アク取り材
【課題】煮物や鍋物などを料理する際、あるいは調理をしながら食する際に煮汁の上面に浮き上がってくるアクや油を効率的に吸着除去できるアク取り材を提供する。
【解決手段】疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部3を備え、アク吸着部3は、面状の素材N1の周縁から切り込みを入れて形成された短冊形状の複数の短冊部5と、複数の短冊部5の根本側を絞ることで形成され、複数の短冊部5の自由端5bを離間させて広げる圧縮構造部7と、を有するアク取り材1Aとした。アク吸着部3の複数の短冊部5は、根本側に圧縮構造部7が形成されることで、自由端5bが互いに離間して拡がり、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着除去することが可能になる。
【解決手段】疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部3を備え、アク吸着部3は、面状の素材N1の周縁から切り込みを入れて形成された短冊形状の複数の短冊部5と、複数の短冊部5の根本側を絞ることで形成され、複数の短冊部5の自由端5bを離間させて広げる圧縮構造部7と、を有するアク取り材1Aとした。アク吸着部3の複数の短冊部5は、根本側に圧縮構造部7が形成されることで、自由端5bが互いに離間して拡がり、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着除去することが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煮物や鍋物などを料理する際に、煮汁の上面に浮き上がってくるアクや油を吸着除去するための調理用アク取り材に関する。
【背景技術】
【0002】
煮物や鍋物、例えば肉じゃがや、しゃぶしゃぶを調理する場合、加熱によって煮汁と一緒にアクや余分な脂が生じ、これらが外観上好ましくないばかりか、食味も低下させていた。このため、一般には調理中に発生したアクや油を玉杓子や金網などで掬い取っていた。しかしながら、これらを使用して効率よくアクや油を除去する事は、手間のかかる作業であり、度重なる操作が必要であった。また、玉杓子を使用する場合は、必要な煮汁まで掬い取ってしまうという問題点があった。
【0003】
これらを解決するために、例えば特許文献1や、特許文献2には、ポリプロピレン等の親油性繊維を円形状にし、これを調理時に使用することで余分なアクや油を取るシートが考案されていた。また、特許文献3には、鍋料理時のアク取りに使用するために、疎水性繊維の束を繊維方向で束ねた非シート状のあく取り材が考案されている。
【特許文献1】実開平1−59551号公報
【特許文献2】特開平8−24149号公報
【特許文献3】特開2002−143005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載のアク取り用のシートは、落し蓋のように、鍋の中で水面上を覆うようにして使用するものであり、調理中に発生するアクを取り除くのには有効であったが、鍋料理のように、調理をしながら食する際に発生する、アクや油を取るために使用することはできなかった。
【0005】
また、特許文献3に記載のアク取り材は、繊維同士が互いに密接に存在するため、繊維間の空隙が少なく、効率的なアク取りを達成するには、未だ不十分であった。その結果として、これら従来の技術では、鍋料理のように、調理をしながら食する際に発生する、アクや油を効率的に吸着除去することは難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、煮物や鍋物などを料理する際、あるいは調理をしながら食する際に煮汁の上面に浮き上がってくるアクや油を効率的に吸着除去できるアク取り材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した従来技術における課題を解決するため、鋭意研究に取り組んだ結果、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係るアク取り材は、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部を備え、アク吸着部は、面状の素材の周縁の少なくとも一部から切り込みを入れて形成された短冊形状の複数の拡開片と、素材における拡開片の根本側を絞ることで形成され、複数の拡開片の自由端を離間させて拡げる絞り部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部を備えるため、煮汁などに存在する非水溶性の凝固したアクを効果的に吸着するだけでなく、調理の際に発生する油も吸着することができる。さらに、アク吸着部は、短冊形状の複数の拡開片を備え、複数の拡開片は、根本側に絞り部が形成されることで、自由端が互いに離間して拡がる。その結果、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着除去することが可能になる。
【0010】
さらに、拡開片は、面状の素材の全周縁に亘って形成され、絞り部は、素材における複数の拡開片で囲まれた内側を絞ることで形成されると好適である。面状の素材の全周縁に形成された全ての拡開片の根本側、すなわち素材における複数の拡開片で囲まれた内側を絞って絞り部を形成するので、絞り部の周りに拡開片が偏り無く拡がり、アクや油を吸着除去する際の作業効率が向上する。
【0011】
さらに、面状の素材は、円形または多角形であり、素材の中心から絞り部までの距離(d1)と、絞り部から拡開片の自由端までの距離(d2)の比率(d1:d2)が、1:20〜10:1であると好適である。この比率にすることで、アクや油を吸着除去するのに十分な拡開片の表面積の確保と、複数の拡開片の重なり防止を両立できる。
【0012】
さらに、絞り部は、面状の素材を複数重ね、拡開片の根本側で複数の素材を圧縮して絞ることで形成されると好適である。複数の面状の素材を拡開片の根本側で圧縮して絞り部を形成するので、複数の拡開片の自由端は重ならずに拡がり、さらに、面状の素材を複数重ねているので、アク吸着部としての強度も高くなり、アクや油を吸着除去する際にアク吸着部の形状が崩れ難くなって作業効率は向上する。
【0013】
さらに、複数重ねられた面状の素材における絞る前の絞り部の厚み(t1)と、絞った後の絞り部の厚み(t2)の比率(t1:t2)が2:1〜200:1であると好適である。この比率にすることで、複数の素材それぞれに形成された拡開片同士は重なり難くなり、煮汁などに接する拡開片の表面積を著しく向上できる。
【0014】
さらに、アク吸着部を保持する柄部を備えると好適である。高温の煮汁などにアク吸着部を漬けてアクや油を吸着除去する際に、柄部を手に持って簡単にアク吸着部を移動させることができ、かつ、アク吸着部の引き上げを簡単に行えるので作業効率が向上する。特に、柄部によってアク吸着部を着脱自在に保持するようにすれば、使用済みのアク吸着部を新たなアク吸着部に簡単に交換できる。
【0015】
さらに、柄部は、絞り部を挟むようにして重なる一対の挟持端部と、一対の挟持端部を支持すると共に、一対の挟持端部の対面方向に弾性力を付与して絞り部を圧縮する弾性支持部と、を有すると好適である。一対の挟持端部で素材を挟み付けて絞ることで絞り部を形成でき、さらに、一対の挟持端部で素材を挟み付けることで、確実にアク吸着部を保持できる。
【0016】
さらに、挟持端部は半筒状であり、一方の挟持端部の湾曲した内側の内周面は、他方の挟持端部の湾曲した外側の外周面に重なり合うと好適である。絞り部は、一方の挟持端部の湾曲した内周面及び他方の挟持端部の湾曲した外周面によって囲まれるように圧縮されるため、拡がりが抑えられる。その結果として、絞り部の拡がりが抑えられる分、拡開片の自由端は拡がり易くなり、アクや油の除去効率は向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、煮物や鍋物などを料理する際、あるいは調理をしながら食する際に煮汁などの上面に浮き上がってくるアクや油を効率的に吸着除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について、以下具体的に説明する。まず、本発明のアク取り材1A(図1及び図2参照)の素材N1に用いる不織布について説明する。素材N1としては、疎水性繊維を有する不織布が好適に用いられる。このような不織布を用いる理由は、煮汁中に存在する非水溶性の凝固したアクを効果的に吸着するだけでなく、調理の際に発生する油も吸着することができるからである。従って、不織布の素材N1となる繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ナイロン系のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維などの疎水性繊維が好ましく、あるいは、これらを1種又は2種以上混合したものであっても良い。また、油の吸着量を制御する場合には、パルプ、レーヨン等を原料とする親水性繊維を上記の疎水性繊維に混合することもできる。
【0019】
次に、アクを効率的に吸着するために、好ましい不織布構造について説明する。不織布のアク吸着性能は、不織布表面の嵩高さが大きく影響する。適度な嵩高さを発現する方法として、不織布形成後に表面を起毛処理することで毛羽立たせる方法や、偏芯型の芯鞘構造繊維を使用して、立体捲縮を発現させる方法があるが、エアレイド法を用いて、比較的太い短繊維を不織布に形成する方法が、嵩高さを付与するために好ましく用いることができる。短繊維をエアレイド法にて不織布に形成することで、繊維が不織布の流れ方向、幅方向、厚み方向へランダムに配置され、異方性の少ない不織布を得ることができる。また、繊度の大きい短繊維を使用することで、繊維間の距離が大きくなり、嵩密度が小さくなる。結果として、不織布表面に嵩高さが生まれ、アクを繊維間に吸着保持するために適した構造となる。具体的な嵩高さを、嵩密度を指標として表すと、好ましくは、0.02g/cm3〜0.20g/cm3であり、より好ましくは0.05g/cm3〜0.10g/cm3である。このような嵩密度とするために使用する繊維の好ましい繊度としては、5dt〜30dtであり、より好ましくは10dt〜20dtである。
【0020】
また、アク取り材1Aに求められる性能として、使用時に鍋からアク取り材1Aを取り出したときに、多量の水が滴り落ちないような適度な水切れ性を持つことが好ましい。上記に示したような繊度の大きい短繊維を、不織布の最表層に使用した嵩高い表層は、繊維間に水が一時的に保持されやすいため、水切れ性が不良となりやすい傾向がある。このため、アク吸着性と水切れ性を両立するために、嵩高い表層の厚みを制御することが好ましい。具体的な厚みとしては、0.05mm〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10mm〜1.00mmである。このような厚みを制御するためには、目付けとして、8g/m2〜35g/m2が好ましく、より好ましくは、10g/m2〜30g/m2である。目付けが8g/m2以上の場合、アク吸着性能を向上しやしく、35g/m2以下の場合、水切れ性を向上しやすくなる。
【0021】
上記にて説明した、アク吸着性の良好な不織布にて、本実施形態に係るアク取り材1Aを形成できるが、鍋料理やしゃぶしゃぶの際には、アクと同時に油も発生するため、アクと油の両方の吸着に好適な構成にした不織布を適用すると好適である。
【0022】
以下に、油を効率的に吸着する不織布の一例を説明する。不織布に吸着した油は、煮汁の中へ戻らないようにするために、繊維間に保持される必要がある。従って、不織布が密な構造になるように、比較的細い繊維を使用して不織布を形成する方が好ましく、具体的には好ましい繊度は1dt〜10dtであり、より好ましくは2dt〜8dtである。また、目付けは12g/m2〜40g/m2が好ましく、より好ましくは、15g/m2〜30g/m2である。この範囲にすることで、繊維間の距離が短くなり、密な構造を形成することに加えて、油を吸着するために十分な厚さが得られるため、油の吸着に適した構造となる。また、使用する繊維は、スパンボンド法などで使用される長繊維を使用しても良いが、繊維が不織布の流れ方向、幅方向、厚み方向へランダムに配置され、異方性の少ない不織布が得られる短繊維を用いた方がより好ましい。
【0023】
上記にて説明した不織布からなる素材N1を形成する方法について説明する。アクと油の両方を吸着するためには、アクを効率的に吸着する不織布と、油を効率的に吸着できる不織布とを、少なくとも1層ずつ積層一体化して、2層以上の不織布からなる素材N1によって形成することが好ましい。特に、アクを効率的に吸着する不織布を両表層に配置し、油を吸着する不織布を芯層に配置した、2種3層構造から構成される素材N1は、アクと油を吸着するために好適に用いることができる。
【0024】
次に、不織布の製造方法について説明する。不織布の形成には、一般的に用いられる公知の方法、例えばスパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法などを用いることができる。その中でも、不織布を積層構造にすることで、アクと油を別々の層で効率的に吸着できる点や、短繊維を使用することで、不織布の流れ方向、幅方向、厚み方向において性能のバラツキが少なくなる点から、特に短繊維を使用したエアレイド法が好ましく用いられる。また、不織布を積層化する際のボンディングには、ニードルパンチやスパンレース、サーマルボンド法を用いることができる。短繊維使用時における繊維の脱落を防ぐために、サーマルボンド法が、好ましい。使用する短繊維は、熱接着性樹脂が短繊維の表面に来るものであれば良く、例えば高融点樹脂が芯となり、熱接着性樹脂が鞘となる芯鞘構造の繊維を使用することができる。この際、鞘がポリエチレンやポリプロピレンであると、アク吸着性と油吸着性の観点から、さらに好ましい。
【0025】
次に、第1実施形態に係るアク取り材1Aの構造について説明する。図1に示されるように、アク取り材1Aは、鍋料理のように、調理をしながら食する際に発生する、アクや油を効率的に吸着するために、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部3を備える。アク吸着部3は、面状の素材N1(図2参照)の周縁E1からスリット(切り込み)SLが入ることによって短冊形状に形成された複数の短冊部(拡開片)5を有する(図2参照)。素材N1は真円形であり、素材N1の全周縁に亘って短冊部5が形成されている。なお、素材N1の形状は、楕円や多角形であってもよく、また、短冊部5は、素材N1の全周縁ではなく、その一部であってもよい。
【0026】
面状の素材N1は、複数の短冊部5の根本5a側が纏められ、さらに絞られており、その結果として圧縮構造部(絞り部)7が形成される。ここでいう圧縮構造部7とは、不織布からなる素材N1の一部をヒートシールなどでの熱融着、または糸などで物理的に縛ることで形成される構造を言う。
【0027】
素材N1は不織布からなり、或る程度のクッション性を有し、一部分を絞るようにして縮めると、他の部分、すなわち押力がかけられていない部分は逆に反り返るように拡がる。本実施形態では、この作用を利用しており、複数の短冊部5の根本5a側に圧縮構造部7を形成することにより、複数の短冊部5の自由端5bは互いが重なることなく拡がって立体構造となる。
【0028】
このような立体構造とする理由は、アクの吸着量が、鍋中のアクと接することができる不織布の表面積に比例しており、より効率的に不織布の表面を活用するためである。すなわち、単純に数枚の不織布を重ねた短冊形状だけでは、不織布同士の重なりが起こり、効率的にアクや脂を吸着できない。これに対して、本実施形態に係るアク取り材1Aでは、複数の短冊部5の根本5a側を纏めるようにして圧縮構造部7を形成し、短冊部5の自由端5bが重ならずに拡がるような立体構造を形成する。その結果、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着する効果をもたらした。
【0029】
図2に示されるように、短冊部5の幅、すなわちスリットSL間の距離(以下、「スリット幅」という)S1は1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは5〜20mmである。この範囲よりスリット幅S1が狭すぎると、短冊部5同士が繊維状に密接に存在して重なり易くなり、逆にスリット幅S1が大きすぎても短冊部5同士が重なり易くなるため、アクや油を効率的に吸着しにくくなる。また、短冊部5の長さ、すなわちスリットの長さ(以下、「スリット長」という)S2は、10mm〜100mmが好ましく、より好ましくは、20mm〜80mmである。この範囲よりスリット長S2が短すぎると、アクや油を吸着するのに十分な短冊部5の面積を確保できず、逆に長すぎると、短冊部5の自由端5b同士が接触し、結果としてアクや油を効率的に吸着しにくくなる。なお、本実施形態に係る短冊部5は、根本5aに比べて自由端5b側の方が幅は拡がっている。スリット幅S1は、最も広くなる箇所での幅を示しており、本実施形態では自由端5bでの幅が相当する。
【0030】
アク吸着部3は、圧縮構造部7からスリットSLの開始部、すなわち短冊部5の自由端5bまでの部分が、原則的に油やアクを吸着する部分となり、圧縮構造部7の位置によって変化する立体構造が、アクや油の吸着性能に寄与する。圧縮構造部7の位置とアク取り材1Aの立体構造との関係を検討した結果、素材N1の中心Oから圧縮構造部7までの距離(d1)と、圧縮構造部7から短冊部5の自由端5bまでの距離(d2)の比率でアク取り材1Aの立体構造を制御できることがわかった。なお、圧縮構造部7は短冊部5の根本側を絞って圧縮することで形成されており、素材N1の中心Oから圧縮構造部7までの距離(d1)とは、素材N1の中心Oから短冊部5の根本5aまでの距離を意味する。
【0031】
アク取り材1Aのアクや油の吸着性能に好適な立体構造を形成するという観点から、中心Oから圧縮構造部7までの距離(d1)と、圧縮構造部(d2)から自由端5bまでの距離(d2)の比率(d1:d2)は、1:20〜10:1の場合が好適である。d1:d2が1:20以下、すなわちd1がこの比率よりも小さくなる場合は、自由端5b同士が重なり、結果としてアクや油を効率的に吸着できなくなる。また、d1:d2が10:1以上の場合、すなわちd1がこの比率よりも大きくなる場合には、短冊部5が短くなり過ぎてしまい、アクや油を吸着するための十分な面積を確保できなくなる。さらに、好ましくは、d1:d2が1:10〜5:1であり、より好ましくは1:5〜3:1である。そして、立体構造の形成に好ましいd1の距離は0.2cm〜10cmであり、より好ましくは1cm〜8cmである。また、d2の距離は1cm〜10cmであり、より好ましくは2cm〜8cmである。
【0032】
なお、本実施形態では真円形の素材N1を利用してアク吸着部3を製作するが、楕円形の素材を利用する場合には2焦点を結ぶ直線の中心が素材の中心となり、多角形の素材を利用する場合には各頂点までの距離が等しい点が素材の中心となる。
【0033】
次に、アク吸着部3の製造方法について説明する。まず、疎水性繊維を有する不織布を製造後、トムソン刃による打ち抜き加工やジグソーによる裁断により、任意形状に加工することで複数の短冊部5が形成された面状の素材N1を成形する。この素材N1に対して、短冊部5の根本5a側に圧縮構造部7を形成する方法としては、熱板シール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどによる不織布の融着や、木綿糸やポリプロピレン糸などで任意の箇所を縛る方法がある。
【0034】
アク取り材1Aによれば、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部3を備えるため、煮汁などに存在する非水溶性の凝固したアクを効果的に吸着するだけでなく、調理の際に発生する油も吸着することができる。さらに、アク吸着部3は、短冊形状の複数の短冊部5を備え、複数の短冊部5は、根本5a側に圧縮構造部7が形成されることで、自由端5bが互いに離間して拡がる。その結果、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着除去することが可能になる。
【0035】
さらに、アク取り材1Aは、素材N1の全周縁に形成された全ての短冊部5の根本5a側、すなわち素材N1における複数の短冊部5で囲まれた内側を絞って圧縮構造部7を形成するので、短冊部5が圧縮構造部7の周りに偏り無く拡がり易くなり、アクや油を吸着除去する際の作業効率が向上する。
【0036】
次に、第2実施形態に係るアク取り材について図3を参照して説明する。本実施形態に係るアク取り材1Bは、アク吸着部3を保持する第1の治具11を備えている点で第1実施形態に係るアク取り材1Aとは相違する。なお、アク取り材1Bについて、第1実施形態に係るアク取り材1Aと同様の要素や構造などについては、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0037】
アク取り材1Bは、アク吸着部3とアク吸着部3を保持する第1の治具(柄部)11とを備えている。第1の治具11は、ポリプロピレン製の中空状の棒状部材である。アク吸着部3を形成する面状の素材N1は、中央の部分が纏められて絞られ、圧縮した状態で第1の治具11の一方の端部(以下、「先端」という)11aに嵌め込まれる。圧縮構造部7は、第1の治具11の先端11aに嵌め込まれることで形成され、圧縮構造部7は、超音波接着によって第1の治具11に固定される。
【0038】
アク取り材1Bは、アク吸着部3を保持する第1の治具11を有するので、高温の煮汁などにアク吸着部3を漬けてアクや油を吸着除去する際に、第1の治具11を手に持ってアク吸着部3を任意の箇所に簡単に動かすことができ、しゃぶしゃぶなどの鍋料理中に浮かぶ油やアクと効率的に接触させる事ができるため、それらの取り除きを極めて効果的に行なうことができ、作業効率が向上する。さらに、アク吸着部3は第1の治具11に固定されているので、菜箸などで不織布を挟みながら使用する形態とは異なり、利用者がアク吸着部3を使用する際に、アク吸着部3を保持するための余分な力が不要であり、操作性が向上する。
【0039】
第1の治具11としては、例えばポリロピレンなどの熱可塑性樹脂を原料とした射出成形品や押出成形品、金属の打ち抜き加工などによって得られる金属加工品、紙の打ち抜きによって得られる紙加工品などが挙げられる。また、第1の治具11とアク吸着部3との接合には、接着剤での接着や木綿糸などで縛る方法、加熱融着、プレス機などで圧縮しながら接着させる圧着などが挙げられるが、第1の治具11とアク吸着部3とが使用中に分離しない限り、接合方法は特に限らない。
【0040】
次に、第3実施形態に係るアク取り材について図4〜図6を参照して説明する。本実施形態に係るアク取り材1Cは、アク吸着部3を保持する第2の治具13を備えている点で第1実施形態に係るアク取り材1Aとは相違する。なお、アク取り材1Cについて、第1実施形態に係るアク取り材1Aと同様の要素や構造などについては、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0041】
アク取り材1Cは、アク吸着部3とアク吸着部3を保持する第2の治具(柄部)13とを備えている。第2の治具13は、熱可塑性樹脂を原料とした支持棒15と支持棒15に装着されるキャップ17とを備えている。短冊部5が形成された素材N1には、支持棒15が貫通する中央穴(図示せず)が形成されている。中央穴は円形孔または十字の切り込みなどで形成される。支持棒15は、後端側から素材N1の中央穴に差し込まれる。支持棒15の先端には、円形に張り出した抑え板部15aが形成されており、抑え板部15aは素材N1の抜け止めとなる。
【0042】
キャップ17は、支持棒15が挿通可能である円筒状のガイド筒17aと、ガイド筒17aよりも拡がっている円筒状の圧縮筒17bとを有する。ガイド筒17aと圧縮筒17bとは同心状に並んで一体成形されており、ガイド筒17aから圧縮筒17bにかけて湾曲して拡径する肩部17cが形成されている。圧縮筒17bの内径は、支持棒15の先端に設けられた抑え板部15aの外径よりも大きくなっており、抑え板部15aは圧縮筒17b内を挿通可能である。
【0043】
図5に示されるように、支持棒15には、既に素材N1が嵌め込まれている。素材N1は、抑え板部15aの手前で開いた状態になっている。キャップ17は、圧縮筒17bを先頭にして支持棒15の後端から差し込まれ、ガイド筒17aが支持棒15に案内されながら支持棒15の先端側まで押し込まれる。すると、キャップ17の圧縮筒17bは、素材N1の中央部分を包み込み、さらに素材N1の中央部分を絞るように纏めながら圧縮する。その結果として、素材N1の短冊部5の根本5a側である中央部分には、圧縮構造部7が形成される。キャップ17は、圧縮筒17b内で絞るように纏められた素材N1の摩擦抵抗により、抜けが防止される。なお、抑え板部15aには湾曲した凸面が形成され、肩部17cには抑え板部15aの凸面に対面する凹面が形成されている。素材N1は、湾曲した凸面と凹面との間で挟み付けられて固定されるため、破れ難くなっている。
【0044】
第2の治具13を用いることで、第1の治具11と同様に、アク吸着部3を任意の箇所に簡単に動かすことができ、しゃぶしゃぶなどの鍋料理中に浮かぶ油やアクと効率的に接触させる事ができるため、それらの取り除きを極めて効果的に行なうことができる。また、第2の治具13では、アク吸着部3を着脱自在に保持するので、第2の治具13を交換することなく、使用済みのアク吸着部3を新たなアク吸着部3に簡単に交換できる。
【0045】
次に、第4実施形態に係るアク取り材について図7〜図9を参照して説明する。本実施形態に係るアク取り材1Dは、アク吸着部3を保持する第3の治具19を備えている点で第1実施形態に係るアク取り材1Aとは相違する。なお、アク取り材1Dについて、第1実施形態に係るアク取り材1Aと同様の要素や構造などについては、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0046】
アク取り材1Dは、アク吸着部3とアク吸着部3を保持する第3の治具(柄部)19とを備えており、素材N1の所定箇所を第3の治具19が絞るように圧縮保持して圧縮構造部7を形成している。
【0047】
第3の治具19は、弾性変形可能な金属製の二枚の棒状の板材Bからなる。二枚の板材Bは、一方の端部(以下、「後端」という)Bb同士が接着や溶接などによって接合され、他方の端部(以下、「先端」という)Ba同士が板材Bの弾性変形によって離間可能になっている。後端Bb側で互いに重なる二枚の板材Bには、中央部分で互いに離間するような“く”の字状の屈曲部Bcが形成されている。屈曲部Bcの先端側(図9参照)は細くなっており、二枚の板材B同士は屈曲部Bcの先端側で互いに交差している。板材Bの屈曲部Bcよりも先端側では互いに係り合うように折り曲げられており、二枚の板材Bの先端Ba同士は、互いに引っ掛かるようにして当接している。
【0048】
板材Bの先端Baには、半筒状、すなわち断面円弧状の挟持端部21,23が形成されている。二枚の板材Bによって一対の挟持端部21,23が形成されており、一方の挟持端部21の幅は、他方の挟持端部23の幅よりも広くなっている(図8(b)参照)。一方の挟持端部21の湾曲した内側の内周面21aは、他方の挟持端部23の湾曲した外側の外周面23aに重なり、一対の挟持端部21,23には、二枚の板材Bの撓みによって対面方向に弾性力がかかっている。二枚の板材Bからなる第3の治具19は、二枚の板材B同士が接合された基端部25、屈曲部Bcが形成された担持部27及び一対の挟持端部21,23を備え、基端部25及び担持部27によって一対の挟持端部21,23を支持する弾性支持部29を構成する。
【0049】
第3の治具19は、通常時は一対の挟持端部21,23が閉じており、担持部27に力を加える事で、一対の挟持端部21,23は離間するように開く(図8(a)参照)。一対の挟持端部21,23を開き、面状の素材N1の中央部分を挟んだ状態で担持部27にかけた力を解くと、弾性力によって面状の素材N1の中央部分、すなわち短冊部5の根本側が絞られて圧縮される。その結果として、圧縮構造部7の形成と同時にアク取り材1Aの保持も可能になる。一般的なピンセット形状の冶具を使用してアク取り材1Aを保持するようにすることもできるが、第3の治具19によれば、アク取り材1Aを保持して使用する時に余分な力が不要となり、使い勝手は良好である。
【0050】
また、一対の挟持端部21,23は、半筒状であるため、圧縮構造部7は、一方の挟持端部21の内周面21a及び他方の挟持端部23の外周面23aによって囲まれるように圧縮されるため、拡がりが抑え込まれる。その結果として、圧縮構造部7の拡がりが抑えられる分、短冊部5の自由端は拡がり易くなり、アクや油の除去効率は向上する。特に本実施形態では、一対の挟持端部21,23は大きさが異なり、大きい側の挟持端部21の内周面21aに小さい側の挟持端部23の外周面23aが重なるようになるため、圧縮構造部7の拡がりは、効果的に抑えられている。
【0051】
次に、図10及び図11を参照し、第5実施形態に係るアク取り材1Eについて説明する。アク取り材1Eは、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部31を備える。アク吸着部31は、複数重ねられた四角形の素材N2によって成形される。素材N2には、両側縁E2,E2からスリット(切り込み)SLが入ることによって短冊形状の複数の短冊部(拡開片)33が形成されている。
【0052】
複数重ねられた素材N2は、短冊部33が形成された両側縁E2,E2に沿った中央部分、すなわち短冊部33の並び方向に沿うようにして短冊部33の根本33a側の部位が圧縮されて絞られている。その結果として、複数枚が重なる素材N2には、圧縮構造部(絞り部)35が形成されている(図10(c)参照)。圧縮構造部35は、素材N2同士を超音波シールなどでの熱融着、または糸などで物理的に縛ることで形成され、圧縮構造部35を形成することで、短冊部33の自由端33bは、互いに離間するように拡がる。
【0053】
アク取り材1Eは、アク取り材1E全体でアクや油を吸着するようになるが、複数枚の素材N2が重なり合っているため、短冊部33同士が重なり易く、その場合には、短冊部33の表面積が少なくなり、アクや油を効率的に吸着できなくなる。そのため、意図的に短冊部33同士を重ならないようにすることが必要である。そこで、圧縮構造部35における圧縮前後の厚み変化と立体形状の関係を検討した結果、短冊部33同士を重ならないようにするためには、圧縮前の厚みと、圧縮後の厚みの比率が重要な因子となることがわかった。具体的には、素材N2を複数枚重ねて圧縮する前の圧縮構造部35の厚みt1と、圧縮後の圧縮構造部35の厚みt2の比率(t1:t2)が2:1〜200:1であり、より好ましくはt1:t2が5:1〜50:1である。この範囲にすることで、圧縮構造部35を形成した時の短冊部33同士の重なりを妨げる効果が大きくなり、表面積が著しく向上する。
【0054】
アク取り材1Eによれば、複数の素材N2を短冊部33の根本側で圧縮して圧縮構造部35を形成するので、複数の短冊部33の自由端33bは重ならずに拡がり、さらに、素材N2を複数重ねているので、アク吸着部31としての強度も高くなり、アクや油を吸着除去する際にアク吸着部の形状が崩れ難くなって作業効率は向上する。
【0055】
なお、アク取り材1Eは、上記の第3の治具19を用いて保持することもできる。第3の治具19を用いて保持することで、アク吸着部3を任意の箇所に簡単に動かすことができ、しゃぶしゃぶなどの鍋料理中に浮かぶ油やアクと効率的に接触させる事ができるため、それらの取り除きを極めて効果的に行なうことができる。
【実施例1】
【0056】
以下、本発明の効果を具体的に説明するために、実施例と比較例について評価した。これらの実施例は、本発明を説明するものであって、決して限定するものではない。なお、評価項目については、下記に説明する。
【0057】
(アク取り効果の評価方法)
直径20cmの鍋に水400mlを加えて加熱し、沸騰中の水の中に、調理時のしゃぶしゃぶと同様の要領で、牛肉150gを約2分間かけて加えた。投入した肉に火が通った事を確認後、鍋に入れた肉を取り出し、本発明にかかるアク取り材を鍋に入れ、箸で挟み動かしながらアクを吸着させた。アクの吸着効果は、アク取り材を鍋から取り出した後の、煮汁に残ったアクの量を目視で判定し、殆んど全てのアクが取り除かれた状態を◎、煮汁の表面に残っているアクがわずかである状態を○、煮汁の表面に残っているアクがわずかとは言えないが、半分程度のアクが取り除かれている状態を△、殆んど効果がなく、煮汁の表面に半分以上のアクが残っている状態を×とした。
【0058】
(不織布の厚み測定方法)
束ねる前の厚み(t1)の測定はJIS L1913 6.1 A法に基づき測定を行なった。また、圧縮した後の厚み(t2)の測定は、圧縮部を切り取り、JIS L1913 6.1 A法に準じて測定を行なった。
【0059】
〔実施例1〕
アク取り材として使用する不織布は、エアレイド法にて3層から構成されるように製造した。両表層を形成する層は、ポリプロピレン芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度11dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを10g/m2とした。また、3層の芯層を形成する層は、ポリエチレンテレフタレート芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度2.2dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを20g/m2とした。なお、アク取り材の作成には、トムソン刃を用いて先に得られた不織布を図1のようにして直径16cm、スリット幅S1は約1cm、スリット長S2は約4cmの円形状に切り抜き、d1:d2が1:1(d1=4cm、d2=4cm)になるように超音波シーラーで融着して束ねることで、第1実施形態に係るアク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0060】
【表1】
【0061】
〔実施例2〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が1:15(d1=0.5cm、d2=7.5cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0062】
〔実施例3〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が8:1(d1=7.1cm、d2=0.9cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0063】
〔実施例4〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が1:25(d1=0.3cm、d2=7.7cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0064】
〔実施例5〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が15:1(d1=7.5cm、d2=0.5cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0065】
〔比較例1〕
実施例1のアク取り材について、スリットを入れ無いことで、短冊部を持たないように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0066】
〔実施例6〕
アク取り材として使用する不織布は、エアレイド法にて3層から構成されるように製造した。両表層を形成する層は、ポリプロピレン芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度11dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを18g/m2とした。また、3層の芯層を形成する層は、ポリエチレンテレフタレート芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度2.2dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを50g/m2とした。なお、アク取り材の作成には、トムソン刃を用いて先に得られた不織布を、図10のようにして、スリット幅S1は約5mm、スリット長S2は約2cm、一辺が5cmの正方形に切り抜いた。得られた不織布を3枚重ね、束ねる前の厚み(t1)と、束ねて圧縮した後の厚み(t2)の比率(t1:t2)を9:1(t1=4.5mm、t2=0.5mm)になるように、超音波シーラーにて、短冊部の近傍を融着することで第2実施形態に係るアク取り材得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【0067】
【表2】
【0068】
〔実施例7〕
アク取り材として使用する不織布は、エアレイド法にて3層から構成されるように製造した。両表層を形成する層は、ポリプロピレン芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度11dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを10g/m2とした。また、3層の芯層を形成する層は、ポリエチレンテレフタレート芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度2.2dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを20g/m2とした。なお、アク取り材の作成には、トムソン刃を用いて先に得られた不織布を、スリット幅5mm、スリット長2cm、一辺が5cmの正方形に切り抜いた(図10参照)。得られた不織布を4枚重ね、束ねる前の厚みt1と、束ねて圧縮した後の厚みt2の比率(t1:t2)を7:1(t1=2.1mm、t2=0.3mm)になるように、超音波シーラーにて、短冊部近傍を融着することで第2実施形態に係るアク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【0069】
〔実施例8〕
実施例6のアク取り材について、t1:t2=3:2(t1=4.5mm、t2=3mm)になるように変更した以外は、実施例6と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【0070】
〔比較例2〕
実施例6のアク取り材について、超音波シールにて短冊部近傍を融着せずに、不織布同士を重ねて圧縮構造を持たないように、箸で挟みながらアク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るアク取り材の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るアク取り材を製造する際に利用される素材の平面図である。
【図3】第2実施形態に係るアク取り材の平面図である。
【図4】第3実施形態に係るアク取り材の平面図である。
【図5】第2の治具の先端を示し、圧縮構造部を形成する前の状態を示す断面図である。
【図6】第2の治具の先端を示し、圧縮構造部を形成した状態を示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係るアク取り材の平面図である。
【図8】第3の治具を示し(a)は平面図、(b)は(a)図のb−b線に沿った断面図である。
【図9】第4実施形態に係るアク取り材の斜視図である。
【図10】第5実施形態に係るアク取り材を製造する際に利用される素材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は圧縮構造部を形成した側面図である。
【図11】第5実施形態に係るアク取り材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B,1C,1D,1E…アク取り材、3,31…アク吸着部、5,33…短冊部(拡開片)、5a,33a…短冊部の根本、5b,33b…短冊部の自由端、7,35…圧縮構造部(絞り部)、11…第1の治具(柄部)、13…第2の治具(柄部)、19…第3の治具(柄部)、21…一方の挟持端部、23…他方の挟持端部、29…弾性支持部、N1,N2…素材、O…素材の中心、SL…スリット(切り込み)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、煮物や鍋物などを料理する際に、煮汁の上面に浮き上がってくるアクや油を吸着除去するための調理用アク取り材に関する。
【背景技術】
【0002】
煮物や鍋物、例えば肉じゃがや、しゃぶしゃぶを調理する場合、加熱によって煮汁と一緒にアクや余分な脂が生じ、これらが外観上好ましくないばかりか、食味も低下させていた。このため、一般には調理中に発生したアクや油を玉杓子や金網などで掬い取っていた。しかしながら、これらを使用して効率よくアクや油を除去する事は、手間のかかる作業であり、度重なる操作が必要であった。また、玉杓子を使用する場合は、必要な煮汁まで掬い取ってしまうという問題点があった。
【0003】
これらを解決するために、例えば特許文献1や、特許文献2には、ポリプロピレン等の親油性繊維を円形状にし、これを調理時に使用することで余分なアクや油を取るシートが考案されていた。また、特許文献3には、鍋料理時のアク取りに使用するために、疎水性繊維の束を繊維方向で束ねた非シート状のあく取り材が考案されている。
【特許文献1】実開平1−59551号公報
【特許文献2】特開平8−24149号公報
【特許文献3】特開2002−143005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載のアク取り用のシートは、落し蓋のように、鍋の中で水面上を覆うようにして使用するものであり、調理中に発生するアクを取り除くのには有効であったが、鍋料理のように、調理をしながら食する際に発生する、アクや油を取るために使用することはできなかった。
【0005】
また、特許文献3に記載のアク取り材は、繊維同士が互いに密接に存在するため、繊維間の空隙が少なく、効率的なアク取りを達成するには、未だ不十分であった。その結果として、これら従来の技術では、鍋料理のように、調理をしながら食する際に発生する、アクや油を効率的に吸着除去することは難しかった。
【0006】
そこで、本発明は、煮物や鍋物などを料理する際、あるいは調理をしながら食する際に煮汁の上面に浮き上がってくるアクや油を効率的に吸着除去できるアク取り材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した従来技術における課題を解決するため、鋭意研究に取り組んだ結果、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係るアク取り材は、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部を備え、アク吸着部は、面状の素材の周縁の少なくとも一部から切り込みを入れて形成された短冊形状の複数の拡開片と、素材における拡開片の根本側を絞ることで形成され、複数の拡開片の自由端を離間させて拡げる絞り部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部を備えるため、煮汁などに存在する非水溶性の凝固したアクを効果的に吸着するだけでなく、調理の際に発生する油も吸着することができる。さらに、アク吸着部は、短冊形状の複数の拡開片を備え、複数の拡開片は、根本側に絞り部が形成されることで、自由端が互いに離間して拡がる。その結果、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着除去することが可能になる。
【0010】
さらに、拡開片は、面状の素材の全周縁に亘って形成され、絞り部は、素材における複数の拡開片で囲まれた内側を絞ることで形成されると好適である。面状の素材の全周縁に形成された全ての拡開片の根本側、すなわち素材における複数の拡開片で囲まれた内側を絞って絞り部を形成するので、絞り部の周りに拡開片が偏り無く拡がり、アクや油を吸着除去する際の作業効率が向上する。
【0011】
さらに、面状の素材は、円形または多角形であり、素材の中心から絞り部までの距離(d1)と、絞り部から拡開片の自由端までの距離(d2)の比率(d1:d2)が、1:20〜10:1であると好適である。この比率にすることで、アクや油を吸着除去するのに十分な拡開片の表面積の確保と、複数の拡開片の重なり防止を両立できる。
【0012】
さらに、絞り部は、面状の素材を複数重ね、拡開片の根本側で複数の素材を圧縮して絞ることで形成されると好適である。複数の面状の素材を拡開片の根本側で圧縮して絞り部を形成するので、複数の拡開片の自由端は重ならずに拡がり、さらに、面状の素材を複数重ねているので、アク吸着部としての強度も高くなり、アクや油を吸着除去する際にアク吸着部の形状が崩れ難くなって作業効率は向上する。
【0013】
さらに、複数重ねられた面状の素材における絞る前の絞り部の厚み(t1)と、絞った後の絞り部の厚み(t2)の比率(t1:t2)が2:1〜200:1であると好適である。この比率にすることで、複数の素材それぞれに形成された拡開片同士は重なり難くなり、煮汁などに接する拡開片の表面積を著しく向上できる。
【0014】
さらに、アク吸着部を保持する柄部を備えると好適である。高温の煮汁などにアク吸着部を漬けてアクや油を吸着除去する際に、柄部を手に持って簡単にアク吸着部を移動させることができ、かつ、アク吸着部の引き上げを簡単に行えるので作業効率が向上する。特に、柄部によってアク吸着部を着脱自在に保持するようにすれば、使用済みのアク吸着部を新たなアク吸着部に簡単に交換できる。
【0015】
さらに、柄部は、絞り部を挟むようにして重なる一対の挟持端部と、一対の挟持端部を支持すると共に、一対の挟持端部の対面方向に弾性力を付与して絞り部を圧縮する弾性支持部と、を有すると好適である。一対の挟持端部で素材を挟み付けて絞ることで絞り部を形成でき、さらに、一対の挟持端部で素材を挟み付けることで、確実にアク吸着部を保持できる。
【0016】
さらに、挟持端部は半筒状であり、一方の挟持端部の湾曲した内側の内周面は、他方の挟持端部の湾曲した外側の外周面に重なり合うと好適である。絞り部は、一方の挟持端部の湾曲した内周面及び他方の挟持端部の湾曲した外周面によって囲まれるように圧縮されるため、拡がりが抑えられる。その結果として、絞り部の拡がりが抑えられる分、拡開片の自由端は拡がり易くなり、アクや油の除去効率は向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、煮物や鍋物などを料理する際、あるいは調理をしながら食する際に煮汁などの上面に浮き上がってくるアクや油を効率的に吸着除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について、以下具体的に説明する。まず、本発明のアク取り材1A(図1及び図2参照)の素材N1に用いる不織布について説明する。素材N1としては、疎水性繊維を有する不織布が好適に用いられる。このような不織布を用いる理由は、煮汁中に存在する非水溶性の凝固したアクを効果的に吸着するだけでなく、調理の際に発生する油も吸着することができるからである。従って、不織布の素材N1となる繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ナイロン系のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維などの疎水性繊維が好ましく、あるいは、これらを1種又は2種以上混合したものであっても良い。また、油の吸着量を制御する場合には、パルプ、レーヨン等を原料とする親水性繊維を上記の疎水性繊維に混合することもできる。
【0019】
次に、アクを効率的に吸着するために、好ましい不織布構造について説明する。不織布のアク吸着性能は、不織布表面の嵩高さが大きく影響する。適度な嵩高さを発現する方法として、不織布形成後に表面を起毛処理することで毛羽立たせる方法や、偏芯型の芯鞘構造繊維を使用して、立体捲縮を発現させる方法があるが、エアレイド法を用いて、比較的太い短繊維を不織布に形成する方法が、嵩高さを付与するために好ましく用いることができる。短繊維をエアレイド法にて不織布に形成することで、繊維が不織布の流れ方向、幅方向、厚み方向へランダムに配置され、異方性の少ない不織布を得ることができる。また、繊度の大きい短繊維を使用することで、繊維間の距離が大きくなり、嵩密度が小さくなる。結果として、不織布表面に嵩高さが生まれ、アクを繊維間に吸着保持するために適した構造となる。具体的な嵩高さを、嵩密度を指標として表すと、好ましくは、0.02g/cm3〜0.20g/cm3であり、より好ましくは0.05g/cm3〜0.10g/cm3である。このような嵩密度とするために使用する繊維の好ましい繊度としては、5dt〜30dtであり、より好ましくは10dt〜20dtである。
【0020】
また、アク取り材1Aに求められる性能として、使用時に鍋からアク取り材1Aを取り出したときに、多量の水が滴り落ちないような適度な水切れ性を持つことが好ましい。上記に示したような繊度の大きい短繊維を、不織布の最表層に使用した嵩高い表層は、繊維間に水が一時的に保持されやすいため、水切れ性が不良となりやすい傾向がある。このため、アク吸着性と水切れ性を両立するために、嵩高い表層の厚みを制御することが好ましい。具体的な厚みとしては、0.05mm〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10mm〜1.00mmである。このような厚みを制御するためには、目付けとして、8g/m2〜35g/m2が好ましく、より好ましくは、10g/m2〜30g/m2である。目付けが8g/m2以上の場合、アク吸着性能を向上しやしく、35g/m2以下の場合、水切れ性を向上しやすくなる。
【0021】
上記にて説明した、アク吸着性の良好な不織布にて、本実施形態に係るアク取り材1Aを形成できるが、鍋料理やしゃぶしゃぶの際には、アクと同時に油も発生するため、アクと油の両方の吸着に好適な構成にした不織布を適用すると好適である。
【0022】
以下に、油を効率的に吸着する不織布の一例を説明する。不織布に吸着した油は、煮汁の中へ戻らないようにするために、繊維間に保持される必要がある。従って、不織布が密な構造になるように、比較的細い繊維を使用して不織布を形成する方が好ましく、具体的には好ましい繊度は1dt〜10dtであり、より好ましくは2dt〜8dtである。また、目付けは12g/m2〜40g/m2が好ましく、より好ましくは、15g/m2〜30g/m2である。この範囲にすることで、繊維間の距離が短くなり、密な構造を形成することに加えて、油を吸着するために十分な厚さが得られるため、油の吸着に適した構造となる。また、使用する繊維は、スパンボンド法などで使用される長繊維を使用しても良いが、繊維が不織布の流れ方向、幅方向、厚み方向へランダムに配置され、異方性の少ない不織布が得られる短繊維を用いた方がより好ましい。
【0023】
上記にて説明した不織布からなる素材N1を形成する方法について説明する。アクと油の両方を吸着するためには、アクを効率的に吸着する不織布と、油を効率的に吸着できる不織布とを、少なくとも1層ずつ積層一体化して、2層以上の不織布からなる素材N1によって形成することが好ましい。特に、アクを効率的に吸着する不織布を両表層に配置し、油を吸着する不織布を芯層に配置した、2種3層構造から構成される素材N1は、アクと油を吸着するために好適に用いることができる。
【0024】
次に、不織布の製造方法について説明する。不織布の形成には、一般的に用いられる公知の方法、例えばスパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法などを用いることができる。その中でも、不織布を積層構造にすることで、アクと油を別々の層で効率的に吸着できる点や、短繊維を使用することで、不織布の流れ方向、幅方向、厚み方向において性能のバラツキが少なくなる点から、特に短繊維を使用したエアレイド法が好ましく用いられる。また、不織布を積層化する際のボンディングには、ニードルパンチやスパンレース、サーマルボンド法を用いることができる。短繊維使用時における繊維の脱落を防ぐために、サーマルボンド法が、好ましい。使用する短繊維は、熱接着性樹脂が短繊維の表面に来るものであれば良く、例えば高融点樹脂が芯となり、熱接着性樹脂が鞘となる芯鞘構造の繊維を使用することができる。この際、鞘がポリエチレンやポリプロピレンであると、アク吸着性と油吸着性の観点から、さらに好ましい。
【0025】
次に、第1実施形態に係るアク取り材1Aの構造について説明する。図1に示されるように、アク取り材1Aは、鍋料理のように、調理をしながら食する際に発生する、アクや油を効率的に吸着するために、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部3を備える。アク吸着部3は、面状の素材N1(図2参照)の周縁E1からスリット(切り込み)SLが入ることによって短冊形状に形成された複数の短冊部(拡開片)5を有する(図2参照)。素材N1は真円形であり、素材N1の全周縁に亘って短冊部5が形成されている。なお、素材N1の形状は、楕円や多角形であってもよく、また、短冊部5は、素材N1の全周縁ではなく、その一部であってもよい。
【0026】
面状の素材N1は、複数の短冊部5の根本5a側が纏められ、さらに絞られており、その結果として圧縮構造部(絞り部)7が形成される。ここでいう圧縮構造部7とは、不織布からなる素材N1の一部をヒートシールなどでの熱融着、または糸などで物理的に縛ることで形成される構造を言う。
【0027】
素材N1は不織布からなり、或る程度のクッション性を有し、一部分を絞るようにして縮めると、他の部分、すなわち押力がかけられていない部分は逆に反り返るように拡がる。本実施形態では、この作用を利用しており、複数の短冊部5の根本5a側に圧縮構造部7を形成することにより、複数の短冊部5の自由端5bは互いが重なることなく拡がって立体構造となる。
【0028】
このような立体構造とする理由は、アクの吸着量が、鍋中のアクと接することができる不織布の表面積に比例しており、より効率的に不織布の表面を活用するためである。すなわち、単純に数枚の不織布を重ねた短冊形状だけでは、不織布同士の重なりが起こり、効率的にアクや脂を吸着できない。これに対して、本実施形態に係るアク取り材1Aでは、複数の短冊部5の根本5a側を纏めるようにして圧縮構造部7を形成し、短冊部5の自由端5bが重ならずに拡がるような立体構造を形成する。その結果、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着する効果をもたらした。
【0029】
図2に示されるように、短冊部5の幅、すなわちスリットSL間の距離(以下、「スリット幅」という)S1は1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは5〜20mmである。この範囲よりスリット幅S1が狭すぎると、短冊部5同士が繊維状に密接に存在して重なり易くなり、逆にスリット幅S1が大きすぎても短冊部5同士が重なり易くなるため、アクや油を効率的に吸着しにくくなる。また、短冊部5の長さ、すなわちスリットの長さ(以下、「スリット長」という)S2は、10mm〜100mmが好ましく、より好ましくは、20mm〜80mmである。この範囲よりスリット長S2が短すぎると、アクや油を吸着するのに十分な短冊部5の面積を確保できず、逆に長すぎると、短冊部5の自由端5b同士が接触し、結果としてアクや油を効率的に吸着しにくくなる。なお、本実施形態に係る短冊部5は、根本5aに比べて自由端5b側の方が幅は拡がっている。スリット幅S1は、最も広くなる箇所での幅を示しており、本実施形態では自由端5bでの幅が相当する。
【0030】
アク吸着部3は、圧縮構造部7からスリットSLの開始部、すなわち短冊部5の自由端5bまでの部分が、原則的に油やアクを吸着する部分となり、圧縮構造部7の位置によって変化する立体構造が、アクや油の吸着性能に寄与する。圧縮構造部7の位置とアク取り材1Aの立体構造との関係を検討した結果、素材N1の中心Oから圧縮構造部7までの距離(d1)と、圧縮構造部7から短冊部5の自由端5bまでの距離(d2)の比率でアク取り材1Aの立体構造を制御できることがわかった。なお、圧縮構造部7は短冊部5の根本側を絞って圧縮することで形成されており、素材N1の中心Oから圧縮構造部7までの距離(d1)とは、素材N1の中心Oから短冊部5の根本5aまでの距離を意味する。
【0031】
アク取り材1Aのアクや油の吸着性能に好適な立体構造を形成するという観点から、中心Oから圧縮構造部7までの距離(d1)と、圧縮構造部(d2)から自由端5bまでの距離(d2)の比率(d1:d2)は、1:20〜10:1の場合が好適である。d1:d2が1:20以下、すなわちd1がこの比率よりも小さくなる場合は、自由端5b同士が重なり、結果としてアクや油を効率的に吸着できなくなる。また、d1:d2が10:1以上の場合、すなわちd1がこの比率よりも大きくなる場合には、短冊部5が短くなり過ぎてしまい、アクや油を吸着するための十分な面積を確保できなくなる。さらに、好ましくは、d1:d2が1:10〜5:1であり、より好ましくは1:5〜3:1である。そして、立体構造の形成に好ましいd1の距離は0.2cm〜10cmであり、より好ましくは1cm〜8cmである。また、d2の距離は1cm〜10cmであり、より好ましくは2cm〜8cmである。
【0032】
なお、本実施形態では真円形の素材N1を利用してアク吸着部3を製作するが、楕円形の素材を利用する場合には2焦点を結ぶ直線の中心が素材の中心となり、多角形の素材を利用する場合には各頂点までの距離が等しい点が素材の中心となる。
【0033】
次に、アク吸着部3の製造方法について説明する。まず、疎水性繊維を有する不織布を製造後、トムソン刃による打ち抜き加工やジグソーによる裁断により、任意形状に加工することで複数の短冊部5が形成された面状の素材N1を成形する。この素材N1に対して、短冊部5の根本5a側に圧縮構造部7を形成する方法としては、熱板シール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどによる不織布の融着や、木綿糸やポリプロピレン糸などで任意の箇所を縛る方法がある。
【0034】
アク取り材1Aによれば、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部3を備えるため、煮汁などに存在する非水溶性の凝固したアクを効果的に吸着するだけでなく、調理の際に発生する油も吸着することができる。さらに、アク吸着部3は、短冊形状の複数の短冊部5を備え、複数の短冊部5は、根本5a側に圧縮構造部7が形成されることで、自由端5bが互いに離間して拡がる。その結果、アクや油の吸着に活用できる不織布の表面積が著しく向上し、調理の際に発生するアクや油を効率的に吸着除去することが可能になる。
【0035】
さらに、アク取り材1Aは、素材N1の全周縁に形成された全ての短冊部5の根本5a側、すなわち素材N1における複数の短冊部5で囲まれた内側を絞って圧縮構造部7を形成するので、短冊部5が圧縮構造部7の周りに偏り無く拡がり易くなり、アクや油を吸着除去する際の作業効率が向上する。
【0036】
次に、第2実施形態に係るアク取り材について図3を参照して説明する。本実施形態に係るアク取り材1Bは、アク吸着部3を保持する第1の治具11を備えている点で第1実施形態に係るアク取り材1Aとは相違する。なお、アク取り材1Bについて、第1実施形態に係るアク取り材1Aと同様の要素や構造などについては、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0037】
アク取り材1Bは、アク吸着部3とアク吸着部3を保持する第1の治具(柄部)11とを備えている。第1の治具11は、ポリプロピレン製の中空状の棒状部材である。アク吸着部3を形成する面状の素材N1は、中央の部分が纏められて絞られ、圧縮した状態で第1の治具11の一方の端部(以下、「先端」という)11aに嵌め込まれる。圧縮構造部7は、第1の治具11の先端11aに嵌め込まれることで形成され、圧縮構造部7は、超音波接着によって第1の治具11に固定される。
【0038】
アク取り材1Bは、アク吸着部3を保持する第1の治具11を有するので、高温の煮汁などにアク吸着部3を漬けてアクや油を吸着除去する際に、第1の治具11を手に持ってアク吸着部3を任意の箇所に簡単に動かすことができ、しゃぶしゃぶなどの鍋料理中に浮かぶ油やアクと効率的に接触させる事ができるため、それらの取り除きを極めて効果的に行なうことができ、作業効率が向上する。さらに、アク吸着部3は第1の治具11に固定されているので、菜箸などで不織布を挟みながら使用する形態とは異なり、利用者がアク吸着部3を使用する際に、アク吸着部3を保持するための余分な力が不要であり、操作性が向上する。
【0039】
第1の治具11としては、例えばポリロピレンなどの熱可塑性樹脂を原料とした射出成形品や押出成形品、金属の打ち抜き加工などによって得られる金属加工品、紙の打ち抜きによって得られる紙加工品などが挙げられる。また、第1の治具11とアク吸着部3との接合には、接着剤での接着や木綿糸などで縛る方法、加熱融着、プレス機などで圧縮しながら接着させる圧着などが挙げられるが、第1の治具11とアク吸着部3とが使用中に分離しない限り、接合方法は特に限らない。
【0040】
次に、第3実施形態に係るアク取り材について図4〜図6を参照して説明する。本実施形態に係るアク取り材1Cは、アク吸着部3を保持する第2の治具13を備えている点で第1実施形態に係るアク取り材1Aとは相違する。なお、アク取り材1Cについて、第1実施形態に係るアク取り材1Aと同様の要素や構造などについては、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0041】
アク取り材1Cは、アク吸着部3とアク吸着部3を保持する第2の治具(柄部)13とを備えている。第2の治具13は、熱可塑性樹脂を原料とした支持棒15と支持棒15に装着されるキャップ17とを備えている。短冊部5が形成された素材N1には、支持棒15が貫通する中央穴(図示せず)が形成されている。中央穴は円形孔または十字の切り込みなどで形成される。支持棒15は、後端側から素材N1の中央穴に差し込まれる。支持棒15の先端には、円形に張り出した抑え板部15aが形成されており、抑え板部15aは素材N1の抜け止めとなる。
【0042】
キャップ17は、支持棒15が挿通可能である円筒状のガイド筒17aと、ガイド筒17aよりも拡がっている円筒状の圧縮筒17bとを有する。ガイド筒17aと圧縮筒17bとは同心状に並んで一体成形されており、ガイド筒17aから圧縮筒17bにかけて湾曲して拡径する肩部17cが形成されている。圧縮筒17bの内径は、支持棒15の先端に設けられた抑え板部15aの外径よりも大きくなっており、抑え板部15aは圧縮筒17b内を挿通可能である。
【0043】
図5に示されるように、支持棒15には、既に素材N1が嵌め込まれている。素材N1は、抑え板部15aの手前で開いた状態になっている。キャップ17は、圧縮筒17bを先頭にして支持棒15の後端から差し込まれ、ガイド筒17aが支持棒15に案内されながら支持棒15の先端側まで押し込まれる。すると、キャップ17の圧縮筒17bは、素材N1の中央部分を包み込み、さらに素材N1の中央部分を絞るように纏めながら圧縮する。その結果として、素材N1の短冊部5の根本5a側である中央部分には、圧縮構造部7が形成される。キャップ17は、圧縮筒17b内で絞るように纏められた素材N1の摩擦抵抗により、抜けが防止される。なお、抑え板部15aには湾曲した凸面が形成され、肩部17cには抑え板部15aの凸面に対面する凹面が形成されている。素材N1は、湾曲した凸面と凹面との間で挟み付けられて固定されるため、破れ難くなっている。
【0044】
第2の治具13を用いることで、第1の治具11と同様に、アク吸着部3を任意の箇所に簡単に動かすことができ、しゃぶしゃぶなどの鍋料理中に浮かぶ油やアクと効率的に接触させる事ができるため、それらの取り除きを極めて効果的に行なうことができる。また、第2の治具13では、アク吸着部3を着脱自在に保持するので、第2の治具13を交換することなく、使用済みのアク吸着部3を新たなアク吸着部3に簡単に交換できる。
【0045】
次に、第4実施形態に係るアク取り材について図7〜図9を参照して説明する。本実施形態に係るアク取り材1Dは、アク吸着部3を保持する第3の治具19を備えている点で第1実施形態に係るアク取り材1Aとは相違する。なお、アク取り材1Dについて、第1実施形態に係るアク取り材1Aと同様の要素や構造などについては、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0046】
アク取り材1Dは、アク吸着部3とアク吸着部3を保持する第3の治具(柄部)19とを備えており、素材N1の所定箇所を第3の治具19が絞るように圧縮保持して圧縮構造部7を形成している。
【0047】
第3の治具19は、弾性変形可能な金属製の二枚の棒状の板材Bからなる。二枚の板材Bは、一方の端部(以下、「後端」という)Bb同士が接着や溶接などによって接合され、他方の端部(以下、「先端」という)Ba同士が板材Bの弾性変形によって離間可能になっている。後端Bb側で互いに重なる二枚の板材Bには、中央部分で互いに離間するような“く”の字状の屈曲部Bcが形成されている。屈曲部Bcの先端側(図9参照)は細くなっており、二枚の板材B同士は屈曲部Bcの先端側で互いに交差している。板材Bの屈曲部Bcよりも先端側では互いに係り合うように折り曲げられており、二枚の板材Bの先端Ba同士は、互いに引っ掛かるようにして当接している。
【0048】
板材Bの先端Baには、半筒状、すなわち断面円弧状の挟持端部21,23が形成されている。二枚の板材Bによって一対の挟持端部21,23が形成されており、一方の挟持端部21の幅は、他方の挟持端部23の幅よりも広くなっている(図8(b)参照)。一方の挟持端部21の湾曲した内側の内周面21aは、他方の挟持端部23の湾曲した外側の外周面23aに重なり、一対の挟持端部21,23には、二枚の板材Bの撓みによって対面方向に弾性力がかかっている。二枚の板材Bからなる第3の治具19は、二枚の板材B同士が接合された基端部25、屈曲部Bcが形成された担持部27及び一対の挟持端部21,23を備え、基端部25及び担持部27によって一対の挟持端部21,23を支持する弾性支持部29を構成する。
【0049】
第3の治具19は、通常時は一対の挟持端部21,23が閉じており、担持部27に力を加える事で、一対の挟持端部21,23は離間するように開く(図8(a)参照)。一対の挟持端部21,23を開き、面状の素材N1の中央部分を挟んだ状態で担持部27にかけた力を解くと、弾性力によって面状の素材N1の中央部分、すなわち短冊部5の根本側が絞られて圧縮される。その結果として、圧縮構造部7の形成と同時にアク取り材1Aの保持も可能になる。一般的なピンセット形状の冶具を使用してアク取り材1Aを保持するようにすることもできるが、第3の治具19によれば、アク取り材1Aを保持して使用する時に余分な力が不要となり、使い勝手は良好である。
【0050】
また、一対の挟持端部21,23は、半筒状であるため、圧縮構造部7は、一方の挟持端部21の内周面21a及び他方の挟持端部23の外周面23aによって囲まれるように圧縮されるため、拡がりが抑え込まれる。その結果として、圧縮構造部7の拡がりが抑えられる分、短冊部5の自由端は拡がり易くなり、アクや油の除去効率は向上する。特に本実施形態では、一対の挟持端部21,23は大きさが異なり、大きい側の挟持端部21の内周面21aに小さい側の挟持端部23の外周面23aが重なるようになるため、圧縮構造部7の拡がりは、効果的に抑えられている。
【0051】
次に、図10及び図11を参照し、第5実施形態に係るアク取り材1Eについて説明する。アク取り材1Eは、疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部31を備える。アク吸着部31は、複数重ねられた四角形の素材N2によって成形される。素材N2には、両側縁E2,E2からスリット(切り込み)SLが入ることによって短冊形状の複数の短冊部(拡開片)33が形成されている。
【0052】
複数重ねられた素材N2は、短冊部33が形成された両側縁E2,E2に沿った中央部分、すなわち短冊部33の並び方向に沿うようにして短冊部33の根本33a側の部位が圧縮されて絞られている。その結果として、複数枚が重なる素材N2には、圧縮構造部(絞り部)35が形成されている(図10(c)参照)。圧縮構造部35は、素材N2同士を超音波シールなどでの熱融着、または糸などで物理的に縛ることで形成され、圧縮構造部35を形成することで、短冊部33の自由端33bは、互いに離間するように拡がる。
【0053】
アク取り材1Eは、アク取り材1E全体でアクや油を吸着するようになるが、複数枚の素材N2が重なり合っているため、短冊部33同士が重なり易く、その場合には、短冊部33の表面積が少なくなり、アクや油を効率的に吸着できなくなる。そのため、意図的に短冊部33同士を重ならないようにすることが必要である。そこで、圧縮構造部35における圧縮前後の厚み変化と立体形状の関係を検討した結果、短冊部33同士を重ならないようにするためには、圧縮前の厚みと、圧縮後の厚みの比率が重要な因子となることがわかった。具体的には、素材N2を複数枚重ねて圧縮する前の圧縮構造部35の厚みt1と、圧縮後の圧縮構造部35の厚みt2の比率(t1:t2)が2:1〜200:1であり、より好ましくはt1:t2が5:1〜50:1である。この範囲にすることで、圧縮構造部35を形成した時の短冊部33同士の重なりを妨げる効果が大きくなり、表面積が著しく向上する。
【0054】
アク取り材1Eによれば、複数の素材N2を短冊部33の根本側で圧縮して圧縮構造部35を形成するので、複数の短冊部33の自由端33bは重ならずに拡がり、さらに、素材N2を複数重ねているので、アク吸着部31としての強度も高くなり、アクや油を吸着除去する際にアク吸着部の形状が崩れ難くなって作業効率は向上する。
【0055】
なお、アク取り材1Eは、上記の第3の治具19を用いて保持することもできる。第3の治具19を用いて保持することで、アク吸着部3を任意の箇所に簡単に動かすことができ、しゃぶしゃぶなどの鍋料理中に浮かぶ油やアクと効率的に接触させる事ができるため、それらの取り除きを極めて効果的に行なうことができる。
【実施例1】
【0056】
以下、本発明の効果を具体的に説明するために、実施例と比較例について評価した。これらの実施例は、本発明を説明するものであって、決して限定するものではない。なお、評価項目については、下記に説明する。
【0057】
(アク取り効果の評価方法)
直径20cmの鍋に水400mlを加えて加熱し、沸騰中の水の中に、調理時のしゃぶしゃぶと同様の要領で、牛肉150gを約2分間かけて加えた。投入した肉に火が通った事を確認後、鍋に入れた肉を取り出し、本発明にかかるアク取り材を鍋に入れ、箸で挟み動かしながらアクを吸着させた。アクの吸着効果は、アク取り材を鍋から取り出した後の、煮汁に残ったアクの量を目視で判定し、殆んど全てのアクが取り除かれた状態を◎、煮汁の表面に残っているアクがわずかである状態を○、煮汁の表面に残っているアクがわずかとは言えないが、半分程度のアクが取り除かれている状態を△、殆んど効果がなく、煮汁の表面に半分以上のアクが残っている状態を×とした。
【0058】
(不織布の厚み測定方法)
束ねる前の厚み(t1)の測定はJIS L1913 6.1 A法に基づき測定を行なった。また、圧縮した後の厚み(t2)の測定は、圧縮部を切り取り、JIS L1913 6.1 A法に準じて測定を行なった。
【0059】
〔実施例1〕
アク取り材として使用する不織布は、エアレイド法にて3層から構成されるように製造した。両表層を形成する層は、ポリプロピレン芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度11dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを10g/m2とした。また、3層の芯層を形成する層は、ポリエチレンテレフタレート芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度2.2dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを20g/m2とした。なお、アク取り材の作成には、トムソン刃を用いて先に得られた不織布を図1のようにして直径16cm、スリット幅S1は約1cm、スリット長S2は約4cmの円形状に切り抜き、d1:d2が1:1(d1=4cm、d2=4cm)になるように超音波シーラーで融着して束ねることで、第1実施形態に係るアク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0060】
【表1】
【0061】
〔実施例2〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が1:15(d1=0.5cm、d2=7.5cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0062】
〔実施例3〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が8:1(d1=7.1cm、d2=0.9cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0063】
〔実施例4〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が1:25(d1=0.3cm、d2=7.7cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0064】
〔実施例5〕
実施例1のアク取り材について、d1:d2が15:1(d1=7.5cm、d2=0.5cm)になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0065】
〔比較例1〕
実施例1のアク取り材について、スリットを入れ無いことで、短冊部を持たないように変更した以外は、実施例1と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表1に示すような結果が得られた。
【0066】
〔実施例6〕
アク取り材として使用する不織布は、エアレイド法にて3層から構成されるように製造した。両表層を形成する層は、ポリプロピレン芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度11dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを18g/m2とした。また、3層の芯層を形成する層は、ポリエチレンテレフタレート芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度2.2dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを50g/m2とした。なお、アク取り材の作成には、トムソン刃を用いて先に得られた不織布を、図10のようにして、スリット幅S1は約5mm、スリット長S2は約2cm、一辺が5cmの正方形に切り抜いた。得られた不織布を3枚重ね、束ねる前の厚み(t1)と、束ねて圧縮した後の厚み(t2)の比率(t1:t2)を9:1(t1=4.5mm、t2=0.5mm)になるように、超音波シーラーにて、短冊部の近傍を融着することで第2実施形態に係るアク取り材得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【0067】
【表2】
【0068】
〔実施例7〕
アク取り材として使用する不織布は、エアレイド法にて3層から構成されるように製造した。両表層を形成する層は、ポリプロピレン芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度11dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを10g/m2とした。また、3層の芯層を形成する層は、ポリエチレンテレフタレート芯材の表面にポリエチレンが被覆された芯鞘構造の短繊維(繊度2.2dt、繊維長5mm)を使用し、目付けを20g/m2とした。なお、アク取り材の作成には、トムソン刃を用いて先に得られた不織布を、スリット幅5mm、スリット長2cm、一辺が5cmの正方形に切り抜いた(図10参照)。得られた不織布を4枚重ね、束ねる前の厚みt1と、束ねて圧縮した後の厚みt2の比率(t1:t2)を7:1(t1=2.1mm、t2=0.3mm)になるように、超音波シーラーにて、短冊部近傍を融着することで第2実施形態に係るアク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【0069】
〔実施例8〕
実施例6のアク取り材について、t1:t2=3:2(t1=4.5mm、t2=3mm)になるように変更した以外は、実施例6と同様にして、アク取り材を得た。このアク取り材について、アク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【0070】
〔比較例2〕
実施例6のアク取り材について、超音波シールにて短冊部近傍を融着せずに、不織布同士を重ねて圧縮構造を持たないように、箸で挟みながらアク吸着効果を評価した結果、表2に示すような結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るアク取り材の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るアク取り材を製造する際に利用される素材の平面図である。
【図3】第2実施形態に係るアク取り材の平面図である。
【図4】第3実施形態に係るアク取り材の平面図である。
【図5】第2の治具の先端を示し、圧縮構造部を形成する前の状態を示す断面図である。
【図6】第2の治具の先端を示し、圧縮構造部を形成した状態を示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係るアク取り材の平面図である。
【図8】第3の治具を示し(a)は平面図、(b)は(a)図のb−b線に沿った断面図である。
【図9】第4実施形態に係るアク取り材の斜視図である。
【図10】第5実施形態に係るアク取り材を製造する際に利用される素材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は圧縮構造部を形成した側面図である。
【図11】第5実施形態に係るアク取り材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B,1C,1D,1E…アク取り材、3,31…アク吸着部、5,33…短冊部(拡開片)、5a,33a…短冊部の根本、5b,33b…短冊部の自由端、7,35…圧縮構造部(絞り部)、11…第1の治具(柄部)、13…第2の治具(柄部)、19…第3の治具(柄部)、21…一方の挟持端部、23…他方の挟持端部、29…弾性支持部、N1,N2…素材、O…素材の中心、SL…スリット(切り込み)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部を備え、
前記アク吸着部は、
面状の素材の周縁の少なくとも一部から切り込みを入れて形成された短冊形状の複数の拡開片と、
前記素材における前記拡開片の根本側を絞ることで形成され、前記複数の拡開片の自由端を離間させて拡げる絞り部と、を有することを特徴とするアク取り材。
【請求項2】
前記拡開片は、前記面状の素材の全周縁に亘って形成され、
前記絞り部は、前記素材における前記複数の拡開片で囲まれた内側を絞ることで形成されることを特徴とする請求項1記載のアク取り材。
【請求項3】
前記面状の素材は、円形または多角形であり、前記素材の中心から前記絞り部までの距離(d1)と、前記絞り部から前記拡開片の前記自由端までの距離(d2)の比率(d1:d2)が、1:20〜10:1であることを特徴とする請求項1または2記載のアク取り材。
【請求項4】
前記絞り部は、前記面状の素材を複数重ね、前記拡開片の根本側で複数の前記素材を圧縮して絞ることで形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のアク取り材。
【請求項5】
複数重ねられた前記面状の素材における絞る前の前記絞り部の厚み(t1)と、絞った後の前記絞り部の厚み(t2)の比率(t1:t2)が2:1〜200:1であることを特徴とする請求項4記載のアク取り材。
【請求項6】
前記アク吸着部を保持する柄部を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のアク取り材。
【請求項7】
前記柄部は、
前記絞り部を挟むようにして重なる一対の挟持端部と、
前記一対の挟持端部を支持すると共に、前記一対の挟持端部の対面方向に弾性力を付与して絞り部を圧縮する弾性支持部と、を有することを特徴とするアク取り材。
【請求項8】
前記挟持端部は半筒状であり、
一方の前記挟持端部の湾曲した内側の内周面は、他方の前記挟持端部の湾曲した外側の外周面に重なり合うことを特徴とする請求項7記載のアク取り材。
【請求項1】
疎水性繊維を含む不織布からなるアク吸着部を備え、
前記アク吸着部は、
面状の素材の周縁の少なくとも一部から切り込みを入れて形成された短冊形状の複数の拡開片と、
前記素材における前記拡開片の根本側を絞ることで形成され、前記複数の拡開片の自由端を離間させて拡げる絞り部と、を有することを特徴とするアク取り材。
【請求項2】
前記拡開片は、前記面状の素材の全周縁に亘って形成され、
前記絞り部は、前記素材における前記複数の拡開片で囲まれた内側を絞ることで形成されることを特徴とする請求項1記載のアク取り材。
【請求項3】
前記面状の素材は、円形または多角形であり、前記素材の中心から前記絞り部までの距離(d1)と、前記絞り部から前記拡開片の前記自由端までの距離(d2)の比率(d1:d2)が、1:20〜10:1であることを特徴とする請求項1または2記載のアク取り材。
【請求項4】
前記絞り部は、前記面状の素材を複数重ね、前記拡開片の根本側で複数の前記素材を圧縮して絞ることで形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のアク取り材。
【請求項5】
複数重ねられた前記面状の素材における絞る前の前記絞り部の厚み(t1)と、絞った後の前記絞り部の厚み(t2)の比率(t1:t2)が2:1〜200:1であることを特徴とする請求項4記載のアク取り材。
【請求項6】
前記アク吸着部を保持する柄部を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のアク取り材。
【請求項7】
前記柄部は、
前記絞り部を挟むようにして重なる一対の挟持端部と、
前記一対の挟持端部を支持すると共に、前記一対の挟持端部の対面方向に弾性力を付与して絞り部を圧縮する弾性支持部と、を有することを特徴とするアク取り材。
【請求項8】
前記挟持端部は半筒状であり、
一方の前記挟持端部の湾曲した内側の内周面は、他方の前記挟持端部の湾曲した外側の外周面に重なり合うことを特徴とする請求項7記載のアク取り材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−160085(P2009−160085A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340265(P2007−340265)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
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