説明

アザビシクロ化合物、その調製及び医薬品、特にβ−ラクタマーゼ阻害剤としての使用

本発明は、式(I)
【化1】


(式中、R1及びR2は、1つが水素であり、他方がフッ素であるか、又は両方がフッ素である)で表わされる遊離形、両性イオン形又は薬学上許容される無機又は有機塩基との塩の形の化合物、その調製及び病原性細菌による-βラクタマーゼの作用を阻害する医薬品としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複素環化合物、その調製及びその医薬品、特に病原菌によるβ-ラクタマーゼ作用の阻害剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO02/10172に係る出願は、式(A)
【化1】

(式中、R1、R2、R3、A、X及びn'は、前記出願において定義されたとおりである)で表わされるアザビシクロ化合物又はその塩基又は酸との塩、特に、Xが炭素原子によって窒素原子に結合された2価の-C(O)-B-基である(ここで、Bは窒素原子によってカルボニルに結合された2価の-NR8-であり、R8は、水素、OH、R、OR、Y、OY、Y1、OY1、Y2、OY2、Y3、OCH2CH2SOmR、OSiRaRbRc及びSiRaRbRcからなる群から選ばれ、R、Y、Y1、Y2、Y3、m、Ra、Rb及びRcは、前記出願において定義されたとおりである)化合物を開示している。
【0003】
8は、特に、OSO3H又はO-CH2-COOH基であってもよい。
【0004】
国際公開WO02/10172に開示された化合物は抗菌特性を有する。
【0005】
国際公開WO03/063864に係る出願は、化合物(A)のβ-ラクタマーゼの阻害剤としての使用及びそのβ-ラクタミンとの組合せを開示する。
【0006】
国際公開WO02/100860及びWO04/052891に係る出願は、化合物(A)とは、特に、一緒になってフェニル又は芳香族タイプの複素環(任意に置換される)を形成しているR3及びR4(任意に置換される)を介して異なる式(B)
【化2】

で表わされるアザトリシクロ化合物を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主題は、式(I)
【化3】

(式中、R1及びR2の1つが水素であり、他方がフッ素であるか、又は両方がフッ素である)で表わされる遊離形、両性イオン形又は薬学上許容される無機又は有機塩基との塩の形の化合物にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
式(I)の塩基塩の中でも、前記生成物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム又はアンモニウムの水酸化物のような無機塩基、又はメチルアミン、プロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、エタノールアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、モルホリン、ベンジルアミン、プロカイン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、N-メチルグルカミンのような有機塩基とで形成されるもの、又はアルキルホスホニウム、アリールホスホニウム、アルキルアリールホスホニウム、アルケニルアリールホスホニウムのようなホスホニウム塩、又はテトラ-n-ブチルアンモニウムのような4級アンモニウム塩が調製される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(I)の化合物中に含有される不斉炭素原子は、それぞれ独立して、R、S又はSR配置を有することができ、従って、本発明の他の主題は、純粋な鏡像異性体又は純粋なジアステレオ異性体の形、又は鏡像異性体の混合物(特にラセミ体)又はジアステレオ異性体の混合物の形の化合物にある。
【0010】
上記の事項に関連して、置換基CONH2及び第2の環窒素原子は、これらが結合する6員環に対してシス及び/又はトランス位置に存在でき、従って、本発明の主題は、シス異性体又はトランス異性体又は混合物の形の式(I)の化合物に関する。
【0011】
本発明の主題は、特に、遊離形、両性イオン及び薬学上許容される無機又は有機塩基との塩の形の
‐トランス-(1R,2S,5R)-6-(1-フルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、
‐トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
である。
【0012】
1変形例によれば、化合物:
‐トランス-(1R,2S,5R)-6-(1-フルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、
‐トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
は、それらのナトリウム塩の形である。
【0013】
本発明の他の主題は、式(I)の化合物を製造する方法であって、式(II)
【化4】

の化合物を、塩基の存在下、式(III)
【化5】

(式中、R1及びR2は上述のとおり定義され、Halはフッ素以外のハロゲン原子を表わし、及びalcは炭素原子1〜6個を含有するアルキル基を表わす)で表わされる試薬にて処理して、式(IV)
【化6】

で表わされる化合物を生成し、そのエステル基を加水分解して、式(I)の対応する酸を生成し、必要であれば、塩を形成することを特徴とする式(I)の化合物の製法にある。
【0014】
本発明の方法を実施するための好適な条件下では、Halは臭素原子である。
【0015】
使用する塩基は、アルカリ炭酸塩又は炭酸水素塩又はアミン塩基であり、アルカリ炭酸塩が好適である。
【0016】
ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン又はアセトニトリルのような溶媒中で操作することができる。
【0017】
エステルの加水分解は、テトラヒドロフラン又はテトラヒドロフラン‐水混合物中のアルカリ水酸化物、例えば、水酸化リチウム又はナトリウムの作用によるケン化を使用して、又は例えば、特に、エステルが3級ブチルエステルである場合、トリフルオロ酢酸を使用する酸加水分解によって行われる。
【0018】
本発明の化合物は、顕著なβ-ラクタマーゼ阻害特性を有し、従って、β-ラクタマーゼを生産する病原菌に対する攻撃力を強化するためにβ-ラクタミンタイプの各種の抗菌性化合物との組合せの形の、感染症を治療する又は予防する医薬品として興味深い。
【0019】
細菌感染症の治療におけるβ-ラクタミンタイプの抗生物質(ペニシリンタイプの化合物又はセファロスポリン)の酵素不活性化は、これらタイプの化合物について障害であることはよく知られている。この不活性化は、β-ラクタミンの分解プロセスからなり、細菌が治療に対して耐性となる機構の1つを形成する。従って、酵素を阻害できる試薬をβ-ラクタミンタイプの抗菌剤と組み合わせることによって、この酵素プロセスに対抗することが望ましい。β-ラクタマーゼ阻害剤を、β-ラクタミンタイプの抗生物質を組み合わせて使用する場合、いくつかの微生物に対する効力を増強できる。
【0020】
式(I)の化合物のβ-ラクタマーゼ阻害活性は、特に、対応する非フッ素化化合物と比較すると顕著であり、予測できないものである。この対照化合物の調製は、後述の実施例1に記載している。比較した活性の表については後述する。
【0021】
本発明の他の主題(医薬品、特に、病原菌によるβ-ラクタマーゼ生産の阻害を介するヒト又は動物における細菌感染症の治療を目的とする医薬品として)は、上述のように定義される式(I)の化合物又はその薬学上許容される酸又は塩基との塩、特に2つの上記化合物に関する。
【0022】
式(I)の化合物と組み合わされるβ-ラクタミンタイプの抗生物質は、ペナム、ペネム、カルバペネム、セフェム、カルバセフェム、オキサセフェム、セファマイシン及びモノバクタムからなる群から選ばれる。
【0023】
β-ラクタミンとは、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アゾシリン、メゾシリン、アパルシリン、ヘタシリン、バカンシリン、カルベニシリン、スルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、メシリナム、ピブメシリナム、メチシリン、サイクラシリン、タランピシリン、アスポキシシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、ナフシリン又はピバンピシリンのようなペニシリン系;セファロチン、セファロリジン、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファゾリン、セファレキシン、セファラジン、セフチゾキシム、セフォキシチン、セファセトリル、セフォチアム、セフォタキシム、セフスロジン、セフォペラゾン、セフチゾキシム、セフメノキシム、セフメタゾール、セファログリシン、セフォニシド、セフォジジム、セフピロム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフピラミド、セフブペラゾン、セフォゾプラン、セフェピム、セフォセリス、セフルプレナム、セフゾナム、セフピミゾール、セフクリジン、セフィキシム、セフタロリン、セフチブテン、セフジニル、セフポドキシムアキセチル、セフポドキシムプロキセチル、セフテラムピドキシル、セフタメットピボキシル、セフカペンピボキシル又はセフジトレンピボキシル、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、loracarbacef、ラタモキセフのようなセファロスポリン系、イミペネム、メロペネム、ビアペネム又はパニペネムのようなカルバペネム系及びアズトレオナム及びカルモナムのようなモノバクタム系、及びその塩を意味する。セファロスポリン系の中でも、セフタジジムが特に好適である。
【0024】
式(I)の化合物又はその薬学上許容される塩は、β-ラクタミンタイプの抗生物質と同時に、又は別個に、好ましくは抗生物質投与後に投与される。2つの有効成分の混合物の形として又は2つの別個の有効成分の医薬品組み合わせの形として達成される。
【0025】
式(I)の化合物又はその薬学上許容される塩の用量は、広い限度内で変動し、個々のケースにおいて、各患者の状態及び処置される病原因子に適合するものでなければならない。一般に、細菌感染症の治療の用途では、日用量は、ヒトにおいて、経口投与の場合、実施例3に記載する生成物では、0.250〜10g/日であり、又は筋肉内又は静脈内投与の場合、0.25〜10g/日である。β-ラクタマーゼ阻害剤としての用途では、0.1〜10gの日用量が好適である。
【0026】
また、β-ラクタミンタイプの抗生物質に対する式(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤又はその薬学上許容される塩の割合も広い限度範囲内で変動し、個々のケースにおいて、各患者の状態に適合するものでなければならない。一般に、当該割合は、約1:20〜約1:1の範囲である。
【0027】
上述のようなβ-ラクタミンを阻害する医薬品は、所望の投与形態に適合する不活性な医薬品賦形剤(有機性又は無機性)との混合物である医薬組成物の形で提供され、本発明の他の主題は、有効成分として、上述のような本発明の化合物の少なくとも1つを含有する医薬組成物及び本発明の化合物とβ-ラクタミンとの組合せを提供することにある。
【0028】
これらの組成物は、経口、直腸、非経口(特に筋肉)ルートを介して、又は皮膚又は粘膜への局所塗布としての局所ルートを介して投与される。
【0029】
これらの組成物は、固状又は液状及びヒト用の薬剤において一般的に使用される剤形であり、例えば、一般的な錠剤又はコート錠、カプセル、顆粒、座剤、注射剤、軟膏、クリーム、ジェルである。これらは通常の方法に従って調製される。有効成分は、これら医薬組成物において通常使用される賦形剤(例えば、タルク、アラビヤゴム、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、カカオ脂、水性又は非水性ビヒクル、動物性又は植物性脂肪、パラフィン誘導体、グリコール、各種湿潤剤、分散剤又は乳化剤及び保存料)と配合される。
【0030】
これらの組成物は、好適なビヒクル、例えば、殺菌した無発熱原性水に、その場で溶解される凍結乾燥体の形でもよい。
【0031】
以下の実施例は本発明を説明するものである。
【実施例1】
【0032】
トランス-(1R,2S,5R)-6-(2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(対照化合物)の調製
ステージA
トランス-(1R,2S,5R)-6-(2-エトキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
エチルブロモ酢酸(200μl,17.8ミリモル)を、窒素雰囲気下、K2CO3(270 mg,19.4ミリモル)及びトランス-(1R,2S,5R)-6-ヒドロキシ-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド(国際公開WO03/063864の実施例33aのステージBに記載のラセミ体)(300 mg,16.2ミリモル)のジメチルホルムアミド(0.6ml)懸濁液に添加した。反応系を室温において24時間撹拌した。ついで、懸濁液を酢酸エチルにて希釈し、濾過した。濾液(約60ml)を水で洗浄した。合わせた有機相を乾燥し、ついで、減圧下で濃縮した。得られたオイルを、溶離液としてジクロロメタン/メタノールの99:1〜95:5混合物を使用するシリカクロマトグラフィーによって分離して、無色のオイル(223 mg,46%)を得た。
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=4.56-4.69(m, 2H, OCH2CO2CH2CH3), 4.26(q, 2H, OCH2CO2CH2CH3), 4.11(m, 1H, CHCONH2), 3.94(m, 1H, NCH2CHN), 3.13(m, 1H, NCH2CHN), 3.03(m, 1H, NCH2CHN), 2.29(m, 1H, CH2CH2), 2.14(m, 1H, CH2CH2), 1.93(m, 1H, CH2CH2), 1.81(m, 1H, CH2CH2), 1.33(t, 3H, OCH2CO2CH2CH3)
【0033】
ステージB
トランス-(1R,2S,5R)-6-(2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
ステージAで得られた生成物(129 mg,4.8ミリモル)を、テトラヒドロフラン8mlに溶解した。溶液を水2.7mlにて希釈し、ついで、0℃に冷却した。溶液にLiOH・H2O(21mg,5.0ミリモル)を添加した。0℃において30分間撹拌を続けた。2N HCl水溶液300μlを添加して、ケン化を停止させた。反応混合物を酢酸エチル(50ml)にて徐々に希釈し、30分間撹拌し、その間に温度が10℃に上昇した。デカンテーション後、水相を酢酸エチルにて再抽出した。合わせた有機相を乾燥し、ついで、減圧下で濃縮した。得られた生成物を真空下で乾燥して、非晶質の固体を得た(76mg,66%)。
MS(ES(+)):m/z[M+H]+=244;[2M+H]+=287
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=4.57-4.66(m, 2H, OCH2CO2H), 4.14(m, 1H, CHCONH2), 3.94(d, 1H, NCH2CHN), 3.16(m, 1H, NCH2CHN), 3.04(m, 1H, NCH2CHN), 2.29(dd, 1H, CH2CH2), 2.16(m, 1H, CH2CH2), 1.93(m, 1H, CH2CH2), 1.79(m, 1H, CH2CH2)
【実施例2】
【0034】
トランス-(1R,2S,5R)-6-(1-フルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
ステージA
トランス-(1R,2S,5R)-6-(2-エトキシ-1-フルオロ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
原料物質として、エチルブロモフルオロ酢酸(730μl,5.94ミリモル)、ジメチルホルムアミド2ml中のK2CO3(896 mg,6.48ミリモル)及び国際公開WO03/063864の実施例33aのステージBの化合物の(1R,2S,5R)異性体(1g,5.40ミリモル)を使用して、実施例1に記載のものと同じ条件下で置換反応を行った。処理後、得られたオイルを、溶離液としてジクロロメタン/メタノールの98:2〜95:5混合物を使用するシリカクロマトグラフィーによって分離して、HPCL純度71%をもつ生成物1.18gを得た。生成物は2つのジアステレオマーの混合物(比1:1)であった。生成物を2回目のクロマトグラフィーに供して、無色のオイル(975 mg,62%)を得た。
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=6.02/6.09(d, 1H, OCHFCO2CH2CH3), 4.29-4.37(m, 2H, OCHFCO2CH2CH3), 3.98-4.03(m, 2H, CHCONH2及びNCH2CHN), 3.10-3.21(m, 2H, NCH2CHN), 2.28(m, 1H, CH2CH2), 2.10(m, 1H, CH2CH2), 1.89-1.96(m, 2H, CH2CH2), 1.32-1.39(m, 3H, OCHFCO2CH2CH3)
【0035】
ステージB
トランス-(1R,2S,5R)-6-(1-フルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
原料物質として、予め得られたエステル(298 mg,1.03ミリモル)、テトラヒドロフラン(12ml)、水(4ml)及びLiOH・H2O(45mg,1.08ミリモル)を使用して、実施例1のステージBに記載のものと同じ条件下で、ケン化を行った。0℃において1時間撹拌を続けた。反応後、黄色の非晶質生成物を得た(231 mg,84%)。
MS(ES(−)):m/z[M-H]-=260;[M+HCOOH-H]-=306;[2M-H]-=521
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=5.96/6.03(d, 1H, OCHFCO2H), 3.99-4.05(m, 2H, CHCONH2及びNCH2CHN), 3.10-3.20(m, 2H, NCH2CHN), 2.28(m, 1H, CH2CH2), 2.13(m, 1H, CH2CH2), 1.84-2.01(m, 2H, CH2CH2)
【実施例3】
【0036】
トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩
ステージA
トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-エトキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
原料物質として、エチルブロモジフルオロ酢酸(1.4ml,10.9ミリモル)、ジメチルホルムアミド(4ml)中のK2CO3(1.21g,8.8ミリモル)及び国際公開WO03/063864の実施例33aのステージBの化合物の(1R,2S,5R)異性体(690 mg,3.73ミリモル)を使用して、実施例1に記載のものと同じ条件下で置換反応を行った。処理後得られたオイルを、溶離液としてジクロロメタン/メタノールの99:1〜95:5混合物を使用するシリカクロマトグラフィーによって分離して、結晶化する傾向をもつ無色のオイルを得た(505 mg,44%)。残渣の固体をイソプロピルエーテルにて粉砕して、白色の固体生成物を得た(361 mg)。
MS(ES(+)):m/z[M+H]+=308.1;[M+CH3CN+H]+=349;[2M+H]+=615
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=4.44(q, 2H, OCF2CO2CH2CH), 3.99-4.06(m, 2H, CHCONH2及びNCH2CHN), 3.28(m, 1H, NCH2CHN), 3.18(d システム AB, 1H, NCH2CHN), 2.29(m, 1H, CH2CH2), 2.10(m, 1H, CH2CH2), 1.89-2.00(m, 2H, CH2CH2), 1.40(t, 3H, OCF2CO2CH2CH3)
【0037】
ステージB
トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
原料物質として、予め得られたエステル(110 mg,0.36ミリモル)、テトラヒドロフラン)、水(2ml)及びLiOH・H2O(16mg,0.38ミリモル)を使用して、実施例1のステージBに記載のものと同じ条件下で、ケン化を行った。0℃において1時間撹拌を続けた。反応後、白色の固体を得た(73mg,73%)。
MS(ES(−)):m/z[M-H]-=278;[M+HCOOH-H]-=324;[2M-H]-=557
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=3.99-4.05(m, 2H, CHCONH2及びNCH2CHN), 3.29(m, 1H, NCH2CHN), 3.17(m, 1H, NCH2CHN), 2.29(m, 1H, CH2CH2), 2.12(m, 1H, CH2CH2), 1.95-2.04(m, 2H, CH2CH2)
【0038】
ステージC
トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのトリエチルアミン塩
ステージBにおいて得た化合物をテトラヒドロフラン3ml中に溶解した。氷浴内で冷却した溶液に、トリエチルアミン(70μl,0.5ミリモル)を滴下した。沈殿物が形成された。1時間撹拌を続けた。懸濁液をTHFにて希釈し、濾過して、白色の固体を得た(100 mg,55%)
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=4.01-4.04(m, 2H, CHCONH2及びNCH2CHN), 3.24-3.30(m, 7H, NCH2CHNの1H及び(CH3CH2)3Nの6H), 3.14(d, 1H, NCH2CHN), 2.30(m, 1H, CH2CH2), 2.22(m, 1H, CH2CH2), 2.03(m, 1H, CH2CH2), 1.86(m, 1H, CH2CH2), 1.37(t, 9H, (CH3CH2)3N)
【0039】
ステージD
トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミドのナトリウム塩
DOWEX 50WX8レジン10gの2N水酸化ナトリウム溶液(50ml)懸濁液を1時間撹拌し、ついで、クロマトグラフィーカラムに注いだ。カラムに精製水を充填して中性pHとし、ついで、水/THF混合物(90:10)を充填した。実施例3のステージCにおいて得た塩(50mg,0.13ミリモル)を最少量の水/THF溶液に溶解し、カラムに入れ、ついで、水/THF混合物(90:10)にて溶離した。物質を含有するフラクションを合わせ、凍結した。凍結した溶液を凍結乾燥して、予想したナトリウム塩を白色固体の形で得た(39mg,97%)。
MS(ES(−)):m/z[M-H]-=278;[M+HCOOH-H]-=324;[2M-H]-=557
1H NMR(400 MHz, MeOH-d4):δ(ppm)=4.01(m, 2H, CHCONH2及びNCH2CHN), 3.29(m, 1H, NCH2CHN), 3.11(d, 1H, NCH2CHN), 2.27(m, 1H, CH2CH2), 2.17(m, 1H, CH2CH2), 2.00(m, 1H, CH2CH2), 1.84(m, 1H, CH2CH2)
【0040】
本発明の化合物のβ-ラクタマーゼ阻害活性の検討
I.式(I)の化合物又はその薬学上許容される塩は、各種の細菌菌株のβ-ラクタマーゼに対する顕著な阻害活性を有しており、治療上興味深いこれらの特性は、単離したβ-ラクタマーゼについてインビトロで測定できる。
【0041】
A.Tem-1及びP99β-ラクタマーゼの調製
β-ラクタマーゼを、ペニシリン及びセファロスポリン耐性の細菌の菌株から単離した(TEM1及びP99は、それぞれ、大腸菌(E. coli)250HT21及びエンテロバクター クロアカ(E. cloacae)293HT6によって生産されたものである)。
細菌を、37g/lブレインハートインフュージョン(DIFCO)において37℃で培養した。指数増殖期の終了時、細菌を収穫し、冷却し、遠心分離した。細菌残渣を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、再度、遠心分離した。細菌を、この同じ緩衝液の2容に溶解し、4℃に保持したFrench-Pressを使用して溶菌処理した。100,100g、4℃において1時間遠心分離した後、細菌エキスの可溶性フラクションを含有する上澄液を集め、−80℃に凍結した。
【0042】
B.β-ラクタマーゼ活性の測定
方法は、基質として、色素生産性セファロスポリンであるニトロセフィン(OXOID)を使用するものであり、ニトロセフィンのβ-ラクタマーゼによる加水分解生成物は赤色であり、485 nmにおいて吸収される。
β-ラクタマーゼ活性を、プレート分光光度計(Soectra Max Plus by Molecular Devices)において、基質の加水分解から生ずる485 nmの吸光度の変化を測定することによって動力学的に測定した。実験を37℃において行った。酵素の量を正規化し、測定を初期速度とした。
【0043】
C.βラクタマーゼ阻害活性の測定
酵素及び阻害剤のプレインキュベーション(5分)にて測定を行った。生成物の11種の濃度でアッセイした。反応混合物は、100μMニトロセフィン及び50mMリン酸ナトリウム緩衝剤(pH7.0)及び0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含有する。
【0044】
D.IC50の算定
阻害剤を使用して及び使用することなく、加水分解速度を測定した。酵素によるニトロセフィンの加水分解が50%阻害される場合の阻害剤の濃度を(IC50)を測定した。ソフトウエアGraFit(Erithacus Software)を使用して、データを処理した。IC50の値は、少なくとも2回の異なる実験によって得られたIC50の平均である。
【0045】
【表1】

【0046】
II.証明されたβ-ラクタマーゼ阻害活性は、β-ラクタムタイプの抗生物質の抗菌活性の可能性を示すものであり、従って、下記に示す結果(特定の数の病原性微生物に対する、セフタジジム(CAZ)と濃度4mg/lの式(I)の化合物との組合せのインビトロにおける最少阻害濃度(MIC(μg/ml))で表わされる)によって示されるように、相乗効果をもたらす。操作は、いわゆる、液体媒体におけるマイクロ希釈法を使用して、下記のようにして実施した。
一連のβ-ラクタム濃度を、アッセイ対象の生成物の一定濃度(4mg/l)の存在下で調製し、ついで、各種の細菌菌株を各々に接種した。
37℃のオーブン内における24時間の生育インキュベーションの後、細菌の生育の欠如を介して、生育阻害をアッセイした(各菌株についての最少阻害濃度(MICs;mg/lで表わされる)の測定を可能にする)。
得られた結果を下記の表に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
医薬組成物の実施例
1)下記の成分を含有する注射用の医薬組成物を調製した:
実施例2の化合物 500 mg
殺菌した水性賦形剤 全量を10mlとする
2)下記の成分を含有する注射用の医薬組成物(凍結乾燥体)
実施例3の化合物 500 mg
セフタジジム 1g
殺菌した水性賦形剤 全量を5mlとする
必要であれば、2つの有効成分を、2つの異なるアンプル又はボトルに別々に添加できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、R1及びR2の1つが水素であり、他方がフッ素であるか、又は両方がフッ素である)で表わされる遊離形、両性イオン形又は薬学上許容される無機又は有機塩基との塩の形の化合物。
【請求項2】
式(I)の化合物が、遊離形、両性イオン形又は薬学上許容される無機又は有機塩基との塩の形の
‐トランス-(1R,2S,5R)-6-(1-フルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド、
‐トランス-(1R,2S,5R)-6-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-オキソエトキシ)-7-オキソ-1,6-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-2-カルボキサミド
である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ナトリウム塩の形である請求項2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1記載の化合物を製造する方法であって、式(II)
【化2】

の化合物を、塩基の存在下、式(III)
【化3】

(式中、R1及びR2は上述のとおり定義され、Halはフッ素以外のハロゲン原子を表わし、及びalcは炭素原子1〜6個を含有するアルキル基を表わす)で表わされる試薬にて処理して、式(IV)
【化4】

で表わされる化合物を生成し、そのエステル基を加水分解して、式(I)の対応する酸を生成し、必要であれば、塩を形成することを特徴とする式(I)の化合物の製法。
【請求項5】
医薬品として使用される請求項1記載の化合物。
【請求項6】
医薬品として使用される請求項2記載の化合物。
【請求項7】
有効成分として、請求項5又は6に記載の少なくとも1つの医薬品を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
さらに、少なくとも1つのβ-ラクタミンタイプの医薬品を含有する請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項5又は6に記載のβ-ラクタマーゼ阻害剤医薬品と、β-ラクタミンタイプの医薬品との組合せ。
【請求項10】
β-ラクタミンタイプの医薬品がセファロスポリン又はカルバペネムである請求項9記載の組合せ。
【請求項11】
セファロスポリンがセフタジジムである請求項10記載の組合せ。

【公表番号】特表2011−518871(P2011−518871A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506790(P2011−506790)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005391
【国際公開番号】WO2009/133442
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(508276176)
【Fターム(参考)】