説明

アシストグリップの固定構造

【課題】本発明は、アシストグリップの上端側を車室の天井部分に固定するブラケットを必要強度が確保できる状態で小型化し、そのブラケットを予め車室の天井部分に取付けておけるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るアシストグリップの固定構造では、車室の天井部分には、ルーフパネル12を補強する複数本のルーフリインフォース14が車幅方向に延びるように梁状に設けられており、アシストグリップ20の上端部が固定されるブラケット30は、いずれか一本のルーフリインフォース14に連結される連結部321と、そのルーフリインフォース14の脇でルーフパネル12に面接触し、そのルーフパネル12に接着されるフランジ部324とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に立てられた柱状のアシストグリップの上端側を車室の天井部分に固定するアシストグリップの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車への乗降時や乗用車が揺れたときに乗員が掴まる小型のアシストグリップは、一般的に扁平略U字形に形成されており、その両端部がルーフパネルを補強するブラケットにボルト等で固定されている(特許文献1 参照)。
また、乗合タクシー等のアシストグリップ100は、図7に示すように、柱状に形成されており、その上端部が車体の天井部分に固定され、下端部が床部分に固定されている。特に、車体の天井部分は床部分と比較して強度が低いため、ルーフパネル(図示省略)を補強する複数本のルーフリインフォース115に対して車両前後方向に延びる専用のブラケット110を連結し、このブラケット110にアシストグリップ100の上端部を固定するようにしている。
ここで、前記ルーフパネル、ルーフリインフォース115、ブラケット110等は、そのブラケット110の連結後、天井板であるルーフトリム(図示省略)によって室内側から覆われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−114033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したアシストグリップ100の固定構造では、専用のブラケット110を複数本のルーフリインフォース115に連結する構成のため、そのブラケット110をルーフリインフォース115の間隔よりも長く製作する必要があり、前記ブラケット110が大型化する。このため、例えば、ワンボックス車両を乗合タクシー等に改造する場合には、前記ブラケット110を後付けするのが一般的である。即ち、天井板であるルーフトリムを外してからそのブラケット110をルーフリインフォース115に連結した後、アシストグリップ100の上端部をブラッケット110に固定し、前記ルーフトリムを復旧する。
このため、ワンボックス車両を乗合タクシー等に改造する場合にアシストグリップ100の取付けに手間が掛かるという問題がある。
ここで、ワンボックス車両を乗合タクシー等に改造する場合を想定して、専用のブラケット110を予めルーフリインフォース115に取付ておくことも可能である。しかし、ワンボックス車両を乗合タクシー等に改造する頻度が少ないこと、またブラケット110が大型で、かつ取付けに手間が掛かることから、ブラケット110を予めルーフリインフォース115に取付けておりことは、経済上、及び車両の組立上から現実的ではない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、アシストグリップの上端側を車室の天井部分に固定するブラケットを必要強度が確保できる状態で小型化し、そのブラケットを予め車室の天井部分に取付けておけるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車室内に立てられた柱状のアシストグリップの上端側を車室の天井部分に固定するアシストグリップの固定構造であって、前記車室の天井部分には、ルーフパネルを補強する複数本のルーフリインフォースが車幅方向に延びるように梁状に設けられており、前記アシストグリップの上端部が固定されるブラケットは、いずれか一本の前記ルーフリインフォースに連結される連結部と、そのルーフリインフォースの脇で前記ルーフパネルに面接触し、そのルーフパネルに接着されるフランジ部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、アシストグリップの上端部が取付けられるブラケットは、一本のルーフリインフォースに連結される連結部と、そのルーフリインフォースの脇で前記ルーフパネルに接着されるフランジ部とを備えている。即ち、前記ブラケットは、一本のルーフリインフォースに連結されるため、従来のブラケットように、複数本のルーフリインフォースに跨って連結される構成と比較して、前記ブラケットを小型化できる。このため、ブラケットのコストダウンを図れるとともに、そのブラケットの取付けにもさほど手間が掛からない。したがって、ブラケットを予め車室の天井部分に取付けておけるようになる。
また、ブラケットにはフランジ部が設けられており、そのフランジ部がルーフパネルに接着される構成のため、前記ブラケットが一本のルーフリインフォースに連結される構成であっても必要強度を確保できる。
【0008】
請求項2の発明によると、ブラケットは、ルーフリインフォースを車両前後方向において跨ぐ門型に形成されており、そのルーフリインフォースの前後に前記フランジ部が設けられていることを特徴とする。
このため、ブラケットをバランス良くルーフリインフォースの位置に固定できるようになる。
請求項3の発明によると、ブラケットは、フランジ部と連結部とを備えるブラケット本体と、そのブラケット本体に接合されて、アシストグリップの上端部が固定されるアシストグリップ受け部材とから構成されていることを特徴とする。
このため、ルーフパネル、ルーフリインフォースに対するアシストグリップ受け部材の位置を調整し易くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、アシストグリップの上端側を車室の天井部分に固定するブラケットを必要強度が確保できる状態で小型化でき、そのブラケットを予め車室の天井部分に取付けておけるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係るアシストグリップの固定構造を備えるワンボックス車両の天井部分を下から見上げた状態の斜視図である。
【図2】本実施形態に係るアシストグリップの固定構造を表す分解斜視図(図1のII矢視部の分解斜視図)である。
【図3】前記アシストグリップの固定構造を表す縦断面図である。
【図4】図3のIV-IV矢視断面図である。
【図5】前記アシストグリップの固定構造で使用されるブラケットのブラケット本体の斜視図である。
【図6】前記アシストグリップの固定構造で使用されるブラケットのアシストグリップ受け部材の斜視図である。
【図7】従来のアシストグリップの固定構造を表す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、図1から図6に基づいて本発明の実施形態1に係るアシストグリップの固定構造について説明する。本実施形態に係るアシストグリップの固定構造は、ワンボックス車両における柱状のアシストグリップの上端部を車室の天井部分に固定する構造である。
ここで、図中の前後左右、及び上下は、本実施形態に係るアシストグリップの固定構造を備えるワンボックス車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0012】
<ワンボックス車両10のルーフ構造について>
本実施形態に係るアシストグリップ20の固定構造について説明する前に、先ず、ワンボックス車両10のルーフ構造について簡単に説明する。
ワンボックス車両10のルーフ部分は、図1に示すように、前後に長い角形のルーフパネル12と、そのルーフパネル12の左右両側で前後方向に延びる中空閉断面状のルーフサイドレール13と、左右のルーフサイドレール13間に架け渡されてルーフパネル12を下方から支える複数本の梁状のルーフリインフォース14とから構成されている。
ルーフパネル12には、図1、図4等に示すように、プレス成形により車両前後方向に延びる突条12tが車幅方向に複数本形成されている。これにより、ルーフパネル12の車両前後方向における強度が向上するようになる。
ルーフリインフォース14は、図3等に示すように、横断面形状が略U字形の溝状に形成されており、そのルーフリインフォース14の開口縁に形成されたフランジ部14fが合成ゴムを主成分とした接着剤によってルーフパネル12の下面に接着されている。また、ルーフリインフォース14の下側には、図1に示すように、天井板であるルーフトリム16(図3、図4参照(図1では省略))が取付けられる支持金具14xが取付けられている。
【0013】
<アシストグリップ20について>
アシストグリップ20は、ワンボックス車両10を乗合タクシー等に使用する場合に設置される円筒状の支柱であり、乗客が車中で掴まるためのものである。アシストグリップ20は、図1、図7に示すように、その下端部が車体の床部分に固定され、上端部が車体の天井部分に固定される。アシストグリップ20の上部は、そのアシストグリップ20の位置に応じて、図1に示すように、直線状、あるいは湾曲した状態に形成されている。アシストグリップ20の上端部には、そのアシストグリップ20の上端部をブラケット30の下面(受け面34u)に連結するための角形フランジ部22が設けられている。角形フランジ部22は、後記するブラケット30の受け面34u(図2、図3参照)とほぼサイズに設定されており、その受け面34uに設けられた短管34xと重なる位置にボルト孔22b(図3参照)が形成されている。
【0014】
<ブラケット30について>
ブラケット30は、アシストグリップ20の上端部をワンボックス車両10の天井部分に固定するための部材であり、図5に示すブラケット本体32と、図6に示すアシストグリップ受け部材34とから構成されている。ブラケット本体32は、ルーフパネル12とルーフリインフォース14とに固定される部材であり、底板部321と、一対の側壁部322と、同じく一対のフランジ部324とから側面形状が扁平略U字形に成形されている。ブラケット本体32の底板部321は、図3、図4に示すように、ルーフリインフォース14の下面に沿う形状に折り曲げ成形されており、その底板部321の幅方向(前後方向)中央には、ルーフリインフォース14のナット孔14nに重なる位置に二個のボルト孔321xが左右方向に一定間隔をおいて形成されている。即ち、ブラケット本体32の底板部321が、図3に示すように、ルーフリインフォース14の下面にボルト止めされた状態で、ブラケット本体32はルーフリインフォース14を車両前後方向において跨ぐように、そのルーフリインフォース14に連結される。そして、この状態で、ブラケット本体32の一対のフランジ部324がルーフパネル12の裏面(下面)に面接触できるように、一対の側壁部322の高さ寸法が設定されている。
【0015】
ブラケット30のアシストグリップ受け部材34は、アシストグリップ20の上端部が連結される部材であり、図6に示すように、底板部341と、一対の側壁部343とから側面略U字形に成形されている。アシストグリップ受け部材34の両側壁部343は、ブラケット本体32の側壁部322に溶接される部分であり、そのブラケット本体32の側壁部322と等しい傾きで形成されている。そして、図3に示すように、アシストグリップ受け部材34の両側壁部343間にブラケット本体32の両側壁部322を上方から嵌合可能なように、前記一対の側壁部343の間隔寸法が設定されている。また、図6に示すように、アシストグリップ受け部材34の前側の側壁部343は、その右端縁が一定幅で内側(後側)に折り曲げられてフランジ部343fが形成されている。また、アシストグリップ受け部材34の後側の側壁部343は、その左端縁と右端縁とが一定幅で内側(前側)に折り曲げられてフランジ部343fが形成されている。これにより、アシストグリップ受け部材34の側壁部343の強度が向上する。
【0016】
アシストグリップ受け部材34の底板部341は、アシストグリップ20の角形フランジ部22が連結される部分であり、その底板部341の下面側に受け面34uが形成されている。また、底板部341の中央部分には、作業用開口341hが形成されており、その作業用開口341hを利用してブラケット本体32の底板部321をルーフリインフォース14の下面にボルト止めできるようになる。
さらに、アシストグリップ受け部材34の底板部341には、図6に示すように、作業用開口341hの前後にボルト孔(図示省略)が形成されており、それらのボルト孔の位置にナット34nが上方から固定されている。そして、底板部341の受け面34u側に前記ナット34nと同軸にボルトが通される円筒状の短管34xが固定されている。また、底板部341の左端縁と右端縁とが一定幅で上側に折り曲げられてフランジ部341fが形成されている。これにより、アシストグリップ受け部材34の底板部341の強度が向上する。
【0017】
<ブラケット30の取付けについて>
先ず、アシストグリップ受け部材34の両側壁部343間にブラケット本体32の両側壁部322を上方から嵌合させて、アシストグリップ受け部材34の各々の側壁部343とブラケット本体32の各々の側壁部322とをそれぞれスポット溶接し、ブラケット30を形成する。次に、ブラケット本体32の両フランジ部324の上面に構造用接着剤を塗布し、図2に示すように、そのブラケット本体32の底板部321のボルト孔321xを目的のルーフリインフォース14のナット孔14nに重ねるようにする。この状態で、前記ボルト孔321x、ナット孔14n及びアシストグリップ受け部材34の底板部341の作業用開口341hを利用して、図3、図4に示すように、ブラケット本体32の底板部321をルーフリインフォース14にボルト止めする。これにより、ブラケット30がルーフリインフォース14に連結されるとともに、構造用接着剤が塗布されたブラケット本体32のフランジ部324の上面がルーフリインフォース14の前後でルーフパネル12の裏面(下面)に面接触するようになる。そして、構造用接着剤が硬化することで、ブラケット本体32のフランジ部324がルーフパネル12に接着され、ブラケット30の取付けが完了する。
即ち、ブラケット本体32の底板部321が本発明の連結部に相当する。
【0018】
次に、天井板であるルーフトリム16がルーフリインフォース14の支持金具14xを利用して取付けられる。ここで、ルーフトリム16には、図3、図4に示すように、ブラケット30のアシストグリップ受け部材34に設けられた一対の短管34xを突出させるための開口16hが形成されている。このため、ワンボックス車両10を乗合タクシー等に改造しない場合、即ち、アシストグリップ20の上端部を連結しない場合にはルーフトリム16の開口16hが化粧板(図示省略)によって塞がれる。
また、ワンボックス車両10を乗合タクシー等に改造する場合には、前記化粧板を外し、図3、図4に示すように、アシストグリップ20の角形フランジ部22の各ボルト孔22bを前記ブラケット30の各短管34xに合わせ、その角形フランジ部22を前記ブラケット30にボルト止めする。これにより、アシストグリップ20の上端部がワンボックス車両10の天井部分に固定される。
【0019】
<本実施形態に係るアシストグリップ20の固定構造の長所について>
本実施形態に係るアシストグリップ20の固定構造よると、アシストグリップ20の上端部が取付けられるブラケット30は、一本のルーフリインフォース14にボルト止めされる底板部321(連結部)と、そのルーフリインフォース14の脇でルーフパネル12に接着されるフランジ部324とを備えている。即ち、ブラケット30は、一本のルーフリインフォース14と、その近傍のルーフパネル12に固定されるため、従来のブラケットように、複数本のルーフリインフォースに連結される構成と比較して、ブラケット30を小型化できる。このため、ブラケット30のコストダウンを図れるとともに、そのブラケット30の取付けにもさほど手間が掛からない。したがって、ブラケット30を予め車室の天井部分に取付けておけるようになる。
また、ブラケット30のフランジ部324がルーフパネル12に接着される構成のため、そのブラケット30が一本のルーフリインフォース14に連結される構成であっても必要強度を確保できる。
【0020】
また、ブラケット30は、ルーフリインフォース14を車両前後方向において跨ぐ門型に形成されて、そのルーフリインフォース14の前後にフランジ部324が設けられているため、ブラケット30をバランス良くルーフリインフォース14の位置に固定できるようになる。
また、ブラケット30は、フランジ部324と底板部321(連結部)とを備えるブラケット本体32と、そのブラケット本体32に接合されて、アシストグリップ20の上端部が固定されるアシストグリップ受け部材34とから構成されているため、ルーフパネル12、ルーフリインフォース14に対するアシストグリップ受け部材34の位置を調整し易くなる。
【0021】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ブラケット30をブラケット本体32とアシストグリップ受け部材34との二部品から構成する例を示したが、ブラケット本体32とアシストグリップ受け部材34とを一部品で構成することも可能である。
また、本実施形態では、ブラケット30のブラケット本体32をルーフリインフォース14に対してボルト止めする例を示したが、ボルト止めの代わりにフック等を利用した係合構造にすることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
12・・・・ルーフパネル
14・・・・ルーフリインフォース
20・・・・アシストグリップ
30・・・・ブラケット
32・・・・ブラケット本体
321・・・底板部(連結部)
324・・・フランジ部
34・・・・アシストグリップ受け部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に立てられた柱状のアシストグリップの上端側を車室の天井部分に固定するアシストグリップの固定構造であって、
前記車室の天井部分には、ルーフパネルを補強する複数本のルーフリインフォースが車幅方向に延びるように梁状に設けられており、
前記アシストグリップの上端部が固定されるブラケットは、いずれか一本の前記ルーフリインフォースに連結される連結部と、そのルーフリインフォースの脇で前記ルーフパネルに面接触し、そのルーフパネルに接着されるフランジ部とを備えていることを特徴とするアシストグリップの固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のアシストグリップの固定構造であって、
前記ブラケットは、前記ルーフリインフォースを車両前後方向において跨ぐ門型に形成されており、そのルーフリインフォースの前後に前記フランジ部が設けられていることを特徴とするアシストグリップの固定構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載のアシストグリップの固定構造であって、
前記ブラケットは、前記フランジ部と連結部とを備えるブラケット本体と、そのブラケット本体に接合されて、前記アシストグリップの上端部が固定されるアシストグリップ受け部材とから構成されていることを特徴とするアシストグリップの固定構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−148467(P2011−148467A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13076(P2010−13076)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】