説明

アクリル(メタクリル)基含有糖誘導体、及びそのアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法

【課題】複数のエステル結合を含むアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体、及びその製造方法の提供。
【解決手段】一般式(1);


(式中、G−O−は糖残基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)で示されるアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体。及びアクリル(メタクリル)基含有カルボン酸誘導体又はアクリル(メタクリル)基含有カルボン酸酸無水物誘導体と糖化合物とを反応させて当該糖誘導体を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体、及びそのアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、側鎖に糖残基を有する重合体は、グリコシド結合を介して糖残基を有しているため、親水性、吸水性、生分解性及び生体適合性などに優れており、表面処理剤、医療用材料、吸水性樹脂、界面活性剤など種々の用途への展開がなされている。このことから、アクリル(メタクリル)基を含有したグリコシド誘導体(糖誘導体)は、モノマー原料としてその産業上の有用性が広く一般に認められている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2990284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の糖誘導体は1つのエステル結合を含むものである。この糖誘導体に、さらに、複数のエステル結合基を導入すると、疎水性が向上し、親疎水性のバランスが取りやすくなることが見込まれる。つまり、親水性のモノマーだけでなく、スチレンのような疎水性のモノマーとの共重合が可能な糖誘導体となり、モノマー原料としての有用性は増すと考えられる。
【0004】
しかしながら、これまで、複数のエステル結合を含むアクリル(メタクリル)基含有の糖誘導体は得られていなかった。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、複数のエステル結合を含む新規のアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体及びそのアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、糖残基を側鎖に有する重合体の合成に有用な新規のモノマー化合物を得ることに成功し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、新規のアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体及びそのアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明に係るアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体は、一般式(1);
【0009】
【化1】

(式中、G−O−は糖残基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)で示される。
【0010】
また、本発明に係るアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法は、一般式(2);
【0011】
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Yはハロゲン原子、水酸基、又は有機残基を示す。)又は一般式(3);
【0012】
【化3】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)で示されるカルボン酸誘導体と、
一般式(4);
G−O−H (4)
(式中、G−O−は糖残基を示す。)で示される糖化合物とを反応させて、上記一般式(1)で示されるアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体を製造することを特徴とする。
【0013】
なお、本発明に係るアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法において、一般式(2)で示されるカルボン酸誘導体は、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、又は2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライドであってよい。
【0014】
また、本発明に係るアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法において、糖化合物は単糖類であってもよい。
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0016】
上記一般式(1)、(2)、(3)におけるR1は水素原子又はメチル基である。
【0017】
上記一般式(1)、(2)、(3)におけるR2及びR3は2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基としては、好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基(アルカンジイル基)若しくはアルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は炭素数3〜8の環式飽和若しくは不飽和炭化水素基を挙げることができる。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。なお、R2とR3は同一の炭化水素基であっても、異なる炭化水素基であってもよい。
【0018】
上記一般式(1)、(4)におけるG−O−は糖残基である。糖残基とは、糖の1級水酸基の水素が外れた基である。なお、一般式(4)におけるHは糖の1級水酸基の水素を意味する。糖は特に制限はなく、具体的には、1級水酸基を有する単糖、オリゴ糖、及び多糖等のいずれであってもよい。
【0019】
また、糖の1級水酸基以外の水酸基の一部又は全ては、アセチル基などのエステル結合、イソプロピリデン基などのアセタール結合、臭素などのハロゲン原子、ベンジル基などのエーテル結合などにより保護されていてもよい。
【0020】
上記一般式(2)におけるYは、ハロゲン原子、水酸基、又は有機残基である。有機残基は、水酸基と縮合することが可能な基であればいずれであってもよく、例えば、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、イミダゾリン基を挙げることができる。なお、有機残基の炭素数は1〜18が好ましく、1〜12が更に好ましい。
【0021】
一般式(1)で示されるアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体としては、特に制限されないが、具体例としては、メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−O−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸)−α−D−グルコピラノシド、ベンジル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−マンノピラノシド、フェニル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−β−D−グルコピラノシド等が挙げられる。
【0022】
このような本発明の上記一般式(1)で示されるアクリル(メタクリル)基含有グリコシド誘導体は複数のエステル結合を含んでいるため、糖残基による親水性と、複数のエステル結合基による疎水性を併せ持つ、つまり両親媒性を有する。このため、本発明のアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体は、親水性のモノマーだけでなく、スチレンのような疎水性のモノマーとの共重合が可能である。
【0023】
また、本発明の上記一般式(1)で示されるアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体は、糖残基を側鎖に有する親水性、吸水性、生分解性及び生体適合性に優れた重合体のモノマー原料として有用である。例えば、本発明に係るアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体は、表面処理剤、医療用材料、吸水性樹脂、界面活性剤などのモノマー原料として有用であり、より具体的には、酸素透過性コンタクトレンズやソフトコンタクトレンズなどの原料として利用することができる。
【0024】
また、一般式(1)で示されるアクリル基含有糖誘導体は、一般式(2)又は一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体と一般式(4)で示される糖化合物とを反応させることにより、安価且つ簡便に製造することができる。
【0025】
原料であるカルボン酸誘導体としては、特に制限されず、公知の方法で製造されたものや、市販されているものを使用することができる。一般式(2)で示されるカルボン酸誘導体の具体例としては、2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルフタル酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルイミダゾール、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチルカルボネート等を挙げることができる。これらの中で、2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライドが特に好ましい。
【0026】
同様に、一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体の具体例としては、2−アクリロイロキシエチルコハク酸無水物、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸無水物、2−アクリロイロキシエチルフタル酸無水物、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸無水物、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸無水物等を挙げることができる。
【0027】
なお、アクリル基含有糖誘導体の製造において、一般式(2)又は一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体は単独で使用してもよく、又は2種類以上を併用して使用してもよい。さらには、一般式(2)で示されるカルボン酸誘導体と一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体を併用して使用してもよい。
【0028】
もう一方の原料である一般式(4)で示される糖化合物としても特に制限はされず、公知の方法に従って製造されたもの、市販されているものを使用できる。具体的には、単糖、オリゴ糖、多糖を使用することができる。単糖類の具体例としてはグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなどの6炭糖類、アラビノース、キシロース、リボース等の5炭糖類等を挙げることができる。オリゴ糖類の具体例としては、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソホロース等の2糖類、セルロース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース等を挙げることができる。また、糖化合物は、配糖体であってもよく、メチル−α−D−グルコピラノシド、ベンジル−α−D−マンノピラノシド、ベンジル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−β−D−グルコピラノシド等の好ましくは炭素数1〜18、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、又は好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する、グリコシド化合物が挙げられる。前記した糖化合物は単独で使用してもよくまたは2種類以上を併用しても良い。糖化合物の使用量は特に制限されないが、通常カルボン酸誘導体の使用量の1〜20倍モル量程度でよく、好ましくは1〜10倍モル量とすればよい。
【0029】
また、一般式(2)又は一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体と一般式(4)で示される糖化合物を反応させる際には、反応を円滑に進め、一般式(1)で示されるアクリル基含有糖誘導体を収率よく得る観点から、反応溶媒を使用する。反応溶媒としては、カルボン酸誘導体と反応しないものがいずれも使用できる。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリアリルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、N,N’−ジメチルピペラジン、N−N−ジメチルアニリン,N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン類を用いることができる。これらの溶媒は単独で使用してもよく又は2種類以上を併用して使用しても良い。溶媒の使用量としては特に制限されないが、カルボン酸誘導体1gに対して1〜50ml程度でよく、好ましくは1〜20mlとすればよい。
【0030】
一般式(2)又は一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体を一般式(4)で示される糖化合物とを反応させる際に、目的の反応以外の重合反応が進行してしまう場合には、重合禁止剤を添加して反応を行うことができる。重合禁止剤としては特に制限されず、公知のものがいずれも使用できる。具体的には、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルカテコール、ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、塩化第2銅、塩化第2鉄を挙げることができる。重合禁止剤は単独で使用してもよく又は2種類以上を併用して使用しても良い。重合禁止剤の添加量は、重量で、カルボン酸誘導体の使用量の0.1〜2%程度、好ましくは0.3〜1%程度とすればよい。
【0031】
また、一般式(2)又は一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体として酸ハロゲン化物を使用する場合には、反応を円滑に進行させるために、前記した3級アミンを、溶媒として、又は他の溶媒に加えて使用することが好ましい。なお、カルボン酸誘導体として酸ハロゲン化物を使用する場合に添加する3級アミンの添加量は特に制限されないが、通常酸ハロゲン化物の使用量の1〜20倍モルでよく、1〜10倍モルが好ましい。
【0032】
一般式(2)又は一般式(3)で示されるカルボン酸誘導体と一般式(4)で示される糖化合物とを反応させる際の反応温度及び反応時間は特に制限されないが、通常−10〜100℃、好ましくは0〜30℃で1〜24時間程度行われる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、親水性を示す糖残基と、疎水性を示す複数のエステル結合を有する新規のアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体及びそのアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明に係るアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体は、糖残基を側鎖に有する親水性、吸水性、生分解性及び生体適合性に優れた重合体の合成に有用なモノマーとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
−実施例1−
<メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシドの製造>
メチル−α−D−グルコピラノシド1952g(10.05モル)をピリジン2.5Lに懸濁させ、よく混合撹拌しながら0℃に冷却した。冷却後、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド500g(2.011モル)を、反応温度を0〜10℃に維持しながら滴下し、滴下終了後4時間撹拌した。得られた反応液をクロロホルムで抽出後、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することで、メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシド621.7gを無色透明液体として得た(収率76%)。なお、メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシドの生成は1H−NMRにより確認した。
1H−NMR (CDCl3, 400MHz)6.08(s, 1H, CH2=), 5.55(q, 1H, CH2=), 4.81(d, 1H, アノマー水素), 4.71(dd, 1H, 糖骨格), 4.42(dd, 1H, 糖骨格), 4.24〜4.32(m, 2H, 糖骨格),4.24〜4.28(m, 4H, −O−CH2−CH2−O−), 3.90(dd, 1H, 糖骨格), 3.60〜3.74(m, 2H, 糖骨格), 3.42(dd, 1H, 糖骨格), 3.33(s, 3H, −OMe ), 2.60〜2.69(m, 4H, −C(O)−CH2CH2C(O)−), 1.9(−Me)
【0037】
−実施例2−
<メチル−6−O−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシドの製造>
メチル−α−D−グルコピラノシド831mg(4.280ミリモル)をピリジン2mLに懸濁させ、よく混合撹拌しながら0℃に冷却した。冷却後、2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライド201mg(0.857ミリモル)を、反応温度を0〜10℃に維持しながら滴下し、滴下終了後3時間撹拌した。得られた反応液をクロロホルムで抽出後、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することで、メチル−6−O−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシド152mgを無色透明液体として得た(収率45%)。なお、メチル−6−O−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−グルコピラノシドの生成は1H−NMRにより確認した。
1H−NMR (CDCl3, 400MHz)6.42(d, 1H, CH2=CH−), 6.12(dd, 1H, CH2=CH−), 5.85(dd, 1H, CH2=CH−), 4.85(d, 1H, アノマー水素), 4.76(dd, 1H, 糖骨格), 4.53(dd, 1H, 糖骨格), 4.27〜4.39(m, 4H, −O−CH2−CH2−O−), 4.23〜4.31(m, 1H, 糖骨格), 3.96(dd, 1H, 糖骨格), 3.73〜3.77(m, 2H, 糖骨格), 3.46(dd, 1H, 糖骨格), 3.36(s, 3H, −OMe), 2.81(dd, 2H, 糖骨格), 2.63〜2.79(m, 4H, −C(O)−CH2CH2C(O)−)
【0038】
−実施例3−
<メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸)−α−D−グルコピラノシドの製造>
メチル−α−D−グルコピラノシド640mg(3.296ミリモル)をピリジン2mLに懸濁させ、よく混合撹拌しながら0℃に冷却した。2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸クロライド198mg(0.654ミリモル)を、反応温度を0〜10℃に維持しながら滴下し、滴下終了後3時間撹拌した。得られた反応液をクロロホルムで抽出後、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することで、メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸)−α−D−グルコピラノシド273mgを無色透明液体として得た(収率90%)。なお、メチル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸)−α−D−グルコピラノシドの生成は1H−NMRにより確認した。
1H−NMR (CDCl3, 400MHz)6.11(s, 1H, CH2=), 5.58(m, 1H, CH2=), 4.82(d, 1H, アノマー水素), 4.74(dd, 1H, 糖骨格), 4.66(dd, 1H, 糖骨格), 4.54(dd, 1H, 糖骨格), 4.34〜4.38(m, 1H, 糖骨格), 4.16(d, 1H, 糖骨格), 3.84(m, 1H, 糖骨格), 3.71(dd, 1H, 糖骨格), 3.62(d, 1H, 糖骨格), 3.51(dd, 1H, 糖骨格), 4.28〜4.34(m, 4H, −O−CH2−CH2−O−), 3.32(−OMe), 2.89〜3.01(m, 1H, シクロヘキサン骨格), 2.76〜2.87(m, 1H, シクロヘキサン骨格), 1,95〜2.15(m, 2H, シクロヘキサン骨格), 1.92(s, 3H, −Me), 1.63〜1.86(m, 2H, シクロヘキサン骨格), 1.49〜1.61(m, 2H, シクロヘキサン骨格), 1.27〜1.48(m, 2H, シクロヘキサン骨格)
【0039】
−実施例4−
<ベンジル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−マンノピラノシドの製造>
ベンジル−α−D−マンノピラノシド200mg(0.740ミリモル)をピリジン0.5mLに溶解させ、よく混合撹拌しながら0℃に冷却した。2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド37mg(0.149ミリモル)を、反応温度を0〜10℃に維持しながら滴下し、滴下終了後室温で10時間撹拌した。得られた反応液をクロロホルムで抽出後、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することで、ベンジル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−マンノピラノシド60mgを無色透明液体として得た(収率84%)。なお、ベンジル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−α−D−マンノピラノシドの生成は1H−NMRにより確認した。
1H−NMR (CDCl3, 400MHz)7.27〜7.35(m, 5H, 芳香環), 6.10(s, 1H, CH2=), 5.57(s, 1H, CH2=), 4.90(d, 1H, アノマー水素), 4.69(dd, 1H, 糖骨格), 4.56(dd, 1H, 糖骨格), 4.50(d, 2H, CH2Ph), 4.26〜4.34(m, 4H, −O−CH2−CH2−O−), 4.17(dd, 1H, 糖骨格), 4.05〜4.09(m, 1H, 糖骨格), 3.81〜3.98(m, 3H, 糖骨格), 3.64〜3.74(m, 2H, 糖骨格), 2.64〜2.73(m, 4H, −C(O)−CH2CH2C(O)−), 1.92(s, 3H, −Me)
【0040】
−実施例5−
<フェニル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−β−D−グルコピラノシドの製造>
フェニル−β−D−グルコピラノシド203mg(0.792ミリモル)をピリジン0.5mLに溶解させ、よく混合撹拌しながら0℃に冷却した。2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド39mg(0.157ミリモル)を、反応温度を0〜10℃に維持しながら滴下し、滴下終了後室温で10時間撹拌した。得られた反応液をクロロホルムで抽出後、有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することで、フェニル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−β−D−グルコピラノシド52mgを無色透明液体として得た(収率71%)。なお、フェニル−6−O−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸)−β−D−グルコピラノシドの生成は1H−NMRにより確認した。
1H−NMR (CDCl3, 400MHz)7.26(t, 2H, 芳香環), 6.96〜7.04(m, 3H, 芳香環), 6.10(s, 1H, CH2=), 5.56(s, 1H, CH2=), 4.88(d, 1H, アノマー水素), 4.49(dd, 1H, 糖骨格), 4.23〜4.38(m, 2H, 糖骨格), 4.27〜4.35(m, 4H, −O−CH2−CH2−O−), 3.70〜3.81(m, 2H, 糖骨格), 3.65〜3.69(m, 2H, 糖骨格), 3.58〜3.63(m, 1H, 糖骨格), 3.51〜3.55(m, 1H, 糖骨格), 2.61〜2.73(m, 4H, −C(O)−CH2CH2C(O)−), 1.92(s, 3H, −Me)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1);
【化1】

(式中、G−O−は糖残基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)で示されるアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体。
【請求項2】
一般式(2);
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Yはハロゲン原子、水酸基、又は有機残基を示す。)又は一般式(3);
【化3】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)で示されるカルボン酸誘導体と、
一般式(4);
G−O−H (4)
(式中、G−O−は糖残基を示す。)で示される糖化合物とを反応させて、一般式(1);
【化4】

(式中、G−O−は糖残基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R2及びR3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)で示されるアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体を製造することを特徴とするアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記カルボン酸誘導体が、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、又は2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライドであることを特徴とする請求項2に記載のアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記糖化合物が、単糖類であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のアクリル(メタクリル)基含有糖誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2008−230973(P2008−230973A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68792(P2007−68792)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000222554)東洋化成工業株式会社 (52)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】