説明

アクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用気相酸化方法及び管束反応器

【課題】本発明の課題は、技術水準の欠点を取り除く、アクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用気相酸化方法及び管束反応器を提供することであった。
【解決手段】この課題は、触媒の活物質が特定の熱処理方法により製造された特定の多元素酸化物質である、アクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用気相酸化方法、及び、特定の本数の触媒管を有する管束反応器であって、その触媒管は装填物で充填されており、その触媒が活物質として前駆物質を特定の熱処理方法により製造された特定の多元素酸化物質を含有し、この際アクロレインをアクリル酸にする部分酸化に関連する触媒管の装填は、無作為にサンプリングされた12本の触媒管において特定の状態にされており、その際、触媒管装填物の活性の尺度として特定の塩浴が有すべき温度が使用される、管束反応器により解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流が導通される回転炉内で触媒活物質の前駆物質を熱処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この明細書中で、概念「触媒活物質」とは、化学反応、例えば化学的気相反応で、化学反応の実施のために必要である温度を低下させ及び/又は目的生成物形成の選択性を高めるために反応成分に付加的に使用される固体と理解すべきである。この場合に、化学反応は、通常、触媒活物質の表面(界面)に接して進行する。
【0003】
原則的に液相でも気相でも実施されうるような不均一触媒反応の例は、不均一触媒作用の水素化、脱水素及びオキシ脱水素であり、部分的酸化及び部分的アンモ酸化でもある。この場合に、活物質は、粉末形でも幾何学的成形体に成形されても使用することができる(後者は、例えば予備成形された担体の内部表面中への導入(吸着)により行われ(よって、用語 担持触媒Traegerkatalysator:supported catalystが使用される)、予備成形された担体の外部表面へのコーティングにより行われ(よって、用語 シェル触媒Schalenkatalysator:coated catalystが使用される)又は圧縮により行われる(よって、用語 完全触媒Vollkatalysator:unsupported catalystが使用される))。この場合にこれらの成形は、既に前駆物質に又は初めに触媒活物質に適用することができる。
【0004】
この明細書中で、有機化合物(例えば、飽和又は不飽和の炭化水素、アルコール又はアルデヒド)の完全酸化とは、有機化合物中に含有している全ての炭素が炭素の酸化物(CO、CO)に変換されることであると理解される。
【0005】
この明細書中では、酸素と有機化合物との全ての他の反応(オキシ脱水素を包含する)は、部分反応とみなされる。部分アンモ酸化は、アンモニアの付加的存在による部分酸化とは区別される。
【0006】
ところで、既に成形された又は成形されていない触媒活物質は、通常、既に成形されているか又は未成形であってよい、触媒作用のない又はいずれにせよ低い活性の前駆物質を作り、次いでこれを、高い温度で特別なガス雰囲気に露呈させることによって得られていることは一般に公知である。
【0007】
例えば、DE−A10211275は、その実施例中に、高い温度(500℃)で変動性ガス流(水素、空気、窒素)中での脱水素触媒の前駆物質の活性化及び気相での炭化水素の不均一触媒作用脱水素用の触媒中でのその使用を記載している。
【0008】
同様に、EP−A529853、EP−A318295、EP−A608838、WO01/96270、EP−A731077、EP−A1260495、EP−A1254709、EP−A1192987、EP−A962253、EP−A1262235、EP−A1090684、DE−A19835247、EP−A895809、DE−A10261186、EP−A774297、WO02/24620、EP−A668104、DE−A2161450、EP−A724481、EP−A714700、DE−A10046928及びDE−A19815281は、種々のガス雰囲気中での多元素酸化物活物質の前駆物質の熱処理を記載している。これらの明細書中では、この場合に生じる多元素酸化物活物質が種々の不均一触媒作用部分気相酸化用の及び有機化合物のアンモ酸化用の触媒中の触媒活物質として推奨され、かつ使用されている。
【0009】
原則的に、このような熱処理は、種々のタイプの炉、例えばトレー炉(Hordenoefen)、回転管炉、ベルトか焼炉、流動床炉又は竪炉中で実施することができる。
【0010】
この場合(例えばWO02/24620)に、できるだけ単一な特性の活物質の全量を得るために、熱処理すべき全ての前駆物質をできるだけ単一の条件下で処理することの重要性が増している。
【0011】
例えば、活物質の高い反応成分負荷での不均一気相触媒反応を得るためには、できるだけ単一な特性の活物質の量がより好適である。それというのも、それが、反応器断面上の特に単一な熱的反応条件を可能とするからである。
【0012】
この背景から、WO02/24620は、特別なベルトか焼装置を用いてこのような前駆物質の熱処理を実施することを推奨している。しかしながら、ベルトか焼の欠点は、それが前駆物質の静止床上で行われることである。しかしながら、このような静止床内部では、通例、温度勾配が生じ、これが熱処理すべき全前駆物質上での一様な熱処理の妨げとなっている。
【0013】
これに反して、回転管炉中での熱処理の場合に存在するような運動床中での前駆物質の熱処理が有利であろう。回転管炉中の前駆物質の連続的運動によって、自然に絶えず自己均質化性の床が生じ、この中で、例えばいわゆる「ホットスポット(Heiss-Punkt)」又は「コールドスポット(Kalt-Punkt)」の形成が現れない(前駆物質の大抵の熱処理の場合には発熱又は吸熱プロセスが進行し、これらプロセスが、いわゆる「ホットスポット」(熱処理された前駆物質内の最大温度の箇所)の形成又はいわゆる「コールドスポット」(熱処理された前駆物質内の最小温度の箇所)の形成をもたらす)。しかしながら、高すぎる温度も低すぎる温度も、活物質の触媒特性に不利に作用する。
【0014】
他の観点は、多数回の前駆物質の熱処理に伴い、前駆物質中に含有されている化学成分の熱分解プロセスが起こり、この場合に、生じる活物質品質に有利に又は不利に作用することのできるガス状の分解生成物が生じることである。双方の場合に、運動床中での自己均質化が有利であろう。
【0015】
回転管炉中での活物質前駆物質の熱処理は、特に刊行物DE−A19815281(例えば例1)、DE−A10046928(例えば製造例1)及びEP−A714700(実施例)中に提案されている。
【0016】
通常、このような熱処理は、回転管炉内で大工業的に、回転管炉の水平に対する傾斜角度が0とは異なる値に調節されるように実施される。この回転管の最上位置は、前駆物質の装入位置を構成し、最下位置は材料排出位置を構成する。この場合に、この回転管は連続的に作動される。即ち、熱処理されるべき前駆物質はこの回転管に一方側から連続的に供給され、この回転管内で高所位置から低所位置まで連続的に搬送され、そこから連続的に排出される。通常は、この回転管を通るこの経路上で、前駆物質が熱処理される。
【0017】
このような連続的方法は、回転管内での熱処理すべき材料の比較的短い滞留時間のみを可能とする欠点を有する。
【0018】
所望のガス雰囲気の調節のために、通例は、搬送すべき前駆物質に対して向流で、適当なガス流がこの回転管に供給される。最も簡単な場合には、これは空気から、しかしながら他の場合には特に有価ガス(例えば、還元作用をするガス、例えば水素又はアンモニア又は不活性ガス、例えば窒素)から成っていることができる。
【0019】
記載の方法の欠点は、回転管を出た後には更に使用されないようなガスを比較的高く必要とすることである。この領域内で、材料中に熱分解によって生じ、好適に作用するガスが、このガス流と一緒に排出され、その有利な作用をもはや発揮することができない(例えばNHから形成されるNH又はNOから形成されるNO又はCO2−から形成されるCO又はCO)ことも欠点である。このような有利な作用効果は、例えば還元性作用で生じることができる。
【0020】
回転管内に存在する材料中に望ましい温度は、通例は、回転管壁が外から特定の温度にされる間接的方法で得られる。
【0021】
この場合に回転管内で著しいラジアル又はアクシャルな温度勾配を避けるために、この回転管に供給されるガス流は回転管中の材料に望ましい温度まで予め加熱されて回転管中に供給されることが望ましい。
【0022】
通例、回転管を出る際のこのガス流のこの熱量が更に利用されないのは不利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】DE−A10211275
【特許文献2】EP−A529853
【特許文献3】EP−A318295
【特許文献4】EP−A608838
【特許文献5】WO01/96270
【特許文献6】EP−A731077
【特許文献7】EP−A1260495
【特許文献8】EP−A1254709
【特許文献9】EP−A1192987
【特許文献10】EP−A962253
【特許文献11】EP−A1262235
【特許文献12】EP−A1090684
【特許文献13】DE−A19835247
【特許文献14】EP−A895809
【特許文献15】DE−A10261186
【特許文献16】EP−A774297
【特許文献17】WO02/24620
【特許文献18】EP−A668104
【特許文献19】DE−A2161450、
【特許文献20】EP−A724481
【特許文献21】EP−A714700
【特許文献22】DE−A10046928
【特許文献23】DE−A19815281
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
この技術水準の観点から、本発明の課題は、触媒活物質の前駆物質をガス流で流過される回転管中で熱処理する方法(この方法は、技術水準のこれら方法の欠点を充分に取り除く)を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
相応して、ガス流により流過される回転管炉中での触媒活物質の前駆物質を熱処理する方法が発見され、これは、回転管炉を流過するガス流の少なくとも一部分量を循環させることを特徴とする。
【0026】
回転管を流れるガス流は、最も簡単な場合には空気から成っていてよいが、有価ガス、例えばCO、CO、NH、N、NO、SO又はアセトニトリルを含有するか又はこれらガスから成っていてもよい。しかしながらこれは、これらガスの混合物を含有するか又はこれら混合物から成っていてもよい。
【0027】
本発明の方法で、回転管を流れるガス流は、>0〜500Nm/h(又は粉末状前駆物質の場合には300Nm/hまで)であってよい。回転管に供給されるガス流は、屡々≧50〜500(又は300)Nm/h、大抵は100〜300Nm/hになる。
【0028】
本発明の方法の実施のためには、適当な回転管炉装置が必要である。次に、このような装置の構成を示すが、本発明の方法又はそのために使用できる回転管炉装置はこれによって特定の形に限定されるものではない。
【0029】
図1は、例えば本発明の方法のために好適である(かつ実施例中で使用されている)回転管炉装置の略示図であり(後に使用されている符合数値もこれに関連している)。その調節は有利にコンピューターによりコントロールされる。
【0030】
このような本発明の方法の実施のために好適である回転管炉装置の中心要素は、回転管(1)である。
【0031】
これは、例えば4000mmの長さ及び700mmの内径を有することができる。この場合に、これは不錆鋼1.4893から構成されており、10mmの壁厚を有することができる(本発明の方法のためには、15mまで、屡々12mまでの回転管長さも好適であることは自明である;通常は本発明の方法の場合の回転管長さは≧1m、通常は≧4mであり;この場合に内径は通常、20cm〜2m、屡々20cm〜1mである)。
【0032】
回転管炉の内壁上にはいわゆる往復ランス(Hublanzen)が取り付けられているのが有利である。これは、先ず、回転管炉内で熱処理すべき前駆物質(熱処理すべき材料)を持ち上げ、こうして運動床中の自己均質化を助ける目的に役立つ。例に挙げられている本発明により好適な回転管装置(これは全て相互に関連しており、実施例中で使用された)の他の例示されている寸法に関連して、この往復ランスの高さは5cmであってよい。原則的に個々の往復ランスは、回転管の全長の上に伸びることができる。しかしながら、1個の往復ランスは回転管炉の部分長の上まで伸びるのが有利である。例示の実施変法では、これは例えば23.5cmの長さを有することができる。この場合に、本発明によれば、この回転管炉の1つのかつ同じ高さの所に、その周りで等間隔に(例えばそれぞれ90°で)複数の(多数の)往復ランス(例えば4個=四部体:Quadrupel)が取り付けられている場合が有利である。この回転管に沿って使用技術的に有利に複数のこのようなマルチプルが存在することが判明している。例示の実施変法では、回転管に沿ってこのような四部体8個が存在する(それぞれ23.5cmの間隔で)。二つの隣り合うマルチプル(四部体)の往復ランスは、この回転管の周囲で相互にずらされているのが有利である。この回転管炉の初端部及び終端部(例示実施態様では、最初と最後の23.5cm)には往復ランスは存在しないのが有利である。
【0033】
この回転管の回転速度は、有利に可変性に調節することができる。典型的な回転数は>0〜5又は3回転/minである。この回転管は有利に左回転も右回転も可能である。例えば右回転の場合には、材料は回転管中に滞留し、例えば左回転の場合には、熱処理すべき前駆物質が回転管傾斜によって装入口(3)から取出口(4)へ搬送され、排出補助具(例えばシャベル)を用いてこの回転管から取り出される。
【0034】
水平に対する回転管の傾斜角度は、有利に可変に調節することができる。典型的な範囲の値は、0°〜4°又は2°である。回分法操作の場合には、それは実際に0°である。連続的操作の場合には、この回転管の最下位置は材料取出口のところに存在する。
【0035】
材料装入は、有利にロータリーファンフィーダー(Zellenradschleuse)によって容量制御されるか又は秤によって質量制御されて実施される。材料取出しは、既に記載したように、回転管の回転方向によって制御される。
【0036】
前記のような寸法の回転管(これは前記のように、本発明の方法の実施のためにより大きい又はより小さい寸法であってもよい)の回分法操作の場合には、200〜600kgの材料量を熱処理することができる。この場合に、それらは、通常は専ら回転管の加熱された部材中に存在する。
【0037】
本発明により必要であるような、回転管炉を流れるガス流の少なくとも一部分量を循環させることを可能とするために、本発明により使用すべき回転管炉装置は、そのために必要である循環導管(最も簡単な場合には、1導管系)を必要とする。これは固定して配置されているが、回転管は必然的に可動(回転)性に設置されている。
【0038】
回転管入口及び回転管出口にそれぞれ静止エレメント及び回転エレメントをそれぞれ相互に結合させるために、グラファイトリング又はテフロンリングによって封隙されている(グラファイト−又はテフロンプレスフィットシール)ボールベアリング又はスリットを使用することができる。その高い温度安定性の故に、グラファイトプレスフィットシールが有利である。
【0039】
この場合に、回転管はその初端及びその終端が先細になっていて、循環導管の供給管又は搬送管中に突入しているのが有利である。
【0040】
これらの結合部をシーリングガス(Sperrgas)でフラッシングするのが有利である。双方のフラッシング流(11)は、回転管中へのガス流の入口で、かつ回転管からのガス流の出口で、回転管に導びかれるガス流を補充する。このフラッシング流(Spulstrom)の化学的組成物を、回転管中での熱処理のために望ましい温度に適合させることができる。例えばシーリングガスとして空気を使用することができる。しかしながら、殊に高い温度で実施される熱処理の場合には、シーリングガスとして不活性ガス(例えば窒素ガス)を使用することができるが、これはシーリング作用と並んで同時に酸化保護作用をする。このシーリングガス量を低く保持するのが有利である。従ってこのような個々のフラッシング流は、有利に>0〜50Nm/h、好ましくは1〜50Nm/hになる。
【0041】
このシーリング作用は、回転管内で支配性の、屡々毒物学的にも完全に無害ではない成分(例えばCO、NO、NH、CO、SO、アセトニトリル)を含有するガス雰囲気から、静止/回転性の結合位置で環境雰囲気中に何物かが達することを避けるために特に重要である。
【0042】
循環ガス流(ガス循環)の推進は、回転管から流出するガス流の方向で吸引し、他の方向で圧縮する循環ガスコンプレッサー(13)(例えばFa.Konrad Reitz GmbHのKXE160−004030−00型のファン)を用いて行われる。この循環ガスコンプレッサーの直後に、通常は大気圧より高い(即ち大気圧を上まわる)ガス圧が存在する。この循環ガスコンプレッサーの後には、循環ガス流出部が存在する(調整弁(14)を通って循環ガスは流出され、これは排ガスコンプレッサー(17)(Fa.MeidingerのT100/4315−R3/500型のファン)によって吸引される)。循環ガスの流出位置の後に本発明により有利な減圧装置(15)、例えばアパーチャ(断面積狭窄;例えば約3分の1)が存在する。これは、簡単に、循環ガスコンプレッサーの加圧側上に供給されるよりも多くのガスが循環ガスコンプレッサーの吸引側上で吸引される可能性を提供する。
【0043】
このような方法で、回転管中で僅かな減圧に調節することができる。即ち、回転管を流過するガス流の圧力は、回転管を出る際に回転管の環境圧を下回ることができる。この手段は、付加的に、回転管中のガス雰囲気から何も外に飛び出さないことに寄与する。しかしながら、この回転管中では、環境圧に対して相対的に僅かな過圧に調節することもできる。屡々、回転管からのガス流の出口の直後の圧力を、外圧よりも+1.0ミリバールを上まわり−1.2ミリバールを下回る範囲の値まで調節する。即ち、回転管を流れるガス流の圧力は、回転管を出る際に回転管の環境圧を下回っていることができる。このことが本発明によれば好ましい。
【0044】
回転管中の圧力の調節は、有利に圧力センサーを用いる圧力測定に基づいて行われる。圧力センサーとしては、例えば、圧力変換(膜測定ユニット−)原理に従って作動するFa. Hartmann & BraunのAMD220型のものが好適である。使用技術的に、回転管からのガス流の出口の直後に圧力センサー(16)が配置されているのが有利である。回転管中へのガス流の入口の前に、もう一つの圧力センサーが存在することができる。これは、特有の圧力センサーであってもよい。次いで、圧力センサー(16)、排ガスコンプレッサー(17)(調整弁の方向に向かって吸引するファン)、循環ガスコンプレッサー及び新鮮ガス供給管の共同作業で、この圧力調節を行うことができる。二つのコンプレッサー及び新鮮ガス供給管が定常作動される(又は調節可能なコンプレッサーが使用されない)場合には、この調整弁(14)は単一の圧力調節スクリュウである。
【0045】
回転管内に導通されるガス流の速度は、典型的には≧0.1m/s及び≦2m/sの値である。
【0046】
回転管中での材料の加熱は、本発明によれば外からの回転管の加熱により行われるのが有利である。原則的に、この加熱は直接点火によって行うことができる。即ち、回転管の下に、例えばそこに配置されたバーナーが存在し、その熱い燃焼ガスが、例えばファンの補助下に、外被(Einhuellend)によって包囲されている回転管の周りに導かれる。
【0047】
しかしながら、この回転管は、外被により、例えば、その内側上で電気加熱される(抵抗加熱)エレメントを有する直方体(Quader)によって包囲されているのが有利である。熱処理均一性の理由から、この外被は、少なくとも2個の対向して存在する側上にこのような加熱エレメントを有すべきである。しかしながら、この加熱エレメントは回転管を全面的に包囲するのが有利である。回転管外面に対するその距離は、典型的には10〜20cmである。ここで例示されている実施形(図1)では、この回転管は、回転管の縦方向で連続している、同じ長さの電気加熱(抵抗加熱)される4個の加熱帯域を有し、それらの各々が回転管の周囲を包囲している直方体(2)中で、自由に回転する。各々の加熱帯域は相応する回転管断面を室温〜850℃の温度に加熱することができる。各々の加熱帯域の最大加熱電力は、30kWである。電気加熱帯域と回転管外面との間の距離は約10cmである。この回転管は、初端及び終端で、直方体から約30cm突出している。
【0048】
付加的に、ヒーター(10)は、回転管中に存在する材料の熱処理を支持するために、回転管中に導通されるガス流を、回転管中に入る前に所望の温度まで加熱する(例えば、回転管中の材料に望ましい温度まで)可能性を提供する。前駆物質の熱処理に伴い前駆物質中で発熱性化学反応が起こる場合には、回転管中に導通されるガス流を、本発明により、回転管中の材料に予定されている温度を下回る(例えば50℃まで、屡々20℃まで)温度で、回転管中に供給するのが有利である。これに反して、前駆物質の熱処理で前駆物質中の吸熱性化学反応が起こる場合には、回転管中に導通されるガス流を、本発明により、有利に回転管中の材料に予定されている温度を上まわる温度(例えば50℃まで、屡々20℃まで)で回転管中に供給する。
【0049】
原則的に、ヒーター(10)は、任意の種類のヒーターであってよい。例えば、これは間接的熱交換器であってよい。このようなヒーターは、原則的にクーラーとしても利用することができる(熱交換媒体の温度の適合化、例えば冷却塩水の使用により)。このヒーターは、原則的に直接的又は間接的な点火によって加熱することもできる。同様に直接的又は間接的な蒸気加熱が使用される。直接的蒸気加熱の場合には、ガス流中に含有されている水蒸気の不所望な凝縮を阻止するか又は水蒸気を場合により目的にあわせて凝縮させるために、循環ガス導管を少なくとも部分的に付随加熱するのが有利である。これは、屡々電気ヒーターであり、この際、ガス流が電流加熱される(抵抗加熱)金属線上に導かれる。例示されている実施形中では、Fa.Schniewindt KG,58805 Neuerade-DEの97D80型のCSN連続フローヒーター(その最大電力は1×50kW+1×30kWである)が使用される。
【0050】
回転管の加熱も回転管中に導通されるガス流の加熱も、有利に回転管中の材料の温度を介して制御される。これらは、通常、材料中に突き刺されているサーモカップルにより測定される。例示されている実施形では、このために、回転管の中心軸上に、1個のランス(8)があり、これにより800mmの間隔で、合計3個のサーモカップル(9)が材料中に垂直に通されている。3個のサーモカップル温度の算術平均が材料の温度として理解される。回転管中に存在する材料内部で、測定される2つの温度の最大偏差は、本発明によれば、有利に30℃より小さい、好ましくは20℃より小さい、特に好ましくは10℃より小さい、全く特別好ましくは5又は3℃より小さい。
【0051】
本発明の方法では、屡々100〜1100℃又は200〜800℃の温度で熱処理が実施される。このことは、殊に触媒活物質が多元素酸化物質、例えば多金属酸化物質である場合に当てはまる。
【0052】
触媒活物質としての多元素酸化物質の場合に、本発明の方法は、600〜800℃又は300〜600℃で実施するのが特に有利である(記載の温度は常に材料温度を意味する)。
【0053】
全く一般的に、本発明のこの方法の結果として、通常、触媒活物質が得られる。
【0054】
回転管中に存在する前駆物質がその熱処理の目的で加熱される温度割合は、本発明の方法では、通例、≦10℃/minの値である。屡々、この温度割合は、≦8℃/min、屡々、≦5℃/min又は≦3℃/minであり、かつこれは屡々≦2℃/min又は≦1℃/minの値である。しかしながら通常、この温度割合は、≧0.1℃/min、大抵は≧0.2℃/min、屡々≧0.3℃/min又は≧0.4℃/minである。
【0055】
既に記載のように、触媒活物質の前駆物質の熱処理に伴い、屡々この回転管に流過されるガス流の成分も屡々この反応に寄与する発熱性化学反応が起こる。
【0056】
本発明の方法にとって、この化学反応がコントロール不能ではなく進行し、この化学反応によって発生する熱が迅速に排除されることが重要である。それというのも、コントロール不能な経過は過度な熱発生をもたらし、かつ熱処理された材料のコントロール不能な温度上昇をもたらすことがあり得、これが最終的に活物質特性の低下をもたらすからである。
【0057】
この材料の熱処理のこのようなコントロール不能な経過を場合によりなお適性な時点で避けることができるためには、本発明の方法に好適な回転管装置が、急速冷却処理を利用するのが有利である。このことは、例えば特別有効な方法で、次のようにして行うことができる:回転管を包囲している外被(例示されている実施形では直方体)が、一方側(例えば下部)上にオリフィス(典型的な縦寸法60cm)、孔を有し、これを通って、ファン(5)(例えばFa.Ventapp GmbHのE315/40−63型のもの)によって、環境空気又は予め冷却された空気が吸引され、外被の他の(対向している)側(例えば上部)上に存在する、可変に調節可能なオリフィスを有するフラップ(7)を通って排出されうる。この場合に回転管加熱は、屡々同時にスイッチ切断される。このような急速冷却により、熱処理を適切な時点で終了させ、過剰の熱処理を阻止することも可能である。付加的な手段として、このガス流を(ヒーター10中で)冷却して回転管中に導びくことができる。
【0058】
急速冷却は、例えば前駆物質の熱処理の最後に、回転管中に存在する材料の温度を、≦5時間、大抵は≦4時間、屡々≦2時間の時間内に、少なくとも300℃だけ低下させることにより行われる。しかしながらこの冷却時間は通常は、0.5時間より少なくはならない。
【0059】
減圧装置(15)とヒーター(10)との間で、実際に再循環される循環ガス分(19)に、使用技術的に有利に新鮮ガス供給を行うのが有利である。図1中に示されている実施形におけるように、屡々新鮮ガス−ベース負荷分(例えば窒素(20))が配量される。次いで、少なくとも1個のスプリッターを用いて、種々の使用成分センサーの測定値に反応して、かつ回転管中に供給されるガス流の成分含分を詳細に調節することができる。例示されている実施形では、これは、酸素センサーの測定値に反応する窒素/空気スプリッター(21)である。
【0060】
これらの成分センサーは、循環ガスコンプレッサーの前に設置されている(18)のが有利である。しかしながら、これらは他の位置に設置されていてもよい。
【0061】
これらのセンサーを用いて屡々、還元作用を有するガス成分、例えばNH、CO、NO、NO、酢酸、エーロゾル(例えば酢酸アンモニウム)及び酸化作用をする成分、例えばNO及びO(これらの含有率は、屡々特に狭い範囲内で変動するはずである)が測定される。
【0062】
例示されている実施形では、2個のセンサー(18)、即ちアンモニア含分測定用の1個及び酸素含分測定用の1個が設置されている。アンモニアセンサーは、一般に有利に光学的測定原理に従って作動する(測定波長の光の吸収は、そのガスのアンモニア含有率に比例する関係にある)。例示されている実施形中で、これは、Fa.Perkin & ElmerのMCS100型の装置である。これに対して、酸素センサーは、通常、酸素の常磁性特性に基づいている。例示されている実施形では、酸素センサーとして有利に、Fa.SiemensのOxymat MAT SF 7MB1010−2CA01−1AA1−Z型のオキシメート(Oximate)が使用される。
【0063】
触媒作用する多金属酸化物活物質の場合に、本発明による熱処理の領域内で、前駆物質から触媒活物質に移行する場合に、屡々、回転管内を支配しているガス雰囲気から酸素吸収が行なわれる。回転管中へのガス流入口の前及び回転管からのガス流出口の後に設置されている酸素センサーを用いて、この酸素吸収はオンラインで量的に検知され、この回転管中を流過するガス流中の酸素供給が相応して適合されうる(このような適合が行われない場合には、通例、回転管中に供給されるガス流中の酸素供給は実質的に一定に保持される)。活物質の過剰酸化又は過少酸化はこうして避けることができ、これによって触媒性能は改善できる。全く同様に、還元作用をするガス成分でも行うことができる。
【0064】
本発明による循環ガス操作法は、この関係で、熱処理の経過で回転管中を支配するガス雰囲気の特性が「還元」から「酸化」まで又は逆に変更される場合に特別有利であることも立証された。しかしながら、これは、最も簡単に、この変更を回転管中のガス雰囲気が常に爆発範囲の外にあるように実施することを可能とする。
【0065】
本発明の方法のテスト実験では、屡々ガス成分センサーが誤った値を示すことも明らかである。
【0066】
この事態の正確な検証によれば、このことは、回転管を流れるガス流が、通常、熱処理すべき前駆物質に由来する微細ダストを随伴し、これがセンサー表面(このセンサーは、通常、ガス流から1部分量を吸収するように作動する)上に沈着し、測定を誤らせることに基づくことが明らかである。センサーの前に設置されたフィルターの単独使用は、この問題を取り除くことができなかった。それというのも、このフィルターは、時間に依存して栓塞し、測定結果を同様に誤らせるからである。
【0067】
問題解決として、回転管を通ったガス流の出口の後(但し、センサーの前)に設置されたサイクロン(12)が、ガス流に随伴する固体粒子の分離のために好適である(遠心分離器が、気相中に懸濁された固体粒子を遠心分離力及び剪断力の共同作用によって分離する;スパイラル渦として回転するガス流の遠心分離力は、懸濁された粒子の沈殿を促進する)。
【0068】
このようなサイクロンの共用は、微細ダストが循環ガス導管の壁上に沈殿することをも阻止する(このような微細ダスト沈殿は、例えば生成物交換の場合に不利に認められる;即ち熱処理すべき前駆物質が交換される場合に、後続物質が、循環ガス導入の領域内で場合によって予め処理された前駆物質の壁に沈殿したダストで汚染され;この微細ダストがヒーター(10)を害する(熱移行の変更)か又は詰まらせることもあり得る)。
【0069】
サイクロン中に沈殿した固体は、廃棄処理される。
【0070】
このサイクロンによって生ぜしめられる圧力損失は、循環ガスコンプレッサーにより補償される。
【0071】
サイクロンの代わりに、原則的に、微細固体をガス状分散相から分離除去するために好適である他の任意の装置を使用することもできる。
【0072】
流出された循環ガス分(22)(排ガス)は、屡々完全には無害でないガス、例えばNO、CO、酢酸、NH等を含有する(従ってこれらは通常は、排ガス精製装置(23)中で分離される)。
【0073】
このために、通常は排ガスを、先ず洗浄塔(これは、実質的にビルトインを有せず、その出口の前に分離作用をするパッキンを有する塔である)に導通させ;排ガス及び水性スプレー霧を、並流で又は向流で(反対のスプレー方向を有する2個のスプレーノズル)導通させる。
【0074】
この洗浄塔から、排ガスを、有利に微細ダストフィルター(通常はホースフィルターの束)を有する装置中に導通させ、その内部から侵入した排ガスを除去する。次いで、最後にマッフル中で燃焼させるのが有利である。
【0075】
回転管に供給されるシーリングガス以外の全ガス流の量の調節のために、本発明の方法では、特に、コリオリ力(Corioliskraeften)に基づく質量流量測定の原理、圧力差に基づくアパーチャプレート測定(Blendmessung)の原理及び熱対流の原理が好適である。
【0076】
例示されている実施形では、シーリングガスとは異なる回転管に供給されるガス流の量の測定は、Fa.KURZ Instruments,Inc.,Montery(USA)のModell 455 Jr型のセンサー(28)(測定原理:等温風力計の使用下での熱対流質量流量測定)を用いて行われる。
【0077】
記載の回転管炉装置は、連続的にも断続的にも作動させることができる。本発明によればそれを回分法で作動させるのが有利である。材料及び気相は、連続的操作で、有利には向流で回転管炉に供給される。例えば、DE−A19855913又はWO02/24620の多金属酸化物質並びにその製造に必要である予備形成された相(例えばタングステン酸ビスマス及びモリブデン酸ビスマス)が、回転管炉中での前駆物質の連続的熱処理によって優れて得られている。
【0078】
従って、本発明の方法の実施のためには、特に次の構成内容を有する回転管炉装置が好適である:
a)少なくとも1個の循環ガスコンプレッサー(13);
b)少なくとも1個の排ガスコンプレッサー(17);
c)少なくとも1個の減圧装置(15);
d)少なくとも1個の新鮮ガス供給管((20)、(21));
e)少なくとも1個の加熱可能な回転管(1);及び
f)少なくとも1個の循環ガス導管。
【0079】
調節可能ではないコンプレッサー(13)及び(17)が使用される場合には、この回転管炉装置は、なお少なくとも1個の調整弁(14)を有する。
【0080】
更に、本発明の有利な実施形は、なお少なくとも1個のヒーター(10)を有する。
【0081】
全く特別好ましい実施形では、付加的に少なくとも1個のサイクロンを組み込んで有している。
【0082】
更に、この回転管炉装置は、急速冷却用の装置を有する場合が有利である。
【0083】
回転管に導通されたガス流が少なからず部分的に循環される回転管炉装置を材料の熱処理のためにも使用することが意図される場合には、サイクロン(12)と循環ガスコンプレッサー(13)との間の接続が三方弁原理(26)で結合されており、かつガス流が直接的に排ガス精製装置(23)中に導かれる場合が有利である。循環ガスコンプレッサーの後に存在する排ガス精製装置への結合は、この場合にも同様に、三方原理で結合される。ガス流が実質的に空気から成っている場合には、これは、循環ガスコンプレッサー(13)によって吸引される(27)。サイクロンへの結合も同様に、三方原理で結合される。この場合にガス流は有利に回転管を通って吸引されるので、この回転管内圧は環境圧よりも小さい。
【0084】
前記の処理は、連続的に、かつ材料及びガス流の向流で行うのが有利である。即ち、熱処理すべき材料は、ガス流に対して反対端部(回転管の最上点)で回転管炉中に装入され、ガス流に対して反対端部で回転管炉から排出される。
【0085】
回転管装置の例示されている実施形においては、連続的作動時の(ガス流の)回転管出口の後の圧力は、外圧よりも−0.8ミリバール下まっているように調節されるのが有利である。回分法操作の場合には、同じ圧力設定は−0.2ミリバールである。
【0086】
既に記載のように、本発明による方法は、全ての種類の触媒活物質の前駆物質の熱処理のために好適である。この場合に、前駆物質は、粉末形でも、特別な(触媒)成形体に成形されても、本発明による熱処理に供することができる。
【0087】
元素Nb及びWの少なくとも1種並びに元素Mo及びVを含有する触媒活性多元素酸化物質(この場合に、触媒活性多元素酸化物質の酸素とは異なる全ての元素の全量に対する元素Moのモル割合は20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素酸化物質中に含有しているMoと触媒活性多元素酸化物質中に含有しているVとのモル比Mo/Vは15:1〜1:1であり、相応するモル比Mo/(WとNbとからの合計量)は80:1〜1:4である)の製造のために好適である。このような多元素酸化物質は屡々、なおCuを、30:1〜1:3のMo/Cuの相応するモル比で含有する。この場合に、前駆物質の熱処理の温度範囲は典型的に、300〜600℃に広がっている。本発明の方法の種々の利点をこのような多元素酸化物の例で、以後に再度記載する。これらは、例えば多元素酸化物質の酸素とは異なる元素構成物を成分として含有する出発化合物から、アンモニウムイオンをも含有する緊密な乾燥混合物(前駆物質)を製造し、かつこれを300〜450℃の範囲の温度(材料温度)で、O及びNHを含有するガス雰囲気中で熱処理することにより得られている。この場合に、その中で熱処理が行われるべきガス雰囲気は、EP−B72448の教示によれば、例えば、
−熱処理のどの時点でも O 0.5〜4容量%、
−還元性熱処理の全期間に渡り平均して NH 1〜8容量%並びに
−残分量としての水蒸気及び/又は不活性ガス
を含有するものであり、この際、熱処理の間の雰囲気のNH−含有率は、20容量%を下回る最大を経過する。
【0088】
前記の多元素酸化物質は、元素Nb及び/又はW並びにMo、V及び場合によるCuと共に、付加的に例えば元素Ta、Cr、Ce、Ni、Co、Fe、Mn、Zn、Sb、Bi、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、H、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)、Si、Al、Ti及びZrを含有することができる。勿論、この多元素酸化物活物質は、元素Nb及び/又はW並びにMo、V及び場合によるCuのみから成っていてもよい。これらは、殊にアクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用部分的気相酸化用の触媒の活物質として好適である。
【0089】
この場合に、アクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用部分的気相酸化用の触媒の活物質として全く特別に好適な触媒活性多元素酸化物質は、次の一般的化学量論式Iを満足する:
Mo12 (I)
[式中、変数は次のものを意味する:
= W、Nb、Ta、Cr及び/又はCe、
= Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZn、
= Sb及び/又はBi、
4= 1種以上のアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)及び/又はH、
= 1種以上のアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)、
= Si、Al、Ti及び/又はZr、
a = 1〜6、
b = 0.2〜4、
c = 0〜18、有利には0.5〜18、
d = 0〜40、
e = 0〜2、
f = 0〜4、
g = 0〜40 及び
n = I中の酸素とは異なる元素の原子価数及び度数により決まる数値であり、かつ
この際、変数は、前記の範囲内で次の前提で選択されるべきである:
多元素酸化物質(I)の酸素とは異なる全ての元素の全量に対する元素Moのモル割合は20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素酸化物質(I)中に含有しているMoと触媒活性多元素酸化物質(I)中に含有しているVとのモル比Mo/Vは15:1〜1:1であり、相応するモル比Mo/(WとNbとからの合計量)は80:1〜1:4である(かつ、多元素酸化物質がCuを含有する場合には、相応するモル比Mo/Cuは30:1〜1:3である)]。
【0090】
活性多元素酸化物質(I)の内で、変数が次の範囲内にあるのものが有利である:
= W、Nb及び/又はCr、
= Cu、Ni、Co及び/又はFe、
= Sb、
4= Na及び/又はK、
= Ca、Sr及び/又はBa、
= Si、Al及び/又はTi、
a = 2.5〜5、
b = 0.5〜2、
c = 0.5〜3、
d = 0〜2、
e = 0〜0.2、
f = 0〜1、
g = 0〜15 及び
n = I中の酸素とは異なる元素の原子価数及び度数により決まる数値である。
【0091】
しかしながら、全く特別に好ましく、次の多元素酸化物活物質IIが本発明の方法の直接的な方法生成物である:
Mo12 (II)
[式中、変数は次のものを意味する:
= W及び/又はNb、
= Cu及び/又はNi、
= Co及び/又はSr、
= Si及び/又はAl、
a = 3〜4.5、
b = 1〜1.5、
c = 0.75〜2.5、
f = 0〜0.5、
g = 0〜8 及び
n = II中の酸素とは異なる元素の原子価数及び頻度により決まる数値であり、かつ
この際、変数は、前記の範囲内で次の前提で選択されるべきである:多元素酸化物活物質(II)の酸素とは異なる全ての元素の全量に対する元素Moのモル割合は20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素酸化物質(II)中に含有しているMoと触媒活性多元素酸化物質(II)中に含有しているVとのモル比Mo/Vは15:1〜1:1であり、相応するモル比Mo/Cuは30:1〜1:3であり、かつ、相応するモル比Mo/(WとNbとからの合計量)は80:1〜1:4である]。
【0092】
このような多元素酸化物質の製造のために、既に記載のように、自体公知の方法で、多元素酸化物活物質を得るためのその都度の化学量論比での所望の多元素酸化物活物質の酸素とは異なる元素構成の適当な資源(出発化合物)から出発し、かつこれからできるだけ緊密な、有利には微細な乾燥混合物を取得し、次いで、これを熱処理に供する、この際、特定の形状の(触媒)成形体に成形する前又は後に熱処理を行うことができる。本発明によれば、それをその前に行うのが有利である。この際に、この資源は、既に酸化物であるか又は少なくとも酸素の存在下での加熱により酸化物に移行可能であるような化合物であってよい。従ってこの酸化物と並んで出発化合物として、特にハロゲン化物、硝酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩、酢酸塩、炭酸塩又は水酸化物が使用される。
【0093】
Mo、V、W及びNbの好適な出発化合物は、それらのオキソ化合物(モリブデート、バナデート、タングステート及びニオベート)又はこれらから誘導される酸でもある。酸素含有資源が同様に好適である。
【0094】
緊密な乾燥混合物中のアンモニウムイオンの必要含分は、簡単に、この緊密な乾燥混合物中に相応する量のアンモニウムイオンを導入することによって実現化することができる。このアンモニウムイオンを緊密な乾燥混合物中に、例えば元素Mo、V、W又はNbの資源として相応するアンモニウムオキソメタレート(Ammoniumoxometallate)を使用することによって導入することができる。この例は、アンモニウムメタニオベート、アンモニウムメタバナデート、アンモニウムヘプタモリブテート4水和物及びアンモニウムパラタングステート7水和物である。しかしながら、当然、熱処理すべき緊密な乾燥混合物中に、多元素酸化物活物質成分の資源として必要である出発化合物とは無関係に、アンモニウム形成成分、例えばNHNO又はNHCl又は酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウム又はNHOH、NHCHO又は蓚酸アンモニウムを導入することができる。
【0095】
出発化合物の緊密な混合は、原則的に乾燥形又は湿った形で行うことができる。これが乾燥形で行われる場合には、出発化合物は有利に微粉砕された粉末として使用され、この混合の後に、例えば所望の形状の(触媒)成形体に圧縮され(例えば打錠され)、次いでこれが、本発明による熱処理に供される。
【0096】
しかしながら、湿った形での緊密な混合を行うのが有利である。この場合には、通常、出発化合物が水溶液及び/又は懸濁液の形で相互に混合される。専ら溶解された形で存在する資源及び出発化合物から出発される場合に、記載の混合法の場合に特別緊密な乾燥混合物が得られる。溶剤としては、水が有利に使用される。引き続き、この水性物質(溶液又は懸濁液)は乾燥され、こうして得られた緊密な乾燥混合物が場合により直接熱処理される。乾燥法は、スプレー乾燥(噴射口温度は、通常、100〜150℃である)により及び水溶液又は懸濁液の仕上げに直接引き続いて行うのが有利である。この場合に生じる粉末は、直接、圧縮により成形することができる。しかしながら屡々、直接の仕上げ操作のためには、これは微細すぎるので、これを次いで、例えば水の添加下に混練するのが有利であることが判明している。屡々、この混練時に低級の有機カルボン酸(例えば酢酸)の添加が有利であると判明した(典型的な組成は、使用粉末物質に対して5〜10質量%である)。
【0097】
生じる混練物質は引き続き所望の形状に成形され、乾燥され、次いで熱処理に供される(いわゆる完全触媒にされる)か、又はストランドに成形され、これらは熱処理され、その後に粉砕して粉末にされ(通常は<80μm)、これが、通例、少量の水並びに場合によっては他の慣用の結合剤の添加下に、湿物質として不活性担体上に塗布される。この被覆の後に再度乾燥され、こうして使用可能なシェル触媒(Schallenkatalysator:coated catalyst)が得られる。例えば水溶液の形で出発化合物の緊密混合が行われる場合には、これで不活性の多孔質担体も含浸され、乾燥され、かつ引き続き本発明により熱処理されて担持触媒(Traegerkatalysator:supprted catalyst)にすることができる。シェル触媒の製造の場合には、熱処理の前にも、即ち例えば湿ったスプレー粉末で担体の被覆を行うことができる。
【0098】
シェル触媒のために好適である担体材料は、例えば多孔質又は非孔質の酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化トリウム、二酸化ジルコニウム、炭化珪素又は珪酸塩、例えば珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウム(Fa.Ceram TecのC220型のステアタイト)である。
【0099】
担体は、規則的に又は不規則に成形されていてよく、この際、規則的に成形され、明確に構成された表面粗面性を有する担体、例えばチップコーティング(Splittauflage:chip coating)を有する球又は中空円柱が有利である。
【0100】
その直径が1〜8mm、好ましくは4〜5mmであるステアタイト(Fa.Ceram TecのC220型のステアタイト)製の実質的に非孔質の表面粗面性の球形担体の使用が好適である。しかしながら、担体として、その長さが2〜10mmで、その外径が4〜10mmである円柱の使用も好適である。更に担体としてのリングの場合には、その壁厚は、通常は1〜4mmである。好ましく使用できるリング形担体は、長さ2〜6mm、外径4〜8mm及び壁厚1〜2mmを有する。特に、寸法7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)のリングも担体として好適である。
【0101】
前記のような熱処理により得られた微細な多元素酸化物活物質又はなお熱処理すべき微細なそれらの前駆物質(緊密な乾燥混合物)での担体の被覆は、通常は、例えばDE−A2909671、PE−A293859又はEP−A714700から公知であるような回転可能な容器中で実施される。この場合に、EP−A714700の方法が好ましい。
【0102】
施与すべき粉末物質での担体の被覆のために、担体を湿らせるのが有利である。この施与の後に、通常は熱空気を用いて乾燥させる。担体上に施与された粉末物質の層圧は、10〜1000μmの範囲、好ましくは50〜500μmの範囲、特に好ましくは150〜250μmの範囲に選択するのが有利である。
【0103】
完全触媒(Vollkatalysator:unsupperted catalyst)の場合には、既に記載のように、同様に熱処理の実施の前又は後に成形を行うことができる。
【0104】
例えば本発明により得られる多元素酸化物活物質又はそれらのなお熱処理されていない前駆物質の粉末形(緊密な乾燥混合物)から圧縮して所望の触媒形状にすること(例えば打錠、押出し又はストランド圧縮)により、完全触媒を製造することができ、この際、場合によっては助剤、例えば滑剤としてのグラファイト又はステアリン酸及び/又は成形助剤及び強化剤、例えばガラス製のマイクロ繊維、アスベスト、炭化珪素又はチタン酸カリウムを添加することができる。好適な完全触媒形状は、例えば2〜10mmの外径及び長さを有する中実円柱又は中空円柱である。中空円柱の場合には、1〜3mmの壁厚が有利である。勿論、完全触媒は、球形を有することもでき、この際に、球直径は2〜10mmであってよい。
【0105】
勿論、重要な多元素酸化物活物質は、粉末形、即ち特定されない触媒形に成形することもでき、アクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用部分酸化用の触媒として使用することもできる(例えば、渦動床中でも)。
【0106】
アクロレインからアクリル酸までの部分気相酸化それ自体は、記載の多元素酸化物活物質を用いて、例えばEP−A724481又はDE−A19910508に記載のように実施することができる。
【0107】
前記の多元素酸化物質の前駆物質の熱処理に関して、EP−B724481が次のように記載している(5頁25行以降):
「本発明により必要であるか焼雰囲気は、簡単に例えば、O、NH及び不活性ガス/水蒸気に関して適当な組成を有するガス混合物が導通される炉内でか焼することにより実現化することができる。有利性の低い1実施形では、このか焼雰囲気の必要な平均アンモニア含有率は、か焼すべき乾燥物質中に適当な量のアンモニウムイオン(これはか焼の経過でNH−排ガス下に分解する)を導入することによっても達成することができる。」
EP−B724481においてか焼が循環空気炉内で実施された場合には、これに、特に特定の容量割合のNH(容量%)を含有するガス混合物が供給された。
【0108】
今や、この本出願の基本になっている発明によって、EP−B724481の有利性の低い実施形は有利な実施形になる。このことは、特に本発明の方法が、か焼雰囲気中へのNHの外からの添加をもはや必要とせずに、アンモニウム源としての熱処理すべき前駆物質中に含有するアンモニウムイオンと一緒の循環ガス導通によって実施できることに基づいている。更なる利点として、この循環ガス導通による本出願発明の方法は、熱処理に必要なエネルギー消費量を低下させる。それというのも、これは循環ガス中に含有されているエネルギー内容を更に利用するからである。更に、本発明の方法は、回転管中での連続的自己均質化に基づき、製造バッチ内での特別狭い活性分布を有する触媒活物質(殊に触媒活性多元素酸化物質)の多量の製造を可能にする。このことは、元素Nb及びWの少なくとも1種並びに元素Mo、V及びCuを含有し、アクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用部分的気相酸化用の触媒の製造のために使用される記載の触媒活性多元素酸化物質の場合に特に重要である。特に、例えばDE−A10307983、DE−A19948523及びDE−A19910508に記載のような高いアクロレイン負荷時にこの気相部分酸化が実施される場合に重要である。
【0109】
通常、アクロレインのこの気相部分酸化は、例えばEP−A700714、EP−A700893、DE−A19910508、DE−A19948523、DE−A19910506、DE−A19948241、DE−C2830765、DE−C2513405、US−A3147084、DE−A2201528、EP−A383224及びDE−A2903218に記載のように、1個以上の熱処理帯域を有する管束反応器中で実施される。
【0110】
管束反応器の金属管(触媒)中に固体触媒床が存在し、この金属管の周りに熱処理媒体が導通される(1以上の熱処理帯域の場合には、相応する数の空間的に分離された熱処理媒体が金属管の周りに導通される)。この熱処理媒体は、通常は塩融液である。触媒管内に反応混合物が導通される。
【0111】
触媒管は、通常はフェライト鋼から製造されており、典型的には1〜3mmの壁厚を有する。その内径は、通常、20〜30mm、屡々21〜26mmである。その長さは2〜4mであるのが有利である。
【0112】
使用技術的に有利に、この管束容器中に収容される触媒管の数は、総計して少なくとも5000、有利には少なくとも10000本になる。屡々、反応器容器中に収容される触媒管の数は、15000〜30000本である。40000本を上まわる数の触媒管を有する管束反応器は、むしろ例外である。この容器内に、通常の場合に触媒管が均一に分配されて配置されており(好ましくは1触媒管あたり6個の等間隔の隣接管)、この際、この分配は、相互に隣接している触媒管からの中心内軸の距離(いわゆる触媒管分離)が35〜45mmになるように選択されているのが有利である(EP−B468290参照)。
【0113】
熱交換媒体としては、塩、例えば硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム及び/又は硝酸ナトリウムの又は低融点金属、例えばナトリウム、水銀並びに種々の金属の合金の融液の使用が特に好適である。
【0114】
管束反応器中の適当な流動条件によって一般に、反応器断面上に渡り、それぞれ個々の触媒管上で同じ塩浴温度が作用することができるように企画されているとしても、反応器断面上の温度勾配の存在を実際には完全に避けることはできない。この反応器断面上の温度勾配に加えて、個々の触媒装填物上で顕著な活性勾配が現れる場合には、これは、管束反応器の作動の安全性に不利に作用することがありうる。それというのも、このような場合には、アクロレインからアクリル酸にする発熱性の不均一触媒作用固定床部分酸化に基づく熱発生が、管束反応器の個々の触媒管中では著しく異なるであろうからである。後者のことは、触媒管装填物の高い活性とは、同じ温度で単位時間当たり、より多く反応され、従ってより多くの熱が発生されることを意味するからである。
【0115】
本発明の方法は、管束反応器の(活物質として、元素Nb及びWの少なくとも1種並びに元素Mo、V及び場合によりCuを含有する前記の触媒活性多元素酸化物質を含有する触媒の)5000〜40000本の触媒管(これらの触媒管は、12本の触媒管の無作為サンプリングの場合に算術平均活性と最大又は最低活性との差が8℃を超えない、屡々6℃を超えない、むしろ4℃を超えない、最適な場合には2℃を超えないような状態である)での規則的な装備を可能とする。
【0116】
本発明の方法で注目すべきことは、管束反応器中に含有される全活物質が、前駆物質の熱処理の100より少ない又は75より少ない又は50より少ないバッチ中で製造される場合にも、前記の結果が得られることである。このバッチの数は屡々5〜40である。
【0117】
この場合に、触媒管装填物の活性の尺度として、個々の触媒管の周りに通される塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%からの混合物)が有すべき温度が使用され、従って、アクロレイン4.8容量%、酸素7容量%、水蒸気10容量%及び窒素78.2容量%からの反応ガス混合物の1回流過の場合(アクロレイン85Nl/触媒装填物l×hでの触媒装填物の負荷の場合)に、この装填された触媒管によって97モル%のアクロレイン変換率が得られる(ここで、"触媒装填物l"には、不活性物質からの純粋な前−又は後床が存在する触媒管内の容積は包含されず、場合により不活性物質で希釈されている触媒成形体を含有する床容積のみが包含される)。
【0118】
管束反応器中の触媒管の前記のような達成可能な装填は、この管束反応器が、≧135Nl/l・h又は≧150Nl/l・h又は≧160Nl/l・h又は≧170Nl/l・h又は≧180Nl/l・h又は≧200Nl/l・h又は≧220Nl/l・h又は≧240Nl/l・hである触媒装填物のアクロレイン負荷(Acrolein-Belastung)で作動される場合に特に重要である。勿論、このような触媒装填物は、小さいアクロレイン負荷の場合にも有利である。
【0119】
しかしながら通常、触媒装填物のアクロレイン負荷は、≦350Ni/l・h又は≦300Ni/l・h又は≦250Ni/l・hである。
【0120】
他方、管束反応器は、アクロレインをアクリル酸にする部分酸化で、DE−A1030783、DE−A19948523及びDE−A19910508に記載のように作動させることができる。
【0121】
最後に、本発明の方法を用いると、簡単に、熱処理すべき前駆物質の回転管炉内での≧5h又は≧10h又は≧15h又は≧20h又は≧25hの滞留時間が可能であることを書き留めるべきである。通常は、この滞留時間は≦50hである。
【0122】
更に、本発明の方法は、特に元素Mo、V、2つの元素Te及びSbの少なくとも1種及び次の群からの元素少なくとも1種 Nb、Pb、Ta、W、Ti、Al、Zr、Cr、Mn、Ga、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、La、Bi、B、Ce、Sn、Zn、Si、Na、Li、K、Mg、Ag、Au及びInを組み合わせて含有する多元素酸化物活物質の製造のためにも好適であることも書き留めるべきである。
【0123】
この場合には屡々、熱処理が、差し当たり150〜350℃、有利に250〜350℃で、酸化性(酸素含有)雰囲気(例えば空気)の下で、引き続き350〜1000℃又は400〜700℃又は400〜650℃で、酸素遮断下に(例えばN下に)行なわれる。この場合に、空気下での熱処理を連続的に実施することもできる。
【0124】
この場合に、後者の元素群からの組み合わせは、元素Nb、Ta、W及び/又はTi、殊に好ましくは元素Nbを含有するのが有利である。
【0125】
重要な多元素酸化物活物質は、前記の元素組み合わせを化学量論式IIIで含有するのが有利である:
Mo (III)
[式中、
=Te及び/又はSb、
=Nb、Ta、W、Ti、Al、Zr、Cr、Mn、Ga、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、La、Bi、Ce、Sn、Zn、Si、Na、Li、K、Mg、Ag、Au及びInを包含する群の元素からの少なくとも1種、
b=0.01〜1、 c=>0〜1 及びd=>0〜1 ]。
【0126】
=Teであり、M=Nb、Ta、W及び/又はTiであるのが好ましい。M=Nbであるのが有利である。
【0127】
化学量論係数bは、有利に0.1〜0.6である。相応して、化学量論係数cの有利な範囲は0.01〜1又は0.05〜0.4であり、dの好適な値は0.01〜1又は0.1〜0.6である。
【0128】
化学量論係数b、c及びdが同時に前記の有利な範囲内に存在する場合が特に好適である。
【0129】
前記のことは、活物質が、酸素とは異なるその元素について前記の元素組み合わせから成っている場合に殊に当てはまる。
【0130】
これは、殊に一般的化学量論式IVの多元素酸化物活物質である;
Mo (IV)
[式中、変数は、化学量論式IIIに関して示されている意味を有し、nは(IV)中の酸素とは異なる元素の原子価数及び度数により決められる数である]。
【0131】
更に本発明の方法は、一方で前記の元素組み合わせを有するか又は酸素とは異なる元素に関してそれらから成り、同時に回折反射h及びiを示し、その頂点が回折角度(2θ)22.2±0.5°(h)及び27.3°(i)にあるようなX線回折図を有する多元素酸化物活物質の製造のために好適である(この明細書中でX線回折図に関連する全ての記載は、X線としてのCu−Kα−線の使用下に得られるX線回折図に関連している(Siemens−Diffraktometer Theta−Theta D−5000、管電圧:40kV、管電流:40mA、アパーチャV20(可変性)、コリメータ V20(可変性)、第2モノクロメータアパーチャ(0.1mm)、デテクタアパーチャ(0.6mm)、測定間隔(2θ):0.02°、各ステップの測定時間:2.4秒、デテクタ:シンチレーションカウンター))。
【0132】
この場合に、この反射回折の半価幅(Halbwertsbreite)は非常に小さいか又は非常に顕著であることができる。
【0133】
本発明の方法は、そのX線回折図が回折反射h及びiに加えて、その頂点が28.2±0.5°(k)にある回折反射kを有する、前記の多元素酸化物活物質の製造のために特に好適である。
【0134】
後者において、本発明による製造のためには、X線回折図内のその回折反射hで強度最大であり、かつ最大0.5°の半価幅を有するものが好ましく、本発明の方法は、回折反射iの及び回折反射kの半価幅が同時にそれぞれ≦1°であり、回折反射kの強度P及び回折反射iの強度Pが、関係0.2≦R≦0.85、良好には0.3≦R≦0.85、好ましくは0.4≦R≦0.85、特に好ましくは0.65≦R≦0.85、なおより好ましくは0.67≦R≦0.75、全く特別に好ましくはR=0.70〜0.75又はR=0.72を満足し、ここで、Rが、式:
R=P√(P+P
により定義される強度割合であるものを得るために全く特別に好適である。前記のX線回折図は、その最大が2θ=50±0.3°にある回折反射を有しないのが有利である。
【0135】
この明細書中で、X線回折図中の回折反射の強度の定義は、DE−A19835247、DE−A10122027並びにDE−A10051419及びDE−A10046672に記載の定義に結びついている。同じことが半価幅の定義にも当てはまる。
【0136】
回折反射h、i及びkと並んで、本発明により有利に製造できる多元素酸化物活物質の前記のX線回折図は、なお次の回折角(2θ)にその頂点(Scheitelpunkte)がある回折反射を有する:
9.0±0.4°(l)
6.7±0.4°(o)及び
7.9±0.4°(p)。
【0137】
更に、このX線回折図が付加的に、回折角(2θ)=45.2±0.4°(q)にその頂点がある回折反射を有する場合が好適である。
【0138】
屡々、このX線回折図は、なお反射29.2±0.4°(m)及び35.4±0.4(n)をも有する。
【0139】
更に、式III及びIV中で定義されている元素組み合わせが純粋なi−相として存在する場合が好適である。この触媒活性酸化物質がなおk−相を有する場合には、そのX線回折図は、前記と並んでなお次の回折角(2θ)にその頂点がある更なる回折反射を有する:36.2±0.4°(m)及び50±0.4°(この明細書中の概念i−及びk−相は、DE−A10122027及びDE−A10119933に定められているように使用される)。
【0140】
回折反射hに強度100を割り当てると、回折反射i、l、m、n、o、p、qが同じ強度スケールで次の強度を有する場合が本発明により好適である:
i: 5〜95、屡々5〜80、部分的には10〜60、
l: 1〜30;
m: 1〜40;
n: 1〜40;
o: 1〜30;
p: 1〜30及び
q: 5〜60。
【0141】
X線回折図が前記の付加的回折反射を有する場合には、その半価幅は、通常 ≦1°である。
【0142】
一般式IVの本発明により製造すべき多元素酸化物活物質又は一般式IIIの元素組み合わせを含有する多元素酸化物活物質の比表面積は、特にそのX線回折図が前記のようである場合に屡々、1〜30m/g(BET−表面積、窒素)である。
【0143】
記載のようにして得られる多元素酸化物活物質の前駆物質の製造は、ここに引用されている技術水準と関連して存在する。これには、殊に次のものが挙げられる:DE−A10122027、DE−A10119933、DE−A10033121、EP−A1192987、DE−A10029338、JP−A2000−143244、EP−A962253、EP−A895809、DE−A19835247、WO00/29105、WO00/29106、EP−A529853及びEP−A608838(最後に記載の2つの刊行物の全ての実施例中では、乾燥法としてスプレー乾燥を使用すべきである;例えば300〜350℃の入口温度及び100〜150℃の出口温度で;向流又は並流)。この前駆物質の熱処理の条件は、同様にこれらの明細書中に存在する。
【0144】
記載の多元素酸化物活物質は、それ自体として(即ち粉末形で)又は適当な形状(例えばDE−A10051419のシェル触媒並びにDE−A10122027の形状変体)に成形されて、低級炭化水素及び低級有機化合物、例えばプロピレン、プロパン及びアクロレインの気相触媒作用部分酸化及び/又はアンモ酸化のために使用することができる。これらは、殊にアクロレイン及び/又はアクリル酸の製造のため並びにプロパン及び/又はプロペンからのアクリロニトリルの製造のために好適である。反応条件は、同様に引用の技術水準に包含されている。
【0145】
今や、本発明の方法は、管束反応器の(活物質として、元素Mo、V、二つの元素Te及びSbの少なくとも1種及び群Nb、Ta等から選択される少なくとも1種の元素を組み合わせて含有している記載の触媒活性多元素酸化物質を含有している触媒の)5000〜40000本の触媒管(これらは、12本の触媒管の無作為サンプリングの際に算術平均活性と最大又は最少活性との間の差が8℃を上まわらない、屡々6℃を上まわらない、むしろ4℃を上まわらない、最適な場合には2℃を上まわらないように調達されている)での規則的装填をも可能とする。
【0146】
本発明の方法で注目すべきことは、管束反応器中に含有されている全活物質が前駆物質の熱処理の100より少ない、又は75より少ない又は50より少ないバッチ中で製造された場合にも、前記の結果が達成されることである。屡々、このバッチの数は5〜40である。
【0147】
この場合に、触媒管装填物の活性に関する尺度としては、再度、個々の触媒管の周りを流れる塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%からの混合物)が有すべき温度が使用され、これにより、この装填された触媒管を通るアクロレイン4.8容量%、酸素7容量%、水蒸気10容量%及び窒素78.2容量%からの反応ガス混合物の1回通過の場合に(アクロレイン85Nl/触媒装填物l×hでの触媒装填物の負荷の場合に)、97モル%のアクロレイン変換率が得られる(ここで、"触媒装填物l"とは、不活性物質からの純粋な前−又は後−床が存在する触媒管内の容積を包含せず、触媒成形体(場合によっては不活性物質で希釈された)を含有する床容積のみを包含する)。
【0148】
触媒管のこのような装填は、この管束反応器が≧135Nl/l・h又は≧150Nl/l・h又は≧170Nl/l・h又は≧200Nl/l・h又は≧240Nl/l・hである触媒装填物のアクロレイン−負荷で操作される場合に特に重要である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】回転管炉装置の略示図。
【図2】材料温度(℃)の関数としての前駆物質から放出されるアンモニアを、熱処理の全工程で前駆物質から放出されるアンモニア全量の百分率として示している図。
【図3】その中で熱処理が実施される雰囲気中のアンモニア濃度を、熱処理の間の材料温度(℃)との関係で示している図。
【図4】材料温度との関係で、前駆物質1kg当たり及び1時間当たりのガス流での熱処理により回転管中へ供給された酸素分子及びアンモニアのモル量を示している図。
【図5】成形前の粉砕された活物質粉末の孔分布を示している図。
【図6】成形前の活物質粉末の、孔全容積に対するマイクロ孔範囲内の個々の孔径の個々の分担分を示している図。
【図7】リング形シェル触媒から機械的引掻きにより後に分離された多金属酸化物活物質の図5と類似の図。
【図8】リング形シェル触媒から機械的引掻きにより後に分離された多金属酸化物活物質の図6と類似の図。
【図9】実施例3による球形シェル触媒の図7と類似の図。
【図10】実施例3による球形シェル触媒の図8と類似の図。
【実施例】
【0150】
実施例1
A)化学量論式Mo121.2Cu2.4の多元素酸化物質を得る目的の前駆物質の製造
酢酸銅(II)水和物(CuO含有率:40.0質量%)16.3kgを、温度25℃の水274リットル中に撹拌下に溶かした。澄明溶液1が得られた。
【0151】
これから空間的に分離して、水614リットルを640℃まで加熱し、ヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(MoO81.5質量%)73kgを40℃の保持下に撹拌導入した。次いで、撹拌下に30分かかって90℃まで加熱し、この温度の保持下に順次にかつ記載の順序で、メタバナジン酸アンモニウム11.3kg並びにパラタングステン酸アンモニウム7水和物(WO88.9質量%)を撹拌導入した。澄明溶液2が得られた。
【0152】
この溶液2を80℃まで冷却し、引き続き、溶液1をこの溶液2中に撹拌導入した。得られた混合物に、25℃の温度を有する25質量%NH−水溶液130リットルを加えた。撹拌下に、短時間65℃の温度及び8.5のpH値を有する澄明溶液が生じた。これに再度25℃の温度の水20リットルを加えた。その後、生じる溶液の温度を再び80℃まで上昇させ、次いでこれを、Fa.Nitro-Atomizer(Kopenhagen)のS−50−N/R型のスプレー乾燥機(ガス入口温度:350℃、ガス出口温度110℃)を用いてスプレー乾燥させた。スプレー粉末は、2〜50μmの粒径を有した。こうして得られたスプレー粉末の60kgを、Fa.AMK(Aachener Misch-und Knetmaschinen Fabrik)のVM 160型の混練装置(Sigma Schaufel)中に配量し、酢酸(約100質量%の酢酸)5.5リットル及び水5.2リットルの添加下に混練した(スクリュウの回転数:20Upm)。4〜5分の混練時間の後に、更に水6.5リットルを加え、30分経過するまでこの混練法を継続させた(混練温度約40〜50℃)。その後、この混練物質をエクストルーダ中に空け、このエクストルーダ(Fa.Bonnot Compny (Ohio)のG103−10/D7A−572K型(6"Extruder W Packer))を用いて成形してストランド(長さ:1〜10cm;直径6mm)にした。ベルト乾燥機上で、このストランドを120℃の温度(材料温度)で1時間乾燥させた。乾燥されたストランドは、本発明の方法で熱処理すべき前駆物質を形成した。
【0153】
B)回転管炉装置内での本発明の熱処理による触媒活物質の製造
熱処理の実施を、この明細書中に例示されている実施形による規模及び補助手段を有する図1における回転管炉装置中で、かつ次の条件下に行った:
− 熱処理を、A)に記載のようにして製造された材料量300kgを用いて回分法で行った;
− 水平に対する回転管の傾斜角度は約0°であった;
− 回転管を、1.5回/minで右回転させた;
− 全体の熱処理の間に、この回転管に、(当初に含有されている空気の排除の後に)次のような組成を有するガス流205Nm/hを供給し、この回転管の出口から更なるシーリングガス窒素25Nm/hを補充した:
ベース負荷−窒素(20)及び回転管内で発生したガスの組成物 80Nm/h、
シーリングガス窒素(11) 25Nm/h、
空気(スプリッター(21)) 30Nm/h及び
再循環される循環ガス(19) 70Nm/h。
【0154】
シーリングガス−窒素を25℃の温度で供給した。他のガス流の混合物を、ヒーターから出てくるそれぞれ回転管中で材料がその都度に有する温度で、回転管中に供給した。
− 10時間かかって、この材料温度を25℃から実質的に直線的に300℃まで加熱し;
引き続き、この材料温度を2時間かかって実質的に直線的に360℃まで加熱し;
その後、この材料温度を7時間かかって実質的に直線的に350℃まで低下させ;
次いで、この材料温度を2時間かかって実質的に直線的に420℃まで高め、かつこの材料温度を30分間保持し;
− 次いで、この回転管に供給されたガス流中で空気30Nm/hを、相応して上昇するベース負荷−窒素で交換し(これにより特有の熱処理の経過が終了した)、回転管の加熱を中断し、かつ材料を、環境空気の吸引による回転管の急速冷却の接続によって2時間かかって100℃を下回る温度まで、かつ最後に環境温度まで冷却させ;この場合にこのガス流を25℃の温度で回転管に供給した;
−全体の熱処理の間に、ガス流の回転管出口の(直)後の圧力は、外圧を0.2ミリバール下回っていた。
【0155】
回転管中のガス雰囲気の酸素含有率は、熱処理の全相内で2.99容量%であった。還元性熱処理の全期間にわたり算術平均すると、回転炉中のガス雰囲気のアンモニア濃度は4容量%であった。
【0156】
図2は、材料温度(℃)の関数としての前駆物質から放出されるアンモニア量を、熱処理の全工程で前駆物質から放出される全アンモニア量の百分率として示している。
【0157】
図3は、その中で熱処理が実施される雰囲気中のアンモニア濃度(容量%)を、熱処理の間の材料温度(℃)との関係で示している。
【0158】
図4は、材料温度との関係で、前駆物質1kg当たり及び1時間当たりのガス流での熱処理により回転管中へ供給された酸素分子及びアンモニアのモル量を示している。
【0159】
C)多金属酸化物活物質の成形
B)で得られた触媒活性物質を、バイプレックス交叉流か焼ミル(BQ500)(Fa.Hosokawa-Alpine Augsburg)を用いて粉砕して、微細粉末にした(その粉末粒子の50%は、1〜10μの目幅の篩を通過し、50μmを上まわる縦寸法を有する粒子分は1%より少なかった)。
【0160】
この粉砕された粉末を用いて、EP−B714700のS1中の記載と同様にリング形担体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、Fa.Ceram Tecの45μmの表面粗面性Rを有するステアタイトC220)を被覆した。結合剤は水75質量%及びグリセリン25質量%からの水溶液であった。
【0161】
しかしながら、得られるシェル触媒の活物質の割合を、前記の例S1とは異なり、20質量%(担体と活物質とからの全質量に対して)に選択した。粉末と結合剤との量比を比例して適合させた。
【0162】
D)シェル触媒の試験
シェル触媒を、次のように、塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%からの混合物)で包囲流過されるモデル触媒管中で試験した:
モデル触媒管: V2A−鋼、壁厚2mm、内径26mm、外径4mmのサーモスリーブ(サーモカップルの収納のため)を中央に有し、このモデル触媒管の自由空間1.56リットルにシェル触媒を充填した。
【0163】
反応ガス混合物は次の出発組成を有した:
アクロレイン4.8容量%、酸素7容量%、水蒸気10容量%、窒素78.2容量%。
【0164】
このモデル触媒管に反応ガス出発混合物2800Nl/hを装入した。触媒装填物の負荷は86Nl/l・hに相当した。塩浴の温度を、1回通過の際に97モル%のアクロレイン変換率を生じるように調節した。
【0165】
相互に無関係の10実験で、それぞれ前記のように装填されたモデル触媒管12本を相互に比較した。
【0166】
全ての場合に、所望のアクロレイン変換率を得るために必要である塩浴温度は、257±4℃の間にあった。全ての場合のアクリル酸形成の選択率は、約94.8モル%であった。
【0167】
実施例2
全体を実施例1と同様に実施した。しかしながら、多金属酸化物活物質の成形を次のように行った:
リング形担体(外径7.1mm、長さ3.2mm、内径4.0mm;表面粗面性R45μm及び担体の容積に対する孔全容積≦1容量%を有するFa.Ceram TecのC220型のステアタイト)70kgを、内容積200リットルのコーティングパン(傾斜角度90°;Fa.Loedige,DEのHicoater)中に充填した。引き続き、このコーティングパンを16U/minで回転させた。ノズルから25分かかって水75質量%及びグリセリン25質量%からの水溶液3.8〜4.2リットルをこの担体上に吹き付けた。同時に、同じ時間に渡り粉砕された多金属酸化物活物質(この比表面積は13.8m/gであった)の18.1kgを、振動トラフからアトマイザーノズルのスプレーコーンの外側に連続的に配量添加した。この被覆の間に、供給された粉末は、完全に担体の表面上に吸収され、微細な酸化物活物質の凝集は観察されなかった。活物質粉末及び水の添加の終了後に、2U/minの回転速度で40分間(選択的に15〜60分)、100℃(選択的に80〜120℃)の熱空気(約400m/min)を、このコーティングパン中に吹き込んだ。全質量に対する酸化物活物質の割合20質量%を有するリング形シェル触媒が得られた。1担体の表面上でも種々の担体の表面上でもシェル厚さは170±50μmであった。
【0168】
このシェル触媒の試験を、実施例1におけると同様に行った。得られた結果は、実施例1で得られた結果に相当した。
【0169】
図5は、更に、その成形前の粉砕された活物質粉末の孔分布を示している。この横座標上には、孔径がμmでプロットされている(対数スケール)。
【0170】
右側縦座標上には、孔全容積に対するそれぞれの孔径の個々の分担分(differentielle Beitrag)(ml/g)が対数でプロットされている(曲線 ○)。最大値は、孔全容積に対する最大分担分の孔径を示している。左側縦座標上には、ml/gで、孔全容積への個々の孔径の個々の分担分の積分がプロットされている(曲線 □)。終点は、孔全容積である(本明細書中の孔全容積及びこの孔全容積に渡る直径分布の測定のための全てのデータは、別に記載のない限り、Fa.Micromeritics GmbH、4040Neuss,DEの装置Auto Pore 9220(ベルト幅30Å〜0.3mm)を用いる水銀ポロシメトリーの方法での測定に基づき;この明細書中の比表面積又はマイクロ孔容積の測定の全てのデータは、DIN66131による測定((Brunauer−Emmet−Teller(BET)によるガス吸収(N)による固体の比表面積の測定)に基づいている)。
【0171】
図6は、その成形前の活物質粉末の、孔全容積に対するマイクロ孔範囲内の個々の孔径(横座標、オングストローム、対数スケール)の個々の分担分をml/g(縦座標)で示している。
【0172】
図7は、図5と同様であるが、リング形シェル触媒から機械的引掻きにより後に分離された多金属酸化物活物質(この比表面積は12.9m/gであった)の結果を示している。
【0173】
図8は、図6と同様であるが、リング形シェル触媒から機械的引掻きにより後に分離された多金属酸化物活物質の結果を示している。
【0174】
実施例3
全てを実施例1と同様に実施した。しかしながら、多金属酸化物活物質の成形を次のように行った:
球形担体(直径4〜5mm;45μmの表面粗面性R及び担体の容積に対する孔全容積≦1容量%を有するFa.Ceram TecのC220型のステアタイト)70kgを、200リットル内容積のコーティングパン(傾斜角度90°;Fa.Loedige、DEのHicoater)中に充填した。引き続き、このコーティングパンを16U/minで回転させた。ノズルから25分かかって水2.8〜3.3リットルを、この担体上に吹き付けた。同時に同じ時間に渡り、粉砕された多金属酸化物活物質14.8kgを振動トラフからアトマイザーノズルのスプレーコーンの外側に連続的に配量添加した。この被覆の間に、供給された粉末は完全に担体の表面上に吸収され、微細な酸化物活物質の凝集は観察されなかった。粉末及び水の添加終了の後に、2U/minの回転速度で40分(選択的に15〜60分)、100℃(選択的に80〜120℃)の熱空気(約400m/min)をこのコーティングパン中に吹き込んだ。その酸化物活物質分が全物質に対して17質量%である球形シェル触媒が得られた。1担体の表面上にも種々の担体の表面上にも認められるシェル厚さは、160±50μmであった。
【0175】
図9は、図7と類似のものを示している(引掻かれた多金属酸化物活物質の比表面積は、15m/gであった)。
【0176】
図10は、図8のと類似のものを示している。
【0177】
球形シェル触媒の試験を、リング形シェル触媒の製造例1における記載と同様に行った。
【0178】
この明細書中で例示的に製造されている全てのシェル触媒は、触媒装填物の高いアクロレイン負荷(例えば≧135Nl/l・h〜≦350Nl/l・h)の場合のアクロレイン部分酸化のために殊に好適である。
【符号の説明】
【0179】
0,1 回転管、 2 直方体、 3 装入口、 4 取出口、 5 ファン、 7 フラップ、 8 ランス、 9 サーモカップル、 10 ヒーター、 11 フラッシング流、 12 サイクロン、 13 循環ガスコンプレッサー、 14 調整弁、 15 減圧装置、 16 圧力センサー、 17 排ガスコンプレッサー、 18 センサー、 19 循環ガス分、 20 窒素、 21 窒素/空気スプリッター、 22 流出された循環ガス分、 23 排ガス精製装置、 26 三方弁、 28 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の活物質が、
元素Nb及びWの少なくとも1種並びに元素Mo及びVを含有する多元素酸化物質であり、この際、触媒活性物質の酸素とは異なる全ての元素の合計量に対する元素Moのモル割合は20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素酸化物質中に含有しているMoと触媒活性多元素酸化物質中に含有しているVとのモル比Mo/Vは15:1〜1:1であり、相応するモル比Mo/(WとNbとからの合計量)は80:1〜1:4であり、かつ、ガス流により流過される回転管炉内で300〜450℃の材料温度で、O及びNHを含有するガス雰囲気中で熱処理する方法により製造されており、その際、
−前駆物質として、多元素酸化物質の酸素とは異なる元素構成物を成分として含有する出発化合物から、アンモニウムイオンをも含有する緊密な乾燥混合物を製造し、
−その中で熱処理が行われるガス雰囲気は、
−どの時点でも O 0.5〜4容量%、
−還元性熱処理の全期間に渡り平均して NH 1〜8容量%並びに
−残分量としての水蒸気及び/又は不活性ガス
を含有するものであり、
−熱処理の間の雰囲気のNH−含有率は、20容量%を下回る最大を経過し、かつ、
−回転管炉を流過するガス流の少なくとも一部分量を循環させ、かつNHの外からの添加を行わない
ことを特徴とするアクロレインをアクリル酸にする不均一触媒作用気相酸化方法。
【請求項2】
5000〜40000本の触媒管を有する管束反応器であって、その触媒管は装填物で充填されており、その触媒が活物質として多元素酸化物質を含有し、該物質は、元素Nb及びWの少なくとも1種並びに元素Mo及びVを含有し、この際、触媒活性多元素酸化物質の酸素とは異なる全ての元素の合計量に対する元素Moのモル割合は20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素酸化物質中に含有しているMoと触媒活性多元素酸化物中に含有しているVとのモル比Mo/Vは15:1〜1:1であり、相応するモル比Mo/(WとNbとからの合計量)は80:1〜1:4であり、かつ前記多元素酸化物質は、請求項1に記載の熱処理する方法で得られ、この際アクロレインをアクリル酸にする部分酸化に関連する触媒管の装填は、無作為にサンプリングされた12本の触媒管において算術平均活性と最大活性又は最小活性との間の差が8℃を上まわらないような状態にされており、その際、触媒管装填物の活性の尺度として、個々の触媒管の周りに通される、硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%からの塩浴が有すべき温度が使用され、従って、アクロレイン4.8容量%、酸素7容量%、水蒸気10容量%及び窒素78.2容量%からの反応ガス混合物の1回流過の場合、アクロレイン85Nl/触媒装填物l×hでの触媒装填物の負荷の場合に、この装填された触媒管によって97モル%のアクロレイン変換率が得られる、管束反応器。
【請求項3】
≧135Nl/l・hの触媒装填物のアクロレイン負荷で作動される、請求項2に記載の管束反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−270122(P2010−270122A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148547(P2010−148547)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2006−508232(P2006−508232)の分割
【原出願日】平成16年5月29日(2004.5.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】