説明

アシアリル化免疫グロブリンを生成するための方法およびベクター

Fc含有タンパク質、例えば抗体の特性が、Fc含有タンパク質を発現する細胞株をシアリダーゼをコードするベクター配列でトランスフェクトすることにより、Fc領域中のオリゴ糖のシアリル化を改変することにより制御される。修飾されたFc含有タンパク質は、FcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIIA受容体の1もしくは複数に対する親和性、ADCC活性、マクロファージもしくは単球活性化、血清半減期およびアビディティを制御することが望まれる疾患または状態に治療的用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Fc受容体と相互作用する治療用タンパク質、例えば抗体の生産方法に関し、ここでオリゴ糖鎖の組成は、その標的に対する抗体のアビディティーならびにFc受容体の結合親和性について至適化され、これによりグリコシル化抗体を生産するための非至適化法と比べた時に、該抗体のエフェクター機能活性を至適化する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
抗体は先天免疫で重大な役割を演じている可溶性血清糖タンパク質である。重鎖定常領域中の保存された位置で全ての天然に産生される抗体の炭水化物構造は、アイソタイプにより異なる。各アイソタイプは異なる多数のN−結合オリゴ糖構造を有し、それらはタンパク質の集成、分泌もしくは機能的活性に多様に影響を及ぼす(非特許文献1)。図1および2を参照すれば、結合されたN−結合オリゴ糖の構造はプロセシングの程度に依存してかなり変動し、そして高マンノース、ならびに分岐GlcNAcおよび核フコース残基を持つかまたは持たない複雑な二分岐オリゴ糖を包含し得る(非特許文献1)。典型的に、モノクローナル抗体でさえ複数の糖型(glycoform)として存在するような、特定のグリコシル化部位に結合されたコアオリゴ糖構造の不均質なプロセシングが存在する。同様に、抗体のグリコシル化の大きな差違が抗体産生細胞株間で存在し、そしてなお小さな差違が異なる培養条件下で増殖された所定の一細胞株について見られることが示された。
【0003】
グリカン(定常基)上のシアル酸は抗体以外の糖タンパク質の血清半減期の延長において重要であることが知られている(非特許文献2)。これまで、モノクローナル抗体(Mab)に対するシアル酸の役割は十分に理解されていない。Mabの血清半減期はとりわけ長命であり、そしてFc融合タンパク質の構築は、治療用タンパク質、例えばタンパク質エンテラセプトの開発における有用な戦略と判明している。
【0004】
抗体およびT細胞受容体分子は、特異的細胞表面受容体結合(その結合が細胞応答を調節する)の原因となる領域を有する。免疫系ではこれらの機能は体液性および細胞性と分類される。抗体はしばしば体液性および細胞性免疫機構を結びつけるアダプター分子と称され、すなわち体液性応答は主として標的抗原への高親和性結合が可能な成熟分泌型循環抗体に帰される。細胞性応答は、ab−ag複合体の結合、およびエフェクター細胞へのab−ag複合体結合の結果としての細胞メディエーターの放出により引き起こされる下流の後続の細胞の活性化の結果に帰される。これらの細胞応答は、標的の中和、オプソニン化および感作(抗原が細胞の表面上に表示される場合)、肥満細胞の感作および補体の活性化を包含する。細胞標的、すなわち細胞表面抗原については、これらのエフェクター機能は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)として一般に知られるものに至る。
【0005】
抗体アイソタイプ(例えばIgE、IgD、IgA、IgMおよびIgG)の間で、IgGが最も豊富であり、IgG1サブクラスが大きな程度および範囲のエフェクター機能を表す。IgG1型の抗体は、ADCCおよびCDC活性がしばしば重要と思われる癌免疫療法で最も一般に使用される抗体である。構造的に、IgGのヒンジ領域およびCH2ドメインが抗体エフェクター機能で主要な役割を演じている。(ヒンジ、CH2およびCH3ドメインの二量体化により形成される)Fc領域に存在するN−結合オリゴ糖がエフェクター機能に影響を及ぼす。共有結合したオリゴ糖は複雑な二分岐型構造であり、そして高度に不均質である(図1および2を参照されたい)。Asn297の保存されたN−結合グリコシル化部位は各CH2ドメイン中に存する。成熟抗体中で、Asn297に結合された2個の複雑な二分岐オリゴ糖はCH2ドメイン間に埋没されて、ポリペプチド骨格と広範な接触点を形成する。ADCCのようなエフェクター機能を抗体が媒介するのにそれらの存在が不可欠であることが見出された(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献1)。
【0006】
種々の宿主細胞に生産されたものを含んでなるFc部分抗体または抗体誘導化構造を修飾する不均質なオリゴ糖は、末端糖として主にシアル酸、フコース、ガラクトースおよびGlcNAc残基を含有する(非特許文献5)。特に露出されたガラクトース、コアのフコースおよび分岐したGlcNAc残基のようなこれらの末端糖のいくつかが、分子のFc部分の構造に影響を及ぼし、そしてこれにより抗体のエフェクター機能を改変することが示された。Fc受容体として知られている細胞表面受容体への結合、ならびにC1q補体タンパク質を含む多様なリガンドへの結合に依存するADCC活性およびCDC活性のようなエフェクター機能は、付加されたグリカンの組成により改変できる(非特許文献6)。Fcで付いたN−結合グリカンの大多数は、有意な程度までシアリル化されてはいない(非特許文献7)。
【0007】
ヒトIgGおよび他の組換え生産されたIgG中に見出される主要構造は、露出したGal残基を含むかまたは含まない複雑な二分岐構造である(図1)。研究目的ならびに生物製剤生産の目的で組換え抗体を発現するために現在使用されている多くの哺乳動物宿主細胞がある。宿主細胞種の起源ならびに培養条件が、組換えで発現された分子に付加されるグリカンの程度および構造に変動を生じることができる。抗体の組換え発現用に一般に使用されている2つの宿主細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)およびマウス骨髄腫細胞(sp2/0、653、NS0)である。CHO細胞はシアル酸グリカンをほとんど欠く組換え抗体を発現する一方、グリカンは99%フコシル化される。フコースの存在は低減したFc−ガンマIII受容体、したがってADCCの主要な因子となることが示されてきた。マウス骨髄腫細胞は最高50%のシアル酸を含む組換え抗体を発現するが、一般にフコースは少ない。上に述べたように、これらの差異はインビボで抗体活性に有意な効果を及ぼす可能性がある。
【0008】
従って、治療用抗体に随伴するグリカンのシアリル化を、回収後の処理を必要とせずに、そして同時にシアル酸含量に関して合理的に均一な構造を提供する様式で減少できることが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Wright,A.とMorrison,S.L.、Trends Biotech.15:26−32(1997)
【非特許文献2】Stockert,R.J.(1995)Physiol.Rev.75、591−609
【非特許文献3】Lifely,M.R.et al.,Glycobiology 5:813−822(1995)
【非特許文献4】Jefferis,R.et al.,Immunol Rev.163:59−76(1998)
【非特許文献5】Raju,T.S.et al.,Glycobiology 2000.10(5):477−86
【非特許文献6】Presta L.2003.Curr Opin Struct Biol.13(4):519−25
【非特許文献7】Idusogie EE et al.,2000.J Immunol.15:164(8):4178−84
【発明の概要】
【0010】
発明の要約
本発明は、Fc含有分子、とりわけ減少したシアル酸含量の抗体治療薬を生産するために有用な方法、宿主細胞ならびに発現ベクターおよびプラスミドを含んでなる。より詳細には本発明は操作されたシアリダーゼコード配列をコードする発現プラスミドを含んでなり、このプラスミドはいったん抗体を分泌する宿主細胞株に導入されれば、宿主細胞がシアリダーゼ活性を有するポリペプチドを分泌できるようにする。1つの態様では、プラスミド中のコード配列はアースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)のシアリダーゼの触媒ドメインをコードする。本発明のさらなる観点では、アースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)のシアリダーゼの触媒ドメインを含んでなる宿主細胞は、翻訳された触媒ドメインを培養基に分泌する。
【0011】
本発明は、Fc領域中のオリゴ糖のシアリル化を最少にすることを含んでなる、Fc含有分子の特性の制御方法を含んでなり、これにより多様に局在化された標的タンパク質に対する分子のアビディティーならびにFcガンマ受容体、例えばFcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIIA受容体の1もしくは複数に対する親和性;ADCC活性;マクロファージもしくは単球活性化;ならびに血清半減期が最適化される。
【0012】
また本発明は、Fcドメイン中で最大にシアリル化されたN−結合オリゴ糖を含有する抗体のようなFc含有分子の高度に均質なバッチの調製法にも関する。それは、Fcオリゴ糖中にシアル酸を含む抗体ならびにFcオリゴ糖中にシアル酸を含まない抗体について濃縮された抗体のバッチの精製にさらに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ヒトIgG中で見出される最大のオリゴ糖構造の図解である。
【図2】チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で生産される組換えIgG中に見出される主要なオリゴ糖構造を表す。
【図3】Fcオリゴ糖のHPLC分析の結果を示す。N−結合オリゴ糖を、PNGアーゼF酵素で処理することにより抗体から最初に遊離した。遊離されたオリゴ糖をアントラニル酸で標識し、そして、標識されたオリゴ糖をゲル濾過クロマトグラフィーにより精製した。精製された標識オリゴ糖をHPLCにより分析して、示されるクロマトグラムをもたらした。
【図4】図4Aおよび4Bは、2種の異なる形式によるK562細胞上のヒトFcγRIIへの多様なAb1:TNF免疫複合体の結合を示すグラフである。(A)Ab6(Ab5に特異的なマウスモノクローナルAb)と複合体形成した固定量の125I標識ヒトIgG1 Ab5の存在下で、Ab1およびTNFの非標識複合体の量を変動させて細胞に添加することにより測定される競合結合。(B)125I標識TNFと複合体形成するAb1の量を変動させてK562細胞に添加することにより測定される直接結合。
【図5】図5A〜5Dは、NK細胞のFcγRIIIa:Ab1の天然のグリコシル化バリアント(A);Ab5の天然のグリコシル化バリアント(B);Ab1のレクチンカラム画分(C);およびAb2のレクチンカラム画分(D)への結合について、固定濃度の放射標識抗FcγRIIIa mAb 3G8と競合するのに使用した多様な試験Ab調製物を用いたFcγRIIIa結合実験のグラフである。
【図6】図6A〜6Dは、シアル酸含量が異なるAb1、それらの細胞表面上でTNFを過剰発現するK2標的細胞、およびFcγRを発現するヒトPBMCエフェクター細胞を使用して実施したin vitro ADCCアッセイの結果を示すグラフである。(A)Ab1の天然のグリコシル化バリアント、(B)Ab5の天然のグリコシル化バリアント、(C)WGAレクチン親和性に基づく分画後のシアル酸含量が異なるAb1の3種の下位ロットおよび酵素的脱グリコシル化した(Gno)Ab1の比較、(D)未処理のAb1サンプルおよび完全にシアリル化されたAb1 G2S2サンプル、もしくはAb7アイソタイプを一致させた陰性対照Abの比較。サンプルは三重で分析し(誤差の棒はs.d.を表す)、そして、示される結果はバリアントの各対の3回の独立の実験を代表する。これらの試験サンプル間の活性の差違は、追加二乗和F検定により決定されるとおり、有意であった(グラフA、CおよびDについてP<0.0001;グラフBについてP=0.0016)。
【図7】図7Aおよび7Bは、U−937細胞上のヒトFcγRI(CD64)受容体への種々のIgG抗体サンプルの競合結合を示すグラフである(A)Ab1 G2(完全にガラクトシル化されかつシアリル化されていない)およびAb1 G2S2(hi)(完全にガラクトシル化されかつ完全にシアリル化された)はシアル酸の非存在および存在によってのみ異なる、(B)Ab3の2種の異なるロットは荷電したオリゴ糖種(シアル酸含有種)の量が異なり、全オリゴ糖の2%もしくは42%のいずれかである。
【図8】完全にシアリル化された(G2S2)もしくは非修飾であった融合タンパク質(FcP1)の投与後の時間とFc部分の血清濃度の間の関係を示すグラフである。
【図9】記載する酵素的方法により完全にシアリル化されたAb2 G2S2もしくは完全にアシアリル化されたAb2 G2の投与後の時間とFc部分の血清濃度の間の関係を示すグラフである。
【図10】図10A〜10Dは放射標識Abすなわち(A)Ab1の天然のバリアント、(b)Ab5の天然のバリアント、(C)Ab1のレクチンカラム画分バリアントおよび(D)Ab2のレクチンカラム画分バリアントとの競合結合による、細胞表面上の標的リガンドに対する親和性に関するAb調製物中のシアル酸の影響を示すグラフである。サンプルは2連もしくは4連で試験し、そして示される結果は3もしくは4回の独立の実験を代表する。これらの試験サンプル間の結合の差違は、追加二乗和F検定により決定されるとおり有意であった(グラフA、CおよびDについてP<0.0001)。
【図11】図11AおよびBは、EIAプレートに被覆した標的リガンドに対する親和性に関するAb調製物中のシアル酸の影響を示すグラフである。すなわち(A)TNFへのAb1の天然のバリアントの結合、(B)抗Id抗体へのAb2結合。
【図12】図12A〜12Cは、表面結合されたAbすなわち(A)Ab1の天然のバリアント、(B)Ab1 1のレクチンカラム画分のバリアントおよび(C)Ab2のレクチンカラム画分のバリアントに対する、放射標識可溶性抗原として提示される標的リガンドに対する親和性に関するAb調製物中のシアル酸の影響を示すグラフである。放射標識Agおよび100倍過剰の未標識Agとの並行インキュベーションを、非特異的結合を測定するために行った。サンプルは3連で試験した。
【図13】示す元のベクターp2815にクローニングするために使用する制限酵素部位を含むhGH(ヒト成長ホルモン)シグナル配列に連結されたアースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)のシアリダーゼAの触媒ドメインを発現するように構築された発現プラスミドp3629の概略図である。
【図14】分泌されるシアリダーゼ触媒ドメインを発現する細胞株;クローン3、5、12、13および17に由来する精製抗体の抗体依存的細胞傷害(ADCC)活性を表すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
略語
α1,3GT、α−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ;α2,3ST、α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ;β1,4GT、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ;ADCC、抗体依存性細胞傷害;ATCC、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection);BATDA、ビス(アセトキシメチル)2,2’:6’,2”−テルピリジン−y,y”−ジカルボキシレート;BSA、ウシ血清アルブミン;CD培地、既知組成培地;CDC、補体依存性細胞傷害;CMP−Sia、シチジン一リン酸N−アセチルノイラミン酸;DMEM、ダルベッコ改良イーグル培地;E:T、エフェクター細胞対標的細胞比:FBS、ウシ胎児血清;ESI−MS、エレクトロスプレーイオン化質量分析。NK細胞、ナチュラルキラー細胞;IgG、免疫グロブリンG;IMDM、イスコフ改良ダルベッコ培地;MALDI−TOF−MS、マトリックス支援レーザー/脱離イオン化飛行時間質量分析;MHX、マイコフェノール酸、ヒポキサンチン、キサンチン;NANA、シアル酸のN−アセチルノイラミン酸異性体;NGNA、シアル酸のN−グリコリルノイラミン酸異性体;PBMC、末梢血単核細胞;PBMC、末梢血単核細胞;PBS、リン酸緩衝化生理食塩水;PNGアーゼF、ペプチドNグリコシダーゼF;RP−HPLC、逆相高速液体クロマトグラフィー;RT、室温;Sia、シアル酸;UDP−Gal、ウリジン二リン酸ガラクトース;UDP−GlcNAc、ウリジン二リン酸N−アセチルグルコサミン。
【0015】
定義
用語「ADCC活性」は抗体依存的細胞傷害性を表し、そして非感作エフェクター細胞による抗体が媒介する標的細胞破壊の現象を意味する。標的細胞の同一性は変動するが、これはFc受容体活性化を行うことができるFcドメインもしくはFcドメインの部分を有する結合した表面免疫グロブリンGを持たなければならない。エフェクター細胞はFc受容体を有する「キラー」細胞である。これは標的細胞の同一性に依存して、例えば従来のB−もしくはT−細胞マーカーを欠くリンパ球、または単球、マクロファージ、または多核白血球でよい。反応は補体非依存性である。本発明の抗体または他のFc含有タンパク質のADCC活性は、そのADCC媒介型殺細胞を示す能力が、実質的に類似の配列の抗体もしくはタンパク質、および代替的宿主細胞により生産されるFcドメインの能力より優る場合、「増強されている」。ADCC活性は標準的なインビボまたはインビトロの殺細胞アッセイ、例えば本明細書で検討するアッセイで測定することができる。好ましくは増強されたADCC活性を有する本発明の抗体は、代替的な宿主細胞で生産された参照抗体より低い用量で、かつ/またはより短期間で同じ効果(腫瘍細胞の増殖の防止または抑制)を達成する。好ましくは本発明の範囲内の抗体の能力と参照抗体との間の差異は、例えば選択された標準的なクロム放出ADCCアッセイで並行して比較することにより測定した時、少なくとも約1.5倍、より好ましくは少なくとも約2倍、さらにより好ましくは少なくとも約3倍、最も好ましくは少なくとも約5倍である。
【0016】
本明細書で使用される「親和性」(affinity)という用語は、その同族の結合パートナーに対する単純な一価リガンドの結合定数(例えば抗原もしくはエピトープに対するFabの結合)の尺度であることを意図している。親和性は、限定されるものでないが、例えばプラズモン共鳴(BiaCore)によりオンおよびオフ速度(それぞれkonおよびkoff)を測定することを包含するいくつかの方法で測定することができ、そして全体的会合(Kass)もしくは解離定数(K)(ここでKassはkon/koffであり、そしてKはkoff/konである)として表すことができる。またKは、例えば結合パートナーへのリガンドの結合が半飽和である濃度を測定することにより経験的にも測定することができる。Kの別の測定方法は、1種の結合体もしくはリガンドを標識(labeled)もしくは標識(tagged)し、かつ一定濃度で保持する一方、試験結合体もしくはリガンドの濃度を変えて添加して、競合してその同族の結合パートナーから標識物質を離し、標識が半分だけ減少する濃度を決定することによる競合アッセイによる。
【0017】
本明細書で使用する「アビディティー」(avidity)という用語は、リガンドおよび結合パートナー双方が多価であることができ、かつ複数の会合および解離反応に対する傾向が特定の一リガンドに対して同時に起こり得る限り、結合パートナーに結合された
まま留まるリガンドの傾向の尺度であることを意図している。従ってアビディティーは既知の親和性をもつ結合パートナーの多価コンホメーションの見かけの親和性の増大により測定することができる。
【0018】
本明細書で使用される「Fc含有タンパク質」もしくは「Fc含有分子」という用語は、1個のリガンド結合ドメインおよび少なくとも1個の免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインを有する単量体、二量体もしくはヘテロ二量体タンパク質を指す。CH2およびCH3ドメインは該タンパク質/分子(例えば抗体)の二量体領域の少なくとも一部分を形成し得る。
【0019】
「抗体」という用語は、抗体、それらの消化フラグメント、特定部分およびバリアントを包含することを意図し、これらには限定するわけではないが、抗体ミメティックスを含み、すなわち抗体もしくはその特定フラグメントもしくは部分の構造および/もしくは機能を模倣し、かつ限定されるわけでないがFc受容体(例えばFcγRI(CD64)FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIIA(CD16A)およびFcRn)への結合、補体(例えばC1q)への結合、ADCCならびにCDCを含むFc媒介型機能を保持する抗体の部分を含んでなる。
【0020】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、リガンド結合ドメインが、動物抗体の少なくとも1つの重もしくは軽鎖抗体可変ドメインの少なくとも1つに対する実質的相同性を保持する、特定の形態のFc含有融合タンパク質である。
【0021】
本明細書で使用する抗体もしくは抗体類似体の「エフェクター機能」は、病原体もしくは異常な細胞、例えば腫瘍細胞が破壊され、そして身体から除去されるプロセスである。先天および適応免疫応答は、ADCC、CA(補体活性化)、C1q結合およびオプソニン化を含め、病原体を排除するためにほとんど同じエフェクター機能を使用する。
【0022】
本明細書で使用する「宿主細胞」は、抗体および抗体フラグメントを含むタンパク質、タンパク質フラグメント、または目的のペプチドを生成するように操作することができる任意の種類の細胞系を指す。宿主細胞には限定するわけではないが、培養された細胞、例えば哺乳動物の培養された細胞、例えばCHO細胞、BHK細胞、NSO細胞、SP2/0細胞またはバブリドーマ細胞、酵母細胞および昆虫細胞があるが、トランスジェニック動物または培養した組織内に含まれる細胞も含んでなる。
【0023】
「シアル酸」という用語は9炭素のカルボキシル化糖の1ファミリーの任意のメンバーを指す。シアル酸ファミリーの最も一般的なメンバーはN−アセチルノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノス−1−オニックI酸(しばしばNeu5Ac、NeuAcもしくはNANAと略記される)である。このファミリーの第二のメンバーは、NeuAcのN−アセチル基がヒドロキシル化されているN−グリコリル−ノイラミン酸(NGNA、Neu5GcもしくはNeuGc)である。この形態はげっ歯類および微生物起源の糖タンパク質中で優勢である。第三のシアル酸ファミリーメンバーは2−ケト−3−デオキシノヌロソン酸(KDN)(Nadanoら(1986)J.Biol.Chem.261:11550−11557;Kanamoriら、J.Biol.Chem.265:21811−21819(1990))である。また9−O−ラクチル−Neu5Acもしくは9−O−アセチル−Neu5Acのような9−O−C−C6アシルNeu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9アジド−9−デオキシ−Neu5Acのような9−置換シアル酸も包含される。シアル(static)酸ファミリーの総説については、例えばVarki,Glycobiology 2:25−40(1992);Sialic Acids:Chemistry、Metabolism and Function、R.Schauer編(Springer Verlag、ニューヨーク(1992))を参照されたい。
【0024】
説明
Fcオリゴ糖のシアリル化のレベルがFcγ受容体に対する組換え産生された治療用抗体の親和性を変えて該抗体の生物学的作用の多様な局面の調節をもたらすことが、予期せぬことに見出された。より具体的には、高度にシアリル化されたAbが、低親和性受容体FcγRIIA(CD32A)およびFcγRIIIA(CD16A)に対する有意に低下した親和性を有し、また、FcγRIIIAが関連受容体であると考えられているインビトロADCCアッセイで有意に低下した活性を有することが見い出だされた。高度にシアリル化されたAbが、高親和性Fcγ受容体FcγRI(CD64)に対する増大された親和性を有すること、および完全にシアリル化されたFc含有タンパク質が、アシアリル化もしくは部分的シアリル化Fc含有タンパク質に比較して短縮した血清半減期を有することがさらに見い出された。Fcオリゴ糖からのシアル酸の除去(または不存在もしくは低下されたレベル)が、それらの標的分子に対する組換え生産された治療用抗体のアビディティーを高めることがさらに見い出された。これらの知見および支持する情報は、米国特許仮出願第60/695,769号、同第60/809,106号および同第60/841,153号明細書に記載された。
【0025】
いずれか1つの論理に束縛されることは望まないが、オリゴ糖から荷電した静的基の除去は、抗体構造全体に、より大きな柔軟性を可能にすると解釈でき、この柔軟性は一方に対するもう一方の関係で2個の結合ドメインの潜在的相互作用範囲(sphere)を拡大する。2種の抗原エピトープに二価で結合するAbの能力は、エピトープの到達可能性、方向、密度および移動性にもまた依存する。シアリル化の抗原結合の効果は、ウイルスもしくは細菌の表面抗原、およびさらにホモポリマーである可溶性抗原を認識するAbにもまた関係し得ると注目すべきである。なぜなら幾つかのAbは1より多くの抗原に結合するだけでなく、幾つかの抗原もまた1より多くのAbに結合される可能性がある可溶性免疫複合体内で、Abの柔軟性は個々のAb分子がどの程度まで二価で結合するかを決定できるからである。
【0026】
本発明は、Fcのオリゴ糖のシアリル化の改変および改変されたFc含有分子によるFc含有分子の特性の制御方法を含んでなる。シアル酸は生理学的pHで正味の負の荷電を有し、そして従ってFcに結合した炭水化物中のシアル酸の存在は、三次元構造、そしてこれゆえにCH2ドメインのコンホメーションを変え、それにより多様なリガンドもしくは受容体に対するFc結合に影響を及ぼすと期待され得る。改変されたFc含有分子は、FcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIIA受容体の1もしくは複数に対する親和性、ADCC活性、マクロファージもしくは単球活性化、ならびに血清半減期に影響を及ぼす。
【0027】
シアリル化された形態のFc含有タンパク質の濃縮
シアル酸含量が異なる特定のFc含有タンパク質のサブロット(sublot)を製造するための1つの取り組みは、Fc含有タンパク質調製物をシアリル化およびアシアリル化双方の分子を包含する不均質なFcオリゴ糖と一緒にし、そしてそれをシアリル化およびアシアリル化オリゴ糖に対する区別的な親和性を有する固定されたレクチンを含有するカラムに通すことである。結合しない通過物(T、素通り)すなわちカラム非結合画分を結合画分(B、結合)から分離でき、後者は溶出緩衝液がカラムを通過する間に回収される。弱結合画分すなわちカラム保持画分(R、保持)を、例えば、元のサンプルバッファーでのカラムの継続的洗浄の間に溶出してFc含有タンパク質を収集することにより別個に収集することもまた可能となり得る。使用されるレクチンに依存して、非結合画分は、結合する画分より高いか、もしくは低いシアル酸含量を有する可能性がある。
【0028】
シアリル化もしくはアシアリル化Fc含有タンパク質について濃縮できるレクチンの例は、末端シアル酸を持つオリゴ糖に特異的に結合するイヌエンジュ(Maackia amurensis)由来のレクチン(MAA)、および末端シアル酸もしくは末端N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)いずれかをもつオリゴ糖を特異的に結合するレクチンであるコムギ胚芽アグルチニン(WGA)である。別の例は、末端ガラクトースをもつオリゴ糖に結合するレクチンであるリシンI(RCA)である。後者の例では、非結合通過画分がシアリル化Fc含有分子について濃縮され得る。
【0029】
Fc含有タンパク質の酵素的修飾
シアル酸含量が異なるFc含有タンパク質のサブロットを調製するための代替の一アプローチは、Fc含有タンパク質調製物の一部分をシアリダーゼ酵素で処理して、それによりシアル酸を除去することである。生じるアシアリル化物質を、生物学的活性の差違について、元の部分的シアリル化物質と比較することができる。元のFc含有タンパク質ロット中のシアル酸含量が高いほど、生物学的活性のいずれかの差違を検出する機会が多くなる。例えば、元のタンパク質調製物中のFcオリゴ糖の10%のみがシアル酸を含有した場合、オリゴ糖の0〜1%がシアル酸を含有する場合にシアリダーゼ処理後の生物学的活性の差違を検出することは困難となり得る。シアリダーゼ処理の前後のFc含有タンパク質の生物学的活性を比較することは、シアリダーゼ処理がフコシル化およびアフコシル化オリゴ糖の異なる分布をもたらす場合に、より困難になる可能性がある。なぜならフコースレベルは、ヒトFcγRIIIAに対する親和性およびADCC活性のようなある種の生物学的活性に対する顕著な効果を有するからである。例えば、オリゴ糖の30%から0%までのシアル酸含量の低下が、5%から15%まで増大するアフコシル化オリゴ糖の比率をもたらすならば、ADCC活性の差違をシアル酸含量の低下のみに帰することが可能でないからである。フコシル化およびアフコシル化オリゴ糖の相対比率に対するシアリダーゼ処理のこうした効果は、シアル酸残基を除去するためのシアリダーゼによる処理前のフコシル化およびアフコシル化オリゴ糖のシアリル化の差違により可能である(そして観察された)。
【0030】
Fc領域中に存在するオリゴ糖のシアリル化はインビトロでグリコシル化法を使用してもまた達成することができる。こうした方法を使用して、最大にシアリル化された糖型の抗体サンプルを達成することが可能である。この知見に基づき、最大にシアリル化された糖型の抗体もしくは他のFc含有構築物は、アシアリル化もしくは過小シアリル化抗体と比較して短縮された血清半減期を有することができる。従って本発明の方法は、抗体もしくは免疫グロブリンFc領域を含有する他の組換えタンパク質構築物を含んでなる糖型の均質性、および該抗体もしくは構築物のインビボでの機能の局面の双方を制御するための任意の手段を提供する。
【0031】
グリコシルトランスフェラーゼはもちろんオリゴ糖を合成するように機能する。それらは優れた立体化学および位置化学の配置をもつ特定の生成物を生じる。グリコシル残基の転移はオリゴ糖もしくは多糖の伸長もしくは合成をもたらす。シアリルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼなどを包含する多数のグリコシルトランスフェラーゼ型が記述されている。
【0032】
本発明で有用であるグリコシルトランスフェラーゼには、例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)もしくは他の細菌起源のもの、ならびに、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒトおよび昆虫ならびにウイルス起源のもののような、α−シアリルトランスフェラーゼ、α−グルコシルトランスフェラーゼ、α−ガラクトシルトランスフェラーゼ、α−フコシル−トランスフェラーゼ、α−マンノシルトランスフェラーゼ、α−キシロシルトランスフェラーゼ、α−N−アセチルへキソサミニルトランスフェラーゼ、β−シアリルトランスフェラーゼ、β−グルコシルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシルトランスフェラーゼ、β−フコシルトランスフェラーゼ、β−マンノシルトランスフェラーゼ、β−キシロシルトランスフェラーゼおよびβ−N−アセチルヘキソサミニルトランスフェラーゼがある。好ましくは、グリコシルトランスフェラーゼは、膜結合ドメインが欠失している短縮バリアントのグリコシルトランスフェラーゼ酵素である。
【0033】
例となるガラクトシルトランスフェラーゼには、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C.番号2.4.1.151、例えばDabkowskiら、Transplant Proc.25:2921(1993)およびYamamotoら Nature 345:229−233(1990)を参照されたい)、ならびにα(1,4)ガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C.番号2.4.1.38)がある。シアリルトランスフェラーゼのような他のグリコシルトランスフェラーゼを使用することができる。
【0034】
しばしばシアリルトランスフェラーゼと称されるα(2,3)シアリルトランスフェラーゼを、シアリルラクトースもしくはより高次構造の製造に使用することができる。この酵素はCMP−シアル酸からシアル酸(NeuAc)をGal残基に転移し、2種の糖間にα結合の形成を伴う。糖間の結合(連結)は、NeuAcの2位とGalの3位の間である。α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.6)と称される例示的なα(2,3)シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸をGalβ1→3Glc二糖もしくは配糖体の非還元末端Galに転移する。Van den Eijndenら、J.Biol.Chem.、256:3159(1981)、Weinsteinら、J.Biol.Chem.、257:13845(1982)およびWenら、J.Biol.Chem.、267:21011(1992)を参照されたい。別の例示的α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(EC 2.4.99.4)は、シアル酸を二糖もしくは配糖体の非還元末端Galに転移する。Rearickら、J.Biol.Chem.、254:4444(1979)およびGillespieら、J.Biol.Chem.、267:21004(1992)を参照されたい。さらに例となる酵素にはGal−β−1,4−GlcNAc α−2,6シアリルトランスフェラーゼ(Kurosawaら Eur.J.Biochem.219:375−381(1994)を参照されたい)がある。
【0035】
本発明のオリゴ糖の調製でとりわけ有用な他のグルコシルトランスフェラーゼは、α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ、α(1,3)マンノシルトランスフェラーゼ、β(1,4)マンノシルトランスフェラーゼ、Dol−P−Man合成酵素、OCh1およびPmt1を包含するマンノシルトランスフェラーゼである。
【0036】
さらに他のグルコシルトランスフェラーゼは、α(1,3)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Nagataら J.Biol.Chem.267:12082−12089(1992)およびSmithら J.Biol.Chem.269:15162(1994))ならびにポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら J.Biol.Chem.268:12609(1993))を包含するN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼがある。適するN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼには、GnTI(2.4.1.101、Hullら、BBRC 176:608(1991))、GnTIIおよびGnTIII(Iharaら J.Biolchem.113:692(1993))、GnTV(Shoreibanら J.Biol.Chem.268:15381(1993))がある。
【0037】
方法が工業的規模で実施される態様について、グリコシルトランスフェラーゼを支持体に固定することが有利となり得る。この固定は、生成物のバッチからの酵素の除去および引き続いて該酵素の再使用を容易にする。グリコシルトランスフェラーゼの固定化は、例えば、トランスフェラーゼをその膜結合ドメインから取り出し、そしてその場所にセルロース結合ドメインを結合することにより成すことができる。当業者は、他の固定化方法もまた使用することができ、そして入手可能な文献に記述されていると理解するであろう。
【0038】
本質的にアクセプター基質は、特定のグリコシルトランスフェラーゼが特異性を表す末端糖残基を有する任意の単糖もしくはオリゴ糖であることができるので、基質はその非還元端の位置で置換され得る。従って配糖体アクセプターは単糖、オリゴ糖、蛍光標識した糖、もしくはアミノグリコシド抗生物質、ガングリオシドのような糖誘導体、または抗体および他のFc含有タンパク質を包含する糖タンパク質であり得る。好ましい態様の一群において、配糖体アクセプターは、オリゴ糖、好ましくはGalβ(1−3)GlcNAc、Galβ(1−4)GlcNAc、Galβ(1−3)GalNAc、Galβ(1−4)GalNAc、Manα(1,3)Man、Manα(1,6)ManもしくはGalNAcβ(1−4)−マンノースである。とりわけ好ましい態様では、オリゴ糖アクセプターはFc含有タンパク質のCH2ドメインに結合されている。
【0039】
活性化された糖基質、すなわち糖−ヌクレオシドリン酸の使用は、グリコトランスフェラーゼ反応と同時に再生反応(再利用系としてもまた知られる)を使用することのいずれかにより回避し得る。例えば、例えば米国特許第6,030,815号明細書に教示されるとおり、CMP−シアル酸再利用系は、それがα(2,3)シアリルトランスフェラーゼの存在下でシアリルトランスフェラーゼアクセプターと反応してシアリル糖を形成する際に、CMP−シアル酸(CMP−NeuAc)を補給するためにCMP−シアル酸合成酵素を利用する。本発明で有用なCMP−シアル酸再生系は、シチジン一リン酸(CMP)、ヌクレオシド三リン酸(例えばアデノシン三リン酸(ATP)、リン酸ドナー(例えばホスホエノールピルビン酸もしくはアセチルリン酸)、リン酸をリン酸ドナーからヌクレオチド二リン酸に転移することが可能なキナーゼ(例えばピルビン酸キナーゼもしくは酢酸キナーゼ)、および末端リン酸をヌクレオシド三リン酸からCMPに転移することが可能なヌクレオシド一リン酸キナーゼ(例えばミオキナーゼ)を含んでなる。α(2,3)シアリルトランスフェラーゼおよびCMP−シアル酸合成酵素は、活性化されたシアル酸の除去が合成の前進速度を維持するようにはたらくため、CMP−シアル酸再生系の一部としてもまた見ることができる。修飾されたCMP−シアル酸合成酵素の酵素の遺伝子を含んでなるファージミドを使用するシアリル化手順でのシアル酸化合物の合成および使用は、1992年10月1日公開の国際特許出願第WO92/16640号パンフレットに開示されている。
【0040】
オリゴ糖調製の代替的方法は、米国特許第5,952,203号明細書に教示されるとおり、グリコシルトランスフェラーゼ、およびドナー糖としての糖ヌクレオチドの必要性を未然に防ぐドナー糖としての活性化されたグリコシル誘導体の使用を介する。活性化グリコシル誘導体は、高価な糖ヌクレオチド、通常は、ヌクレオチドリン酸が糖の1位にα結合されているヌクレオチド二リン酸糖もしくはヌクレオチド一リン酸糖である天然に存在する基質に対する代替として作用する。
【0041】
有用である活性化された配糖体誘導体は、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、トシル酸エステル、メシル酸エステル、トリフレートエステルなどのような活性化された脱離基を包含する。活性化された配糖体誘導体の好ましい態様は、フッ化グリコシルおよびグリコシルメシレートを包含し、フッ化グリコシルがとりわけ好ましい。フッ化グリコシルの中で、フッ化α−ガラクトシル、フッ化α−マンノシル、フッ化α−グルコシル、フッ化α−フコシル、フッ化α−キシロシル、フッ化α−シアリル、フッ化α−N−アセチルグ
ルコサミニル、フッ化α−N−アセチルガラクトサミニル、フッ化β−ガラクトシル、フッ化β−マンノシル、フッ化β−グルコシル、フッ化β−フコシル、フッ化β−キシロシル、フッ化ベータ−シアリル、フッ化β−N−アセチルグルコサミニルおよびフッ化β−N−アセチルガラクトサミニルが最も好ましい。
【0042】
フッ化グリコシルは、最初に糖をアセチル化し、次いでそれをHF/ピリジンで処理することにより、遊離糖から調製することができる。アセチル化したフッ化グリコシルは、メタノール中で穏やかな(触媒的)塩基(例えばNaOMe/MeOH)との反応により脱保護できる。加えて、多くのフッ化グリコシルは商業的に入手可能である。他の活性化されたグリコシル誘導体は、当業者に既知の慣習的方法を使用して調製できる。例えば、グリコシルメシレートは、完全にベンジル化したヘミアセタールの形態の糖の塩化メシルでの処理、次いでベンジル基を除去するための触媒的水素化により調製できる。
【0043】
反応のさらなる成分は触媒量のヌクレオシドリン酸もしくはその類似体である。本発明での使用に適するヌクレオシド一リン酸には、例えば、アデノシン一リン酸(AMP)、シチジン一リン酸(CMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、イノシン一リン酸(IMP)およびチミジン一リン酸(TMP)がある。本発明による使用に適するヌクレオシド三リン酸には、アデノシン三リン酸(ATP)、シチジン三リン酸(CTP)、ウリジン三リン酸(UTP)、グアノシン三リン酸(GTP)、イノシン三リン酸(ITP)およびチミジン三リン酸(TTP)がある。好ましいヌクレオシド三リン酸はUTPである。好ましくは、ヌクレオシドリン酸はヌクレオシド二リン酸、例えばアデノシン二リン酸(ADP)、シチジン二リン酸(CDP)、ウリジン二リン酸(UDP)、グアノシン二リン酸(GDP)、イノシン二リン酸(IDP)およびチミジン二リン酸(TDP)がある。好ましいヌクレオシド二リン酸はUDPである。上記の通り、本発明はヌクレオシドリン酸の類似体でもまた実施し得る。適する類似体には、例えばヌクレオシド硫酸およびスルホン酸を包含する。なお他の類似体には単純なリン酸、例えばピロリン酸がある。
【0044】
ヒドロキシル化された形態のシアル酸が優位を占める(NGNA)例えばマウス細胞中で産生される組換えタンパク質の修飾手順は、タンパク質をシアリダーゼで処理してNGNA型シアル酸を除去すること、次いで試薬UDP−Galおよびβ1,4Galトランスフェラーゼを使用して高度に均質なG2糖型を生じる酵素的ガラクトシル化である。調製物はその後、場合により、高度に均質なG2S2糖型を生じるために試薬CMP−NANAおよびアルファ−2,3シアリルトランスフェラーゼで処理することができる。抗体またはFc含有分子のFc領域に付けられたグルカンからシアル酸残基の除去もしくは排除が望ましい場合、シアリダーゼを使用することができる。特異性が変動する多くのシアリダーゼが文献で知られている。可溶性CHO細胞のシアリダーゼが同定され(Ferrari et al,1994,Glycobiology 4:367−373)、そして培養基への漏出があるならば、組換えタンパク質のグルカン上のシアル酸の細胞外除去の原因となり得る。このようにシアル酸基の付加および除去は、CHO細胞株により生産されるタンパク質上で変動し、そして異質のグリカン構造の原因となり得る組換えタンパク質の生産中に起こり得る可能性がある。
【0045】
シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)は、人間に対する様々な種の細菌から単離され、そしてクローン化され、基質、例えば糖タンパク質、糖脂質およびガングリオシドおよび結合に対して変動する特異性を持つ。静的基、例えばヒドロキシル化(NGNA)もしくは非ヒドロキシル化ノイラミン酸、およびα2,3−、α2,6−もしくはα2,8でよく、そして内部の残基に連結した分枝シアル酸であり得る結合の型に対して広い特異性を持つ酵素には:ウェルチ菌(Clostridium perfringens)由来のもの、およびアースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)由来のシアリダーゼ(シアリダーゼA、N−アセチルノイラミン酸グリコヒドロラーゼ(glycobyhdroalse):EC3.2.1.18)がある。精製された酵素は例えばカリフォルニア州、サンレアンドロのプロザイム(Prozyme)から市販されている。A.ウレアファシエンスのシアリダーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、Lundbeck et al.2005.Biotechnolo.Appl.Bochem 41:225−231によりクローン化された(NCBI寄託番号AY934539)。
【0046】
当該技術分野で周知の方法を使用して、細胞外オリゴ糖に作用することができる酵素を分泌する宿主細胞は、例えば分泌されたエンドグルカナーゼにより放出される発酵糖によりエタノールを生産することができる培養について米国特許第7,026,152号明細書に教示されているように構築することができる。Lundbeck et al.(同上)では、短縮された形のシアリダーゼAを発現させ、これは組換えエリスロポイエチンムテインからシアル酸残基を除去できた。治療用抗体または他のFc含有タンパク質を発現し、そして同時にその発現したタンパク質を細胞外培地で脱シアリル化することができる哺乳動物の宿主細胞を操作することは示されたことがなかった。出願人の本発明は、可溶性形態のシアリダーゼAが抗体生産細胞により同時に発現され、そしてそのような細胞の培養物から回収される生じた抗体産物は、それらのFc部分の分子中に減少したシアル酸含量を有することを示す。そのように生産されたシアル酸が至適化された抗体は、通常の細胞株により生産される抗体と比べて増強したADCC活性を有する。
【0047】
シアル酸バリアントの構造の特徴付け
シアル酸バリアントを含有するオリゴ糖の構造の特徴付けのため、抗体調製物を包含する糖タンパク質調製物をペプチド−N−グリコシダーゼFで処理してN−結合オリゴ糖を遊離させた。酵素ペプチド−N−グリコシダーゼF(PNGアーゼF)はアスパラギンに結合したオリゴ糖を切断する。遊離されたオリゴ糖を、記述されるとおり(Anumula,K.R.とDhume ST Glycobiology.1998 Jul;8(7):685−94を参照されたい)アントラニル酸(2−アミノ安息香酸)で蛍光標識し、精製し、そしてHPLCにより分析した。図3に示されるとおり、クロマトグラム中でG0、G1、G2、G2S1およびG2S2として分離されるオリゴ糖を検出し、そして定量できる。グリカンを天然に欠く、またはグリカンが化学的もしくは酵素的に奪われたアグリコシル化種をGnoと称する。
【0048】
シアル酸バリアントの生物学的特徴付け
Fc含有タンパク質は数種の公知のインビトロアッセイにより機能性について比較できる。とりわけ、Fcγ受容体のFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIファミリーのメンバーに対する親和性は興味深い。これらの測定は、組換えの可溶性形態の受容体もしくは細胞と会合した形態の受容体を使用して行うことができる。加えて、FcRn(IgGの延長された循環半減期の原因である受容体)に対する親和性は、例えば組換えの可溶性FcRnを使用するBIAcoreにより測定できる。ADCCアッセイおよびCDCアッセイのような細胞に基づく機能アッセイは、特定のバリアント構造の機能的な結果の見込みに関する洞察を提供する。一態様において、ADCCアッセイは、一次エフェクター細胞として作用するNK細胞を有するよう構成され、それによりFcγRIIIA受容体に対する機能的効果を反映する。食作用アッセイもまた、スーパーオキシドもしくは炎症メディエーター放出のような細胞応答を測定するアッセイが成し得るように、種々のバリアントの免疫エフェクター機能を比較するために使用できる。
【0049】
親和性およびアビディティーアッセイ
天然に多価である抗体を、標的タンパク質への結合の多様なパラメータを決定するために試験できる。見かけのKdを決定するための慣習的一形式は、ELISA(酵素結合免
疫吸着アッセイ)もしくはRIA(ラジオイムノアッセイ)である。「ELISA」は、間接検出法を使用して固体支持体上で実施される結合アッセイを意味するために一般に使用されるようになった。一般にELISAでは、可溶性被検体を、固相反応体に特異的に結合した後に溶液から除去する。該方法で、固相反応体は、抗原もしくは抗体をプラスチック製マイクロタイタープレートに吸着させることにより調製し;他の方法では、固相反応体は細胞に会合した分子である。全部のプロトコールで、固相試薬を、酵素に共有結合させた二次もしくは三次反応体とインキュベーションする。非結合結合体を洗浄することにより除去し、そして発色もしくは蛍光発生基質を添加する。結合された酵素結合体により基質が加水分解されると、着色したもしくは蛍光の産物が生成される。最後に生成物を視覚的にもしくはマイクロタイタープレートリーダーで検出する。生成されるシグナルの強度は試験混合物中の当初の被検体の量に比例する。
【0050】
固相アッセイの一変形において、抗原は、例えば、抗原上の無関係なドメインを認識する固定した捕捉抗体を使用して、または標的タンパク質に操作された「標識」例えばポリヒスチジン配列に結合する抗体もしくは他のリガンドを使用することにより、間接的に固定もしくは捕捉できる。
【0051】
表面抗原に対する抗体の結合の代替的測定方法は、細胞表面上に抗原を(天然にもしくは遺伝子操作により)発現する全細胞を使用することによる。細胞を、一次抗体を含有する試験溶液とインキュベートする。非結合の抗体を洗い流し、次いで細胞を一次抗体に特異的な抗体に結合した酵素とインキュベーションする。非結合の酵素結合体を洗い流し、そして基質溶液を添加する。結合した一次抗体のレベルは基質加水分解の量に比例する。これは、単位容量あたりの細胞の数が一定に保持される場合に定量的となる。あるいは検出は、放射標識リガンドを使用して、上記の直接結合もしくは競合により行う。ELISAアッセイのプロトコールは例えばAusebel,FMら Current Protocols in Molecular Biology.2003 John Wiley & Sons,Incに見い出される。
【0052】
結合速度、会合速度および解離速度は、プラズモン表面共鳴により検出される固相結合体もしくはリガンドならびに移動溶液相結合体もしくはリガンドを使用するBIAcore技術を使用しても測定できる。
【0053】
エフェクター機能の評価方法
治療用Fc含有タンパク質の消失および従って薬物動態における抗体グリコシル化の役割は最低限と思われ;循環からのIgG除去の原因であると考えられる新生児Fc受容体(FcRn)への結合は、抗体のFc部分上でN−結合オリゴ糖の欠如により乱されない(unperturbed)ようである。
【0054】
IgG抗体媒介型免疫応答を細胞のエフェクター機能とを結びつけるIgG Fc受容体(FcR)は、Fcγ受容体、すなわちFcRI(CD64)、FcRII(CD32)(FcRIIAおよびFCRIIB双方)ならびにFcRIII(CD16)を包含する。3種全てが単球上に提示されて見い出される。しかしながら、多様な標的細胞上のこれらの受容体の生成は差別的にかつ他の因子に応答して起こるようである。従って、Fcγ受容体に対するグリコシル化修飾型のFc含有生物治療薬の親和性の測定は、高められたエフェクター機能を予測するための1つの適切な測定である。
【0055】
Fcグリカン中に低レベルのフコースを含むヒトIgG1 Abは、ヒトCD16 FcRに対するより大きい親和性、そしてヒトPBMCエフェクター細胞を使用したADCCアッセイで劇的に高められたインビトロ活性を有することが報告された(Shinkawaら J Biol Chem 278(5):3466−3473、2003;Sh
ieldsら J Biol Chem 277(30):26733−26740、2002;Umanaら、Nat Biotech 17:176−180、1999)。
【0056】
インビトロADCCアッセイを使用したエフェクター機能の評価方法は、定量的様式で実施できる。従って、標的およびエフェクター細胞株を正しく選択し、そして細胞が分裂し続けられないこと、または内容物、例えば51Crの放出のいずれかにより殺細胞を評価することにより、同族リガンドを提示する細胞の破壊を引き起こす結合した抗体の能力を測定するためのインビトロアッセイを設計できる。標的細胞は、本発明の抗体、抗体フラグメントもしくは融合タンパク質の標的リガンドを通常発現する細胞株であるか、または標的タンパク質をその表面上で発現し、そして保持するよう操作できる。このような操作された細胞株の一例がK2細胞、すなわち成熟サイトカインのアミノ酸1−12の欠失の導入により膜貫通形態として留まる組換えヒトTNFをその表面上で安定に発現するSp2/0マウス骨髄腫細胞株である(Perezら、Cell 63:251−258、1990)。この細胞株は、抗TNF抗体、抗体フラグメント、またはFcドメインもしくはFcドメイン活性を有する操作された抗TNFαを標的とする融合タンパク質のADCC活性の改変を評価するのに有用である。
【0057】
インビトロADCC活性アッセイのためのエフェクター細胞は、ヒトもしくは他の哺乳動物起源(source)のPBMC(末梢血単球細胞)でよい。PBMCエフェクター細胞は、承認された方法によりドナーから採血した後に新鮮な状態で単離し得る。使用できる他の単球もしくはマクロファージ細胞は、腹腔滲出液のような滲出液由来のものである。
【0058】
細胞の免疫機能を測定するためのインビボモデルもまた利用可能である。例えば、T細胞活性化は抗体Fcドメインが特異的Fcγ受容体と結合する様式に依存するので、抗CD3抗体を使用してマウスでのT細胞活性化を測定できる。インビトロで、CCケモカイン受容体4に対するキメラヒトIgG1 Abの高フコースおよび低フコース変更体の抗腫瘍活性を比較し、それらのインビトロADCC活性の差違は観察されなかった(マウスエフェクター細胞を使用して)が、低フコースAbはインビボでより強力な効力を示した。ヒトエフェクター細胞は提供されず、そしてマウスは内因性NK細胞を保持する(Niwaら Cancer Res 64:2127−2133、2004)。ヒトNK細胞上のCD16受容体はIgG1 Abのフコースレベルに対して高められた感受性を示したので、これらのデータは、ヒトエフェクター細胞で研究されたものとは明らかに異なる機構がマウスで作動していることを示唆する。1つの可能性はより最近発見されたマウスCD16−2受容体である(Mechetinaら Immunogen 54:463−468、2002)。マウスCD16−2の細胞外ドメインは、より良く知られているマウスCD16受容体よりもヒトCD16Aに対して有意に高い配列同一性(65%)を有し、それが結合するIgGのフコースレベルに対してマウスCD16よりも感受性であり得ることを示唆する。報告されたマウスマクロファージ様J774細胞中でのその発現は、CD16−2を発現するマウスマクロファージがNiwaら(2004)により記述された低フコースAbによるより大きな抗腫瘍活性の原因となり得る可能性と一致する。従って、マウスエフェクター細胞へのヒトIgG1型Fc含有タンパク質によるFc受容体結合の実験は予測的でない。
【0059】
タンパク質製造方法
Fc含有タンパク質の製造に関与する多様な方法が、シアル酸を含むFcオリゴ糖構造に影響し得る。一態様において、Fc含有タンパク質を分泌する宿主細胞は高熱処理(例えば56℃30分間)に前以てかけられなかった血清、例えばウシ胎児血清(FBS)の存在下で培養される。これは、それらの細胞から分泌されるFc含有タンパク質からシアル酸を除去できる活性なシアリダーゼ酵素の血清中での天然の存在により、シアル酸を含有しないかもしくは非常に少量のシアル酸を含有するFc含有タンパク質を生じることができる。別の態様において、Fc含有タンパク質を分泌する細胞は応用(例えば治療的適応症)のためにFc含有タンパク質が高レベルのシアル酸を有するように、高熱処理にかけられ、それによりシアリダーゼ酵素を不活性化させた血清の存在下で、または血清もしくはシアリダーゼ酵素を含有しうる他の培地成分の不存在下のいずれかで培養される。
【0060】
別の態様において、至適なシアル酸含量に好都合となるFc含有タンパク質を精製し、そしてさらに処理するために使用する条件が確立されている。例えば、シアル酸は酸不安定性であるため、低pH環境への長時間の曝露(例えばプロテインAクロマトグラフィーカラムからの溶出後、もしくはウイルス不活性化過程の間)は、同時にシアル酸含量の低下につながりる可能性がある。
【0061】
宿主細胞の細胞操作
本明細書に記載するように、組換えFc含有タンパク質もしくはモノクローナル抗体の発現に選択される宿主細胞は、限定するわけではないが免疫グロブリンCH2ドメイン中のタンパク質を装飾するオリゴ糖部分の組成の変動を含む最終組成への重要な要因である。従って、本発明の一つの観点では、所望の治療用タンパク質を発現する産生細胞の使用および/もしくは開発のために適切な宿主細胞の選択が関与する。
【0062】
一態様において、宿主細胞はシアリルトランスフェラーゼが天然に欠損している、すなわちそれを欠く細胞である。別の態様において、宿主細胞はシアリルトランスフェラーゼを欠くように遺伝子的に修飾もしくは処理されている。さらなる一態様において、宿主細胞は、低下したもしくは検出不可能なレベルのシアリルトランスフェラーゼを発現するよう選択された誘導体宿主細胞である。さらに別の態様において、宿主細胞はCMP−シアル酸合成酵素(シアル酸を抗体に転移するためにシアリルトランスフェラーゼにより使用されるシアル酸の供給源であるCMP−シアル酸の形成を触媒する酵素)を天然に欠くか、またはそれを欠くように遺伝子的に修飾もしくは処理されている。関連する態様において、宿主細胞はピルビン酸合成酵素(ピルビン酸からシアル酸を形成する酵素)を天然に欠くものであるか、またはそれを欠くように遺伝子的に修飾もしくは処理することができる。
【0063】
付加的な態様において、宿主細胞は、該細胞で発現される抗体がガラクトースを欠くように、ガラクトシルトランスフェラーゼを天然に欠くものであるか、またはそれを欠くように遺伝子的に修飾もしくは処理され得る。ガラクトースなしでは、シアル酸は結合されるない。別の態様において、宿主細胞は、生産の間に抗体からシアル酸を除去するシアリダーゼ酵素を天然に過剰発現できるか、または過剰発現するように遺伝子的に修飾され得る。こうしたシアリダーゼ酵素は、抗体が分泌される前に細胞内で抗体に作用することができ、または培地に分泌され、そして培地に既に分泌された抗体に作用できる。改変されたグリコシラーゼを持ち、そして改変さられた炭水化物組成を持つ糖タンパク質を発現する細胞株の選択方法は記述されている(Ripka and Stanley、1986.Somatic Cell Mol Gen 12:51−62;第US2004/0132140号明細書)。強化されたADCCを生じる改変されたグリコシル化パターンをもつ抗体を生産するための宿主細胞の操作方法は、例えば米国特許第6,602,864号明細書に教示されており、ここで、宿主細胞は少なくとも1つの糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ、特にβ(1,4)−N−アセチルグルコサムニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をコードする核酸を持つ。
【0064】
宿主細胞のグリコシル化特性を宿主細胞のグリコシルトランスフェラーゼの操作を介して遺伝子的に操作することへの他の取り組みは、欧州特許第EP1,176,195号明細書に教示されるように活性(具体的にはα1,6フコシルトランスフェラーゼ(FUT
8遺伝子産物))を排除または抑制することが関与する。当業者には上に引用した特定の例以外で宿主細胞の操作方法を実施することは明らかである。さらに、操作される宿主細胞は哺乳動物起源のものでよく、あるいは骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫もしくは植物細胞、またはそれらのいずれかの誘導体、不死化もしくは形質転換細胞から選択できる。
【0065】
別の態様において、シアル酸結合に必要とされる酵素の活性の抑制または排除方法は、siRNA、遺伝子ノックアウトによるような遺伝子サイレンシング、または結合しかつその酵素活性を阻害する酵素に特異的な細胞内Abもしくはペプチドの同時発現によるような酵素阻害剤の付加、および他の既知の遺伝子工学技術よりなる群から選択できる。別の態様において、シアル酸結合を遮断する酵素、または既に結合されているシアル酸を除去するシアリダーゼ酵素の発現もしくは活性を高める方法は、組換え酵素遺伝子でのトランスフェクション、酵素RNAの合成を高める転写因子のトランスフェクション、もしくは酵素RNAの安定性を高める遺伝子修飾(全部、精製される生成物中でより低レベルのシアル酸をもたらすシアリダーゼのような酵素の強化された活性につながる)よりなる群から選択できる。別の態様において、特異的な酵素阻害剤を細胞培養基に添加できる。
【0066】
抗体
本出願に記載する抗体は、限定するわけではないがヒト、マウス、ウサギ、ラット、齧歯類、霊長類のような哺乳動物、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むことができ、またはそれらに由来することができ、そして単離されたヒト、霊長類、げっ歯類、哺乳動物、キメラ、ヒト化および/もしくはCDR移植抗インテグリン抗体、免疫グロブリン、切断生成物、ならびにそれらの他の特定部分およびバリアントを包含する。また本発明は、本明細書に記載するように当該技術分野で既知であるものと一緒に組み合せた、抗体をコードするかもしくは相補的な核酸、ベクター、宿主細胞、組成物、製剤、装置、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、ならびにそれらの作成および使用方法に関する。
【0067】
本発明はさらに、抗原、サイトカイン、インテグリン、抗体、増殖因子、細胞系統および分化のマーカーである表面抗原、ホルモン、受容体もしくはその融合タンパク質、血液タンパク質、凝固に関与するタンパク質、それらのいずれかのフラグメント、および前述のいずれかの構造もしくは機能的類似体に結合するCH2ドメイン中のグリコシル化が可能な免疫グロブリンもしくはそのフラグメントを発現する細胞、細胞株および細胞培養物を提供する。好ましい態様において、免疫グロブリン、そのフラグメントもしくは誘導体は標的細胞の表面上の抗原を結合する。とりわけ好ましい態様では、標的細胞は腫瘍細胞、腫瘍脈管構造の細胞もしくは免疫細胞である。特定の態様では、免疫グロブリン、そのフラグメントまたは誘導体はTNF、インテグリン、B細胞抗原または組織因子に結合する。
【0068】
さらに別の態様において、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物は、増殖因子もしくはホルモンを含んでなる融合タンパク質を検出可能に発現し得る。本発明により企図される増殖因子の例には、限定する訳ではないが、ヒト成長因子、血小板由来増殖因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、骨形成タンパク質、トランスフォーミング増殖因子、インスリン様増殖因子、またはグルカゴン様ペプチド、およびそれらのいずれかの構造もしくは機能的類似体を挙げることができる。
【0069】
本発明の単離された抗体は、ADCC活性をもつ抗体アイソタイプ、とりわけヒトIgG1(例えばIgG1 κおよびIgG1 λ)を有するものを包含し、そして、IgG2およびIgG3も多少は好ましく、あるいはFcドメイン中の特定の残基で改変さられた残基を含有するハイブリッドアイソタイプが他の種からのそれらの対(counter
part)である。抗体は完全長抗体(例えばIgG1)であり得るか、または抗原結合部分、およびADCC、補体活性化およびC1q結合を含むエフェクター機能を導き出すことが可能なFcの部分もしくはドメインのみを含むことができる。
【0070】
さらに、本発明の細胞、細胞株および細胞培養物により生産される免疫グロブリンフラグメントには、限定する訳ではないが、Fcまたは他のCH2ドメイン含有構造およびそれらのいずれかの構造もしくは機能的類似体を含むことができる。一つの態様において、免疫グロブリンフラグメントは二量体の受容体ドメイン融合ポリペプチドである。特定の態様では、二量体の受容体ドメイン融合ポリペプチドはエタネルセプトである。エタネルセプトは、皮下に投与され、そして患者の血清中のTNFαに結合し、そしてそれを生物学的に不活性にする、組換えの可溶性TNFα受容体分子である。エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に連結されたヒト75キロダルトン(p75)の腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分よりなる二量体融合タンパク質である。エタネルセプトのFc成分はCH2ドメイン、CH3ドメインおよびヒンジ領域を含有するが、しかしIgG1のCH1ドメインを含有しない。
【0071】
本発明の細胞株を使用して製造し易い他の生成物には、他の型の動物細胞株により現在製造され、そしてグリコシル化されることが可能なCH2を有する治療用もしくは予防用タンパク質を包含する。細胞表面上の標的抗原に結合する治療用のグリコシル化されたCH2ドメイン含有タンパク質がとりわけ好ましく、その細胞型の能力を奪うか、または身体から排除することが望ましい。多数のこうした治療用抗体が、ヒトIgG1、とりわけヒトCH1、CH2およびCH3ドメインを含んでなるIgG1、重鎖を含有するよう操作される。こうした治療用タンパク質は、限定する訳ではないが以下に本明細書で記載するものを含むことができる。
【0072】
現在REMICADE(商標)として販売されるインフリキシマブ。インフリキシマブは、149,100ダルトンのおよその分子量をもつキメラIgG1κモノクローナル抗体である。これはヒト定常およびマウス可変領域から構成される。インフリキシマブは1010M−1の会合定数でヒト腫瘍壊死因子α(TNF(α))に特異的に結合する。インフリキシマブは、可溶性および膜貫通の形態のTNF(α)に高い親和性で結合することによりTNF(α)の生物学的活性を中和し、そしてTNF(α)とその受容体との結合を阻害する。インフリキシマブにより結合された膜貫通TNF(α)を発現する細胞は、インビトロもしくはインビボで溶解され得る。インフリキシマブは、慢性関節リウマチ、クローン病および強直性脊椎炎の処置に指示される。インフリキシマブは、静脈内注入として与えられる3〜5mg/kgの用量、次いで処置されるべき疾患に依存してその後同様な2、6および/もしくは8週の用量、ならびに8週ごとの間隔で追加的に与えられる。
【0073】
ダクリズマブ(ZENAPAX(商標)として販売される)は、活性化されたリンパ球の表面上で発現されるヒト高親和性インターロイキン−2(IL−2)受容体のαサブユニット(p55 α、CD25もしくはTacサブユニット)に特異的に結合する、組換えDNA技術により生産された免疫抑制性ヒト化IgG1モノクローナル抗体である。ダクリズマブは、相補性決定領域(CDR)移植化マウス−ヒトキメラ抗体である。ヒト配列は、ヒトIgG1の定常ドメインおよびEu骨髄腫抗体の可変フレイムワーク領域由来であった。マウス配列はマウス抗Tac抗体のCDR由来であった。ダクリズマブは、腎移植を受けている患者の急性臓器拒絶の予防に指示され、そして一般に、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを包含する免疫抑制的処方の一部として使用される。
【0074】
バシリキシマブ(SIMULECT(商標)として販売される)は、活性化されたTリンパ球の表面上のインターロイキン−2受容体(α)−鎖(IL−2R(α)、CD25
抗原としてもまた知られる)に特異的に結合し、そして遮断する免疫抑制剤として機能する、組換えDNA技術により生産されるキメラ(マウス/ヒト)モノクローナル抗体である。アミノ酸配列に基づき、タンパク質の計算される分子量は144キロダルトンである。それは、ヒト重および軽鎖定常領域遺伝子(IgG1)、ならびにIL−2R(α)に選択的に結合するRFT5抗体をコードするマウス重および軽鎖可変領域遺伝子を含有するプラスミドを発現するよう遺伝子的に操作された、樹立されたマウス骨髄腫細胞株の醗酵から得られる糖タンパク質である。バシリキシマブは、シクロスポリンおよびコルチコステロイドを包含する免疫抑制的処方の一部として使用される場合に、腎移植を受けている患者での急性臓器拒絶の予防に指示される。
【0075】
アダリムマブ(HUMIRA(商標)として販売される)は、ヒト腫瘍壊死因子(TNF)に特異的な組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。アダリムマブは、ヒト由来重および軽鎖可変領域ならびにヒトIgG1 κ定常領域をもつ抗体をもたらすファージディスプレイ技術を使用して創製された。HUMIRA(商標)は、1もしくは複数のDMARDに対する不十分な応答を有した、中程度ないし重度に活動性の関節リウマチを伴う成人患者で、構造の損傷の徴候および症状を低下させ、そしてその進行を抑制するために指示される。HUMIRA(商標)は単独でまたはMTXもしくは他のDMARDと組合せで使用できる。
【0076】
リツキシマブ(RITUXAN(商標)として販売される)は、正常および悪性Bリンパ球の表面上で見出されるCD20抗原に向けられた、遺伝子的に操作されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。抗体は、マウス軽および重鎖可変領域配列およびヒト定常領域配列を含有するIgG1 κ免疫グロブリンである。リツキシマブは、およそ8.0nMのCD20抗原に対する結合親和性を有する。リツキシマブは再発性もしくは難治性の低グレードもしくは濾胞性CD20陽性B細胞非ホジキンリンパ腫を伴う患者の処置に指示される。RITUXAN(商標)は4もしくは8用量にわたり週1回375mg/m2 IV注入で与えられる。
【0077】
トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)として販売される)は、ヒト上皮細胞成長因子受容体2タンパク質HER2の細胞外ドメインに、細胞に基づくアッセイで高親和性(Kd=5nM)で選択的に結合する、組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体である。この抗体は、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域とともにヒトフレイムワーク領域を含有するIgG1 κである。HERCEPTINは、患者の腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現し、そして彼らの転移性疾患に対し1もしくは複数の化学療法処方を受けている転移性乳癌の患者の処置に単剤療法として指示される。パクリタキセルとの組合せのHERCEPTIN(商標)は、患者の腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現し、そして彼らの転移性疾患に対し化学療法を受けたことがない転移性乳癌の患者の処置に指示される。推奨される投薬用量は、90分注入として投与される4mg/kgトラスツズマブの初期負荷用量、および初期負荷用量が十分に耐容される場合に30分の注入として投与し得る2mg/kgトラスツズマブの週1回の維持用量である。
【0078】
アレムツズマブ(CAMPATH(商標)として販売される)は、21〜28kDの細胞表面糖タンパク質CD52に向けられる組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体(Campath−1H)である。アレムツズマブは、本質的に、全部のBおよびTリンパ球、単球、マクロファージおよびNK細胞の大多数、顆粒球の一亜集団、および男性生殖器官の組織の表面上に存在する非調節抗原CD52に結合する。Campath−1H抗体は、ヒト可変フレイムワークおよび定常領域、ならびにマウス(ラット)モノクローナル抗体からの相補性決定領域をもつIgG1 κである(Campath−1G)。Campathは、アルキル化剤で処置され、そしてフルダラビン療法に失敗した患者のB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)の処置に指示される。Campathの有効性の決
定は全体応答率に基づく。Campathは、当初1日に2時間のIV注入として投与される3mgで与えられ;一旦耐容されれば、1日用量を10mgに増加させ、そして耐えられるまで継続すべきである。この用量レベルに一旦耐容されれば、Campath 30mgの維持用量を開始することができ、そして12週まで週あたり3回投与できる。大部分の患者で、30mgへの増加は3〜7日で達成し得る。
【0079】
オマリズマブ(XOLAIR(商標)として販売される)は、ヒト免疫グロブリンE(IgE)に選択的に結合する組換えヒト化IgG1(κ)モノクローナル抗体である。オマリズマブは、肥満細胞および好塩基球の表面上の高親和性IgE受容体(Fc(ε)RI)へのIgEの結合を阻害する。Fc(ε)RIを持つ細胞上の表面結合型IgEの減少は、アレルギー応答のメディエーターの放出の程度を制限する。オマリズマブでの処置はまた、アトピー患者で好塩基球上のFc(ε)RI受容体の数も減少させる。オマリズマブは、通年性空気アレルゲンに対する陽性の皮膚試験もしくはインビトロ反応性を有し、そしてその症状が吸入コルチコステロイドで十分に制御されない、中等度から重度の持続性喘息の成人および青年(12歳以上)に指示される。オマリズマブは150ないし375mgの用量で2もしくは4週ごとにSC投与される。
【0080】
エファリズマブ(RAPTIVA(商標))は、ヒトCD11aに結合する免疫抑制性組換えヒト化IgG1 κアイソタイプモノクローナル抗体である。エファリズマブは、全白血球上で発現される白血球機能抗原−1(LFA−1)の(α)サブユニットCD11aに結合し、そしてCD11aの細胞表面発現を減少させる。エファリズマブは、細胞内接着分子−1(ICAM−1)へのLFA−1の結合を阻害して、それにより他の細胞型への白血球の接着を阻害する。LFA−1とICAM−1との間の相互作用は、Tリンパ球の活性化、内皮細胞へのTリンパ球の接着、および乾癬性皮膚を含む炎症の部位へのTリンパ球の移動を包含する複数の過程の開始および維持に寄与する。リンパ球の活性化および皮膚への輸送は慢性の尋常性乾癬の病態生理学である役割を演じている。乾癬性皮膚では、ICAM−1の細胞表面発現が内皮およびケラチノサイト上で上方制御されている。CD11aは、Bリンパ球、単球、好中球、ナチュラルキラー細胞および他の白血球の表面上でもまた発現されている。従って、エファリズマブがTリンパ球以外の細胞の活性化、接着、移動および数に影響を及ぼす可能性が存在する。RAPTIVA(商標)の推奨用量は、単回の0.7mg/kg SC馴化用量、次いで1mg/kgの週1回のSC用量(合計200mgを超えない最大単回用量)である。
【0081】
別の態様において、本発明の細胞株は、免疫グロブリンに由来しないがしかしFc含有タンパク質の定義内にあるポリペプチドを発現するように安定にトランスフェクトされるか、または別の方法で操作されている。
【0082】
本発明の抗体およびタンパク質をコードする核酸は、当該技術分野で公知のいくつかの方法で派生させることができる。一つの観点において、抗体は本発明のペプチドでマウスを免疫感作することにより調製されるハイブリドーマから都合よく得られる。したがって抗体は当該技術分野で公知のハイブリドーマ技術(例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John
Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1987−2001);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);Harlow and Lane、antibodies,a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);Colliganら編、Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク(1994−2001);Colliganら、Current Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons,ニューヨーク州ニューヨーク(1997−2001)(各々引用により全部、本明細書に編入する)を参照されたい)のいずれを使用しても得ることができる。
【0083】
抗体の標的結合部分、典型的には抗体の可変重および/もしくは可変軽ドメインの別の都合のよい派生方法では、例えばファージライブラリーで創製されるこうした結合ドメインのライブラリーからこれらの部分を選択する。ファージライブラリーは、無作為オリゴヌクレオチドのライブラリー、または免疫感作した動物もしくはヒトのB細胞からのような目的の配列を含有するポリヌクレオチドのライブラリーを挿入することにより創製できる(Smith,G.P.1985.Science 228:1315−1317)。抗体ファージライブラリーは、1ファージ中に重および軽鎖可変領域対を含有し、一本鎖FvフラグメントもしくはFabフラグメントの発現を可能にする(Hoogenboomら 2000、Immunol.Today 21(8)371−8)。ファジェミドライブラリーの多様性を操作して、追加の望ましいヒトモノクローナル抗体を調製し、そして続いて同定するようにライブラリーのモノクローナル抗体の免疫特異性を増大かつ/または改変することができる。例えば(H)鎖および(L)鎖免疫グロブリン分子をコードする遺伝子を、集成された免疫グロブリン分子中に新たなHL対を創製するように無作為に混合(シャッフル)することができる。加えて、HおよびL鎖をコードする遺伝子のいずれかもしくは双方を、免疫グロブリンポリペプチドの可変領域の相補性決定領域(CDR)中で突然変異を誘発でき、そして続いて所望の親和性および中和能力についてスクリーニングできる。抗体ライブラリーは、1もしくは複数のヒトフレイムワーク配列を選択し、そしてヒト抗体レパートリー由来のCDRカセットの集合物を導入するか、または設計された変動を介することにより合成で創製できる(Kretzschmar and
von Ruden 2000、Current Opinion in Biotechnology、13:598−602)。多様性の位置はCDRに制限されないが、しかし、可変領域のフレイムワークセグメントもまた包含でき、あるいはペプチドのような抗体可変領域以外を含んでもよい。
【0084】
抗体可変領域以外を包含し得る標的結合成分の他のライブラリーは、リボソームディスプレイ、酵母ディスプレイおよび細菌ディスプレイである。リボソームディスプレイは、タンパク質をRNAに結合したままmRNAをそれらの同族のタンパク質へ翻訳する方法である。核酸のコーディング配列はRT−PCRにより回収される(Mattheakis,L.C.ら 1994.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91、9022)。酵母ディスプレイは、膜結合α−アグルチニン酵母接着受容体aga1およびaga2(接合型系の一部)の融合タンパク質の構築に基づく(Broderら 1997.Nature Biotechnology、15:553−7)。細菌ディスプレイは、細胞膜もしくは細胞壁と会合する輸送された細菌タンパク質への標的の融合に基づく(Chen and Georgiou 2002.Biotechnol Bioeng、79:496−503)。
【0085】
ハイブリドーマ技術に比較して、ファージおよび他の抗体ディスプレイ法は、インビトロで、かつ抗原に対する宿主の影響の可能性またはその逆の制限なしに、抗原標的に対する選択を操作する機会を提供する。
【0086】
宿主細胞
本明細書に記載する宿主細胞は、該抗体のオリゴ糖含量に規定されたシアル酸含量をもつ特定の抗体を生産することが可能な宿主細胞を含んでなる。
【0087】
連続的ゲノムDNA配列から転写される大部分の遺伝子と異なり、抗体遺伝子は、生殖系列で広く分離されうる遺伝子セグメントから集成される。とりわけ、重鎖遺伝子は、抗
体の可変(V)、多様性(D)および結合部(J)/定常(C)領域をコードする3個のゲノムセグメントの組換えにより形成される。機能的軽鎖遺伝子は2個の遺伝子セグメント(一方はV領域をコードし、そしてもう一方はJ/C領域をコードする)を連結することにより形成される。重鎖およびκ 軽鎖双方の遺伝子座は、1000kbを楽に越えて広がると推定される多くのV遺伝子セグメント(推定値は数百と数千の間で変動する)を含有する。対照的にλ遺伝子座ははるかに小さく、そしてマウスで第16染色体上のおよそ300kbに広がることが示されている。これは2個の可変遺伝子セグメントおよび4個の結合部/定常(J/C)領域遺伝子セグメントよりなる。機能的遺伝子の形成にはVとJ/C要素との間の組換えを必要とする。
【0088】
抗体が天然に生産されるB細胞中で、再配列された重およびκ 軽鎖双方の遺伝子の転写の制御は、V領域の上流の組織特異的プロモーターおよびJ−Cイントロン中に位置する組織特異的エンハンサー双方の活性に依存する。これらの要素は相乗的に作用する。また、第二のB細胞特異的エンハンサーがκ 軽鎖の遺伝子座中に同定されている。このさらなるエンハンサーはCkappaの9kb下流に位置する。従って、抗体発現遺伝子のハイブリドーマの不死化方法は、親B細胞系統の内因性プロモーターおよびエンハンサー配列に頼る。あるいは、本発明の核酸は、本発明の抗体をコードする内因性DNAを含有する宿主細胞中で、(操作により)スイッチを入れることにより宿主細胞中で発現させることができる。こうした方法は、例えば米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号および同第5,733,761号明細書(引用により全部、本明細書に編入する)に記載されるとおり、当該技術分野で公知である。
【0089】
抗体のゲノムDNAの人工的ベクターへのクローニングは、抗体を発現することができる宿主細胞の別の創製方法である。しかしながら、強力なプロモーターの後のモノクローナル抗体の発現は、高産生細胞株を同定し、かつより高収量モノクローナル抗体を得る機会を増大させる。本発明の抗体は、例えば当該技術分野で公知である組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマ(transfectoma)中で生産され得る。
【0090】
多様な異なる宿主細胞中でのポリペプチドのクローニングおよび発現のための系が公知である。適する宿主細胞は、細菌、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母およびバキュロウイルス系、ならびにトランスジェニック植物および動物を包含する。異種ポリペプチドの無傷のグリコシル化タンパク質の発現のために、当該技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、NSOマウス黒色腫細胞ならびに誘導細胞株、例えばSP2/0、YB2/0(ATC CRL−1662)ラット骨髄腫細胞、ヒト胎児腎臓由来細胞(HEK)、ヒト胚性網膜細胞PerC.6細胞、hep G2細胞、BSC−1(例えばATCC CRL−26)、および例えばバージニア州マナサスのアメリカンタイプカルチャーコレクション(www.atcc.org)から入手可能な多くの他の細胞を包含する。一般的な好ましい一細菌宿主は大腸菌(E.coli)である。
【0091】
CHO細胞、骨髄腫細胞、HEK293細胞、BHK細胞(BHK21、ATCC CRL−10)、マウスLtk−細胞およびNIH3T3細胞のような哺乳動物細胞は、異種遺伝子の安定発現に頻繁に使用されてきた。Cos(COS−1 ATCC CRL 1650;COS−7、ATCC CRL−1651)およびHEK293のような細胞株は組換えタンパク質の一過性発現に慣例に使用されている。
【0092】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞には、それらの高発現率により、Sp2/0、YB2/0(ATC CRL−1662)、NSO、およびP3
X63.Ag8.653(例えばSP2/0−Ag14)のような骨髄腫細胞を含む。特にNSO骨髄腫細胞と使用するために好ましい別の発現系は、国際公開第WO87/04462号、同第WO89/01036号パンフレットおよび欧州特許第EP338,841号明細書に開示されるGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合、抗体は宿主細胞中での該抗体の発現、またはより好ましくは宿主細胞が増殖する培地中への該抗体の分泌を可能とするのに十分な時間、宿主細胞を培養することにより生産される。抗体は、標準的タンパク質精製法を使用して培地から回収できる。
【0093】
CHO−K1およびDHFR−CHO細胞DG44およびDUK−B11(G.Urlaub,L.A.Chasin、1980.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77、4216−4220)は、例えば薬物メトトレキサート(MTX)を使用して、選択可能な増幅可能マーカーDHFRの取り込みにより目的の遺伝子の増幅が可能になる(R.J.Kaufman、1990.Methods Enzymol.185:537−566)ので、高レベルタンパク質生産に使用される。DHFRCHO細胞を、組換えmAbを高レベルで生産させるために成功裏に使用できる。DHFRCHOは、抗MCP−1抗体を80〜110mgの10細胞−1−1もしくは200mgの10細胞−1−1以上の速度で生産しうる。多様なプロモーター、例えばb−アクチンプロモーター、ヒトCMV MIEプロモーター、Adウイルス主後期プロモーター(MLP)、RSVプロモーター、およびマウス白血病ウイルスLTRが、これらのCHO細胞中でHおよびL鎖の発現を得るために使用されてきた。2種のIg鎖が独立した選択可能/増幅可能マーカーとともに2種の異なるプラスミドにより運ばれるmAb発現のための多数のベクターが文献に記述されている。DHFRマーカーに連結された1つの抗体鎖、例えばH鎖、およびNeoマーカーを持つL鎖発現カセット、もしくはその逆のベクターを、スピナーフラスコ中で180mgまでのヒト化mAb L−1 7日−1を得るために使用できる。最初の選択およびその後の増幅に使用される方法は変動する可能性があり、そして当業者に公知である。一般に高レベルのmAb発現は、以下の段階:すなわち候補クローンの初期選択およびその後の増幅、同時選択(例えばH鎖およびL鎖双方の発現ベクターがDHFR発現ユニットを持つ場合)、および増幅、多様な増幅可能なマーカーを使用する共増幅、ならびに大量培養での初期選択および増幅、次いで個々の高発現クローンを同定するための希釈クローニングを使用して得ることができる。組込み部位はH鎖およびL鎖発現の効率ならびにmAb発現全体に影響する可能性があるため、2個のIg鎖発現ユニットが縦列に配置されている単一のベクターが創製された。これらのベクターは、Neoのようなドミナント選択性マーカーおよびDHFR発現カセットも持つ。総説については、John Wiley & Sons,Inc.によるEncyclopedia of Bioprocess Technology:Fermentation,Biocatalysis,and Bioseparation.1999中、Ganguly,S. and A.Shatzman.Expression Systems,mammalian cellsを参照されたい。
【0094】
Cockettら(1990.Bio/Technology 8、662−667)は、CHO細胞中での異種遺伝子の高レベル発現のためにGS系を開発した。cDNA(hCMVプロモーターの転写制御下)およびGSミニ遺伝子(SV40後期プロモーターの制御下)を含有する発現ベクターのCHO−K1細胞へのトランスフェクション(次いで20mMないし500mM MSXでの選択)を使用して、DHFRCHO系の収量に匹敵する収量で本発明の抗体を発現するクローンを生じることができる。GS系は、欧州特許第0 216 846号、同第0 256 055号および同第0 323 997号明細書、ならびに欧州特許出願第89303964.4号明細書と関連して、全体的または部分的に検討されている。
【0095】
本発明を概説してきたが、本発明の態様は以下の実施例でさらに開示される。
【実施例1】
【0096】
抗体のガラクトシル化およびシアリル化の酵素的改変
精製した抗体サンプルを酵素的方法を介してガラクトシル化するため、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(ミズーリ州セントルイス)から得たウシβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β1,4GT)およびUDP−Galを抗体サンプルに加える。組換えラット肝α−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(α2,3ST)、組換えα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α1,3GT)およびCMP−Siaはカルビオケム(Calbiochem)(カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。PNGアーゼFはニューイングランドバイラボズ(New England Biolabs)(マサチューセッツ州ビバリー)またはプロザイム(カリフォルニア州サンレアンドロ)またはセレクションバイオサイエンス(Selectin BioSciences)(カリフォルニア州プレザントヒル)から得た。肺炎双球菌(Diplococcus pneumoniae)からのβ−ガラクトシダーゼおよびβ−グルコサミニダーゼはプロザイムまたはセレクションバイオサイエンスいずれかから得た。ウシ腎からのβ−ガラクトシダーゼおよび全部の他の酵素はプロザイムまたはセレクションバイオサイエンスのいずれかからであった。NAP−5およびHiTrapプロテインAカラムはファルマシアバイオテック(Pharmacia Biotech)(ニュージャージー州ピスカタウェイ)からであった。全部の他の試薬は分析等級のものであった。
【0097】
酵素で脱グリコシル化した形態(Gnoと称される)のAb1を、Fc免疫エフェクター機能を欠く対照抗体として役立つように調製した。このバリアントは、Ab1(1.0mLのバッファー中約10mg)を100mM MESバッファー(pH7.0)中に取り、そしてそれを1000UのPNGアーゼFで37℃にて24時間処理することにより調製した。酵素の別のアリコートを添加し、そしてインキュベーションをさらに24時間継続した。脱グリコシル化Ab1をHiTrapプロテインAカラムを使用して精製し、そしてPBS、pH7.0中に配合した。Gno糖型は、脱グリコシル化を確認するためにMALDI−TOF−MSにより特徴付けした。
【0098】
実験室で操作したAb調製物に加えて、ここで「天然のバリアント」と称される、シアル酸含量が天然に異なるAbのサブロットも比較した。非修飾抗体は、元のロットからの物質をPBSにバッファー交換した後にAb1 PBSと名付けた。ヒトIgG1モノクローナル抗体Ab、Ab1およびAb3(ここで対のメンバーはそれらを調製するために使用した生産方法が明らかに異なるため、Fcシアリル化の程度が異なる)を使用した(しかし同じ宿主細胞型により製造した)。Ab1バリアント、Ab1−20およびAb1−29はそれぞれ20%および29%のシアリル化グリカンを含有し、そしてAb5バリアント、Ab5−20およびAb5−26はそれぞれ0%および26%のシアリル化グリカンを含有した。それ以外は、各対のメンバーは、同じアミノ酸配列、同じレベルのFcフコシル化および分岐GlcNAc含量(MALDI−TOF質量分析)、ならびに同じ低レベルのAb凝集物(SEC−HPLC分析により<1%)を有した。
【0099】
多様なバイオアッセイで使用したAbおよびFc含有タンパク質調製物、ならびにそれらが誘導された様式の要約を表1に要約する。
【0100】
【表1】

【0101】
試験サンプルは全てヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含有する。Ab1、Ab2、Ab3およびAb5はヒトIgG1およびκ定常領域を伴うモノクローナルIgG Abである。Ab1はヒトTNFに特異的な完全にヒトのAbであり、そしてAb2はヒトTNFに特異的なマウス/ヒトキメラAbである。Ab3はヘテロ二量体の
炎症前サイトカインのサブユニットの1つに特異的な完全にヒトのAbである。全4種のAbはトランスフェクトしたSp2/0マウス骨髄腫細胞中で発現された。Ab5はヘテロ二量体の細胞表面受容体の1サブユニットに向けられた完全にヒトの抗体である。FcP1はヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含んでなる二量体融合タンパク質である。
【0102】
G2糖型は、100mM MESバッファー(pH7.0)中のIgGサンプル(1.0mLバッファー中約10mg)を50ミリ単位のβ1,4GT、5μmolのUDP−Galおよび5μmolのMnCl2に37℃で24時間さらすことにより調製した。酵素の別のアリコートおよびUDP−Galを添加し、そして混合物を37℃でさらに24時間インキュベーションした。再ガラクトシル化IgGサンプルを、HiTrapプロテインAカラムを使用して精製した。オリゴ糖をPNGアーゼFにより遊離させ、そして以下に記載するようにMALDI−TOF−MSおよびHPLCにより特徴付けした。
【0103】
G2S2糖型は、製造元が推薦するプロトコールに従ってNAP−5カラムを使用して100mM MESバッファー(pH7.0)中(1.0mLバッファー中〜10mg)にIgGサンプルを入れることにより作成した。この溶液に、それぞれ50ミリ単位のβ1,4GTおよびα2,3ST、ならびにそれぞれ5μmolのUDP−Gal、CMP−Sia(NANA異性体)およびMnClを加えた。混合物を37℃でインキュベーションした。24時間後に、酵素の別のアリコートをヌクレオチド糖と一緒に加え、そして混合物を37℃でさらに24時間インキュベーションした。G2S2糖型のIgGサンプルを上述のとおり精製した。1種の特定のAb1 G2S2ロット、Ab1 G2S2(lo)について、元は結合していたシアル酸が、おそらく混入するシアリダーゼにより貯蔵の間にその後喪失された。分析は、Ab1 G2S2(lo)中のFcオリゴ糖の30%のみがシアル酸を含有し、一方、Ab1 G2S2(hi)中のオリゴ糖の約95%がシアル酸を含有することを示した。
【0104】
Ab調製物のグリカン構造を多様な方法により分析した。無傷のIgG AbのMALDI−TOF−MSを実施するため、IgGサンプルを10mMトリス−HClバッファー、pH7.0中に入れ、そして〜1mg/mLバッファーまで濃度を調節した。約2μlのIgG溶液を2μlのマトリックス溶液(マトリックス溶液は、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する水中50%アセトニトリル1.0mlに10mgのシナピン酸を溶解することにより調製した)と混合し、そしてこの溶液2mlを標的に負荷し、そして風乾した。MALDI−TOF−MSはアプライドバイオシステムズ(Applied BioSystems)(カリフォルニア州フォスターシティ)からのVoyager DE装置を使用して得た。
【0105】
遊離されたFcグリカンのMALDI−TOF−MS分析を実施するため、インビトログリコシル化反応前および後に、IgGサンプル(〜50μg)を10mMトリス−HClバッファー(50μl)pH7.0中でPNGアーゼFで37℃で4時間消化した。消化は反応混合物を50%酢酸(〜5μl)で酸性化することにより停止し、次いで以前に記載されたように(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)カチオン交換樹脂カラムを通過させた。酸性および中性のオリゴ糖の混合物を含有するこれらのサンプルを、アプライドバイオシステムズ(カリフォルニア州フォスターシティ)からのVoyager DE装置を使用して、いたるところに記載されているように(Papacら、1996;Papacら、1998;Rajuら、2000)、陽および陰イオンモードでMALDI−TOF−MSにより分析した。
【0106】
FcグリカンのHPLC分析は、10mMトリス−HClバッファー(約50μl)pH7.0中でIgGサンプル(〜50μg)をPNGアーゼFで37℃にて4〜8時間消
化することにより行った。アントラニル酸(2−アミノ安息香酸)を用いた遊離オリゴ糖の誘導体化は記載されているように(Anumula KR、Anal Biochem.2000 Jul 15;283(1):17−26を参照されたい)実施した。簡単に説明すると、メタノール中4%酢酸ナトリウム3HO(重量/容量)および2%ホウ酸(重量/容量)の溶液を最初に調製した。次いで誘導体化試薬は、〜30mgのアントラニル酸(アルドリッチ:Aldrich)および〜20mgのシアノホウ水素化ナトリウム(アルドリッチ)を1.0mlのメタノール−酢酸ナトリウム−ホウ酸溶液に溶解することにより新たに調製した。IgG由来オリゴ糖(20〜50μlの水中3nmol未満)を、「O」リング付きの1.6mlポリプロピレン製ねじ蓋凍結バイアル中で0.1mlのアントラニル酸(AA)試薬溶液と混合し、そしてきつく蓋をした。バイアルをオーブンもしくは加熱ブロック(Reacti−Therm、ピアス:Pierce)中80℃で1〜2時間加熱した。バイアルを室温に冷却した後にサンプルを水で希釈して、容量を約0.5mlとした。誘導体化オリゴ糖は、NAP−5カラムを使用することにより精製した。
【実施例2】
【0107】
低親和性細胞Fc受容体への結合
エフェクター細胞上のFc受容体のいくつかの型のうち、Fcgamma型IIおよびIIIは、低または中程度の親和性の受容体と考えられる。一般に単量体結合は親和性が低すぎて検出できないか、または非常に低レベルで検出され得る。例えばFcgamma型IIAへの単量体IgGの結合は、測定することがより困難である。これらの受容体は免疫複合体に結合するように機能し、それら複合体は、それらの多価の性質により、おそらく該複合体の遅いオフ速度により、より激しく(avidly)に結合する。
【0108】
唯一のFcγ受容体としてFcγRIIAを発現するヒトK562細胞を、2つの型の結合アッセイに使用して、Fcグリカン中のシアル酸含量の変動がこの低親和性ヒトFcγ受容体への結合に影響を及ぼすかどうかを試験した。単量体IgGに対して低い親和性を有するFcγRIIAへの結合の十分なアビディティーを得るため、抗TNF試験Abをホモ三量体TNFと2:1のモル比(痕跡量のみの遊離Abもしくは遊離TNFをもたらすことが示された比)で混合することにより、免疫複合体を調製した。免疫複合体への依存性は、K562細胞への放射標識Ab2単独の結合が1μg/mlまでの濃度で検出可能でなかったが、Ab2:TNF複合体が0.02μg/mlで有意の結合を示した時に具体的に説明された(データは示さず)。
【0109】
競合結合形式。2組のIgG免疫複合体、すなわち抗V領域特異的なヒト以外のAbおよびAb5と複合体を形成する無関係な特異性をもつヒトIgG1抗体を含有する標識複合体を調製した。標識複合体を創製するため、ヒトIgG1および軽鎖κ定常領域をもつハムスターV領域を含むキメラモノクローナルAbを、以前に記載された(Knightら、1993)IODO−GEN試薬を使用してヨウ化した。次いでハムスター−ヒトキメラのV領域イディオタイプに特異的なラットIgG2aモノクローナルAbを、PBS中で1:1のモル比で30分間混合して、放射標識免疫複合体の形成を可能にした。ラット抗Idは、複合体が脱グリコシル化したハムスター−ヒトキメラを用いて作成された時にほとんど結合が起こらなかったため、FcγRIIA結合に直接寄与しないことが示された。一方、非修飾キメラAbとの複合体は高レベルの結合を示した(データは示さず)。加えて、1つの免疫複合体が他の免疫複合体に結合する可能性を示すことができる別の免疫複合体を作成するために使用した作用剤の間に、検出可能な交差反応性は存在しなかった(データは示さず)。
【0110】
試験複合体について、Ab1のシアル酸バリアントをヒトTNFホモ三量体と、PBS中2:1のモル比(非常にわずかな非結合Abおよび非結合TNFを生じることが光散乱
分析により示された)で室温にて30分間混合した。一組の実験で、20および29パーセントのシアル酸を含むAb1の天然のバリアントの複合体を相互と比較した。第二の組の実験で、Ab1−29:TNF複合体を、レクチンカラムで増強した調製物Ab1−43:TNF複合体と比較した。双方の場合で、対照複合体は、抗体がグリカンを酵素的に奪われていたAb1−Gno:TNFであった。
【0111】
ヒトK562細胞を96ウェルプレートに、IMDM、5%FBS中で3×10細胞/ウェルで播種した。固定量の放射標識抗体複合体を変動する量の試験抗体複合体に加え、そして合わせた混合物を、各ウェルが最終濃度0.1μg/mlのヨウ化抗体複合体を含有するようにK562細胞に加えた。プレートを4℃で16〜18時間インキュベーションし、その後IMDM、5%FBSで3回洗浄することにより非結合Abを除去し、そして細胞に結合したカウント数を、ガンマカウンターを使用して測定した。
【0112】
結果。非標識競合体免疫複合体の量が増加すると、放射標識免疫複合体による結合が益々阻害された。シアル酸バリアント、非修飾Ab1(29%シアリル化)およびAb1 MAAB(43%シアリル化)は、より高度にシアリル化されたAbとの複合体が、FcγRIIへの同程度の結合を生じるために、より少なくシアリル化されたAb1との複合体より5ないし10倍高濃度で必要とされたことを示した(図4A)。9%シアル酸含量だけ異なる(20対29)Ab1の天然のバリアントについて、この差違はより少なくシアリル化された調製物(示さず)に対して約4倍高いアビディティーであった。従って、マウス骨髄腫宿主細胞中での組換え発現の結果としてこのヒトIgG1上でのNGNA異性体の形態のシアル酸の存在は、ヒトFcγRIIに対する免疫複合体のアビディティーを低下させた。
【0113】
K562細胞への免疫複合体の結合。Ab1試験サンプルを、固定した2:1のモル比で125I標識ヒトTNFと混合し、次いで生じた免疫複合体の量を変えて、96ウェル培養プレート中の3×10 K562細胞に加えた。Ab1 G2S2(hi):TNF複合体(完全にシアリル化されたAb)に対するAb1 G2:TNF複合体(非シアリル化複合体)の比較は、完全にシアリル化されたAbがはるかにより小さいアビディティーで結合し、高度にシアリル化されたバリアントは、同程度の結合を達成するためにアシアリル化バリアントより10倍高濃度で必要とされた(図4B)ことを示した。これらの結果は、インビトロでの酵素的修飾により導入したシアル酸のNANA異性体の存在が、安定性の低下したAb:TNF複合体によるか、Fc受容体に対する定常領域の親和性を低下させることによるか、もしくは双方により、標的(TNF)への結合親和性の低下に帰することができる、ヒトFcγRIIに対する抗体のアビディティーを低下させたことを示す。
【0114】
細胞FcγRIIIaへのAb結合。ナチュラルキラー細胞(NK)上のFcγRIIIaへのAb結合を分析するため、ヒトPBMCを上述されたとおり単離し、そしてNK細胞単離キット(ミニティバイオテック:Miltenyi Biotec)を使用した磁性細胞分取によりNK細胞をPBMCから単離した。NK細胞を10%FBSを含むDMEM培地中ウェルあたり1×10細胞で96ウェルプレート中で5%COを含む37℃で一夜培養した。抗FcγRIIIa mAb 3G822(BD バイオサイエンス ファミンゲン:Biosciences Pharmingen)を、Iodogenチューブ(ピアス:Pierce)を使用して11μCi/μgの比活性まで125Iで標識した。ヨウ化mAb 3G8を、DMEM、10%FBS中で量を変動させた非標識競合体Abと前混合し、そしてAb混合物を0.3μg/mlのヨウ化3G8の最終濃度のためNK細胞に添加した。細胞を4℃で16時間インキュベーションし、次いでPBSで4回洗浄することにより未結合のIgGを除去した。細胞に結合したCPM数を、ガンマカウンターを使用して測定した。
【0115】
2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび10%FBSを補充したRPMI 1640培地(U−937培地)中で培養したU−937細胞(FcγR発現を高めるよう前処理されていない)を、50μlのU−937培地中ウェルあたり3×10細胞を有するように96ウェルプレートに播種した。Ab2(ヒトIgG1)を17μCi/μgの比活性まで125Iで標識した。ヨウ化Ab2 Abを、U−937培地中で変動する量の非標識競合体Ab2サンプルと前混合した。次いで50μlのAb混合物を全ウェル中で0.2μg/mlのヨウ化Ab3の最終濃度を有するように50μlのU−937細胞に添加した。細胞を4℃で16時間インキュベーションし、そしてU−937培地で3回洗浄することにより未結合のAbを除去した。細胞に結合したCPM数を、ガンマカウンターを使用して測定した。
【0116】
AbバリアントがFcγRIIIaに対して示差別的親和性を示すかどうかを試験するため、新たに単離したNK細胞を健康ヒトドナーから単離し、そして放射標識mAb 3G8(Fcとの結合について競合する抗FcγRIIIa Ab)および競合体として非標識Abを含む競合結合実験で使用した。遊離の複合体形成されないAbを、Fcシアル酸含量により影響され得る可溶性免疫複合体それら自身の安定性の差違により結果が混乱されないように(我々の未発表データ)、免疫複合体(一般に、FcγRIIIaへのはるかに大きな結合を示す)の代わりに使用した。該結果は、Ab1のより多くシアリル化された天然のバリアントAb1−29が、NK細胞上のFcγRIIIaに対して低下した親和性を有し、同程度の結合を達成するのにAb1−20より4倍高濃度で必要とされることを示した(図5A)。Ab5の天然のバリアントで類似の差違が存在し、Ab5−26はmAb 3G8に対し同程度まで競合するのにAb5−0より5倍高濃度で必要とされた(図5B)。類似の結果が、少なくとも2名の他の血液ドナーからのNK細胞を使用する場合に各実験で得られた(データは示さず;FcγRIIIaのアロタイプは決定されない)。これらの結果は、より高レベルのシアリル化がFcγRIIIaに対するIgGの親和性を下げることができ、従ってADCC活性で観察された低下にほぼ確実に寄与したことを示した。
【0117】
同じ実験をレクチン分画により派生したバリアントの対で行った場合は、しかしながら、より多くシアリル化されたバリアントが、より少なくシアリル化されたバリアントとちょうど同様に、およびおそらくわずかにより良好に、FcγRIIIaを結合することが見られた(図5Cおよび5D)。この2対の天然のバリアントおよび2対のレクチン由来のバリアントでの異なる結果の理由は知られていないが、しかし、良好な可能性は、存在するシアル酸残基の位置の差違が存在することである。
【実施例3】
【0118】
インビトロ ADCCアッセイ
抗TNF Abの標的細胞は、成熟TNFのアミノ酸1−12の欠失の導入により膜貫通形態に留まる、その表面上で組換えヒトTNFを安定に発現するSp2/0マウス骨髄腫細胞株を含んだ(Perezら、1990)。K2細胞を、熱不活性化FBS、2mM
L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸およびMHXを含有するイスコフ培地中で培養した。培地および補充物はギブコ(Gibco)(インビトロジェン:Invitrogen)から購入した。細胞は2〜3日ごとに1:5で継代した。アッセイの日にK2細胞を遠心分離し、そしてPBSで1回洗浄した。細胞を培養基で約1×10細胞/mlに調整し、そして15マイクロリットルのBATDA蛍光標識試薬(Delfia EuTDA細胞傷害性試薬キット中)(パーキン−エルマーライフサイエンス(Perkin−Elmer Life Sciences)を5mlの細胞に添加した(Blombergら、1996)。細胞を37℃で30分間インキュベーションし、次いでPBSで1000rpm、5分で2回洗浄した。PBMCエフェク
ター細胞と混合する直前に、標的細胞を遠心し、そして1%BSAを含有するイスコフ培地に2×10細胞/mlで再懸濁した。
【0119】
PBMCエフェクター細胞は、健康ドナーからの血液をヘパリン処理したヴァキュテーナーに収集し、そしてPBSで2倍に希釈した後に単離した。30mlの希釈血液を、50mlコニカルチューブ中15mlのFicoll−Paque(アマシャム:Amersham、スウェーデン・ウプサラ)の上部に重ね、そして室温(RT)で1500rpm、30分で遠心分離した。PBMCを含有する界面(バフィ層)を収集し、そしてPBSで2回洗浄し、そして1200rpm、10分、RTで遠心分離した。細胞を、5%熱不活性化FBS、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび0.1mM非必須アミノ酸を含有するイスコフ培地に再懸濁した。PBMCは、4℃にてOKT3(PBS中10μg/ml、オルトファーマシューティカル:Ortho Pharmaceutical)で一夜被覆し、そしてPBSですすいだ100mm組織培養皿(コーニング:Corning)上でインキュベーションすることにより、37℃、5%COでおよそ4時間活性化した。PBMCを集め、1%BSAを含有するイスコフ培地で1回洗浄し;計数し、そして約1×10細胞/mlまで再懸濁した。
【0120】
陰性対照バリアントAb1 Gnoを含むAb1の試験サンプルをイスコフ−1%BSA培地で連続希釈した。50マイクロリットルの標的細胞(〜10,000)および100マイクロリットルの抗体を丸底96ウェルプレート(コーニング)に加えた。50マイクロリットルのエフェクター細胞(〜500,000細胞)を混合物に加え、そしてプレートを1000rpmで5分間RTで遠心分離した。E:Tの比は通常50:1であったが、ときに35:1を使用した。バックグラウンド蛍光のため、ウェルをエフェクター細胞、標的細胞および培地とインキュベーションした。最大の蛍光のため、10マイクロリットルの溶解溶液(Delfia EuTDA細胞傷害性キットから)をバックグラウンドウェルに添加した。ADCCアッセイのため、細胞を37℃、5%COでおよそ2時間インキュベーションした。20マイクロリットルの上清を96ウェル平底プレート(コーニング)に移した。200マイクロリットルのユーロピウム溶液(Delfia EuTDA細胞傷害性キット)を添加し、そしてプレートをプレート振とう器上にRTで10分間置いた。時間解析蛍光計EnVision装置(パーキン−エルマーライフサイエンス)で蛍光を測定した。各サンプル中の特異的溶解のパーセントを、以下の式:特異的放出%=([実験放出−自発放出]÷[最大放出−自発放出])×100に従って計算した。
【0121】
シアル酸の影響の初期評価は、2対の天然のバリアントのインビトロ ADCC活性に焦点を当てた。Ab1−29およびAb1−20は濃度を変えて、ユーロピウム標識したAg1発現標的細胞とインキュベーションした。図6Aに示されるとおり、細胞傷害活性の明瞭な差違が存在し、より高レベルのFcシアリル化を含むAb1−29は、同程度まで細胞溶解を誘発するためにAb1−20よりおよそ7倍高濃度で必要とされた。この結果は、シアリル化糖型について濃縮されたAb1サブロットAb1 MAABが未改変Ab1 PBSより効力が低いことを示した。Ab1 PBS−29%サンプルと同一量の溶解を達成するために約3倍の多いAb1 MAAB−43%物質が必要とされた。Ag5発現標的細胞を用いた実験は、Ab2の天然のバリアントの対について同じパターンを示した。検出可能なシアル酸を含まないAb2−0バリアントと同程度の細胞溶解を達成するために、約6倍高濃度のAb2−26が必要とされた(図6Bに示されるとおり)。従って、ADCCのこの尺度に対する天然のグリコシル化変動の影響はAbもしくは標的特異的でない。
【0122】
レクチンに基づく分画後のそれらのシアル酸含量が異なるAb1のサブロットのADCC活性を比較するための代表的実験で、Ab1 MAAB(43%シアリル化)をそれが
由来した非修飾Ab1ロット(Ab1 PBS)と比較した。シアル酸含量が異なったAb1サブロットを比較するための第二実験で、Ab1 WGAT(29%シアリル化)、Ab1 WGAR(40%シアリル化)およびAb1 WGAB(32%シアリル化)を互いに比較した。
【0123】
アッセイの結果は、Abを調製した様式に関係なく、シアル酸含量とADCCアッセイでの効力の間の逆相関もまた示す(図6C)。すなわち、未改変Ab1とほぼ同一量のシアル酸を含有するAb1 WGATは、非修飾Ab1と同じ活性を示した。しかしWGAで調製した画分は、シアル酸含量の増加とともに効力を喪失した(図6C)。
【0124】
一実験で、シアル酸含量の差異がさらに顕著な2つのサンプル、すなわち酵素で修飾したAb1 G2(0%シアリル化)およびAb1 G2S2(hi)(約95%シアリル化)を比較した。新しいPBMCをFicoll−Paque中での密度遠心分離により単離した。100mlの容量中の5×10 PBMCを、未処理Ab1、Ab1 G2S2(hi)(完全にガラクトシル化かつシアリル化)、またはAb7(アイソタイプを一致させた陰性対照Ab)の量を変えて、およそ10分間前インキュベーションした。表面結合した組換えヒトTNFを発現するK2細胞を、200mCiの51Crで標識することにより標的として使用した。標識した細胞をPBMC/Ab混合物に加え、1000rpmで1分間遠心分離し、そして37℃で4時間インキュベーションした。このインキュベーション時間(4時間)は、一般にFcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)およびFcγRIIIA(CD16A)を発現するマクロファージによるよりむしろFcγRIIIAを発現するNK細胞(PBMC細胞の集団内)により誘導される主要な細胞溶解を示すことが知られている。次いで細胞上清中の放射活性数を、Topcountを使用して測定した。示される結果(図6D)は、異なるドナーからのPBMCを使用して行った2回の独立した実験を代表し、そして完全にシアリル化されているAbとほぼ脱シアリル化されているものの間の細胞溶解の効力に10倍以上の変化を示す。
【0125】
Ab調製物の他の対もまたADCCアッセイで比較した。ガラクトシル化Ab2から調製したWGAレクチン画分を、Ag2発現標的細胞を使用するADCCアッセイで評価した。再度、より多くシアリル化された物質の活性がより低かったが、シアル酸含量のそれらの劇的な差違(5%対67%)にもかかわらず、それらのEC50値には4倍の差違が存在しただけであった。対照的に、Ab1から作成したWGAレクチン画分は41%シアリル化バリアントを示し、同程度の細胞溶解を達成するために29%シアリル化バリアントよりおよそ6倍高濃度であることを必要とした。
【0126】
試験したこれら三種全てのAbの結果は、より高レベルのFcシアル酸がADCC活性の低下と関連したことを一貫して示した。定量的ではないが、ADCC活性とAb調製物のシアル酸含量の変化の規模の間の相違には、4種のAb1バリアントの一団内に一貫した関係が存在し、ここでEC50値は、Ab1−20、Ab1−29、Ab1−WGA−29およびAb1−WGA−41についてそれぞれ典型的に0.3ng/ml、2ng/ml、2ng/mlおよび10ng/mlであった。レクチン画分での結果もまた、シアリル化Ab調製物が変動するレベルのADCC活性をもつ分子種を含有することを確認した。Ab3−0およびAb3−26を除き、ここで分析したバリアントには、達成された最大レベルの溶解の差違を示す傾向がなかったことに注目すべきである。
【0127】
ADCC活性の本測定方法はFcγRIIIA陽性NK細胞により主に媒介されるため、このデータは、Fcオリゴ糖中のシアル酸の存在がFcγRIへの結合を高める一方で、その存在がFcγRIIIAへの結合を有意に減少させることを意味する。
【実施例4】
【0128】
高親和性の細胞Fc受容体への結合
高親和性のヒトFc受容体FcγRI(CD64)へのシアル酸含量の異なった試験Abの結合を、ヒト単球細胞株U−937細胞で競合結合形式を使用して測定した。U−937細胞を、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび10%FBSを含むRPMI 1640培地中、Tフラスコ内で培養し、そして37℃で5%COを含むインキュベータ内にて維持した。マウス/ヒトIgG1キメラAbであるAb2を、IODO−Gen前被覆ヨウ化チューブを使用して17.2mCi/mgの比活性までヨウ化した。U−937細胞を6×10細胞/mlで新鮮培地に再懸濁し、次いでウェルあたり3×10細胞の密度でフィルター付きMillipore 96ウェル組織培養プレートに播種した。細胞はより高いFcγR発現を誘導するために前処理しなかった。ヨウ化Ab2を、50μlの容量中で、希釈剤として培地を使用して、量を変えた非標識Mab競合体(試験サンプル)と前混合した。次いで混合物を0.2ng/mlの最終のヨウ化Ab2濃度を生じるように、U−937細胞の50μl培養物に添加した。次いで細胞を4℃で16時間インキュベーションした。培地で洗浄することおよびプレート真空システムを使用して3回吸引することにより非結合IgGを除去した。細胞に結合したカウント数を、ガンマカウンターを使用して測定した。
【0129】
図7Aは、Ab1 G2(シアル酸なし)に比較して、Ab1 G2S2(hi)(〜95%シアリル化)が5〜10倍高い親和性でU−937細胞上の高親和性FcR(CD64)に結合した、すなわち、Ab1 G2S2(hi)はヨウ化Ab2結合の同程度の阻害を生じるためにわずか1/5〜1/10の濃度で必要とされたことを示す。Ab1 G2は未処理Ab1と検出可能な差違を示さず(データは示さず)、後者は多様な糖型の不均質な混合物であり、その大部分はAb1 G2サンプルより少ないガラクトース(すなわちG0およびG1糖型)を含有する。
【0130】
図7Bは、荷電したオリゴ糖種(シアル酸含有種)の量が異なる、リゴ糖全体の2%もしくは42%のいずれかであるAb3の異なる2ロットが、より高いシアル酸含量を有すると特徴付けられるロットがFcγRIに対してより高い親和性を有することを同様に示すことを表す。
【0131】
Ab1およびAb5の2対の天然のグリコシル化バリアントについて、より高いシアル酸含量をもつ抗体調製物によるNK細胞FcγRIIIaへの結合の低下(実施例3、図5AおよびB)を観察した後に、この効果が負に荷電したシアル酸と負に荷電した細胞表面との間の単純な静電反発による可能性を考慮した。しかしながら、ヒトU−937細胞上のFcγRI受容体に対する結合親和性に対するシアル酸含量の逆の効果は、Ab5もしくは他のAbについての同じパターンに従わなかった(データは示さず)。
【0132】
2種のAb1サンプルはNANAの形態のシアル酸の不存在/存在が異なる一方、2つのAb3サンプルはNGNAの形態のシアル酸(マウス宿主細胞中で産生される)の量が異なると考えられることに注目すべきである。
【実施例5】
【0133】
血清半減期の測定
本実施例では、マウス骨髄腫細胞中で発現される抗体可変領域配列ならびにヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3ドメインに融合されたN末端ペプチドを含んでなるFc含有融合タンパク質を、完全にシアリル化された(G2S2)形態を形成するよう処理した。正常な雌CD1ラット(処置群あたり4匹)に、5%シアリル化されたFcオリゴ糖を含む非修飾の形態のFcP1の静脈内注入を与えたか、あるいは完全なシアリル化変更体(〜98%シアリル化)を雌のCD1ラット群に別個に静脈内注入したかのいずれかであった。1時間、5時間、24時間、72時間、7日、14日および21日に後眼窩採血により集め、次いでCO麻酔した動物から心穿刺により28日目に終末部の採血をした。血液サンプルから血清を調製し、そして血清中のヒトFcの濃度を比色ELISAを使用して測定した。簡潔には、96ウェルEIAプレートをポリクローナルヤギ抗ヒトFc抗体で最初に被覆した。血清サンプルの変動する希釈物をウェル中室温で1時間インキュベーションした。非結合タンパク質は洗浄より除去し、そして結合したヒトFcを、酵素複合ヤギ抗ヒトIgG抗体、次いで適切な色基質を使用して検出した。
【0134】
試験の結果を図8に示す。計算された曲線下面積(AUC)は、非修飾抗体について95±1.6日・ng/ml×10−3および48±1.9日・ng/ml×10−3であった。これは、Fcオリゴ糖中のより高度なシアリル化が、正常ラットでより高速な消失と関連することを示した。
【0135】
第二の実験で、正常マウスに、完全アシアリル化(G2)もしくは完全シアリル化(G2S2)のいずれかとなるように酵素的に修飾したAb2の単回の3mg/kg用量を注入した。血清中のヒトFcは上記の比色ELISAを使用して監視し、そして測定した。この実験の結果を図9に示す。およそ1週間後に、Ab2 G2S2はマウスの血清からより迅速に消失し始め、そして20日までに血清中に残存するAb2 G2S2はAb2−G2濃度よりおよそ1000倍少なかった。
【0136】
マウスの全身循環からAb1シアル酸バリアントの消失。シアル酸含量の影響の別の直接測定は、Ab1に結合したグリカン種の不均質混合物を含有するサンプルの注入後の血清から、個々のグリコシル化種の消失速度を定量化することにより行った。
【0137】
同じ不均質にグリコシル化されたAb1の調製物を、18匹の正常な8〜10週齢Balb/cマウスに20mg/kgの用量でi.p.注入した。血液を3日目に6匹のマウスから、14日目に別の6匹のマウスから、そして28日目に最後の6匹のマウスから収集した。血清を各血液サンプルから調製し、そしてAb1 V領域に特異的な抗Id親和性カラムを使用してAb1を血清から再精製した。次いで再精製したAb1サンプルのFcグリカン構造をHPLC分析により分析し、そして多様な糖型の相対比率を本明細書に前述された通りに決定した。
【0138】
シアル酸を欠くガラクトシル化糖型(G2S0)が、マウスで4週間にわたりその相対的豊富さを維持する一方、1シアル酸を含むグリカンを含有するAb糖型(G2S1)および2シアル酸を含む糖型(G2S2)はより速い速度で消失することが分かった。従って、完全にシアリル化されたFc含有タンパク質は、アシアリル化または部分的シアリル化組成物より短い血清半減期を有する。
【実施例6】
【0139】
シアル酸含量および抗体のアビディティー
本明細書に記載される結果は、Fcドメイン(二量体化したヒンジ−CH2−CH3)のFcグリカンのシアル酸含量の変化がタンパク質全体に影響するという理論を裏付ける。グリコシル化Fcを含んでなる抗体および融合タンパク質の二価性に関して、この効果は特異的標的に対するタンパク質のアビディティーに明示され得る。本実施例の実験は、この理論を試験し、そしてさらに標的結合親和性に対するシアル酸含量の特定の効果を示すために実施した。
【0140】
細胞表面抗原への結合。上記のADCCアッセイで使用したものと同じAg発現細胞株を、結合アッセイで使用して、それらの抗原結合アビディティーのシアル酸バリアント間での差違について試験した。アッセイは、固定濃度に保った放射標識Ab(Ab1、Ab2もしくはAb5のいずれか)の1種を、変動する量の未標識試験Abの存在下でAg発現細胞とインキュベーションする競合形式で実施した。Iodogen法により調製したヨウ化Abは一般に10μCi/μgの比活性であった。
【0141】
表面TNFを発現する細胞をウェルあたり50,000細胞、およびAg2発現細胞をウェルあたり180,000細胞で、5%FBSを含むIMDM培地中、96ウェル組織培養プレートに播種した。適切な125I標識Abを滴定量の試験Abと前混合し、そして混合物を適切なAg発現細胞に加えた。プレートをRTで2時間インキュベーションして細胞へのAb結合を可能にした。次いで細胞をIMDM、5%FBSで3回洗浄して非結合Abを除去し、そして細胞に結合したカウント数をガンマカウンターを使用して測定した。
【0142】
Ab5バリアントについて、Ag5発現細胞を、50μlのDMEM、10%FBS中ウェルあたり186,000細胞で96ウェル組織培養プレートに播種した。125I標識Ab2を滴定量の試験Abと前混合し、そして50μlの混合物をAg発現細胞に添加した。プレートを4℃で16時間インキュベーションして細胞上の抗原へのAb結合を可能にした。次いで細胞をDMEM、10%FBSで3回洗浄して非結合Abを除去し、そして細胞に結合したカウント数を、ガンマカウンターを使用して測定した。サンプルは2連もしくは4連で試験し、そして結果は3もしくは4回の独立した実験を代表する。これらの試験サンプル間の結合の差違は、追加二乗和(extra sum of square)F検定により決定されるとおり有意(グラフa、cおよびdについてP<0.0001)であった。
【0143】
結果を、図10A〜Dに示す:競合体としての非標識のAb1天然バリアントの存在下でのAg1発現細胞への放射標識Ab1の結合(図10A);競合体としての未標識のAb5天然バリアントの存在下でのAg5発現細胞への放射標識Ab5による結合(図10B);競合体としての未標識のAb1のレクチン由来バリアントの存在下でのAg1発現細胞への放射標識Ab1による結合(図10C):競合体としての未標識のAb3のレクチン由来バリアントの存在下でのAg3発現細胞への放射標識Ab3による結合(図10D)に示す。
【0144】
固相リガンドへのAb結合。組換え可溶性TNFもしくは抗Id2は、PBS中1μg/mlのAgもしくは抗Id Ab 50μlを各ウェルに加えること、そしてプレートを4℃で一夜インキュベーションすることにより、EIAプレートに被覆した。ウェルを洗浄し、次いで非特異的結合を最低限にするため、PBS中1%BSA、0.125%ゼラチン50μlでRTにて1時間前処理した。125I標識Ab1もしくは125I標識Ab3をIMDM、5%FBS中の滴定量の各試験Ab調製物と前混合し、そして50μlの混合物を標的で被覆したウェルに添加した。放射標識Abの最終濃度は全ウェル中で100ng/mlであった。プレートをRTで2時間インキュベーションして、被覆した標的へのAb結合を可能にした。ウェルを洗浄して非結合Abを除去し、そして、結合したカウント数を、ガンマカウンターを使用して測定した。
【0145】
可溶性抗原へのプレート被覆したAbの結合。96ウェルプレートをAb1もしくはAb3のシアル酸バリアントで被覆し、次いで以下の変動する量の放射標識可溶性抗原とインキュベーションした:(a)プレートに被覆したAb1の天然のバリアントへの放射標識可溶性Ag1の結合、(b)プレートに被覆したAb1のレクチン分画バリアントへの放射標識可溶性Ag1の結合、および(c)プレートに被覆したAb3のレクチン分画バリアントへの放射標識可溶性Ag3の結合。非特異的結合を測定するため、放射標識Agおよび100倍過剰の非標識Agとの並行インキュベーションを行った。サンプルは3連で試験した。Ab2バリアントは可溶性Ag2が入手不可能性のため分析しなかった。
【0146】
統計学的解析。抗体バリアント間の効力の差違は、ゼロ濃度の一般的プラトーを考えた傾きおよび範囲についての予備検定(すなわち、増加曲線の一般的な「底」および減少曲線の一般的な頂点を検定せずに常に想定する)後に一般的な最小値、最大値および傾きをもつ同時の4パラメータロジスティック回帰を使用する曲線の比較により解析した。有意性検定はGraphPad Prism v4の追加二乗和F検定を用いて行った。<0.05のP値を有意であるとみなした。CPMの分析は、CPMの標準偏差がその平均に比例して増大する(すなわちCPMの変動係数、CVは平均に無関係である)ので、CPMにより逆加重した。
【0147】
結果
ADCCアッセイで使用した同じAg発現標的細胞を用い競合形式で実施した抗原結合実験は、予期せずAb1−29がAb1−20より約3倍低い親和性で細胞表面抗原に一貫して結合することを示した(図10A)。対照的にAb5−26は、Ab5−0と識別不可能な親和性を示した(図10B)。2対のレクチン由来バリアントを用いて実施した同じ分析では、Ab1の天然バリアントに類似の結果を示し、すなわち、より多くシアリル化されたAb1−WGA−41が、同程度の競合結合を達成するために、より少なくシアリル化されたAb1−WGA−29より4〜6倍より高濃度で必要とされ(図10C)、そして、より多くシアリル化されたAb2−GT−WGA−67は、より少なくシアリル化されたAb2−GT−WGA−5より4〜6倍高濃度で必要とされた(図10D)。
【0148】
興味深いことに、より多量のシアリル化を含むAb1およびAb2により低下した結合の同一パターンが、96ウェルEIAプレートに固定された標的(可溶性組換え抗原もしくは抗Id Ab)への結合を分析する実験でもまた観察された(図11AおよびB)。これらの結果は、Fcシアリル化の程度の差違が抗原ならびにFcγRIIIAへの結合に影響し得るが、しかしシアリル化の程度は全Abの抗原結合に影響しないことを示した。
【0149】
固定化した標的の結合に関するデータから、Fcシアリル化の増大がAbのヒンジ領域の柔軟性を低下させるように働き得ると考えられる。細胞表面抗原へのAb1およびAb2結合の場合、低下されたヒンジの柔軟性は、固体支持体もしくは細胞表面上の抗原エピトープの空間に依存して、抗原へのより多い一価結合およびより少ない二価(高アビディティー)結合につながる可能性がある。Ab5のヒンジ領域もまた柔軟性が低下し得るが、柔軟性はこのAbがAg5への最大の結合を達成するのに必要とされないかもしれない。
【0150】
Abの柔軟性の効果または生来の結合親和性の変化が、Fcシアリル化により影響を及ぼされたかどうかを識別するために、可溶性リガンドへのAbの結合を純粋に一価結合親和性の尺度として試験した。この結果は実際に、細胞表面抗原への結合に差違を示した3対のシアル酸バリアントについて、可溶性標的へのそれらの結合にバリアントの対間で観察される検出可能な差違が存在しないことを示した(図12A〜C)。合わせて考えると、これらの結果は、固定化された標的(細胞表面もしくはプレート被覆)への結合の差違が各Fabアームと標的の間の固有の親和性の差違によらないことを示した。従って、固定化した標的へのそれらの結合におけるAb1およびAb2シアル酸バリアント間の差違は、細胞への二価結合の程度の差違による。
【実施例7】
【0151】
シアリダーゼを分泌するためのベクターの調製
シアリダーゼ発現プラスミドアッセンブリー。アースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)のシアリダーゼの触媒ドメインをコードする核酸配列(GenBank寄託番号AY934539の残基40〜535)
を、その配列に基づき合成した。ヒト成長ホルモンのシグナル配列−アースロバクター ウレアファシエンスの触媒ドメイン融合体(配列番号1:シグナル配列として最初の26アミノ酸および触媒ドメインとして残りの494アミノ酸を含む)をコードする合成された遺伝子(配列番号2)を、独自のBamHIおよびNotI制限部位を使用してプラスミドp2815にクローン化した。このプラスミドはCMVプロモーター、分泌に影響を及ぼすためのヒト成長ホルモンシグナル配列のコード配列、および安定な選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を有する。hGHシグナルコード配列(配列番号1)に連結された酵素触媒ドメインに関するコード配列は、制限酵素消化およびシークエンシングにより確認された。
【0152】
一過性および安定なトランスフェクション。一過性のトランスフェクションには、HEK293細胞を15ugの精製したプラスミドp3629もしくは対照プラスミド(空のベクター)を用いて、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を使用してトランスフェクトした。プラスミドDNAおよび90uLのリポフェクタミン2000をオプティメン(Optimem)で希釈し、合わせ、次いで室温にて20分間インキュベーションした。次いでトランスフェクションカクテルを成長培地中、70%の集密度のHEK293細胞に一晩加えた。翌日、成長培地を293SFM培地と交換し、そして細胞は培地の回収および分析のために5日間インキュベーションした。安定なトランスフェクションには、C168M細胞を、BglIIでの制限消化により直線化した10ugのp3629とエレクトロポレーションにかけた。トランスフェクトした細胞は、700ug/mLのジォネティシン抗生物質を含む成長培地に維持して安定なトランスフェクションを選択した。抗生物質耐性クローンを増幅させ、そしてシアリダーゼについてアッセイした。
【0153】
シアリダーゼ活性アッセイ。シアリダーゼ活性は2’−(4−メチルウンベリフェリル)−a−D−N−アセチルノイラミン酸を使用してアッセイした。生存可能な細胞培養物からの細胞上清に関する蛍光アッセイは、それを100mMクエン酸−リン酸バッファー、ph6.5中、37℃で200uLの150uM 2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセチルノイラミン酸と混合し、次いで2mLの0.5M NaCOを加えて反応を止めることにより行った。励起は366nmで、そして発光は446nmで行った。蛍光単位は生存可能な細胞カウントに対して標準化した。あるいは培養基中のシアリダーゼ活性は、シアリル化レミケードをトランスフェクトした細胞からの培地と一晩インキュベーションし、そして以下に記載のようにシアル酸についてアッセイすることにより測定した。
【0154】
シアル酸測定。シアリダーゼ活性は、細胞培養上清とインキュベーションした後に、精製した抗体からのシアル酸除去についてアッセイすることにより測定した。N−結合オリゴ糖は、IgGサンプル(0.1ml中、0.05〜05mg)を、20mM トリス−HClバッファー、pH7.0中で37℃にて4〜6時間、PNGアーゼFで処理することにより放出された。この溶液のアリコート(〜0.01ml)を、カチオン交換樹脂を含有するカラムに通し、そして前に記載したようにMALDI−TOF−MSにより分析した()。残りのサンプル部分は、アントラニル酸での還元的アミノ化、続いてAnumulaに記載されているようにHPLCによる分析にかけた。簡単に説明すると、4%酢酸ナトリウム3HO(重量/容量)および2%ホウ酸(重量/容量)溶液(メタノール中)を最初に調製した。誘導化試薬は、〜30mgのアントラニル酸(アルドリッチ)および〜20mgのシアノホウ水素化ナトリウム(アルドリッチ)を、1.0mlのメタノール−酢酸ナトリウム−ホウ酸溶液に溶解することにより新たに調製した。IgG由来オリゴ糖(20〜50μlの水中<3nmol)を、0.1mlのアントラニル酸(AA)試薬溶液と、“O”リング(シグマ)を備えた1.6mlのポリプロピレン製ネジ式キャップ凍結バイアル中で混合し、そしてきつく蓋をした。バイアルを80℃に加熱ブロック(Reacti−Therm、ピアス:Pierce)中で〜1時間加熱した。バイアルを室温に冷却した後、サンプルを水で希釈して容量を〜0.5mlにした。誘導化オリゴ糖は前に記載したように精製した。
【0155】
抗体精製。安定なトランスフェクトされた細胞から発現した組換え抗体は、プロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製された。細胞上清は10XプロテインAバッファー(0.2M Tris、1.4M NaCl、10mM EDTA、pH8.5)で1Xに希釈し、そして1mLのプロテインAカラムで精製した。溶出した抗体をPBS、pH7.2に透析した後、分析した。
【0156】
抗体依存的な細胞の細胞傷害性アッセイ(ADCC)。Ab1およびAb3が関与するアッセイのために、標的細胞はそれぞれAg1およびAg3の膜貫通形を含むSp2/0マウス骨髄腫細胞をトランスフェクトすることによりセントコール(Centocor)で調製した。Ag1を発現している、およびAg3を発現している両方の細胞を、熱不活性化FBS、2mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウムおよび0.1mM 非必須アミノ酸を含有するIMDM中で培養した。Ag2を発現している接着細胞をATCCから得、そして10%FBS、2mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、0.1mM 非必須アミノ酸を含有するDMEM培地で培養した。すべての細胞を1週間に2回、継代し、そして対数期増殖で維持した。培養基および補充物質はギブコ(インビトロジェン)から購入した。
【0157】
アッセイの日に、Agを発現している骨髄腫標的細胞を遠心し、そしてPBSで1回洗浄した。接着Ag2発現標的細胞をトリプシンで外し、そして2回洗浄した。細胞を1×10細胞/mlに培養基で調整し、そして15μlのBATDA((ビスアセトキシメチル)−2、2’:6’2”−ターピリジン−6,6”−ジカルボキシレート)蛍光標識試薬(Delfia EuTDA細胞傷害性キット中の、パーキン−エルマー ライフサイエンス;Blomber,K.et al)を5mlの細胞に加えた。細胞を37℃で30分間、時々振盪しながらインキュベーションし;次いで培地で2回洗浄した。エフェクター細胞と混合する直前に、標的細胞を遠心し、そして2x10細胞/mlで培養基中に再懸濁した。
【0158】
末梢血単核細胞(PBMC)エフェクター細胞を健康なドナーのヘパリン処理した血液から分離した。血液サンプルをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で希釈し、そしてPBMCをFicoll−Hypaque(アマシャム)の密度勾配遠心により分離した。遠心後、PBMCを集め、2回洗浄し、そして培養基中、37℃で5%CO中で一晩維持した。翌日、PBMCを集め、2回洗浄し、そして培地に1x10細胞/mlで再懸濁した。
【0159】
細胞傷害性アッセイには、100μlの培養基中の抗体希釈物を丸底の96ウェルプレートに加えた。50μlのエフェクター細胞および50μlのBADTA標識標的細胞をAb希釈物に、50:1のエフェクター対標的細胞比で加えた。プレートを簡単に遠心してエフェクターおよび標的が互いに接触させ、次いで37℃で2時間、で5%COの雰囲気中でインキュベーションした。インキュベーション後、20μlの上清を平底の96ウェルプレートのウェルに移し、そして200μlアリコートのユーロピウム濃縮溶液(Delfia細胞傷害性キットの)を各ウェルに加えた。プレートを10分間振盪した後、蛍光を時間解析蛍光計(time−resolved fluorometer)(エン ビジョン インスツルメント:En Vision instrument、パーキン−エルマー)で測定した。特異的な細胞傷害性の割合は、(実験での放出−自然な放出)/最大放出−自然な放出)×100として算出した。自然な放出は標的をエフェクター細胞の代わりに培地とインキュベーションすることにより、そして最大放出は標的をジギトニンを含有する10μlの溶解液(Delfia EuTDA 細胞傷害性キットの)とインキュベーションすることにより測定した。
【0160】
結果および考察
発現ベクターp3629(図13)を構築し、そしてアースロバクター ウレアファシエンスのシアリダーゼA触媒ドメインを哺乳動物細胞中で発現させる。ヒト成長ホルモンリーダー配列のコード配列は、シアリダーゼAを細胞外に分泌させるために酵素の触媒ドメインに操作可能に連結した。HEK293細胞を発現プラスミドで一時的にトランスフェクトし、そして精製した抗−TNFα抗体についてシアリダーゼ活性のために上清を集めた。抗体は一晩、p3629トランスフェクト細胞または対照プラスミドでトランスフェクトした細胞からのコンディショニング培地とインキュベーションした。コンディショニングした上清とインキュベーションした後の抗体から放出されたオリゴ糖のHPLC分析は、元の細胞株でトランスフェクトした対照から放出されたグリカンを除き、すべてで検出できなかった。したがってシアリダーゼ活性はp3629トランスフェクト細胞の上清にのみ存在し、対照のトランスフェト上清には存在しなかった。
【実施例8】
【0161】
抗体およびシアリダーゼの同時発現(co−expression)
これら実験の目的は、シアリダーゼ酵素を培養基に分泌することができる宿主細胞株を生成することであり、この細胞はさらに抗体コード配列でトランスフェクトすることにより、脱シアリル化されるグリコシル化抗体を生産する可能性があった。抗体を発現するマウス骨髄腫細胞株C168Mを、実施例7で調製したベクターp3629でトランスフェクトし、そして安定なクローンを選択し、そして上清中のシアリダーゼ活性をスクリーニングした。以下の表2に示すように、この実験では蛍光計でアッセイした(MFU)17のクローンのうち、シアリダーゼ活性に関して6つが陽性であり、そしてシアリダーゼ発現が6週間にわたり持続し、安定なクローンであることが示された。
【0162】
【表2】

【0163】
シアリダーゼA陽性クローンからSDS−PAGEにより精製した抗体のさらなる分析は、それらが未だに完全な抗体を発現していることを示し、そしてシアリダーゼの発現が発現レベルに影響しないことを示した。抗体の炭水化物分析は、すべてのクローンが2%未満のシアル酸を含むことを示し、約15%のシアル酸を有する非シアリダーゼトランスフェクト宿主細胞からの抗体と比較した(表3)。
【0164】
【表3】

【0165】
シアリダーゼを過剰発現しているクローンからのこの低いシアル酸抗体を、WT C168Mと比べて強化されたADCC活性についてアッセイした(図14)。表3から分かるように、幾つかのサンプルが野生型の抗−TNFα抗体よりも低いEC40および高い最大溶解を示し、低いシアル酸含量がこの抗体の生物学的特性に影響していることを示した。
【0166】
アースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)のシアリダーゼA酵素の触媒ドメインが、哺乳動物細胞の培養基に分泌するように発現プラスミドが設計された。この分泌された酵素は細胞上清中で活性であり、そしてシアル酸残基を抗体のFc領域に存在するN−結合オリゴ糖から除去できる。抗体を発現している細胞株のこの発現構築物での安定なトランスフェクションは、シアリダーゼA活性を抗体と一緒に培養上清に分泌するクローンを生じる。これらの細胞培養物から回収した抗体は、ADCC活性における機能的改善に翻訳される低いシアル酸を含む。これらの結果は、この方法が組換え糖タンパク質を発現する宿主細胞を生成するために使用でき、そしてシアリル化が最少になった糖結合体のための培養物を作成するために使用できることを示唆している。
【実施例9】
【0167】
シアリダーゼのCHO発現
CHO細胞は生物薬剤の製造に重要な宿主細胞である。p3629(図13)プラスミドは、抗体のような治療用タンパク質の発現のためのベクターでさらにトランスフェクトされ得るCHO細胞株を安定にトランスフェクトするために使用した。
【0168】
CHO細胞(C1835A)は、FuGene6(ロッシュ社:Roche,Inc.)を使用したBglIIでの制限消化により線状化した30μgのp3629でトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞は、700ug/mLのジェネティシン抗生物質(インビトロジェン社)を含む成長培地中で維持して、安定なトランスフェクション体を選択した。抗生物質耐性クローンをプールし、増幅させ、そしてシアリダーゼ活性についてアッセイした。
【0169】
シアリダーゼ活性は、フルオロホアを使用して生存可能な細胞培養物からの細胞上清についてアッセイした。200uLの細胞上清に、150uMの2’−(4−メチルウンベリフェリル)−アルファ−D−N−アセチルノイラミン酸(100mMのクエン酸−リン酸バッファー、pH6.5中)に37℃で加え、次いで2mLの0.5M NaCOを加えて反応を止めた。励起は366nmであり、そして発光は446nmであった。蛍光単位(FU)は、各細胞株に関する個々の蛍光の読み取りを生存可能な全細胞数で割ることにより標準化した。FUで測定した培養基中のシアリダーゼ活性は、表4に示す。
【0170】
【表4】

【0171】
選択後、3週および8週のシアリダーゼ活性は一定か、または期間中増加したので、培養上清中へのシアリダーゼ酵素の安定な発現および分泌が確認された。
【0172】
本発明は前記の記載および実施例に特に記載された以外にも実施できることは明らかである。本発明の多くの修飾および変形が上記の教示に照らして可能であり、したがって添付する特許請求の範囲内で可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fc含有分子を発現するように操作された哺乳動物細胞を含んでなる培養物中にシアリダーゼ酵素活性を提供する方法であって、シアリダーゼ酵素活性が可能なポリペプチドをコードするベクターで哺乳動物の操作された細胞をトランスフェクトすることを含んでなり、ここでポリペプチドは培養物中にFc含有分子と一緒に分泌され、これによりFc含有分子のグリカンがポリペプチドのシアリダーゼ酵素活性により作用され得る、上記方法。
【請求項2】
ベクターがアースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)シアリダーゼ酵素Aの触媒ドメインをコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Fc含有分子が抗体であり、そして哺乳動物細胞株がCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、293、HeLa、YB2/0もしくはY3、骨髄腫もしくはリンパ腫細胞、またはその誘導体、不死化もしくは形質転換細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗体が抗−TNFα抗体であり、そして細胞株がC168Mである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
シアリダーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列を含んでなる発現ベクターであって、ベクターがFc含有分子を発現している哺乳動物細胞培養物中でシアリダーゼ酵素活性を有するポリペプチドを発現することができる上記発現ベクター。
【請求項6】
シアリダーゼ酵素がアースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)のシアリダーゼ酵素Aであり、そして哺乳動物細胞株がCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、293、HeLa、YB2/0もしくはY3、骨髄腫もしくはリンパ腫細胞、またはその誘導体、不死化もしくは形質転換細胞からなる群から選択される、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
ベクターがシグナル配列、プロモーター配列および抗生物質耐性を含んでなる請求項5に記載のベクター。
【請求項8】
シグナル配列がヒト成長ホルモンシグナル配列であり、プロモーター配列がCMVプロモーター配列であり、そして抗生物質耐性がネオマイシンである、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
細胞株中で発現するFc含有分子の特性を制御する方法であって、細胞株をシアリダーゼ酵素をコードするベクターでトランスフェクトすることによりFc領域中のオリゴ糖のシアリル化を下げることを含んでなり、ここで発現されるFc含有分子が減少した量のシアル酸残基を含んでなる、上記制御方法。
【請求項10】
制御されるFc含有分子の特性が、多様に局在する標的タンパク質についての分子のアビディティー;FcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIIAの1もしくは複数のFcガンマ受容体に対する親和性;ADCC活性;マクロファージもしくは単球の活性化;および血清半減期である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ベクターがアースロバクター ウレアファシエンス(Arthrobacter ur
eafaciens)シアリダーゼ酵素A触媒ドメインをコードする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
Fc含有分子が抗体であり、そして哺乳動物細胞株がCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、293、HeLa、YB2/0もしくはY3、骨髄腫もしくはリンパ腫細胞、またはその誘導体、不死化もしくは形質転換細胞からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
抗体が抗−TNFα抗体であり、そして細胞株がC168Mである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Fc含有分子が標的に対して特異的な結合ドメインを有し、該標的が固定化標的である請求項9に記載の方法。
【請求項15】
Fc含有分子が標的に対して特異的な結合ドメインを有し、該標的が細胞の表面上で発現される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれかに記載の方法により生産または改変されたFc含有タンパク質。
【請求項17】
タンパク質が、腫瘍学関連障害、慢性疾患もしくは感染性疾患の処置に指示される、請求項16に記載のタンパク質。
【請求項18】
感染性疾患が、ウイルスおよび細菌の一方もしくは双方を含んでなる抗体にオプソニン化された細胞または粒子のFcR媒介型消失が関与し、そして慢性疾患には長期処置を必要とする請求項17に記載のタンパク質。
【請求項19】
タンパク質が、組換え発現されたモノクローナル抗体を含んでなり、抗体がレクチンアフィニティクロマトグラフィーを使用して濃縮された特定の糖型を有する請求項17に記載のタンパク質。
【請求項20】
タンパク質が、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーの1もしくは複数を使用して精製された、組換え発現されたモノクローナル抗体である、請求項17に記載のタンパク質。
【請求項21】
アフィニティクロマトグラフィーがレクチンアフィニティクロマトグラフィーである請求項20に記載のタンパク質。
【請求項22】
タンパク質が、増強されたレベルのアシアリル化モノクローナル抗体を有する、遺伝子的に操作された宿主細胞中で発現されたモノクローナル抗体である、請求項17に記載のタンパク質。
【請求項23】
製薬学的に許容され得る担体と組合せた請求項16ないし22のいずれか1項に記載のタンパク質を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項24】
疾患もしくは状態の処置もしくは診断のための、請求項23に記載の組成物を使用する方法。
【請求項25】
上記タンパク質が、癌腫、リンパ腫、肉腫および骨髄腫よりなる群から選択される腫瘍
性疾患の処置に使用される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記タンパク質が、乾癬、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病および全身性エリテマトーデスからなる群から選択される炎症性障害の処置に使用される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
タンパク質が、角膜もしくは網膜の血管新生が関与する障害の処置に使用される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
本明細書に記載されるいずれかの発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−514448(P2010−514448A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544246(P2009−544246)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/088809
【国際公開番号】WO2008/083150
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】