説明

アクリル酸製造においてアクリル酸を高純度に精製する方法

【目的】 プロピレンおよび/またはアクロレインを接触気相酸化して生成するアクリル酸および副生物含有ガスを、水と接触させてこれらを含有する水溶液とし、更にこれに共沸溶剤を加えて蒸留を行い、副生物−水−共沸溶剤の混合物を塔頂から留出させ、塔底からアクリル酸を得る方法を改良してアクリル酸を高純度に精製する方法を提供する。
【構成】 共沸溶剤として、溶剤A(ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、酢酸n−プロピルの1種または1種以上)と溶剤B(トルエン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンの1種または1種以上)の混合溶剤を用いることにより、アクリル酸を高純度に精製する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プロピレンおよび/またはアクロレイン(以下、「プロピレン等」ということがある)を分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクリル酸を製造する方法に関する。詳しくは、接触気相酸化して得た反応生成物から副生物、特に酢酸を効率よく分離してアクリル酸を高純度に製造する方法に関する。更に詳しくは上記生成物に水を加えて水溶液とし、これに更に共沸溶剤を加えて共沸現象により副生物を除去して高純度のアクリル酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プロピレン等を、酸化触媒の存在下に分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化すると、目的物であるアクリル酸の他、酢酸,蟻酸,アセトアルデヒド,ホルムアルデヒド等の副生物、更には未反応のプロピレン,アクロレイン等の原料物質を含む混合ガスが反応生成物として得られる。従来、プロピレン等を分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化してアクリル酸を工業的に製造する方法においては、この接触気相酸化して得た混合ガスをアクリル酸捕集塔に導いて水と接触させて冷却・吸収捕集し、アクリル酸と酢酸等の副生物を含む水溶液を得、この水溶液から蒸留法によりアクリル酸を分離、精製して製品を得ている。
【0003】しかし、各種副生物の中でも比較的多いのは酢酸であって、これを蒸留して分離するには、蒸留温度が高い(酢酸の沸点は常圧下118.1℃)為にアクリル酸が重合しやすいこと、アクリル酸と酢酸は比揮発度(relative volatility)が小さくて単純に蒸留で分離するのは難しいこと、等の問題がある。そこで酢酸−水−共沸溶剤からなる三成分系または三成分系以上の共沸現象を利用すべく、前記反応生成物を水と接触させて水溶液を得、更に共沸溶剤を加えて蒸留し、塔頂から酢酸−水−共沸溶剤の混合物を留出させ、塔底からアクリル酸を得る方法が行なわれている。
【0004】特公昭63−10691号では共沸溶剤としてトルエンを用いている。しかし、この方法では大部分の酢酸が共沸によって分離できるものの、一部は分離できずに共沸分離塔の塔底からアクリル酸と共に抜き出される。従って、更に酢酸分離塔を設けてここで残りの酢酸を分離しており、共沸分離塔と酢酸分離塔の2つの塔が必要となっている。
【0005】また、特公昭46−34691号、特公昭46−18967号では共沸溶剤として酢酸エチル、酢酸ブチル、ジブチルエーテル、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル等を用いて共沸蒸留を行ない、塔頂から共沸溶剤、酢酸および水を留出させ、塔底からアクリル酸を得ている。しかし、本発明者からの検討によれば、これらの方法では塔底から得たアクリル酸を蒸留して高沸点不純物を除去しただけでは酢酸の分離が十分ではなく、アクリル酸製品とするには不十分であることが判明した。
【0006】尚酢酸以外の不純物として掲げた上記混在物のうち、蟻酸(bp100.8℃)、アセトアルデヒド(bp20.8℃)、ホルムアルデヒド(bp−19.5℃)、アクロレイン(bp52.5℃)は、いずれも低沸点であり、殊更上記共沸によらずとも十分除去可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑み、接触気相酸化後の混合ガスを水で捕集して得たアクリル酸、酢酸等の副生物を含むアクリル酸水溶液に、選択された共沸溶剤を添加して共沸蒸留し、塔頂から共沸溶剤、酢酸および水を留出させ、塔底からアクリル酸を得るに際し、実質的に共沸溶剤、酢酸および水が全量塔頂から留出すると共に、塔底からは実質的にアクリル酸のみが抜き出されるような高純度アクリル酸の精製方法を提供しようとするものである。
【0008】本発明の他の目的は塔底から抜き出された液をそのままでもアクリル酸エステルの製造原料として用いることができ、また更に蒸留して高沸点不純物を除去しただけで十分高品質のアクリル酸製品が得られる様な高純度アクリル酸を得る方法を提供することにある。
【0009】また本発明の更に他の目的は、上記共沸溶剤として2種以上の共沸溶剤混合物を用いることとし、特に優れた組合せ共沸溶剤系を見出すことにあり、特にその優れた混合比率を見出すことにある。また本発明の更に他の目的は、共沸分離塔の塔頂から得られた酢酸−水−共沸溶剤の混合物を前記アクリル酸水溶液形成のための水、および共沸の為の共沸溶剤に分離してこれらを循環使用することができる様な工業的に有利な方法を提供しようとするものである。本発明のその他の目的は、以下説明するところに従って理解され、且つその効果も当業者にとって容易に理解されるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するものであり、その中心となる技術的思想は、共沸溶剤として下記溶剤Aと溶剤Bを混合溶剤として用いることを要点とするものであり、この様な特に選択された溶剤A,Bの組合せ使用によって、共沸分離塔の塔頂からは実質的に酢酸、水、共沸溶剤からなる混合物を留出させ、塔底からは実質的に酢酸、水、共沸溶剤を含まない高純度のアクリル酸を取出すことが可能となったのである。
溶剤A:ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、酢酸n−プロピルよりなる群から選択された少なくとも1種の溶剤溶剤B:トルエン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンよりなる群から選択された少なくとも1種の溶剤
【0011】
【作用】本発明はこの様な技術的思想を種々の実施態様によって具現化していくものであり、その代表的な実施態様を図1に示すフローシートおよび幾つかの実施例に基づいて以下説明するが、本発明の技術的範囲はその説明によって制限されるものではなく、該説明によって明らかにされる趣旨から逸脱したり反したりするものでない限り、他の実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0012】プロピレン等を分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスをライン1からアクリル酸捕集塔101に導き、ライン2から導かれる水と接触させてライン4からアクリル酸および酢酸等の副生物を含むアクリル酸水溶液を得る。ライン2からアクリル酸捕集塔101に供給する水としては、ライン13から水を供給して用いてもよいが、後述する様に溶剤回収塔103の塔底から排出する酢酸水溶液を用いるのが好適である。
【0013】図1のフローシートの場合、アクリル酸捕集塔101の塔底からライン4を経て排出するアクリル酸水溶液をそのまま共沸分離塔102に供給する。しかし、必要であればアクロレイン放散塔(図示しない)を設置して、ライン4からのアクリル酸水溶液をアクロレイン放散塔に供給し、アクリル酸水溶液中に溶解しているアクロレインを放散させ、その後アクリル酸水溶液を共沸分離塔102に供給してもよい。この場合、放散したアクロレインを回収して反応系に循環するのがよい。
【0014】共沸分離塔102では、アクリル酸水溶液をライン4から、共沸溶剤をライン5から夫々供給して共沸蒸留し、塔頂から共沸溶剤、酢酸および水を留出させ、塔底からアクリル酸を得る。
【0015】本発明において共沸分離塔102中のアクリル酸水溶液は、ライン2からアクリル酸捕集塔101に供給する水の量やその他の運転条件で変化するが、通常行なわれているアクリル酸合成の生産条件の下ではアクリル酸50〜80重量%、酢酸2〜5重量%、残部水の範囲内のものが一般的である。本発明において用いる共沸溶剤は上記した溶剤Aと溶剤Bとの混合溶剤である。
【0016】溶剤Aのグループと溶剤Bのグループは上記した通りであり、その如何なる組合せにおいても本発明は優れた効果を発揮するので、その組合せ選択は本発明を実施する者の自由に委ねられる。但し溶剤Aはいずれも親水性が高いものであって、その様な溶剤Aの中でもっとも推奨される溶剤は、水との共沸組成や共沸温度、更には溶剤価格等を総合的に考慮すると、メチルイソブチルケトンがもっとも有利である。また溶剤Bは酢酸との親和性が高いものであり、いずれも酢酸との共沸形成が期待され、反応の進行状況等に応じて最適のものを選択すれば良い。
【0017】この特定の共沸溶剤を用いることによって、共沸分離塔102の塔頂から実質的に酢酸、水、共沸溶剤からなる混合物を留出させ、塔底から実質的に酢酸、水、共沸溶剤を含まないアクリル酸を得ることができる。ライン5から供給される共沸溶剤の溶剤Aと溶剤Bとの混合比率は重量比で50:50〜75:25の範囲内が好適である。溶剤Aが多過ぎると塔底での酢酸濃度が高くなり、溶剤Bが多過ぎると、塔頂から留出するアクリル酸が増えてくる。
【0018】共沸分離塔102の塔頂から留出した実質的に酢酸、水、共沸溶剤からなる混合物は貯槽20に受け、ここで主として共沸溶剤からなる有機相と、主として酢酸および水からなる水相とに分離する。有機相はライン5を経て共沸分離塔102に循環する。一方、水相はライン8を経て溶剤回収塔103に導いて蒸留し、溶剤回収塔103の塔頂から共沸溶剤を留出させライン9を経て貯槽20に戻し、溶剤回収塔103の塔底からはライン14を経て実質的に酢酸および水からなる酢酸水溶液を抜き出し系外に排出する。しかし、この酢酸水溶液はライン10からアクリル酸捕集塔101に循環させて接触気相酸化して得た混合ガスに接触させる水として用いることによって有効に活用することもできる。こうすることにより、単に酢酸水溶液を回収・循環しているだけでなく、接触気相酸化して得た混合ガスに接触させる水として酢酸水溶液を用いる方が、ライン13からの水のみを用いるよりもアクリル酸の捕集効率が高くなるので、アクリル酸捕集塔101の必要段数が少なくてすむ利点が得られる。これは酢酸水溶液中の酢酸がアクリル酸に対して良好な親和性を示す為であると理解される。尚系内を循環させるうちに酢酸濃度が高まり過ぎない様にライン13からの水の供給量、ライン14からの酢酸水溶液の抜き出し量を制御して全体のバランスを保つことが望まれる。
【0019】共沸分離塔102の塔底から抜き出したアクリル酸はライン15を経てエステル化工程に送り、そのままアクリル酸エステルの製造原料として用いることができる。また、高純度のアクリル酸製品を得るには、ライン7を経て高沸分離塔104に導いて蒸留し、塔底からライン12を経て重合物などの高沸点物を抜き出し、塔頂からライン11を経てアクリル酸製品を得る。
【0020】
【発明の効果】本発明の特定の共沸溶剤を用いることによって、共沸分離塔において塔頂からはアクリル酸が殆ど留出せず、かつ塔底からは実質的に酢酸、水、共沸溶剤を含まないアクリル酸を得ることができ、しかも共沸分離塔の塔底液をそのままでもアクリル酸エステル製造原料として用いることができ、また高沸分離塔で蒸留することによって一層高純度のアクリル酸製品を得ることができるようになった。従って、従来は共沸分離した後に更に酢酸分離塔を設けて残りの酢酸を分離していたのが、本発明の方法では酢酸分離塔が不要となりアクリル酸製造工程が非常に簡略化できる。
【0021】
【実施例】
実施例1プロピレンを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスをアクリル酸捕集塔に導いて水と接触させて得た水溶液をアクロレイン放散塔に導いてアクロレインを放散させ、水30重量%、酢酸3.0重量%を含むアクリル酸水溶液を得た。段数60段、段間隔147mmのシーブトレーを備え、塔頂部に留出管、中央部に原料供給管、塔底部に塔底液抜き出し管を備えた共沸分離塔102を用い、共沸溶剤としてメチルイソブチルケトンとトルエンとの混合溶剤(混合重量比65:35)を用いて、このアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0022】定常運転時における運転状態は、共沸分離塔102の塔頂温度47℃、塔底温度98℃、塔頂圧力100mmHg、還流比(単位時間当りの還流液の全モル数/単位時間当りの留出液の全モル数)1.42、ライン4からの原料供給量7.59リットル/時であった。ライン8の水相は酢酸6.7重量%、アクリル酸0.5重量%を含み、一方共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.0重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.97重量%を含んでいた。
【0023】ライン8から得られた水相は溶剤回収塔103に導入され、その塔頂からライン9を経て溶媒が回収され、一方塔底からは酢酸水溶液がライン10を経由して取出される。その組成は酢酸7.1重量%、アクリル酸0.53重量%、残部水であり、アクリル酸捕集塔101にリサイクルされて接触気相酸化後の混合ガスと接触させる為の吸収捕集剤として使用される。
【0024】比較例1実施例1において、共沸溶剤としてメチルイソブチルケトンのみを用い、還流比を1.43にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0025】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.6重量%、アクリル酸4.0重量%を含み、アクリル酸は実施例1の約8倍も多かった。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸96.9重量%、酢酸0.2重量%、溶剤0.01重量%、その他2.92重量%を含んでおり、酢酸は実施例1より1桁高い値であった。
【0026】比較例2実施例1において、共沸溶剤としてトルエンのみを用い、還流比を1.23にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0027】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.7重量%、アクリル酸5.8重量%を含み、アクリル酸は実施例1の約10倍も多かった。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.0重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.01重量%、その他2.96重量%を含んでいた。
【0028】実施例2実施例1において、共沸溶剤としてメチルイソブチルケトンとヘプタンとの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.65にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0029】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.6重量%、アクリル酸0.6重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸96.9重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他3.07重量%を含んでいた。
【0030】実施例3実施例1において、共沸溶剤としてメチル−tert−ブチルケトンとトルエンとの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.89にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0031】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.7重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.3重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.67重量%を含んでいた。
【0032】実施例4実施例1において、共沸溶剤としてメチル−tert−ブチルケトンとヘプタンとの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.99にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0033】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.6重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.2重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.77重量%を含んでいた。
【0034】比較例3実施例1において、メチルイソブチルケトンとトルエンの混合重量比を85:15に変え、還流比を1.41にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。定常運転時におけるライン8の水相は酢酸5.8重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.3重量%、酢酸0.10重量%、溶剤0.01重量%、その他2.59重量%を含んでいた。
【0035】実施例5実施例1において、メチルイソブチルケトンとトルエンの混合重量比を50:50に変え、還流比を1.49にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0036】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.7重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸96.8重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他3.17重量%を含んでいた。
【0037】実施例6実施例1において、共沸溶剤としてメチルイソブチルケトンとメチルシクロヘキサンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.25にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0038】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.6重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.3重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.67重量%を含んでいた。
【0039】実施例7実施例1において、共沸溶剤としてメチル−tert−ブチルケトンとメチルシクロヘキサンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.60にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0040】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.8重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.4重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.57重量%を含んでいた。
【0041】実施例8実施例1において、共沸溶剤としてジエチルケトンとトルエンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.58にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0042】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.2重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.2重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.77重量%を含んでいた。
【0043】実施例9実施例1において、共沸溶剤としてジエチルケトンとヘプタンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.83にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0044】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.0重量%、アクリル酸0.4重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.0重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.97重量%を含んでいた。
【0045】実施例10実施例1において、共沸溶剤としてジエチルケトンとメチルシクロヘキサンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.34にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0046】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.1重量%、アクリル酸0.4重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.4重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.57重量%を含んでいた。
【0047】実施例11実施例1において、共沸溶剤としてメチルプロピルケトンとトルエンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.67にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0048】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.1重量%、アクリル酸0.4重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.3重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.67重量%を含んでいた。
【0049】実施例12実施例1において、共沸溶剤としてメチルプロピルケトンとヘプタンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.94にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0050】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.0重量%、アクリル酸0.4重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.1重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.87重量%を含んでいた。
【0051】実施例13実施例1において、共沸溶剤としてメチルプロピルケトンとメチルシクロヘキサンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.58にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0052】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.2重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.1重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.87重量%を含んでいた。
【0053】実施例14実施例1において、共沸溶剤として酢酸n−プロピルとトルエンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を2.10にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0054】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.2重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.5重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.47重量%を含んでいた。
【0055】実施例15実施例1において、共沸溶剤として酢酸n−プロピルとヘプタンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を2.14にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0056】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.2重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.4重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.57重量%を含んでいた。
【0057】実施例16実施例1において、共沸溶剤として酢酸n−プロピルとメチルシクロヘキサンの混合溶剤(混合重量比65:35)を用い、還流比を1.66にした以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行なった。
【0058】定常運転時におけるライン8の水相は酢酸6.3重量%、アクリル酸0.5重量%を含んでいた。一方、共沸分離塔102の塔底からライン15を経て抜き出される液はアクリル酸97.3重量%、酢酸0.03重量%、溶剤0.001重量%、その他2.67重量%を含んでいた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するときのフローシートである。
【符号の説明】
101 アクリル酸捕集塔
102 共沸分離塔
103 溶剤回収塔
104 高沸分離塔
20 貯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プロピレンおよび/またはアクロレインを分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して得た混合ガスをアクリル酸捕集塔に導いて水と接触させてアクリル酸および酢酸等の副生物を含むアクリル酸水溶液を得、該アクリル酸水溶液を共沸分離塔に導いて共沸溶剤を用いて蒸留してアクリル酸を分離するに際し、共沸溶剤としてジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、酢酸n−プロピルの中から選ばれた少なくとも一つの溶剤Aと、トルエン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンの中から選ばれた少なくとも一つの溶剤Bとの混合溶剤を用い、共沸分離塔の塔頂から実質的に酢酸、水、共沸溶剤からなる混合物を留出させ、塔底から実質的に酢酸、水、共沸溶剤をいずれも含まないアクリル酸を得ることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
【請求項2】 共沸溶剤の溶剤Aと溶剤Bとの混合比率が重量比で50:50〜75:25の範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項3】 共沸分離塔に導かれるアクリル酸水溶液が、アクリル酸50〜80重量%、酢酸2〜5重量%、水20〜40重量%の範囲内で含有してなるアクリル酸水溶液である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】 共沸分離塔の塔頂から得た実質的に酢酸、水、共沸溶剤からなる混合物を溶剤回収塔に導いて蒸留し、溶剤回収塔の塔頂から共沸溶剤を含む留分を留出させて共沸分離塔に循環させる一方、溶剤回収塔の塔底から実質的に酢酸および水からなる酢酸水溶液を抜き出し、これをアクリル酸捕集塔に循環させて接触気相酸化して得た混合ガスに接触させる水として用いる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【図1】
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