に列挙されることを意図している。1未満の値、または少数を含む1より大きい値(たとえば、1.1、1.5等)を含む範囲では、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。10未満の1桁のディジット数からなる範囲の場合、1単位は、一般に0.1であるとみなされる。これらは、明確に意図されていることの一例にすぎない。そして、列挙されている低い値と高い値との間の全ての可能な数値の組み合わせは、この開示において明確に考慮されるべきである。この開示の中では、数値範囲は、他のものの中から、温度、圧力、設備の大きさ、ならびに混合物および/または配合物における成分の相対量等に規定される。
【0018】
「メタ」の用語は、その用語にメチル置換化合物が含まれることを示す。たとえば、(メタ)アクリル酸の用語は、アクリル酸およびメタクリル酸を表す。本発明の方法は、アクリル酸およびメタクリル酸の生産において使用することができるが、単純にするために、以下の記載ではアクリル酸について述べる。
【0019】
本発明の目的で、「軽」および「軽化合物」の用語ならびにそれらの複数形の用語は、所望の生成物の沸点より低い沸点を有する単数の化合物または複数の化合物を示す。たとえば、所望の生成物がアクリル酸の場合、水が軽化合物の一例になる。軽い流れには、少なくとも1つの軽化合物が含まれる。
【0020】
同様に、本発明の目的における「重」の用語は、所望の生成物の沸点よりも高い沸点を有する化合物を意味する。所望の生成物がアクリル酸である場合、アクリル酸のオリゴマーおよび周知のマイケル付加生成物が重化合物の例である。
【0021】
「分離システム」の用語は、脱水カラムおよび第2カラムを含む設備を示し、本明細書に記載されているように、本発明の方法で使用される。
【0022】
「工業グレードのアクリル酸」の用語は、重量で少なくとも98.5%のアクリル酸を示し、好ましくは99%のアクリル酸を有し、さらに好ましくは99.5%のアクリル酸を有するアクリル酸を示す。さらに、アクリル酸は、0.5%未満の水および0.4%未満の酢酸を有し、好ましくは0.3%未満の水および0.2%未満の酢酸を有し、さらに好ましくは0.15%未満の水および0.075%未満の酢酸を有する。
【0023】
「連結された蒸留カラム」の用語は、第1カラムからの尾部流れが直接または間接的に第2カラムの頂部に供給され、一方、第2カラムの頂部流れが直接または間接的に第1カラムの基部に供給されるように接続された2つの蒸留カラムを示す。「間接的」とは、第1カラムまたは第2カラムに入る前に、流れが最初に少なくとも1つの他の容器、たとえば、サージタンクおよび/または熱交換器を通過することを意味する。
【0024】
好ましくは、本発明の供給流れは、ガス状反応混合物である。この混合物は、アクリル酸の場合はプロピレン、メタクリル酸の場合はイソブチレンのような(メタ)アクリル酸前駆体の少なくとも1つを2工程触媒気相酸化して作製されることが好ましい。酸化工程の第2工程では、一般的に、(メタ)アクロレインのような中間体を最終生成物に変える。この周知の酸化プロセスは、商業的に広く使用されている。高温ガス状反応混合物の組成を考察するために米国特許第6646161号明細書を参照。この特許が教示することは、引用することにより本明細書の中に組み込まれる。
【0025】
本発明のプロセスの第1工程は、ガス状反応混合物を冷却することである。ガス状反応混合物は、反応系から来るとき、一般的に加熱状態である。つまり、ガス状反応混合物は、混合物を蒸発させるのに必要な熱の総量より大きな熱(エネルギー)を含む。本発明の1つの態様では、冷却工程は、ガス状混合物から過熱の総量の本質的にすべてを除去する。たとえば、高温アクリル酸反応体流出ガスおよび蒸気は、シェル−チューブ型熱交換器で260℃未満(〜500°F)に冷却され、その後、急冷システムに入る。急冷システムでは、ガスは、120℃未満(〜250°F)、好ましくは110℃未満(〜225°F)、さらに好ましくは100℃未満(〜212°F)の温度の液体からなるアクリル酸と直接接触して冷却される。次の蒸留カラムの底部流れと、急冷システムから出てくる放出ガスおよび蒸気との間の温度差は、28℃未満(〜50°F)、好ましくは5℃未満(〜10°F)、より好ましくは3℃未満(〜5°F)である。
【0026】
冷却工程は、装置の1つまたは2つ以上の部分で直接または間接的に行われる。たとえば、ガス状反応混合物の冷却は、急冷容器もしくはフラッシュ容器の中で開始されることが可能であり、または、カラム内部もしくはカラム内部でなく、脱水カラムの底部に組み込むこともできる。急冷システムは、高温ガスおよび蒸気が通過しなければならない断面領域にわたって、急冷液からなるアクリル酸を分配するために、1箇所または2箇所以上に1つまたは2つ以上のスプレーノズルを有することができる。ノズルは、高温ガスおよび蒸気の流路に対して水平方向に急冷液体を分配するような向き、または高温ガスおよび蒸気の流れの方向に対して軸方向に急冷液体を分配するような向き、または高温ガスおよび蒸気の流れの方向の反対側に急冷液体を分配するような向き、またはこれらの選択肢を組み合わせたような向きに向けられるようにしてもよい。外部の急冷システムの方向は、水平に対して0°〜90°とすることができ、好ましくは90°であり、もしくは高温ガスおよび蒸気に対して垂直であり、急冷液体は下向きおよび脱水カラムの入り口に向って並流で流れる。また、冷却システムは、タイプはとくに限定されない1つまたは2つ以上のトレイもしくは充填物、または2つを組み合わせたものを有するようにしてもよい。好ましくは冷却の工程は、脱水カラムの外部で、開始されるか、または主として行われる。
【0027】
急冷液を有するアクリル酸は、次の蒸留塔の底部から循環され、不溶性固形物を除去するために濾過された流れからなる1種または2種以上のアクリル酸と合流し、温度を制御するために熱交換器の中で加熱され、そして急冷システムに戻された液体から、構成されることが可能である。蒸留塔の底部から循環させられる液体の流量対1つまたは2つ以上の工程流れ(この工程流れは、蒸留塔の底部から循環させられる液体に加えられる。)の合計流量の比は、1:1、好ましくは5:1、さらに好ましくは9:1である。
【0028】
もっとも単純な形態では、冷却システムは、脱水カラムにパイプが入る前のパイプ部分とすることができ、そのパイプ部分では、パイプ部分の中心またはその付近でアクリル酸を含む液体を2つの対向する軸方向に分配させて衝突させることによって作製されたアクリル酸含有液体放射状に分配されたシャワーを、加熱ガスおよび蒸気は通過する。好ましくは、直径がパイプ部分の内径の0.1〜0.5倍、好ましくはパイプ部分の内径の0.2倍であるターゲット金属板を2つの噴出の中心に設けて、アクリル酸含有急冷液の放射状に分配されたシャワーを作り出す衝突装置として使用してもよい。有利なことに、2相流蒸気/液体分離装置は、脱水カラムの内部に、冷却された反応ガスおよび蒸気ならびに急冷液の入り口に備える。冷却された反応ガスおよび蒸気ならびに急冷液の流速を減少させ、脱水カラムの分離領域に渡って冷却された蒸気およびガスから急冷液の大部分を分離し、冷却された反応蒸気およびガスの大部分を脱水カラムの断面領域にわたって分配することになる設計であれば、この装置はどのような設計でも可能である。もっとも単純な形態では、それには、急冷された反応蒸気およびガスならびに急冷液のための脱水カラムの入り口に配置された衝突邪魔板が含まれる。
【0029】
本発明のユニークな特徴の1つは、脱水器に対して供給が2相供給(すなわち、気体と液体)であることである。これは、冷却工程の結果である。通常の蒸留塔では、たった1相の供給(すなわち、液体または気体)である。
【0030】
本発明の方法では、少なくとも部分的に冷却された反応混合物が脱水される。脱水は、好ましくは、脱水カラムで行う。脱水カラムは、入ってくるガス状反応混合物から水の大部分を除去する機能を果たす。有利なことに、脱水カラムは、底部流れおよび頂部流れが存在するように操作される。本発明の好ましい態様では、頂部流れの少なくとも一部が凝縮され、還流液体として脱水カラムに戻される。
【0031】
本発明の1つの態様では、本質的には、全ての不凝縮物および軽化合物は、頂部流れで脱水カラムを出て行く。アクリル酸の生成時に存在する不凝縮物の例には、たとえば、窒素、酸素、CO、二酸化炭素、ならびにプロパンおよびプロピレンのような不反応の炭化水素が含まれる。有利なことに、頂部流れは全て凝縮器に導入され、軽い流れの少なくとも一部は凝縮され、還流として脱水カラムに戻される。この凝縮器は、脱水カラムの内部または外部となることができ、シェルおよびチューブタイプ、または直接接触するタイプの設計(たとえば、急冷冷却器)の凝縮器とすることができる。凝縮器からのガス流れの一部は反応体へと再循環され、残りは、焼却炉に送られる。有用な生成物としてアクリル酸をさらに回収するために、再循環されるガスを、反応体に供給する前に、凝縮器に送ることができる。
【0032】
脱水カラムは、少なくとも部分的に蒸留カラムとしての機能を果たす。しかし、上述したように、脱水カラムは、ガス状反応混合物の冷却のための接触領域としてもまた役立つことができる。好ましくは、脱水カラム内の圧力は、入れられるガス状反応混合物の圧力よりも高くない。また、脱水カラムからの底部流れの温度は約120℃未満であることが好ましい。脱水カラムの頂部流れの温度は、低くても40℃である。
【0033】
脱水カラムの頂部凝縮器からの排出流れは、少なくとも部分的には反応システムへ再循環される。本発明の1つの態様では、排出流れの一部は、パージ流れとして分離システムから取り除かれる。
【0034】
脱水カラムの底部流れは、この流れの一部がガス状反応混合物を冷却するために使用されることが可能であることを除いて、有利なことに、第2カラムに送られる。本発明の1つの態様では、脱水カラムからの底部流れの一部が熱交換器に送られ、その熱交換器はリボイラーとすることができる。しかし、本プロセスは、また、熱交換器が冷却器であるような環境下で操作されることも可能であることに留意されたい。これは、本プロセスの設計で加熱が必要であるか冷却が必要であるかによる。本発明の好ましい態様では、脱水カラムからの底部流れの一部は第2カラム(仕上げ塔としてもまた知られている)へ供給される。有利なことに、供給ポイントは、第2カラムの頂部である。第2カラムは、好ましくは蒸留カラムであり、そして、リボイラーおよび凝縮器とともに使用される。
【0035】
第2塔は、2つの生成物流れ、すなわち、側部流れおよび残液流れを有する。これらの流れの違いは、重残余物の容量である。これらの流体における2つの重要な重残余物化合物は、アクリル酸二量体、すなわち、マイケル付加生成物、およびマレイン酸/無水物である。側部流れの残液流れに対する取出割合が増加すると、側部流れに比例してこれらの重残余物が残液流れに濃縮される。残液流れ(時にはエステルグレードアクリル酸と呼ばれる)は、高い二量体、抑制剤およびマレイン酸/無水物含有率のため、融解晶出装置、すなわち氷状アクリル酸装置に対する供給物として概して不適当である。しかし、とくに、アクリル酸エステル装置に二量体分解装置が備わっている場合、アクリル酸エステル装置のための供給物としてこの流れを使用することが可能である。アクリル酸ブチル(または他のアクリル酸エステル)装置の二量体分解装置は、二量体のほとんどを、アクリル酸ブチルに変えられる元のアクリル酸に変える。つまり、二量体中に含有しているアクリル酸含有物は、使用可能なアクリル酸の原料物質として回収される。残液生成物中のマレイン酸/無水物はブタノールと反応し、高沸点であり、精製系統においてアクリル酸ブチル生成物からの除去が容易なエステルを形成する。アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルのようなエステルの場合、二量体の分解は、反応/エステル化塔の基部の反応容積において十分な滞留時間と十分な温度を用意することによって、現場で行うことができる。
【0036】
工業グレードのアクリル酸と呼ばれる側部流れ物質は、氷状アクリル酸生産のための融液晶析装置に供給することが可能であり、または、アクリル酸エステル装置への供給物として使用することが可能である。仕上げ塔の能力を高める1つのプロセス増強は、そのリボイラー再循環ループに二量体分解装置を設けることである。このシナリオでは、分解装置残液流れはとても濃縮され、アクリル酸生成物のほとんど(>95%)が、側部流れ生成物(すなわち、工業グレードのアクリル酸)として取り出される。分解装置からの高凝縮残液流れは、その後、燃料値を回復するために焼却される。
【0037】
本発明の好ましい態様では、第2カラムからの頂部流れは凝縮器に送られる。好ましくは、凝縮器は、本質的には、頂部流れ全体が凝縮される「全体凝縮器」として操作される。しかし、不凝縮化合物のパージ流れをこの凝縮器から除去することが可能である。有利なことに、第2カラム凝縮器からの凝縮液は、そのまま、または追加された熱交換の後に、反応ガス混合物を冷却するために使用される。
【0038】
第2カラムからの底部流れの少なくとも一部は、有利なことに、第2カラムのリボイラーに送られる。底部流れの残りは、焼却することもでき、または、公知の方法によってさらに処理することもできる。公知の方法としては、たとえば、底部流れをアクリル酸エステル生産装置に送る方法、または、その後再循環可能なアクリル酸を回収するために底部流れを、マイケル付加化合物を処理する分解工程に送る方法がある。本発明の1つの態様では、底部流れは、本プロセスから回収されるアクリル酸の大部分を含む。しかし、本発明の好ましい態様では、アクリル酸の大部分は、第2カラムでの側部引抜流れから回収される。
【0039】
側部流れは第2カラム内であるという事実から見て、本発明のプロセスでは、反応ガス状反応混合物が分離システムに供給されるポイントより下のポイントで、製品アクリル酸は除去される。すなわち、生成物流れは分離システムの供給の下で除去される。
【0040】
第2カラムの温度および圧力は、とくに重要ではなく、当業者にとって周知の設計検討によって決定することができる。好ましくは、第2カラムは脱水カラムの操作圧力よりも低い圧力で操作される。好ましくは、第2カラムは、大気圧以下の条件で操作される。これは、より低い温度で第2カラムを操作でき、それによって、望ましくない二量体および/または重合体の生成を最小限にする点で有利である。有利なことに、アクリル酸を生産し、約40から約500mmHgの頂部圧力で第2カラムを操作するとき、頂部流れが第2カラムから出て行く際の頂部流れの温度は約40℃から90℃である。第2カラムからの底部流れの温度は、アクリル酸を生成するとき、有利なことに約60℃から約120℃である。
【0041】
温度、圧力、流量、カラムの高さおよび直径を含む設備の大きさ、構造物の材質の選択、熱交換器およびポンプのような補助設備の配置および種類の選択、カラム内部の選択および配列、ならびに取出流れを含む配管の位置のようなこれらの操作条件を含む、脱水カラムおよび第2カラムの設計の詳細は、当業者により、周知の設計検討にしたがって容易に決定されることが可能である。本発明の方法で使用することができる蒸留カラムの構成例には、たとえば、充填カラム、棚段カラム、垂直分割型カラム、多段揮発物除去装置などが含まれる。どのような種類のトレイも使用することができ、トレイの種類には、バブルトレイ、バルブトレイ、クロスフロートレイ、デュアルフロートレイおよびこれらを組み合わせたものが含まれる。同様に、充填物を使用する場合、どのような種類の充填物を使用することができ、充填物には、不規則充填物または規則充填物が含まれる。本発明の好ましい態様では、脱水カラムは上部に充填物および下部にトレイを含む。下部では、入ってくるガス状反応混合物を直接冷却する。脱水器および仕上げカラムの理論段数はとくに限定されない。脱水器で使用される理論段数は、好ましくは5〜50であり、より好ましくは20〜30である。仕上げカラムで使用される理論段数は、好ましくは5〜30であり、より好ましくは8〜20である。たとえば、図5に示すように脱水カラムと第2カラムとの間の1箇所または2箇所以上の位置で、分離システムの中で、サージタンクを任意選択的に使用することができる。
【0042】
本発明の好ましい態様では、プロセス装置は、「Moneltm」の商標の下で販売されている様々な合金のような銅または銅含有合金を使用して少なくとも部分的に構成される。これら、または他の銅含有合金は、空気の存在下での銅溶解の結果、アクリル酸の重合体抑制を提供する。悪いことに、マレイン酸を含む熱流れの存在下で腐食速度は、仕上げカラムのこれらの合金の実用的商業的な使用にとって速すぎる。しかし、脱水器の上部では、(高沸点のため)マレイン酸は本質的に存在せず、脱水器のこの領域には、汚れ減少スキームの一部としてMoneltmの銅含有合金で構成されたトレイまたは充填物を使用することができる。脱水器のこの領域におけるそのような充填物の使用は、充填物内の抑制剤の分布が悪いために起こる汚損可能性の緩和を助ける自己−抑制表面を提供する。316ステンレススチールを含むステンレススチールのような他の金属もまた、当業者によって周知の基準を用いてプロセス装置のための構成材料(複数可)として使用することが可能である。
【0043】
抑制剤を使用することは、構成材料の選択に関係なく、本発明の方法において好ましい。様々な化合物が、アクリル酸の反応を抑制するものとして周知であり、商業的に入手可能である。好ましい抑制剤の例には、可溶性マンガンイオン、可溶性銅イオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル−オキシ(TEMPO)および4−ヒドロキシTEMPOのような関連化合物が含まれる。抑制剤を組み合わせたものを使用することができる。本発明の好ましい態様では、脱水カラムで、酢酸マンガンのような可溶性マンガンイオン源および4−ヒドロキシTEMPOの混合物が抑制剤として使用される。また、4−ヒドロキシTEMPO/酢酸マンガンは、第2カラムにおいても好ましい抑制剤である。両方のカラムでとして使用することもできる別の抑制剤システムはヒドロキノン/酢酸マンガンである。酸素もまた抑制剤であると知られているので、酸素分子または空気を第2カラムに対して使用することもその技術分野で周知であるようにまた好ましい。当業者に周知であるように、抑制剤は、アクリル酸の重合を防止または抑制するのに十分な量で使用される。本発明の場合、脱水器に供給される反応ガスに、抑制剤システムにとって十分な量の酸素がすでに含まれているので、空気の注入は第2カラムの場合にのみに必要である。一般的に、カラム内の蒸気量に対して少なくとも0.1体積%の量の酸素がカラムの中に存在するように十分な空気が注入される。
【0044】
抑制剤のコストを最小にするために産業的によく使用される技法のひとつは、高抑制剤濃度を有する流れを再循環することである。本発明では、抑制剤は、第2カラムの残液流れ内に濃縮される。したがって、この流れの一部を脱水器の頂部および/または第2カラムの頂部に再循環させることができる。
【0045】
有利なことに、アクリル酸生成物流れは、側部引抜流れとして第2カラムから回収される。第2カラムの側部から引き抜く位置は、設計上の選択事項であり、当業者に周知な設計技法を用いて決定することができる。好ましくは、除去のこのポイントは、供給トレイよりも下側であり、リボイラーより理論段数で2段または3段上である。トレイは、クロスフローもしくはデュアルフローまたはその2つの任意の組み合わせのいずれの様式の設計でもよい。本発明は、また、充填物で、またはトレイと充填物との組み合わせで機能する。アクリル酸生成物は、蒸留塔の側部から、主に蒸気または液体として除去される。側部流れを集めるための装置は、ノズルと、内部蒸気または液体収集装置を使用してまたは使用しないで、液体のほとんどが蒸気から重力によって分離される蒸気−液体分離空間とを含む。液体または蒸気収集装置は、1つまたは2つ以上の打ち抜き穴を備えたパイプ、逆漏斗、漏斗、降下管、ハットトレイ、衝突邪魔板、液体ディストリビュータ、液体収集器、邪魔板またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。側部引抜流れ対底部流れの重量比は、好ましくは75:25であり、またはより好ましくは、95:5である。しかし、有利なことに、また、側部引抜流れ対底部流れの重量比は25:75、または5:95にもなるように当業者によっては設計することもできる。追加の態様では、側部引抜流れを取り出さないで、アクリル酸生成物の全てを底部流れの中から取り出すことができる。実際問題として、側部流れは、一般的に尾部流れよりも品質がよい。すなわち、側部流れに含まれる重成分は、尾部流れに比べて少ない。
【0046】
本発明のプロセスの驚くほど有利な点の一つは、生成物流れが、共沸溶媒または他の溶媒を必要としないプロセスによって高純度で生成される点である。たとえば、生成物流れは、有利なことに、重量で少なくとも約98.5%のアクリル酸を含み、より好ましくは、少なくとも約99%のアクリル酸を含み、さらに好ましくは、99.5%のアクリル酸を含む。有利なことに、生成物流れは、好ましくは約0.5%未満の水および約0.4%未満の酢酸を含み、より好ましくは約0.3%未満の水および約0.2%未満の酢酸を含み、さらに好ましくは約0.15%未満の水および約0.075%未満の酢酸を含む。本発明のプロセスは、好ましくは、さらに分離工程を伴わないで、工業グレードのアクリル酸として利用できる生成物流れを生成することができる。
【0047】
本発明の1つの態様を図1に示す。図1を参照すると、アクリル酸を含有する熱反応ガス混合物供給流れ1は、脱水カラム(または塔)10の下方の領域に導入される。脱水カラムに入ると、反応ガス混合物は、熱交換器12から供給された液体11と接触し、液体11によって冷却される。熱交換器12は冷却器または加熱器とすることができるが、好ましくはリボイラーである。接触は、噴霧、熱ガス状反応混合物が上昇すると通過する蒸留トレイもしくは充填物への冷却する液体の供給、またはこれらを組み合わせたものを含むことができる。部分的に冷却されたガス混合物は、当業者に周知な構成のトレイまたは充填物とすることができる内部(不図示)を通過して脱水カラムの上方へ流れる。冷却されたガス混合物は上方へ流れるので、それは、凝縮器13からの凝縮された軽い流れ7を含む還流液と接触する。凝縮器13で凝縮されなかったガスおよび蒸気は、凝縮器頂部流れ2として凝縮器から放出され、それから、凝縮器頂部流れ2は、再循環ガス流れ14および排気流れ15に分けられる。したがって、脱水カラムは、アクリル酸の大部分を反応ガス混合物供給流れ1から除去し、回収されたアクリル酸を底部流れ16でさらに進んだ処理に送る機能を果たす。
【0048】
脱水塔16からの底部流れ16の一部は、第2カラム17(または仕上げカラム)の頂部付近のポイントへ第2カラム供給流れ3として供給される。底部流れ16の残りの部分は、熱交換器供給流れ20として熱交換器12へ供給され、それから脱水カラムを再循環し、入ってきた熱反応混合物を冷却するために使用される。第2カラム供給流れ3からの液体は第2カラム内を下方に流れ、そこでリボイラー18から上昇してくる蒸気と接触する。第2カラムは蒸留カラムであることが好ましい。蒸留カラムの構成は、とくに重要ではなく、当業者に周知な基準のものを使用してそのカラムを設計することができる。第2カラムからの蒸気相頂部流れ8は凝縮器19に導入され、そこで、頂部流れの大部分が凝縮される。凝縮できないものの少量のパージ流れ(不図示)は、排気流れとして凝縮器19から排出され、排気流れは、処理され、再循環され、または別の方法で処理されることが可能である。凝縮器19からの凝縮された液体は、凝縮された液体流れ4として熱交換器12に送られ、そして、それから、流れ1のガス状反応混合物を冷却するために脱水カラムへ冷却液体流れ11として送られる。第2カラム底部流れ9の一部は、リボイラー18を経て第2カラムを再循環する。底部流れ9の残りは、追加の処理、処分またはこれらを組み合わせたものに向けて、残液流れ6として流れる。たとえば、残液流れ6はエステル装置、分解装置またはこれらを組み合わせた装置へ送ることができる。
【0049】
アクリル酸生成物流れ5は第2カラムの側部引き抜きとして取り出される。その流れは蒸気流れであることが好ましいが、液体流れとすることもできる。
【0050】
図2は、ガス状反応混合物1の冷却が、脱水カラムの前の分離容器で主に行われる、図1の変形の1つを示す。この態様では、反応ガス混合物1は噴霧冷却装置21に入り、冷却された反応ガス22は冷却器から除去され、処理のための脱水カラムへ送られる。この態様では、加熱器/リボイラー(熱変換器)12は、脱水カラム底部流れ20および供給流れとしての凝縮器19からの流れ4を受け取るために、工程スキームの中で再配置および適合される。
【0051】
図3は、加熱器/リボイラー12が、図1における加熱器/リボイラー12と同じ位置に保持され、噴霧冷却器21への供給流れ23が、今や脱水カラム底部流れ16の一部のみである、図2の変形の1つを示す。流れ16,23,20および4の大きさを変えることができるが、通常、流れ23が最も大きい。この変形では、反応ガス流れ1は、段階的な冷却工程に送られ、第1の工程は噴霧冷却器21内で行われ、次の工程は、脱水カラム10内で行われる。すなわち、冷却された反応ガス流れ22は液体11でさらに冷却が行われる。
【0052】
図4は、2つの加熱器/リボイラー、すなわち加熱器/リボイラー12aおよび12bが使用される、図2の他の変形である。加熱器/リボイラーは、大きさおよび/またはデザインを、同じまたは異なるようにすることができ、加熱器/リボイラー12aは、図1の加熱器/リボイラー12と本質的に同じように配置され、および接続され、そして、加熱器/リボイラー12bは、図2の加熱器/リボイラー12と本質的に同じように配置され、および接続される。
【0053】
図5は、図2のさらに別の変形であり、この例では、サージタンク24が、脱水塔21と仕上げ塔17との間に配置される。噴霧冷却器21に対する加熱器/リボイラー12の位置は、図2と異なるが、本質的に同じ機能を提供する。すなわち、脱水カラム10に入って処理が行われる前に、熱反応ガス状反応混合物流れ1を少なくとも部分的に冷却する。サージタンク24は、過剰に流れたときの脱水カラム底部の流れを受け入れ、それから保持し、そして/または、さらに追加の工程のために、これらの過剰な底部を仕上げ塔17へ送ることが可能となるように配置される。
【0054】
追加の1つの態様(図5に不図示)は、脱水カラムからの底部の少なくとも一部を、サージタンクに入る前に少なくとも1つの冷却器に通過させることを含む。さらに、サージタンクからの流れの少なくとも一部が、第2カラムに入る前に少なくとも1つの予備加熱器を通過することを含む。有利なことに、少なくとも1つの冷却器および少なくとも1つの加熱器は同じ装置、すなわちプロセストゥプロセス熱変換器にすることができる。
【実施例】
【0055】
(本発明の具体的な実施例)
本発明を説明するために以下の例を示すが、発明の範囲を限定するように解釈すべきでない。別に指摘がなければ、全ての部、パーセントは、重量単位である。
【0056】
例1
図1に示す工程図にしたがって分離工程が行われる。ガス状反応混合物(3100g/hr)、すなわち流れ1は、分離工程の脱水カラムに導入される。ガス状反応混合物は、アクリル酸前駆体の触媒気相酸化で得られたアクリル酸を含んでおり、流れ1の温度は177℃であり、その圧力は18.7psia(約129kPa)であり、その組成は、アクリル酸が16.6%、酢酸が0.9%、水が6.8%、非凝縮物が75.2%であり、および他の反応副産物が0.5%である。
【0057】
脱水カラムからの頂部蒸気は凝縮器で部分的に凝縮される。分縮器からの蒸気流れ(2590g/hr)、すなわち流れ2の温度は54℃であり、その圧力は16.7psia(約115kPa)であり、その組成は、アクリル酸が0.5%、酢酸が1.1%、水が8.4%、非凝縮物が89.9%であり、および他の反応副産物が0.1%である。流れ1の水の大部分は、流れ2では除去されている。
【0058】
脱水カラムからの底部流れ(1420g/hr)、すなわち流れ3は、第2カラムに送られる。流れ3の温度は84℃であり、その圧力は16.8psia(約116kPa)であり、その組成は、アクリル酸が87.4%、酢酸が7.4%、水が4.2%、および他の不純物が1.0%である。
【0059】
第2カラムからの頂部流れは凝縮器に送られる。この凝縮器からの凝縮液(909g/hr)、すなわち流れ4の温度は60℃であり、その圧力は2.9psia(約20kPa)であり、その組成は、アクリル酸が81.8%、酢酸が11.5%、水が6.6%、および他の不純物が0.1%である。
【0060】
第2カラムからの側部引き込み(516g/hr)、すなわち流れ5の温度は95℃であり、その圧力は3.0psia(約21kPa)であり、その組成は、アクリル酸が99.5%、そして他の不純物が0.5%である。
【0061】
第2カラムからの底部流れ(28g/hr)、すなわち、流れ6の温度は110℃であり、その圧力は3.0psia(約21kPa)であり、その組成は、アクリル酸が52.3%、重物が44.5%そして他の不純物および重合抑制剤が3.2%である。
【0062】
例2:仕上げカラム蒸気側部流れ実験例
0.24インチステンレスの1フィートの長さ部分当たり1インチの直径のPro−Paktm充填物を備えた熱サイフォン型リボイラーを有する連続実験蒸留カラムを組み立てる。蒸気側部流れ装置は、充填物部分の頂部に取り付けられる。20段トレイの1インチオルダーショウ部分は蒸気側部流れ装置の頂部に設置される。カラムの頂部には、ポンプおよび供給容器装置を経て、オルダーショウ部分の頂部に予備加熱された液体を供給する供給部分を備える。電気的に記録された全ての頂部取出ラインはカラムの頂部に取り付けられ、そして、これは、凝縮器の頂上で導入される抑制剤の溶液ともに、蒸気を凝縮器に供給する。凝縮器は、真空ポンプと接続した真空ラインを備えたレシーバに接続される。ポンプはレシーバから液体を連続的に除去して収集容器に貯めるために使用される。少量の漏れ出した空気がリボイラーに注入され、抑制剤に酸素が供給される。分離ポンプは、収集容器に供給する、(冷却のために)直列に並んだ凝縮器を経て、塔の基部から液体を除去するために使用される。蒸気側部流れは、カラムから集められ、蒸気側部流れレシーバおよび頂部レシーバと接続する真空ラインを経て凝縮器内および頂部レシーバ内へ送られる。このラインは、塔からの蒸気の除去速度を制御するためにニードルバルブを備える。側部流れ凝縮器には、抑制剤溶液が連続的に供給され、そして凝縮された蒸気は、その重さにより側部流れレシーバへ排出される。そのレシーバ内の液体は連続的にレシーバから生成物容器へポンプによってくみ出される。操作パラメータは、3回の30分物質収支運転による表1から得られる。
【0063】
【表1】

【0064】
3回の30分物質収支運転の場合の流体および生成物の組成を図2A〜Dに示す。
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
例3:仕上げカラム液体側部流れ
例2で使用されたものと同じオルダーショウカラムを組み立てる。ただし、充填カラム部分を5段トレイ、1インチのオルダーショウ部分に置き換え、蒸気側部流れ部分を、抑制剤の注入を行わない液体側部流れ部分に置き換える。3回の30分物質収支運転による操作パラメータを表3Aで報告する。
【0070】
【表6】

【0071】
3回の30分物質収支運転の場合の流体の組成を図3B〜Eに示す。
【0072】
【表7】

【0073】
【表8】

【0074】
【表9】

【0075】
【表10】

【0076】
例4:脱水器
実験スケールの脱水器は、供給部分をリボイラーの頂部に配置して組み立てられる。それから、0.24インチステンレスPro−Paktmを含む1インチ充填部分は、供給部分の頂部に配置され、そして、充填部分の頂部に、リボイラーの内容物を再循環させて、カラムへの液体供給とともに充填部分の頂部に供給する、別の供給部分を付ける。リボイラー上の供給部分には、擬似反応液体供給、空気および窒素が導入されたチューブ炉からの蒸気が供給される。チューブ炉は、加熱アクリル酸反応体供給の模擬実験を行うために、液体を蒸発させ、ガスを加熱する。充填部分の頂部の供給部分の頂部に、25段1インチのオルダーショウトレイを付ける。トレイの頂部の上には、予備加熱された還流をカラムに戻すための供給部分が配置される。還流部分の上には、加温分縮器および抑制剤供給部を備えたレシーバにつながれた、電気加熱された全取出装置を付ける。分縮器からの液体は、還流としてカラムの頂部に供給される。分縮された蒸気および不活性ガスは、それから、残留蒸気を凝縮することにより排出口を通過して不活性ガスをパージさせる冷却凝縮器およびレシーバに供給される。冷却された液体は、頂部生成物としてカラムからポンプで連続的にくみ上げられ、頂部生成物容器に入れられる。液体生成物もまたリボイラーから連続的にくみ上げられ、凝縮器を通過して残液容器に入れられる。3回の30分物質収支運転の場合の操作パラメータを表4Aで報告する。
【0077】
【表11】

【0078】
3回の30分物質収支運転の場合の流体の組成を図4B〜Eに示す。
【0079】
【表12】

【0080】
【表13】

【0081】
【表14】

【0082】
【表15】

【0083】
例5:連結された脱水器および仕上げカラム
以上のように記載された実験スケールの脱水器カラムおよび実験スケールの液体側部流れ仕上げカラムは、脱水器カラムから残液生成物流れを取り出し、仕上げカラムの頂部にそれを供給し、仕上げカラム頂部生成物流れを取り出し、そして、脱水器カラムの充填部分の頂部にそれを供給することによって連結される。運転10および運転11では、2時間サージ容器が2つのカラムの間で使用され、運転12の場合、サージ容器は使用されない。すなわち、流れは一方のカラムから他方のカラムへ直接供給された。3回の30分物質収支運転による操作パラメータを表5Aで報告する。
【0084】
【表16】

【0085】
3回の30分物質収支運転の場合の流体および生成物の組成を図5B〜Iに示す。
【0086】
【表17】

【0087】
【表18】

【0088】
【表19】

【0089】
【表20】

【0090】
【表21】

【0091】
【表22】

【0092】
【表23】

【0093】
【表24】

【0094】
以上のように本発明をかなり詳細に記載したが、この詳細は説明の目的とする。以下の請求項に記載されているように、発明の精神および範囲を逸脱しないで、本発明において多くの変形や改良を行うことは可能である。上記に示した全ての刊行物、とくに全ての米国特許、すなわち特許された米国特許出願および発行された米国特許出願を含む刊行物は、引用することにより本明細書の中に完全に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.少なくとも1つの(メタ)アクリル酸の前駆体の気相酸化から得られた、(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物を冷却する工程と、
B.前記冷却されたガス状反応混合物を脱水カラム内で脱水して、脱水カラム頂部流れおよび脱水カラム底部流れを生成する工程と、
C.前記脱水カラム頂部流れを少なくとも部分的に凝縮して凝縮液を作り、該凝縮液の少なくとも一部を還流として前記脱水カラムに戻す工程と、
D.前記脱水カラム底部流れを少なくとも第1脱水カラム底部流れおよび第2脱水カラム底部流れに分離し、該第1脱水カラム底部流れおよび該第2脱水カラム底部流れのうちの一方の少なくとも一部を脱水カラム加熱器/リボイラーに通し、他方の脱水カラム底部流れの少なくとも一部を第2カラムの上半部に送る工程と、
E.前記第2カラムを通った前記底部流れの前記一部を前記第2カラム中で蒸留し、少なくとも第2カラム頂部流れおよび重成分を含む第2カラム底部流れを生成する工程と、
F.前記第2カラム頂部流れを少なくとも部分的に凝縮して第2頂部凝縮液を作り、該第2頂部凝縮液の少なくとも一部を前記脱水カラム加熱器/リボイラーに送る工程と、
G.前記第2カラム底部流れを前記第2カラム加熱器/リボイラーに送る工程と
を含む、共沸溶媒を使用しないで(メタ)アクリル酸を回収する方法。
【請求項2】
前記第2カラムから生成物側部流れを回収する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成物側部流れの少なくとも一部を液体として回収する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生成物側部流れの少なくとも一部を蒸気として回収する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2カラムの生成物側部流れおよび前記第2カラム底部流れを、5:95から95:5の側部流れ対底部流れの重量比で、回収する請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2カラム底部流れの少なくとも一部の前記重成分を分解して(メタ)アクリル酸を生成する請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2カラムが大気圧より低い圧力で操作される請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水カラムが、少なくとも大気圧、かつ冷却される前の前記ガス状反応混合物の圧力を超えない圧力で操作される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水カラム底部流れの温度は120℃を超えない請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記脱水カラムの頂部の温度が、少なくとも40℃である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ガス状反応混合物が前記脱水カラム内で冷却される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス状反応混合物が、前記脱水カラムとは別の蒸気/液体接触装置内で、少なくとも部分的に冷却される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス状反応混合物が、前記脱水カラム加熱器/リボイラーからの液体に前記混合物を直接接触させることによって、冷却される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2カラムへ送られる前記脱水カラム底部流れの少なくとも一部が、前記第2カラムに入る前に、サージタンクを通る請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第2カラム底部流れの少なくとも一部が、アクリル酸エステル生成装置へ送られる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記脱水カラムの内部に入っている間の(メタ)アクリル酸の重合を抑制するために、抑制剤充填物を前記脱水カラムに加える工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記抑制剤充填物が、4−ヒドロキシTEMPOおよび可溶性マンガンイオンを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記(メタ)アクリル酸がアクリル酸である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記他方の脱水カラム底部流れの少なくとも一部を第2カラムの頂部に送る請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記重成分が、二量体分解装置で分解される請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107894(P2013−107894A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−22208(P2013−22208)
【出願日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【分割の表示】特願2009−528385(P2009−528385)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(510203555)アルケマ インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】