説明

アクリル酸誘導体を用いたジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の製造方法及びそれらの使用

本発明は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の製造方法であって、
a)ホスフィン酸源(I)を、触媒Aの存在下にオレフィン(IV)と反応させて、アルキル亜ホスホン酸、それの塩またはエステル(II)とし、
b)こうして生じたアルキル亜ホスホン酸、それの塩またはエステル(II)を、触媒Bの存在下にα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)と反応させて、次式
【化1】


のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(III)とし、この際、R、R、R、R、R、R、Rは、同一かまたは異なり、互いに独立して、中でも、H、C−C18−アルキル、C−C18−アリール、C−C18−アラルキル、C−C18−アルキルアリールを意味し、そしてX及びYは、同一かまたは異なり、そして互いに独立してH、C−C18−アルキル、C−C18−アリール、C−C18−アラルキル、C−C18−アルキルアリール、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Cu、Ni、Li、Na、K及び/またはプロトン化された窒素塩基を表し、そして触媒Aは、遷移金属、及び/または遷移金属化合物、及び/または遷移金属及び/または遷移金属化合物と少なくとも一つの配位子から構成される触媒系であり、そして触媒Bは、過酸化物形成化合物、及び/またはパーオキソ化合物、及び/またはアゾ化合物、及び/またはアルカリ金属−及び/またはアルカリ土類金属、−水素化物及び/または−アルコレートである、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸誘導体を用いたジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の製造方法、並びに本発明の方法に従い製造されたジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に定義されるような特定のジアルキルホスフィン酸、いわゆるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸の中では、これまで、殆ど限られたエステルしか入手可能ではない。後者は、亜ホスホン酸ジハロゲン化物から出発して複数の段階を経て製造できる。これには、ジハロゲンホスフィンと活性オレフィン性化合物、例えばアクリル酸との反応が挙げられ、この反応の後に、最初に形成した酸塩化物−及び無水物誘導体をアルコールでエステル化する(V.K.Khairullin,R.R.Shagidullin,Zh.Obshch.Khim.36,289−296(非特許文献1))。
【0003】
本発明の目的においてジアルキルホスフィン酸は、特に明言しなくとも、常にモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸である。これには、対応するエステル及び塩も含まれる。
【0004】
このようなジアルキルホスフィン酸エステルは、亜ホスホン酸エステルを過酸化物系触媒の存在下にα,β−不飽和カルボン酸エステルに付加することによっても得られる(Houben−Weyl,1211巻,第258〜259頁(非特許文献2))。亜ホスホン酸エステルそれ自体は、亜ホスホン酸二ハロゲン化物から、アルコールとの反応または加水分解、その後のエステル化によって製造される。上記の亜ホスホン酸二ハロゲン化物それ自体は、塩化アルミニウムの存在下に三塩化リン及び塩化アルキルから煩雑な合成法で製造される(Houben−Weyl,1211巻,第306頁(非特許文献3))。反応は発熱性が強く、また工業的に制御するのが困難である。加えて、様々な副生成物が生じ、これらは、上記の出発化合物の一部と同様に、有毒及び/または腐食性であり、すなわち非常に望ましくない(特に、生成物を、ハロゲン不含に製造できないため)。
【0005】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステルを製造するための更に別の方法の一つは、黄リンと塩化メチルとの反応に基づく。この反応では、メチル亜ホスホン酸が生じ、これを次いでエステル化し、その後アクリル酸エステルと反応させる(独国特許出願公開第10153780号明細書(特許文献1))。
【0006】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステルは、亜ホスホン酸−ビス(トリメチルシリル)エステル−HP(OSiMe−をα,β−不飽和カルボン酸成分と反応させ、次いでアルブソフ反応に従いハロゲン化アルキルを用いてアルキル化し、そして加アルコール分解することによって得ることもできる(Kurdyumova,N.R.;Rozhko,L.F.;Ragulin,V.V.;Tsvetkov,E.N.;Russian Journal of General Chemistry(Translation of Zhurnal Obshchei Khimii(1997),67(12),1852−1856(非特許文献4))。この際、この亜ホスホン酸−ビス(トリメチルシリル)エステルは、ヘキサメチルジシラザンとの反応によってカリウム−もしくはアンモニウム次亜リン酸塩から得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第10153780号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】V.K.Khairullin,R.R.Shagidullin,Zh.Obshch.Khim.36,289−296
【非特許文献2】Houben−Weyl,1211巻,第258〜259頁
【非特許文献3】Houben−Weyl,1211巻,第306頁
【非特許文献4】Kurdyumova,N.R.;Rozhko,L.F.;Ragulin,V.V.;Tsvetkov,E.N.;Russian Journal of General Chemistry(Translation of Zhurnal Obshchei Khimii(1997),67(12),1852−1856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
経済的にかつ大規模工業的に入手することができかつ特に、高い空間/時間収量を可能にするモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の製造方法はこれまで存在していない。また、煩わしいハロゲン化合物を原料として使用せずに十分に効率がよい方法も、並びに加えて最終生成物を簡単に得ることまたは単離することができるかあるいは目的の反応条件下(例えばエステル交換)でも的確にかつ望むように製造することができる方法も存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの課題は、
a) 次式
【0011】
【化1】

【0012】
のホスフィン酸源(I)を、次式
【0013】
【化2】

【0014】
のオレフィン(IV)と触媒Aの存在下に反応させて、次式のアルキル亜ホスホン酸、それの塩またはエステル(II)とし、
【0015】
【化3】

【0016】
b) こうして生成したアルキル亜ホスホン酸、それの塩またはエステル(II)を、次式
【0017】
【化4】

【0018】
のα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)と、触媒Bの存在下に反応させて、次式
【0019】
【化5】

【0020】
のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(III)とし、
ここでR、R、R、R、R、R、Rは、同一かもしくは異なり、互いに独立して、H、C−C18−アルキル、C−C18−アリール、C−C18−アラルキル、C−C18−アルキル−アリール、CN、CHO、OC(O)CHCN、CH(OH)C、CHCH(OH)CH、9−アントラセン、2−ピロリドン、(CHOH、(CHNH、(CHNCS、(CHNC(S)NH、(CHSH、(CHS−2−チアゾリン、(CHSiMe、C(O)R、(CHC(O)R、CH=CH−R、CH=CH−C(O)Rを意味し、この際、RはC−C−アルキルまたはC−C18−アリールを表し、そしてmは0〜10の整数を意味し、そしてX及びYは、同一かもしくは異なり、互いに独立して、H、C−C18−アルキル、C−C18−アリール、C−C18−アラルキル、C−C18−アルキル−アリール、(CHOH、CH−CHOH−CHOH、(CHO(CHH、(CH−CH(OH)−(CHH、(CH−CHO)H、(CH−C[CH]HO)H、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)H、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)H、(CH−CHO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)−アルキル、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)O−アルキル、(CH−CH=CH(CHH、(CHNH、(CHN[(CHH]を表すか(ここでkは0〜10の整数である)及び/またはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Cu、Ni、Li、Na、K、H及び/またはプロトン化された窒素塩基を表し、そして触媒Aは、遷移金属、及び/または遷移金属化合物、及び/または遷移金属及び/または遷移金属化合物と少なくとも一つの配位子とから構成される触媒系であり、そして触媒Bは、過酸化物を形成する化合物及び/またはパーオキソ化合物及び/またはアゾ化合物及び/またはアルカリ金属−及び/またはアルカリ土類金属、−水素化物及び/または−アルコレートであることを特徴とする、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の製造方法によって解消される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましくは、段階b)の後に得られるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、それの塩またはエステル(III)は、次いで、段階c)において、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kの金属化合物及び/またはプロトン化された窒素塩基と反応させて、これらの金属及び/または窒素化合物の対応するモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)とする。
【0022】
好ましくは、段階a)の後に得られたアルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)、及び/または段階b)の後に得られるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、それの塩またはエステル(III)、及び/またはそれぞれの場合に生ずるそれらの反応溶液は、アルキレンオキシドまたはアルコールM−OH及び/またはM’−OHでエステル化し、そして各々の場合に生ずるアルキル亜ホスホン酸エステル(II)、及び/またはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)を更なる反応段階b)またはc)に付す。
【0023】
好ましくは、C−C18−アリール、C−C18−アラルキル及びC−C18−アルキル−アリール基は、SO、−C(O)CH、OH、CHOH、CHSO、PO、NH、NO、OCH、SH及び/またはOC(O)CHで置換されている。
【0024】
好ましくは、R、R、R、R、R、R、Rは、同一かもしくは異なり、互いに独立して、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert.−ブチル及び/またフェニルを意味する。
【0025】
好ましくは、X及びYは、同一かもしくは異なり、それぞれ、H、Ca、Mg、Al、Zn、Ti、Mg、Ce、Fe、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert.−ブチル、フェニル、エチレングリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール、アリル及び/またはグリセリンを意味する。
【0026】
好ましくは、mは1〜10であり、そしてkは2〜10である。
【0027】
好ましくは、触媒系Aは、遷移金属及び/または遷移金属化合物と少なくとも一つの配位子とを反応させることによって形成される。
【0028】
好ましくは、遷移金属及び/または遷移金属化合物は、第7亜族及び第8亜族からのものである。
【0029】
好ましくは、遷移金属及び/または遷移金属化合物は、ロジウム、ニッケル、パラジウム、ルテニウム及び/または白金である。
【0030】
好ましくは、触媒Bは、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、パーオキソ二硫酸ナトリウム、パーオキソホウ酸カリウム、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル及び/またはパーオキソ二硫酸、及び/またはアゾジイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド及び/または2、2’−アゾビス(N,N’−ジメチレン−イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、及び/またはリチウム、水素化リチウム、水素化アルミニウムリチウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムメタノレート、ナトリウムエタノレートまたは酪酸ナトリウム、カリウムメタノレート、カリウムエタノレートまたは酪酸カリウムである。
【0031】
好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、trans−2−ペンテン酸、フラン−2−カルボン酸、チオフェン−2−カルボン酸及び/またはそれらのメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−及びヒドロキシブチルエステルである。
【0032】
好ましくは、一般式M−OHのアルコールは、C〜C18の炭素鎖長を有する線状もしくは分枝状、飽和もしくは不飽和の一価有機アルコールであり、そして一般式M’−OHのアルコールは、C〜C18の炭素鎖長の線状もしくは分枝状、飽和もしくは不飽和の多価有機アルコールである。
【0033】
本発明は、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩及び−エステル(III)を、更に別の合成法のための中間生成物として、バインダーとして、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂の硬化の際の架橋剤もしくは促進剤として、ポリマー安定化剤として、植物保護剤として、ヒト及び動物のための治療における治療薬または添加剤として、金属イオン封鎖剤として、鉱油添加剤として、腐食保護剤として、洗濯洗剤及び洗浄剤の用途において、エレクトロニックの用途において使用することに関する。
【0034】
また同様に本発明は、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩及び−エステル(III)を、難燃剤、特に透明塗料及び膨張性発泡塗料のための難燃剤として、木材及び他のセルロース含有材料のための難燃剤、ポリマー用の反応性及び/または非反応性難燃剤として、難燃性ポリマー成形材料の製造のための、難燃性ポリマー成形体の製造のための及び/または含浸によるポリエステル及びセルロース単布及び混布の防火処理のための使用にも関する。
【0035】
また本発明は、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩または−エステル(III)0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはこれらの混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%、及びフィラーもしくは強化材0〜55重量%を含む(これらの成分の合計は100重量%である)、難燃性熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料にも関する。
【0036】
最後に、加えて本発明は、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩または−エステル(III)0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはこれらの混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%、及びフィラーもしくは強化材0〜55重量%を含む(これらの成分の合計は100重量%である)、難燃性熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマー成形体、−フィルム、−糸及び繊維に関する。
【0037】
上記の全ての反応は段階的に行うこともでき、同様に異なるプロセス段階において、それぞれに生じた反応溶液を使用することもできる。
【0038】
段階b)の後のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)がエステルの場合には、遊離のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸またはそれの塩を得るために、好ましくは、酸性または塩基性加水分解を行うことができる。
【0039】
好ましくは、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸は、3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸、3−(プロピルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸、3−(i−プロピルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸、3−(ブチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸、3−(sec−ブチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸、3−(i−ブチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸、3−(2−フェニルエチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸、3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸、3−(プロピルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸、3−(i−プロピルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸、3−(ブチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸、3−(sec−ブチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸、3−(i−ブチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸、3−(2−フェニルエチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸、3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−3−フェニルプロピオン酸、3−(プロピルヒドロキシホスフィニル)−3−フェニルプロピオン酸、3−(i−プロピルヒドロキシホスフィニル)−3−フェニルプロピオン酸、3−(ブチルヒドロキシホスフィニル)−3−フェニルプロピオン酸、3−(i−ブチルヒドロキシホスフィニル)−3−フェニルプロピオン酸、3−(sec−ブチルヒドロキシホスフィニル)−3−フェニルプロピオン酸、3−(2−フェニルエチルヒドロキシホスフィニル)−3−フェニルプロピオン酸である。
【0040】
好ましくは、製造するべき目的化合物は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル、例えば上記のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸またはこれらの混合物のプロピオン酸−、メチル−、エチル−; i−プロピル−; ブチル−、フェニル−; 2−ヒドロキシエチル−、2−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシプロピル−、4−ヒドロキシブチル−及び/または2,3−ジヒドロキシプロピルエステルである。
【0041】
好ましくは、製造するべき目的化合物は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩、例えば上記のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸または上記のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸のエステルのアルミニウム(III)−、カルシウム(II)−、マグネシウム(II)−、セリウム(III)−、チタン(IV)−及び/または亜鉛(II)塩である。
【0042】
この際、エステル化または塩形成がホスフィン酸基(式(III)のXで)またはプロピオン酸基(式(III)のYで)行われたエステル及び塩も目的化合物として見なされる。
【0043】
好ましくは、触媒Aのための遷移金属は、第7亜族及び第8亜族の元素(より最近の命名法では第7族、第8族、第9族または第10族の金属)、例えばレニウム、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金である。
【0044】
好ましくは、遷移金属及び遷移金属化合物の源としてはそれらの金属塩が使用される。適当な塩は、次のアニオン、すなわちフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜フッ素酸イオン、亜塩素酸イオン、亜ホウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜フッ素酸イオン、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、過フッ素酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、シアン化物イオン、シアン酸イオン、硝酸イオン、窒化物イオン、亜硝酸イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、ホウ酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物イオン、過硫酸イオン、チオ硫酸イオン、スルファミン酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、リン化物イオン、炭酸イオン及びスルホン酸イオン、例えばメタンスルホン酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフチルスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、t−ブチルスルホン酸イオン、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸イオン及びスルホン化されたイオン交換樹脂を含む鉱酸の塩; 及び/または有機塩、例えばアセチルアセトネート、及び(トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩などの炭素原子数が20までのハロゲン化カルボン酸も包含して)炭素原子数が20までのカルボン酸の塩、例えばギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、ステアリン酸塩及びクエン酸塩である。
【0045】
遷移金属及び遷移金属化合物の更に別の源は、テトラフェニルボレートアニオン及びハロゲン化テトラフェニルボレートアニオン、例えばパーフルオロフェニルボレートと遷移金属との塩である。
【0046】
また適当な塩には、同様に、一つまたはそれ以上の遷移金属イオン及び互いに独立して一つまたはそれ以上のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン及び有機ホスホニウムイオン、及び互いに独立して一つまたはそれ以上の上記のアニオンからなる二重塩及び錯塩も挙げられる。適当な二重塩は、例えば、アンモニウムヘキサクロロパラデート及びアンモニウムテトラクロロパラデートである。
【0047】
好ましくは、遷移金属の一つの源は、元素としての遷移金属及び/または0価の状態の遷移金属化合物である。
【0048】
好ましくは、遷移金属は金属として使用されるかまたは他の金属との合金として使用され、ここで、ホウ素、ジルコニウム、タンタル、タングステン、レニウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金及び/または金が好ましい。この際、使用される合金中の遷移金属含有率は好ましくは45〜99.95重量%である。
【0049】
好ましくは、遷移金属は微分散状態で(粒度0.1mm〜100μm)で使用される。
【0050】
好ましくは、遷移金属は、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マグネシウム、Celite(登録商標)、珪藻土上に、金属炭酸塩、例えば炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム上に、金属硫酸塩、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム上に、金属リン酸塩、例えばリン酸アルミニウム、リン酸バナジウム上に、炭化金属、例えば炭化ケイ素上に、金属アルミン酸塩、例えばアルミン酸カルシウム上に、金属ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウム、チョーク、ゼオライト類、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト上に、官能化ケイ酸塩、官能化シリカゲル、例えばSiliaBond(登録商標)、QuadraSilTM上に、官能化ポリシロキサン、例えばDeloxan(登録商標)上に、窒化金属上に、炭素、活性炭、ムライト、ボーキサイト、アンチモナイト、シーライト、ペロブスカイト、ハイドロタルサイト、ヘテロポリアニオン上に、官能化及び非官能化セルロース、キトサン、ケラチン、ヘテロポリアニオン上に、イオン交換体、例えばAmberliteTM、AmberjetTM、AmbersepTM、Dowex(登録商標)、Lewatit(登録商標)、ScavNet(登録商標)上に、官能化ポリマー、例えばChelex(登録商標)、QuadraPureTM、Smopex(登録商標)、PolyOrgs(登録商標)上に、ポリマー結合型ホスファン類、ホスファンオキシド類、ホスフィネート類、ホスホネート類、ホスフェート類、アミン類、アンモニウム塩類、アミド類、チオアミド類、尿素類、チオ尿素類、トリアジン類、イミダゾール類、ピラゾール類、ピリジン類、ピリミジン類、ピラジン類、チオール類、チオールエーテル類、チオールエステル類、アルコール類、アルコキシド類、エーテル類、エステル類、カルボン酸類、アセテート類、アセタール類、ペプチド類、ヘタレン類、ポリエチレンイミン/二酸化ケイ素、及び/またはデントリマー類に担持させて使用される。
【0051】
金属塩及び/または遷移金属の適当な源は、また同様に好ましくはそれの錯体化合物である。金属塩及び/または遷移金属の錯体化合物は、金属塩もしくは遷移金属と、一つまたはそれ以上の錯化剤から組成される。適当な錯化剤は、例えば、オレフィン、ジオレフィン、ニトリル、ジニトリル、一酸化炭素、ホスフィン類、ジホスフィン類、ホスフィット類、ジホスフィット類、ジベンジリデンアセトン、シクロペンタジエニル、インデニルまたはスチレンである。金属塩及び/または遷移金属の適当な錯体化合物は、上述の担体材料上に担持させることができる。
【0052】
好ましくは、上記の担持された遷移金属の量は、担体材料の総質量を基準にして0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に0.2〜5重量%である。
【0053】
遷移金属及び遷移金属化合物の適当な源は、例えば、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム; アルミナ、シリカ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭素、活性炭上に担持されたパラジウム、白金、ニッケルまたはロジウム; 白金−パラジウム−金合金、アルミニウム−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金、ランタノイド−ニッケル合金、ジルコニウム−ニッケル合金、白金−イリジウム合金、白金−ロジウム合金; Raney(登録商標)−ニッケル、ニッケル−亜鉛−鉄−酸化物; パラジウム(II)−、ニッケル(II)−、白金(II)−、ロジウム塩化物、−臭化物、−ヨウ化物、−フッ化物、−水素化物、−酸化物、−過酸化物、−シアン化物、−硫酸塩、−硝酸塩、−リン化物、−ホウ化物、−クロム酸化物、−コバルト酸化物、−炭酸塩水酸化物、−シクロヘキサン酪酸塩、−水酸化物、−モリブデン酸塩、−オクタン酸塩、−シュウ酸塩、−過塩素酸塩、−フタロシアニン、−5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニン、−スルファミン酸塩、−過塩素酸塩、−チオシアン酸塩、−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、−プロピオン酸塩、−酢酸塩、−ステアリン酸塩、−2−エチルヘキサン酸塩、−アセチルアセトネート、−ヘキサフルオロアセチルアセトネート、−テトラフルオロホウ酸塩、−チオ硫酸塩、−トリフルオロ酢酸塩、−フタロシアニンテトラスルホン酸四ナトリウム塩、−メチル、−シクロペンタジエニル、−メチルシクロペンタジエニル、−エチルシクロペンタジエニル、−ペンタメチルシクロペンタジエニル、−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン、−5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、−ビス(5−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]イミノ]−8(5H)−キノリノン)、−2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニン、−2,9,16,23−テトラフェノキシ−29H,31H−フタロシアニン、−5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−21H,23H−ポルフィン及びそれの1,4−ビス(ジフェニルホスフィン)ブタン−、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−プロパン−、2−(2’−ジ−tert−ブチルホスフィン)ビフェニル−、アセトニトリル−、ベンゾニトリル−、エチレンジアミン−、クロロホルム−、1,2−ビス(フェニルスルフィニル)エタン−、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリデン)(3−クロロピリジル)−、2’−(ジメチルアミノ)−2−ビフェニリル−、ジノルボルニルホスフィン−、2−(ジメチルアミノ−メチル)フェロセン−、アリル−、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン−、(N−スクシンイミジル)ビス−(トリフェニルホスフィン)−、ジメチルフェニルホスフィン−、メチルジフェニルホスフィン−、1,10−フェナントロリン−、1,5−シクロオクタジエン−、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン−、トリフェニルホスフィン−、トリ−o−トリルホスフィン−、トリシクロヘキシルホスフィン−、トリブチルホスフィン−、トリエチルホスフィン−、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル−、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−、1,3−ビス(メシチル)イミダゾール−2−イリデン−、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン−、N−メチルイミダゾール−、2,2’−ビピリジン−、(ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン)−、ビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)−ホスフィン)−、ビス(tert.−ブチルイソシアニド)−、2−メトキシエチルエーテル−、エチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン−、ビス(1,3−ジアミノ−2−プロパノール)−、ビス(N,N−ジエチルエチレンジアミン)−、1,2−ジアミノシクロヘキサン−、ピリジン−、2,2’:6’,2’’−ターピリジン−、ジエチルスルフィド−、エチレン−、アミン−錯体; カリウム−、ナトリウム−、アンモニウムヘキサクロロパラデート(IV)、カリウム−、ナトリウム−、アンモニウム−テトラクロロパラデート(II)、ブロモ(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(I)ダイマー、(2−メチル−アリル)パラジウム(II)塩化物ダイマー、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジ−ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス−(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン]−パラジウム(0)、ビス(3,5,3’,5’−ジメトキシジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、メソ−テトラフェニルテトラベンゾポルフィンパラジウム、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(3,3’,3’’−ホフィニジン−トリス(ベンゼンスルホナト)パラジウム(0)9ナトリウム塩、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−イミダゾール−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム(0)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾール−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム(0)、及びそれのクロロホルム−錯体;
アリルニッケル(II)塩化物ダイマー、アンモニウムニッケル(II)硫酸塩、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジカルボニルニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィット)ニッケル(0)、カリウムヘキサフルオロニッケル酸塩(IV)、カリウムテトラ−シアノニッケル酸塩(II)、カリウムニッケル(IV)パラ過ヨウ素酸塩、ジリチウムテトラブロモニッケル酸塩(II)、カリウムテトラシアノニッケル酸塩(II);
白金(IV)塩化物、−酸化物、−硫化物、カリウム−、ナトリウム−、アンモニウムヘキサクロロ白金酸塩(IV)、カリウム−、アンモニウムテトラクロロ白金酸塩(II)、カリウムテトラシアノ白金酸塩(II)、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、シス−ジアンミンテトラクロロ白金(IV)、カリウムトリクロロ(エチレン)白金酸塩(II)、ナトリウムヘキサヒドロキシ白金酸塩(IV)、テトラアミン白金(II)テトラクロロ白金酸塩(II)、テトラブチルアンモニウムヘキサクロロ白金酸塩(IV)、エチレンビス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチル−ジシロキサン、白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、白金オクタエチルポルフィリン、クロロ白金酸、カルボ白金;
クロロビス(エチレン)ロジウムダイマー、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマー、クロロ(ノルボマジエン)−ロジウムダイマー、クロロ(1,5−ヘキサジエン)ロジウムダイマーである。
【0054】
好ましくは、配位子は、次式(VI)のホスフィンである。
【0055】
PR (VI)
式中、基Rは、互いに独立して、水素、直鎖状、分枝状もしくは環状C−C20−アルキル、C−C20−アルキルアリール、C−C20−アルケニル、C−C20−アルキニル、C−C20−カルボキシレート、C−C20−アルコキシ、C−C20−アルケニルオキシ、C−C20−アルキニルオキシ、C−C20−アルコキシ−カルボニル、C−C20−アルキルチオ、C−C20−アルキルスルホニル、C−C20−アルキルスルフィニル、シリル、及び/またはそれらの誘導体及び/または少なくとも一つのR10によって置換されたフェニル−または少なくとも一つのR10によって置換されたナフチルを表す。R10は、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、NH、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル、直鎖状、分枝状もしくは環状C−C20−アルキル、C−C20−アルコキシ、HN(C−C20−アルキル)、N(C−C20−アルキル)、−CO−(C−C20−アルキル)、−CON(C−C20−アルキル)、−OCO(C−C20−アルキル)、NHCO(C−C20−アルキル)、C−C20−アシル、−SOM、−SON(R11)M、−COM、−PO、−AsO、−SiOM、−C(CFOM(M=H、Li、NaまたはK)を表し、ここでR11は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、直鎖状、分枝状もしくは環状C−C20−アルキル、C−C20−アルケニル、C−C20−アルキニル、C−C20−カルボキシレート、C−C20−アルコキシ、C−C20−アルケニルオキシ、C−C20−アルキニルオキシ、C−C20−アルコキシカルボニル、C−C20−アルキルチオ、C−C20−アルキルスルホニル、C−C20−アルキルスルフィニル、シリル及び/またはこれらの誘導体、アリール、C−C20−アリールアルキル、C−C20−アルキルアリール、フェニル及び/またはビフェニルを意味する。好ましくは、R基の全てが同一である。
【0056】
適当なホスフィン(VI)は、例えば、トリメチル−、トリエチル−、トリプロピル−、トリイソプロピル−、トリブチル−、トリイソブチル−、トリイソペンチル−、トリヘキシル−、トリシクロヘキシル−、トリオクチル−、トリデシル−、トリフェニル−、ジフェニルメチル−、フェニルジメチル−、トリ(o−トリル)−、トリ(p−トリル)−、エチルジフェニル−、ジシクロヘキシルフェニル−、2−ピリジルジフェニル−、ビス(6−メチル−2ピリジル)−フェニル−、トリ−(p−クロロフェニル)−、トリ−(p−メトキシフェニル)−、ジフェニル(2−スルホナトフェニル)ホスフィン; ジフェニル(3−スルホナトフェニル)ホスフィン、ビス(4,6−ジメチル−3−スルホナトフェニル)(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3−スルホナトフェニル)フェニルホスフィン類、トリス(4,6−ジメチル−3−スルホナトフェニル)ホスフィン類、トリス(2−スルホナトフェニル)ホスフィン類、トリス(3−スルホナトフェニル)ホスフィン類のカリウム−、ナトリウム−及びアンモニウム塩; 2−ビス(ジフェニルホスフィノエチル)トリメチルアンモニウムヨウ化物、2’−ジシクロヘキシルホスフィノ−2,6−ジメトキシ−3−スルホナト−1,1’−ビフェニルナトリウム塩、トリメチルホスフィット及び/またはトリフェニルホスフィットである。
【0057】
特に好ましくは、配位子は次の一般式の二座配位子である。
【0058】
M’’−Z−M’’R (VII)
前記式中、M’’は互いに独立してN、P、AsまたはSbを表す。好ましくは、両方のM’’は同一であり、特に好ましくはM’’はリン原子を表す。
【0059】
各R基は、互いに独立して、式(VI)に記載した基を表す。好ましくは全てのR基が同一である。
【0060】
Zは、好ましくは、二価の架橋基を表し、これは少なくとも一つの架橋原子を含み、特に2〜6個の架橋原子が含まれる。
【0061】
架橋原子は、C−、N−、O−、Si−及びS−原子から選択することができる。好ましくは、Zは、少なくとも一つの炭素原子を含む有機架橋基である。好ましくは、Zは、1〜6個の架橋原子を含み、そのうちの少なくとも2つは、置換されていないかもしくは置換されていることができる炭素原子である、有機架橋基である。
【0062】
好ましいZ基は、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH(CH)−CH−、−CH−C(CH−CH−、−CH−C(C)−CH−、−CH−Si(CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−CH−CH(C)−CH−、−CH−CH(n−Pr)−CH及び−CH−CH(n−Bu)−CH−、置換されていないかもしくは置換された1,2−フェニル基、1,2−シクロヘキシル基、1,1’−もしくは1,2−フェロセニル基、2,2’−(1,1’−ビフェニル)基、4,5−キサンテン−及び/またはオキシジ−2,1−フェニレン基である。
【0063】
適当な二座ホスフィン配位子(VII)は、例えば、1,2−ビス(ジメチル−)、1,2−ビス(ジエチル−)、1,2−ビス(ジプロピル−)、1,2−ビス(ジイソプロピル−)、1,2−ビス(ジブチル−)、1,2−ビス(ジ−tert.−ブチル−)、1,2−ビス(ジシクロヘキシル−)及び1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン; 1,3−ビス(ジシクロヘキシル−)、1,3−ビス(ジイソプロピル−)、1,3−ビス(ジ−tert.−ブチル−)及び1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン; 1,4−ビス−(ジイソプロピル−)及び1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン; 1,5−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ペンタン; 1,2−ビス(ジ−tert.−ブチル−)、1,2−ビス(ジ−フェニル−)、1,2−ビス(ジ−シクロヘキシル−)、1,2−ビス(ジシクロ−ペンチル−)、1,3−ビス(ジ−tert.−ブチル−)、1,3−ビス(ジフェニル−)、1,3−ビス(ジ−シクロヘキシル−)及び1,3−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)ベンゼン; 9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,7−ジ−tert.−ブチルキサンテン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジ−tert.−ブチルホスフィノ)キサンテン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(オキシジ−2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、2,5−(ジ−イソプロピルホスホラノ)ベンゼン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,2’−ビス(ジ−tert.−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2−(ジ−tert.−ブチルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン、2−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]ピリジン; 1,2−ビス(ジ−4−スルホナトフェニルホスフィノ)−ベンゼンのカリウム−、ナトリウム−及びアンモニウム塩、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナト−フェニル)ホスフィノ]メチル]−4,4’,7,7’−テトラスルホナト−1,1’−ビナフチル、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナトフェニル)ホスフィノ]メチル]−5,5’−テトラスルホナト−1,1’−ビフェニル、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナトフェニル)ホスフィノ]メチル]−1,1’−ビナフチル、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナトフェニル)ホスフィノ]−メチル]−1,1’−ビフェニル、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)−2,7−スルホナトキサンテン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジ−tert.−ブチルホスフィノ)−2,7−スルホナトキサンテン、1,2−ビス(ジ−4−スルホナトフェニルホスフィノ)−ベンゼン、メソ−テトラキス(4−スルホナトフェニル)ポルフィン、メソ−テトラキス(2,6−ジクロロ−3−スルホナトフェニル)ポルフィン、メソ−テトラキス(3−スルホナトメシチル)ポルフィン、テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィン及び5,11,17,23−スルホナト−25,26,27,28−テトラヒドロキシカリックス[4]アレーンである。
【0064】
加えて、式(VI)及び(VII)の配位子は、R基及び/または架橋基によって適当なポリマーまたは無機基材上に結合されていることができる。
【0065】
上記触媒系は、1:0.01〜1:100、好ましくは1:0.05〜1:10、特に1:1〜1:4の遷移金属−配位子のモル比を有する。
【0066】
好ましくは、プロセス段階a)、b)、c)及びd)における反応は、任意選択的に、更に別のガス状成分、例えば窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素を含む雰囲気中で行われ、温度は−20〜340℃、特に20〜180℃であり、全圧は1〜100barである。
【0067】
プロセス段階a)、b)及びc)の後の生成物及び/または成分及び/または遷移金属及び/または遷移金属化合物及び/または触媒系及び/または配位子及び/または原料の単離は、任意選択的に、蒸留または精留によって、結晶化または析出によって、濾過または遠心分離によって、吸着またはクロマトグラフィによってあるいは他の既知の方法によって行われる。
【0068】
本発明では、溶剤、助剤、場合により及び他の揮発性成分を、例えば、蒸留、濾過及び/または抽出によって分離する。
【0069】
好ましくは、プロセス段階a)、b)及びc)における反応は、任意選択的に、吸着塔、噴霧塔、バブルカラム、攪拌タンク、流下床式反応器、フローチューブ、ループ型反応器及び/または混練機中で行われる。
【0070】
適当な混合機関は、例えば、錨型、ブレード型、MIG型、プロペラ型、インペラー型、タービン型、クロス型攪拌機、分散ディスク、中空(ガス処理)攪拌機、ローター−ステーターミキサー、スタティックミキサー、ベンチュリノズル及び/またはマンモスポンプである。
【0071】
好ましくは、この際、反応溶液/反応混合物は、1〜1000000、好ましくは100〜100000の回転レイノルズ数に相当する混合強度を受ける。
【0072】
好ましくは、各反応体などの強力な混合は、0.080〜10kW/m、好ましくは0.30〜1.65kW/mのエネルギー入力の下に行われる。
【0073】
好ましくは、触媒Aは反応中に均一系として及び/または不均一系として働く。それ故、それぞれの不均一系に働く触媒は、反応中は、懸濁物としてまたは固体相に結合した状態で働く。
【0074】
好ましくは、触媒Aは、反応の前及び/または反応の開始時に及び/または反応中にその場で(in situ)生成される。
【0075】
好ましくは、各反応は、均一もしくは不均一混合物中で単相系として溶剤中で、及び/または気相で行われる。
【0076】
多層系が使用される場合には、追加的に、相間移動触媒を使用することができる。
【0077】
本発明による反応は、液相中、気相中または超臨界相中で行うことができる。この際、触媒Aは、液体の場合には、好ましくは均一系でまたは懸濁物として使用され、他方、気相または超臨界作業法では、固定床の配置が有利である。
【0078】
適当な溶剤は、水、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、i−アミルアルコール、t−アミルアルコール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、i−オクタノール、n−トリデカノール、ベンジルアルコールなどである。好ましいものは、更に、グリコール類、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールなど; 脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及び石油エーテル、石油ベンジン、ケロシン、石油、パラフィン油など; 芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンなど; ハロゲン炭化水素、例えばメチレンクロライド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、四塩化炭素、テトラブロモエチレンなど; 脂肪環式炭化水素、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンなど; エーテル類、例えばアニソール(メチルフェニルエーテル)、t−ブチルメチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジフェニルエーテル、メチルビニルエーテル、テトラヒドロフラン、トリイソプロピルエーテルなど; グリコールエーテル類、例えばジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DMEモノグライム)、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなど; ケトン類、例えばアセトン、ジイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン; メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトンなど; エステル類、例えばギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル及び酢酸n−ブチルなど; カルボン酸類、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸など; のそれぞれ単独または互いの組み合わせである。
【0079】
また、使用されるオレフィン及びホスフィン酸源も好適な溶剤である。これらは、より高い空間時間収量の形での利点を供する。
【0080】
好ましくは、反応は、オレフィン及び/または溶剤の固有の蒸気圧下に行われる。
【0081】
好ましくは、オレフィン(IV)のR、R、R、Rは、同一かまたは異なりそして互いに独立して、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert.−ブチル及び/またはフェニルを意味する。
【0082】
好ましくは、官能化オレフィン、例えばアリルイソチオシアネート、アリルメタクリレート、2−アリルフェノール、N−アリルチオ尿素、2−(アリルチオ)−2−チアゾリン、アリルトリメチルシラン、アリルアセテート、アリルアセトアセテート、アリルアルコール、アリルアミン、アリルベンゼン、アリルシアニド、アリル−(シアンアセテート)、アリルアニソール、trans−2−ペンテナール、cis−2−ペンテンニトリル、1−ペンテン−3−オール、4−ペンテン−1−オール、4−ペンテン−2−オール、trans−2−ヘキセナール、trans−2−ヘキセン−1−オール、cis−3−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、スチレン、−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ビニルアセテート、9−ビニルアントラセン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及び1−ビニル−2−ピロリドンも使用される。
【0083】
好ましくは、反応は、0.01〜100barのオレフィンの分圧下に、特に好ましくは0.1〜10barのオレフィンの分圧下に行われる。
【0084】
好ましくは、反応は、1:10000〜1:0.001のホスフィン酸−オレフィンモル比、特に好ましくは1:30〜1:0.01の比率で行われる。
【0085】
好ましくは、反応は、1:1〜1:0.00000001、特に好ましくは1:0.01〜1:0.000001のホスフィン酸−触媒モル比で行われる。
【0086】
好ましくは、反応は、1:10000〜1:0、特に好ましくは1:50〜1:1のホスフィン酸−溶剤モル比で行われる。
【0087】
式(II)の化合物を製造するための本発明の方法の一つは、ホスフィン酸源を触媒の存在下にオレフィンと反応させ、そして生成物(II)(アルキル亜ホスホン酸または−塩、−エステル)から触媒、遷移金属もしくは遷移金属化合物、配位子、錯化剤、塩及び副生成物を除去することを特徴とする。
【0088】
本発明では、触媒、触媒系、遷移金属及び/または遷移金属化合物は、助剤1の添加、及び触媒、触媒系、遷移金属及び/または遷移金属化合物の抽出及び/または濾過による除去によって、分離される。
【0089】
本発明では、配位子及び/または錯化剤は、助剤2を用いた抽出及び/または助剤2を用いた蒸留によって分離される。
【0090】
助剤1は、好ましくは、水、及び/または金属捕捉剤(金属スカベンジャー)のファミリーの少なくとも一種である。好ましい金属捕捉剤は、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マグネシウム、Celite(登録商標)、珪藻土; 金属炭酸塩類、例えば炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム; 金属硫酸塩、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム; 金属リン酸塩、例えばリン酸アルミニウム、リン酸バナジウム; 金属炭化物、例えば炭化ケイ素; 金属アルミン酸塩、例えばアルミン酸カルシウム; 金属ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウム、チョーク類、ゼオライト類、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト; 官能化ケイ酸塩、官能化シリカゲル、例えばSiliaBond(登録商標)、QuadraSilTM; 官能化ポリシロキサン、例えばDeloxan(登録商標); 金属窒化物、炭素、活性炭、ムライト、ボーキサイト、アンチモナイト、シーライト、ペロブスカイト、ハイドロタルサイト、官能化もしくは非官能化セルロース、キトサン、ケラチン、ヘテロポリアニオン、イオン交換体、例えばAmberliteTM、AmberjetTM、AmbersepTM、Dowex(登録商標)、Lewatit(登録商標)、ScavNet(登録商標); 官能化ポリマー、例えばChelex(登録商標)、QuadraPureTM、Smopex(登録商標)、PolyOrgs(登録商標); ポリマー結合型ホスファン類、ホスファン酸化物類、ホスフィネート類、ホスホネート類、ホスフェート類、アミン類、アンモニウム塩、アミド類、チオアミド類、尿素類、チオ尿素類、トリアジン類、イミダゾール類、ピラゾール類、ピリジン類、ピリミジン類、ピラジン類、チオール類、チオールエーテル類、チオールエステル類、アルコール類、アルコキシド類、エーテル類、エステル類、カルボン酸類、アセテート類、アセタール類、ペプチド類、ヘタレン類、ポリエチレンイミン/二酸化ケイ素、及び/またはデントリマー類である。
【0091】
好ましくは、助剤1は、助剤1への0.1〜40重量%の金属負荷量に相当する量で加えられる。
【0092】
好ましくは、助剤1は、20〜90℃の温度で使用される。
【0093】
好ましくは、助剤1の滞留時間は0.5〜360分間である。
【0094】
助剤2は、好ましくは、プロセス段階a)で好ましく使用されるような上述の本発明の溶剤である。
【0095】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)もしくはアルキル亜ホスホン酸誘導体(II)並びにホスフィン酸源(I)からの対応するエステルへのエステル化は、例えば、生成水を共沸蒸留によって除去しながら高沸点アルコールと反応させるか、またはエポキシド(アルキレンオキシド)と反応させることによって達成することができる。
【0096】
この際、好ましくは、段階a)の後にアルキル亜ホスホン酸(II)は、一般式M−OH及び/またはM’−OHのアルコールで、あるいは以下に記載するようにアルキレンオキシドとの反応によって、直接エステル化する。
【0097】
好ましくは、M−OHは、C〜C18の炭素鎖長を有する第一、第二または第三アルコールである。特に好ましいものは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert.−ブタノール、アミルアルコール及び/またはヘキサノールである。
【0098】
好ましくは、M’−OHは、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサン−ジメタノール、グリセリン、トリスヒドロキシメチルエタン、トリスヒドロキシメチルプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、α−ナフトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/またはEO−PO−ブロックポリマーである。
【0099】
M−OH及びM’−OHとしては、C〜C18の炭素鎖長を有する一価もしくは多価の不飽和アルコール、例えばn−ブテン−2−オール−1、1,4−ブテンジオール及びアリルアルコールも好適である。
【0100】
また、M−OH及びM’−OHとして、一価アルコールと、アルキレンオキシドの一つまたはそれ以上の分子との反応生成物、好ましくはエチレンオキシド及び/または1,2−プロピレンオキシドとの反応生成物も適している。好ましいものは、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシ−エタノール、2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−エタノール、2−n−ドデコキシ−エタノール、メチルジグリコール、エチルジグリコール、イソプロピルジグリコール、脂肪アルコールポリグリコールエーテル及びアリールポリグリコールエーテルである。
【0101】
また、M−OH及びM’−OHは、好ましくは、多価アルコールと、アルキレンオキシドの一つもしくはそれ以上の分子との反応生成物、特にジグリコール及びトリグリコールとの反応生成物、並びにグリセリン、トリスヒドロキシメチルプロパンもしくはペンタエリトリトールへのエチレンオキシもしくはプロピレンオキシド1〜6分子の付加物でもある。
【0102】
M−OH及びM’−OHとしては、水とアルキレンオキシドの一つまたはそれ以上の分子との反応生成物も使用できる。好ましいものは、100〜1000g/モル、特に好ましくは150〜350g/モルの平均分子量の様々な大きさの分子のポリエチレングリコール及びポリ−1,2−プロピレングリコールである。
【0103】
M−OH及びM’−OHとして、エチレンオキシドとポリ−1,2−プロピレングリコールまたは脂肪アルコールプロピレングリコールとの反応生成物; また同様に1,2−プロピレンオキシドとポリエチレングリコールまたは脂肪アルコールエトキシレートとの反応生成物も好ましい。好ましいものは、100〜1000g/モル、特に好ましくは150〜450g/モルの平均分子量を有するこのような反応生成物である。
【0104】
更に、アルキレンオキシドと、アンモニア、第一または第二アミン、硫化水素、メルカプタン、リンの酸素酸及びC〜C−ジカルボン酸との反応生成物もM−OH及びM’−OHとして使用することができる。エチレンオキシドと窒素化合物との適当な反応生成物は、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、n−ブチル−ジエタノールアミン、n−ドデシル−ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、n−ブチル−メチル−エタノールアミン、ジ−n−ブチル−エタノールアミン、n−ドデシルメチル−エタノールアミン、テトラヒドロキシエチル−エチレンジアミンまたはペンタヒドロキシエチル−ジエチレントリアミンである。
【0105】
好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシエチルベンゼン、(2,3−エポキシプロピル)ベンゼン、2,3−エポキシ−1−プロパノール及び3,4−エポキシ−1−ブテンである。
【0106】
適当な溶剤は、プロセス段階a)に記載した溶剤、並びに使用されるアルコールM−OH、M’−OH、及びアルキレンオキシドである。これらは、より高い空間時間収量という形で利点を供する。
【0107】
好ましくは、反応は、使用したアルコールM−OH、M’−OH及びアルキレンオキシドの及び/または溶剤の固有の蒸気圧下に行われる。
【0108】
好ましくは、反応は、0.01〜100barの使用したアルコールM−OH、M’−OH及びアルキレンオキシドの分圧下に、特に好ましくは0.1〜10barのアルコールの分圧下に行われる。
【0109】
好ましくは、反応は−20〜340℃の温度、特に好ましくは20〜180℃の温度で行われる。
【0110】
好ましくは、反応は1〜100barの全圧下に行われる。
【0111】
好ましくは、反応は、アルコール−もしくはアルキレンオキシド成分とホスフィン酸源(I)もしくはアルキル亜ホスホン酸(II)もしくはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)とのモル比を10000:1〜0.001:1、特に好ましくは1000:1〜0.01:1の比率として行われる。
【0112】
好ましくは、反応は、ホスフィン酸源(I)もしくはアルキル亜ホスホン酸(II)もしくはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)と溶剤とのモル比を1:10000〜1:0として、特に好ましくはホスフィン酸と溶剤とのモル比を1:50〜1:1として行われる。
【0113】
プロセス段階b)で使用される特に好ましい触媒Bは、パーオキソ化合物、例えばパーオキソモノ硫酸、モノ過硫酸カリウム(パーオキソ一硫酸カリウム)、Caroat(TM)、Oxone(TM)、パーオキソ二硫酸、過硫酸カリウム(パーオキソ二硫酸カリウム)、過硫酸ナトリウム(パーオキソ二硫酸ナトリウム)、過硫酸アンモニウム(パーオキソ二硫酸アンモニウム)である。
【0114】
特に好ましい触媒Bは、溶剤系中で過酸化物を形成し得る化合物、例えば過酸化ナトリウム、過酸化ナトリウムジパーオキソハイドレート、過酸化ナトリウムジパーオキソハイドレート水和物、過酸化ナトリウム二水和物、過酸化ナトリウム八水和物、過酸化リチウム、過酸化リチウムモノパーオキソハイドレート三水和物、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、超酸化カリウム、過酸化カリウムジパーオキソハイドレート、パーオキソホウ酸ナトリウム四水和物、パーオキシホウ酸ナトリウム三水和物、パーオキソホウ酸ナトリウム一水和物、水不含パーオキシホウ酸ナトリウム、パーオキソホウ酸カリウムパーオキソハイドレート、パーオキソホウ酸マグネシウム、パーオキソホウ酸カルシウム、パーオキソホウ酸バリウム、パーオキソホウ酸ストロンチウム、パーオキソホウ酸カリウム、パーオキソモノリン酸、パーオキソ二リン酸、パーオキソ二リン酸カリウム、パーオキソ二リン酸アンモニウム、パーオキソ二リン酸アンモニウムカリウム類(二重塩)、炭酸ナトリウムパーオキソハイドレート、尿素パーオキソハイドレート、シュウ酸アンモニウムパーオキサイド、過酸化バリウムパーオキソハイドレート、過酸化バリウムパーオキソハイドレート、カルシウム過酸化水素類、過酸化カルシウムパーオキソハイドレート、三リン酸アンモニウムジパーオキソホスフェートハイドレート、フッ化カリウムパーオキソハイドレート、フッ化カリウムトリパーオキソハイドレート、フッ化カリウムジパーオキソハイドレート、ピロリン酸ナトリウムジパーオキソハイドレート、ピロリン酸ナトリウムジパーオキソハイドレートオクタハイドレート、酢酸カリウムパーオキソハイドレート、リン酸ナトリウムパーオキソハイドレート、ケイ酸ナトリウムパーオキソハイドレートである。
【0115】
好ましい触媒Bは、過酸化水素、過ギ酸、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化デカノイル、過酸化ラウリル、クメンヒドロパーオキサイド、ピネンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ジセチルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイドである。
【0116】
好ましい触媒Bは、水溶性アゾ化合物である。特に好ましいものは、アゾ開始剤、例えばDupont−Biesteritz社製のVAZO(登録商標) 52 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、VAZO(登録商標)64(アゾ−ビス−(イソブチロニトリル)、AIBN)、VAZO(登録商標)67 2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、VAZO(登録商標)88 1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、VAZO(登録商標)68、Wako Chemicals社製のV−70 2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、V−65 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、V−601ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、V−59 2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、V−40 1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、VF−096 2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、V−30 1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、VAm−110 2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチル−プロピオンアミド)、VAm−111 2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、VA−046B 2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパンジスルフェートジ−ハイドレート、VA−057 2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、VA−061 2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、VA−080 2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、VA−085 2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、VA−086 2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]である。
【0117】
また、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、ジメチルアゾジイソブチレート、アゾジイソブチロニトリル、2−tert−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、1−tert−アミルアゾ−1−シアノシクロヘキサンなどのアゾ開始剤も好適である。更に、アルキルパーケタール類、例えば2,2−ビス−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、エチル−3,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブチレート、1,1−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンも好ましい。
【0118】
また、金属、金属水素化物及び金属アルコレート、例えばリチウム、水素化リチウム、水素化アルミニウムリチウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、tert.−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムメタノレート、ナトリウムエタノレートまたは酪酸ナトリウム、カリウムメタノレート、カリウムエタノレートまたは酪酸カリウムも好ましい触媒Bである。
【0119】
好ましくは、触媒Bは、各々のα,β−不飽和カルボン酸誘導体Vに対して0.05〜5モル%の量で使用される。
【0120】
好ましくは、触媒Bは、リン含有化合物に基づいて0.001〜10モル%の量で使用される。
【0121】
好ましくは、開始剤Bは、リン含有化合物に基づいて1時間当たり0.01〜10モル%の触媒の速度で計量添加される。
【0122】
好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、trans−2,3−ジメチルアクリル酸、trans−2−ペンテン酸、フラン−2−カルボン酸またはチオフェン−2−カルボン酸などのカルボン酸が使用される。
【0123】
好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)としては、上記のα,β−不飽和カルボン酸のメチル−、エチル−、プロピル−、i−プロピル−; ブチル−、t−ブチル、フェニル−、ベンジル−、アリル−、2−ヒドロキシエチル−、2−ヒドロキシプロピル−、3−ヒドロキシプロピル−、4−ヒドロキシブチル−及び/または2,3−ジヒドロキシプロピルエステルが使用される。
【0124】
適当な溶剤は、段階a)に関して記載の溶剤である。
【0125】
好ましくは、アルキル亜ホスホン酸(II)とα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)との反応は、0〜250℃の温度、特に好ましくは20〜200℃の温度、特に50〜150℃の温度で行われる。
【0126】
好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)との反応の際の雰囲気は、50〜99.9重量%、好ましくは70〜95%が溶剤及びα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)の構成分からなる。
【0127】
好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)の添加の間の反応は1〜20barの圧力下に行われる。
【0128】
該方法の更に別の実施形態では、プロセス段階a)及び/またはb)の後に得られた生成物混合物を仕上げ処理する。
該方法の更に別の実施形態では、プロセス段階a)の後に得られた生成物混合物を仕上げ処理し、その後、プロセス段階b)の後に得られた単官能化ジアルキルホスフィン酸及び/またはそれのエステル及びアルカリ塩をプロセス段階c)において反応させる。
【0129】
加えて、本発明の更に別の対象は、金属アルコレート(触媒B)の存在下でのアルキル亜ホスホン酸エステル(II)とα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)との反応によるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)の連続的な製造のための段階b)における方法であって、
a) 反応混合物を循環させるように構成された、それ自体は密閉されかつ冷却設備及び排水口を備えた反応器中に、反応器体積に相当する体積量の製造するべきモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)を、場合により、金属アルコレートに相当する溶剤としてのアルコールとの混合物として、仕込み、そして循環すること、及び
b)前記反応器中に、アルキル亜ホスホン酸エステル(II)、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)、及び金属アルコレートのアルコール性溶液を、循環された反応器の内容物を冷却しながら導入し、そして約5〜120分の期間、約0〜80℃の温度で反応させ、この際、アルキル亜ホスホン酸エステル(II)とα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)とのモル比は約1:0.9〜2とし、そして金属アルコレートの量は、アルキル亜ホスホン酸エステル(II)を基準として約0.1〜5モル%とし、及び
c)反応器の排出口を介して、プロセス生成物を含む混合物を抜き取り、そしてこの混合物から、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)を蒸留によって分離する、
ことを特徴とする前記方法である。
【0130】
本発明方法の好ましい実施形態の一つでは、反応成分の反応は20〜50℃の温度で行われる。反応器への反応成分及び触媒溶液の装入は、例えば次のようにして、すなわち
a)アルキル亜ホスホン酸エステル(II)、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)、及び金属アルコレートのアルコール性溶液を、別々に反応器に導入する、
b)アルキル亜ホスホン酸エステル(II)とα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)との混合物を、金属アルコレートのアルコール性溶液とは別に、反応器中に導入する、または
c)アルキル亜ホスホン酸エステル(II)と金属アルコレートのアルコール性溶液との混合物を、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)とは別に、反応器中に導入する、
ことによって行うことができる。
【0131】
アルキル亜ホスホン酸エステル(II)の及びα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)のエステル基は同一かまたは異なることができる。更に、溶剤として使用されたアルコール及び/または金属アルコレートのアルコール性成分は、アルキル亜ホスホン酸エステル(II)のアルコール性成分及び/またはα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)のアルコール性成分のいずれかと同じである場合に有利である。
【0132】
最後に、本発明の好ましい特徴では、アルキル亜ホスホン酸エステル(II)とα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)とのモル比は1:1〜1.3であり、触媒Bの量は、アルキル亜ホスホン酸エステル(II)を基準にして1〜5モル%であり、溶剤として使用されるアルコールの量は、アルキル亜ホスホン酸エステル(II)1モル当たり0.1〜1000モルである。
【0133】
異なるエステル基を有するアルキル亜ホスホン酸エステル(II)及びα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)、並びにこれらのエステル基に対応するアルコール性金属アルコレート溶液を使用する場合には、プロセス生成物として混合生成物が得られる。
【0134】
本発明の方法では、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)を、理論値の約90%の従来達成されない収率で工業的な規模で連続的に製造することが可能である。
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸またはそれらの塩(III)は、その後、更に別の金属塩へと転化できる。
【0135】
好ましくは、プロセス段階c)の使用される金属化合物は、次の金属、すなわちMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、特に好ましくはMg、Ca、Al、Ti、Zn、Sn、Ce、Feの化合物である。
【0136】
プロセス段階c)のための適当な溶剤は、プロセス段階a)で先に使用されるものである。
【0137】
好ましくは、プロセス段階c)の反応は水性媒体中で行われる。
【0138】
好ましくは、プロセス段階c)において、プロセス段階b)の後に得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、それらのエステル及び/またはアルカリ金属塩(III)を、Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物と反応させて、上記の金属のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)とする。
【0139】
この際、反応は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/−エステル/−塩(III)と金属とのモル比を8:1〜1:3(安定な四価の酸化状態を有する四価金属イオンまたは金属の場合)、6:1〜1:3(安定な三価の酸化状態を有する三価金属イオンまたは金属の場合)、4:1〜1:3(安定な二価の酸化状態を有する二価の金属イオンまたは金属の場合)、及び3:1〜1:4(安定な一価の酸化状態を有する一価の金属イオンまたは金属の場合)として行われる。
【0140】
好ましくは、プロセス段階b)で得られるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル/−塩(III)を対応するジアルキルホスフィン酸に転化し、そしてプロセス段階c)においてこれらを、Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物と反応させて、これらの金属のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)にする。
【0141】
好ましくは、プロセス段階b)において得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/−エステル(III)をジアルキルホスフィン酸−アルカリ塩に転化し、そしてプロセス段階c)においてこれらをMg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物と反応させて、これらの金属のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)にする。
【0142】
好ましくは、プロセス段階c)のためのMg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物は、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物−水酸化物、金属ホウ酸塩、金属炭酸塩、金属ヒドロキソ炭酸塩、金属ヒドロキソ炭酸塩水和物、混合金属ヒドロキソ炭酸塩、混合金属ヒドロキソ炭酸塩水和物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属硫酸塩水和物、金属ヒドロキソ硫酸塩水和物、混合金属ヒドロキソ硫酸塩水和物、金属オキシ硫酸塩、金属酢酸塩、金属硝酸塩、金属フッ化物、金属フッ化物水和物、金属塩化物、金属塩化物水和物、金属オキシ塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属ヨウ化物水和物、金属カルボン酸誘導体及び/または金属アルコキシドである。
【0143】
好ましくは、金属化合物は、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタニル、硝酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、及び/または硫酸亜鉛である。
【0144】
また、金属アルミニウム、フッ化アルミニウム、ヒドロキシ塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、硫化アルミニウム、セレン化アルミニウム; リン化アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム、アンチモン化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、ヘキサフルオロケイ酸アルミニウム; 水素化アルミニウム、水素化カルシウムアルミニウム、水素化ホウ素アルミニウム; 塩素酸アルミニウム; 硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硝酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸アルミニウム、アルミニウムハイドロタルサイト、炭酸ナトリウムアルミニウム、ホウ酸アルミニウム; チオシアン酸アルミニウム; 酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、それらの対応する水和物、及び/または(好ましくは9〜40重量%のアルミニウム含有率を有する)ポリアルミニウムヒドロキシ化合物も適している。
【0145】
更に、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、ポリカルボン酸のアルミニウム塩、例えば二酢酸アルミニウム、アセト酒石酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、アルミニウム−8−オキシキノレートも適している。
【0146】
また同様に、元素状亜鉛、金属亜鉛、並びに亜鉛塩、例えばハロゲン化亜鉛(フッ化亜鉛、塩化亜鉛類、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛)も適している。
【0147】
更に、ホウ酸亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸水酸化亜鉛、ケイ酸亜鉛、ヘキサフルオロケイ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、スズ酸水酸化亜鉛、炭酸水酸化アルミニウムマグネシウム亜鉛、硝酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、リン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、硫酸亜鉛、リン化亜鉛、セレン化亜鉛、テルル化亜鉛、及び第7主族のオキソ酸の亜鉛塩(次亜ハロゲン酸塩、亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、例えばヨウ素酸亜鉛、過ハロゲン酸塩、例えば過塩素酸亜鉛); シュードハロゲニドの亜鉛塩(チオシアン酸亜鉛、シアン酸亜鉛、シアン化亜鉛); 酸化亜鉛類、過酸化亜鉛類、水酸化亜鉛類または混合水酸化酸化亜鉛類も好適である。
【0148】
好ましいものは、遷移金属のオキソ酸の亜鉛塩(例えば、水酸化クロム酸亜鉛(VI)、亜クロム酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、過マンガン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛)である。
【0149】
また、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、ポリカルボン酸の亜鉛塩、例えばギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、吉草酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酒石酸亜鉛、クエン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、乳酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、マレイン酸亜鉛、コハク酸亜鉛、アミノ酸(グリシン)の塩、酸性ヒドロキシ官能基の塩(亜鉛フェノレートなど)、p−フェノールスルホン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、スズ酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛も好適である。
【0150】
チタン化合物の場合は、金属チタン、並びにチタン(III)及び/または(IV)−塩化物、−硝酸塩、−硫酸塩、−ギ酸塩、−酢酸塩、−臭化物、−フッ化物、−オキシ塩化物、−オキシ硫酸塩、−酸化物、−n−プロポキシド、−n−ブトキシド、−イソプロポキシド、−エトキシド、−2−エチルヘキシルオキシドが適している。
【0151】
また金属スズ並びにスズ塩(スズ(II)及び/または(IV)−塩化物); 酸化スズ類及びスズアルコキシド、例えばスズ(IV)−tert−ブトキシドも適している。
【0152】
フッ化セリウム(III)、塩化セリウム(III)、硝酸セリウム(III)も適している。
【0153】
ジルコニウム化合物では、金属ジルコニウム並びにジルコニウム塩、例えば塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニルが好ましい。更に別の好ましいものは、酸化ジルコン類及びジルコン−(IV)−tert−ブトキシドである。
【0154】
好ましくは、プロセス段階c)の反応は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩の固形物含有率を0.1〜70重量%、好ましくは5〜40重量%として行われる。
【0155】
好ましくは、プロセス段階c)の反応は、20〜250℃、好ましくは80〜120℃の温度で行われる。
【0156】
好ましくは、プロセス段階d)の反応は、0.01〜1000bar、好ましくは0.1〜100barの圧力下に行われる。
【0157】
好ましくは、プロセス段階c)の反応は、1×10−7〜1×10hの反応時間にわたって行われる。
【0158】
好ましくは、プロセス段階d)の後に濾過及び/または遠心分離によって反応混合物から分離されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)は乾燥される。
【0159】
好ましくは、プロセス段階b)の後に得られた生成物混合物は、更に精製することなく、金属化合物と反応させる。
【0160】
好ましい溶剤は、プロセス段階a)について記載した溶剤である。
【0161】
好ましくは、プロセス段階b)及び/またはc)における反応は、段階a)によって与えられた溶剤系中で行われる。
【0162】
好ましくは、プロセス段階c)における反応は、変性された与えられた溶剤系中で行われる。このためには、酸性成分、可溶化剤、発泡防止剤などが加えられる。
【0163】
該方法の更に別の実施形態の一つでは、プロセス段階a)、b)及び/またはc)の後に得られた生成物混合物を仕上げ処理する。
【0164】
該方法の更に別の実施形態の一つでは、プロセス段階b)の後に得られた生成物混合物を仕上げ処理し、その後、プロセス段階b)の後に得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸及び/またはそれの塩もしくはエステル(III)をプロセス段階c)において金属化合物と反応させる。
【0165】
好ましくは、プロセス段階b)の後の生成物混合物は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸及び/またはそれの塩もしくはエステル(III)を、溶剤系を除去することによって、例えば蒸発させることによって単離することによって仕上げ処理する。
【0166】
好ましくは、Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFe金属のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)は、任意選択的に、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%の残留含水率、0.1〜2000μm、好ましくは10〜500μmの平均粒度、80〜800g/L、好ましくは200〜700g/Lの嵩密度、及び0.5〜10、好ましくは1〜5のフレングル(Pfrengle)流動性を有する。
【0167】
特に好ましくは、成形体、フィルム、糸及び繊維は、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/−エステル/−塩5〜30重量%、ポリマーまたはそれの混合物5〜90重量%、添加剤5〜40重量%及びフィラー5〜40重量%を含み、この際これらの成分の合計は常に100重量%である。
【0168】
好ましくは、添加剤は、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、更に別の難燃剤、熱安定化剤、耐衝撃性改良剤、プロセス助剤、滑剤、光保護剤、滴下防止剤(Antidrippingmittel)、相容化剤、強化材、フィラー、核形成剤、核剤、レーザーマーキング用添加剤、加水分解安定化剤、鎖延長剤、カラー顔料、軟化剤及び/または可塑剤である。
【0169】
好ましいものは、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−エステルもしくは−塩(III)を0.1〜90重量%、及び更に別の添加剤、特に好ましくはジオールを0.1〜50重量%含む難燃剤である。
【0170】
アルミニウム三水和物、酸化アンチモン、臭素化された芳香族もしくは環状脂肪族炭化水素、フェノール類、エーテル、クロロパラフィン、ヘキサクロロシクロペンタジエン付加物、赤リン、メラミン誘導体、シアヌル酸メラミン類、ポリリン酸アンモニウム類及び水酸化マグネシウムも好ましい添加剤である。更に別の難燃剤、特にジアルキルホスフィン酸の塩は好ましい添加剤である。
【0171】
特に、本発明は、本発明のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−エステルもしくは塩(III)の、熱可塑性ポリマー、例えばポリエステル、ポリスチレンまたはポリアミドのための及び熱硬化性ポリマー、例えば不飽和ポリエステル樹脂、エポキシド樹脂、ポリウレタンまたはアクリレートのための難燃剤としてのまたは難燃剤製造のための中間段階としての使用に関する。
【0172】
適当なポリエステルは、ジカルボン酸もしくはそれのエステルとジオールから及び/またはヒドロキシカルボン酸または対応するラクトン類から誘導される。好ましくは、テレフタル酸及びエチレングリコール、プロパン−1,3−ジオール及びブタン−1,3−ジオールが使用される。
【0173】
適当なポリエステルは、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(Celanex(登録商標)2500、Celanex(登録商標)2002、Celanese社; Ultradur(登録商標)、BASF社)、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、並びにヒドロキシル末端基を有するポリエーテルから誘導されるブロック−ポリエーテルエステル; 更にポリカーボネートでもしくはMBSで変性されたポリエステルである。
【0174】
永続的な難燃性を有する合成線状ポリエステルは、ジカルボン酸成分、ジオール成分、及びリン含有鎖員としての本発明のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸もしくは−エステルまたは本発明の方法に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸−もしくはエステルから構成される。このリン含有鎖員は、該ポリエステルのジカルボン酸成分の2〜20重量%を占める。好ましくは、ポリエステル中の生ずるリン含有率は0.1〜5重量%、特に好ましくは0.5〜3重量%である。
【0175】
次の工程を、本発明に従い製造される化合物を用いてまたは添加して行うことができる。
【0176】
好ましくは、成形材料の製造のためには、遊離のジカルボン酸及びジオールから出発して先ず直接エステル化し、次いで重縮合する。
【0177】
好ましくは、ジカルボン酸エステル、特にジメチルエステルから出発して、先ずエステル交換し、次いでこれに慣用の触媒の使用下に重縮合する。
【0178】
好ましくは、ポリエステルの製造の際には、慣用の触媒の他に、通例の添加剤(架橋剤、艶消し剤及び安定化剤、核剤、染料及びフィラーなど)を添加することができる。
【0179】
好ましくは、ポリエステル製造の際のエステル化及び/またはエステル交換は、100〜300℃の温度、特に好ましくは150〜250℃の温度で行われる。
【0180】
好ましくは、ポリエステル製造の際の重縮合は、0.1〜1.5mbarの圧力及び150〜450℃、特に好ましくは200〜300℃の温度で行われる。
【0181】
本発明に従い製造される難燃性ポリエステル成形材料は、好ましくはポリエステル成形体に使用される。
【0182】
好ましいポリエステル成形体は、ジカルボン酸成分として主にテレフタル酸及びジオール成分として主にエチレングリコールを含む、糸、繊維、フィルム及び成形体である。
【0183】
好ましくは、難燃性ポリエステルから製造される糸及び繊維中の生ずるリン含有率は0.1〜18、好ましくは0.5〜15重量%、フィルムの場合には0.2〜15、好ましくは0.9〜12重量%である。
【0184】
適当なポリスチレン類は、ポリスチレン、ポリ−(p−メチルスチレン)及び/またはポリ−(アルファ−メチルスチレン)である。
【0185】
好ましくは、適当なポリスチレン類は、スチレンまたはアルファ−メチルスチレンとジエン類またはアクリル誘導体とのコポリマー、例えばスチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−アルキルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−アルキルアクリルレート及び−メタクリレート、スチレン−無水マレイン酸、スチレン−アクリロニトリル−メチルアクリレート; スチレンコポリマーと他のポリマー、例えばポリアクリレート、ジエンポリマーもしくはエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーとからなる高耐衝撃性混合物; 並びにスチレンのブロックコポリマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン、またはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンである。
【0186】
好ましくは、適当なポリスチレン類は、スチレンのまたはアルファ−メチルスチレンのグラフトコポリマー、例えばポリブタジエン上にグラフトしたスチレン、ポリブタジエン−スチレン−もしくはポリブタジエン−アクリロニトリル−コポリマー上にグラフトしたスチレン、ポリブタジエン上にグラフトしたスチレン及びアクリロニトリル(もしくはメタクリロニトリル); ポリブタジエン上にグラフトしたスチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレート; ポリブタジエン上にグラフトしたスチレン及び無水マレイン酸; ポリブタジエン上にグラフトしたスチレン、アクリロニトリル及び無水マレイン酸もしくはマレイン酸イミド; ポリブタジエン上にグラフトしたスチレン及びマレイン酸イミド、ポリブタジエン上にグラフトしたスチレン及びアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレート、エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー上にグラフトしたスチレン及びアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレートまたはポリアルキルメタクリレート上にグラフトしたスチレン及びアクリロニトリル、アクリレート−ブタジエンコポリマー上にグラフトしたスチレン及びアクリロニトリル、並びにこれらの混合物、例えばABS、MBS、ASAまたはAESポリマーとして知られる混合物である。
【0187】
好ましくは、ポリマーは、ジアミン及びジカルボン酸から及び/またはアミノカルボン酸または対応するラクタムから誘導されるポリアミド及びコポリアミド、例えばポリアミド2,12、ポリアミド4、ポリアミド4,6、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6,66、ポリアミド7,7、ポリアミド8,8、ポリアミド9,9、ポリアミド10,9、ポリアミド10,10、ポリアミド11、ポリアミド12などでもある。このようなポリアミドは、中でも、例えば、DuPont社のNylon(登録商標)、BASF社のUltramid(登録商標)、DSM社のAkulon(登録商標)K122、DuPont社のZytel(登録商標)7301; Bayer社のDurethan(登録商標)B29、及びEms Chemie社のGrillamid(登録商標)の商品名で既知である。
【0188】
また、m−キシレン、ジアミン及びアジピン酸を原料とする芳香族ポリアミド; ヘキサメチレンジアミン及びイソ−及び/またはテレフタル酸、場合によっては及び改質剤としてのエラストマーから製造されるポリアミド、例えばポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−テレフタルアミドまたはポリ−m−フェニレンイソフタルアミド、上記のポリアミドとポリオレフィンとの、オレフィン−コポリマーとの、アイオノマーとのまたは化学的に結合もしくはグラフトしたエラストマーとのブロックコポリマー、あるいは上記のポリアミドとポリエーテルとの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールとのブロックコポリマーも好適である。更に、EPDMまたはABSで変性したポリアミドまたはコポリアミド、並びに加工中に縮合されるポリアミド(“RIM−ポリアミドシステム”)も好適である。
【0189】
請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/−エステル/−塩は、好ましくは、後でポリマー成形体の製造に使用される成形材料中に用いられる。
【0190】
特に好ましくは、難燃性成形材料は、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩または−エステル5〜30重量%、ポリマーまたはこれの混合物5〜90重量%、添加剤5〜40重量%、及びフィラー5〜40重量%を含み、ここでこれらの成分の合計は常に100重量%である。
【0191】
本発明は、また、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩または−エステルを含む難燃剤にも関する。
【0192】
更に、本発明は、Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属の本発明に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)を含む、ポリマー成形材料並びにポリマー成形体、フィルム、糸及び繊維に関する。
【実施例】
【0193】
本発明を以下の例によって説明する。
難燃性ポリマー成形材料及び難燃性ポリマー成形体の製造、加工及び試験
難燃剤成分を、ポリマーペレット、場合によっては及び添加剤と混合し、そして二軸スクリュー押出機(型Leistritz LSM(登録商標)30/34)で230〜260℃の温度(ガラス繊維強化PBT)または260〜280℃の温度(ガラス繊維強化PA66)で配合する。均一化されたポリマーストランドを引き抜き、水浴中で冷却し、次いでペレット化した。
【0194】
十分な乾燥後、成形材料を、射出成形機(型Aarburg Allrounder)で、240〜270℃の材料温度(ガラス繊維強化PBT)または260〜290℃の材料温度(ガラス繊維強化PA66)で試験片に加工した。この試験片を、UL94試験(Underwriter Laboratories)に基づいて難燃性について試験及びクラス分けする。
【0195】
各々の混合物からの試験片について、防火クラスUL94(Underwriter Laboratories)を厚さ1.5mmの試料片で求めた。
UL94では、以下の防火クラスが結果として生ずる:
V−0: 10秒より長い後有炎燃焼無し、10回接炎した時の後有炎燃焼時間の合計が50秒以下、燃焼滴下物無し、試料の完全な焼失無し、接炎終了後に30秒を超える試料の後無炎燃焼無し。
V−1: 接炎終了後に30秒を超える後有炎燃焼無し、10回接炎した時に後有炎燃焼時間の合計が250秒以下、接炎終了後に60秒を超える試料の後無炎燃焼無し、他はV−0と同じ規準。
V−2: 燃焼滴下物による綿の点火、他はV−1と同じ規準。
クラス分け不能(nkl): 防火クラスV−2を満たさない。
【0196】
幾つかの試験試料では、更に、LOI値も測定した。LOI値(限界酸素指数)はISO4589に従い求める。ISO4589では、LOIは、酸素及び窒素からなる混合物中でプラスチックの燃焼がなおもぎりぎり継続される体積パーセントで表した最小酸素濃度に相当する。LOI値が高い程、試験された材料は燃えにくい。
LOI 23 可燃性
LOI 24〜28 限られた可燃性
LOI 29〜35 難燃性
LOI >36 格別に難燃性
使用した化学品及び略称
VE水 完全に脱塩した水
AIBN アゾ−ビス−(イソブチロニトリル)(WAKO Chemicals GmbH製)
WakoV65 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)(WAKO Chemicals GmbH製)
Deloxan(登録商標)THPII 金属捕捉剤(Evonik Industries AG製)
【0197】
例1
室温で、攪拌機及び強力冷却器を備えた三つ首フラスコ中に188gの水を仕込み、そして攪拌及び窒素導通下に脱気する。次いで、窒素雰囲気下に、0.2mgの硫酸パラジウム(II)及び2.3mgのトリス(3−スルホフェニル)−ホスフィン三ナトリウム塩を加えそして攪拌し、次いで66gの水中の66gのホスフィン酸を加える。この反応溶液を2Lのビュッヒ反応器に移し替え、そして攪拌及び加圧下にエチレンを装入し、そしてこの反応混合物を80℃に加熱する。28gのエチレンが吸収された後、冷却し、そして遊離のエチレンを排出する。この反応混合物からロータリーエバポレーターで溶剤を除去する。残留物を100gのVE水と混合し、そして室温で窒素雰囲気下に攪拌し、次いで濾過し、そして濾液をトルエンで抽出し、その後、ロータリーエバポレーターで溶剤を除去し、そして得られたエチル亜ホスホン酸を集める。こうして、92g(理論値の98%)のエチル亜ホスホン酸が得られる。
【0198】
例2
例1と同様にして、99gのホスフィン酸、396gのブタノール、42gのエチレン、6.9mgのトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、9.5mgの4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンを反応させ、次いで精製するためにDeloxan(登録商標)THPIIを装入したカラムに通し、その後もう一度n−ブタノールを加える。80〜110℃の反応温度において、生成した水を共沸蒸留によって除去する。生成物を低められた圧力下に蒸留によって精製する。収量: 189g(理論値の84%)のエチル亜ホスホン酸ブチルエステル。
【0199】
例3
例1と同様にして、198gのホスフィン酸、198gの水、84gのエチレン、6.1mgの硫酸パラジウム(II)、25.8mgの9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,7−スルホナト−キサンテン二ナトリウム塩を反応させ、次いで精製するために、Deloxan(登録商標)THPIIを装入したカラムに通し、その後n−ブタノールを加える。80〜110℃の反応温度において、生成した水を共沸蒸留によって除去する。生成物を低められた圧力下に蒸留によって精製する。こうして374g(理論値の83%)のエチル亜ホスホン酸ブチルエステルが得られる。
【0200】
例4
ガス導入管、温度計、強力攪拌機、及びガス焼却付きの還流冷却器を備えた500ml五つ首フラスコ中に、94g(1モル)のエチル亜ホスホン酸(例1に記載のように製造したもの)を仕込む。室温下に、エチレンオキシドを導入する。冷却しながら、70℃の反応温度を調節し、そして80℃で更に1時間、後反応させる。エチレンオキシド吸収量は65.7gに達する。生成物の酸価は1mgKOH/g未満である。収量: 無色透明の生成物としての129g(理論値の94%)(エチル亜ホスホン酸−2−ヒドロキシエチルエステル)。
【0201】
例5
564g(6モル)のエチル亜ホスホン酸(例1に記載のように製造したもの)を860gの水中に溶解し、そして温度計、還流冷却器、強力攪拌機及び滴下漏斗を備えた5Lの五つ首フラスコ中に仕込む。この反応混合物を100℃に加熱した後、常圧下に1時間かけて、504g(7モル)のアクリル酸及び500gの5%濃度パーオキソ二硫酸ナトリウム溶液(アクリル酸に対して1.5モル%)を滴下する。引き続いて、水を真空下に留去する。その残留物をテトラヒドロフラン中に取り込みそして抽出する。不溶性の塩を濾別する。その濾液の溶剤を真空下に分離し、その残留物をアセトンから再結晶化する。807g(理論値の81%)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチル−プロピオン酸が無色の固形物として得られる。
【0202】
例6
94g(1モル)のエチル亜ホスホン酸(例1に記載のように製造したもの)及び114g(1モル)のメタクリル酸エチルエステルを、攪拌機、還流冷却器、温度計及び窒素入口を備えた四つ首丸底フラスコ中で、200mlのエタノール中に仕込み、そして加温する。1時間かけて、約100℃で、エタノール中のAIBNの5%濃度溶液98.4gを滴下する。その後、溶剤を真空下に留去する。収量: 206gの3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸エチルエステル。
【0203】
例7
217gのトルエン中の149g(1モル)のエチル亜ホスホン酸ブチルエステル(例2に記載のように製造したもの)及び86g(1.2モル)のアクリル酸を約100℃に加温する。攪拌しながら、トルエン中のWakoV65の10%濃度溶液124gを計量添加する。溶剤を真空下に留去する。201g(理論値の91%)の3−(エチルブトキシホスフィニル)プロピオン酸が得られる。
【0204】
例8
温度計、還流冷却器、強力攪拌機及び滴下漏斗を備えた1Lの五つ首フラスコ中に、447g(3モル)のエチル亜ホスホン酸ブチルエステル(例8に記載のように製造したもの)及び385g(3モル)のアクリル酸ブチルエステルを仕込んだ。攪拌下に、15mlの酪酸ナトリウム(ブタノール中30%濃度)を、最大120℃の反応温度が調節されるような速度で滴下する。こうして得られた粗製生成物を真空下に蒸留する。収量: 無色の液体としての745g(理論値の90%)の3−(エチルブトキシホスフィニル)プロピオン酸ブチルエステル。
【0205】
例9
温度計、還流冷却器、強力攪拌機及び滴下漏斗を備えた500mlの五つ首フラスコ中に、63g(0.46モル)のエチル亜ホスホン酸−2−ヒドロキシエチルエステル(例4に記載のように製造したもの)及び53.0g(0.46モル)のアクリル酸ヒドロキシエチルエステルを仕込む。攪拌下に、25mlのナトリウムエチレート(エタノール中30%濃度)を、60℃の反応温度が調節されるような速度で滴下する。淡い黄色に着色された液体が得られる。こうして得られた粗製生成物を真空下に蒸留する。収量: 無色の液体としての101g(理論値の87%)の3−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)プロピオン酸−2−ヒドロキシエチルエステル。
【0206】
例10
1Lの容積を有するループ型反応器に、990g(4.5モル)の3−(エチルエトキシホスフィニル)プロピオン酸エチルエステル(例9と類似して製造したもの)及び62g(1.35モル)のエタノールからなる混合物を充填する。ポンプの運転開始後に、1時間ごとに、726g(6.00モル)のエチル亜ホスホン酸エチルエステル及び594g(6.00モル)のアクリル酸エチルからなる混合物、及び120g(2.61モル)のエタノール中の16.8g(0.20モル)のカリウムエチレートの溶液を計量添加し、この際、冷却水の循環を用いて、約40℃の反応混合物の温度を維持した。あふれた粗製生成物を30時間集め、そして反応器から排出された生成物と合わせて44.1kgの総量となった。水ジェット真空下に蒸留することによって低沸点物を分離しそして濾過した後に、生成物を薄膜蒸発器で真空下に蒸留し、そうして38.6kg(175.5モル)の3−(エチルエトキシホスフィニル)プロピオン酸エチルエステルが得られた。これは、反応器に仕込まれた量を差し引くと、約1300g/lhの工率で95.3%のP−収率に相当する。この例が示すように、良好な空間時間収量でのモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステルの連続的な製造が可能である。
【0207】
例11
例5に従い製造した552g(2モル)の3−(エチルブトキシホスフィニル)−プロピオン酸ブチルエステルを、温度計、還流冷却器、強力攪拌機及び滴下漏斗を備えた1Lの五つ首フラスコ中に仕込む。160℃で、4時間の間に500mlの水を計量添加し、そしてブタノール−水混合物を留去する。固形の残留物をアセトンから再結晶化する。309g(理論値の93%)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸が無色の固形物として得られる。
【0208】
例12
498g(3モル)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)プロピオン酸(例5のように製造したもの)を85℃で400mlのトルエン中に溶解し、そして888g(12モル)のブタノールと混合する。約100℃の反応温度で、生成した水を共沸蒸留によって除去する。生成物である3−(エチルブトキシホスフィニル)プロピオン酸ブチルエステルを、低められた圧力下に蒸留によって精製する。
【0209】
例13
540g(3.0モル)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸(例5に類似して製造したもの)を80℃で400mlのトルエン中に溶解し、そして594g(6.6モル)の1,4−ブタノンジオールと混合し、そして水分離器を備えた蒸留装置中で、約100℃で4時間の間エステル化する。エステル化の終了後、トルエンを真空下に分離する。856g(理論値の92%)の3−(エチル−4−ヒドロキシブチルホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸−4−ヒドロキシブチルエステルが無色の油状物として得られる。
【0210】
例14
498g(3.0モル)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)プロピオン酸(例11のように製造したもの)を85℃で400mlのトルエン中に溶解し、そして409g(6.6モル)のエチレングリコールと混合し、そして水分離器付きの蒸留装置中で約100℃で4時間の間エステル化する。エステル化の終了後、トルエン及び過剰のエチルグリコールを真空下に分離する。678g(理論値の89%)の3−(エチル−2−ヒドロキシエチルホスフィニル)プロピオン酸−2−ヒドロキシエチルエステルが無色の油状物として得られる。
【0211】
例15
664g(4.0モル)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)プロピオン酸(例5のように製造したもの)を80℃で400mlのトルエン中に溶解し、そして1003g(8.5モル)の1,6−ヘキサンジオールと混合し、そして水分離器付きの蒸留装置中で約100℃で4時間の間エステル化する。エステル化の終了後、トルエンを真空下に分離する。980g(理論値の67%)の3−(エチル−6−ヒドロキシヘキシルホスフィニル)プロピオン酸−6−ヒドロキシヘキシルエステルが無色の油状物として得られる。
【0212】
例16
例5に従い製造された276g(2モル)の3−(エチルブトキシホスフィニル)プロピオン酸ブチルエステルに、155g(2.5モル)のエチレングリコール及び0.4gのシュウ酸チタニルカリウムを加え、そして2時間200℃で攪拌する。ゆっくりと排気することによって、易揮発性の成分を留去する。244g(理論値の98%)の3−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)プロピオン酸−2−ヒドロキシエチルエステルが得られる。
【0213】
例17
996g(6モル)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸(例5に記載のように製造したもの)を860gの水中に溶解し、そして温度計、還流冷却器、強力攪拌機及び滴下漏斗を備えた5Lの五つ首フラスコ中に仕込み、そして約960g(12モル)の50%濃度水酸化ナトリウム溶液を用いて中和する。85℃で、Al(SO・14HOの46%濃度水溶液2583gの混合物を加える。引き続いて、得られた固形物を濾別し、熱水で洗浄し、そして130℃で真空下に乾燥する。収量:無色の塩としての1026g(理論値の94%)の3−(エチルヒドロキシ−ホスフィニル)−プロピオン酸アルミニウム(III)塩。
【0214】
例18
177g(1モル)の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステル(例6に記載のように製造したもの)及び140gのテトラ酪酸チタンを、500mlのトルエン中で、還流下に40時間加熱する。この際生ずるブタノールを、トルエンの一部と一緒に時々留去する。次いで、生じた溶液から溶剤を除去する。196gの3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸メチルエステルチタン塩が得られる。
【0215】
例19
442g(2モル)の3−(エチルブトキシホスフィニル)プロピオン酸(例11のように製造したもの)及び340g(1モル)の四酪酸チタンを、4時間、対応するブタノールの還流下に130〜140℃に加熱する。次いで、生じた溶液を2.5Lの水中に投入し、そして沸騰するまで加熱する。次いで、生じた反応混合物から溶剤を除去して3−(エチルブトキシホスフィニル)プロピオン酸チタニル塩を単離する。
【0216】
例20
25.4gの3−(エチルヒドロキシホスフィニル)プロピオン酸−2−ヒドロキシエチルエステル(例9のように製造したもの)に、290gのテレフタル酸、188gのエチレングリコール、0.34gの酢酸亜鉛を加え、そして2時間200℃に加熱する。次いで、0.29gのリン酸三ナトリウム無水物及び0.14gの酸化アンチモン(III)を加え、280℃に加熱し、その後排気する。得られた溶融物(357g、リン含有率0.9%)から、ISO4589−2準拠の酸素指数(LOI)の測定に、並びに防火試験UL94(Underwriter Laboratories)の測定のために、厚さ1.6mmの試料片を射出する。こうして製造された試料片は42%OのLOIを与え、UL94のV−0の防火クラスを満たす。3−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)−プロピオン酸−2−ヒドロキシエチルエステルを含まない対応する試料片は、僅か31%OのLOIを与え、そしてUL94のV−2の防火クラスしか満たさない。それ故、この3−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)−プロピオン酸−2−ヒドロキシエチルエステルを含むポリエステル成形体は、明白な難燃性を示す。
【0217】
例21
15.2gの3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸(例5に類似して製造したもの)に、12.9gの1,3−プロピレングリコールを加え、そして160℃で、エステル化の際に生じた水を蒸留する。次いで、378gのジメチルテレフタレート、152gの1,3−プロパンジオール、0.22gのチタン酸テトラブチル及び0.05gの酢酸リチウムを加え、そしてこの混合物を2時間攪拌しながら130〜180℃に加熱し、その後、減圧下に270℃に加熱する。このポリマー(438g)は0.6%のリンを含み、LOIは34である。
【0218】
例22
14gの3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸(例5に記載のように製造したもの)に、367gのジメチルテレフタレート、170gの1,4−ブタンジオール、0.22gのチタン酸テトラブチル及び0.05gの酢酸リチウムを加え、そしてこの混合物を先ず2時間攪拌しながら130〜180℃に加熱し、その後、減圧下に270℃に加熱する。このポリマー(427g)は0.6%のリンを含み、LOIは34であり、未処理のポリブチレンテレフタレートのLOIは23である。
【0219】
例23
還流冷却器、攪拌機、温度計及び窒素入口を備えた250mlの五つ首フラスコ中で、0.55モル/100gのエポキシド価を有するビスフェノール−A−ビスグリシドエーテル(Beckopox EP 140、Solutia社)100g及び3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチルプロピオン酸(例5に類似して製造したもの)24.1g(0.13モル)を攪拌下に最大150℃に加熱する。30分後に、透明な溶融物が生ずる。150℃で更に1時間攪拌した後、溶融物を冷却しそして細かく砕く。リン含有率が3.3重量%の白色の粉末が118.5g得られる。
【0220】
例24
攪拌機、水分離器、温度計、還流冷却器及び窒素入口を備えた2Lフラスコ中で、29.4gの無水フタル酸、19.6gの無水マレイン酸、24.8gのプロピレングリコール、18.7gの3−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)プロピオン酸−2−ヒドロキシエチルエステル(例9に記載のように製造したもの)、20gのキシレン及び50mgのヒドロキノンを、攪拌及び窒素の導通下に、100℃に加熱する。発熱性の反応が始まったら加熱を止める。反応の終息後、更に約190℃で攪拌する。14gの水が分離された後、キシレンを留去し、そしてポリマー溶融物を冷却する。リン含有率が2.3重量%の白色の粉末91.5gが得られる。
【0221】
例25
50重量%のポリブチレンテレフタレート、20重量%の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−プロピオン酸アルミニウム(III)塩(例17のように製造されたもの)及び30重量%のガラス繊維からなる混合物を、二軸スクリュー押出機(型Leistritz LSM 30/34)で230〜260℃の温度でコンパウンドしてポリマー成形材料とする。均一化されたポリマーストランドを引き抜き、水浴中で冷却し、次いでペレット化した。乾燥後、この成形材料を射出成形機(型Aarburg Allrounder)で240〜270℃で加工しポリマー成形体とする。V−0のUL−94クラスが達成される。
【0222】
例26
53重量%のポリアミド6.6、30重量%のガラス繊維、17重量%の3−(エチルヒドロキシホスフィニル)−2−メチル−プロピオン酸メチルエステルチタン塩(例18に記載のように製造したもの)からなる混合物を、二軸スクリュー押出機(型Leistritz LSM 30/34)でコンパンドしてポリマー成形材料とする。均一化されたポリマーストランドを引き抜き、水浴中で冷却し、次いでペレット化する。乾燥後、この成形材料を射出成形機(型Aarburg Allrounder)で260〜290℃で加工してポリマー成形体とする。V−0のUL−94クラスが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の製造方法であって、
a) 次式
【化1】

で表されるホスフィン酸源(I)を、次式
【化2】

で表されるオレフィン(IV)と触媒Aの存在下に反応させて、次式
【化3】

で表されるアルキル亜ホスホン酸、それの塩またはエステル(II)とし、
b) こうして生じたアルキル亜ホスホン酸、それの塩またはエステル(II)を、次式
【化4】

のα,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)と触媒Bの存在下に反応させて、次式
【化5】

のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(III)とし、ここでR、R、R、R、R、R、Rは、同一かまたは異なり、そして互いに独立して、H、C−C18−アルキル、C−C18−アリール、C−C18−アラルキル、C−C18−アルキル−アリール、CN、CHO、OC(O)CHCN、CH(OH)C、CHCH(OH)CH、9−アントラセン、2−ピロリドン、(CHOH、(CHNH、(CHNCS、(CHNC(S)NH、(CHSH、(CHS−2−チアゾリン、(CHSiMe、C(O)R、(CHC(O)R、CH=CH−R、CH=CH−C(O)Rを意味し、ここでRは、C−C−アルキルまたはC−C18−アリールを表し、そしてmは0〜10の整数を意味し、そしてX及びYは、同一かまたは異なり、そして互いに独立して、H、C−C18−アルキル、C−C18−アリール、C−C18−アラルキル、C−C18−アルキル−アリール、(CHOH、CH−CHOH−CHOH、(CHO(CHH、(CH−CH(OH)−(CHH、(CH−CHO)H、(CH−C[CH]HO)H、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)H、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)H、(CH−CHO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)−アルキル、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)O−アルキル、(CH−CH=CH(CHH、(CHNH、(CHN[(CHH](ここでkは、0〜100の整数である)を表すか、及び/またはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Cu、Ni、Li、Na、K、H及び/またはプロトン化された窒素塩基を表し、そして触媒Aは、遷移金属、遷移金属化合物、及び/または遷移金属及び/または遷移金属化合物と少なくとも一つの配位子とから構成される触媒系であり、触媒Bは、過酸化物形成化合物、パーオキソ化合物、アゾ化合物、アルカリ金属−、アルカリ土類金属、−水素化物及び/または−アルコレートである、
ことを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
段階b)の後に得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、それの塩またはエステル(III)を、次いで段階c)において、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kの金属化合物及び/またはプロトン化された窒素塩基と反応させて、これらの金属及び/または窒素化合物の対応するモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)とすることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
段階a)の後に得られるアルキル亜ホスホン酸、それの塩またはエステル(II)、及び/または段階b)の後に得られるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、それの塩またはエステル(III)、及び/またはそれぞれの生ずる反応溶液を、アルキレンオキシドあるいはアルコールM−OH及び/またはM’−OHでエステル化し、そして各々生ずるアルキル亜ホスホン酸エステル(II)及び/またはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)を次の反応段階b)またはc)に付すことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項4】
−C18−アリール、C−C18−アラルキル及びC−C18−アルキル−アリール基が、SO、−C(O)CH、OH、CHOH、CHSO、PO、NH、NO、OCH、SH及び/またはOC(O)CHで置換されていることを特徴とする、請求項1〜3の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項5】
、R、R、R、R、R、Rが、同一かまたは異なり、互いに独立して、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert.−ブチル及び/またはフェニルを意味することを特徴とする、請求項1〜5の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項6】
X及びYが、同一かまたは異なり、それぞれH、Ca、Al、Zn、Ti、Mg、Ce、Fe、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert.−ブチル、フェニル、エチレングリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール、アリル及び/またはグリセリンを意味することを特徴とする、請求項1〜5の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項7】
遷移金属及び/または遷移金属化合物が、第7及び第8亜族からのものであることを特徴とする、請求項1〜6の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項8】
遷移金属及び/または遷移金属化合物が、ロジウム、ニッケル、パラジウム、ルテニウム及び/または白金であることを特徴とする、請求項1〜7の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項9】
触媒Bが、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、パーオキソ二硫酸ナトリウム、パーオキソホウ酸カリウム、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル及び/またはパーオキソ二硫酸であるか、及び/またはアゾジイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロライド及び/または2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレン−イソブチルアミジン)−ジヒドロクロライドであるか、及び/またはリチウム、水素化リチウム、水素化アルミニウムリチウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ナトリウムメタノレート、ナトリウムエタノレートまたは酪酸ナトリウム、カリウムメタノレート、カリウムエタノレート及び/または酪酸カリウムであることを特徴とする、請求項1〜8の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項10】
α,β−不飽和カルボン酸誘導体(V)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、trans−2−ペンテン酸、フラン−2−カルボン酸、チオフェン−2−カルボン酸、及び/またはこれらのメチル−、エチル−、プロプル−、ブチル−、ヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−及びヒドロキシブチルエステルであることを特徴とする、請求項1〜9の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項11】
一般式M−OHのアルコールが、C〜C18の炭素鎖長を有する線状もしくは分枝状で飽和もしくは不飽和の一価有機アルコールであり、一般式M’−OHのアルコールが、C〜C18の炭素鎖長を有する線状もしくは分枝状で飽和もしくは不飽和の多価有機アルコールであることを特徴とする、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項12】
更に別の合成のための中間生成物としての、バインダーとしての、エポキシ樹脂、ポリウレタン及び不飽和ポリエステル樹脂の硬化の際の架橋剤もしくは促進剤としての、ポリマー安定化剤としての、植物保護剤としての、ヒト及び動物のための治療における治療薬または添加剤としての、金属イオン封鎖剤としての、鉱油添加剤としての、腐食保護剤としての、洗濯洗剤及び洗浄剤の用途における及びエレクトロニックの用途における、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−エステル及び−塩の使用。
【請求項13】
難燃剤、特に透明塗料及び膨張性発泡塗料のための難燃剤としての、木材及び他のセルロース含有材料のための難燃剤、ポリマー用の反応性及び/または非反応性難燃剤としての、難燃性ポリマー成形材料の製造のための、難燃性ポリマー成形体の製造のための及び/または含浸によるポリエステル及びセルロース単布及び混布の防火処理のための、請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩及び−エステルの使用。
【請求項14】
請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩もしくは−エステル0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはこれらの混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%及びフィラーもしくは強化材0〜55重量%を含み、この際、これらの成分の合計は100重量%である、難燃性熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマー成形材料。
【請求項15】
請求項1〜11の一つまたはそれ以上に従い製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、−塩もしくは−エステル0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはこれらの混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%及びフィラーもしくは強化材0〜55重量%を含み、この際、これらの成分の合計は100重量%である、難燃性熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマー糸及びポリマー繊維。

【公表番号】特表2012−508198(P2012−508198A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535019(P2011−535019)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007133
【国際公開番号】WO2010/051893
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】